JP2015178132A - 部材の接合方法および接合体 - Google Patents
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Abstract
【課題】被接合材の熱影響が極めて小さく超平滑な接合面や超真空の接合雰囲気を必用としない安価な金属部材の接合方法および接合体を提供する。
【解決手段】金属面を有する複数の部材のそれらの金属面同士を接合する方法であって、(1)上記接合に先だって、接合すべき前記部材3の被接合面の少なくとも一部に有機酸を接触させて保護膜4を形成する第一工程と、(2)前記有機酸を接触させた被接合面と他の部材5の被接合面とを互いに摩擦摺動することによって接合させる第二工程とを含んでなる部材の接合方法、並びにこれらの方法によって得られた接合体。
【選択図】図2
【解決手段】金属面を有する複数の部材のそれらの金属面同士を接合する方法であって、(1)上記接合に先だって、接合すべき前記部材3の被接合面の少なくとも一部に有機酸を接触させて保護膜4を形成する第一工程と、(2)前記有機酸を接触させた被接合面と他の部材5の被接合面とを互いに摩擦摺動することによって接合させる第二工程とを含んでなる部材の接合方法、並びにこれらの方法によって得られた接合体。
【選択図】図2
Description
本発明の実施形態は、部材の接合方法および接合体に関する。
金属の接合は、部材間を原子レベルで結合させることによって達成することができる。
被接合部材の面同士を全面接合する方法としては、例えば、溶融金属を用いるろう付け、はんだ付けなどの方法を挙げられる。これらの方法では、部材間に溶融金属を介在させることによって接合を実現している。
また、溶融金属を用いない固相接合法の一つとしては、拡散接合を挙げることができる。その他の固相接合法としては、摩擦圧接や超音波振動子を利用して被接合表面の金属酸化膜を除去しながら塑性変形によって接合面間を近接させ、凝着させる方法も実用化されている。
さらに、常温で被接合面の原子同士を直接結合させる方法として、極めて高いレベルで平坦化した被接合面の酸化膜を原子ビームで取り除いた後、近接させて接合させる常温接合法が知られている。
金属部材の接合に際しては、単に十分な接合強度が得られるばかりでなく、広範な金属に適用でき、材料の熱劣化や圧力による損傷を実質的に生じさせないこと、高価な装置や特別な雰囲気中での操作を必要とせずに、接合が安定的かつ効率的に行われること等が有利であることは言うまでもない。このため、被接合材の熱影響が極めて小さく、超平滑な接合面や超真空の接合雰囲気を必用としない安価なプロセスコストが期待できる接合方法が望まれていた。
また、摩擦圧接、超音波接合、常温接合、有機酸を用いる接合法のいずれの固相接合法においても、異種材料を接合し、接合体を温度変化を有する環境内で使用した場合には、熱応力による変形、破壊や熱サイクルによる疲労破壊が問題となる。溶融金属を用いた接合法では、溶融した金属が介在層を形成し、場合によっては熱応力の吸収や緩和の機能を発揮するが、溶融して接合する必要があるため、熱応力や熱疲労の観点から適した比較的高融点で軟質な材料を選択することができない。
上述したような状況に鑑み、本発明者らは、上記の要求を満たすことができる部材の接合方法を見出すにいたった。
すなわち、本発明の実施形態による部材の接合方法は、金属面を有する複数の部材のそれらの金属面同士を接合する方法であって、
上記の接合に先だって、接合すべき前記部材の被接合面の少なくとも一部に有機酸を接触させる第一工程と、
前記の有機酸を接触させた被接合面と他の部材の被接合面とを互いに摩擦摺動することによって接合させる第二工程とを含んでなること、を特徴とする。
上記の接合に先だって、接合すべき前記部材の被接合面の少なくとも一部に有機酸を接触させる第一工程と、
前記の有機酸を接触させた被接合面と他の部材の被接合面とを互いに摩擦摺動することによって接合させる第二工程とを含んでなること、を特徴とする。
また、本発明の実施形態による部材の接合方法は、前記の第一工程の後、前記の有機酸を接触させた被接合面と他の部材の被接合面との間に軟質金属層を配設し、その後、
前記の有機酸を接触させた被接合面と他の部材の被接合面とを、前記の軟質金属層を介して、互いに摩擦摺動することによって接合させる第二工程を実施するもの、を好ましい具体例として包含する。
前記の有機酸を接触させた被接合面と他の部材の被接合面とを、前記の軟質金属層を介して、互いに摩擦摺動することによって接合させる第二工程を実施するもの、を好ましい具体例として包含する。
そして、本発明の実施形態による接合体は、上記のいずれかの接合方法によって金属面を有する部材が接合されたもの、である。
本発明の実施形態による部材の接合方法は、例えば下記(イ)〜(ホ)のような効果を有する。
(イ)金属面を有する部材の接合を、例えば常温で行うことが可能である。したがって、接合すべき各部材が、過度に高温の温度条件に曝されることがない。
よって、従来の接合方法では適用が困難であった耐熱性が低い部材でも、容易に接合することが可能になる。
そして、熱による部材の特性変化が最小限に抑制されているので、部材の特性が接合処理によって影響を受けることが防止されている。例えば、一般的に、各部材を高温度条件下で接合させた場合には、冷却後に接合部材の収縮、変形、歪みの蓄積等が生じやすい傾向があるが、接合が常温で行われる本発明の実施形態によれば、これらの欠陥の発生は効果的に防止される。これは、特に異種金属の接合体において顕著である。
さらに、部材の接合が比較的低温でなされるので、部材表面の反応(例えば、空気中の酸素による酸化反応、他の部材の構成材料との化学反応等)が抑制されている。従って、これらの反応による接合強度の低下、材料特性の劣化などが効果的に防止される。
(ロ)金属面を有する部材の接合を、例えば大気雰囲気中で行うことが可能である。したがって、高真空の雰囲気を必要としないので、真空装置等の装置が不要であり、コスト的に有利である。超高真空の雰囲気を必要としないので、ガス放出性が高い部材であっても容易に接合することが可能である。
(ハ)金属面を有する部材の接合を、高い圧力を必要をすることなく行うことができる。
したがって、強度が比較的低い部材であっても容易に接合することが可能になる。また、従来法では適用することが困難であった微細な部材や、より精密な接合を正確に行うことが容易である。
(ニ)上記(ハ)のように、金属面を有する部材の接合を高い圧力を必要をすることなく行えるにも関わらず、極めて高いレベルの部材平坦度を必要としない。従って、例えば電子ビーム装置等を用いる必要がないので、これらの装置が不要であり、コスト的に有利である。
(ホ)上記(イ)〜(ニ)のように、高温、高圧力、高真空や、特殊な装置等を必要としないので、容易にかつ低コストで部材の接合を確実に行うことができる。かつ処理が困難な有害廃棄物等の発生が最小限に抑えられている。
下記に示す実施形態は例示であって、従って、発明の範囲はこれら具体的に開示された範囲内に限定されない。
〔部材の接合方法(第一の接合方法)〕
本発明の実施形態による部材の接合方法は、金属面を有する複数の部材のそれらの金属面同士を接合する方法であって、
(1)上記の接合に先だって、接合すべき前記部材の被接合面の少なくとも一部に有機酸を接触させる第一工程と、
(2)前記の有機酸を接触させた被接合面と他の部材の被接合面とを互いに摩擦摺動することによって接合させる第二工程とを含んでなること、を特徴とする。
本発明の実施形態による部材の接合方法は、金属面を有する複数の部材のそれらの金属面同士を接合する方法であって、
(1)上記の接合に先だって、接合すべき前記部材の被接合面の少なくとも一部に有機酸を接触させる第一工程と、
(2)前記の有機酸を接触させた被接合面と他の部材の被接合面とを互いに摩擦摺動することによって接合させる第二工程とを含んでなること、を特徴とする。
実施形態による部材の接合方法によれば、金属面を有する複数の部材のそれらの金属面同士を接合させることができる。
代表的な実施形態では、接合される金属面を有する部材の数は2であるが、他の実施形態では、3個または4個以上の金属面を有する部材を接合させることができる。3個または4個以上の部材を接合させる場合、各部材は同時にあるいは別々に接合することができる。
