図1は、本発明の第1実施形態に係るインクジェット方式の印刷装置100の部分的な構成図である。第1実施形態の印刷装置100は、液体の例示であるインクを印刷用紙等の印刷媒体(噴射対象)Mに噴射する液体噴射装置であり、制御装置10と搬送機構12と液体噴射ヘッド14とポンプ16とを具備する。複数色のインクIを貯留する液体容器(インクカートリッジ)18が印刷装置100には装着される。第1実施形態では、シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y),ブラック(B)の4色のインクIが液体容器18に貯留される。
制御装置10は、印刷装置100の各要素を統括的に制御する。搬送機構12は、制御装置10による制御のもとで印刷媒体MをY方向に搬送する。ポンプ16は、制御装置10による制御のもとで2系統の空気A(A1,A2)を液体噴射ヘッド14に供給する給気装置である。空気A1および空気A2は、液体噴射ヘッド14の内部の流路の制御に利用される気体である。第1実施形態のポンプ16は、空気A1および空気A2の各々を相互に独立に加圧することが可能である。液体噴射ヘッド14は、液体容器18から供給されるインクIを制御装置10による制御のもとで印刷媒体Mに噴射する。第1実施形態の液体噴射ヘッド14は、Y方向に交差するX方向に長尺なラインヘッドである。なお、X-Y平面(印刷媒体Mの表面に平行な平面)に垂直な方向を以下ではZ方向と表記する。液体噴射ヘッド14によるインクIの噴射方向がZ方向に相当する。
図2および図3は、液体噴射ヘッド14の分解斜視図である。図2および図3に例示される通り、第1実施形態の液体噴射ヘッド14は、流路構造体G1と流路制御部G2と液体噴射部G3とを含んで構成される。概略的には流路構造体G1と液体噴射部G3との間に流路制御部G2が設置される。すなわち、流路構造体G1と流路制御部G2と液体噴射部G3とはZ方向からみて相互に重複する。液体噴射部G3は、6個の液体噴射ユニットU3を筐体142に収容および支持した構造体である。
図4は、液体噴射部G3のうち印刷媒体Mとの対向面の平面図である。図4に例示される通り、6個の液体噴射ユニットU3はX方向に沿って配列される。各液体噴射ユニットU3は、X方向に沿って配列する複数(第1実施形態の例示では6個)の噴射ヘッド部70を具備する。各噴射ヘッド部70は、複数のノズルNからインクIを噴射するヘッドチップを包含する。1個の噴射ヘッド部70の複数のノズルNは、X方向およびY方向に対して所定の角度で傾斜するW方向に沿って2列に配列される。液体噴射ユニットU3の各噴射ヘッド部70には4系統(4色)のインクIが並列に供給される。1個の噴射ヘッド部70の複数のノズルNは4個の集合に区分され、集合毎に相異なるインクIを噴射する。
図5は、流体(インクIおよび空気A)の流路に着目した液体噴射ヘッド14の構成図である。図5から理解される通り、流路構造体G1には、液体容器18から4系統のインクIが供給されるとともにポンプ16から2系統の空気A(A1,A2)が供給される。流路構造体G1は、4系統のインクIの各々と2系統の空気Aの各々とを、相異なる液体噴射ユニットU3に対応する6系統に分配する。すなわち、流路構造体G1による1系統のインクIの分配数(6)はインクIの種類数K(K=4)を上回る。
図2および図3の流路制御部G2は、液体噴射ヘッド14の流路(例えば流路の開閉や流路内の圧力)を制御する要素であり、相異なる液体噴射ユニットU3に対応する6個の流路制御ユニットU2を含んで構成される。図5に例示される通り、4系統のインクIと2系統の空気Aとが流路構造体G1での分配により6個の流路制御ユニットU2に並列に供給される。各流路制御ユニットU2は、流路構造体G1が各液体噴射ユニットU3に分配した4系統のインクIの流路の開閉や圧力を2系統の空気Aに応じて制御する。
流路構造体G1での分配後に各流路制御ユニットU2を経由した4系統のインクIが6個の液体噴射ユニットU3に並列に供給される。各液体噴射ユニットU3は液体分配部60を具備する。液体分配部60は、前段の流路制御ユニットU2から供給される4系統のインクIの各々を、相異なる噴射ヘッド部70に対応する6系統に分配する。すなわち、液体分配部60による分配後の4系統のインクIが6個の噴射ヘッド部70の各々に並列に供給される。各噴射ヘッド部70は、4系統のインクIの各々を相異なるノズルNから噴射する。以上に概説した液体噴射ヘッド14の各要素(流路構造体G1,流路制御部G2、液体噴射部G3)の具体例を以下に詳述する。
<流路構造体G1>
図6は、流路構造体G1の側面図および平面図であり、図7は、図6におけるVII-VII線の断面図である。図6の側面図に例示される通り、第1実施形態の流路構造体G1は、基板20と複数の封止部25(25a,25b,25c)と複数の封止部26(26a,26b)とを包含する平板状の構造体である。なお、図6の平面図では各封止部25および各封止部26の図示を便宜的に省略した。
第1実施形態の基板20は、X方向に長尺な平板材であり、X-Y平面に平行な第1面21および第2面22を包含する。図6には、第1面21の平面図と第2面22の平面図とが併記されている。第1面21は、流路制御部G2や液体噴射部G3とは反対側の表面(上面)であり、第2面22は、第1面21とは反対側の表面(流路制御部G2との対向面)である。第1実施形態の基板20は、熱可塑性の樹脂材料(例えばポリプロピレン)で形成される。
図6に例示される通り、基板20の第1面21は、領域31aと領域31bと領域31cとを包含する。第1面21のうち領域31aと領域31bとの間には、各系統のインクIに対応する4個の供給口SI1が形成され、第1面21のうち領域31bと領域31cとの間には、各系統の空気Aに対応する2個の供給口SA1が形成される。
図8は、流路構造体G1の接続状態の説明図である。図8に例示される通り、4個の供給口SI1の各々には、第1面21に設置された接続部(ジョイント)381を介して各インクIの供給管TI1の端部が接続される。各供給管TI1は、領域31aの面上でX方向に沿って延在し、供給口SI1とは反対側の端部が液体容器18に接続される。他方、2個の供給口SA1の各々には、第1面21に設置された接続部382を介して各空気A(A1,A2)の供給管TA1の端部が接続される。各供給管TA1は、領域31bおよび領域31aの面上でX方向に延在し、供給口SA1とは反対側の端部がポンプ16に接続される。以上の構成において、液体容器18に貯留された4系統のインクI(C,M,Y,K)は、各供給管TI1を介して4個の供給口SI1に並列に供給され、ポンプ16から送出された2系統の空気A(A1,A2)は、各供給管TA1を介して2個の供給口SA1に並列に供給される。
