JP2015175141A - 採光面材および建物の開口部構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】 比較的簡単な構造であり低コストで製作することができながら、屋外の光を違和感なく室内の奥まで十分に取り入れることができて、室内の明るさ感を向上させることができ、かつ室外からの日射熱による屈折素材層の接着面の劣化が生じ難く、断熱・遮熱性能に優れ、しかも防犯機能を有する採光面材を提供する。【解決手段】 この採光面材1は、建物の開口部11を塞ぎ屋外の光を室内に取り入れるために設けられる。採光面材1は、空気層4を隔てて室外側および室内側にそれぞれ配置される室外側板2および複層の室内側板3を有する。室内側板3は、透光板3aと拡散板3bの間に屈折素材層6を挟み込んでなる。屈折素材層6は、屈折性を有する透明の高分子材料からなり、互いに対向する一対の表層部6a同士が、互いに間隔を開けて位置する複数のブリッジ部6bを介して繋がる断面梯子状の構造である、【選択図】 図1

Description

この発明は、建物の採光窓等の開口部に設けられて室内の明るさ感を向上させる採光面材、およびそれを用いた建物の開口部構造に関する。
自然光による室内の明るさ感を高めることや眩しさを調整することを目的として、屋外に設置した採光調整用設備により、太陽光の室内への入射を調整することが行われている。例えば特許文献1,2は、太陽光を反射可能な庇、棚等からなるライトシェルフを設けて、入射光を天井側に向けて反射させる方法である。特許文献3は、キャンチバルコニー等で遮られる日射を、屋外に設けた日射制御板で屈折させて室内に適度に取り込む方法である。
また、上記のような採光調整用設備を設置するのでなく、窓に設けられる採光面材を工夫することで、太陽光の室内への入射を調整することも行われている。一般の採光面材は、すりガラス等の拡散板、または透明ガラス等の透光板が用いられているが、これら拡散板または透光板の屋外面にプリズムシートを被覆して、太陽光を室内の奥まで導くようにした窓板が提案されている(例えば特許文献4)。また、ドーム型の採光装置において、採光口に乳白色のドームカバーを取付け、出射口にプリズム加工された配光板を設けた技術が提案されている(特許文献5)。遮光性を高める技術としては、偏光フィルムを設けた窓ガラスがある(例えば特許文献6)。
防犯、防火、紫外線・熱線遮蔽等の機能を有するフィルムを設けた合わせガラス、また窓からの採光を天井等に導く採光シートが、特許文献7〜12に提案されている。
特開2012−230841号公報 特開2001−323621号公報 特開2011−163065号公報 特開平11−280350号公報 特開平11−281913号公報 特開2008−165201号公報 特開2012−255951号公報 特開2006−317846号公報 特許4887092号 特開2010−259406号公報 特開2013−082602号公報 特開2013−157273号公報
前記ライトシェルフ、日射制御板等の採光調整用設備は、基本的に太陽光を反射させて室内に取り込む方式である。そのため、採光調整用設備に太陽光が直接当たらないと十分な効果を見込めない。曇天時等には、ライトシェルフや日射制御板が屋外からの光を遮ることで、逆に室内が暗くなることもある。このような理由から、これらの採光調整用設備は、建物の南側に設置しなければならないため、天候等に効果が左右されるといった問題があり、利用できるケースが限られる。また、十分に光を室内に取り込むことができても、その効果が目視では分かりにくい場合もある。
また、従来の採光面材には、次のような問題がある。すなわち、上記の出射側面にプリズム加工部を設けたものでは、太陽光を室内の奥まで導くことが可能であるが、室内に虹のような光模様が映る場合があり、自然光として違和感が生じてしまう。加えて、プリズム加工面は、その凹凸のために汚れが生じ易い。プリズム加工部の代わりに、光を屈折させる屈折フィルムを用いることが考えられるが、プリズム加工部を設けた場合と同様に、室内に虹のような光模様により自然光として違和感が生じることがある。加えて、偏光フィルムは、傷や汚れ、紫外線による変性等により、その屈折の効果が減ってしまう。
