JP2015171323A - 二枚貝におけるウイルス不活化方法 - Google Patents

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康慶 後藤
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Abstract

【課題】生の二枚貝の貝肉の外観や風味や食感を維持した状態で、貝肉中のウイルスの不活化を実現する。【解決手段】ノロウイルスなどのウイルスに感染した二枚貝の貝肉の中に緑茶抽出物を含ませた後に、この貝肉に対して100MPa以上の圧力による高圧処理を施す。緑茶抽出物の抗ウイルス作用と高圧処理との相乗作用によって、ウイルスの不活化が促進される。緑茶抽出物の量や高圧処理の際の加圧力は、貝肉の外観や風味や食感に影響を及ぼすことのない範囲で設定する必要がある。【選択図】なし

Description

本発明は、二枚貝の貝肉の中に潜むウイルスを不活化する技術に関する。
カリシウイルス科ノロウイルス属に分類されているヒトノロウイルス(以下、単に「ノロウイルス」と呼ぶ。)は、手指、食品、調理器具などを介した経口感染によって人体内に入り、腸管細胞で増殖して、腹痛、下痢、嘔吐、発熱などの症状を引き起こす。また感染力が非常に強いため、しばしばノロウイルスへの大規模な集団感染が生じている。
ノロウイルスを不活化するのに最も効果がある対策は加熱処理である。たとえば感染源となる可能性が高い食材として知られている牡蠣などの二枚貝については、中心部を85〜90℃で90秒以上加熱するのが望ましいとされている(非特許文献1を参照。)。しかし、牡蠣は、独特の風味や食感を好んで生で食する人が多い食材であるため、加熱以外の方法でノロウイルスを激減させる方法を見つける必要がある。
上記の課題を解決できそうな方法として、特許文献1には、二枚貝の生理活性(プランクトンや酵素を取り込むための運動)に着目して、海水を電気分解してなる浄化水を浄化槽内に貯留し、この浄化槽内に生きた牡蠣を入れて牡蠣の生理活性を行う温度となるように浄化水を温度管理することによって、浄化水を牡蠣の内部に通過させてノロウイルスを水流と共に貝外に排出させることが記載されている。さらに、特許文献1には、上記の方法で浄化された牡蠣を密閉容器に入れ、この密閉容器を、30℃以上で50℃未満の温度まで加熱し、且つ密閉容器内の圧力を100MPa未満に設定することによって、貝肉内に残存するノロウイルスを死滅させることができたと記載されている。
100MPa以上の超高圧による高圧処理がノロウイルスの不活化に効果を奏する、という報告もある。
たとえば、非特許文献2には、ノロウイルスを人工的に植え付けた生牡蠣を高圧処理してその処理の効果を確認するための臨床実験を行ったところ、600MPaの圧力で5分間加圧した牡蠣を食べた被検者のグループでは、感染者が全く発生しなかったと記載されている。非特許文献3でも、ノロウイルスの近縁種であるネコカリシウイルスやマウスノロウイルスを用いた実験により、200〜400MPaの高圧処理によってウイルスへの感染価を低下させることができることを確認したという研究成果が、複数紹介されている。
特許第4393254号公報
厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」,2014年2月3日検索,インターネット,http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html Juan S. Leon, et al Randomized, Double-Blinded Clinical Trial for Human Norovius Inactivation in Oysters by High Hydrostatic Pressure Processing, Applied and Environmental Microbiology, p.5476-5482, August 2011 国立医薬品食品衛生研究所「平成19年度 ノロウイルスの不活化条件に関する調査報告書」,2014年2月3日検索,インターネット, http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/kanren/yobou/pdf/houkokusyo_110613_01.pdf
ノロウイルスの培養技術はまだ確立していないため、多くの実験が近縁種のネコカリシウイルス等を用いて感染価の評価を行っている中で、非特許文献2では、実際のノロウイルスを用いた実験により高圧処理による効果を確認しており、注目に値する。この非特許文献2に記載の実験によれば、温度を6℃として600MPaの圧力により5分間加圧された牡蠣では感染者は全く発生しなかったが、貝肉に白変が生じた。一方、400MPaの圧力で加圧された牡蠣では、貝肉の外観を維持することはできたが、温度を6℃、加圧時間を5分間とした場合には21%の感染者が発生し、温度を25℃、加圧時間を5分間とした場合には60%の感染者が発生した(非特許文献2の表2,5480頁28〜31行を参照)。
上記の実験結果によれば、ノロウイルスを完全に不活化できるだけの超高圧で高圧処理を行うと、牡蠣の貝肉の外観に変化が生じて生に近い状態で食べることが不可能になり、生の状態を維持するために加圧力を低くすると、安全な貝肉を提供するのが困難になると思われる。
特許文献1に記載の発明では、加圧力を100MPa未満に抑えるとともに、牡蠣を身のタンパク質に生じる熱変性が可逆的なものとなる温度(50℃未満)で加熱している(特許文献1の段落0036を参照)が、この加圧処理は、あくまでも、浄化水による浄化処理によりノロウイルスの大半が貝外に排出された後に行われるものである。
特許文献1によれば、ウイルス感染価を十分に低減させるには、浄化槽の水温を少なくとも20℃程度に維持しなければならないが、水温が20℃の場合には数時間の浄化が必要となり(特許文献1の図3を参照。)、手間がかかる。水温を40℃近くにまで高めると、ウイルス感染価の低減に要する時間を1時間程度にまで短縮することはできるが、40℃に近い温度の海水を1時間もの間牡蠣の体内に循環させると、貝肉が生食に適さない状態になるおそれがある。また浄化水の電解処理や加熱処理が必要であるため、設備が大がかりになる。
上記の問題点に着目して、本発明は、生の二枚貝の貝肉の外観や風味や食感を維持した状態で、貝肉中のウイルスの不活化を容易に実現することを目的とする。
発明者らは、人体に無害で抗ウイルス作用を有する素材と高圧処理との相乗作用によって、ウイルスの不活化を促進できないかと考え、種々の実験を重ねた結果、二枚貝の貝肉中に緑茶抽出物を含ませた後に、この貝肉に対して高圧処理を施すことにより、貝肉中のウイルスの不活化を大幅に促進することができる、という知見を得た。
特許文献1にも記載されているように、牡蠣などの二枚貝は、生育環境下(海中)において、プランクトンなどの栄養素や酸素を取得するために多量の海水を体内に取り込む。この生態を利用し、生きた二枚貝を緑茶抽出物を含む塩水に漬けて塩水を二枚貝に取り込ませることにより、この二枚貝の貝肉中に緑茶抽出物を容易に含ませることができる。なお、塩水としては、海水または生理食塩水を使用するのが望ましい。