図6に例示される通り、基板20の第1面21の領域31aには、各インクIに対応する4個の溝部341aが形成される。同様に、領域31bには4個の溝部341bが形成され、領域31cには4個の溝部341cが形成される。溝部341aと溝部341bとは、平面視で(すなわち基板20に垂直なZ方向からみて)供給口SI1を挟んで相互に反対側に位置する。また、基板20の第1面21の領域31aには、各空気Aに対応する2個の溝部342aが形成される。同様に、領域31bには2個の溝部342bが形成され、領域31cには2個の溝部342cが形成される。溝部342bと溝部342cとは、平面視で供給口SA1を挟んで相互に反対側に位置する。図6に例示される通り、第1面21の各領域31(31a,31b,31c)において、空気Aに対応する2個の溝部342(342a,342b,342c)を挟む両側に、インクIに対応する各溝部341(341a,341b,341c)が位置する。
各溝部341(341a,341b,341c)および各溝部342(342a,342b,342c)は、概略的には、X方向に延在するように形成された溝(表側溝部)である。具体的には、第1実施形態では、インクIに対応する各溝部341はX方向に沿って略直線状に延在し、空気Aに対応する各溝部342は、基板20に形成された取付孔23を迂回するように屈曲した形状に形成される。各取付孔23は、基板20の固定に利用される貫通孔であり、具体的には、流路構造体G1を流路制御部G2に固定する螺子(図示略)が挿入される螺子孔である。
図6の側面図に例示される通り、第1面21の各領域31(31a,31b,31c)には相互に別体の封止部25(25a,25b,25c)が設置される。具体的には、封止部25aが領域31aに設置され、封止部25bが領域31bに設置され、封止部25cが領域31cに設置される。各封止部25は、基板20の第1面21に貼着されるフィルム状(0.1mm程度の膜厚)の部材であり、第1面21に形成された各溝部341および各溝部342を封止(閉塞)することで流路を構成する。
他方、基板20の第2面22は、図6に例示される通り、領域32aと領域32bとを包含する。領域32aは、第1面21の領域31aと領域31bとの間隙の領域(すなわち4個の供給口SI1が形成された領域)に平面視で重なる領域であり、領域32bは、第1面21の領域31bと領域31cとの間隙の領域(すなわち2個の供給口SA1が形成された領域)に平面視で重なる領域である。
第2面22の領域32aには、各インクIに対応する4個の溝部351aと各空気Aに対応する2個の溝部352aとが形成される。領域32bにも同様に、4個の溝部351bと2個の溝部352bとが形成される。各溝部351(351a,351b)および各溝部352(352a,352b)は、第2面22に形成された溝(裏側溝部)である。領域32b内では2個の溝部352bの外側に4個の溝部351bが位置するのに対し、領域32a内では、一対の溝部351aの間隙に溝部352aが位置する。
図6には、各液体噴射ユニットU3の境界が波線で図示されている。図6に例示される通り、第2面22には、各インクIに対応する4個の流出口DI1と各空気Aに対応する2個の流出口DA1とが、6個の液体噴射ユニットU3の各々(6個の流路制御ユニットU2の各々)について形成される。各流出口DI1および各流出口DA1は、第2面22からZ方向に突出する円管状の部分である。
任意の1系統のインクIに対応する6個の流出口DI1は、第1面21のうち当該インクIに対応する各溝部341(341a,341b,341c)に平面視で重なるように略等間隔でX方向に沿って配列し、図7から理解される通り、基板20をZ方向に貫通する貫通孔Hを介して各溝部341に連通する。同様に、任意の1系統の空気Aに対応する6個の流出口DA1は、第1面21のうち当該空気Aに対応する各溝部342(342a,342b,342c)に平面視で重なるように略等間隔でX方向に沿って配列し、基板20の貫通孔Hを介して各溝部342に連通する。
図6の側面図に例示される通り、第2面22の各領域32(32a,32b)には相互に別体の封止部26(26a,26b)が設置される。具体的には、封止部26aが領域32aに設置され、封止部26bが領域32bに設置される。各封止部26は、第2面22に貼着されるフィルム状(0.1mm程度の膜厚)の部材であり、第1面21側の封止部25と同様に、第2面22に形成された各溝部351(351a,351b)および各溝部352(352a,352b)を封止することで流路を構成する。以上の例示の通り、第1実施形態では、フィルム状の封止部25および封止部26が基板20に設置されるから、例えば所定の板厚の平板材を基板20に貼着することで流路を形成する構成と比較して流路構造体G1のZ方向の寸法(厚さ)を低減できるという利点がある。また、第1実施形態では、複数の封止部25が第1面21に設置されるから、第1面21の全体を単体の封止部25で被覆する構成と比較して封止部25の設置が容易である(各溝部の封止の不良を低減できる)という利点がある。封止部26についても同様である。
第1実施形態の各封止部25および各封止部26は、基板20と共通の材料(ポリプロピレン等の熱可塑性の樹脂材料)で表層が形成され、当該表層の表面を加熱状態で基板20に押圧することで基板20に溶着される。したがって、各封止部25および各封止部26の設置が容易であるという利点がある。例えば、封止部25および封止部26は、PETとポリプロピレンとの積層で好適に構成される。また、第1実施形態では、各封止部25と各封止部26とが相互に別体に形成される。したがって、封止部25と封止部26とが一体に形成された構成と比較して封止部25および封止部26の設置が容易であるという利点がある。
