JP2015179764A - 高温超電導磁石装置および高温超電導磁石消磁方法 - Google Patents
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つまり、高温超電導コイルは、高温超電導線材の破損または温度上昇など外的な要因がない限り、ほとんどクエンチは発生しない。
低温超電導コイルは4Kの温度帯で運用されるが、高温超電導コイルは20K〜40K程度、場合によっては液体窒素温度の77Kの温度帯で運転される。
そのため、上述したクラックなどによる数十mJ/cm3程度の発熱では、高温超電導線材の温度はほとんど上昇せず、1K程度の温度マージンで常電導転移を阻止することができる。
常電導部分ができてコイル電圧が検知されると、一般に、高温超電導コイルは、電流供給源(励磁電源)が切り離される。
そして、超電導コイルおよび保護抵抗を含む閉回路を形成して強制的に電流を消滅させることで、超電導コイルを焼損から保護している。
よって、低温超電導コイルでは、検知電圧や保護抵抗値を適切に選択することで、焼損させずにクエンチに対処することができる。
さらに、高温超電導コイルは、輸送できる電流密度が高いことから発熱密度も大きい。
また、電流供給源に接続した通常の運転では、常電導部分が存在しても、この常電導部分がほとんど広がらないため、その存在に気づかないことも多い。
そこで、温度上昇による熱暴走を防止するために、超電導コイルの温度が既定の閾値を超過した場合に電流を低下させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
永久電流モードで運転することで、温度が数十時間かけて緩やかに上昇するとともに電流が緩やかに減衰し、安全に消磁できることは計算で見出されている(非特許文献1)。
温度上昇に伴って超電導状態の超電導コイルが常電導転移する過渡期において、超電導線材のフラックスフロー抵抗が増加する。
フラックスフロー抵抗の増加は、常電導部分の発熱を促進させる一方、永久電流(循環電流)を減衰させることで逆に発熱を抑制する作用もある。
このような保護方法は、超電導特性を示す温度帯が広い高温超電導コイル特有の消磁方法である。
また、高温超電導コイルのインダクタンスが大きく永久電流の減衰速度が遅い場合も、この減衰による発熱を抑制する作用が小さく、常電導部分の発熱が加速してしまう。
さらには、この常電導部分の発熱により高温超電導コイルが熱暴走をして、安全に消磁できないおそれがあるという課題もあった。
図1は、各実施形態にかかる高温超電導磁石装置10(以下、単に「磁石装置10」という)で使用される高温超電導線材20(以下、単に「超電導線材20」という)の構成図である。
また、MgB2線材も超電導線材20として好適に用いることができる。
図2は、第1実施形態にかかる磁石装置10の構成を示す概略縦断面図である。
また、図3は、第1実施形態にかかる磁石装置10で使用される超電導コイル30の概略図である。
ここで、図4は、各実施形態の超電導コイル30で使用することができるコイル要素の例を示す図である。
このシングルパンケーキコイルSPを単体でまたは複数積層させて超電導コイル30として使用することができる。
各図では、このシングルパンケーキコイルSPを複数積層させたものを超電導コイル30として記載している。
さらに、図4(C)は、巻枠(図示せず)に沿って、超電導線材20を中心軸C方向にずらしながら巻回した、いわゆるレイヤー巻コイルLCを示している。
磁石装置10では、いずれのコイル要素も適用でき、これらのコイル要素の例に限定されない。
以下、各実施形態では、図4(A)のシングルパンケーキコイルSP(以下、「パンケーキコイルP」と記載する)を用いて説明する。
超電導コイル30は、冷凍手段14を備える真空容器33に収容される。
磁石装置10が、図2に示される伝導冷却方式の場合、冷凍手段14は、GM冷凍機またはパルスチューブ型冷凍機などの冷凍機である。
それぞれの冷却ステージ19(19a,19b)ごとに、適宜支持体39で支持される輻射遮蔽部材38(38a,38b)が設けられている。
一方、第1冷却ステージ19aは、第1伝熱板35aを介して伝導させて輻射遮蔽部材38aに熱的に接触している。
各々の輻射遮蔽部材38で外部からの熱輻射による温度上昇を防止する一方で、各々の冷却ステージ19で冷却することで、超電導コイル30を想定する温度に冷却する。
つまり、輻射遮蔽部材38によって、超電導コイル30における温度差の発生によって熱暴走が起こることを防止する。
輻射遮蔽部材38をアルミニウムで構成する場合、その純度は99%以上であることが望ましい。