図3aは、接合される金属面を有する部材が2個の場合についての好ましい実施形態を示すものであり、図3bは、接合される金属面を有する部材が3個の場合についての好ましい実施形態を示すものである。また、上記の実施形態による部材の接合方法を、複数回実施することにより、各部材が積み重ねられて接合して構造物を得ることができる。図3cには、図3bの接合体に対して、更に他の部材を接合させるために本実施形態による部材の接合方法を再度実施して得られた構造物が示されている。
本発明の実施形態による部材の接合方法において、「摩擦摺動」とは、接合の初期段階において、接合面が摩擦力に逆らって摺動することをいう。
接合される金属面は、単一の金属元素からなる純金属、または複数の金属元素ないし非金属元素を含んでなる合金のいずれでもよい。また、接合される複数の部材のそれらの金属面は、同一種類の金属元素からなる場合、異なる種類の金属元素からなる場合、成分の種類および(または)含量が異なる合金からなる場合のいずれでもよい。
<金属面を有する部材>
本発明の実施形態において、接合させる金属面を有する部材には、その金属面に金属酸化物が存在してもよい。この金属酸化物は、主として金属部材を構成している金属と主として空気中の酸素に由来するものと考えられるが、例えば金などのように極めて非酸化性の金属を除いて、多くの金属材料は、程度の違いはあるにせよ、通常、常温の大気中において、その表面に金属酸化物膜を有している。
本発明の実施形態において、接合させる金属面を有する部材には、その金属面に金属酸化物が存在してもよい。この金属酸化物は、主として金属部材を構成している金属と主として空気中の酸素に由来するものと考えられるが、例えば金などのように極めて非酸化性の金属を除いて、多くの金属材料は、程度の違いはあるにせよ、通常、常温の大気中において、その表面に金属酸化物膜を有している。
本発明の実施形態による部材の接合方法は、このような金属酸化物が存在する金属面を有する部材の接合に好ましく適用することができる。したがって、本発明の実施形態による部材の接合方法においては、このような金属酸化物が存在する金属面を有する部材同士を接合させることができ、また、金属酸化物が存在する金属面を有する部材と金属酸化物が存在しない金属面を有する部材とを接合させることができる。
そして、本実施形態による部材の接合方法は、金属面が同一種類の金属である部材同士を接合させることができ、また、金属面が異なる種類の金属である部材同士を接合させることができる。
本発明の実施形態による部材の接合方法において、金属面を有する部材の好ましい具体例としては、例えば(イ)金属部材および(ロ)表面にメタライズ層を有する非金属部材を挙げることができる。
前記(イ)の金属部材の特に好ましい具体例としては、主成分として銅を含む金属材料ならびに主成分としてニッケルを含む金属材料を挙げることができる。
前記(ロ)におけるメタライズ層の特に好ましい具体例としては、主成分として銅を含む金属材料ならびに主成分としてニッケルを含む金属材料を挙げることができる。ここで、「主成分」とは、金属材料中で最も存在割合(原子%)が多い金属原子成分を言う。
これらの金属材料は、主成分としての銅またはニッケルと、その他の金属成分あるいは非金属成分などとの合金(この「合金」は、各成分の固溶体、金属間化合物、混合物等の各種形態を含む)をも含めて言うものである。
また、(ロ)における非金属部材は、その表面にメタライズ層を形成できるものであって、所定の第一工程および第二工程(詳細後記)を実施可能であるものならば、任意の非金属材料からなる部材を用いることができる。
本発明の実施形態による部材の接合方法では、接合に際して、200℃以上の高温を必要とせず、50Pa以上の圧力等を必ずしも必要としない。従って、従来の金属部材の接合方法では採用が困難であった非金属部材であっても本実施形態による部材の接合方法では採用することが可能になる。
本発明の実施形態による部材の接合方法において、好ましい非金属部材としては、例えば、無機材料、半導体材料、有機材料およびこれらの複合材料を挙げることができる。この中では、特に好ましい非金属部材としては、例えば無機材料および半導体材料を挙げることができる。
<第一工程>
本発明の実施形態による部材の接合方法における第一工程は、「接合に先だって、接合すべき前記部材の被接合面の少なくとも一部に有機酸を接触させる工程」である。
本発明の実施形態による部材の接合方法における第一工程は、「接合に先だって、接合すべき前記部材の被接合面の少なくとも一部に有機酸を接触させる工程」である。
本発明の実施形態による部材の接合方法において、有機酸の好ましい具体例としては、例えば(イ)直鎖状炭化水素基を有するカルボン酸、(ロ)環状構造を含むカルボン酸、(ハ)フェノールを挙げることができる。(イ)の鎖式のカルボン酸の中でも、分岐を有さないモノカルボン酸が好ましく、ギ酸および酢酸が特に好ましい。
本発明の実施形態による部材の接合方法においては、接合すべき前記部材(即ち、金属面を有する部材)の被接合面に有機酸を接触させることによって、その被接合面を接合に適した状態に改質することができ、かつこの改質によって得られた接合に適した状態を、第二工程において部材の接合がなされるまで良好に維持できるようになる。この改質は、主として、金属面を有する部材の被接合面に存在する金属酸化物膜を除去すること(ならびに金属面を有する部材の被接合面に汚染物質が付着している場合には、この付着物を金属酸化物膜と共に除去すること)によってなされ、そして、この改質によって得られた接合に適した状態の維持は、金属酸化物膜が除去された金属部材の表面に、有機酸ないし金属に由来する保護膜が形成されることによってなされるものと考えられている。
本発明の実施形態による部材の接合方法において、有機酸の接触は、任意の方法によって行うことができる。特に好ましい有機酸の接触方法としては、(イ)液状の有機酸に金属部材を浸漬する方法、および(ロ)霧状ないし気体状の有機酸に金属部材を暴露させる方法等を挙げることができる。
有機酸を接触させる際の有機酸の温度は、処理の進行度や効率等の観点から、一般的に高い方が好ましい。このことから、接触時の有機酸の温度(T)は、好ましくは
bp−10℃ ≦ T℃ ≦ 有機酸金属塩の分解温度の範囲内 である。
ここで、bpは、用いられる有機酸の沸点(圧力1atm)を意味する。
bp−10℃ ≦ T℃ ≦ 有機酸金属塩の分解温度の範囲内 である。
ここで、bpは、用いられる有機酸の沸点(圧力1atm)を意味する。
処理の効率化の観点からは、有機酸の濃度は可能な限り高い方が好ましく、上記(ロ)のように気体状の有機酸を用いる場合には、沸騰した有機酸の飽和蒸気を接触させることが好ましい。なお、有機酸は、必要に応じて、水あるいは他の液体などで希釈して金属部材に接触させることも可能である。
有機酸を接触させる時間は、例えば金属の種類や有機酸の温度、濃度等に応じて適宜定めることができる。例えば、金属種が、主成分として銅(またはニッケル)を含む銅−ニッケル系合金であって、有機酸としてギ酸または酢酸を用い、上記の金属部材を有機酸液に浸漬させる際の浸漬時間は、好ましくは5〜30分、特に好ましくは10〜20分、である。上記と同様の金属種および有機酸を用い、この金属部材を沸騰した有機酸の飽和蒸気に暴露させる際の暴露時間は、好ましくは0.5〜10分、特に好ましくは1〜5分、である。
有機酸を接触させる時間が上記範囲より短い場合には、接合面の酸化膜除去および保護膜形成が不十分となり、一方、上記範囲より長い場合は、有機酸による接合体の腐食が過剰となることから好ましくない。
金属面を有する部材の有機酸への浸漬は、金属部材の少なくとも被接合面が有機酸に接触するようなものであれば、いずれの方法も採用可能である。特に好ましい方法としては、例えば図1に示されるように、容器1内に貯留された有機酸液2中に金属部材3の少なくとも被接合面3’を浸漬する方法を挙げることができる。この時、金属部材3の有機酸液2への浸漬は、室温の大気圧雰囲気下で行うことができるが、必要に応じて、室温以上の温度条件で浸漬を行ったり、低酸素雰囲気下で浸漬を行うことも、大気圧以上の圧力条件下で浸漬を行うことができる。このうち、有機酸への浸漬を室温の大気圧雰囲気下で行う方法は、コスト的および操作の容易性等の観点から最も好ましい。また、有機酸への浸漬を、室温以上の温度条件で行う方法、低酸素雰囲気下で浸漬を行う方法あるいは大気圧以上の圧力条件下で行う方法は、処理時間の短縮や、処理面の保護性の向上などに有利である点で好ましい。