図6および図7に例示される通り、第2面22の溝部351aは、基板20の貫通孔Hを介して第1面21の供給口SI1に連通する。また、第2面22の各溝部351(351a,351b)は、基板20の貫通孔Hを介して第1面21の各溝部341に連通する。具体的には、図6から理解される通り、溝部351aは溝部341aと溝部341bとに連通し、溝部351bは溝部341bと溝部341cとに連通する。すなわち、第1面21の溝部341aと溝部341bと溝部341cとが第2面22の溝部351aと溝部351bとを介して相互に連通する。以上の説明から理解される通り、任意の1個の供給口SI1から第2面22の溝部351と第1面21の各溝部341とを経由して第2面22の6個の流出口DI1に至る図5の流路PI1が、4系統のインクの各々について形成される。すなわち、流路PI1は、供給口SI1に供給される1系統のインクIを6個の流出口DI1に分配する流路である。
他方、図6における第2面22の各溝部352bは、基板20の貫通孔Hを介して第1面21の供給口SA1に連通する。また、第2面22の各溝部352(352a,352b)は、基板20の貫通孔Hを介して第1面21の各溝部342に連通する。具体的には、溝部352aは溝部342aと溝部342bとに連通し、溝部352bは溝部342bと溝部342cとに連通する。すなわち、第1面21の溝部342aと溝部342bと溝部342cとが第2面22の溝部352aと溝部352bとを介して相互に連通する。以上の説明から理解される通り、任意の1個の供給口SA1から第2面22の溝部352と第1面21の各溝部342とを経由して第2面22の6個の流出口DA1に至る図5の流路PA1が、2系統の空気Aの各々について形成される。すなわち、流路PA1は、供給口SA1に供給される1系統の空気A(A1,A2)を6個の流出口DA1に分配する流路である。なお、第1実施形態の流路PA1は、取付孔23を迂回するようにX-Y平面内で屈曲する。インクIの供給用の流路PI1を同様に屈曲させた場合には流路抵抗の増加が問題となるが、流路PA1に流通する流体は空気Aであるから、流路PA1の屈曲に起因した流路抵抗の増加は特段の問題とならない。
以上の通り、第1実施形態の流路構造体G1には、供給口(SI1,SA1)から複数の流出口(DI1,DA1)に至る流路(PI1,PA1)が、インクIと空気Aとを含む複数の流体の各々について形成される。図6から理解される通り、第1実施形態では、空気Aの分配用の2個の流路PA1の両側に、インクIの分配用の4個の流路PI1が2個ずつ位置する。第1実施形態に係る流路構造体G1の構成は以上の通りである。
以上に説明した通り、第1実施形態では、各供給口(SI1,SA1)が基板20の第1面21に形成され、各流出口(DI1,DI2)が基板20の第2面22に形成されるから、基板の側面に供給口や流出口を形成して配管を接続する特許文献1や特許文献2の構成と比較して、Z方向からみた流路構造体G1のサイズが縮小される。したがって、液体噴射ヘッド14を小型化することが可能である。
<流路制御部G2>
図2に例示される通り、流路制御部G2の各流路制御ユニットU2のうち流路構造体G1との対向面には4個の供給口SI2と2個の供給口SA2とが形成される。流路構造体G1と各流路制御ユニットU2とが相互に固定された状態では、流路構造体G1の流出口DI1が流路制御ユニットU2の供給口SI2に挿入され、流路構造体G1の流出口DA1が流路制御ユニットU2の供給口SA2に挿入される。したがって、図5からも理解される通り、流路制御ユニットU2の各供給口SI2には流路構造体G1の各流出口DI1から各系統のインクIが供給され、流路制御ユニットU2の各供給口SA2には流路構造体G1の各流出口DA1から各系統の空気Aが供給される。以上の例示の通り、第1実施形態では、流路構造体G1の流出口DI1と各流路制御ユニットU2の供給口SI2とが直接的に接続されるから、例えば流出口DI1と供給口SI2とを配管で接続する構成と比較して、部品点数の削減や液漏れの防止等を実現することが可能である。
他方、図3に例示される通り、各流路制御ユニットU2のうち液体噴射部G3との対向面には4個の流出口DI2が形成される。図5に例示される通り、流路制御ユニットU2は、各供給口SI2から各流出口DI2に至る4系統の流路PI2を内包する。流路構造体G1による分配後に各流路制御ユニットU2に供給される4系統のインクIの各々が各流路PI2を経由して4個の流出口DI2から後段の液体噴射ユニットU3に並列に供給される。
図5に例示される通り、流路制御ユニットU2には、負圧発生部42と流路開閉部44と圧力調整部46とが4系統の流路PI2の各々について設置される。また、第1実施形態の流路制御ユニットU2は、供給口SA2に供給された空気A1を各流路PI2に対応する4系統に分配する流路PA2_1と、供給口SA2に供給された空気A2を各流路PI2に対応する4系統に分配する流路PA2_2とを内包する。流路PA2_1で分配された空気A1が流路制御ユニットU2の4個の流路開閉部44に並列に供給され、流路PA2_2で分配された空気A2が流路制御ユニットU2の4個の圧力調整部46に並列に供給される。
図9は、流路制御ユニットU2の任意の1系統のインクIの流路PI2に着目した構成図である。図9に例示される通り、負圧発生部42は、流路PI2上に設置されて流路PI2内を所定の負圧に維持する。具体的には、通常状態では流路PI2を閉塞し、液体噴射ユニットU3によるインクIの噴射(消費)に起因して流路PI2内の負圧が所定値に到達した場合に自律的に流路PI2を開放してインクIを導入する圧力制御弁が、負圧発生部42として好適に採用される。図9に例示される通り、流路PI2における負圧発生部42の下流側に流路開閉部44が設置され、流路開閉部44の下流側に圧力調整部46が設置される。すなわち、流路開閉部44は流路PI2上で負圧発生部42と圧力調整部46との間に位置する。
流路開閉部44は、流路PA2_1を介して供給される空気A1に応じて流路PI2の開閉(閉塞/開放)を制御する機構(チョーク弁)である。図9に例示された流路開閉部44は、インクIの流路PI2と空気A1の流路PA2_1との間に介在する可撓部材442と、可撓部材442を流路PA2_1側に付勢する弾性体444とを含んで構成される。流路PA2_1の空気A1が加圧されていない通常状態(減圧状態)では流路PI2が開放され、空気A1がポンプ16により加圧されると、図9に破線で図示される通り、弾性体444による付勢に対抗して可撓部材442が変形することで流路PI2が閉塞される。
