JP2018098420A - 超電導線材の接続構造 - Google Patents

超電導線材の接続構造 Download PDF

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Abstract

【課題】接続された超電導線材の接続部を効果的に保護する。
【解決手段】片側の面に超電導導体層3が形成された基材1と、基材を被覆する保護層4,5とを備える超電導線材100の接続構造10において、二本の超電導線材の保護層から露出した超電導導体層を接続する接続部6と、接続部6が固定された溝部211を有する溝付き枠材20とを備えている。
接続部6は溝部211内に埋め込まれた状態で保持されるので、外部に対して機械的強度を向上し、効果的な保護を行うことができる。
【選択図】図3

Description

本発明は、超電導線材の接続構造に関する。
近年、臨界温度(Tc)が液体窒素温度(約77K)よりも高い酸化物超電導線材として、RE系超電導線材が注目されている。RE系超電導体(RE:希土類元素)、例えば化学式YBa2Cu37-yで表されるイットリウム系超電導体(以下、Y系超電導体)が代表的である。RE系超電導線材を、MRIやNMRなどの時間的に安定な磁場が要求される用途に適用する場合、磁場の減衰が極力抑えられる永久電流モードでの運転が有効な選択肢となるが、そのためには超電導コイル間、もしくは超電導コイルと永久電流スイッチの間で10-11Ω以下の接続抵抗で接続する必要がある。
RE系超電導線材は金属基板上にセラミックスからなる酸化物超電導膜が成膜されたのち、銀保護層で覆われた構造を有する。このようなRE系超電導線材同士の接続として最も簡便な方法は半田による接続であるが、その場合10-8Ω程度の接触抵抗が発生してしまい、理想的な永久電流モードとすることは困難であった。
このため、RE系超電導線材で製作された超電導コイル間を低抵抗で接続する方法として、酸化物超電導線材の金属皮膜を除去し、酸化物超電導芯材同士を焼結する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許第3018534号公報
しかしながら、図14に示すように、酸化物超電導線材Lの焼結接続された酸化物超電導膜L1はセラミックスL2を介して接続されているために機械的強度に乏しく、マグネットシステムなどのアプリケーションへの組み上げや、輸送において、曲げや衝撃が加わると破損することがあった。
また、酸化物超電導膜の焼結にあたっては800℃程度の高温を要するため、長尺線材の一部を接続予定部として炉の加熱領域に引き込む必要がある。その場合、コイル全体を焼結炉に入れることはできないので、接続部分のみを長く引き出して焼結させる必要があった。
そして、酸化物超電導膜の焼結接続後に要求の性能が出ない、あるいは破損したなどの問題が生じた場合、接続のやり直しが必要となるが、酸化物超電導膜の焼結接続プロセスが同一の接続部で複数回行われると、超電導線材の接続部における金属基板が熱疲労を起こすため歪みが発生し、結果接続部の超電導特性が劣化することが経験によって見出されている。
そのため接続のやり直しにあたっては、焼結接続プロセスを経た部位を切り捨て、近傍の超電導線材部位を新たに接続予定部として焼結接続を試みることが必要となる。したがって、酸化物超電導膜の接続にあたっては、やり直しの可能性を考慮し、実際に焼結作業に必要となる長さ以上の余長を確保した上で焼結接続に臨むことが必要であった。
一方、RE系超電導線材はテープ形状をしており、特定方向の曲がりや折り曲げに弱いことから、余長部分は破損が生じないように機械的に固定されていることが好ましく、余長の調整にあたっては焼結接続箇所が破損しないよう注意する必要があった。
また、酸化物超電導膜の焼結接続された部位はセラミックスであるために熱伝導率が低く、何らかの原因で常電導状態に転移すると非常に高抵抗となってしまうため、過電流等によって一度電圧が発生し始めると、たちまちにホットスポット化し焼損に至るという問題もあった。
以上のように、本発明は、焼結接続された超電導線材の接続部を効果的に保護する超電導線材の接続構造を提供することをその目的とする。
また、焼結接続された超電導線材の余長部分を好適に保護する超電導線材の接続構造を提供することをさらなる目的とする。
また、焼結接続された超電導線材の接続部分を焼損から好適に保護する超電導線材の接続構造を提供することをさらなる目的とする。
請求項1記載の発明は、
片側の面に超電導導体層が形成された基材と、
前記基材を被覆する保護層とを備える超電導線材の接続構造において、
二本の前記超電導線材の前記保護層から露出した前記超電導導体層を接続する接続部と、
前記接続部が固定された溝部を有する溝付き枠材とを備えていることを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の超電導線材の接続構造において、
前記溝付き枠材は円柱形状部を備え、
前記接続部で接続された前記二本の前記超電導線材が前記円柱形状部に巻線されていることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の超電導線材の接続構造において、
前記二本の前記超電導線材は、前記接続部以外の部分で導通可能に接続されていることを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項2記載の超電導線材の接続構造において、
前記二本の前記超電導線材は、前記接続部以外であって前記溝付き枠材に巻線されている部分で導通可能に接続されていることを特徴とする。
請求項5記載の発明は、請求項3又は4記載の超電導線材の接続構造において、
前記二本の前記超電導線材は、前記接続部以外の部分で、前記二本の前記超電導線材以外の超電導線材により接続されていることを特徴とする。
請求項6記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の超電導線材の接続構造において、
前記溝部に樹脂又は低融点金属を有することを特徴とする。
請求項7記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載の超電導線材の接続構造において、
前記二本の前記超電導線材は、
前記超電導線材の長手方向における前記接続部側に向かう方向が同じ向きになるように接続されていることを特徴とする。