そこで、上記従来の採光面材の問題点を解消した図12に示す採光面材を提案した(特願2012−186522)。同図の採光面材1Aは、透光板からなる室外側板2の裏面に、入射光を屈折して透過させる屈折素材層31を設け、その室内側に拡散板からなる室内側板3を設けたものである。室外側板2と室内側板3との間には空気層4を介在させる。前記屈折素材層31は、例えばフィルムからなり、室外側板2に接着剤により貼り付けられる。
この提案例の採光面材1Aによると、高い位置にある太陽からの光を、建物の外壁の窓等の開口部から採光面材1Aを通して室内に取り込むときに、透光板からなる室外側板2を下向きに透過した入射光が、屈折素材層31により上向きの光に屈折させられ、この上向きとなった光が拡散板からなる室内側板3を透過することで拡散光となる。これにより、屋外からの光を室内の奥まで取り入れることができ、明るさ感を得る上で重要な壁や天井が明るくなって、室内の明るさ感が向上する。
同図の提案例は、室外側板2と室内側板3との間に空気層4を介在させたペアガラス構造とすることで、断熱・遮熱性能が高められるが、断熱性能をより一層高め、かつ防犯性を高めた改良提案例として、図13に示すものを案出した。この採光面材1Bは、室内側板3を透光板32と拡散板33との2層構造として両板の間に防犯フィルム34を介在させ、かつ室内側板3の透光板32の空気層4側の面に熱線遮蔽膜5を蒸着してLow−Eガラスとしたものである。図13の例によると、ペアガラス構造の室内側板3の裏面に熱線遮蔽膜5を設けたことで、断熱・遮熱性能において特に断熱性能が高まる。また、防犯フィルム34を設けることで、防犯性が良くなる。
しかし、図13の採光面材1Bは、複数枚のガラス板(室外側板2、透光板32、拡散板33)の他に、熱線遮蔽膜5、屈折素材層31、および防犯フィルム34を備えた複雑な構造であり、加工が面倒であるため、製造コストが高くつく。
また、屈折素材層31が室外側板2の裏面に設けられることから、熱線遮蔽膜5の蒸着面が室内側板3の裏面に限定されるため、断熱・遮熱性能における遮熱性の向上に限界がある。加えて、屈折素材層31がフィルムである場合、蒸暑地域で使用すると、室外からの日射熱による屈折素材層31の接着面の劣化が懸念される。
さらに、型板ガラス等の拡散ガラスと併用する場合、室内側等の手の触れる面に凹凸ができ、意匠上の違和感や汚れの懸念がある。
この発明の目的は、比較的簡単な構造であり低コストで製作することができながら、屋外の光を違和感なく室内の奥まで十分に取り入れることができて、室内の明るさ感を向上させることができ、かつ室外からの日射熱による屈折素材層の接着面の劣化が生じ難く、断熱・遮熱性能に優れ、しかも防犯機能を有する採光面材、およびこの採光面材を用いた建物の開口部構造を提供することである。
この発明の採光面材は、建物の開口部に設けられて前記開口部を塞ぎ屋外の光を室内に取り入れる複層の採光面材であって、空気層を隔てて室外側および室内側にそれぞれ配置される透光板または透過光を拡散させる拡散板で構成される室外側板および複層の室内側板を有し、前記室内側板は、透光板と拡散板の間または複数の拡散板の間に屈折素材層を挟み込んでなり、前記屈折素材層は、屈折性を有する透明の高分子材料からなり、互いに対向する一対の表層部同士が、互いに間隔を開けて位置する複数のブリッジ部を介して繋がる構造であることを特徴とする。
前記建物の開口部は、外壁の他、間仕切り壁、バルコニー腰壁等の種々の壁、屋根面等に設けられる窓開口、出入り口等である。
この構成によると、例えば、高い位置にある太陽からの光を、建物の外壁の窓等の開口部から採光面材を通して室内に取り込むときに、室外側板を下向きに透過した入射光が、室内側板に設けられた屈折素材層により上向きの光に屈折させられ、この上向きとなった光が室内側板の拡散板を透過することで拡散光となる。屈折素材層は、一対の表層部同士と複数のブリッジ部とからなる構造としたことで、表層部がそれぞれ光を上向き側に屈折するだけでなく、ブリッジ部が光を上向きに反射するため、全体としての屈折率が高い。これにより、屋外からの光を室内の奥まで取り入れることができ、明るさ感を得る上で重要な壁や天井が明るくなって、室内の明るさ感が向上する。そのため、狭小地等で隣棟等による日射遮蔽があり、通常では採光の望めない環境において、開口部からの光を室内奥まで届け、室内の明るさ感、爽やかさを向上させることができる。
