JP2015178646A - 低硫鋼の溶製方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 マンガン酸化物を溶鋼成分調整用の安価なマンガン源として使用し、且つ、高い脱硫反応効率で脱硫処理して低硫鋼を安価に溶製する。【解決手段】 本発明の低硫鋼の溶製方法は、転炉から出鋼された溶鋼を取鍋精錬炉1にて脱硫処理し、その後、RH真空脱ガス装置にて前記溶鋼に減圧下での精錬を施して低硫鋼を溶製する方法において、転炉から取鍋2に溶鋼9を出鋼する際に、溶鋼にアルミニウムを添加し、溶鋼中の溶存アルミニウム濃度が0.01質量%以上となるように溶鋼を脱酸し、取鍋精錬炉では、精錬開始から精錬終了までの精錬時間の1/3の時間が経過するまでに、溶鋼へマンガン含有量が35質量%以上のマンガン酸化物をマンガン純分で溶鋼トンあたり1kg以上添加する。【選択図】 図1

Description

本発明は、転炉と取鍋精錬炉とRH真空脱ガス装置との組み合わせ、または、転炉とRH真空脱ガス装置との組み合わせによって低硫鋼を溶製する方法に関し、詳しくは、溶鋼成分調整用のマンガン源としてマンガン酸化物を使用し、高い脱硫反応効率を維持して安価に低硫鋼を溶製する方法に関する。
近年、鋼の高付加価値化や鉄鋼材料の使用用途拡大などに伴う材料特性向上のために、不純物の少ない高純度鋼製造の要求が増加している。特に、鉄鋼材料の靭性を害する元素である硫黄(S)の含有量が少ない低硫鋼の要求が高い。
硫黄含有量の少ない鋼は、高炉から出銑された溶銑を脱硫処理し、その後、この溶銑を転炉で脱炭精錬して製造される。但し、溶銑段階で硫黄を低減しても転炉精錬中に硫黄がピックアップするので、例えば、硫黄含有量の規格値が0.0035質量%以下のような低硫鋼は、溶銑段階の脱硫処理だけでは安定して製造することは困難である。そこで、高級電磁鋼板やラインパイプ用鋼材などの低硫鋼の製造の際には、転炉での精錬後に、取鍋精錬炉を用いて溶鋼段階でも脱硫処理が行われてきた。
しかし、取鍋精錬炉は減圧下での精錬機能を有しておらず、脱水素などの脱ガス処理が必要な場合には、取鍋精錬炉とRH真空脱ガス装置などの真空精錬炉との双方で精錬しなければならない。これにより、溶鋼温度の低下、作業能率の低下及び出鋼から鋳造までのリードタイムの延長などの操業上の問題のみならず、2つの二次精錬炉が必要であるという設備上の問題も生じる。そこで、二次精錬炉の統合と二次精錬工程の簡略化とを目的として、真空精錬炉で脱硫処理する方法が多数提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
また、ラインパイプ用鋼材のように、低硫化と同時に多くの合金成分を添加する必要のある鋼種も多い。特にマンガン含有量が0.3質量%以上の鋼種においては、取鍋精錬炉やRH真空脱ガス装置での精錬時に、高炭素フェロマンガンなどのマンガン系合金鉄や金属マンガンを添加してマンガン濃度を調整する処理が一般的である(例えば、特許文献2を参照)。一方で、マンガン系合金鉄や金属マンガンを用いた場合には、それらの価格が高く、製造コストが高くなるという問題がある。
安価なマンガン源としてマンガン鉱石(Mn鉱石)が周知であり、転炉での溶銑の脱炭精錬時に、転炉内にマンガン鉱石を投入してマンガン鉱石を還元する技術があるが、転炉での脱炭精錬では、スラグ量や溶鋼中の溶存酸素濃度の関係から、マンガン(Mn)の歩留りが決まってしまい、出鋼時点での溶鋼のマンガン濃度を十分に高めることはできない。また、マンガン濃度を高めるためにマンガン鉱石の添加量を増加した場合には、温度ロスが大きくなるなどのデメリットが生じる。
また更に、マンガン鉱石などのマンガン酸化物をRH真空脱ガス装置で添加する技術が開示されているが(例えば、特許文献3を参照)、この技術では、マンガン酸化物は、主に、RH真空脱ガス装置での脱炭のための酸素源、つまり、脱炭促進を目的として添加されている。脱炭反応は酸化反応であるのに対して脱硫反応は還元反応であるので、低硫鋼の溶製時に、安価なマンガン源としてマンガン鉱石などのマンガン酸化物を使用した場合には、マンガン酸化物の添加によって溶鋼の酸素ポテンシャルが上昇し、脱硫反応が阻害される虞がある。
特開平05−171253号公報 特開平04−088114号公報 特開昭63−293109号公報
本発明は、上記従来技術の問題点を解決することを目的としてなされたものであり、安価なマンガン酸化物を溶鋼成分調整用のマンガン源として使用し、且つ、高い脱硫反応効率で脱硫処理して低硫鋼を安価に溶製する方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するべく、研究・検討を重ねた。その結果、溶鋼の脱硫反応を阻害することなく、安価なマンガン源としてマンガン酸化物を用いるためには、マンガン酸化物の成分及び添加時期が重要であることがわかった。