本発明は、溝付き枠材の溝部内に二本の超電導線材の接続部が固定されているので、接続部の周囲が溝部の内壁に囲まれて機械的強度が高く維持され、曲げや衝撃,その他の外力から保護し、破損の発生を効果的に低減することが可能である。
また、溝付き枠材が円柱形状部を備える構成とした場合には、超電導線材を巻き付けにより保持することができ、超電導線材の余長部分を特定方向の曲がりや折り曲げから保護することが可能となる。
また、二本の超電導線材を接続部以外の部分で導通可能に接続する構成とした場合には、接続部において常電導状態への転移が生じた場合に、バイパス接続部に電流を逃がすことができ、接続部のホットスポット化を抑制し、焼損の発生を低減することが可能となる。
RE系超電導線材の構造を示す斜視図である。 第一の実施形態であるRE系超電導線材の接続構造の平面図である。 焼結接続部の周辺の平面図である。 溝付き枠材の斜視図である。 第二の実施形態である超電導コイルを用いた電流システムの概略構成図である。 電流システムの永久電流ループ側の構成を示す概略構造図である。 第一コイルと第二コイルの斜視図である。 接続器の斜視図である。 図9(A)は永久電流スイッチの斜視図、図9(B)は永久電流スイッチの断面図である。 図10(A)は超電導コイルユニットの斜視図、図10(B)はコイルの中心線を通る断面を示す断面図である。 図11(A)は超電導コイルユニットの平面図、図11(B)は部分拡大図である。 焼結接続部の斜視図である。 図13(A)はRE系超電導線材が巻回された状態の溝付き枠材の斜視図、図13(B)はRE系超電導線材が巻回されていない状態の溝付き枠材の斜視図である。 図14(A)は焼結接続された酸化物超電導線材の側面図、図14(B)は斜視図である。
[第一の実施形態]
以下に、本発明を実施するための好ましい第一の実施の形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
本実施形態は、個別に用途が定められた二本の超電導線材としてのRE系超電導線材100を超電導状態で接続可能とするRE系超電導線材の接続構造10に関する。
[RE系超電導線材]
図1は接続の対象となるRE系超電導線材100の構造を示す斜視図である。
RE系超電導線材100は、超電導成膜用基材1(以下、「基材1」とする)の厚み方向の一方の主面(以下、成膜面11という)に、中間層2及び酸化物超電導導体層3、内部保護層4がこの順に積層されており、さらに、基材1の主面とは逆側の面にも内部保護層4aが形成されている。即ち、RE系超電導線材100は、内部保護層4、基材1、中間層2、酸化物超電導導体層3(以下、「超電導導体層3」とする)、内部保護層4aによる積層構造を有しており、さらに、この積層構造の周囲を被覆する外部保護層5(安定化層)を有している。
なお、以下において、内部保護層4,4a及び外部保護層5を総称して「保護層」という場合がある。
また上記図1以外では、RE系超電導線材100の中間層2、内部保護層4及び内部保護層4aの図示は省略する。
基材1は、テープ状の低磁性の金属基板やセラミックス基板が用いられる。金属基板の材料としては、例えば、強度及び耐熱性に優れた、Co、Cu、Cr、Ni、Ti、Mo、Nb、Ta、W、Mn、Fe、Ag等の金属又はこれらの合金が用いられる。特に、耐食性及び耐熱性が優れているという観点からハステロイ(登録商標)、インコネル(登録商標)等のNi基合金、またはステンレス鋼等のFe基合金を用いることが好ましい。
また、これら各種金属材料上に各種セラミックスを配してもよい。また、セラミックス基板の材料としては、例えば、MgO、SrTiO、又はイットリウム安定化ジルコニア等が用いられる。その他にも、サファイアを基材として用いてもよい。
基材1の厚さは50μm程度である(なお、厚さの数値は一例でありこれに限定されない。RE系超電導線材100の他の各層の厚さについても同様である)。
成膜面11は、略平滑な面とされており、例えば成膜面11の表面粗さが10nm以下とされていることが好ましい。
なお、表面粗さとは、JISB-0601-2001において規定する表面粗さパラメータの「高さ方向の振幅平均パラメータ」における算術平均粗さRaである。
中間層2は、超電導導体層3において例えば高い2軸配向性を実現するための層である。このような中間層2は、例えば、熱膨張率や格子定数等の物理的な特性値が基材1と超電導導体層3を構成する超電導体との中間的な値を示す。
また、中間層2は、単層構造であってもよく、多層構造であってもよい。多層構造の場合、その層数や種類は限定されないが、非晶質のGdZr7−δ(δは酸素不定比量)やAl或いはY等を含むベッド層と、結晶質のMgO等を含みIBAD(Ion Beam Assisted Deposition)法により成形された強制配向層と、LaMnO3+δ(δは酸素不定比量)を含むLMO層と、を順に積層した構成となっていてもよい。また、LMO層の上にCeO2等を含むキャップ層をさらに設けてもよい。
上記各層の厚さは、LMO層を30nm、強制配向層のMgO層を40nm、ベッド層のY層を7nm、Al層を80nmとする。
この中間層2の表面には、超電導導体層3が積層している。超電導導体層3は、高温酸化物超電導体、特に銅酸化物超電導体を含んでいることが好ましい。銅酸化物超電導体としては、高温超電導体としてのREBaCu7−δ(以下、RE系超電導体と称す)が好ましい。なお、RE系超電導体中のREは、Y,Nd,Sm,Eu,Gd,Dy,Ho,Er,Tm,YbやLuなどの単一の希土類元素又は複数の希土類元素である。また、δは、酸素不定比量であって、例えば0以上1以下であり、超電導転移温度が高いという観点から0に近いほど好ましい。なお、酸素不定比量は、オートクレーブ等の装置を用いて高圧酸素アニール等を行えば、δは0未満、すなわち、負の値をとることもある。
超電導導体層3の厚さは1μm程度である。
上記超電導導体層3の表面(中間層2とは逆側の面)及び基材1の主面11とは逆側の面には、それぞれ内部保護層4,4aが積層されている。内部保護層4,4aは、良導体の金属層であり、Ag,Au又はCuの内の少なくとも一つを含む金属が望ましい。ここでは、内部保護層4,4aがAgである場合を例示する。
超電導導体層3側の内部保護層4は厚さ2μm程度、基材1側の内部保護層4aは厚さ1.8μm程度であり、基材1側の内部保護層4aの方が薄く形成されている。