図9の圧力調整部46は、流路PI2内の圧力(流路PI2の容積)を調整する機構であり、例えば流路PI2の負圧を解除する負圧解除弁である。具体的には、図9の圧力調整部46は、インクIの流路PI2と空気A2の流路PA2_2との間に介在する可撓部材462と、可撓部材462を流路PA2_2側に付勢する弾性体464とを含んで構成される。通常状態では流路PA2_2の空気A2が大気圧に設定(大気開放)され、空気A2がポンプ16により加圧されると、図9に破線で図示される通り、弾性体464による付勢に対抗して可撓部材462が流路PI2側に変形する(流路PI2の容積が減少する)ことで、負圧発生部42による負圧が解除される程度に流路PI2の圧力が増加する。
例えば液体噴射ユニットU3(噴射ヘッド部70)の清掃時にはインクIの流路の負圧が解除されたうえで各ノズルNからインクIが噴射される。ただし、負圧発生部42が有効な状態では、圧力調整部46による負圧の解除が阻害され得る。したがって、各ノズルNからインクIが充分に排出されない可能性や各ノズルNから気泡が進入する可能性がある。そこで、第1実施形態では、流路PA2_1の空気A1を加圧することで流路開閉部44により流路PI2を閉塞してから、流路PA2_2の空気A2を加圧することで圧力調整部46により流路PIの負圧を解除する。以上の動作によれば、流路開閉部44による流路PI2の閉塞で負圧発生部42と圧力調整部46とを相互に隔絶した状態(すなわち負圧発生部42による負圧の付与が無効とされた状態)で圧力調整部46による負圧の解除が実行されるから、流路開閉部44の下流側の流路の負圧を有効に解除できるという利点がある。
以上の説明から理解される通り、第1実施形態の負圧発生部42と流路開閉部44と圧力調整部46とは、各インクIの流路PI2を制御する要素として機能し、流路制御部G2は、流路構造体G1による分配後の各系統の空気A(A1,A2)を利用して各流路PI2を制御する要素として包括的に表現される。第1実施形態に係る流路制御部G2の各流路制御ユニットU2の構成は以上の通りである。
<液体噴射部G3>
液体噴射部G3は、流路制御部G2を経由した各系統のインクIをノズルNから噴射する。図2に例示される通り、液体噴射部G3の各液体噴射ユニットU3のうち流路制御部G2との対向面には4個の供給口SI3が形成される。流路制御部G2と液体噴射部G3(筐体142)とが相互に固定された状態では、各液体噴射ユニットU3の各供給口SI3が流路制御ユニットU2の各流出口DI2に挿入される。したがって、図5から理解される通り、各液体噴射ユニットU3の4個の供給口SI3には、流路制御ユニットU2の流出口DI2から各系統のインクIが並列に供給される。
図10は、任意の1個の液体噴射ユニットU3の分解斜視図である。図10に例示される通り、液体噴射ユニットU3は、フィルター部52と連通部材54と配線基板56と液体分配部60と6個の噴射ヘッド部70と固定板58とを具備する。6個の噴射ヘッド部70とフィルター部52との間に液体分配部60が設置され、液体分配部60とフィルター部52との間に連通部材54と配線基板56とが設置される。以上の説明から理解される通り、平面視で相互に重なる流路構造体G1と液体分配部60との間に、流路制御部G2(流路制御ユニットU2)とフィルター部52と連通部材54と配線基板56とが設置される。また、6個の液体噴射ユニットU3を収容および支持する筐体142も流路構造体G1と液体分配部60との間に位置する。
フィルター部52は、流路制御部G2から供給される各インクIに包含される気泡や異物を除去する要素であり、図10に例示される通り、相互に対向した状態で固定される第1部材522および第2部材524と、各インクIに対応する4個のフィルター526とを含んで構成される。第1部材522および第2部材524は、例えばザイロン(登録商標)等の樹脂材料で形成された平板材である。第1部材522のうち第2部材524とは反対側の表面に、流路制御部G2を経由した各インクIが供給される4個の供給口SI3が形成される。
図11は、フィルター部52と連通部材54と配線基板56との積層を噴射ヘッド部70側からみた平面図である。液体分配部60や噴射ヘッド部70の図示を図11では便宜的に省略した。図11に例示される通り、フィルター部52のうち第2部材524の周縁(四隅)の近傍には、各インクIに対応する4個の流出口528が形成される。任意の1個の供給口SI3に供給された1系統のインクIがフィルター526を通過して1個の流出口528に到達するように、第1部材522と第2部材524との間に4個のフィルター526が設置される。第1実施形態のフィルター部52は、液体分配部60とは別体に構成され、例えば螺子等の固定手段(図示略)により液体分配部60に固定される。他方、相互間の固定を解除することでフィルター部52を液体分配部60から取外すことが可能である。すなわち、フィルター部52と液体分配部60とは着脱可能な状態で相互に固定される。
図10の連通部材54は、フィルター部52の各流出口528を液体分配部60に連通させる。第1実施形態の連通部材54は、弾性材料(例えばゴム)で形成された平板材であり、図11に例示される通り、フィルター部52の各流出口528に対応する複数の貫通孔542が形成される。具体的には、平面視で連通部材54の各隅部(四隅)に各貫通孔542が位置する。
図10の配線基板56は、駆動信号や電源電圧を各噴射ヘッド部70に伝送するための配線が形成された基板である。なお、駆動信号や電源電圧を生成する電子回路を配線基板56に実装することも可能である。第1実施形態の配線基板56のうちフィルター部52の各流出口528(連通部材54の各貫通孔542)に対応する位置には切欠562が形成される。したがって、図11から理解される通り、連通部材54を挟んでフィルター部52とは反対側に配線基板56が設置された状態で、配線基板56は平面視で各貫通孔542(各流出口528)に重ならない。