貝肉に含ませる緑茶抽出物の量は、貝肉の外観や食感や風味を損なわない程度に抑える必要がある。たとえば、緑茶抽出物を含む塩水に生きた牡蠣を漬けて塩水を取り込ませる場合には、塩水における緑茶抽出物の濃度を0.01〜1.0%(w/v%;以下に記載の緑茶抽出物の濃度についても同じ。)の範囲にすることによって、貝肉が着色されることなく、短時間で緑茶抽出物を貝肉に含めることができ、食感や風味も維持できることが確認された。
高圧処理で貝肉にかける圧力は、100MPa以上とするが、貝肉の外観や食感や風味を損なわない程度までの範囲で、ウイルスの不活化に必要な大きさに設定する必要がある。一実施形態では、牡蠣に対して、300MPa以上、500MPa以下の範囲内の圧力で高圧処理を実施したところ、貝肉の外観や食感や風味を損なうことなく、ウイルスの不活化を十分に促進できることが確認された。
本発明は、カリシウイルス科に属するノロウイルスを不活化するために実施することができるが、その他のウイルスの不活化にも適用できる可能性がある。
本発明によれば、二枚貝の貝肉に緑茶抽出物を含ませてから高圧処理を行うことによって、高圧処理の圧力を貝肉の外観や食感や風味を損なうことがない程度に抑えてもウイルスの不活化を十分に促進することができる。よって、本発明によれば、生の状態で食しても安全な貝肉を提供することが可能である。
ノロウイルスに感染している可能性がある生牡蠣を本発明による方法で処理する場合には、生牡蠣の貝肉中に緑茶抽出物を含ませた後、この貝肉に対して高圧処理を実施する。
緑茶抽出物には、抗ウイルス作用を有することで知られるカテキンが多く含まれる。なお、この明細書でいうカテキンとは、カテキン,ガロカテキン,エピガロカテキン,エピガロカテキンガレート,エピカテキン,ガロカテキンガレート,エピカテキンガレート,カテキンガレート等の総称である。
海水中に置かれた牡蠣は、プランクトンや酸素を取得するために、多量の海水を体内に取り込んで体内で循環させる。この生態を利用すれば、牡蠣の貝肉中に容易に緑茶抽出物を含ませることができる。
たとえば、浄化された海水が満たされた浄化槽内に緑茶抽出物を入れて混合した後に、その浄化槽内に生きた牡蠣を入れ、浄化槽内の海水を一定時間循環させる。これにより、浄化槽内の牡蠣に緑茶抽出物入りの海水を取り込ませることができ、その貝肉中に緑茶抽出物が含まれる状態になる。
後記する実験1の結果に示すように、緑茶抽出物入りの海水は短時間で牡蠣の貝肉内に取り込まれるので、必ずしも浄化槽を使用する必要はなく、簡易水槽やフィルム袋などに緑茶抽出物を含む海水を入れ、そこに生きた牡蠣を入れて一定時間静置してもよい。
海水に対する緑茶抽出物の割合を増やすと、生牡蠣の貝肉に取り込まれる緑茶抽出物の量を増やすことができるが、その量が多くなりすぎると貝肉が着色され、貝肉の風味や香りも損なわれるおそれがある。あくまでも緑茶抽出物は、生牡蠣の外観や食感や風味に影響を与えることがない程度の量で使用する必要がある。ただし、ある程度の濃度までであれば、緑茶抽出物入りの海水に生牡蠣を漬す時間を調整することによっても、生牡蠣の外観や食感や風味に影響を及ぼさない程度の量の緑茶抽出物を貝肉に取り込ませることができる。
高圧処理装置では、パスカルの原理に従って、圧力容器内の流体の全ての点を瞬時に均一な圧力で加圧することができる。したがって、殻付きの生きた牡蠣に高圧処理を施す場合でも、殻内の貝肉中の水分にも上記均一な圧力がかかり、貝肉に取り込まれた緑茶抽出物と貝肉中のノロウイルスとの接触が促進され、緑茶抽出物の抗ウイルス作用が効果的に働くようになる。この抗ウイルス作用と高圧処理自体によるウイルス不活化機能とが相俟って、ウイルスの不活化が促進される。
高圧処理の際の加圧力も、貝肉の外観や風味や食感が損なわれることがない程度の強さに留める必要がある。しかし、上記のとおり、貝肉に緑茶抽出物を含めてから高圧処理を行うことによって、ウイルスの不活化が促進されるので、貝肉の外観や食感や風味を維持できる範囲の圧力でもノロウイルスを大幅に低減することが可能になる。