外部保護層5は、内部保護層4、基材1、中間層2、超電導導体層3、内部保護層4aからなる積層体の図1における上下の面及び左右の面をRE系超電導線材100の全長に渡って被覆するように形成されている。
この外部保護層5は、上下左右それぞれの厚さが20μm程度で形成される。
この外部保護層5はAgからなる銀安定化層である。また、この安定化層は、単層構造であってもよく、多層構造であってもよい。多層構造の場合、その層数や種類は限定されない。
また、この外部保護層5は、銅から形成した銅安定化層としても良いし、銀安定化層の上に銅安定化層を順に積層した構成となっていてもよい。
[RE系超電導線材の接続構造の概要]
図2はRE系超電導線材の接続構造10の平面図である。
RE系超電導線材の接続構造10(以下、単に「接続構造10」という)は、二本のRE系超電導線材100の保護層から露出した超電導導体層3同士の接続部としての焼結接続部6と、焼結接続部6が埋め込まれた溝部211を有する溝付き枠材20と、片方のRE系超電導線材100の余長部分が巻き付けられた無誘導巻き取り枠材30とを備えている。
[焼結接続部]
図3は焼結接続部6の周辺の平面図である。
接続対象となる二本のRE系超電導線材100は、前述したように、各々が個別に用途(例えば、超電導コイル等)が定められており、その用途に使用されている部分から焼結接続部6を形成するために余長をもって引き出された部分の先端部同士が焼結接続されている。各RE系超電導線材100の余長部分は、焼結接続部6の焼結作業時の高温の影響を避けるために十分な長さと複数回の焼結作業(接続不良が生じた場合には先端の焼結部分を切除して再度焼結作業を行う)を考慮した長さが確保される。
この焼結接続部6は、RE系超電導線材100の各々の接続端部において保護層が一定の長さで除去され、露出状態とされた基材1及び超電導導体層3に対して、各々の先端部の位置を揃えた状態で、超電導導体層3の露出面同士を向かい合わせに貼り合わせた状態で焼結接続を行うことにより形成されている。
また、焼結接続部6において、二本のRE系超電導線材100は、当該RE系超電導線材の長手方向における焼結接続部6側に向かう方向が同じ向きになるように接続されている。
上記RE系超電導線材100の焼結接続には、MOD法(Metal Organic Deposition法/有機金属堆積法)が採用されている。
二本の超電導導体層3の露出面の間にMOD液を充填し、露出面同士を貼り合わせた状態を維持しながら、二本のRE系超電導線材100の接続端部とその周辺部分のみに対して、N+Oガスの雰囲気内で、400℃以上500℃以下の温度範囲で仮焼成を行い、さらに、相互間を加圧しながらAr+Oガスの雰囲気内で、760℃以上800℃以下の温度範囲で本焼成を行った後に、350℃以上500℃以下の温度範囲の酸素の雰囲気下で酸素アニールを行う。
なお、上述のMOD液は、例えば、RE(Y(イットリウム)、Gd(ガドリニウム)、Sm(サマリウム)及びHo(ホルミウム)等の希土類元素)とBaとCuとが約1:2:3の割合で含まれているアセチルアセトナート系MOD溶液が使用される。
これにより、二本のRE系超電導線材100の超電導導体層3同士が超電導状態で接続され、焼結接続部6が形成される。
[溝付き枠材]
図4は溝付き枠材20の斜視図である。
図2〜図4に示すように、溝付き枠材20は、円柱状の円柱形状部21と、円柱形状部21の下部(中心線方向の一端部側)の外周に形成されたフランジ部22とを備えている。
RE系超電導線材100は、極低温下での使用が想定されているので、この溝付き枠材20は、枠の材質はGFRP(Glass Fiber Reinforced Plastics)や銅,アルミなど低温において割れ等が発生し難い材質により一体的に形成されている。
円柱形状部21は、その上面において、外周面から内部に向かって中心から幾分ずれた位置に真っ直ぐな溝部211が形成されており、外周面から溝部211に進入する入り口には角が丸く成形された円弧部212が形成されている。また、その中心部には、円柱形状部21を上下に貫通して、溝付き枠材20を外部に固定するための取付穴25が形成されている。
そして、溝付き枠材20の円柱形状部21に形成された溝部211には、二本のRE系超電導線材100の焼結接続部6が全長に渡って挿入されており、溝部211と焼結接続部6の間には充填剤23が充填され、焼結接続部6は溝部211に埋め込まれた状態となっている。
なお、充填剤23としては、半田等の低融点金属や樹脂(例えば、エポキシ樹脂)、パラフィン等が使用されている。
また、二本のRE系超電導線材100の焼結接続部6以外の余長部分は、円弧部212に沿って湾曲し、なお且つ、フランジ部22の上面において円柱形状部21の外周に巻回されている。なお、円柱形状部21や円弧部212の外径は、RE系超電導線材100の許容される最小曲げ直径を下回らないように設定されている。例えば、RE系超電導線材100の許容される最小曲げ直径が11[mm]であれば、円柱形状部21や円弧部212の外径(半径)は5.5[mm]以上の値に設定されている。
巻回された状態の二本のRE系超電導線材100の外周面側には帯状の絶縁材24が配置され、二本のRE系超電導線材100と共に巻回されている。この帯状の絶縁材24としては、ポリイミドテープやフッ素樹脂テープ、もしくはステンレスなどの高抵抗金属テープが使用されている。
これにより、二本のRE系超電導線材100同士は互いに密着しているが、複数回巻き付けられた二本のRE系超電導線材100は、一周ごとに絶縁が図られ、誘導電流の発生が抑制される構造となっている。
また、二本のRE系超電導線材100には、焼結接続部6以外の部分において、互いの超電導導体層3同士を低抵抗で導通可能に接続するバイパス接続部7が形成されている。このバイパス接続部7は、各RE系超電導線材100の外部保護層5の表面同士を半田等の良導体からなるロウ材で溶接することにより形成されている。
上記接続構造10のように、一方のRE系超電導線材100から他方のRE系超電導線材100に対して焼結接続部6を介して導通接続される構造の場合、何らかの原因により、焼結接続部6における超電導導体層3が超電導状態から常電導状態に転移すると、高抵抗となり過電流による発熱する。そして、焼結接続部6は、超電導導体層3の周囲に金属の保護層4,5が存在しないので、電流及び熱の逃げ場がなく、ホットスポット化して焼損するおそれがある。
このため、焼結接続部6以外の部分にバイパス接続部7を設けることで、当該バイパス接続部7を介して電流を流し、焼結接続部6でのホットスポット化の抑制を図っている。