上記の操作によって、金属部材3の被接合面3’において金属酸化物膜の除去および保護膜4の形成を行うことができる。
金属面を有する部材を有機酸の蒸気に暴露させる際は、室温の大気圧雰囲気下で行うことができるが、必要に応じて、室温以上の温度条件にて暴露を行ったり、低酸素雰囲気下で暴露を行うことも、大気圧以上の圧力条件下で暴露を行うこともできる。このうち、有機酸の暴露を室温の大気圧雰囲気下で行う方法は、コスト的および操作の容易性等の観点からは最も好ましい。また、室温以上の温度条件で行う方法、低酸素雰囲気下で行う方法も、大気圧以上の圧力条件下で行う方法では、処理時間の短縮や、処理面の保護性の向上などに有利である点で好ましい。上記の操作によって、金属部材の被接合面において金属酸化物膜の除去および保護膜の形成を行うことができる。
本発明の実施形態による部材の接合方法において、第一工程は、接合すべき部材の全ての部材の被接合面の全領域に対して行うことが好ましいが、各部材に対して行うそれぞれの第一工程の内容ないし処理条件は、同一であっても異なっていてもよい。
そして、第一工程の内容ないし処理条件は、例えば各部材の具体的内容、状況、得られる接合体の用途、目的等に応じて、適宜定めることができる。例えば、部材表面の金属酸化物膜の除去が他の部材より比較的難しいである部材に対しては第一工程の内容ないし処理条件をそれに適したものにし、一方、金属酸化物膜の除去が比較的容易である部材に対しては第一工程の処理条件を他の部材よりも温和にすることができるし、また、そのような部材に対しては場合により第一工程の実施を省略することも可能である。
本発明の実施形態による部材の接合方法は、接合される部材の少なくとも一つの部材の被接合面を、所定の第一工程および第二工程によって接合させることによって実施されたものであって、必ずしも各部材間の全ての接合が所定の第一工程および第二工程によって接合されている必要はない。
上述の第一工程に付された金属面を有する部材は、そのまま、あるいは必要に応じて、余剰の有機酸を除去したのちに、第二工程に付すことができる。余剰の有機酸の除去は、例えば、常温乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、乾燥空気の吹きつけ、洗浄除去、遠心分離などによって行うことが好ましい。
<第二工程>
本発明の実施形態による部材の接合方法における第二工程は、「前記の有機酸を接触させた被接合面と他の部材の被接合面とを互いに摩擦摺動することによって接合させる工程」である。
本発明の実施形態による部材の接合方法における第二工程は、「前記の有機酸を接触させた被接合面と他の部材の被接合面とを互いに摩擦摺動することによって接合させる工程」である。
本発明の実施形態による部材の接合方法における第二工程は、具体的には、図2に示されるように、第一工程において有機酸を接触させて保護膜4を形成させた被接合面3’と他の部材(第二の部材)5の被接合面5’とを互いに摩擦摺動することによって接合させる工程である。摩擦摺動による接合は、例えばこの図2に示されるように、第一の部材3と第二の部材5とを、一対の接合器具6と6’との間に配置して、一方の接合器具6に第一の部材3を固定し、他方の接続器具6’に第二の部材5を固定したうえで、接合器具6、6’のどちらか片方(あるいは両方)を摺動させることによって、第一の部材3の被接合面3’と第二の部材5の被接合面5’とを互いに摩擦摺動することに行うことができる。
なお、図2の具体例では、下方の接合器具6の位置を固定して、一方、上方の接合器具6’を矢印7のように左右方向に往復摺動させて、この接合器具6’の往復摺動にあわせて第二の部材5が往復摺動することによって、第一の部材3の被接合面3’と第二の部材5の被接合面5’とを互いに摩擦摺動することによって、両被接合面同士の接合がなされるようになっている。この摩擦摺動は、保護膜4を分解させるための熱エネルギーないし機械的エネルギーを供給するとともに、保護膜4を分解した後、被接合面の表面に露出した金属を動的に接合させる。
本発明の実施形態による部材の接合方法の第二工程における摩擦摺動は、好ましくは50μm以下、特に好ましくは25μm以下、更に好ましくは10μm以下、の振幅の往復運動によって行うことができる。10μm以下の振幅の往復運動によって、接合強度が高い接合を確実かつ容易に得ることができる。振幅がこのような範囲にある場合には、一旦接合した部分の破断が生じることが少なく、高い接合強度を得ることができる。
本発明の実施形態による部材の接合方法の摩擦摺動は、接合器具6と6’との間の押圧を、10M〜70MPa、好ましくは20M〜45MPa、の範囲内にて行うことができる。接合器具6と6’との間の押圧が10MPa以上の場合は、有機酸金属塩保護膜の分解に必要な適度の摩擦摺動が発生する点で好ましく、一方、70MPa以下とすることで、過度の圧力や過度の発熱による損傷ないし劣化が生じる可能性を低減できる。
本発明の実施形態による部材の接合方法の第二工程では、主として、上記の摩擦摺動によって、第一工程で形成された保護膜が分解されることにより、この保護膜に覆われていた被接合面と、この被接合面と接合する他の部材の被接合面とが、密接的に接合することが可能になる。なお、保護膜の分解は、目的とする接合強度、接合状態が達成される程度になるまで行うことができる。従って、本発明の実施形態による部材の接合方法は、保護膜の全てが完全に分解されたもののみに限定されない。
本発明の実施形態による部材の接合方法における摩擦摺動は、好ましくは、例えば、圧電式超音波振動子および磁歪式アクチュエータ等によって行うことができる。これらの中では、圧電式超音波振動子によって行うことが特に好ましい。
本発明の実施形態による部材の接合方法の第二工程は、室温の大気圧雰囲気下で実施することができるが、必要に応じて、室温以上の温度条件にて実施したり、低酸素雰囲気下で実施したり、大気圧超過の加圧条件下あるいは大気圧満たない減圧条件下で、実施することができる。
このうち、室温の大気圧雰囲気下で行う方法は、コスト的および操作の容易性等の観点からは最も好ましい。低酸素雰囲気下で実施する方法は、第二工程における被接合面の酸化の進行を著しく低下させることができるので好ましい。また、低酸素雰囲気下で実施する場合には、超音波振動子を用いるまでもなく、より低周波で駆動する振動子によっても良好な接合を効率的に得ることができる。
なお、低酸素雰囲気下とは、雰囲気中の酸素分圧が、大気中の酸素分圧より低い雰囲気をいう。この低酸素雰囲気には、例えば、大気中の酸素の一部ないし全部が酸素以外のガス(好ましくは、非酸化性ガス、例えば窒素、アルゴン、水素およびこれらの混合ガス等)によって置換された雰囲気、ならびに減圧によって雰囲気中の酸素分圧が大気中の酸素分圧より低下した雰囲気などが包含される。
本発明の実施形態による部材の接合方法における第二工程は、酸素分圧が、好ましくは100Pa以下、特に好ましくは1Pa以下、で実施することができる。
上記のような第一工程および第二工程の実施により得られた接合体は、そのまま、あるいは必要に応じて適当な後処理ないし加工に付すことによって、例えば半導体実装、端子接続および電気配線接続等に適した接合体として利用できるものである。
〔部材の接合方法(第二の接合方法)〕
本発明の実施形態による第二の部材の接合方法は、被接合面の少なくとも一部に有機酸を接触させる第一工程と、有機酸を接触させた被接合面と他の部材の被接合面とを互いに摩擦摺動することによって接合させる第二工程とを含んでなる点で前記の第一の接合方法と共通する方法であって、従って、この第二の接合方法は、第一の接合方法の一態様に包含される方法であるが、軟質金属層を配設する工程を含むこと、ならびにこの軟質金属層を介して摩擦摺動がなされることで第一の接合方法と異なることから、第二の接合方法として更に詳細に説明する。