具体的には、転炉から出鋼された溶鋼を取鍋精錬炉で脱硫処理して低硫鋼を溶製する場合、取鍋精錬炉での脱硫処理の初期は、フラックスの溶融が進行する期間であり、脱硫反応速度は遅く、溶鋼中の硫黄濃度は高めである。この脱硫処理初期にマンガン酸化物を添加した場合、フラックスの溶融進行とともに溶鋼中のマンガン濃度の増加が確認できた。その後、脱硫反応が進行し、マンガン酸化物を添加しない場合と同じ処理時間で、同じ溶鋼中硫黄濃度レベルまでの脱硫処理を行うことができた。
これに対して、マンガン酸化物の添加時期を脱硫反応の進行時とした場合には、溶鋼中のマンガン濃度の増加は確認できたが、脱硫反応速度が遅くなっていた。これは、マンガン酸化物の還元によって発生した酸素により脱硫反応が阻害されたためであると考えられる。また更に、脱硫反応が終了した脱硫処理末期にマンガン酸化物を添加した場合には、取鍋精錬炉での処理時間が延長したのみならず、処理後の溶鋼中硫黄濃度が高くなる結果となった。
このように、取鍋精錬炉での脱硫処理において、マンガン酸化物の添加時期を変化させて実験を行った結果、取鍋精錬炉での精錬時間の1/3以内にマンガン酸化物を添加した場合には、脱硫反応速度の低下や処理後の溶鋼中硫黄濃度の増加を招くことなく、溶鋼中のマンガン濃度が増加することが確認できた。この場合、出鋼時や出鋼後など、溶鋼を取鍋精錬炉に搬送する前に取鍋内にマンガン酸化物を添加しても、脱硫反応速度の低下や処理後の溶鋼中硫黄濃度の増加を招くことなく、溶鋼中のマンガン濃度が増加することが確認できた。
また、転炉から出鋼された溶鋼をRH真空脱ガス装置で脱硫処理して低硫鋼を溶製する場合、同様に、RH真空脱ガス装置での脱硫処理前、脱硫処理中、脱硫処理後にマンガン酸化物を添加する実験を行った。その結果、脱硫処理前にマンガン酸化物を添加した場合には、脱硫反応速度の低下や処理後の溶鋼中硫黄濃度の増加を招くことなく、溶鋼中のマンガン濃度が増加することが確認できた。
また、マンガン含有量が様々なマンガン酸化物を用いて実験を行った結果、マンガン酸化物中のマンガン含有量が重要であることがわかった。具体的には、マンガン含有量が35質量%以上のマンガン酸化物を用いた場合に、脱硫反応速度の低下や処理後の溶鋼中硫黄濃度の増加を招くことなく、溶鋼中のマンガン濃度が増加することがわかった。マンガン含有量が35質量%未満のマンガン酸化物を用いた場合には、脱硫反応速度が低下したり、処理後の溶鋼中硫黄濃度が高くなったりする場合が生じた。
この原因を解明するべく、処理中の溶鋼温度を測定した結果、マンガン含有量が35質量%未満のマンガン酸化物を用いた場合には、処理中の溶鋼温度が低下していることがわかった。これは、マンガン含有量の低いマンガン酸化物を用いた場合には、マンガン純分で溶鋼トンあたり1kg以上のマンガンを添加しようとすると、添加すべきマンガン酸化物の量が増加してしまい、溶鋼の温度低下を招いたためと考えられる。
本発明は上記知見に基づきなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
[1]転炉から出鋼された溶鋼を取鍋精錬炉にて脱硫処理し、その後、RH真空脱ガス装置にて前記溶鋼に減圧下での精錬を施して低硫鋼を溶製する方法において、転炉から取鍋に溶鋼を出鋼する際に、溶鋼にアルミニウムを添加し、溶鋼中の溶存アルミニウム濃度が0.01質量%以上となるように溶鋼を脱酸し、取鍋精錬炉では、精錬開始から精錬終了までの精錬時間の1/3の時間が経過するまでに、溶鋼へマンガン含有量が35質量%以上のマンガン酸化物をマンガン純分で溶鋼トンあたり1kg以上添加することを特徴とする、低硫鋼の溶製方法。
[2]取鍋精錬炉での精錬開始からマンガン酸化物の添加終了までの期間に、下記の(1)式を満足する量のアルミニウムを溶鋼中に添加することを特徴とする、上記[1]に記載の低硫鋼の溶製方法。
Al/(WMn×RO)≧1.1・・・(1)
但し、(1)式において、WAlは、アルミニウムの溶鋼トンあたりの添加量(kg/t)、WMnは、マンガン酸化物の溶鋼トンあたりの添加量(kg/t)、ROは、マンガン酸化物の酸素濃度の比率(−)である。
[3]溶鋼を転炉から取鍋に出鋼する際に、マンガン酸化物を取鍋内に添加することを特徴とする、上記[1]または上記[2]に記載の低硫鋼の溶製方法。
[4]転炉から出鋼された溶鋼をRH真空脱ガス装置にて減圧下で脱硫処理し、脱硫処理後、引き続いて減圧下での精錬を施して低硫鋼を溶製する方法において、転炉から取鍋に溶鋼を出鋼する際に、溶鋼にアルミニウムを添加し、溶鋼中の溶存アルミニウム濃度が0.01質量%以上となるように溶鋼を脱酸し、RH真空脱ガス装置では、精錬開始から脱硫剤の添加前までの期間に、溶鋼へマンガン含有量が35質量%以上のマンガン酸化物をマンガン純分で溶鋼トンあたり1kg以上添加し、その後、脱硫剤を添加して脱硫処理することを特徴とする、低硫鋼の溶製方法。
[5]RH真空脱ガス装置での精錬開始からマンガン酸化物の添加終了までの期間に、下記の(1)式を満足する量のアルミニウムを溶鋼中に添加することを特徴とする、上記[4]に記載の低硫鋼の溶製方法。