上記目的により形成されるバイパス接続部7は、十分に低抵抗且つ高電流容量であることが望まれる。一方、RE系超電導線材100の基材1の材料に前述したNi合金等を使用している場合には、比較的、高抵抗となるので、バイパス接続部7において、一方のRE系超電導線材100の超電導導体層3と他方のRE系超電導線材100の超電導導体層3との間に基材1が存在しないように、外部保護層5の表面であって基材1に対する超電導導体層3側の面を互いにバイパス接続することが望ましい。
なお、図2では、バイパス接続部7が溝付き枠材20に巻回されたRE系超電導線材100の巻線部内に形成されている場合を例示したが、二本のRE系超電導線材100における溝付き枠材20に巻回されていない部分にバイパス接続部7を形成しても良い。その場合、バイパス接続部7を除く、二本のRE系超電導線材100における溝付き枠材20に巻回されていない部分は、相互間を絶縁することが望ましい。相互間の絶縁は、例えば、前述した絶縁材24を介挿することが望ましい。
また、溝付き枠材20に巻回された二本のRE系超電導線材100の余長部分は、巻回状態を維持するために、エポキシ等の硬化性樹脂等で固定しても良い。或いは、巻回された二本のRE系超電導線材100の外周に嵌合するC字状の枠で固定しても良い。
[無誘導巻き取り枠材]
無誘導巻き取り枠材30は、溝付き枠材20において巻回された二本のRE系超電導線材100の余長部分の長さが異なる場合や内側に巻かれた一方のRE系超電導線材100がその径差により余長部分を溝付き枠材20に巻ききれない場合に、一方のRE系超電導線材100のみ余った余長部分をさらに巻き付けるための枠材である。
図2に示すように、無誘導巻き取り枠材30は、円柱状の円柱形状部31と、円柱形状部31の下部(中心線方向の一端部側)の外周に形成されたフランジ部32とを備えている。また、その中心部には、円柱形状部31を上下に貫通して、無誘導巻き取り枠材30を外部に固定するための取付穴35が形成されている。
極低温下での使用を想定して、この無誘導巻き取り枠材30も、GFRPや銅、アルミ等により一体的に形成されている。
円柱形状部31は、その外周の一部が切り欠かれた形状であり、当該切り欠き部分には一方のRE系超電導線材100を折り返すための軸部33が形成されている。
即ち、溝付き枠材20に巻ききれない余長部分を生じたRE系超電導線材100は、当該巻ききれない余長部分の中間部分が軸部33の外周に巻かれるように折り返して、円柱形状部31の外周面に二重にRE系超電導線材100の巻き付けが行われている。
二重で巻回されたRE系超電導線材100の外周面側にも、前述した絶縁材24と同じ帯状の絶縁材34が配置され、二重のRE系超電導線材100と共に巻回されている。
これにより、二重で巻回されたRE系超電導線材100も一周ごとに絶縁が図られ、誘導電流の発生を抑制することができる。
なお、無誘導巻き取り枠材30に巻回されたRE系超電導線材100の余長部分も、巻回状態を維持するために、エポキシ等の硬化性樹脂等やC字状の枠で固定しても良い。
[接続構造の技術的効果]
上記RE系超電導線材の接続構造10は、溝付き枠材20の溝部211内に二本のRE系超電導線材100の焼結接続部6が埋め込まれているので、焼結接続部6の周囲が溝部211の内壁に囲まれて機械的強度が高く維持され、曲げや衝撃,その他の外力から保護し、破損の発生を効果的に低減することが可能である。
また、溝付き枠材20は円柱形状部21を備え、焼結接続部6で接続された二本のRE系超電導線材100が円柱形状部21に巻線されているので、焼結接続部6の焼結作業のために長く引き出されたRE系超電導線材100の余長部分を巻回することにより、当該余長部分を特定方向の曲がりや折り曲げから保護することが可能となる。
また、RE系超電導線材100の余長部分を巻回により安定的に拘束することができ、焼結接続部6側への応力や荷重が加わることを抑制し、焼結接続部6の保護を図ることが可能である。
また、円柱形状部21の溝部211の入り口には円弧部212が形成されているので、溝部211を起点として巻回されるRE系超電導線材100に加わる曲げを緩和し、RE系超電導線材100の保護を図ることが可能となる。
また、接続構造10において、二本のRE系超電導線材100は、焼結接続部6以外の部分でバイパス接続部7により導通可能に接続されているので、何らかの原因により、焼結接続部6における超電導導体層3が超電導状態から常電導状態に転移した場合に、バイパス接続部7に電流を逃がすことができ、焼結接続部6のホットスポット化を抑制し、焼損の発生を低減することが可能となる。
特に、バイパス接続部7を二本のRE系超電導線材100が円柱形状部21により安定的に拘束された巻線部内に設けたことにより、バイパス接続部7を応力や荷重から保護し、破損の発生を低減することが可能となる。
また、接続構造10は、無誘導巻き取り枠材30を備えるので、二本のRE系超電導線材100の内の一方のみが他方よりも長い余長部分を有する場合に、当該余長部分を巻回した状態で拘束することができ、かかる余長部分も特定方向の曲がりや折り曲げから保護することが可能となる。
[第二の実施形態]
前述したRE系超電導線材の接続構造10を適用した超電導コイルを用いた電流システム200について図面を参照して説明する。
[超電導コイルを用いた電流システム]
図5は超電導コイルを用いた電流システム200の概略構成図である。
上記超電導コイルを用いた電流システム200(以下、「電流システム200」とする)は、直列接続された複数(n個)の超電導コイル40と、これらの超電導コイル40に電流を流して励磁ループErを形成する電源201と、直列接続された複数(n個)の超電導コイル40に対して電源201が介在しない永久電流ループPrを形成する永久電流スイッチ60とを備えている。
そして、上記永久電流ループPrを構成する永久電流スイッチ60及び複数の超電導コイル40は全てRE系超電導線材100により接続されており、これらにはRE系超電導線材100を超電導状態とする極低温に冷却するための図示しない冷凍機が併設されている。
また、上記永久電流ループを構成する永久電流スイッチ60及び複数の超電導コイル40の各部の接続部に、前述したRE系超電導線材の接続構造10が適用されている。
上記電流システム200は、まず電源201により各超電導コイル40に電流を流し、励磁ループErを形成する。