本発明の実施形態による第二の部材の接合方法は、被接合面の少なくとも一部に有機酸を接触させる第一工程と、有機酸を接触させた被接合面と他の部材の被接合面とを互いに摩擦摺動することによって接合させる第二工程とを含んでなる点で前記の第一の接合方法と共通する方法であって、従って、この第二の接合方法は、第一の接合方法の一態様に包含される方法であるが、軟質金属層を配設する工程を含むこと、ならびにこの軟質金属層を介して摩擦摺動がなされることで第一の接合方法と異なることから、第二の接合方法として更に詳細に説明する。
本発明の実施形態による部材の接合方法は、金属面を有する複数の部材のそれらの金属面同士を軟質金属層を介して接合する方法であって、
上記の接合に先だって、接合すべき前記部材の被接合面の少なくとも一部に有機酸を接触させる第一工程と、
前記の有機酸を接触させた被接合面と他の部材の被接合面との間に、軟質金属層を配設する工程、
前記の有機酸を接触させた被接合面と他の部材の被接合面とを、前記の軟質金属層を介して、互いに摩擦摺動することによって接合させる第二工程とを含んでなること、を特徴とする。
上記の接合に先だって、接合すべき前記部材の被接合面の少なくとも一部に有機酸を接触させる第一工程と、
前記の有機酸を接触させた被接合面と他の部材の被接合面との間に、軟質金属層を配設する工程、
前記の有機酸を接触させた被接合面と他の部材の被接合面とを、前記の軟質金属層を介して、互いに摩擦摺動することによって接合させる第二工程とを含んでなること、を特徴とする。
実施形態による部材の接合方法によれば、金属面を有する複数の部材のそれらの金属面同士を、軟質金属層を介して接合させることができる。
代表的な実施形態では、接合される金属面を有する部材の数は2であるが、他の実施形態では、3個または4個以上の金属面を有する部材を接合させることができる。3個または4個以上の部材を接合させる場合、各部材は同時にあるいは別々に接合することができる。
図6aは、接合される金属面を有する部材が2個の場合についての好ましい実施形態を示すものであり、図6bは、接合される金属面を有する部材が3個の場合についての好ましい実施形態を示すものである。また、上記の実施形態による部材の接合方法を、複数回実施することにより、各部材が積み重ねられて接合して構造物を得ることができる。図6cには、図6bの接合体に対して、更に他の部材を接合させるために本実施形態による部材の接合方法を再度実施して得られた構造物が示されている。
本発明の実施形態による部材の接合方法において、「摩擦摺動」とは、接合の初期段階において、接合面が摩擦力に逆らって摺動することをいう。
接合される金属面は、単一の金属元素からなる純金属、または複数の金属元素ないし非金属元素を含んでなる合金のいずれでもよい。また、接合される複数の部材のそれらの金属面は、同一種類の金属元素からなる場合、異なる種類の金属元素からなる場合、成分の種類および(または)含量が異なる合金からなる場合のいずれでもよい。
この有機酸金属塩の保護膜を形成するのに好適な金属部材またはメタライズ層の材質は、特に好ましくは、銅、ニッケルまたはこれらを主成分とする合金である。従って、これらの材質のメタライズ層が形成できれば、それ以外の部材も本実施形態の方法による接合が可能である。本実施形態では、数十MPa程度の加圧力での摩擦摺動によって金属部材表面またはメタライズ表面の保護膜が分解されると同時に、軟質金属箔上の酸化膜も除去される。これは、軟質金属箔が銀箔の場合では形成される酸化膜が極めて薄いこと、アルミニウム箔の場合では形成される酸化膜が母材から容易に引き剥がされやすいことによる。これに対して従来の超音波接合では、例えば銅の部材表面の酸化膜を除去するためには100MPa前後の加圧力下での大きな摩擦エネルギーが必要となる。このように、本実施形態では、多様な組み合わせの異種材料の接合を低エネルギーで実現することを可能とするものである。
さらに、本実施形態では、銀やアルミニウムのような、はんだ材に比べて耐熱サイクル性能に優れた材質を選択することが可能であり、高い耐熱サイクル性能を発揮する構造を実現するものである。
上記の作用は、軟質金属層を摩擦摺動時に介在させる軟質金属箔から形成する場合に限らず、一方の部材の表面に形成されたメッキや蒸着などの層を利用して形成する場合でも同様に得られる。すなわち、本発明の特に好ましい別様態では、2種類異なる金属部材または表面の少なくとも一部をメタライズした部材のうち一方の表面に銀またはアルミニウムの層を形成する前処理工程と、もう一方を沸点近傍に保持した有機酸に浸漬、または沸騰した有機酸の蒸気に暴露する第一の工程と、前記二種類の有機酸に浸漬または暴露した金属部材表面または部材のメタライズ面を互いに摩擦・摺動することにより部材間に軟質金属層を介在させた接合部を形成する第二の工程とからなる。
<金属面を有する部材>
本発明の実施形態において、接合させる金属面を有する部材には、その金属面に金属酸化物が存在してもよい。この金属酸化物は、主として金属部材を構成している金属と主として空気中の酸素に由来するものと考えられるが、例えば金などのように極めて非酸化性の金属を除いて、多くの金属材料は、程度の違いはあるにせよ、通常、常温の大気中において、その表面に金属酸化物膜を有している。
本発明の実施形態において、接合させる金属面を有する部材には、その金属面に金属酸化物が存在してもよい。この金属酸化物は、主として金属部材を構成している金属と主として空気中の酸素に由来するものと考えられるが、例えば金などのように極めて非酸化性の金属を除いて、多くの金属材料は、程度の違いはあるにせよ、通常、常温の大気中において、その表面に金属酸化物膜を有している。
本発明の実施形態による部材の接合方法は、このような金属酸化物が存在する金属面を有する部材の接合に好ましく適用することができる。したがって、本発明の実施形態による部材の接合方法においては、このような金属酸化物が存在する金属面を有する部材同士を接合させることができ、また、金属酸化物が存在する金属面を有する部材と金属酸化物が存在しない金属面を有する部材とを接合させることができる。
そして、本実施形態による部材の接合方法は、金属面が同一種類の金属である部材同士を接合させることができ、また、金属面が異なる種類の金属である部材同士を接合させることができる。
本発明の実施形態による部材の接合方法において、金属面を有する部材の好ましい具体例としては、例えば(イ)金属部材および(ロ)表面にメタライズ層を有する非金属部材を挙げることができる。
前記(イ)の金属部材の特に好ましい具体例としては、主成分として銅を含む金属材料ならびに主成分としてニッケルを含む金属材料を挙げることができる。
前記(ロ)におけるメタライズ層の特に好ましい具体例としては、主成分として銅を含む金属材料ならびに主成分としてニッケルを含む金属材料を挙げることができる。ここで、「主成分」とは、金属材料中で最も存在割合(原子%)が多い金属原子成分を言う。
これらの金属材料は、主成分としての銅またはニッケルと、その他の金属成分あるいは非金属成分などとの合金(この「合金」は、各成分の固溶体、金属間化合物、混合物等の各種形態を含む)をも含めて言うものである。
また、(ロ)における非金属部材は、その表面にメタライズ層を形成できるものであって、所定の第一工程および第二工程(詳細後記)を実施可能であるものならば、任意の非金属材料からなる部材を用いることができる。
本発明の実施形態による部材の接合方法では、接合に際して、200℃以上の高温を必要とせず、50Pa以上の圧力等を必ずしも必要としない。従って、従来の金属部材の接合方法では採用が困難であった非金属部材であっても本実施形態による部材の接合方法では採用することが可能になる。
本発明の実施形態による部材の接合方法において、好ましい非金属部材としては、例えば、無機材料、半導体材料、有機材料およびこれらの複合材料を挙げることができる。この中では、特に好ましい非金属部材としては、例えば無機材料および半導体材料を挙げることができる。
<第一工程>
本発明の実施形態による部材の接合方法における第一工程は、「接合に先だって、接合すべき前記部材の被接合面の少なくとも一部に有機酸を接触させる工程」である。
本発明の実施形態による部材の接合方法における第一工程は、「接合に先だって、接合すべき前記部材の被接合面の少なくとも一部に有機酸を接触させる工程」である。