Al/(WMn×RO)≧1.1・・・(1)
但し、(1)式において、WAlは、アルミニウムの溶鋼トンあたりの添加量(kg/t)、WMnは、マンガン酸化物の溶鋼トンあたりの添加量(kg/t)、ROは、マンガン酸化物の酸素濃度の比率(−)である。
[6]前記低硫鋼は、硫黄濃度が0.0035質量%以下であり、マンガン濃度が0.3質量%以上であることを特徴とする、上記[1]ないし上記[5]のいずれか1項に記載の低硫鋼の溶製方法。
本発明によれば、マンガン酸化物を溶鋼成分調整用の安価なマンガン源として有効に活用できると同時に、高い脱硫反応効率で安定して溶鋼を脱硫処理することが実現され、工業上有益な効果がもたらされる。
本発明を実施する際に用いる取鍋精錬炉の1例の概略側面図である。 本発明を実施する際に用いるRH真空脱ガス装置の1例の概略縦断面図である。
以下、本発明を具体的に説明する。
高炉から出銑された溶銑を溶銑鍋やトピードカーなどの溶銑保持・搬送用容器で受銑し、次工程の脱炭精錬を行う転炉に搬送する。通常、この途中で、溶銑に対して脱硫処理、脱燐処理、及び、脱珪処理などの溶銑予備処理が施されており、本発明においては、低硫鋼を溶製する方法であるので、脱硫処理を実施する。また、鋼の成分規格上脱燐処理が必要な場合は当然として、成分規格からは脱燐処理が必要でない場合でも、転炉出鋼後の転炉スラグからの復燐を防止するために、脱燐処理を実施する。
転炉に搬送した溶銑に対して転炉で脱炭精錬を行って溶鋼を溶製し、その後、生成した溶鋼を転炉から取鍋に出鋼する。出鋼の末期、溶鋼に混じって転炉スラグが取鍋に流出するので、これを防止するために、通常実施される転炉スラグ流出防止対策を実施する。また、溶鋼を転炉から取鍋に出鋼する際に、アルミニウム(金属アルミニウム、Fe−Al合金など)を溶鋼に添加し、溶鋼中の溶存アルミニウム濃度が0.01質量%以上となるように溶鋼を脱酸する。
取鍋内のスラグ(転炉スラグと脱酸生成物であるAl23、SiO2、MnOなどとが混合して生成されるもの)の酸素ポテンシャルを下げて脱硫反応を促進させるために、出鋼後、取鍋内のスラグに脱酸材を添加することが好ましい。この脱酸材としては、金属アルミニウム、或いは、アルミドロス(金属アルミを20〜70質量%含有)が最適である。
本発明は、低硫鋼を溶製する方法として、(1)転炉から出鋼された溶鋼を、先ず、取鍋精錬炉で脱硫処理し、その後、RH真空脱ガス装置で、脱ガス処理、介在物浮上処理(「溶鋼清浄化処理」ともいう)、溶鋼の成分調整などを減圧下で実施して、低硫鋼を溶製する方法と、(2)転炉から出鋼された溶鋼を、取鍋精錬炉を経由させずにRH真空脱ガス装置に搬送し、RH真空脱ガス装置で、脱硫処理を実施し、この脱硫処理に引き続いて、RH真空脱ガス装置で、脱ガス処理、介在物浮上処理、溶鋼の成分調整などを減圧下で実施して、低硫鋼を溶製する方法との2種類の方法を用いる。
尚、本発明で対象とする低硫鋼は、硫黄濃度規格値が0.0060質量%以下の鋼であるが、溶銑段階での脱硫処理だけでは溶製することが困難である、硫黄濃度の規格値が0.0035質量%以下であり、且つ、マンガン酸化物を活用する観点から、マンガン濃度の規格値が0.3質量%以上の鋼を対象とすることが好ましい。
本発明の第1の実施形態として、先ず、転炉−取鍋精錬炉−RH真空脱ガス装置の組み合わせによって低硫鋼を溶製する方法について説明する。
出鋼時に溶鋼に混じって転炉から取鍋に流入した転炉スラグを、出鋼後に取鍋から除去してもよいが、流入した転炉スラグが、脱硫剤として添加するフラックスの滓化を促進させ、脱硫反応を促進させるので、必ずしも除去する必要はない。但し、多量の転炉スラグが流入した場合には、脱硫剤として添加するフラックスを多量に添加する必要が生じるので、前述したように、出鋼時、通常実施される転炉スラグ流出防止対策を実施する。
取鍋精錬炉における脱硫処理は、脱硫能力の高い脱硫用スラグと溶鋼とを攪拌して、溶鋼中の硫黄を脱硫用スラグ中に吸収させるという方法で行う。従って、取鍋内に脱硫能力の高い脱硫用スラグを形成させるために添加するフラックスとしては、石灰系脱硫剤(CaO系脱硫剤)を主とし、必要に応じて、石灰系脱硫剤の滓化促進剤としてアルミナ源(Al23源)またはシリカ源(SiO2源)を併用する。これらのフラックスと取鍋内のスラグとが反応して、脱硫用スラグが形成される。前述した転炉スラグは石灰系脱硫剤の滓化促進剤として機能する。
本発明で使用する石灰系脱硫剤とは、CaOを50質量%以上含有するものであり、生石灰、軽焼ドロマイト、或いは、生石灰にアルミナやシリカ、蛍石などの融点低下剤を混合した脱硫剤である。アルミナ源とは、ボーキサイト、電融ボーキサイト、仮焼アルミナなどであり、シリカ源とは、珪砂、珪石などである。
これらのフラックスは、脱硫処理を実施する取鍋精錬炉で添加してもよいが、石灰系脱硫剤の滓化促進のために、出鋼時または出鋼直後に取鍋内に添加することが望ましい。また、マンガン酸化物も反応の促進、反応時間の確保のために、出鋼時または出鋼直後に取鍋内に添加してもよい。