そして、複数の超電導コイル40と永久電流スイッチ60を、これらが超電導状態となる温度まで冷却すると、電源201側の通電を切断する。これにより、複数の超電導コイル40と永久電流スイッチ60との間で永久電流ループPrを形成することができる。
この永久電流スイッチ60と超電導コイル40による永久電流ループPrが前述した接続構造10によって常電導抵抗を経ることなく成立し、時間的に安定性の高い永久電流システムを製作することができる。
このような超電導コイルを用いた電流システム200の各構成について以下に説明する。
[超電導コイル]
図6は電流システム200の永久電流ループPr側の構成を示す概略構造図である。
各超電導コイル40はRE系超電導線材100を巻回したソレノイドコイルであり、巻き線であるRE系超電導線材100の一端部がコイル内周側から引き出され、RE系超電導線材100の他端部はコイル外周側から引き出されている。
そして、図示のように、複数の超電導コイル40(第一コイル401〜第nコイル40nとする)は、同心であって内側から半径方向外側に向かって順番に配置されている。即ち、外側となる超電導コイル40ほど径が大きくなり、内側の超電導コイル40を内周側に収容している。
ここで、最も内側の第一コイル401とその外側に配置された第二コイル402とを例にして、超電導コイル40の構造をより詳細に説明する。図7は第一コイル401と第二コイル402の斜視図である。
図示のように、第一コイル401は、円筒状のコイル巻枠411と、内側から複数の層をなしてコイル巻枠411に巻回されるRE系超電導線材100と、図示しない冷凍機に接続され、巻回されたRE系超電導線材100の冷却を行う金属スリーブ421とを備えている。
また、第二コイル402は、金属スリーブ421の外周に配置された円筒状のコイル巻枠412と、内側から複数の層をなしてコイル巻枠411に巻回されるRE系超電導線材100と、巻回されたRE系超電導線材100の冷却を行う図示しない金属スリーブとを備えている。
上記コイル巻枠411,412は、枠の材質はGFRPや銅,アルミなど低温において割れ等が発生し難い材質により一体的に形成されている。ただし、良導体を巻枠として使用する場合は渦電流対策として巻枠の軸方向に切れ目を入れておくことが望ましい。
上記各コイル401及び402の金属スリーブは、伝熱性の高い無酸素銅から形成されている。そして、金属スリーブは、コイル巻枠411,412及び巻回されたRE系超電導線材100と接触する構造であり、これらとの接触面にはグリースが塗布され、伝熱性を高めてコイル巻枠411,412及び巻回されたRE系超電導線材100の冷却効率が高められている。また、金属スリーブにおけるRE系超電導線材100との接触面には絶縁のためのポリイミドフィルムが貼着されている。
第一コイル401のRE系超電導線材100の一端部はコイルの内周側から引き出され(図7では図示略)、電源201側と永久電流スイッチ60側とに分岐している。また、当該RE系超電導線材100の他端部はコイルの外周側から図7における上方(図6では下方)に引き出されている。
第二コイル402のRE系超電導線材100の一端部はコイルの内周側から図7における上方(図6では下方)に引き出されており、当該RE系超電導線材100の他端部はコイルの外周側から図7における上方(図6では下方)に引き出されている(図示略)。
そして、第一コイル401の外周に引き出されたRE系超電導線材100の他端部と第二コイル402の内周に引き出されたRE系超電導線材100の一端部とが、前述したRE系超電導線材の接続構造10を適用した接続器110(後述する)により接続されている。
なお、図7における符号112は、第一コイル401のRE系超電導線材100の他端部と第二コイル402のRE系超電導線材100の一端部とをそれぞれ個別に導く柱状ガイド(後述)である。
なお、第二コイル402よりも外側の他の超電導コイル40も、第二コイル402と同様に、RE系超電導線材100が巻回されたコイル巻枠と金属スリーブとを備え、巻回されたRE系超電導線材100の一端部と他端部がいずれも図7における上方(図6では下方)に引き出されており、隣り合う超電導コイル40同士で巻回されたRE系超電導線材100の一端部と他端部とが接続器110(後述する)により接続されている。
また、最も外側に配置された第nコイル40nは、RE系超電導線材100の一端部はコイルの内周側から図7における上方(図6では下方)に引き出されており、当該RE系超電導線材100の他端部はコイルの外周側から引き出され、電源201側と永久電流スイッチ60側とに分岐している。
そして、第二コイル402〜第nコイル40nについても、隣り合うコイル同士でRE系超電導線材100の一端部と他端部とが接続器110により接続されている。
[接続器]
図8は接続器110の斜視図である。
この接続器110は、二つの超電導コイル40から引き出されたRE系超電導線材100の焼結接続部6を保持する接続構造10と、当該接続構造10の各構成を支持する冷却板111と、冷却板111と一体的に形成され、当該冷却板111から延出された二本の柱状ガイド112とを備えている。
冷却板111及び柱状ガイド112は伝熱性の高い無酸素銅から形成されており、図示しない冷凍機に接続され、RE系超電導線材100の冷却を行う。
冷却板111は、円形の平板であり、その上面には、接続構造10が取り付けられている。なお、冷却板111の形状は円形に限らず任意の形状とすることができる。
接続構造10の溝付き枠材20及び無誘導巻き取り枠材30は、冷却板111との接触面にグリースが塗布され、これらの枠材20,30に巻回されたRE系超電導線材100の冷却効率が高められている。
また、溝付き枠材20及び無誘導巻き取り枠材30は、それぞれの取付穴25,35を通じて図示しないボルトによって冷却板111に締結固定されている。ボルトを緩めることでそれぞれの枠材20,30はボルトを中心に回転させることができ、巻回するRE系超電導線材100の余長部分の長さに応じて巻き取り量を調節することができる。
二つの超電導コイル40から引き出されたRE系超電導線材100の余長部分は、個別に各柱状ガイド112に螺旋状に巻き付けられて、冷却板111上の接続構造10において焼結接続部6により焼結接続されている。
なお、各RE系超電導線材100の余長が調節されて各部に巻き付けられた後には、当該RE系超電導線材100及び各枠材20,30は剥離しないようにエポキシ樹脂等で固めることが望ましい。
各柱状ガイド112と各RE系超電導線材100との間にもグリースを塗布して、冷却効率を高めても良い。