屈折素材層を透過した光は拡散板からなる室内側板で拡散させるので、出射面に屈折素材層を設けた場合と異なり、屈折素材層を透過することにより透過光に生じる虹のようなプリズム現象を室内側板で緩和することができ、室内に違和感のない光を届けることができる。屈折素材層は室内側板の透光板と拡散板の間または複数の拡散板の間に挟み込まれているので、露出させる場合と異なり、傷や汚れが生じ難く、また紫外線による変性等によりその屈折の効果が低下することが防止され、長期にわたって屈折の性能が維持される。
また、屈折素材層を一対の表層部同士と複数のブリッジ部とからなる構造としたことで、表層部の各外側面である屈折素材層の両面を平滑に形成することができる。このため、特定の強度、厚さを確保できれば、屈折素材層に防犯フィルムとしての機能も付加できる。それにより、別途に防犯フィルムを設ける必要がなくなり、採光面材の構造を簡略にできる。そのため、防犯フィルム機能を備えた採光面材を低コストで製造することができる。
この採光面材は、室外側板と室内側板の間に空気層を介在させたペアガラス構造であるため、断熱・遮熱性能に優れる。前記屈折素材層は室内側板に設けられているため、この採光面材を蒸暑地域で使用しても、室外からの日射熱による屈折素材層の接着面の劣化が生じ難い。
さらに、屈折素材層を、室内側板の透光板と拡散板の間または複数の拡散板の間に挟み込んで配置したため、室外側板および室内側板の空気層側の面を自由に利用することができる。後段で示すように、例えば、室外側板および室内側板の空気層側の面に熱線遮断膜を設けたり、フロスト加工等の加工を施したりすることが可能となり、各種機能を向上させることができる。
この発明の採光面材において、前記屈折素材層の前記高分子材料は、屈折率が1.4ないし1.6の素材であるのが良い。このような素材として、例えばポリブチルビニラールまたはポリカーボネートを用いることができる。
この発明の採光面材において、前記室外側板および室内側板の両方またはいずれか一方の板における前記空気層側の面に熱線遮断膜を設けても良い。
熱線遮断膜を設けることで、断熱・遮熱性能がより一層向上する。詳しくは、熱線遮断膜を室外側板に設けた場合は特に遮熱性能が向上し、室内側板に設けた場合は特に断熱性能が向上する。
あるいは、この発明の採光面材において、前記室外側板および室内側板のいずれか一方の板における前記空気層側の面に熱線遮断膜を設け、他方の板の前記空気層側の面を型板ガラス状の凹凸面としても良い。
この場合、断熱・遮熱性能がより一層向上することに加えて、光の拡散性を向上させることができる。
この発明の建物の開口部構造は、この発明の上記いずれかの構成の採光面材を設けたものである。
この開口部構造によると、この発明の採光面材につき前述したように、狭小地等で通常では十分な採光が望めない環境においても、開口部からの光を室内奥まで違和感なく届け、室内の明るさ感を向上させることができる。また、ペアガラス構造であるため、断熱・遮熱性能が高く、しかも屈折素材層により防犯機能を有する。さらに、低コストの採光面材を用いることで、低コストで築造することができる。
この発明の採光面材は、建物の開口部に設けられて前記開口部を塞ぎ屋外の光を室内に取り入れる複層の採光面材であって、空気層を隔てて室外側および室内側にそれぞれ配置される透光板または透過光を拡散させる拡散板で構成される室外側板および複層の室内側板を有し、前記室内側板は、透光板と拡散板の間または複数の拡散板の間に屈折素材層を挟み込んでなり、前記屈折素材層は、屈折性を有する透明の高分子材料からなり、互いに対向する一対の表層部同士が、互いに間隔を開けて位置する複数のブリッジ部を介して繋がる構造であるため、比較的簡単な構造であり低コストで製作することができながら、屋外の光を違和感なく室内の奥まで十分に取り入れることができて、室内の明るさ感を向上させることができ、かつ室外からの日射熱による屈折素材層の接着面の劣化が生じ難く、断熱・遮熱性能に優れ、しかも防犯機能を有する。