図1に、本発明で脱硫処理を実施する設備として用いた取鍋精錬炉(「LF炉」とも呼ぶ)の1例を概略側面図で示す。図1において、1は取鍋精錬炉、2は取鍋、3は昇降式の蓋、4はアーク加熱用の電極、5、6はインジェクションランス、7、8は底吹きポーラス煉瓦、9は溶鋼、10は脱硫用スラグ、11は原材料投入シュート、12は不活性ガス導入管である。この取鍋精錬炉1においては、インジェクションランス5、6から、アルゴンガスなどの不活性ガスを搬送用ガスとして粉体フラックスや粉体の合金を不活性ガスとともに溶鋼中に吹き込むことができるように構成されている。
取鍋精錬炉1では、台車(図示せず)に積載された、溶鋼9を収容する取鍋2を蓋3の直下の所定位置に配置し、蓋3を下降させて取鍋2の上端部に密着させ、その状態で不活性ガス導入管12からアルゴンガスなどの不活性ガスを供給して取鍋2と蓋3とで囲まれる空間を不活性ガス雰囲気とする。出鋼時や出鋼直後に取鍋内への脱硫剤としてのフラックスの添加が行われていない場合には、この時点で原材料投入シュート11を介してフラックスを添加する。
次いで、溶鋼9にインジェクションランス5或いはインジェクションランス6を浸漬させ、インジェクションランス5、インジェクションランス6、または、底吹きポーラス煉瓦7、8のうちの少なくとも一箇所から溶鋼9に攪拌用ガスとしてアルゴンガスなどの不活性ガスを吹き込み、溶鋼9を攪拌して取鍋精錬炉1における精錬を開始する。溶鋼9を攪拌することによりフラックスが溶鋼9と混合され、フラックスの滓化が進行して脱硫用スラグ10が生成される。この場合、溶鋼9の攪拌を開始した後、必要に応じて電極4に通電してアークを発生させ、溶鋼9を加熱するとともに添加したフラックスの滓化を促進させてもよい。
生成した脱硫用スラグ10は、溶鋼9の攪拌により溶鋼9と攪拌・混合される。溶鋼9はアルミニウムを0.01質量%以上含有するので、溶鋼9と脱硫用スラグ10との間でスラグ−メタル間反応が発生し、溶鋼中の硫黄が脱硫用スラグ中に移行する脱硫反応が発生する。脱硫処理の一時期において、インジェクションランス5、6から攪拌用ガスと同時に粉体を添加し、撹拌強度を高めると同時に脱硫反応を促進させるようにしてもよい。
ここで、インジェクションランス5、6から吹き込む粉体としては、例えば、Ca−Si合金、Ca−Al合金、Mg−Al−Zn合金、石灰系脱硫剤などである。これらはいずれも脱硫剤として機能する。粉体の粒径は、インジェクション可能な粒径であれば、いくらでも構わないが、容易にインジェクション可能であり、反応界面積も確保できることから、1mm以下程度の粉体が適当である。
溶鋼9の硫黄濃度が所定の値に達し、且つ、溶鋼温度が所望する温度で、更に、溶鋼9の成分濃度が所望する範囲の場合には、インジェクションランス5、6或いは底吹きポーラス煉瓦7、8からの不活性ガスの吹込みを停止し、脱硫処理、つまり、取鍋精錬炉1における精錬を終了する。溶鋼9の硫黄濃度が所定の値に達しても、その時点での溶鋼温度が所望する温度よりも低い場合は、電極4による溶鋼9のアーク加熱を実施し、また、溶鋼9の硫黄濃度が所定の値に達しても、その時点での溶鋼9の成分濃度が所望する範囲にない場合は、原材料投入シュート11を介して成分調整用の合金鉄や金属を投入し、これらの調整が完了した時点で、インジェクションランス5、6或いは底吹きポーラス煉瓦7、8からの不活性ガスの吹込みを停止、取鍋精錬炉1における精錬を終了する。
本発明においては、取鍋精錬炉1における精錬開始から精錬終了までの精錬時間の1/3の時間が経過するまでに、原材料投入シュート11を介して、マンガン含有量が35質量%以上のマンガン酸化物を取鍋内に添加する。前述したように、マンガン酸化物を出鋼時或いは出鋼直後に取鍋内に添加しても構わない。添加したマンガン酸化物は、石灰系脱硫剤などのフラックスと混合され、溶鋼9の攪拌による脱硫用スラグ10の形成と同時に、マンガン酸化物は還元され、溶鋼中のマンガン濃度が上昇する。マンガン酸化物の一部は、脱硫用スラグ10に溶解するが、脱硫用スラグ10の酸素ポテンシャルは低く、脱硫用スラグ10と溶鋼9とを強攪拌することで、脱硫用スラグ中のマンガン酸化物も還元される。
マンガン酸化物の添加量は、マンガン純分で溶鋼トンあたり1kg以上とする。マンガン酸化物の添加量を、マンガン純分で溶鋼トンあたり1kg以上とすることで、マンガン酸化物を安価なマンガン源として有効活用することができる。
また、取鍋精錬炉1での精錬開始からマンガン酸化物の添加終了までの期間に、下記の(1)式を満足する量のアルミニウム(金属アルミニウム、Fe−Al合金など)を溶鋼中に添加することが好ましい。
Al/(WMn×RO)≧1.1・・・(1)
但し、(1)式において、WAlは、アルミニウムの溶鋼トンあたりの添加量(kg/t)、WMnは、マンガン酸化物の溶鋼トンあたりの添加量(kg/t)、ROは、マンガン酸化物の酸素濃度の比率(−)である。
