JP2015174067A - 界面前進凍結濃縮システム - Google Patents

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Abstract

【課題】氷結晶を容易に切断・搬送できると共に融解液中の溶質の保存性に優れる界面前進凍結濃縮システムを提供する。【解決手段】本発明の界面前進凍結濃縮システムは、鉛直管の外部を冷媒で冷却しながらその内部に溶液を循環させることで鉛直管内に中空棒状の氷結晶を生成する氷結晶生成部と、鉛直管の下部開口を開閉する開閉弁と、鉛直管の下方に配置されており、開閉弁を開いて鉛直管から自然落下させて取り出した前記氷結晶を搬送面上に載置して搬送する氷結晶破砕用コンベヤと、搬送された前記氷結晶を部分融解させて所望の濃度の融解液を得る氷結晶融解部とを備える。また、搬送面上に所定の間隔で配置した凸部を備えており、前記下部開口から自然落下した氷結晶の下端を走行中の凸部に引っ掛けることで、当該氷結晶を前記下部開口近傍で順次切断する。【選択図】図3

Description

本発明は、水溶液・果汁・酒等の各種溶液を冷却・凍結し、氷結晶を除去することで濃縮液を生成する界面前進凍結濃縮システムに関する。
従来、食品や医薬品等の様々な分野で原材料の濃縮液が利用されており、濃縮液の生成方法の一つとして凍結濃縮法が知られている。
凍結濃縮法は蒸発濃縮法や膜濃縮法と比較して、原材料となる溶液の高品質濃縮が可能であり、また、低温濃縮という特徴によって熱的に不安定な溶質の晶析法としても優れている。
凍結濃縮法のうち界面前進凍結濃縮法は、果物等の試料溶液に接触する冷却面から氷結晶を生成・成長させてゆくこと、すなわち未凍結溶液相と氷相との界面を未凍結溶液相側(伝熱方向と逆方向)に前進させて1個の氷結晶を作ることによって凍結濃縮を行う方法で、氷結晶成長速度の制御と、凍結相と液相との界面の撹拌が重要である。
この方法は1個の大きな氷結晶を生成するため、従来の凍結濃縮法(懸濁結晶法)と比較して固液分離が極めて容易でシステムを単純化できるという利点がある。また、氷結晶への溶質(栄養成分やフレーバー成分)の取り込みが成分非選択的に行われる。従って、濃縮液に含まれる溶質の成分バランスが濃縮前とほぼ同等であり、溶質の保存性に優れ、果汁等の品質劣化を防止して香味を高めることができるという利点もある。なお、このような氷結晶への溶質の成分非選択的な取り込みは、氷結晶構造の空隙への溶質の非平衡的取り込み機構によるものと推察される。
界面前進凍結濃縮装置として、例えば特許文献1には、直立させた外管と、外管に挿入した内管とからなる2重円筒管を複数本備えており、内管の内部に被濃縮液を循環させつつ外管の内部に冷媒を循環させることで、内管の内壁面に中空状の氷結晶を成長させる技術が開示されている。この装置は各2重円筒管の下部にボールバルブが接続されており、制御装置がボールバルブを開くことで中空状の氷結晶を自重により内管から自然落下させ、次に所定のタイミングでボールバルブを閉じることで氷結晶を適当な長さにせん断する仕組みになっている。せん断された氷結晶はボールバルブの下方に配置した受け器で回収したり(特許文献1の図1〜4参照)、更に破砕機の回転刃で再破砕(同図5参照)した後、台車で搬送する仕組みになっている。
また、例えば特許文献2には、回収した中空状の氷結晶に対して送風機で風を送り融解させることで、最初に高濃度の融解溶液を回収し、その後低濃度の融解溶液になるまで多段階で回収していく部分融解に関する技術が開示されている。
特開2005−144202号公報 特開2002−153859号公報
ところが、上記各特許文献に開示されたような従来の技術では以下のような問題があった。