また、冷却板111及び柱状ガイド112の表面において、RE系超電導線材100と接触する部分には、RE系超電導線材100と絶縁を図るためのポリイミドフィルムが貼着されている。
これら柱状ガイド112は、より長く延出することにより、各超電導コイル40からの磁場の影響を低減することが可能である。磁場の影響が大きくなると、RE系超電導線材100に流すことが可能な電流値が低減し、また磁場の影響によってRE系超電導線材100が巻回位置から剥離を生じ得るが、柱状ガイド112をより長く延出することで、これらを抑制することが可能となる。
上記接続器110により、各超電導コイル40のRE系超電導線材100同士を超電導接続が可能な焼結接続により接続することができる。
また、焼結接続部6は溝付き枠材20により機械的強度が確保された状態で安定的に接続状態を維持し、故障や破損を低減することができる。
さらに、各超電導コイル40のRE系超電導線材100の余長部分は各枠材20,30により巻回状態で保持され、捻れや曲がり等から保護され、安定的に接続状態を維持し、故障や破損を低減することができる。
[永久電流スイッチ]
図9(A)は永久電流スイッチ60の斜視図、図9(B)は永久電流スイッチ60の断面図である。
永久電流スイッチ60は、第一コイル401の内周側から引き出されたRE系超電導線材100の一端部と、第nコイル40nの外周側から引き出されたRE系超電導線材100の他端部とを接続するように設けられ、これにより形成される無端環状のRE系超電導線材100による回路に流れる永久電流ループPrの維持と解除を切り替えるためのスイッチである。
この永久電流スイッチ60は、第一コイル401と第nコイル40nから個別に引き出されたRE系超電導線材100同士を焼結接続により接続して保持する接続構造10と、当該接続構造10の各構成を支持する冷却板61と、冷却板61と一体的に形成され、当該冷却板61から立設された支柱62と、支柱62の外周面上に設けられた熱抵抗部63と、支柱62と一体的に形成され、当該支柱62の上端部から延出された二本の柱状ガイド64と、支柱62の熱抵抗部63の外周に巻回されたRE系超電導線材100を加熱する加熱部65とを備えている。
冷却板61、支柱62及び柱状ガイド64は、伝熱性の高い無酸素銅から一体的に形成されており、冷却板61が図示しない冷凍機に接続され、RE系超電導線材100の冷却を行う。
冷却板61は、円形の平板であり、その上面には、接続構造10が取り付けられている。なお、この冷却板61も円形に限らず任意の形状とすることができる。
接続構造10の溝付き枠材20及び無誘導巻き取り枠材30は、冷却板61との接触面にグリースが塗布され、冷却効率が高められている。
また、溝付き枠材20及び無誘導巻き取り枠材30が取付穴25,35を通じてボルトで締結固定され、RE系超電導線材100の巻き取り量が調節可能である点は前述した接続器110と同一である。
第一コイル401及び第nコイル40nから引き出されたそれぞれのRE系超電導線材100の余長部分は、個別に各柱状ガイド64に螺旋状に巻き付けられ、さらに、RE系超電導線材100は二本並んだ状態で支柱62の外周に設けられた熱抵抗部63の外周に螺旋状に巻き付けられて、冷却板61上の接続構造10において焼結接続部6により焼結接続されている。
各柱状ガイド64と各RE系超電導線材100との間にもグリースを塗布して、冷却効率が高めても良い。
また、冷却板61及び柱状ガイド64の表面において、RE系超電導線材100と接触する部分には、RE系超電導線材100と絶縁を図るためのポリイミドフィルムが貼着されている。
また、各部に巻き付けられたRE系超電導線材100は、各枠材20,30共にエポキシ樹脂により固定される。
熱抵抗部63は、SUS316等の高熱抵抗金属やFRP等の高熱抵抗材料により形成されている。そして、熱抵抗部63の周囲を囲繞するように加熱部65が設けられており、各RE系超電導線材100の熱抵抗部63に巻き付けられた部分は、その外周側から加熱部65のヒーターによって加熱することができるようになっている。また、熱抵抗部63により、支柱62に熱が伝わりにくくしているので、RE系超電導線材100を効果的に加熱することができる。
永久電流スイッチ60は、冷却板61を冷凍機により冷却することで、永久電流スイッチ60全体及びRE系超電導線材100を冷却することができ、RE系超電導線材100を超電導状態とすることができる。
そして、この超電導状態により、全ての超電導コイル40のRE系超電導線材100が無端環状に接続され、永久電流ループPrを形成することができる。
また、永久電流ループPrを解除するためには、加熱部65のヒーターによってRE系超電導線材100の温度を高め、超電導状態から常電導状態に切り替える。これにより、各RE系超電導線材100の熱抵抗部63に巻き付けられた部分に大きな常電導抵抗が生じ、永久電流ループPrが解除される。
このようにして、永久電流スイッチ60は、第一コイル401の内周側から引き出されたRE系超電導線材100の一端部と、第nコイル40nの外周側から引き出されたRE系超電導線材100の他端部との接続状態と切断状態との切り替えを行う。
上記原理により永久電流ループPrの電流を切断するので、RE系超電導線材100における熱抵抗部63に巻回された余長部分による常電導抵抗を十分に確保する必要がある。このため、RE系超電導線材100における熱抵抗部63に巻回された余長部分の線材長及びターン数は十分に増やす必要があるが、これにより、永久電流スイッチ60が大きなインダクタンスを持ってしまうという弊害も生じ得る。
従って、図9(A)に示すように、互いに逆方向に電流が流れる二本のRE系超電導線材100が並んだ状態で周ごとに隙間を空けて螺旋状態に巻くことにより、無誘導巻き状態となる。これにより、永久電流スイッチ60のインダクタンスを低減している。
また、永久電流スイッチ60は、二つの超電導コイル40から引き出された二本のRE系超電導線材100を加熱部65が設けられた熱抵抗部63に巻回し、その先端部を接続構造10により接続する構成なので、二つの超電導コイル40から引き出された二本のRE系超電導線材100を一つの接続構造10で接続することが可能であり、永久電流スイッチ60の構成を簡易にし、部品点数などの低減を実現している。
[第三の実施形態]