マンガン酸化物の添加終了までの期間に、(1)式を満足する量のアルミニウムを取鍋内に添加することで、溶鋼9及び脱硫用スラグ10の酸素ポテンシャルがより一層低下し、脱硫反応が促進されるとともに、マンガン酸化物の還元が促進され、マンガン歩留りが上昇する。
本発明で使用する、マンガン含有量が35質量%以上のマンガン酸化物としては、例えば、マンガン鉱石や、高炭素フェロマンガンなどのマンガン系合金鉄の製錬時に回収したマンガン酸化物を含有するダスト、RH真空脱ガス装置などの精錬炉で回収したマンガン酸化物を含有するダストなどが挙げられ、マンガン含有量が35質量%以上であれば、いずれも使用することができる。マンガン酸化物の粒径は、添加方法によって最適な粒径を選択することができる。例えば、取鍋精錬炉1及び転炉出鋼時に添加する場合には、歩留り向上の観点から、5〜50mmの粒状のものが好ましい。添加歩留りが確保できるならば、反応促進の観点からは細粒のものが好ましい。
取鍋精錬炉1での精錬の終了後、溶鋼9を収容した取鍋2を次工程のRH真空脱ガス装置に搬送する。
図2に、本発明を実施する際に用いるRH真空脱ガス装置の1例の概略縦断面図を示す。図2において、2は取鍋、9は溶鋼、51はRH真空脱ガス装置、52は真空槽、53は上部槽、54は下部槽、55は上昇側浸漬管、56は下降側浸漬管、57は環流用ガス吹き込み管、58はダクト、59は原料投入口、60は上吹きランス、61はスラグであり、真空槽52は上部槽53と下部槽54とから構成され、また、上吹きランス60は上下移動が可能となっており、この上吹きランス60から、酸素ガス、或いは、搬送用ガスとともにフラックスなどが真空槽52の内部の溶鋼9の湯面に吹き付けられるようになっている。本実施形態の場合、スラグ61は、図1に示す脱硫スラグ10である。
RH真空脱ガス装置51では、取鍋2を昇降装置(図示せず)にて上昇させ、上昇側浸漬管55及び下降側浸漬管56を取鍋内の溶鋼9に浸漬させる。そして、環流用ガス吹き込み管57から上昇側浸漬管55の内部にアルゴンガスなどの環流用ガスを吹き込むとともに、真空槽52の内部をダクト58に連結される排気装置(図示せず)にて排気して真空槽52の内部を減圧する。真空槽52の内部が減圧されると、取鍋内の溶鋼9は、環流用ガス吹き込み管57から吹き込まれる環流用ガスによるガスリフト効果によって、環流用ガスとともに上昇側浸漬管55を上昇して真空槽52の内部に流入し、その後、下降側浸漬管56を経由して取鍋2に戻る流れ、所謂、環流を形成してRH真空脱ガス精錬が施される。
RH真空脱ガス装置51では、取鍋2に収容された、脱硫処理されている溶鋼9を取鍋2と真空槽52との間を環流させ、溶鋼9に、脱水素などの脱ガス処理、介在物浮上処理、溶鋼9の成分調整などを減圧下で実施する。脱ガス処理及び介在物浮上処理は、溶鋼9を環流させると自ずと起こるが、溶鋼9の成分調整を行う際には、原料投入口59から合金鉄や金属などの成分調整剤を真空槽内の溶鋼9に添加して実施する。溶鋼9はすでに脱硫処理されているので、RH真空脱ガス装置51では、脱硫処理は行わない。
このようにして低硫鋼を溶製することで、取鍋精錬炉1において、マンガン酸化物をマンガン源として有効に活用すると同時に、高い脱硫反応効率で安定して溶鋼9を脱硫処理することが達成される。
次ぎに、本発明の第2の実施形態として、転炉−RH真空脱ガス装置の組み合わせによって低硫鋼を溶製する方法について説明する。使用するRH真空脱ガス装置は、図2に示すRH真空脱ガス装置51と同様である。
転炉から取鍋2に出鋼された溶鋼9を、RH真空脱ガス装置51に搬送する。出鋼の際、前述したように、溶鋼中の溶存アルミニウム濃度が0.01質量%以上となるように溶鋼9をアルミニウム(金属アルミニウム、Fe−Al合金など)で脱酸し、また、取鍋内のスラグの酸素ポテンシャルを下げて脱硫反応を促進させるために、取鍋内のスラグに脱酸材を添加することが好ましい。
RH真空脱ガス装置51では、環流させた溶鋼9に対して、先ず、必要に応じて、真空槽内の溶鋼9にアルミニウム(金属アルミニウム、Fe−Al合金など)を添加し、溶鋼9のアルミニウム濃度を調整すると同時に溶鋼温度を調整し、次いで、マンガン含有量が35質量%以上のマンガン酸化物を真空槽内の溶鋼9に添加する。
マンガン酸化物の添加は、原料投入口59から添加しても、また、上吹きランス60から不活性ガスを搬送用ガスとして真空槽内の溶鋼9に吹き付けて添加しても、どちらでも構わない。また、溶鋼温度の調整の前にマンガン酸化物を添加しても構わない。マンガン酸化物の添加量は、マンガン純分で溶鋼トンあたり1kg以上とする。マンガン酸化物の添加量を、マンガン純分で溶鋼トンあたり1kg以上とすることで、マンガン酸化物を安価なマンガン源として有効活用することができる。
添加したマンガン酸化物は、溶鋼中に懸濁して下降側浸漬管56から取鍋2に排出される。溶鋼9はアルミニウムを0.01質量%以上含有するので、マンガン酸化物と溶鋼中のアルミニウムとが反応し、マンガン酸化物は還元されて溶鋼中のマンガン濃度が上昇する。尚、添加したマンガン酸化物の一部は、スラグ61に移行する。