以下、ノロウイルスに汚染された生牡蠣の貝肉中のウイルスを、貝肉の外観や食感や風味を維持したまま不活化することが可能であることを確認するために実施した3種類の実験について、説明する。
<実験1>
この実験は、緑茶抽出物を含む塩水内に生牡蠣を漬けることによって、生牡蠣の貝肉に緑茶抽出物が取り込まれること、およびその取り込みにより貝肉の外観に影響が生じない緑茶抽出物の濃度を確認することを目的とする。
緑茶抽出物としては、太陽化学株式会社製造の緑茶抽出物の粉末(製品名「サンフェノン90S」)を使用した。この緑茶抽出物に関して高速流体クロマトフラフィ(HPLC)により各種カテキン成分の含有量を分析した結果を表1に示す。
Figure 2015171323
実験1では、上記の緑茶抽出物を溶かした海水を満たした容器に生きた牡蠣を入れ、15分静置した後に脱穀し、緑茶抽出物入りの海水を取り込ませていない牡蠣の貝肉と目視で比較する方法により貝肉の色の変化を確認した。海水に対する緑茶抽出物の濃度は0.01〜4.0%の範囲内で10通り設定した。
濃度毎の比較結果は、以下のとおりである。
Figure 2015171323
上記の実験により、緑茶抽出物の濃度が1.0%を超えると、牡蠣の貝肉の色みが変化するが、緑茶抽出物の濃度が1.0%以下であれば、貝肉の外観には変化が生じないことが判明した。また、緑茶抽出物の濃度を1.5%以上にした場合に生じた変化から、1.5%未満の濃度の緑茶抽出物入り海水による実験でも、緑茶成分は牡蠣の貝肉中に取り込まれていると思われる。
<実験2>
この実験は、生牡蠣に高圧処理を施す場合に、貝肉の外観、風味、食感に影響を与えずに加圧することが可能な圧力を確認することを目的とする。
実験では、生牡蠣の貝肉(市販の剥き身)をパウチ袋に入れて袋を密封した後、この袋を高圧処理装置(合同会社吉田高圧機械製 研究室用 700MPa 食品高圧処理試験装置 型式BP800)の圧力容器内に設置し、高圧処理を行った。実験の間、東京理化器械製恒温水槽 EYELA NCB-1200を用いて高圧処理装置に冷却水を循環させることにより、装置内の温度を20℃前後に設定した。
高圧実験では、100〜600MPaの範囲について圧力を50MPa単位で変更して、各圧力によりそれぞれ3分間の加圧を行った。各条件により高圧処理された牡蠣の貝肉について、高圧処理をかけていない貝肉との比較により外観、風味、食感を確認したところ、表3に示すような結果となった。
Figure 2015171323
上記の結果を受け、さらに、400〜600MPaの範囲について圧力を50MPa単位で変更して、各圧力によりそれぞれ5秒間の加圧を行い、同様に、処理後の牡蠣の貝肉の外観、風味、食感を無処理品と比較したところ、表4に示すような結果となった。
Figure 2015171323
表3に示すように、加圧時間を3分間にした実験では、圧力を400MPa以下にすれば貝肉の外観、風味、食感を維持できるが、圧力が450MPa以上になると、貝肉に白変が生じ、風味や食感も変化した。また、表4に示すように、加圧時間を5秒間にした実験では、500MPaまで圧力を上げても貝肉の外観、風味、食感を維持することができたが、圧力が550MPa以上になると、貝肉に白変が生じ、風味や食感も変化した。
設定する圧力や加圧時間は上記の実験で設定した条件に限定されるものではないが、各実験の結果からみて、牡蠣に対する高圧処理で貝肉の外観、風味、食感を維持することが可能な圧力の上限値は、500MPa前後であると思われる。また圧力が400MPaを超える場合には、加圧時間をかなり短くする必要がある。
<実験3>