本発明の実施形態による部材の接合方法において、有機酸の好ましい具体例としては、例えば(イ)直鎖状炭化水素基を有するカルボン酸、(ロ)環状構造を含むカルボン酸、(ハ)フェノールを挙げることができる。(イ)の鎖式のカルボン酸の中でも、分岐を有さないモノカルボン酸が好ましく、ギ酸および酢酸が特に好ましい。
本発明の実施形態による部材の接合方法においては、接合すべき前記部材(即ち、金属面を有する部材)の被接合面に有機酸を接触させることによって、その被接合面を接合に適した状態に改質することができ、かつこの改質によって得られた接合に適した状態を、第二工程において部材の接合がなされるまで良好に維持できるようになる。この改質は、主として、金属面を有する部材の被接合面に存在する金属酸化物膜を除去すること(ならびに金属面を有する部材の被接合面に汚染物質が付着している場合には、この付着物を金属酸化物膜と共に除去すること)によってなされ、そして、この改質によって得られた接合に適した状態の維持は、金属酸化物膜が除去された金属部材の表面に、有機酸ないし金属に由来する保護膜が形成されることによってなされるものと考えられている。
本発明の実施形態による部材の接合方法において、有機酸の接触は、任意の方法によって行うことができる。特に好ましい有機酸の接触方法としては、(イ)液状の有機酸に金属部材を浸漬する方法、および(ロ)霧状ないし気体状の有機酸に金属部材を暴露させる方法等を挙げることができる。
有機酸を接触させる際の有機酸の温度は、処理の進行度や効率等の観点から、一般的に高い方が好ましい。このことから、接触時の有機酸の温度(T)は、好ましくは
bp−10℃ ≦ T℃ ≦ 有機酸金属塩の分解温度の範囲内 である。
ここで、bpは、用いられる有機酸の沸点(圧力1atm)を意味する。
bp−10℃ ≦ T℃ ≦ 有機酸金属塩の分解温度の範囲内 である。
ここで、bpは、用いられる有機酸の沸点(圧力1atm)を意味する。
処理の効率化の観点からは、有機酸の濃度は可能な限り高い方が好ましく、上記(ロ)のように気体状の有機酸を用いる場合には、沸騰した有機酸の飽和蒸気を接触させることが好ましい。なお、有機酸は、必要に応じて、水あるいは他の液体などで希釈して金属部材に接触させることも可能である。
有機酸を接触させる時間は、例えば金属の種類や有機酸の温度、濃度等に応じて適宜定めることができる。例えば、金属種が、主成分として銅(またはニッケル)を含む銅−ニッケル系合金であって、有機酸としてギ酸または酢酸を用い、上記の金属部材を有機酸液に浸漬させる際の浸漬時間は、好ましくは5〜30分、特に好ましくは10〜20分、である。上記と同様の金属種および有機酸を用い、この金属部材を沸騰した有機酸の飽和蒸気に暴露させる際の暴露時間は、好ましくは0.5〜10分、特に好ましくは1〜5分、である。
有機酸を接触させる時間が上記範囲より短い場合には、接合面の酸化膜除去および保護膜形成が不十分となり、一方、上記範囲より長い場合は、有機酸による接合体の腐食が過剰となることから好ましくない。
金属面を有する部材の有機酸への浸漬は、金属部材の少なくとも被接合面が有機酸に接触するようなものであれば、いずれの方法も採用可能である。特に好ましい方法としては、例えば図4に示されるように、容器1内に貯留された有機酸液2中に金属部材3の少なくとも被接合面3’を浸漬する方法を挙げることができる。この時、金属部材3の有機酸液2への浸漬は、室温の大気圧雰囲気下で行うことができるが、必要に応じて、室温以上の温度条件で浸漬を行ったり、低酸素雰囲気下で浸漬を行うことも、大気圧以上の圧力条件下で浸漬を行うことができる。このうち、有機酸への浸漬を室温の大気圧雰囲気下で行う方法は、コスト的および操作の容易性等の観点から最も好ましい。また、有機酸への浸漬を、室温以上の温度条件で行う方法、低酸素雰囲気下で浸漬を行う方法あるいは大気圧以上の圧力条件下で行う方法は、処理時間の短縮や、処理面の保護性の向上などに有利である点で好ましい。
上記の操作によって、金属部材3の被接合面3’において金属酸化物膜の除去および保護膜4の形成を行うことができる。
金属面を有する部材を有機酸の蒸気に暴露させる際は、室温の大気圧雰囲気下で行うことができるが、必要に応じて、室温以上の温度条件にて暴露を行ったり、低酸素雰囲気下で暴露を行うことも、大気圧以上の圧力条件下で暴露を行うこともできる。このうち、有機酸の暴露を室温の大気圧雰囲気下で行う方法は、コスト的および操作の容易性等の観点からは最も好ましい。また、室温以上の温度条件で行う方法、低酸素雰囲気下で行う方法も、大気圧以上の圧力条件下で行う方法では、処理時間の短縮や、処理面の保護性の向上などに有利である点で好ましい。上記の操作によって、金属部材の被接合面において金属酸化物膜の除去および保護膜の形成を行うことができる。
本発明の実施形態による部材の接合方法において、第一工程は、接合すべき部材の全ての部材の被接合面の全領域に対して行うことが好ましいが、各部材に対して行うそれぞれの第一工程の内容ないし処理条件は、同一であっても異なっていてもよい。
そして、第一工程の内容ないし処理条件は、例えば各部材の具体的内容、状況、得られる接合体の用途、目的等に応じて、適宜定めることができる。例えば、部材表面の金属酸化物膜の除去が他の部材より比較的難しいである部材に対しては第一工程の内容ないし処理条件をそれに適したものにし、一方、金属酸化物膜の除去が比較的容易である部材に対しては第一工程の処理条件を他の部材よりも温和にすることができるし、また、そのような部材に対しては場合により第一工程の実施を省略することも可能である。
本発明の実施形態による部材の接合方法は、接合される部材の少なくとも一つの部材の被接合面を、所定の第一工程および第二工程によって接合させることによって実施されたものであって、必ずしも各部材間の全ての接合が所定の第一工程および第二工程によって接合されている必要はない。
上述の第一工程に付された金属面を有する部材は、そのまま、あるいは必要に応じて、余剰の有機酸を除去したのちに、第二工程に付すことができる。余剰の有機酸の除去は、例えば、常温乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、乾燥空気の吹きつけ、洗浄除去、遠心分離などによって行うことが好ましい。
<軟質金属層の配設>
本発明の実施形態による部材の接合方法では、第一工程の後、第二工程の前に、前記の有機酸を接触させた被接合面と他の部材の被接合面との間に、軟質金属層を配設することが行われる。
本発明の実施形態による部材の接合方法では、第一工程の後、第二工程の前に、前記の有機酸を接触させた被接合面と他の部材の被接合面との間に、軟質金属層を配設することが行われる。
軟質金属層を形成する軟質金属は、せん断強度が接合する部材のせん断強度より小さい物が好ましく、特に融点が300℃以上の物が好ましい。
本発明の実施形態において、軟質金属の好ましい具体例としては、主成分としてアルミニウム、銀および亜鉛からなる群から選ばれた金属元素を含む材料からなるものを挙げることができる。この中でも、主成分としてアルミニウムを含む金属材料からなるもの、および主成分として銀を含む金属材料からなるものが特に好ましい。ここで、「主成分」とは、金属材料中で最も存在割合(原子%)が多い金属原子成分を言う。
これらの金属材料は、主成分としての銅またはニッケルと、その他の金属成分あるいは非金属成分などとの合金(この「合金」は、各成分の固溶体、金属間化合物、混合物等の各種形態を含む)をも含めて言うものである。
軟質金属層の配設は、金属面を有する部材の接合すべき面の上に、単に置くだけでよいが、必要に応じて、置いた後に押圧したり、適当な接着剤ないし粘着剤によって一時的に固定することができる。また、メッキ、蒸着、イオンプレーティング等によっても、金属面を有する部材に軟質金属層を配設することができる。これらの中では、軟質金属層を、金属面を有する部材の接合すべき面の上に単に置くだけのものが、操作的にも、金属純度を低下させる恐れがないことから、特に好ましい。
軟質金属層の厚さは、摩擦摺動(第二工程における摩擦摺動)に付す前の状態で、好ましくは2〜300μm、特に好ましくは50〜200μm、であり、摩擦摺動に付した後の状態で、好ましくは1〜200μm、特に好ましくは30〜100μm、である。なお、軟質金属層の厚さは、接合される面の全体にわたって均一であることが好ましいが、部分的に異なることができる。