また、RH真空脱ガス装置51での精錬開始からマンガン酸化物の添加終了までの期間に、下記の(1)式を満足する量のアルミニウム(金属アルミニウム、Fe−Al合金など)を真空槽内の溶鋼中に添加することが好ましい。
Al/(WMn×RO)≧1.1・・・(1)
但し、(1)式において、WAlは、アルミニウムの溶鋼トンあたりの添加量(kg/t)、WMnは、マンガン酸化物の溶鋼トンあたりの添加量(kg/t)、ROは、マンガン酸化物の酸素濃度の比率(−)である。
マンガン酸化物の添加終了までの期間に、(1)式を満足する量のアルミニウムを添加することで、溶鋼9の酸素ポテンシャルがより一層低下し、マンガン酸化物の還元が促進され、マンガン歩留りが上昇する。
本発明で使用する、マンガン含有量が35質量%以上のマンガン酸化物としては、例えば、マンガン鉱石や、高炭素フェロマンガンなどのマンガン系合金鉄の製錬時に回収したマンガン酸化物を含有するダスト、RH真空脱ガス装置などの精錬炉で回収したマンガン酸化物を含有するダストなどが挙げられ、マンガン含有量が35質量%以上であれば、いずれも使用することができる。マンガン酸化物の粒径は、添加方法によって最適な粒径を選択することができる。例えば、原料投入口59から添加する場合には、歩留り向上の観点から、5〜50mmの粒状のものが好ましく、上吹きランス60から吹き付け添加する場合には、吹き付け添加が容易となる2mm以下の粉状のものが好ましい。
マンガン酸化物の添加が終了した後、真空槽内の溶鋼9に脱硫剤を添加する。脱硫剤の添加は、粒状の脱硫剤を原料投入口59から添加しても、また、粉状の脱硫剤を上吹きランス60から不活性ガスを搬送用ガスとして真空槽内の溶鋼9に吹き付けて添加しても、どちらでも構わない。ここで、マンガン酸化物の還元を促進させる観点から、マンガン酸化物の添加後、1分間以上環流した後に脱硫剤を添加して脱硫処理することが好ましい。
使用する脱硫剤としては、第1の実施形態で使用した石灰系脱硫剤の他に、炭酸ナトリウム、カルシウムカーバイト、金属マグネシウムなどを使用することができる。
所定量の脱硫剤を添加した後、更に、引き続いて溶鋼9を環流させ、溶鋼9に、脱水素などの脱ガス処理、介在物浮上処理、溶鋼9の成分調整などを減圧下で施し、その後、RH真空脱ガス装置51での精錬を終了する。
このようにして低硫鋼を溶製することで、RH真空脱ガス装置51において、マンガン酸化物をマンガン源として有効に活用すると同時に、高い脱硫反応効率で安定して溶鋼9を脱硫処理することが達成される。
尚、上記説明は真空脱ガス設備としてRH真空脱ガス装置を使用した例で説明したが、本発明はRH真空脱ガス装置に限るものではなく、DH真空脱ガス装置、VOD設備、VAD設備などでも実施することができる。
転炉と取鍋精錬炉とRH真空脱ガス装置との組み合せにより低硫鋼を製造する試験を行った。高炉から出銑された溶銑に脱珪処理、脱硫処理、脱燐処理を行ったのち、この溶銑を転炉に装入して脱炭精錬を実施し、炭素濃度が0.05〜0.1質量%、硫黄濃度が0.002〜0.005質量%、燐濃度が0.010〜0.040質量%の約250トンの溶鋼を得た。
転炉からの出鋼時に、溶鋼中の溶存アルミニウム濃度が0.01質量%以上となるように金属アルミニウムを添加して溶鋼を脱酸し、また、石灰系脱硫剤として、生石灰と軽焼ドロマイトとを添加し、且つ、取鍋内のスラグに脱酸材としてアルミドロスを添加した。転炉から出鋼される溶鋼に混入して取鍋へ流出した転炉スラグは、除滓することなく、次工程の図1に示す取鍋精錬炉へ搬送した。転炉スラグの取鍋への流出量は取鍋内でスラグ厚みを測定することにより推定可能であり、従って、転炉スラグの成分と流出量、及び、出鋼中に添加したシリコン系合金鉄、マンガン系合金鉄、金属アルミニウムの添加量から、取鍋内のスラグのCaO、Al23、SiO2、MgOなどの各成分の含有量を算出することができ、これに基づき、取鍋内のスラグの組成を調整することが可能である。
取鍋精錬炉への到着後、台車に積載された取鍋を所定の位置に固定し、上方から蓋を取鍋の上部に載せ、蓋と取鍋とで密閉された空間を形成し、この空間に不活性ガス導入管からアルゴンガスを供給して雰囲気をアルゴンガス雰囲気とした後、原材料投入シュートを介してマンガン酸化物を添加した。その後、電極を取鍋内のスラグに浸漬させてアーク加熱を行いながら、底吹きポーラス煉瓦から2000NL/minの流量でアルゴンガスを溶鋼中に吹き込んで攪拌し、約20〜30分間の脱硫処理を行った。ここで、マンガン酸化物の添加時期、マンガン酸化物の種類(マンガン濃度が異なる)、及びマンガン酸化物の添加量を変化させて脱硫処理を行った。
表1に、取鍋精錬炉における脱硫処理において、使用したマンガン酸化物の種類、マンガン酸化物の添加量、マンガン酸化物の添加時期、溶鋼の脱硫率、マンガン歩留りの調査結果を示す。ここで、マンガン歩留りは、マンガン酸化物中のマンガンの歩留りであり、歩留りが80%以上の場合を○、50〜80%未満の場合を△、50%未満の場合を×で示した。また、添加時期0分とは、処理開始時にマンガン酸化物を一括添加したことを意味する。更に、処理コストとは、転炉からRH真空脱ガス装置までの処理コストの総和であり、取鍋精錬炉での脱硫処理中にマンガン酸化物を添加しなかった場合の処理コストをベースとし、この処理コストに対する増減で示した。