この発明の建物の開口部構造は、この発明の採光面材を建物の開口部に設けたため、屋外の光を違和感なく室内の奥まで十分に取り入れることができて、室内の明るさ感を向上させることができ、断熱・遮熱性能に優れ、しかも防犯機能を有する。
この発明の一実施形態にかかる採光面材を用いた建物の開口部の一部を破断して示す断面図である。 (A)は同採光面材の屈折素材層の断面を模式的に表した図、(B)は異なる屈折素材層の断面を模式的に表した図である。 図2(A)の採光面材による光の屈折作用を示す説明図である。 (A)は図1に示す採光面材を開口部に用いた建物の一例の採光状態を示す縦断面図、(B)は透明ガラス板だけからなる採光面材を開口部に用いた建物の一例の採光状態を示す縦断面図である。 この発明の他の実施形態にかかる採光面材を用いた建物の開口部の一部を破断して示す断面図である。 この発明のさらに他の実施形態にかかる採光面材を用いた建物の開口部の一部を破断して示す断面図である。 (A)は図1、図5、および図6のいずれかに示す採光面材を開口部に用いた部屋の一例の採光状態を示す縦断面図、(B)は(A)の部屋の開口部に透明ガラス板だけからなる採光面材を設けた場合の採光状態を示す縦断面図、(C)は(A)の部屋の採光状態を示す水平断面図である。 図1、図5、および図6のいずれかに示す採光面材を開口部に設けた部屋の他の例の採光状態を示す縦断面図である。 図1、図5、および図6のいずれかに示す採光面材を開口部に設けた部屋のさらに他の例の採光状態を示す縦断面図である。 図1、図5、および図6のいずれかに示す採光面材を開口部に設けた部屋のさらに他の例の採光状態を示す縦断面図である。 図1、図5、および図6のいずれかに示す採光面材を開口部に設けた部屋の採光状態を示す水平断面図である。 提案例の採光面材の断面図である。 他の提案例の採光面材の断面図である。
この発明の一実施形態を図面と共に説明する。図1はこの採光面材を用いた建物の開口部を示す断面図である。この採光面材1は、建物の開口部11に設けられて前記開口部11を塞ぎ屋外の光を室内に取り入れる面材である。この例では、前記採光面材1を窓戸枠12内に取り付けて窓戸13が構成され、この窓戸13が前記開口部11の開口枠11a内に設けられる。同図の開口部11は、建物の外壁面に設けられる窓開口である。窓戸13は、開き戸であっても、スライド戸やその他の開閉形式の戸であっても良い。開口部11を設けた建物は、戸建住宅、集合住宅、事務所ビル等のいずれであっても良く、またどのような構法の建物であっても良い。
前記採光面材1は、ガラス板等からなる室外側板2および室内側板3と、その間に介在する空気層4とでなるペアガラス構造である。室外側板2および室内側板3は、後で説明する光学的性質を有するものであれば、ガラス以外のものであってもよく、例えばアクリル樹脂等の合成樹脂を用いることができる。
前記室外側板2は非拡散性の透光材からなり、その空気層4を向く面に熱線遮蔽膜5が形成されている。室外側板2の母材である透光板2aとしては、例えば単板の透明ガラス、透明アクリル樹脂等の板材が用いられる。熱線遮蔽膜5は、蒸着等により透光板2aであるガラスの表面に金属または金属酸化物を付着させて形成される。表面に熱線遮蔽膜5が形成されたガラスは、熱線遮蔽ガラス、Low−Eガラス等と呼ばれ、近赤外線は通すが中赤外線や遠赤外線は通さない機能を有する。
前記室内側板3は、空気層4に面する透光板3aと室内に面する拡散板3bの間に屈折素材層6を挟み込んでなる。透光板3aとしては、前記同様に、例えば単板の透明ガラス、透明アクリル樹脂等の板材が用いられる。拡散板3bは、すりガラス、フロストガラス、型板ガラス等のことで、透過光を拡散させる性質を有する。図の例では、室内側板3の板材の枚数が2枚であるが、3枚以上であっても良い。屈折素材層6は、屈折性を有する透明の高分子材料からなり、断面梯子状(ブリッジ状)の構造をしている。屈折素材層6の素材となる高分子材料としては、屈折率が1.4〜1.6の素材が良く、例えばポリブチルビニラール(PVB)またはポリカーボネートが用いられる。これらの素材は、屈折率が1.5前後である。