なお、軟質金属層は、例えばその表面に酸化物を有する場合があるが、この表面の酸化物は、摩擦摺動の際に実質的にその全量または一部が軟質金属層から剥離または分解されることから、この酸化物の存在が接合強度への影響を及ぼすことはほとんど観察されない。
<第二工程>
本発明の実施形態による部材の接合方法における第二工程は、「前記の有機酸を接触させた被接合面と他の部材の被接合面とを、前記の軟質金属層を介して、互いに摩擦摺動することによって接合させる工程」である。
本発明の実施形態による部材の接合方法における第二工程は、「前記の有機酸を接触させた被接合面と他の部材の被接合面とを、前記の軟質金属層を介して、互いに摩擦摺動することによって接合させる工程」である。
本発明の実施形態による部材の接合方法における第二工程は、具体的には、図5に示されるように、第一工程において有機酸を接触させて保護膜4を形成させた被接合面3’と他の部材(第二の部材)5の被接合面5’とを互いに摩擦摺動することによって接合させる工程である。摩擦摺動による接合は、例えばこの図5に示されるように、保護膜4の上に軟質金属層8を配設した第一の部材3と、第二の部材5とを、一対の接合器具6と6’との間に配置して、一方の接合器具6に第一の部材3を固定し、他方の接続器具6’に第二の部材5を固定したうえで、接合器具6、6’のどちらか片方(あるいは両方)を摺動させることによって、第一の部材3の被接合面3’と第二の部材5の被接合面5’とを、軟質金属層8を介して、互いに摩擦摺動することに行うことができる。
なお、図5の具体例では、下方の接合器具6の位置を固定して、一方、上方の接合器具6’を矢印7のように左右方向に往復摺動させて、この接合器具6’の往復摺動にあわせて第二の部材5が往復摺動することによって、第一の部材3の被接合面3’と第二の部材5の被接合面5’とを、軟質金属層8を介して、互いに摩擦摺動することによって、両被接合面同士の接合がなされるようになっている。この摩擦摺動は、保護膜4ならびに軟質金属層8の表面に存在することが酸化物層を分解させるための熱エネルギーないし機械的エネルギーを供給するとともに、保護膜4および軟質金属層表面の酸化物層を分解した後、被接合面の表面に露出した金属を動的に接合させる。
本発明の実施形態による部材の接合方法の第二工程における摩擦摺動は、好ましくは50μm以下、特に好ましくは25μm以下、更に好ましくは10μm以下、の振幅の往復運動によって行うことができる。10μm以下の振幅の往復運動によって、接合強度が高い接合を確実かつ容易に得ることができる。振幅がこのような範囲にある場合には、一旦接合した部分の破断が生じることが少なく、高い接合強度を得ることができる。
本発明の実施形態による部材の接合方法の摩擦摺動は、接合器具6と6’との間の押圧を、10M〜70MPa、好ましくは20M〜45MPa、の範囲内にて行うことができる。接合器具6と6’との間の押圧が10MPa以上の場合は、有機酸金属塩保護膜の分解に必要な適度の摩擦摺動が発生する点で好ましく、一方、70MPa以下とすることで、過度の圧力や過度の発熱による損傷ないし劣化が生じる可能性を低減できる。
本発明の実施形態による部材の接合方法の第二工程では、主として、上記の摩擦摺動によって、第一工程で形成された保護膜が分解されることにより、この保護膜に覆われていた被接合面と、この被接合面と接合する他の部材の被接合面とが、密接的に接合することが可能になる。なお、保護膜の分解は、目的とする接合強度、接合状態が達成される程度になるまで行うことができる。従って、本発明の実施形態による部材の接合方法は、保護膜の全てが完全に分解されたもののみに限定されない。
本発明の実施形態による部材の接合方法における摩擦摺動は、好ましくは、例えば、圧電式超音波振動子および磁歪式アクチュエータ等によって行うことができる。これらの中では、圧電式超音波振動子によって行うことが特に好ましい。
本発明の実施形態による部材の接合方法の第二工程は、室温の大気圧雰囲気下で実施することができるが、必要に応じて、室温以上の温度条件にて実施したり、低酸素雰囲気下で実施したり、大気圧超過の加圧条件下あるいは大気圧満たない減圧条件下で、実施することができる。
このうち、室温の大気圧雰囲気下で行う方法は、コスト的および操作の容易性等の観点からは最も好ましい。低酸素雰囲気下で実施する方法は、第二工程における被接合面の酸化の進行を著しく低下させることができるので好ましい。また、低酸素雰囲気下で実施する場合には、超音波振動子を用いるまでもなく、より低周波で駆動する振動子によっても良好な接合を効率的に得ることができる。
なお、低酸素雰囲気下とは、雰囲気中の酸素分圧が、大気中の酸素分圧より低い雰囲気をいう。この低酸素雰囲気には、例えば、大気中の酸素の一部ないし全部が酸素以外のガス(好ましくは、非酸化性ガス、例えば窒素、アルゴン、水素およびこれらの混合ガス等)によって置換された雰囲気、ならびに減圧によって雰囲気中の酸素分圧が大気中の酸素分圧より低下した雰囲気などが包含される。
本発明の実施形態による部材の接合方法における第二工程は、酸素分圧が、好ましくは100Pa以下、特に好ましくは1Pa以下、で実施することができる。
〔接合体〕
本発明の実施形態による接合体は、上記の第一の接合方法または第二の接合方法のいずれかの接合方法によって金属面を有する部材が接合されたもの、である。
本発明の実施形態による接合体は、上記の第一の接合方法または第二の接合方法のいずれかの接合方法によって金属面を有する部材が接合されたもの、である。
上記の第一の接合方法または第二の接合方法の実施により得られた接合体は、そのまま、あるいは必要に応じて適当な後処理ないし加工に付すことによって、例えば半導体実装、端子接続および電気配線接続等に適した接合体として利用できるものである。
特に、半導体と絶縁基板のように熱膨張率の差異が大きな異種材の接合においては、本実施形態の手法により、表面に銅またはニッケルの層を形成した上で有機酸による処理を施し、銀箔を介在させて接合することで、従来のはんだ材による接合に比べて疲労強度の高い銀を介在層に用いたので耐熱サイクル性能が向上できるこれまでに無い新たな接合体構造を容易に形成できる。
以下の実施例は、上記した実施形態による部材の接合方法のうちの、特に好ましい幾つかの代表例について、より詳細に示すものである。従って、下記に示された実施例に具体的に開示された技術的範囲内のみに限定されることはない。
<実施例1>
下記に示される金属部材(第一の部材)、他の金属部材(第二の部材)および下記の有機酸を用い、下記に示される第一工程および第二工程を実施することによって、上記の第一の部材と第二の部材とを接合させて、接合構造物を得た。
下記に示される金属部材(第一の部材)、他の金属部材(第二の部材)および下記の有機酸を用い、下記に示される第一工程および第二工程を実施することによって、上記の第一の部材と第二の部材とを接合させて、接合構造物を得た。
・第一の部材 材質:無酸素銅
寸法:5mm角×1.5mm厚さ
・第二の部材 材質:無酸素銅
寸法:20mm角×3mm厚さ
・有機酸:ギ酸
・第一工程:ギ酸を95℃に保持した処理層に第一および第二の部材を浸漬し、15分間保持した後取り出し、大気中にて乾燥した。
寸法:5mm角×1.5mm厚さ
・第二の部材 材質:無酸素銅
寸法:20mm角×3mm厚さ
・有機酸:ギ酸
・第一工程:ギ酸を95℃に保持した処理層に第一および第二の部材を浸漬し、15分間保持した後取り出し、大気中にて乾燥した。
・第二工程:超音波振動子により水平方向に180°の位相差を保って振動し、垂直方向に接合体を一定の加圧力で挟み込むことが可能な1対の接合器具の間に第一の部材および第二の部材をセットし、接合器具によって両部材の接触面に垂直な方向に対して33MPaを印加した後、接合面に水平な方向に10μm−20kHzの往復摩擦摺動を超音波振動子を用いて加えた。
得られた接合構造物について、そのせん断強度を引張試験装置によって評価したところ、この接合構造物と同じ形状に加工された一体の無酸素銅材について接合構造物の接合面と同じ面に対して実施したせん断強度の90%を示し、接合部の強度が部材のバルク強度の90%に到達していることが確認された。このような強固な金属同士の接合は、従来は高温加熱を必要とするろう付けや拡散接合といった方法で行われてきたが、本接合方法はこれらと同等の接合強度を低温雰囲気下で実現可能とするものである。