図10の液体分配部60は、連通部材54の各貫通孔542を介して供給される4系統のインクI(流路構造体G1による分配後に流路制御部G2を経由した4系統のインクI)の各々を、各噴射ヘッド部70に対応する6系統に分配する。すなわち、液体分配部60による1系統のインクIの分配数(6)はインクIの種類数K(K=4)を上回る。第1実施形態では、配線基板56からみて各噴射ヘッド部70側に液体分配部60が設置されるから、液体分配部60と各噴射ヘッド部70との間に配線基板56を設置した構成と比較して、配線基板56を含む平面を通過する流路の総数が削減される。したがって、配線基板56の平面形状の自由度を充分に確保できるという利点がある。
第1実施形態の液体分配部60は、図10に例示される通り、第1流路基板62と第2流路基板64と第3流路基板66とを、配線基板56側から各噴射ヘッド部70側に向けて以上の順番で積層した平板状の構造体である。第1流路基板62と第2流路基板64と第3流路基板66とは、例えばザイロン等の樹脂材料で成型されて接着剤で相互に固定される。以上の説明から理解される通り、液体分配部60の剛性(外力に対する機械的な強度)は、流路構造体G1の剛性を上回る。
図12は、液体分配部60の分解斜視図である。第1流路基板62に積層される配線基板56の輪郭線が図12では便宜的に破線で図示されている。図12に例示される通り、第1流路基板62のうち配線基板56の各切欠562に対応する4箇所(四隅)には、各インクIに対応する供給口60Aが形成される。連通部材54と液体分配部60との間に配線基板56が挟まれた状態で連通部材54が配線基板56側に押圧されることで、配線基板56の各切欠562の内側で第1流路基板62と連通部材54とが相互に密着し、結果的に連通部材54の各貫通孔542(フィルター部52の各流出口528)と液体分配部60の各供給口60Aとが相互に連通する。すなわち、フィルター部52と連通部材54とを経由した4系統のインクIの各々が液体分配部60の各供給口60Aに並列に供給される。第1実施形態の液体分配部60は流路構造体G1と比較して高剛性の材料で形成されるから、例えば液体分配部60を流路構造体G1と同様の材料で形成した構成と比較して、連通部材54からの押圧力に起因した液体分配部60の変形や破損を有効に防止することが可能である。
図13は、液体分配部60の第3流路基板66を噴射ヘッド部70側からみた斜視図である。各噴射ヘッド部70の輪郭線が図13では便宜的に破線で図示されている。図13に例示される通り、第3流路基板66には、4系統のインクIに対応する4個の流出口60Bが6個の噴射ヘッド部70の各々について(すなわち合計36個)形成される。
図14は、液体分配部60の内部に形成される流路の説明図である。図14に例示される通り、第1実施形態の液体分配部60の内部には4個の流路Q(Q1,Q2)が形成される。4個の流路Qは、2個の流路Q1と2個の流路Q2とを包含する。液体分配部60のうち平面視でY方向の正側および負側の各々に位置する周縁の近傍に、1個の流路Q1と1個の流路Q2との組が形成される。各流路Qは、1個の供給口60Aに供給されるインクIを、相異なる噴射ヘッド部70に対応する6個の流出口60Bに分配する。具体的には、各流路Qは、X方向に延在する1個の基幹部qAと、基幹部qAのうちX方向の相異なる各位置からW方向に分岐する6個の分岐部qBとを含んで構成される。各流路Qの基幹部qAには供給口60Aが連通し、各流路Qの6個の分岐部qBの各々の端部には流出口60Bが連通する。
図12に例示される通り、第2流路基板64のうち第1流路基板62との対向面には、各流路Q1に対応する溝部642が形成される。第2流路基板64の表面の溝部642が第1流路基板62の表面(第2流路基板64との対向面)により閉塞されることで流路Q1が形成される。図12から理解される通り、流路Q1(溝部642)の基幹部qAは、第1流路基板62に形成された貫通孔を介して供給口60Aに連通し、流路Q1の各分岐部qBは、第2流路基板64と第3流路基板66とに形成された貫通孔を介して流出口60Bに連通する。なお、図12の例示では、第2流路基板64の表面の溝部642で流路Q1を形成したが、第1流路基板62のうち第2流路基板64との対向面に形成された溝部で流路Q1を形成した構成や、第1流路基板62および第2流路基板64の各々の対向面に形成された溝部の組合せで流路Q1(特に基幹部qA)を形成した構成も採用され得る。
図12に例示される通り、第3流路基板66のうち第2流路基板64との対向面には、各流路Q2に対応する溝部662が形成される。第3流路基板66の表面の溝部662が第2流路基板64の表面(第3流路基板66との接合面)により閉塞されることで流路Q2が形成される。図12から理解される通り、流路Q2(溝部662)の基幹部qAは、第1流路基板62と第2流路基板64とに形成された貫通孔を介して供給口60Aに連通し、流路Q2の各分岐部qBは、第3流路基板66に形成された貫通孔を介して流出口60Bに連通する。なお、図12の例示では、第3流路基板66の表面の溝部662で流路Q2を形成したが、第2流路基板64のうち第3流路基板66との対向面に形成された溝部で流路Q2を形成した構成や、第2流路基板64および第3流路基板66の各々の対向面に形成された溝部の組合せで流路Q2(特に基幹部qA)を形成した構成も採用され得る。
以上に例示される通り、各流路Q1は第1流路基板62と第2流路基板64との間に形成され、各流路Q2は第2流路基板64と第3流路基板66との間に形成される。すなわち、流路Q1と流路Q2とではZ方向の位置が相違する。以上の構成を採用する結果、図12および図14から理解される通り、流路Q1と流路Q2とは平面視で部分的に重複する。したがって、例えば一対の基板間に流路Q1および流路Q2の双方を形成する構成と比較して、Z方向からみた液体分配部60のサイズ(ひいては液体噴射ヘッド14のサイズ)が縮小されるという利点がある。第1実施形態における液体分配部60の構造の具体例は以上の通りである。
図10の6個の噴射ヘッド部70の各々は、液体分配部60の各流出口60Bから供給される4系統のインクIを各ノズルNから噴射する。図15は、1個の噴射ヘッド部70の断面図(W方向に垂直な断面)である。図15に例示される通り、第1実施形態の噴射ヘッド部70は、流路形成基板71の一方の表面に圧力室形成基板72と振動板73とを積層するとともに他方の表面にノズル板74とコンプライアンス部75とを設置したヘッドチップを包含する。複数のノズルNは、ノズル板74に形成される。なお、図15から理解される通り、1個の噴射ヘッド部70には、ノズルNの各列に対応する構造が略線対称に形成されるから、以下ではノズルNの1列分に便宜的に着目して噴射ヘッド部70の構造を説明する。