すなわち、特許文献1の技術では氷結晶の切断をボールバルブで行うので装置構成が複雑になり製造コストが嵩むという問題や、受け器で回収した氷結晶を台車に載せて融解作業を行う場所まで移動させることになるため実生産する際の装置の自動化が難しいという問題がある。また、溶液の濃度や溶質の種類・成分比によって氷結晶の硬さは異なるが、氷結晶を破砕機で破砕すると氷片のサイズにばらつきが出てしまうため、後の部分融解工程において所望の濃度の融解液を回収することが困難になるという問題もある。
また、特許文献2の技術では送風機で風を送りながら氷結晶を部分融解させるので、融解液に含まれている溶質のフレーバー成分が風で拡散してしまい、濃縮液中の溶質の成分バランスが濃縮前と大きく異なってしまうという問題がある。
本発明はこのような問題に鑑み、氷結晶を容易に切断・搬送できると共に融解液中の溶質の保存性に優れる界面前進凍結濃縮システムを提供することを目的とする。
本発明の界面前進凍結濃縮システムは、鉛直管の外部を冷媒で冷却しながらその内部に溶液を循環させることで鉛直管内に中空棒状の氷結晶を生成する氷結晶生成部と、鉛直管の下部開口を開閉する開閉弁と、鉛直管の下方に配置されており、開閉弁を開いて鉛直管から自然落下させて取り出した前記氷結晶を搬送面上に載置して破砕する氷結晶破砕用コンベヤと、前記氷結晶を部分融解させて所望の濃度の融解液を得る氷結晶融解部とを備える界面前進凍結濃縮システムにおいて、前記搬送面上に所定の間隔で配置した凸部を備えており、前記下部開口から自然落下した氷結晶の下端を走行中の凸部に引っ掛けることで、当該氷結晶を前記下部開口近傍で順次切断することを特徴とする。
また、前記下部開口から搬送面までの相対距離を変えるための高さ調節機構を備えることを特徴とする。
また、前記氷結晶融解部が、切断後の氷結晶を外気に対して密閉状態で収容する収容容器と、収容容器内を加温する加温機構と、収容容器内の氷結晶を撹拌する撹拌機構とを備えることを特徴とする。
本発明の界面前進凍結濃縮システムによれば、搬送面に設けた凸部を利用して中空棒状の氷結晶を切断するので、装置構成がシンプルになり製造コストを抑制できるという利点がある。また、搬送面上で氷結晶を切断するので、切断後の氷結晶を搬送面に載せたまま氷結晶破砕用コンベヤで氷結晶融解部まで搬送でき、実生産する際の装置の自動化が容易となる。
また、上述の通り溶液の濃度や溶質の種類・成分比によって氷結晶の硬さは異なるが、凸部の配置間隔を一定にすることで、氷結晶の硬さによらず切断長さを一定にできる。したがって、氷結晶融解部で行う氷結晶の融解液の濃度調節が容易になり、所望の濃度の融解液を回収できるようになる。
また、高さ調節機構を備えることにすれば、氷結晶破砕用コンベヤの搬送能力や氷結晶融解部の処理能力に応じて氷結晶の切断長さを調節できる。
また、氷結晶を外気に対して密閉状態で収容する収容容器を備えることにすれば、従来の装置のように送風機で風を送りながら氷結晶を部分融解させる場合と比較して、融解液に含まれる溶質のフレーバー成分が風で煽られて大気中に拡散してしまう事態を防ぎ、融解液中の溶質の成分バランスを濃縮前の溶液の成分バランスとほぼ同等にできる。
また、界面前進凍結濃縮法で生成した氷結晶をゆっくり時間をかけて融解していくと、まず最初に溶質を多く含有する高濃度の融解液が溶出し、次第に濃度が低くなっていくことが知られている。したがって、加温機構と撹拌機構を用いて氷結晶を撹拌しながら加温すると、収容容器内の温度をほぼ均一化できるため、所望の濃度の融解液が回収し易くなる。