前述したRE系超電導線材の接続構造10とは一部構成が異なる他の実施形態としてのRE系超電導線材の接続構造10A(以下、「接続構造10A」とする)を適用した超電導コイルユニット300について図面を参照して説明する。
[超電導コイルユニットの概略構成]
図10(A)は超電導コイルユニット300の斜視図、図10(B)はコイルの中心線を通る断面を示す断面図、図11(A)は超電導コイルユニット300の平面図、図11(B)は部分拡大図である。
超電導コイルユニット300は、コイル半径方向に巻回されたRE系超電導線材100がコイル軸方向に積層された、いわゆるパンケーキコイル301が二つ直列に接続されてなるダブルパンケーキコイル302を二組備え、さらに、これら二組のダブルパンケーキコイル302を格納保持する保持枠310と、二組のダブルパンケーキコイル302から個別に引き出されたRE系超電導線材100の余長部分の先端部を焼結接続する接続構造10Aと、接続構造10Aを支持する支持板320とを備えている。
なお、以下の説明において、前述した接続構造10と同一の構成については同符号を付して重複する説明は省略する。
[ダブルパンケーキコイル]
ダブルパンケーキコイル302を構成する二つのパンケーキコイル301は、一つのコイル巻枠303にその中心線方向に二つ並んだ状態で配置されている。また、これら二つのパンケーキコイル301を形成するRE系超電導線材100は最内周部でつながっており、二つのパンケーキコイル301は一本のRE系超電導線材100から形成されている。
そして、接続される二組のダブルパンケーキコイル302は片方が超電導層が内側となるように巻線され、もう片方が超電導層が外側となるように巻線されている。
[保持枠]
保持枠310は、一つのダブルパンケーキコイル302をその外周及びコイル中心線方向の両側から囲繞する二つのケース311が同心で並んで連接して構成されている。
また、保持枠310は、各ダブルパンケーキコイル302を形成するRE系超電導線材100の両端部を外部に引き出すスリット状の開口部312が形成されている。
なお、開口部312の縁部は、周面形状に形成され、引き出されるRE系超電導線材100が許容される最小曲げ半径以下で曲げられないように保護している。
開口部312を通じて、二つのダブルパンケーキコイル302からそれぞれ引き出された二本のRE系超電導線材100の一端部は、いずれも、平行な状態を維持しつつ、保持枠310の外周面を周回して反対側に回り込み、保持枠310に一体的に取り付けられた支持板320の片面に支持された接続構造10Aにおいて接続されている。
これら保持枠310及び支持板320は、例えば、枠の材質はGFRP(Glass Fiber Reinforced Plastics)や銅,アルミなど低温において割れ等が発生し難い材質により一体的に形成されている。
なお、二つのダブルパンケーキコイル302からそれぞれ引き出された二本のRE系超電導線材100の他端部は、開口部312から引き出され、超電導コイルの用途に応じて、他の構成と接続される。
[支持板]
支持板320は、コイル中心線方向に対して垂直となる平板であって、二つのダブルパンケーキコイル302からそれぞれ引き出された二本のRE系超電導線材100の他端部が平行且つエッジワイズ方向に曲がりを生じないように、保持枠310に対して、コイル中心線方向について、当該支持板320の片面(接続構造10Aの支持面)の位置が、支持板320に近い方のRE系超電導線材100の当該支持板320側の側端部の位置と一致するように配置されている。
[RE系超電導線材の接続構造]
接続構造10Aは、二つのダブルパンケーキコイル302からそれぞれ引き出された二本のRE系超電導線材100の一端部において保護層から露出した超電導導体層3同士を別のRE系超電導線材100Aにより接続する焼結接続部6Aと、焼結接続部6Aが埋め込まれた溝部211Aを有する溝付き枠材20Aと、片方のRE系超電導線材100の余長部分が巻き付けられた無誘導巻き取り枠材30とを備えている。
[焼結接続部]
図12は焼結接続部6Aの斜視図である。
二本のRE系超電導線材100は、それぞれのダブルパンケーキコイル302において、基材1に対して超電導導体層3が半径方向外側となる向きと内側となる向きとで個別に巻回されており、保持枠310の開口部312から引き出される際に一方のRE系超電導線材100の向きが反転し、両方とも超電導導体層3が半径方向外側となる向きとなる。そして、接続構造10側まで引き出された二本のRE系超電導線材100の余長部分は、いずれも基材1について同一面側に超電導導体層3が配置されている。そして、各RE系超電導線材100の保護層を除去して露出した状態の超電導導体層3を別のRE系超電導線材100Aがブリッジ接続している。
別のRE系超電導線材100Aは、二本のRE系超電導線材100と構造が同一であり、これら二本のRE系超電導線材100に直交する方向に延在し、二本のRE系超電導線材100の超電導導体層3に懸架された状態で接続されている。
別のRE系超電導線材100Aは、その両端部において保護層が除去されて超電導導体層3が露出し、両端部で露出したそれぞれの超電導導体層3が二本のRE系超電導線材100の超電導導体層3に対向する向きで、個別にMOD法により焼結接続されている。
[溝付き枠材]
図13(A)はRE系超電導線材100が巻回された状態の溝付き枠材20Aの斜視図、図13(B)はRE系超電導線材100が巻回されていない状態の溝付き枠材20Aの斜視図である。
これらの図に示すように、溝付き枠材20Aは、円柱状の円柱形状部21Aと、円柱形状部21Aの外周面の中心線方向中央部にフランジ部22Aとを備えている。
そして、この溝付き枠材20Aも、枠の材質はGFRPや銅,アルミなど低温において割れ等が発生し難い材質により一体的に形成されている。
円柱形状部21Aはその中心線方向が、ダブルパンケーキコイル302のコイル中心線方向と平行となる向きで支持板320の片面上において支持されている。なお、円柱形状部21Aは、その中心を貫通形成された取付穴25Aに通されるボルトで締結固定され、回転調節可能である点は前述した溝付き枠材20と同じである。
円柱形状部21Aは、その片面から裏面まで貫通した真っ直ぐなスリット状の溝部211Aが形成されており、前述した焼結接続部6Aは溝部211A内に挿入されると共に、その隙間に充填剤23が充填され、焼結接続部6Aは溝部211Aに埋め込まれた状態となっている。