低温超電導コイルを用いた伝導冷却方式の超電導磁石では、冷却温度と冷凍機14の冷凍能力との観点から、二段冷凍機14aを用いる必要があった。
よって、冷凍機14の冷凍能力を考慮すると、冷凍機14として、図5に示される冷却ステージ19を1つ備える単段冷凍機14bを使用することもできる。
以上、熱伝導方式による冷凍手段14について説明したが、超電導コイル30を浸漬冷却方式で冷却してもよい。
浸漬冷却方式で冷却する場合、冷凍手段は、例えば液体窒素または液体ヘリウムなどの寒剤となる。
コイル支持部41は、樹脂または繊維強化プラスチックなどの熱抵抗の大きい材料が好適に用いられる。
熱抵抗の大きい材料を用いることで、熱伝導によって超電導コイル30に局所的な温度上昇が発生して、超電導コイル30に温度差が発生することを防止する。
超電導状態にある超電導コイル30の抵抗はほとんど0であるので、原理的には、超電導コイル30に減衰しない永久電流Ioが流れ続けることとなる。
なお、この永久電流スイッチ12は、電気抵抗の大小を外部から操作でき、永久電流Ioを減衰させることもできる。
そして、超電導コイル30を流れる電流量が定常的になったとき、永久電流スイッチ12をONにして、超電導コイル30から電流供給源42を切り離す。
例えば、冷凍機14に異常がなく、真空容器33の内部温度が十分に冷却されている場合にのみ、永久電流Ioの減衰分だけ定期的に電流を供給することもできる。
逃し経路13が配置されていない間隙には、エポキシ樹脂などの絶縁体28が充填されており、対向する超電導線材20どうしは、逃し経路13でのみ電気的に接続される。
超電導線材20は第2世代の高温超電導体からなるので、超電導状態となって運転されているときも外部磁場の侵入を許容する。
図6からわかるように、中心軸Cに沿った最端部にあるパンケーキコイルP1(P12)が最もフラックスフローが多い。
最端部の近傍でフラックスフローが増加するのは、この近傍では、超電導線材20の層を垂直に貫通する磁場成分が多いからである。
このフラックスフローが少なく磁束ピンニングされているときは、超電導線材20は超電導状態にある。
そして、この常電導部分が数十分から数日かけて徐々に広がってゆき、超電導コイル30の全体が常電導状態になる。
また、熱暴走に至らなくても、常電導部分に大電流が流れ続けて、この常電導部分が焼損することがある。
図7は、第1実施形態にかかる磁石装置10の超電導線材20の間を横断する横断電流iの説明図である。
このように常電導部分を迂回させることで、超電導線材20を焼損させることなく永久電流Ioを数十分から数日かけて徐々に減衰させることができる。
このように消磁された磁石装置10は、冷却条件を整え直すことで再度当初の出力能力で磁場を発生させることができる。
巻回された超電導線材20のインダクタンスの観点から、運転の開始時において、電流は周回しにくい。
つまり、本来の巻数に応じた磁場が発生しづらく、所定の定常電流になるまでに、非常に長い時間がかかる。
例えば、上述したように、中心軸Cに沿った最端部にあるパンケーキコイルP1(P12)には、温度上昇とともに高い電気的負荷率がかかることが予想される。
さらに、図6より、各々のパンケーキコイルPnのうちでは、中腹に巻回された超電導線材20に大きな電気的負荷率がかかることもわかる。
そして、内側のパンケーキコイルPn(n=3〜10)(図3のY部)は、従来どおり超電導線材20の間隙が絶縁体28で絶縁する。
なお、逃し経路13の配置は、この例に限定されず、例えば、すべてのパンケーキコイルPnのすべての超電導線材20の間隙に配置してもよい。
逃し経路13の形状を金網状にすることで、対向する超電導線材20の接触面積を調整することができる。
逃し経路13の抵抗値が大きすぎると、超電導線材20の一部に大きなフラックスフロー抵抗が発生しても、隣接する超電導線材20に横断電流iが流れることができないからである。
この計算において、幅が5mm、100A程度まで通電できる現状の超電導線材20を想定した。
ただし、この場合、逃し経路13は、1つのパンケーキコイルPのうち一部にのみ配置される。
この抵抗値は、逃し経路13の配置される位置に応じて、異なるものとしてもよい。
そこで、このような熱侵入の起こりやすい箇所に低い抵抗値の逃し経路13を配置して、容易に横断電流iが発生するように工夫することができる。
そこで、1つのパンケーキコイルPnの逃し経路13の抵抗値は同一として、異なる抵抗値の逃し経路13のパンケーキコイルPnで、組み合わせを工夫することが望ましい。
そして、電流を流して、超電導コイル30を流れる電流が安定したら、超電導コイル30の運転モードを永久電流モードに切り替えて運転する(S12)。
ただし、現実的には、永久電流Ioはわずかに減衰するので、規定どおり超電導コイル30が冷却されていることが確保できれば、減衰した分の電流を供給してもよい。