図2(A)は、屈折素材層6の断面を模式的に表した図である。同図に示すように、屈折素材層6は、互いに対向する一対の表層部6a,6a同士が、互いに間隔を開けて位置する複数のブリッジ部6bを介して繋がる断面梯子状の構造である。この断面梯子状の構造は、屈折素材層6の両面すなわち表層部6a,6aの各外面がそれぞれ平滑である。屈折素材層6は、両面に塗布した接着剤7により、両側の透光板3aおよび拡散板3b(図1)にそれぞれ固定される。
上記断面梯子状の屈折素材層6は、図3のように、一方向から斜め下向きの光Lを受けると、表層部6a,6aがそれぞれ光を上向き側に屈折するだけでなく、ブリッジ部6bが光を上向きに反射する。このため、単層構造の屈折素材層(図示せず)と比べて、屈折率が高い。
屈折素材層6は、図2(A)のようなブリッジ部6bが一定厚みの断面梯子状ではなく、図2(B)のように、ブリッジ部6bの断面形状が台形であっても良い。この場合も、ブリッジ部6bが光を上向きに反射する機能が得られる。
上記構成の採光面材1を用いた窓戸13を備える開口部構造の作用を説明する。
図1のように高い位置にある太陽Sからの光を前記開口部11から室内に取り込むとき、太陽Sの光は採光面材1に対して下向き入射する。入射光L1は、採光面材1の室外側板2の透光板2aを透過して熱線遮蔽膜5に当たり、熱線遮蔽膜5により入射光L1中の中赤外線、遠赤外線等の一部の光線L2が反射される。反射されずに熱線遮蔽膜5を透過した入射光L3は、室内側板3の透光板3aを透過して屈折素材層6に当って上向きに屈折させられ、さらに拡散板3bを透過するときに拡散される。これにより、室内側板3を透過した光は、上向きの拡散光L4となる。
このように入射光L3を屈折素材層6で上向きに屈折させることにより、図4(A)のように、天空光HLで室内の天井面14を照らし、さらに天井面14で反射した光が室内の奥まで届く。そのため、透明ガラス板だけからなる採光面材1Cを用いた従来の開口部構造(図4(B))と比べて、室内の明るさ感を格段に向上させることができる。このため、図1に示す採光面材1を開口部11に用いることにより、太陽光が窓に直接当らない環境下であっても、室内を明るく保つことができる。
また、屈折素材層6による屈折と天井面14での反射とを併用することで、天頂に近い天空光HLを室内に取り込むことができる。天頂に近い天空光HLは、色温度が高く(6000K以上)、爽やか感が高い。天空光HLを室内に取り込んだ場合、天空光HL以外の光を取り込んだ場合に比べて、(天候、時間帯によっては)数百K程度上がることが確認されている。このため、天空光HLを活用することにより、室内の明るさ感をより一層高めることができると共に、爽やかな雰囲気をつくることができる。
さらに、図1において、室内側板3の拡散板3bで入射光L3を拡散することで、屈折素材層6による光の屈折で外の景色が反転して見える等の現象を防ぎ、視覚的な違和感を無くすことができる。加えて、入射光L3を拡散させると、窓面全体が柔らかい光で発光するように室内側から見え、落ち着いた雰囲気が得られる。
屈折素材層6を透過した光は拡散板3bで拡散されるので、屈折素材層6を透過することにより透過光に生じる虹状の光模様のプリズム現象を緩和することができて、室内に違和感のない光を届けることができる。また、自然光が居住者の目に入ることで、サーカディアンリズムの調整作用が働き、健康にも寄与できる。
屈折素材層6の両面がそれぞれ平滑であるため、特定の強度、厚さを確保できれば、屈折素材層6に防犯フィルムとしての機能も付加することができる。それにより、別途に防犯フィルムを設ける必要がなくなり、採光面材1の構造を簡略にできる。そのため、防犯フィルム機能を備えた採光面材1を低コストで製造することができる。