<実施例2>
下記に示される金属面を有する半導体部材(第一の部材)、他の金属面を有するセラミックス部材(第二の部材)および下記の有機酸を用い、下記に示される第一工程および第二工程を実施することによって、上記の第一の部材と第二の部材とを接合させて、接合構造物を得た。
下記に示される金属面を有する半導体部材(第一の部材)、他の金属面を有するセラミックス部材(第二の部材)および下記の有機酸を用い、下記に示される第一工程および第二工程を実施することによって、上記の第一の部材と第二の部材とを接合させて、接合構造物を得た。
・第一の部材 材質:Si
メタライズ:接合面に2μmの銅蒸着層、接合面の反対面に3μmのアルミニウム蒸着層
寸法:6mm角×0.4mm厚さ
・第二の部材 材質:AlN
メタライズ:両面に0.3mmのCu板をろう付け
寸法:30mm角×1mm厚さ(メタライズ層を除く)
・有機酸:ギ酸
・第一工程:実施例1と同じ
・第二工程:実施例1と同様にセットし、接合器具によって両部材の接触面に垂直な方向に対して22MPaを印加した後、接合面に水平な方向に5μm−20kHzの往復摩擦摺動を超音波振動子を用いて加えた。
メタライズ:接合面に2μmの銅蒸着層、接合面の反対面に3μmのアルミニウム蒸着層
寸法:6mm角×0.4mm厚さ
・第二の部材 材質:AlN
メタライズ:両面に0.3mmのCu板をろう付け
寸法:30mm角×1mm厚さ(メタライズ層を除く)
・有機酸:ギ酸
・第一工程:実施例1と同じ
・第二工程:実施例1と同様にセットし、接合器具によって両部材の接触面に垂直な方向に対して22MPaを印加した後、接合面に水平な方向に5μm−20kHzの往復摩擦摺動を超音波振動子を用いて加えた。
得られた接合構造物について、せん断試験を実施した結果、Si内部で破壊が生じ、接合部はSiのバルク強度より高強度であることが確認できた。従って、本接合法による接合部が強度的な欠陥とはなり難いことが示された。
<比較例1>
実施例1と同じ部材を低温で実施可能な従来からの接合方法であるはんだ接合で接合した。はんだ材はPbはんだを用いた。この接合構造物のせん断試験を実施した。その結果、はんだ接合部で破断が生じ、接合部が強度上の欠陥となっていることが確認された。
実施例1と同じ部材を低温で実施可能な従来からの接合方法であるはんだ接合で接合した。はんだ材はPbはんだを用いた。この接合構造物のせん断試験を実施した。その結果、はんだ接合部で破断が生じ、接合部が強度上の欠陥となっていることが確認された。
また、実施例2で用いた物と同じ部材を低温で実施可能な従来からの接合方法であるはんだ接合で接合した。はんだ材はPbはんだを用いた。この接合構造物のせん断試験を実施した。その結果、はんだ接合部で破断が生じ、接合部が強度上の欠陥となっていることが確認された。
<実施例3>
下記に示される金属部材(第一の部材)、他の金属部材(第二の部材)および下記の有機酸を用い、下記に示される第一工程および第二工程を実施することによって、上記の第一の部材と第二の部材とを接合させて、接合構造物を得た。
下記に示される金属部材(第一の部材)、他の金属部材(第二の部材)および下記の有機酸を用い、下記に示される第一工程および第二工程を実施することによって、上記の第一の部材と第二の部材とを接合させて、接合構造物を得た。
・第一の部材:実施例1に同じ
・第二の部材:実施例1に同じ
・有機酸:実施例1に同じ
・第一工程:実施例1に同じ
・第二工程:磁歪式アクチュエータにより水平方向に180°の位相差を保って振動し、垂直方向に接合体を一定の加圧力で挟み込むことが可能な1対の接合器具を雰囲気の酸素分圧が1Pa以下まで排気可能な空間に配置し、接合器具間に第一の部材および第二の部材をセットしてから酸素分圧が1Pa以下となるまで真空排気し、接合器具によって両部材の接触面に垂直な方向に対して22MPaを印加した後、接合面に水平な方向に10μm−1kHzの往復摩擦摺動を超音波振動子を用いて加えた。
・第二の部材:実施例1に同じ
・有機酸:実施例1に同じ
・第一工程:実施例1に同じ
・第二工程:磁歪式アクチュエータにより水平方向に180°の位相差を保って振動し、垂直方向に接合体を一定の加圧力で挟み込むことが可能な1対の接合器具を雰囲気の酸素分圧が1Pa以下まで排気可能な空間に配置し、接合器具間に第一の部材および第二の部材をセットしてから酸素分圧が1Pa以下となるまで真空排気し、接合器具によって両部材の接触面に垂直な方向に対して22MPaを印加した後、接合面に水平な方向に10μm−1kHzの往復摩擦摺動を超音波振動子を用いて加えた。
得られた接合構造物について、そのせん断強度を引張試験装置によって評価したところ、この接合構造物と同じ形状に加工された一体の無酸素銅材について接合構造物の接合面と同じ面に対して実施したせん断強度の90%を示し、接合部の強度が部材のバルク強度の90%に到達していることが確認された。
従って、接合雰囲気の酸素分圧を低減して酸化の進行を低減することによって、より低周波で駆動する振動子によっても良好な接合を実現できる。
<実施例4>
下記に示される金属部材(第一の部材)、軟質金属層、他の金属部材(第二の部材)および下記の有機酸を用い、下記に示される第一工程および第二工程を実施することによって、上記の第一の部材と第二の部材とを接合させて、接合構造物を得た。
下記に示される金属部材(第一の部材)、軟質金属層、他の金属部材(第二の部材)および下記の有機酸を用い、下記に示される第一工程および第二工程を実施することによって、上記の第一の部材と第二の部材とを接合させて、接合構造物を得た。
・第一の部材 材質:無酸素銅
寸法:5mm角×1.5mm厚さ
・軟質金属層 材質:Al
寸法:5mm角×100μm厚さ
・第二の部材 材質:無酸素銅
寸法:20mm角×3mm厚さ
・有機酸:ギ酸
・第一工程:ギ酸を95℃に保持した処理層に第一および第二の部材を浸漬し、15分間保持した後取り出し、大気中にて乾燥した。
寸法:5mm角×1.5mm厚さ
・軟質金属層 材質:Al
寸法:5mm角×100μm厚さ
・第二の部材 材質:無酸素銅
寸法:20mm角×3mm厚さ
・有機酸:ギ酸
・第一工程:ギ酸を95℃に保持した処理層に第一および第二の部材を浸漬し、15分間保持した後取り出し、大気中にて乾燥した。
上記で得られた第一の部材の上に、上記の軟質金属層を配置した後、その上に上記で得られた第二の部材を重ね合わせた。
・第二工程:超音波振動子により水平方向に180°の位相差を保って振動し、垂直方向に接合体を一定の加圧力で挟み込むことが可能な1対の接合器具の間に第一の部材および第二の部材をセットし、接合器具によって両部材の接触面に垂直な方向に対して33MPaを印加した後、接合面に水平な方向に10μm−20kHzの往復摩擦摺動を超音波振動子を用いて加えた。
得られた接合構造物について、そのせん断強度を引張試験装置によって評価したところ、この接合構造物と同じ形状に加工された一体の無酸素銅材について接合構造物の接合面と同じ面に対して実施したせん断強度の90%を示し、接合部の強度が部材のバルク強度の90%に到達していることが確認された。このような強固な金属同士の接合は、従来は高温加熱を必要とするろう付けや拡散接合といった方法で行われてきたが、本接合方法はこれらと同等の接合強度を低温雰囲気下で実現可能とするものである。
<実施例5>
下記に示される金属面を有する半導体部材(第一の部材)、軟質金属層、他の金属面を有するセラミックス部材(第二の部材)および下記の有機酸を用い、下記に示される第一工程および第二工程を実施することによって、上記の第一の部材と第二の部材とを接合させて、接合構造物を得た。
下記に示される金属面を有する半導体部材(第一の部材)、軟質金属層、他の金属面を有するセラミックス部材(第二の部材)および下記の有機酸を用い、下記に示される第一工程および第二工程を実施することによって、上記の第一の部材と第二の部材とを接合させて、接合構造物を得た。
・第一の部材 材質:Si
メタライズ:接合面に2μmの銅蒸着層、接合面の反対面に3μmのアルミニウム蒸着層