Figure 2015178646
マンガン濃度が45質量%のマンガン鉱石(Mn鉱石)を溶鋼トンあたり4kg(以下、「kg/t」と記す)添加し、30分間の脱硫処理を行った試験番号1〜6において、マンガン酸化物の添加時期が処理開始から10分間経過するまでの期間である試験番号1〜3では、脱硫処理後の溶鋼中硫黄濃度は0.0006質量%以下であり、80%以上の脱硫率であった。一方、マンガン酸化物の添加時期が処理開始から15分間以上経過した時点である試験番号4〜6では、脱硫率は50〜63%と低位であった。
また、マンガン濃度が58質量%のマンガン鉱石を3kg/t添加し、20分間の脱硫処理を行った試験番号7〜10において、マンガン酸化物の添加時期が処理開始から5分までの試験番号7、8では、脱硫処理後の溶鋼中硫黄濃度は0.0004質量%であり、80%以上の脱硫率であったが、マンガン酸化物の添加時期が処理開始から10分以上経過した試験番号9、10では、脱硫率は低位であった。
また、マンガン濃度が32質量%のマンガン鉱石を4kg/t添加した試験番号11、12では、マンガン鉱石を処理開始と同時に添加した場合でも、脱硫率及びマンガン歩留りともに低位であった。
マンガン酸化物として、マンガン濃度が60質量%である、RH真空脱ガス装置で生成した精錬副生成物(ダスト)を用いた試験番号13〜17でも、試験番号1〜10と同様の結果が得られた。
これらの結果から、マンガン濃度が35質量%以上のマンガン酸化物を用いた場合には、マンガン酸化物の添加終了から脱硫処理終了までの時間が10分間以上であれば、50%以上のマンガン歩留りが得られるが、脱硫処理時間の1/3以内の期間にマンガン酸化物を添加しないと80%以上の脱硫率が得られないことがわかった。
尚、表1において、総合評価として、脱硫率が80%未満の試験は×、脱硫率が80%以上85%未満で、且つ、マンガン歩留りが50%以上の試験を○、脱硫率が85%以上で、且つ、マンガン歩留りが80%以上の試験を◎とした。
更に、取鍋精錬炉での脱硫処理において、マンガン濃度が52質量%のマンガン鉱石を3kg/t添加し、30分間の脱硫処理を行う際に、脱硫処理開始からマンガン酸化物の添加終了までの期間に、取鍋内に金属アルミニウムを添加する試験(試験番号20〜26)を行った。金属アルミニウムの添加量は各試験で変化させた。試験番号20〜26での試験条件及び試験結果を表2に示す。表2における、マンガン歩留り、総合評価の定義は、表1と同一である。
Figure 2015178646
脱硫処理開始からマンガン酸化物の添加終了までの期間に添加するアルミニウムの添加量が、上記(1)式を満足する範囲の場合には、脱硫率が85%以上で、且つ、マンガン歩留りが80%以上になることが確認できた。
取鍋精錬炉で脱硫処理を施した溶鋼を、RH真空脱ガス装置に搬送し、RH真空脱ガス装置で、脱ガス処理、介在物浮上処理、溶鋼の成分調整を減圧下で施し、所定の組成の低硫鋼を溶製した。
転炉とRH真空脱ガス装置との組み合せにより低硫鋼を製造する試験を行った。高炉から出銑された溶銑に脱珪処理、脱硫処理、脱燐処理を行ったのち、この溶銑を転炉に装入して脱炭精錬を実施し、炭素濃度が0.05〜0.1質量%、硫黄濃度が0.002〜0.005質量%、燐濃度が0.010〜0.040質量%の約250トンの溶鋼を得た。
転炉からの出鋼時に、生石灰を出鋼流に向けて1000kg添加した。また、出鋼時、溶鋼中の溶存アルミニウム濃度が0.01質量%以上となるように金属アルミニウムを添加して溶鋼を脱酸した。出鋼後、脱酸材として取鍋内のスラグに金属アルミニウムを添加し、スラグの脱酸を行った。その後、溶鋼を収容した取鍋を図2に示すRH真空脱ガス装置に搬送した。
RH真空脱ガス装置における減圧下での精錬開始後、溶鋼温度を測定し、脱硫処理開始前に必要な温度が確保されているか確認した。必要な温度とは、脱硫処理の経過に伴う溶鋼温度の低下と、脱硫剤や副原料の添加による溶鋼温度の低下とを考慮して、処理条件毎に決められる温度である。温度不足の場合には、原料投入口から金属アルミニウムを添加し、上吹きランスから酸素ガスを供給してアルミニウムを酸化・燃焼させ、その燃焼熱で溶鋼の温度を上昇させ、所定の温度に調整した。
その後、上吹きランスの先端位置を溶鋼の浴面から1.5m〜2.5mの位置に固定し、真空槽内の真空度を50torr以下に調整した後、上吹きランスから、アルゴンガスを搬送用ガスとして石灰系脱硫剤を真空槽内の溶鋼面に向けて投射し、溶銑に対して脱硫処理を実施した。
この脱硫処理の前、または脱硫処理中、もしくは脱硫処理後の3水準にマンガン酸化物の添加時期を変更し、原料投入口からマンガン酸化物を真空槽内の溶鋼に添加し、マンガン酸化物の添加時期の影響を調査した。また、マンガン酸化物として、マンガン濃度が異なるマンガン酸化物を使用し、マンガン酸化物中のマンガン濃度の影響を調査した。