流路形成基板71は、インクIの流路を構成する平板材である。第1実施形態の流路形成基板71には、開口部712と供給流路714と連通流路716とが形成される。供給流路714および連通流路716はノズルN毎に形成され、開口部712は、1系統のインクIを噴射する複数のノズルNにわたり連続する。圧力室形成基板72は、相異なるノズルNに対応する複数の開口部722が形成された平板材である。流路形成基板71や圧力室形成基板72は、例えばシリコンの単結晶基板で形成される。
図15のコンプライアンス部75は、噴射ヘッド部70の流路内の圧力変動を抑制(吸収)する機構であり、封止板752と支持体754とを含んで構成される。封止板752は、可撓性を有するフィルム状の部材であり、支持体754は、流路形成基板71の開口部712および各供給流路714が閉塞されるように封止板752を流路形成基板71に固定する。
図15の圧力室形成基板72のうち流路形成基板71とは反対側の表面に振動板73が設置される。振動板73は、弾性的に振動可能な平板状の部材であり、例えば酸化シリコン等の弾性材料で形成された弾性膜と、酸化ジルコニウム等の絶縁材料で形成された絶縁膜との積層で構成される。図15から理解される通り、振動板73と流路形成基板71とは、圧力室形成基板72に形成された各開口部722の内側で相互に間隔をあけて対向する。各開口部722の内側で流路形成基板71と振動板73とに挟まれた空間は、インクに圧力を付与する圧力室(キャビティ)Cとして機能する。図4から理解される通り、複数の圧力室CはW方向に沿って配列する。
振動板73のうち圧力室形成基板72とは反対側の表面には、相異なるノズルNに対応する複数の圧電素子732が形成される。各圧電素子732は、相互に対向する電極間に圧電体を介在させた積層体である。駆動信号の供給により圧電素子732が振動板73とともに振動することで、圧力室C内の圧力が変動して圧力室C内のインクIがノズルNから噴射される。各圧電素子732は、振動板73に固定された保護板76で封止および保護される。
図15に例示される通り、流路形成基板71および保護板76には支持体77が固定される。支持体77は、例えば樹脂材料の成型で一体に形成される。第1実施形態の支持体77には、流路形成基板71の開口部712とともに液体貯留室(リザーバー)Rを形成する空間772と、液体貯留室Rに連通する供給口774とが形成される。各供給口774は、液体分配部60の各流出口60Bに連通する。したがって、液体分配部60による分配後の各系統のインクIが流出口60Bから噴射ヘッド部70の供給口774を介して液体貯留室Rに供給および貯留される。液体貯留室Rに貯留されたインクIは、複数の供給流路714により各圧力室Cに分配および充填され、各圧力室Cから連通流路716とノズルNとを通過して外部(印刷媒体M側)に噴射される。
図15に例示される通り、振動板73には配線基板78の端部が接合される。配線基板78は、駆動信号や電源電圧を各圧電素子732に伝送するための配線が形成された可撓性の基板(フレキシブル配線基板)であり、保護板76および支持体77に形成された開口部(スリット)を通過して配線基板56側に突出する。
図10に例示される通り、液体分配部60(第1流路基板62,第2流路基板64,第3流路基板66)には、各噴射ヘッド部70の配線基板78に対応する開口部(スリット)60Cが形成される。各噴射ヘッド部70の配線基板78は、液体分配部60の各開口部60Cを介して配線基板56側に突出し、噴射ヘッド部70とは反対側の端部が配線基板56に接続される。駆動信号や電源電圧は、配線基板56から各配線基板78を介して各噴射ヘッド部70の圧電素子732に供給される。
図12から図14に例示される通り、液体分配部60の各開口部60Cは、各流路Q1の分岐部qBと各流路Q1の分岐部qBとの間の領域にてW方向に延在する長尺状に形成される。以上の例示の通り、第1実施形態では、噴射ヘッド部70の可撓性の配線基板78が液体分配部60の開口部60Cを介して配線基板56に接続されるから、例えば液体分配部60の周縁の外側を通過するように配線基板78を湾曲させて配線基板56に接続する構成と比較して配線基板78のサイズを縮小する(ひいては製造コストを低減する)ことが可能である。
図10の固定板58は、例えばステンレス鋼等の高剛性の金属で形成された平板材である。図10に例示される通り、固定板58には、相異なる噴射ヘッド部70に対応する6個の開口部582が形成される。各開口部582は、平面視でW方向に長尺な略矩形状の貫通孔である。各噴射ヘッド部70は、開口部582の内側にノズル板74が位置する状態で、固定板58の表面に例えば接着剤で固定される。第1実施形態に係る各液体噴射ユニットU3の構成は以上の通りである。
以上に説明した通り、第1実施形態では、相互に別体に構成された流路構造体G1と液体分配部60とで各インクIが分配される。したがって、単体の要素でインクIを同数に分配する構成と比較して、Z方向からみた液体噴射ヘッド14のサイズが縮小されるという利点がある。
第1実施形態では、各インクIの流路PI2の開閉や流路PI2内の圧力を制御する流路制御部G2が流路構造体G1と液体分配部60との間に設置されるから、流路制御部G2を流路構造体G1の上流側に設置した構成と比較して流路構造体G1内の各流路PI1における圧力損失のバラツキを低減できるという利点もある。
第1実施形態では、流路構造体G1と液体分配部60との間(液体分配部60の上流側)にフィルター部52が設置されるから、例えば液体分配部60の下流側にフィルター部52を設置した構成と比較して、液体分配部60に気泡や異物が流入する可能性を低減することが可能である。また、第1実施形態のフィルター部52は液体分配部60から取外すことが可能であるから、各フィルター526の洗浄が容易であるという利点がある。