寸法:6mm角×0.4mm厚さ
・軟質金属層 材質:銀
寸法:5mm角×50μm厚さ
・第二の部材 材質:AlN
メタライズ:両面に0.3mmのCu板をろう付け
寸法:30mm角×1mm厚さ(メタライズ層を除く)
・有機酸:ギ酸
・第一工程:実施例4と同じ
・第二工程:実施例4と同様にセットし、接合器具によって両部材の接触面に垂直な方向に対して22MPaを印加した後、接合面に水平な方向に5μm−20kHzの往復摩擦摺動を超音波振動子を用いて加えた。
メタライズ:接合面に2μmの銅蒸着層、接合面の反対面に3μmのアルミニウム蒸着層
寸法:6mm角×0.4mm厚さ
・軟質金属層 材質:銀
寸法:5mm角×50μm厚さ
・第二の部材 材質:AlN
メタライズ:両面に0.3mmのCu板をろう付け
寸法:30mm角×1mm厚さ(メタライズ層を除く)
・有機酸:ギ酸
・第一工程:実施例4と同じ
・第二工程:実施例4と同様にセットし、接合器具によって両部材の接触面に垂直な方向に対して22MPaを印加した後、接合面に水平な方向に5μm−20kHzの往復摩擦摺動を超音波振動子を用いて加えた。
得られた接合構造物について、せん断試験を実施した結果、Si内部で破壊が生じ、接合部はSiのバルク強度より高強度であることが確認できた。従って、本接合法による接合部が強度的な欠陥とはなり難いことが示された。
<実施例6>
下記に示される金属部材(第一の部材)、軟質金属層、他の金属部材(第二の部材)および下記の有機酸を用い、下記に示される第一工程および第二工程を実施することによって、上記の第一の部材と第二の部材とを接合させて、接合構造物を得た。
下記に示される金属部材(第一の部材)、軟質金属層、他の金属部材(第二の部材)および下記の有機酸を用い、下記に示される第一工程および第二工程を実施することによって、上記の第一の部材と第二の部材とを接合させて、接合構造物を得た。
・第一の部材:実施例4に同じ
・第二の部材:実施例4に同じ
・有機酸:実施例4に同じ
・軟質金属層:実施例4に同じ
・第一工程:実施例4に同じ
・第二工程:磁歪式アクチュエータにより水平方向に180°の位相差を保って振動し、垂直方向に接合体を一定の加圧力で挟み込むことが可能な1対の接合器具を雰囲気の酸素分圧が1Pa以下まで排気可能な空間に配置し、接合器具間に第一の部材、軟質金属層および第二の部材をセットしてから酸素分圧が1Pa以下となるまで真空排気し、接合器具によって両部材の接触面に垂直な方向に対して22MPaを印加した後、接合面に水平な方向に10μm−1kHzの往復摩擦摺動を超音波振動子を用いて加えた。
・第二の部材:実施例4に同じ
・有機酸:実施例4に同じ
・軟質金属層:実施例4に同じ
・第一工程:実施例4に同じ
・第二工程:磁歪式アクチュエータにより水平方向に180°の位相差を保って振動し、垂直方向に接合体を一定の加圧力で挟み込むことが可能な1対の接合器具を雰囲気の酸素分圧が1Pa以下まで排気可能な空間に配置し、接合器具間に第一の部材、軟質金属層および第二の部材をセットしてから酸素分圧が1Pa以下となるまで真空排気し、接合器具によって両部材の接触面に垂直な方向に対して22MPaを印加した後、接合面に水平な方向に10μm−1kHzの往復摩擦摺動を超音波振動子を用いて加えた。
得られた接合構造物について、そのせん断強度を引張試験装置によって評価したところ、この接合構造物と同じ形状に加工された一体の無酸素銅材について接合構造物の接合面と同じ面に対して実施したせん断強度の90%を示し、接合部の強度が部材のバルク強度の90%に到達していることが確認された。
従って、接合雰囲気の酸素分圧を低減して酸化の進行を低減することによって、より低周波で駆動する振動子によっても良好な接合を実現できる。
以上で記したように、本発明の好ましい実施形態によれば、金属部材または表面の少なくとも一部をメタライズした部材を常温の雰囲気下において軟質金属層を介して接合することが可能となる。また、軟質金属層を介在させたことで、優れた耐熱サイクル特性を有する接合体が構成できる。
1 容器
2 有機酸液
3 金属面を有する部材
3’ 被接合面
4 保護膜
5 第二の部材
5’ 被接合面
6、6’接合器具
8 軟質金属層
2 有機酸液
3 金属面を有する部材
3’ 被接合面
4 保護膜
5 第二の部材
5’ 被接合面
6、6’接合器具
8 軟質金属層
Claims (12)
- 金属面を有する複数の部材のそれらの金属面同士を接合する方法であって、
上記の接合に先だって、接合すべき前記部材の被接合面の少なくとも一部に有機酸を接触させる第一工程と、
前記の有機酸を接触させた被接合面と他の部材の被接合面とを互いに摩擦摺動することによって接合させる第二工程とを含んでなることを特徴とする、部材の接合方法。 - 前記の第一工程の後、前記の有機酸を接触させた被接合面と他の部材の被接合面との間に軟質金属層を配設し、その後、
前記の有機酸を接触させた被接合面と他の部材の被接合面とを、前記の軟質金属層を介して、互いに摩擦摺動することによって接合させる第二工程を実施する、請求項1に記載の部材の接合方法。 - 前記の軟質金属層は、せん断強度が接合する部材のせん断強度より小さく、300℃以上の融点を有する金属からなる、請求項2に記載の部材の接合方法。
- 前記の軟質金属層が、主成分としてアルミニウム、銀および亜鉛からなる群から選ばれた金属元素を含む材料からなる、請求項2または3に記載の部材の接合方法。
- 複数の部材のそれらの接合される金属面が、異なる種類の金属元素を主成分とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の部材の接合方法。
- 前記の金属面を有する部材が、(イ)金属部材、(ロ)表面にメタライズ層を有する非金属部材のいずれかである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の部材の接合方法。
- 前記(イ)の金属部材および(または)前記(ロ)におけるメタライズ層が、主成分として銅またはニッケルを含む金属材料からなるものである、請求項6に記載の部材の接合方法。
- 前記の有機酸が、直鎖状炭化水素基を有するカルボン酸である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の部材の接合方法。
- 前記の摩擦摺動が、25μm以下の振幅の往復運動によってなされる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の部材の接合方法。
- 前記の摩擦摺動が、超音波振動子によって与えられる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の部材の接合方法。
- 前記の第二工程を、酸素分圧が1Pa以下の雰囲気中で実施する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の部材の接合方法。
- 前記の請求項1〜11のいずれか1項に記載の部材の接合方法によって、金属面を有する部材が接合されたものであることを特徴とする、接合体。
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JP2014255484A JP2015178132A (ja) | 2014-02-25 | 2014-12-17 | 部材の接合方法および接合体 |
Applications Claiming Priority (3)
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JP2014034589 | 2014-02-25 | ||
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JP2020168658A (ja) * | 2019-04-05 | 2020-10-15 | サンケン電気株式会社 | 金属接合方法 |
-
2014
- 2014-12-17 JP JP2014255484A patent/JP2015178132A/ja active Pending
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