表3に、使用したマンガン酸化物の種類、マンガン酸化物の添加量、マンガン酸化物の添加時期、溶鋼の脱硫率、マンガン歩留りの調査結果を示す。表3における、マンガン歩留り、処理コスト、総合評価の定義は、表1と同一である。
Figure 2015178646
マンガン濃度が39質量%のマンガン鉱石を4kg/t添加した試験番号27〜29、マンガン濃度が62質量%のマンガン鉱石を3kg/t添加した試験番号30〜32、及び、マンガン酸化物として、マンガン濃度が45質量%である、RH真空脱ガス装置で生成した精錬副生成物(ダスト)を使用し、この精錬副生成物を4kg/t添加した試験番号33〜35では、脱硫剤添加前にマンガン酸化物を添加した試験で、脱硫処理後の溶鋼中硫黄濃度が0.0006質量%以下であり、80%以上の脱硫率と80%以上のマンガン歩留りとが得られていた。一方、マンガン酸化物を脱硫剤と同時、または、脱硫剤添加後に添加した試験では、脱硫率が70%未満と低位であった。
また、マンガン濃度が30%である、RH真空脱ガス装置で生成した精錬副生成物を4kg/t添加した試験番号36、37では、精錬副生成物の添加時期が出鋼時や脱硫剤添加前であっても、脱硫率及びマンガン歩留りがともに低位であった。
これらの結果から、マンガン濃度が35質量%以上のマンガン酸化物をRH真空脱ガス装置で脱硫剤添加前に添加した場合には、溶鋼の脱硫率が85%以上、且つ、マンガン歩留りが80%以上となり、処理コストを低減できることがわかった。
1 取鍋精錬炉
2 取鍋
3 蓋
4 電極
5 インジェクションランス
6 インジェクションランス
7 底吹きポーラス煉瓦
8 底吹きポーラス煉瓦
9 溶鋼
10 脱硫用スラグ
11 原材料投入シュート
12 不活性ガス導入管
51 RH真空脱ガス装置
52 真空槽
53 上部槽
54 下部槽
55 上昇側浸漬管
56 下降側浸漬管
57 環流用ガス吹き込み管
58 ダクト
59 原料投入口
60 上吹きランス
61 スラグ

Claims (6)

  1. 転炉から出鋼された溶鋼を取鍋精錬炉にて脱硫処理し、その後、RH真空脱ガス装置にて前記溶鋼に減圧下での精錬を施して低硫鋼を溶製する方法において、転炉から取鍋に溶鋼を出鋼する際に、溶鋼にアルミニウムを添加し、溶鋼中の溶存アルミニウム濃度が0.01質量%以上となるように溶鋼を脱酸し、取鍋精錬炉では、精錬開始から精錬終了までの精錬時間の1/3の時間が経過するまでに、溶鋼へマンガン含有量が35質量%以上のマンガン酸化物をマンガン純分で溶鋼トンあたり1kg以上添加することを特徴とする、低硫鋼の溶製方法。
  2. 取鍋精錬炉での精錬開始からマンガン酸化物の添加終了までの期間に、下記の(1)式を満足する量のアルミニウムを溶鋼中に添加することを特徴とする、請求項1に記載の低硫鋼の溶製方法。
    Al/(WMn×RO)≧1.1・・・(1)
    但し、(1)式において、WAlは、アルミニウムの溶鋼トンあたりの添加量(kg/t)、WMnは、マンガン酸化物の溶鋼トンあたりの添加量(kg/t)、ROは、マンガン酸化物の酸素濃度の比率(−)である。
  3. 溶鋼を転炉から取鍋に出鋼する際に、マンガン酸化物を取鍋内に添加することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の低硫鋼の溶製方法。
  4. 転炉から出鋼された溶鋼をRH真空脱ガス装置にて減圧下で脱硫処理し、脱硫処理後、引き続いて減圧下での精錬を施して低硫鋼を溶製する方法において、転炉から取鍋に溶鋼を出鋼する際に、溶鋼にアルミニウムを添加し、溶鋼中の溶存アルミニウム濃度が0.01質量%以上となるように溶鋼を脱酸し、RH真空脱ガス装置では、精錬開始から脱硫剤の添加前までの期間に、溶鋼へマンガン含有量が35質量%以上のマンガン酸化物をマンガン純分で溶鋼トンあたり1kg以上添加し、その後、脱硫剤を添加して脱硫処理することを特徴とする、低硫鋼の溶製方法。
  5. RH真空脱ガス装置での精錬開始からマンガン酸化物の添加終了までの期間に、下記の(1)式を満足する量のアルミニウムを溶鋼中に添加することを特徴とする、請求項4に記載の低硫鋼の溶製方法。
    Al/(WMn×RO)≧1.1・・・(1)
    但し、(1)式において、WAlは、アルミニウムの溶鋼トンあたりの添加量(kg/t)、WMnは、マンガン酸化物の溶鋼トンあたりの添加量(kg/t)、ROは、マンガン酸化物の酸素濃度の比率(−)である。
  6. 前記低硫鋼は、硫黄濃度が0.0035質量%以下であり、マンガン濃度が0.3質量%以上であることを特徴とする、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の低硫鋼の溶製方法。
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