そして、焼結接続部6Aで接続された二本のRE系超電導線材100は、それぞれフランジ部22Aの両側において、円柱形状部21Aの外周面上に巻回されている。なお、溝部211Aの入り口には、円弧部212Aが形成され、各RE系超電導線材100は、許容される曲げ径よりも小さい曲げが生じないようになっている。
巻回された状態の二本のRE系超電導線材100の外周面側には絶縁材24が配置され、二本のRE系超電導線材100と共に巻回されている。これにより、複数回巻き付けられた二本のRE系超電導線材100は、一周ごとに絶縁が図られ、誘導電流の発生が抑制される構造となっている。
また、二本のRE系超電導線材100には、焼結接続部6A以外の部分において、互いの超電導導体層3同士を低抵抗で導通可能に接続するバイパス接続部7Aが形成されている。このバイパス接続部7Aは、隙間を空けて並んだ二本のRE系超電導線材100の全幅に等しい幅(溝付き枠材20Aの幅と等しい幅)であって長さが短いRE系超電導線材100Bが二本のRE系超電導線材100の外周面に跨がって表面同士を半田等の良導体からなるロウ材で溶接することにより接続されている。
なお、RE系超電導線材100Bは、RE系超電導線材100と同一の層構造である。
そして、二本のRE系超電導線材100は、いずれも、超電導導体層3が基材1に対して外側を向いた状態で溝付き枠材20Aに巻回されており、RE系超電導線材100Bは基材1に対して超電導導体層3がRE系超電導線材100側となるように接続されている。これにより、二本のRE系超電導線材100の超電導導体層3とRE系超電導線材100Bの超電導導体層3との間に基材1が介在しない状態となり、焼結接続部6Aに常電導状態の転移が発生したときに、一方のRE系超電導線材100からRE系超電導線材100Bを通じて他方のRE系超電導線材100にバイパス電流が流れ、焼結接続部6Aの焼損を防ぐことができる。
なお、溝付き枠材20Aに巻回された二本のRE系超電導線材100の余長部分は、巻回状態を維持するために、エポキシ等の硬化性樹脂等で固定しても良い。或いは、巻回された二本のRE系超電導線材100の外周に嵌合するC字状の枠で固定しても良い。
また、溝付き枠材20AもRE系超電導線材100の巻き取り後は、エポキシ樹脂により支持板320に固定しても良い。
[無誘導巻き取り枠材]
無誘導巻き取り枠材30は、前述したものと同一である。この無誘導巻き取り枠材30は、一方のダブルパンケーキコイル302から引き出されたRE系超電導線材100の余長部分の長さがもう一方のRE系超電導線材100の余長部分の長さよりも長くなった場合に、その差分を巻回し、当該RE系超電導線材100を変形等から保護する。
なお、無誘導巻き取り枠材30に巻回されたRE系超電導線材100の余長部分もエポキシ等の硬化性樹脂等で固定したり、C字状の枠で固定しても良い。
また、無誘導巻き取り枠材30もRE系超電導線材100の巻き取り後は、エポキシ樹脂により支持板320に固定しても良い。
[接続構造の技術的効果]
上記RE系超電導線材の接続構造10Aは、接続構造10と同一の技術的効果を備えると共に、その溝付き枠材20Aは、二本平行に引き出されたRE系超電導線材100の焼結接続部6Aを溝部211A内で機械的強度を高く維持して保護することが可能である。
また、溝付き枠材20Aは円柱形状部21Aにより二本のRE系超電導線材100がフランジ部22Aの両側で個別に巻線されているので、二本が平行に引き出されたRE系超電導線材100の余長部分を曲がりや折り曲げから保護することが可能となる。
また、接続構造10Aは、超電導コイルユニット300のように、並べて保持された二つのダブルパンケーキコイル302のRE系超電導線材100を焼結接続する場合にも焼結接続部6A及びRE系超電導線材100の余長部分を効果的に保護することができる。
また、接続構造10において、二本のRE系超電導線材100は、他のRE系超電導線材100Aのブリッジ接続により焼結接続を行っているので、二本のRE系超電導線材100が互いの平面を対向状態で密接させて接続することができないような配置、例えば、二本のRE系超電導線材100はその幅方向に平行に並んで離れて配置されているような場合でも、焼結接続を行うことが可能である。
1 超電導成膜用基材
3 酸化物超電導導体層
4 内部保護層
5 外部保護層
6,6A 焼結接続部(接続部)
7,7A バイパス接続部
10,10A 接続構造
20,20A 溝付き枠材
21,21A 円柱形状部
22,22A フランジ部
23 充填剤
24 絶縁材
30 無誘導巻き取り枠材
40 超電導コイル
60 永久電流スイッチ
100,100A,100B RE系超電導線材
110 接続器
200 電流システム
211,211A 溝部
300 超電導コイルユニット
302 ダブルパンケーキコイル

Claims (7)

  1. 片側の面に超電導導体層が形成された基材と、
    前記基材を被覆する保護層とを備える超電導線材の接続構造において、
    二本の前記超電導線材の前記保護層から露出した前記超電導導体層を接続する接続部と、
    前記接続部が固定された溝部を有する溝付き枠材とを備えていることを特徴とする超電導線材の接続構造。
  2. 前記溝付き枠材は円柱形状部を備え、
    前記接続部で接続された前記二本の前記超電導線材が前記円柱形状部に巻線されていることを特徴とする請求項1に記載の超電導線材の接続構造。
  3. 前記二本の前記超電導線材は、前記接続部以外の部分で導通可能に接続されていることを特徴とする請求項1又は2記載の超電導線材の接続構造。
  4. 前記二本の前記超電導線材は、前記接続部以外であって前記溝付き枠材に巻線されている部分で導通可能に接続されていることを特徴とする請求項2記載の超電導線材の接続構造。
  5. 前記二本の前記超電導線材は、前記接続部以外の部分で、前記二本の前記超電導線材以外の超電導線材により接続されていることを特徴とする請求項3又は4記載の超電導線材の接続構造。
  6. 前記溝部に樹脂又は低融点金属を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の超電導線材の接続構造。
  7. 前記二本の前記超電導線材は、
    前記超電導線材の長手方向における前記接続部側に向かう方向が同じ向きになるように接続されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の超電導線材の接続構造。
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