界面前進凍結濃縮システムの構成を示す正面図 界面前進凍結濃縮システムの構成を示す側面図 中空棒状の氷結晶を切断し、搬送する状態を示す図(a)〜(e) 切断した氷結晶を氷結晶融解部に搬送する状態を示す図(a)、部分融解中の状態を示す図(b) ラ・フランスのフレーバーパターンの変化を示すグラフ 加賀棒茶の氷結晶の様子を示す図(a)及び、左から氷融解液、濃縮前原液、および濃縮液の様子を示す図(b) 加賀棒茶の香気成分の分析結果 ラ・フランス果汁凝縮液の濃縮液等の香気成分を示すグラフ トマト果汁に部分融解を行った場合の氷相融解率と濃度及び収率との関係を示すグラフ 凍結濃縮日本酒のアルコール度数を示すグラフ(a)と香気成分を示すグラフ(b) 日本酒の成分分析結果を示すグラフ(a)と香気成分分析結果を示す表(b)
本発明の界面前進凍結濃縮システム1の実施の形態について説明する。
図1〜図4に示すように界面前進凍結濃縮システム1は、氷結晶生成部10と氷結晶破砕部(氷結晶破砕用コンベヤ20)および氷結晶融解部30から概略構成され、後2者の位置関係によっては必要に応じて、図4に示すように氷結晶搬送用コンベヤ40を用いる。
氷結晶生成部10は鉛直管11の外部を冷媒で冷却しながら鉛直管11の内部に溶液を循環させることで鉛直管11内に中空棒状の氷結晶50を生成するものである。
溶液の種類は例えば水溶液・果汁・酒等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
水溶液としては、果汁、コーヒー(焙煎コーヒー豆の水抽出液)、茶(各種茶葉の水抽出液)、牛乳、だし汁等が挙げられる。茶葉は単独で用いてもよく、複数種類を組合せてもよい。牛乳は殺菌乳や加工乳等が挙げられる。だし汁は昆布だし、かつおだし、ブイヨン、うまみ抽出エキス、和風だし、洋風だし、中華だし等が挙げられる。なお、これら水溶液中には水に不溶な成分が懸濁又は分散されていてもよい。また、水溶液はそのまま凍結濃縮してもよく、あるいは水に不溶な成分を濾過した後に凍結濃縮してもよい。
果汁としては、レモン果汁、オレンジ果汁、りんご果汁等の一般的な果実果汁を挙げられる。
酒としては、醸造酒(例えば日本酒(原酒及び加水調整したものを含む)、ビール、ワイン、シードル等)、混成酒(合成清酒、甘味果実酒、リキュール類、雑酒、発泡酒、フルーツビール等)が挙げられる。
鉛直管11は複数本(本実施の形態では2本)で構成されており、鉛直管11同士はその上下両端が連結されることで循環流路を形成している。そして、溶液タンク12内の溶液を送液用ポンプ12aで循環流路に供給ののち、流量計13で流量を計測しながら溶液循環用ポンプ14で循環させる。
また、各鉛直管11の外周面の一部は冷却ジャケット15で覆われている。冷却ジャケット15同士も循環流路で結ばれており、この循環流路に冷媒タンク16内の冷媒を温度計17で温度を計測しながら冷媒用ポンプ18で送り込んで循環させることで各鉛直管11を外周面側から冷却する。冷媒としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ナイブラインなど周知のものを使用できる。
本システムでは、氷結晶生成部10を構成する各装置の駆動制御を制御装置で行っており、制御装置が溶液循環用ポンプ14の駆動を制御することで鉛直管11内の溶液の流速を調節すると共に流量計13で流量を計測する。鉛直管11の内壁面から中心に向かって氷結晶の生成が進んでゆき、所望の肉厚の中空棒状の氷結晶50を生成する仕組みになっている。
各鉛直管11はその下端部に開口11aを備えており、この下部開口11aは開閉弁11bで開閉自在になっている。
氷結晶50を生成した後はまず鉛直管11内の溶液(濃縮液)を取り出し、次に冷媒を加温して氷結晶50の外周面を温める。これにより氷結晶50は鉛直管11の内壁面から剥離するので、下部開口11aの開閉弁11bを開いて自重により自然落下させる。