この実験は、ノロウイルスに感染した生牡蠣の貝肉に緑茶抽出物を含ませた後に高圧処理を施すことにより、ノロウイルスの不活化が促進されることを検証することを目的とする。ただし、ノロウイルスは、まだ増殖の方法が確立しておらず、またノロウイルスに感染している生牡蠣を入手して実験を行うのも困難であるため、本実験では、ノロウイルスの感染価の評価に使用される代表的な代替ウイルスであるネコカリシウイルス(Feline Calicivirus )を使用した。
具体的には、以下の手順で実験を進行させた。
a.牡蠣抽出物の作製
殻から取り外された牡蠣の貝肉(剥き身)と生理食塩水とを等量で混合し、30秒間ストマッカーにかけ、ストマック袋のフィルターで濾過する方法により、貝肉の成分が溶け込んだ液体(以下「牡蠣抽出物」という。)を作製した。完成した牡蠣抽出物は、各種条件間での試料の均一性を維持するために−80°Cで凍結保存した。
b.試料の作製
解凍した牡蠣抽出物をパウチ袋に入れ、ネコカリシウイルスF9株の溶液を加えた後、さらに緑茶抽出物溶液(所定分量の緑茶抽出物が混合された生理食塩水)を加えることにより、高圧処理用の試料を作製した。具体的には、牡蠣抽出物はパウチ袋の容量の25%の分量になるように分量を調整し、ウイルス溶液の量も一定量とし、パウチ袋の容積全体が満たされる状態になるまで緑茶抽出物溶液を加えた後、シーラーを用いてパウチ袋を密封した。また、袋の容積全体に対する緑茶抽出物の割合が0.01%,0.1%,0.3%,0.5%,1.0%となるように緑茶抽出物溶液の濃度を調整することにより、5種類の試料を作製した。さらに比較実験のために、緑茶抽出物が混合されていない試料(牡蠣抽出物とウイルス培養液と生理食塩水との混合物)も作製した。
c.高圧処理
上記の試料入りのプラスチックフィルム製袋を高圧処理装置(合同会社吉田高圧機械製
研究室用 700MPa 食品高圧処理試験装置 型番BP800)の圧力容器内に設置し、高圧処理を行った。実験2と同様に、東京理化器械製恒温水槽 EYELA NCB-1200を用いて高圧処理装置に冷却水を循環させることにより、装置内の温度が20℃前後になるようにした。いずれの試料に対しても、100MPa,200MPa,300MPa,400MPa,500MPaの5通りの圧力による高圧処理を、毎回、新しい試料を使用して実施した。なお、先の実験2の結果に基づき、400MPa以下の圧力による高圧処理では加圧時間を3分間とし、500MPaの圧力による高圧処理では加圧時間を5秒間とした。
d.感染価の評価
高圧処理後の試料を8段階に希釈し、各希釈液を、マイクロプレートの各ウェルにて培養されたネコ腎由来株化細胞(CRFK細胞)に接種し、4日間、COインキュベータ内に静置した。その後、各ウェルの状態を観察して、細胞が死滅したウェルを抽出し、その抽出数ならびに抽出されたウェルに適用された希釈段によりMPN表を参照して、感染価を評価した。条件毎の感染価(希釈液1ml当たりのTCIDの対数値)は、以下の表5のようになった。
Figure 2015171323
上記の表5によれば、500MPaの圧力による高圧処理では、緑茶抽出物を含まないものも含むすべての試料において、ウイルスが殆ど検出されなかった。
100〜400MPaの範囲では、いずれの圧力においても、緑茶抽出物が含まれる試料(濃度0.01〜1.00%)で含まれない試料(濃度0%)よりも感染価が低減し、緑茶抽出物が用量依存的にウイルスの不活化の効果を高めることも確認された。
300MPa以上の圧力による高圧処理を施した試料では感染価が大幅に低減し、特に、緑茶抽出物の濃度が0.1%以上で300MPa以上の圧力による高圧処理を施した試料では、ウイルスは殆ど検出されなかった。さらに、緑茶抽出物の割合がわずか0.01%の試料においても、300MPaの高圧処理ではウイルスの残存率が10まで低減され、400,500MPaの高圧処理では、ウイルスは殆ど検出されなかった。