断熱・遮熱性能に関しては、室外側板2と室内側板3の間に空気層4を介在させたペアガラス構造であることに加えて、熱線遮断膜5が設けられているため、断熱性能、遮熱性能共に優れる。特に、図1の採光面材1は、室外側板2の空気層4を向く面に熱線遮断膜5を設けたことにより、遮熱性能がより一層高められている。そのため、蒸暑地域での使用に適する。前記屈折素材層6が室内側板3に設けられているため、この採光面材1を蒸暑地域で使用しても、室外からの日射熱による屈折素材層6の接着面の劣化が生じ難い。
他の実施形態について説明する。
図1の採光面材1が、室外側板2の空気層4を向く面に熱線遮断膜5が設けられているのに対し、図5に示す採光面材1は、室内側板3の空気層4を向く面に熱線遮断膜5が設けられている。屈折素材層6を室内側板3の透光板3aと拡散板3bの間に挟み込んで配置したため、室外側板2および室内側板3の空気層4側の面を自由に利用することができ、図1の構成および図5の構成のいずれかを選択することが可能となっている。図1の構成は特に遮熱性能に優れ、図5の構成は特に断熱性能に優れる。
図6の採光面材1は、室外側板2の空気層4を向く面に熱線遮断膜5を設けると共に、室内側板3の空気層4を向く面をフロスト加工等により凹凸面とした。つまり、室内側板3の2枚の板材を共に拡散板3b,3cとした。この場合、断熱・遮熱性能がより一層向上することに加えて、光の拡散性を向上させることができる。
図6の採光面材1とは逆に、室外側板2の空気層4を向く面を凹凸面とし、室内側板3の空気層4を向く面に熱線遮断膜5が設けても良い(図示せず)。この場合、室外側板2が拡散板となる。
図7は、前記採光面材1を開口部11に用いた建物10の開口部構造の一例の採光効果を、一般的なLDKプランの部屋の例で示している。図7(A)はその建物10の縦断面図を示し、図7(C)はその水平断面を示す。なお、図7(B)は同じ建物10における開口部11に透明ガラス板だけからなる採光面材を用いた場合の水平断面図を示す。各図における破線のハッチングを付した部位は、屋外から入射した光が届かない範囲を示す。
図1でも示したように、建物10の壁面に位置する開口部11を、前記採光面材1を用いた窓戸13で塞ぐ開口部構造では、図7(A)のように、高い位置にある太陽Sから開口部11の採光面材1に下向きに入射してくる光L1が上向きに屈折させられ、しかも拡散光L4となって室内の奥まで届くので、壁や天井が明るくなり、図7(C)のように部屋全体を十分に明るくして明るさ感を向上させることができる。同図の例では、開口部11に隣接してリビング・ダイニング部分LDが設けられ、奥側にキッチンKが設けられているが、キッチンKの部分まで明るくなり、快適に作業をすることができる。
これに対して、透明ガラス板だけからなる採光面材1Cを用いた従来の窓戸23で前記開口部11を塞ぐ場合には、開口部11に下向きに入射してきた光L1がそのまま直進するので、図7(B)のように直進してきた光L5は室内の奥のキッチンKまで届かず、また部屋全体が暗くなってしまう。
図8〜図10に各例を示すように、開口部11の位置や形状により適する偏光の出射角度が異なるため、適した出射角度(すなわち屈折角度)の屈折素材層6を用いる。
図8は、前記採光面材1を開口部11に用いた建物10の開口部構造の他の例の縦断面図を示している。この開口部構造では、開口部11の位置が図5の場合よりも下位置となっている。そのため、透明ガラス板だけからなる採光面材1C(図7(B))を用いた従来の窓戸23(図7(B))で前記開口部11を塞ぐ場合には、高い位置にある太陽Sから開口部11へ下向きに入射してきた光L1はそのまま直進し、採光面材1Cを透過してきた光L5は室内の一部床面を照射するだけとなり、開口部11が高い位置にある図7の場合に比べて、部屋全体はさらに暗くなってしまう。
そこで、図8の実施形態の開口部構造では、図1に示す採光面材1を用いた窓戸13で前記開口部11を塞ぎ、しかも採光面材1を構成する屈折素材層6の出射角度を、図7の場合よりも大きくしてある。つまり、屈折素材層6により入射光L1が上向きに屈折する角度を、図7の例の場合よりも大きくしている。このため、開口部11へ下向きに入射してきた光L1が採光面材1で十分な角度だけ上向きに屈折させられ、しかも拡散光L4となって室内の奥まで届くので、壁や天井が明るくなり部屋全体を十分に明るくすることができる。