なお、界面前進凍結濃縮法において良好な凍結濃縮効果を得るには、氷結晶の成長速度を小さく(遅く)することが有効であることが知られている。これは氷結晶の成長速度が速すぎると氷結晶への溶質取込率が高くなってしまうためであるが、その一方で氷結晶の成長速度が遅すぎると凍結濃縮時間が長くなり濃縮液の生産性が低下するという問題も生じる。また、凍結界面付近での溶液の流速を大きく(速く)することが有効であることも知られている。これは、凍結界面での溶液の流速が遅いと凍結界面近傍での溶質の濃度が高まり、氷結晶への溶質取込率が高くなってしまうためであるが、その一方で凍結界面での溶液の流速が速すぎると装置への負荷が大きくなり、故障等の原因になり易いという問題も生じる。
濃縮液は溶液中の水分の一部を氷結晶として取り除いた残りの液体であり、溶液の種類によって、果実ジュース、コーヒー、茶、牛乳、だし汁等の飲食品を製造する目的で利用できる。濃縮液は、多量の水分を含む溶液をそのまま輸送したり保管したりする場合と比較して輸送コストや保管コストの低減を図れるという利点があり、主にその目的のために調製されるが、そのまま他の飲食品等に添加して用いることもできる。また、溶液が日本酒の場合には、濃縮によりアルコールのみならず、他のエキス分もそのまま濃縮できるため、蒸留酒とは異なる新しいカテゴリーの高濃度酒とすることができる。
氷結晶破砕用コンベヤ20は鉛直管11の下方に配置されており、開閉弁11bを開いて鉛直管11から自然落下させて取り出した氷結晶50を搬送面21上に載置して搬送するために設けられる。
搬送面21上には凸部22を所定の間隔で設けている(図2及び図3(a))。開閉弁11bが開かれて下部開口11aから自然落下した氷結晶50はその下端面が搬送面21に接触したまま直立状態で静止する(図3(b))。この状態では氷結晶50の大部分は鉛直管11内に留まり、下端部のみが外部に露出している。そして搬送面21の走行に伴って氷結晶50の下端面は搬送面21上を相対的に摺動していき、凸部22が氷結晶50の下端に引っ掛かった際に氷結晶50の下端に対して当該凸部22から前方(搬送面21の走行方向)に向けて外力が作用し、この外力の影響により氷結晶50は下部開口11a近傍で切断される(図3(c))。
切断された氷結晶50はそのまま搬送面21に載置された状態で前方に移動していき、鉛直管11内の氷結晶50は自重により自然落下する(図3(d))。落下した氷結晶の下端面(切断面)は搬送面21に接触したまま直立状態で静止し、次の凸部22によって切断される(図3(e))。このように氷結晶50の自重による自然落下と凸部22による切断を繰り返し行うことで全ての氷結晶50を順次適当な長さに切断していく。なお、氷結晶50の切断作業は、鉛直管11が複数ある場合には一本ずつ行ってもよくあるいは複数本同時に行ってもよい。
本実施の形態では鉛直管11の下部開口11aから搬送面21までの相対距離を変えられる高さ調節機構(図示略)を備える。高さ調節機構としては、例えば電動モータ等の周知の駆動装置を用いて、鉛直管11を支持するブラケットの上下方向の位置を調節したり、あるいは搬送面21が巻き回されている前後2つの回転ローラ23の上下方向の位置を調節すればよい。高さ調節機構を用いて鉛直管11の下部開口11aから搬送面21までの距離を変えることで氷結晶の切断長さを変えることができる。
図4(a)及び(b)に示すように氷結晶融解部30は、切断後の中空状の氷結晶を部分融解させて所望の濃度の融解液を得るために設けられる。
具体的には、氷結晶融解部30は収容容器31、加温機構32及び撹拌機構33から概略構成される。
収容容器31は切断後の氷結晶50を外気に対して密閉状態で収容するものである。収容容器31の形状は特に限定されるものではないが、例えば下方に向かって縮径する円錐形状とし、その上端面に氷結晶50を投入するための上部開口31aを設け、その下部に融解液を回収するための取出口31bを設け、上部開口31aを蓋体31cで閉じることで内部を密閉する構造にすればよい。