このとき、このフラックスフロー抵抗により、逃し経路13に横断電流iが発生する(S15)。
そして、フラックスフロー抵抗が大きい箇所は、隣接する超電導線材20へ迂回され、このような箇所に大電流が流れることが防止される。
図8は、第2実施形態にかかる磁石装置10の構成を示す概略縦断面図である。
また、磁石装置10は、超電導コイル30で冷却がされづらい難冷箇所および線材均熱部16にそれぞれ接続されて線材均熱部16の冷熱を難冷箇所に伝導させるコイル伝導部17を備える。
第1実施形態で述べたように、冷凍機14の冷却機能の喪失などで真空容器33が上昇した場合、超電導コイル30の温度は局所的で不均一に上昇する。
このような温度差は、1つのパンケーキコイルPnにおいても、径方向に発生する。
そして、侵入熱の経路となりうる例えばコイル支持部41または伝熱板35などを、線材均熱部16を介して超電導コイル30に接続させる。
なお、線材均熱部16は、フラックスフロー抵抗で温度上昇した場合にも、発生した熱を隣接する超電導線材20へ伝導させて、パンケーキコイルPnの温度を均一にする。
例えば超電導コイル30が複数のパンケーキコイルPから構成されている場合、冷凍手段14から離れている内部のパンケーキコイルPn(図3のY部)には冷熱および温熱のいずれも伝導されづらい。
このようにコイル伝導部17を設けることで、超電導コイル30の全体で温度を均一に維持しながら徐々に上昇させることができる。
同時に、熱を均熱化することで、超電導コイル30全体の熱容量を利用できるので、局所的で急激な温度上昇を抑制することもできる。
すなわち、常電導部分に大電流がながれて、超電導線材20が焼損することを防止することができる。
図面においても、共通の構成または機能を有する部分は同一符号で示し、重複する説明を省略する。
これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。
これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
Claims (9)
- 巻回された高温超電導線材からなる高温超電導コイルと、
前記高温超電導コイルに熱的に接触してこの高温超電導コイルを低温に維持する冷凍手段と、
前記高温超電導コイルに並列に接続されてこの高温超電導コイルの運転モードを永久電流モードに切り替える永久電流スイッチと、
巻回されて対向する前記高温超電導線材の間隙のうち少なくとも一部に配置されて前記高温超電導線材を電気的に接続する逃し経路と、を備えることを特徴とする高温超電導磁石装置。 - 前記逃し経路は、前記高温超電導コイルのうち電気的負荷率の高い箇所の前記間隙に配置されることを特徴とする請求項1に記載の高温超電導磁石装置。
- 前記逃し経路の電気抵抗は、1.0×10−6Ω/m以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の高温超電導磁石装置。
- 前記逃し経路の電気抵抗は、前記電気的負荷率の高さに応じて異なることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の高温超電導磁石装置。
- 前記高温超電導コイルは、複数のパンケーキコイルから構成されて、
各々の前記パンケーキコイルの前記逃し経路の前記電気抵抗は、同一にされることを特徴とする請求項3に記載の高温超電導磁石装置。 - 巻回された前記高温超電導線材を径方向に熱的に接続して前記高温超電導線材の温度を均一にする線材均熱部を備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の高温超電導磁石装置。
- 前記高温超電導コイルで冷却がされづらい難冷箇所および前記線材均熱部にそれぞれ接続されて前記線材均熱部の冷熱を前記難冷箇所に伝導させるコイル伝導部を備えることを特徴とする請求項6に記載の高温超電導磁石装置。
- 前記高温超電導コイルは、複数のパンケーキコイルから構成されて、
前記コイル伝導部は、隣接する前記パンケーキコイルの接触面に差し込まれることを特徴とする請求項7に記載の高温超電導磁石装置。 - 巻回された高温超電導線材からなる高温超電導コイルを低温に維持するステップと、
前記高温超電導コイルの運転モードを永久電流モードに切り替えるステップと、
巻回されて対向する前記高温超電導線材の間隙のうち少なくとも一部に配置されて前記高温超電導線材を電気的に接続するステップと、を含むことを特徴とする高温超電導磁石消磁方法。
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