図9は、前記採光面材1を開口部11に用いた建物10の開口部構造のさらに他の例の断面図を示している。この開口部構造は、建物10の壁面に開口する開口部11を上下に分けた窓戸13,23で閉じる構成であって、窓戸13,23は、例えば上げ下げ戸とされる。この例では、開口部11の下側部分に前記採光面材1を用いた窓戸13を設け、開口部11の上側部分に透明ガラス板だけからなる採光面材1C(図7(B))を用いた従来の窓戸23を設けている。
この開口部構造では、開口部11の下側部分に設けられた窓戸13に下向きに入射してきた光L1が上向きに屈折して拡散光L4となり、室内の壁や天井を照らす。他方、開口部11の上側部分に設けられた窓戸23に下向きに入射してくる光L1は、そのまま直進して室内の床面を照らす。そのため、室内の壁や天井だけでなく床面も照らすことができ、より室内空間が明るくなって明るさ感を向上させることができる。
図10は、前記採光面材1を開口部11に用いた建物10の開口部構造のさらに他の例の縦断面図を示している。この開口部構造でも、建物10の壁面に開口する開口部11に図1に示す採光面材1を用いた窓戸13を設け、開口部11の残りの部分に透明ガラス板だけからなる採光面材1C(図7(B))を用いた従来の窓戸23を設けている。特に、この例では、開口部11の上部分、中間部分、および下部分の3つに区画して、中間部分に図1に示す採光面材1を用いた窓戸13を設け、上部分および下部分に透明ガラス板だけを用いた従来の窓戸23を設けている。
この開口部構造では、開口部11の高さ方向の中間部分に図1に示す採光面材1を用いた窓戸13を用いているので、開口部11の中間部分では屋外からの入射光L1が上向きに屈折して室内に入射することとなり、従来目隠しを目的として不透明ガラス等を採光面材として用いた窓と同等の機能を担うだけでなく、自然光を室内の奥まで取り入れる機能も担うことになる。開口部11の上部分や下部分に設けられる窓戸23からは屋外からの光L1が直進して室内に入射される。これにより、室内空間を十分に明るくでき、快適な室内環境を作ることができる。
図11は、さらに他の開口部構造の例を示す。同図の例では、建物10の開口部11が複数あり、それらの各開口部11を、図1に示す採光面材1を用いた窓戸13でそれぞれ塞いでいるが、それらの開口部11の位置によって、各採光面材1における屈折素材層6の屈折率を互いに異ならせてある。
この構成の場合、開口部11の位置に応じて、開口部11からの入射光の出射角度を異ならせるので、各開口部11の日照等の採光条件等に応じて、いずれの開口部11からも室内の奥部まで入射光を届かせることができる。また、室内の床面、壁、天井に過不足なく均等に照らすことも可能となる。
1…採光面材
2…室外側板
2a…透光板
3…室内側板
3b,3c…拡散板
4…空気層
5…熱線遮蔽膜
6…屈折素材層
6a…表層部
6b…ブリッジ部
11…開口部
この発明の目的は、比較的簡単な構造であり低コストで製作することができながら、屋外の光を違和感なく室内の奥まで十分に取り入れることができて、室内の明るさ感を向上させることができ、かつ室外からの日射熱による屈折素材層の接着面の劣化が生じ難く、断熱・遮熱性能に優れる採光面材、およびこの採光面材を用いた建物の開口部構造を提供することである。
この発明の他の目的は、さらに防犯機能を有する採光面材、およびこの採光面材を用いた建物の開口部構造を提供することである。
この発明の採光面材は、建物の開口部に設けられて前記開口部を塞ぎ屋外の光を室内に取り入れる複層の採光面材であって、空気層を隔てて室外側および室内側にそれぞれ配置される透光板または透過光を拡散させる拡散板で構成される室外側板および複層の室内側板を有し、前記室内側板は、透光板と拡散板の間または複数の拡散板の間に屈折素材層を挟み込んでなることを特徴とする。前記屈折素材層、屈折性を有する透明の高分子材料からなり、互いに対向する一対の表層部同士が、互いに間隔を開けて位置する複数のブリッジ部を介して繋がる構造であっても良い。