上記氷結晶破砕用コンベヤ20を床面近くに配置する場合には、必要に応じて氷結晶破砕用コンベヤ20の終端(前端)から斜め上方に収容容器31の上部開口31aにまで至る氷結晶搬送用コンベヤ40を別途配置すればよい。この場合、氷結晶50をこの氷結晶搬送用コンベヤ40に載せて上部開口31aまで移動させて収容容器31内に投入することになる。
加温機構32は収容容器31内を加温するために設けられる。加温するための手段としては特に限定されるものではなく、例えば収容容器31の外周面に温媒を循環させたり、収容容器31の内部にヒーターを取り付けることにしてもよい。収容容器31内の温度は温度計32aで測定可能にしておく。
撹拌機構33は収容容器31内の氷結晶50を撹拌するために設けられる。撹拌するための手段としては特に限定されるものではなく、例えば上記蓋体31cに支持された状態でその下端が収容容器31の内部にまで至る回転軸33aと、この回転軸33aの周囲に取り付けたプロペラ状の攪拌翼33bで構成してもよい。攪拌翼33bの構造も特に限定されるものではないが、例えば複数の棒状部材33cの上端同士を円環33dで接続し、下端同士を円盤33eで接続することで収容容器31の形状に対応した円錐形状にしてもよい。また、蓋体31cの下面にいわゆる邪魔板としての棒状部材33fを取り付けた構成にしてもよい。撹拌機構33を用いることで収容容器31内の温度分布をより均一化することができる。
[果物香気成分濃縮による天然香気素材開発]
次に、本発明の界面前進凍結濃縮システムの実施例1について説明する。
本システムを用いるとリンゴ、モモ、ラ・フランス、ブドウなどの果実フレーバー凝縮液を濃縮することにより天然香気素材の開発が可能となる。図5はラ・フランス果汁凝縮液に本システムによる界面前進凍結濃縮を行った場合と、比較例として逆浸透濃縮を行った場合における濃縮後の香気成分のフレーバーパターンを比較した結果を示す。逆浸透においては濃縮により香気バランスが大きく崩れているのに対し、本システムによる界面前進凍結濃縮は香気バランスを保ったまま有効な濃縮ができていることが分かる。
[嗜好性飲料濃縮による食品新素材開発]
次に、本発明の界面前進凍結濃縮システムの実施例2について説明する。
本システムを用いると緑茶、ほうじ茶、紅茶、コーヒーなどの嗜好性飲料の高品質濃縮が可能となる。図6(a)は石川県特産の茎ほうじ茶である加賀棒茶の界面前進凍結濃縮を行った際の中空状の氷結晶の様子、図6(b)は左より、界面前進凍結濃縮法により生成した氷結晶の融解液、濃縮前の茎ほうじ茶原液、および濃縮液の様子である。また、図7は香気成分の分析結果である。香気成分の氷結晶への取り込み率は低く、また濃縮還元液はほぼ原液組成に近い良好な濃縮が行われていることがわかる。このような濃縮素材は氷菓や菓子原料などへの応用も考えられる。
[浸透圧が低い溶液への本システムの適用]
次に、本発明の界面前進凍結濃縮システムの実施例3について説明する。
この範疇に属する溶液としては果実フレーバー凝縮液、茶・コーヒー等の嗜好性飲料、カツオだし汁等の調味液、タンパク質溶液等があり、これらのうち茎ほうじ茶についてすでに実施例2で述べた。この範疇の食品は、本システムによる界面前進凍結濃縮により95%以上の収率達成を容易に行えることから、本システムを最も適用し易い溶液群といえる。図8はラ・フランス果汁凝縮液に対して本システムによる界面前進凍結濃縮を行い、約6倍に濃縮した後の濃縮液及び部分融解液、そして比較例としての原液のクロマトグラムである。氷結晶への溶質の取り込みは極めて少なく、フレーバーバランスを保ったまま香気成分の有効な濃縮が行われていることが分かる。
[浸透圧が中程度の溶液への本システムの適用]
次に、本発明の界面前進凍結濃縮システムの実施例4について説明する。