実験3は、ノロウイルスに感染した牡蠣の貝肉に緑茶抽出物を含めて高圧処理を実施する状況に近い条件を設定したものであるが、上記のとおり、緑茶抽出物と高圧処理との相乗作用によりウイルスの不活化を促進できることを示す結果が得られた。特に、塩水中の緑茶抽出物の濃度を0.01〜1.0%として、300〜500MPaの範囲内の圧力による高圧処理を施せば、貝肉内のノロウイルスをほぼ完全に不活化することが可能であるという結果が得られた。
1.0%以下の濃度で緑茶抽出物を含む海水を牡蠣に取り込ませても、貝肉の外観(色み)に変化は生じないことは、実験1で確認済みである。また、300〜500MPaの圧力による高圧処理が牡蠣の貝肉の外観、風味、食感に影響を及ぼさないことも、実験2で確認済みである。
したがって、0.01〜1.0%の濃度で緑茶抽出物を混合させた海水を牡蠣に取り込ませた後に、300〜400MPaの範囲内の圧力による高圧処理を施すことによって、貝肉の外観、風味、食感に影響を及ぼすことなく、ノロウイルスを感染のおそれがないレベルにまで減らすことが可能であると考えられる。
生牡蠣に対する加圧力を比較的低くする場合には、加圧時間を長めに設定することができる。したがって、実験3ではウイルスの残存率がやや高くなった100MPa,200MPaの圧力による高圧処理でも、加圧時間を3分より長くすることによって、ウイルスの残存率を低減できる可能性がある。
また、実験1の結果より、緑茶抽出物入りの海水に牡蠣を漬ける時間を15分としたことにより、貝肉の外観に変化を及ぼさない緑茶抽出物の濃度は0.01〜1.0%であるとしたが、緑茶抽出物の濃度が1.0%を超える場合でも、浸漬時間を15分より短くすれば、貝肉の外観に影響を与えない程度の量の緑茶抽出物を貝肉に取り込ませることが可能であると思われる。
上記のとおり、牡蠣の貝肉に緑茶抽出物を含ませた後にこの貝肉に高圧処理を施すことによって、貝肉中のノロウイルスの不活化を促進できることが確認されたが、同様の手法により、肝炎ウイルスなど、ノロウイルス以外のウイルスの不活化を促進できる可能性もある。また、牡蠣以外の二枚貝についても、同様の方法で貝肉中のウイルスの不活化を促進することができるものと思われる。
また実験1の結果に示すとおり、二枚貝の生態を利用すれば、緑茶抽出物を貝肉内に短時間で取り込ませることができるので、効率が良く、牡蠣を生きた状態で保持するために大がかりな温度管理をする必要もなく、処理を簡単にすることができる。

Claims (5)

  1. ウイルスに感染した二枚貝の貝肉の中に緑茶抽出物を含ませた後に、この貝肉に対して100MPa以上の圧力による高圧処理を施すことにより、前記貝肉中のウイルスを不活化することを特徴とする二枚貝におけるウイルス不活化方法。
  2. 請求項1に記載された方法であって、ウイルスに感染した生きた二枚貝を緑茶抽出物を含む塩水に漬けて塩水を二枚貝に取り込ませることにより、前記二枚貝の貝肉に緑茶抽出物を含ませる二枚貝におけるウイルス不活化方法。
  3. 前記二枚貝は牡蠣であって、前記塩水における緑茶抽出物の濃度を0.01〜1.0w/v%とする請求項2に記載された二枚貝におけるウイルス不活化方法。
  4. 前記二枚貝は牡蠣であって、前記緑茶抽出物を含む牡蠣の貝肉に対し、300MPa以上、500MPa以下の範囲内の圧力による高圧処理を実施する請求項1に記載された二枚貝におけるウイルス不活化方法。
  5. 前記ウイルスはカリシウイルス科に属するヒトノロウイルスである、請求項1〜4のいずれかに記載された二枚貝におけるウイルス不活化方法。
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