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態を説明する。なお、以下に例示する各形態において作用や機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
図16は、第2実施形態における流路構造体G1の側面図および平面図である。第1実施形態では、第2面22に形成された円管状の各流出口(DI1,DA1)の高さを共通させた。第2実施形態の流路構造体G1の第2面22には、第2面22に対する高さが相違する複数種の流出口が形成される。具体的には、図16に例示される通り、各空気Aの流出口DA1の高さhAは、各インクIの流出口DI1の高さhIを上回る。なお、各流出口DI1の高さhIが各流出口DA1の高さhAを上回る構成も採用され得る。
第2面22の各流出口D(DI1,DA1)を同等の高さに形成した第1実施形態の構成では、流路構造体G1の各流出口D(DI1,DA1)を流路制御部G2の各供給口S(SI2,SA2)に挿入する工程(液体噴射ヘッド14の組立工程)において、全部の流出口Dからの応力が同時に流路制御部G2に作用するから、流路構造体G1からの応力に起因して流路制御部G2が変形する可能性がある。他方、第2実施形態では、流出口DI1と流出口DA1とで高さが相違するから、液体噴射ヘッド14の組立工程では、各流出口DI1から流路制御部G2に応力が作用し始める時点と各流出口DA1から流路制御部G2に応力が作用し始める時点とが相違する。すなわち、各流出口Dから流路制御部G2に応力が作用する時点が時間的に分散される。したがって、第1実施形態と比較して、液体噴射ヘッド14の組立工程において流路制御部G2の変形や破損を防止できるという利点がある。
なお、図16の例示では、空気Aの流出口DA1とインクIの流出口DI1とで高さを相違させたが、高さを相違させる流出口Dの選定の方法は以上の例示に限定されない。例えば、相異なるインクIに対応する各流出口DI1の高さを相違させた構成や、第2面22を例えばX方向に沿って区分した領域毎に各流出口D(DI1,DA1)の高さを相違させた構成も採用され得る。もっとも、流路制御部G2に対する応力の集中を緩和するという観点からは、高さhAの流出口Dと高さhBの流出口Dとが第2面22の面内で略均等に分布する構成が好適である。なお、図16の例示では2種類の高さの流出口Dを例示したが、3種類以上の高さの流出口Dを第2面22に形成することも可能である。
<第3実施形態>
図17は、第3実施形態における流路構造体G1の側面図および平面図であり、図18は、図17におけるXVIII−XVIII線の断面図(X-Z平面に平行な断面)である。第1実施形態では、フィルム状の封止部25および封止部26を基板20に貼着した構造の流路構造体G1を例示した。第3実施形態の流路構造体G1は、図17に例示される通り、第1基板27と第2基板28とを相互に対向した状態で接合した平板状の構造体である。第1基板27および第2基板28は、第1実施形態の基板20と同様にX方向に長尺な平板材であり、例えばポリプロピレン等の熱可塑性の樹脂材料で形成される。第1基板27は、第2基板28とは反対側の第1面271と、第1面271とは反対側の第1流路面(第2基板28との対向面)272とを包含する。同様に、第2基板28は、第1基板27とは反対側の第2面281と、第2面281とは反対側の第2流路面(第1基板27との対向面)282とを包含する。
第1基板27の第1面271には、第1実施形態における基板20の第1面21と同様に、液体容器18から各系統のインクI(C,M,Y,K)が供給される4個の供給口SI1と、ポンプ16から2系統の空気A(A1,A2)が供給される2個の供給口SA1とが形成される。また、第2基板28の第2面281には、第1実施形態における基板20の第2面22と同様に、各系統のインクIに対応する4個の流出口DI1と、各系統の空気Aに対応する2個の流出口DA1とが、6個の液体噴射ユニットU3の各々について個別に形成される。任意の1系統のインクIに対応する6個の流出口DI1は略等間隔でX方向に配列し、任意の1系統の空気Aに対応する6個の流出口DA1は略等間隔でX方向に配列する。
図17および図18に例示される通り、第1基板27の第1流路面272には、各系統のインクIに対応する4個の溝部273と、各系統の空気Aに対応する2個の溝部274とが形成される。各溝部273および各溝部274は、平面視で6個の流路制御ユニットU2が配列する範囲の略全域にわたりX方向に沿って略直線状に延在する。各溝部273は、インクIの供給用の1個の供給口SI1に平面視で重なるように形成され、図18から理解される通り、第1基板27に形成された貫通孔H1を介して当該供給口SI1に連通する。同様に、各溝部274は、空気Aの供給用の1個の供給口SA1に平面視で重なるように形成され、第1基板27に形成された貫通孔H1を介して当該供給口SA1に連通する。
第2基板28の第2流路面282には、各系統のインクIに対応する4個の溝部283と、各系統の空気Aに対応する2個の溝部284とが形成される。各溝部283は、1系統のインクIに対応する6個の流出口DI1に平面視で重なるようにX方向に沿って略直線状に延在し、図18に例示される通り、第2基板28に形成された貫通孔H2を介して各流出口DI1に連通する。同様に、各溝部284は、1系統の空気Aに対応する6個の流出口DA1に平面視で重なるようにX方向に沿って略直線状に延在し、第2基板28の貫通孔H2を介して各流出口DA1に連通する。
各溝部273と各溝部283とが平面視で相互に重なるとともに各溝部274と各溝部284とが平面視で相互に重なるように、第1基板27の第1流路面272と第2基板28の第2流路面282とが相互に接合される。第1基板27と第2基板28との接合には、溶着(例えば超音波溶着)や接着等の公知の技術が任意に採用され得る。第1基板27と第2基板28とが相互に接合された状態では、図18に例示される通り、各溝部273の内周面と各溝部283の内周面とで包囲された空間がインクIの流路PI1として機能し、各溝部274の内周面と各溝部284の内周面とで包囲された空間が空気Aの流路PA1として機能する。