前記建物の開口部は、外壁の他、間仕切り壁、バルコニー腰壁等の種々の壁、屋根面等に設けられる窓開口、出入り口等である。
この構成によると、例えば、高い位置にある太陽からの光を、建物の外壁の窓等の開口部から採光面材を通して室内に取り込むときに、室外側板を下向きに透過した入射光が、室内側板に設けられた屈折素材層により上向きの光に屈折させられ、この上向きとなった光が室内側板の拡散板を透過することで拡散光となる。屈折素材層、一対の表層部同士と複数のブリッジ部とからなる構造とした場合は表層部がそれぞれ光を上向き側に屈折するだけでなく、ブリッジ部が光を上向きに反射するため、全体としての屈折率が高い。これにより、屋外からの光を室内の奥まで取り入れることができ、明るさ感を得る上で重要な壁や天井が明るくなって、室内の明るさ感が向上する。そのため、狭小地等で隣棟等による日射遮蔽があり、通常では採光の望めない環境において、開口部からの光を室内奥まで届け、室内の明るさ感、爽やかさを向上させることができる。
また、屈折素材層を一対の表層部同士と複数のブリッジ部とからなる構造とした場合は、表層部の各外側面である屈折素材層の両面を平滑に形成することができる。このため、特定の強度、厚さを確保できれば、屈折素材層に防犯フィルムとしての機能も付加できる。それにより、別途に防犯フィルムを設ける必要がなくなり、採光面材の構造を簡略にできる。そのため、防犯フィルム機能を備えた採光面材を低コストで製造することができる。
この発明の採光面材は、建物の開口部に設けられて前記開口部を塞ぎ屋外の光を室内に取り入れる複層の採光面材であって、空気層を隔てて室外側および室内側にそれぞれ配置される透光板または透過光を拡散させる拡散板で構成される室外側板および複層の室内側板を有し、前記室内側板は、透光板と拡散板の間または複数の拡散板の間に屈折素材層を挟み込んでなるため、比較的簡単な構造であり低コストで製作することができながら、屋外の光を違和感なく室内の奥まで十分に取り入れることができて、室内の明るさ感を向上させることができ、かつ室外からの日射熱による屈折素材層の接着面の劣化が生じ難く、断熱・遮熱性能に優れる。
前記屈折素材層が、屈折性を有する透明の高分子材料からなり、互いに対向する一対の表層部同士が、互いに間隔を開けて位置する複数のブリッジ部を介して繋がる構造である場合は、屋外からの光を室内の奥まで取り入れることができ、明るさ感を得る上で重要な壁や天井がより明るくなって、より一層室内の明るさ感が向上する。しかも防犯機能を有する。

Claims (5)

  1. 建物の開口部に設けられて前記開口部を塞ぎ屋外の光を室内に取り入れる複層の採光面材であって、
    空気層を隔てて室外側および室内側にそれぞれ配置される透光板または透過光を拡散させる拡散板で構成される室外側板および複層の室内側板を有し、
    前記室内側板は、透光板と拡散板の間または複数の拡散板の間に屈折素材層を挟み込んでなり、
    前記屈折素材層は、屈折性を有する透明の高分子材料からなり、互いに対向する一対の表層部同士が、互いに間隔を開けて位置する複数のブリッジ部を介して繋がる構造である、
    ことを特徴とする採光面材。
  2. 請求項1に記載の採光面材において、前記屈折素材層の前記高分子材料が、屈折率が1.4ないし1.6の素材である採光面材。
  3. 請求項1または請求項2に記載の採光面材において、前記室外側板および室内側板の両方またはいずれか一方の板における前記空気層側の面に熱線遮断膜を設けた採光面材。
  4. 請求項1または請求項2に記載の採光面材において、前記室外側板および室内側板のいずれか一方の板における前記空気層側の面に熱線遮断膜を設け、他方の板の前記空気層側の面を型板ガラス状の凹凸面とした採光面材。
  5. 建物の開口部に、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の採光面材を設けた建物の開口部構造。
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