多くの果汁、野菜汁がこの範疇に分類され、浸透圧が高いために氷結晶への溶質の取り込み率が高く、収率が低下し易い。このような溶液に対して本システムが有効である。トマト果汁(除パルプ)に対して本システムによる界面前進凍結濃縮を行った結果、部分濃縮を行う前の段階では浸透圧がやや高く(9.9atm)、図9に示すように体積濃縮比1.63倍の濃縮において濃度濃縮比は1.49倍、収率は91%とやや低い結果である。次に生成した氷結晶に対して本システムによる部分濃縮を行い、約25%程度の氷結晶を融解し、溶質を回収することで収率を95%以上に改善できた。
[浸透圧が高い溶液への本システムの適用]
次に、本発明の界面前進凍結濃縮システム1の実施例5について説明する。
この範疇に属する溶液としては高濃度糖液や日本酒がある。(図10(a)及び(b)に3種類の日本酒(純米酒と大吟醸1及び2)に対して本システムによる界面前進凍結濃縮を行った場合と、比較例としての原液のアルコール度数と香気成分を示す。アルコール度数は平均25%程度に濃縮され、香気成分(酢酸エチル)もそれに応じて濃縮されていることが分かる。日本酒の場合は部分融解ではなく全融解することも有力な選択肢となる。
また、図11(a)はアルコール度数17.5%の日本酒原酒に対して本システムによる界面前進凍結濃縮を行った結果を示すものであり、アルコール度数28.9%とこれまでにないカテゴリーの日本酒を得られた。また、図11(b)に示すように香気成分等もほぼ同様の比率で濃縮できており、高品質の濃縮が可能であることが分かる。
本発明は、氷結晶を容易に切断・搬送できると共に融解液中の溶質の保存性に優れる界面前進凍結濃縮システムに関するものであり、産業上の利用可能性を有する。
1 界面前進凍結濃縮システム1
10 氷結晶生成部
11 鉛直管
11a 下部開口
11b 開閉弁
12 溶液タンク
12a 送液用ポンプ
13 流量計
14 溶液循環用ポンプ
15 冷却ジャケット
16 冷媒タンク
17 温度計
18 冷媒用ポンプ
20 氷結晶破砕用コンベヤ
21 搬送面
22 凸部
23 回転ローラ
30 氷結晶融解部
31 収容容器
31a 上部開口
31b 取出口
31c 蓋体
32 加温機構
32a 温度計
33 撹拌機構
33a 回転軸
33b 攪拌翼
33c 棒状部材
33d 円環
33e 円盤
33f 邪魔板
40 氷結晶搬送用コンベヤ
50 氷結晶

Claims (3)

  1. 鉛直管の外部を冷媒で冷却しながらその内部に溶液を循環させることで鉛直管内に中空棒状の氷結晶を生成する氷結晶生成部と、
    鉛直管の下部開口を開閉する開閉弁と、
    鉛直管の下方に配置されており、開閉弁を開いて鉛直管から自然落下させて取り出した前記氷結晶を搬送面上に載置して破砕する氷結晶破砕用コンベヤと、
    前記氷結晶を部分融解させて所望の濃度の融解液を得る氷結晶融解部とを備える界面前進凍結濃縮システムにおいて、
    前記搬送面上に所定の間隔で配置した凸部を備えており、前記下部開口から自然落下した氷結晶の下端を走行中の凸部に引っ掛けることで、当該氷結晶を前記下部開口近傍で順次切断することを特徴とする界面前進凍結濃縮システム。
  2. 前記下部開口から搬送面までの相対距離を変えるための高さ調節機構を備えることを特徴とする請求項1に記載の界面前進凍結濃縮システム。
  3. 前記氷結晶融解部が、切断後の氷結晶を外気に対して密閉状態で収容する収容容器と、収容容器内を加温する加温機構と、収容容器内の氷結晶を撹拌する撹拌機構とを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の界面前進凍結濃縮システム。
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