以上の説明から理解される通り、流路PI1は、1個の供給口SI1と6個の流出口DI1とを連通させる流路であり、流路PA1は、1個の供給口SA1と6個の流出口DA1とを連通させる流路である。第1実施形態と同様に、空気Aに対応する2個の流路PA1(溝部274,溝部284)を平面視で挟む両側に、インクIに対応する4個の流路PI1(溝部273,溝部283)が位置する。空気Aに対応する各流路PA1(溝部273,溝部283)が、取付孔23を迂回するように平面視で屈曲した構成も第1実施形態と同様である。なお、流路構造体G1以外の各要素の構成は第1実施形態と同様である。
第3実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。また、第3実施形態では、第1基板27と第2基板28との接合で流路PI1および流路PA1が形成されるから、フィルム状の封止部25および封止部26を基板20に貼着する第1実施形態と比較して、流路PI1および流路PA1の機械的な強度を充分に維持できる(各流路の破損等を防止できる)という利点がある。他方、第1実施形態では、フィルム状の封止部25および封止部26を基板20に貼着することで流路PI1および流路PA1が形成されるから、第1基板27と第2基板28とを接合する第3実施形態と比較して、流路構造体G1の薄型化が容易であるという利点がある。また、第1基板27と第2基板28との接合面に流路が形成される第3実施形態では、第1基板27の第1流路面272や第2基板28の第2流路面282に高い平坦度が必要であるが、第1実施形態では、可撓性の封止部25および封止部26が基板20に貼着されるから、第3実施形態と比較して基板20に必要な平坦度の条件が緩和される(平坦度が低く低廉な基板20を利用できる)という利点もある。
第1実施形態における基板20と各封止部(25,26)とを積層した構造体と、第3実施形態における第1基板27と第2基板28とを積層した構造体とは、供給口(SI1,SA1)と複数の流出口(DI1,DA1)とを相互に連通させる流路(PI1,PA1)が形成された板状の構造体(基体部)として包括的に表現される。基体部の一方の表面には供給口(SI1,SA1)が形成され、基体部の他方の表面には複数の流出口(DI1,DA1)が形成される。
なお、以上の例示では、第1基板27および第2基板28の双方に溝部(273,274,283,284)を形成したが、第1基板27および第2基板28の一方のみに溝部を形成することも可能である。また、各流出口(DI1,DA1)の高さを相違させた第2実施形態の構成は、第3実施形態にも同様に適用され得る。
<変形例>
以上に例示した形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
(1)前述の各形態では、流路構造体G1がインクIおよび空気Aの双方を分配したが、インクIおよび空気Aの一方の分配に流路構造体G1を利用することも可能である。すなわち、インクIの分配用の流路PI1および空気Aの分配用の流路PA1の一方は省略され得る。また、前述の各形態では、流路構造体G1と液体噴射部G3との間に流路制御部G2を設置したが、流路制御部G2を省略した構成や、流路構造体G1の上流側に流路制御部G2を設置した構成も採用され得る。流路制御部G2を省略した構成では、空気Aの分配用の流路PA1が流路構造体G1から省略され、流路構造体G1による分配後の各インクIが液体噴射部G3(各液体噴射ユニットU3)に供給される。
(2)前述の各形態では、相互に別体に形成された複数の流路制御ユニットU2で流路制御部G2を構成したが、流路制御部G2の機能を単体の装置で実現することも可能である。すなわち、流路制御部G2が複数の流路制御ユニットU2に分離される構成は本発明において必須ではない。また、前述の各形態では、相互に別体に形成された複数の液体噴射ユニットU3で液体噴射部G3を構成したが、液体噴射部G3の機能を単体の装置で実現することも可能である。すなわち、液体噴射部G3が複数の液体噴射ユニットU3に分離される構成は本発明において必須ではない。
(3)第1実施形態では、流路構造体G1の基板20の第1面21に形成された各溝部341(341a,341b,341c)を、第2面22の溝部351(351a,351b)を介して供給口SI1に連通させたが、基板20の内部に形成された流路を介して各溝部341を供給口SI1に連通させることも可能である。すなわち、第2面22の各溝部351は省略され得る。ただし、前述の各形態のように第2面22に溝部351を形成する構成によれば、基板20の内部に流路を形成する構成と比較して、例えば射出成型で容易に基板20を形成できるという利点がある。以上の例示ではインクIの溝部341に着目したが、空気Aの供給用の溝部342についても同様に、基板20の内部に形成された流路を介して供給口SA1に連通させることが可能である。以上の説明から理解される通り、第1実施形態の構成は、第1面21に形成された表側溝部が供給口(SI1,SA1)に連通する構成として包括的に表現され、表側溝部を供給口に連通させるための構成は任意である。
(4)第1実施形態では、基板20に設置される封止部25および封止部26をフィルム状としたが、封止部25および封止部26の形態は以上の例示に限定されない。例えば、樹脂材料で形成された平板材を封止部25や封止部26として基板20に貼着することで流路を形成することも可能である。ただし、流路構造体G1の厚さを低減するという観点からは、封止部25や封止部26の厚さが基板20の厚さを下回る構成が好適である。
(5)各ノズルNからインクを噴射させる要素は前述の圧電素子732に限定されない。例えば、加熱による気泡の発生で圧力室C内の圧力を変動させてインクをノズルNから噴射させる発熱素子を圧電素子732の代わりに利用することも可能である。圧電素子732や発熱素子は、圧力室Cの内部の圧力を変化させる要素(圧力発生素子)として包括され、圧力を変化させる方式(ピエゾ方式/サーマル方式)や具体的な構成の如何は本発明において不問である。
(6)以上の各形態で例示した印刷装置100は、印刷に専用される機器のほか、ファクシミリ装置やコピー機等の各種の機器に採用され得る。もっとも、本発明の液体噴射装置の用途は印刷に限定されない。例えば、色材の溶液を噴射する液体噴射装置は、液晶表示装置のカラーフィルターを形成する製造装置として利用される。また、導電材料の溶液を噴射する液体噴射装置は、配線基板の配線や電極を形成する製造装置として利用される。