JP2015170390A - 電池用電極組成物、電池用電極、及び、電池 - Google Patents

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賢 小川
米原 宏司
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宏司 米原
博信 小野
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博信 小野
弘子 原田
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弘子 原田
康行 高澤
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康行 高澤
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Abstract

【課題】亜鉛負極やその他の電極であって、電池を構成した際に、電極のシェイプチェンジを充分に制御することができ、長寿命化でき、また、水素発生を抑制できる電池用電極、及び、電池を提供する。
【解決手段】活物質粒子と、等電点が7よりも大きい化合物とを含む電池用電極組成物である。
【選択図】なし

Description

本発明は、電池用電極組成物、電池用電極、及び、電池に関する。
電池は、近年においては、携帯機器から自動車等まで多くの産業において、主にその性能や二次電池化の面で開発・改良の重要性が益々高まっている。
電池、特に鉛種や、亜鉛種、カドミウム種を含む負極を用いて構成される蓄電池は、長期間充放電を繰り返すと、電極の活物質層等の近傍で金属の溶解析出反応が起こる過程で、シェイプチェンジという電極活物質の形態変化が発生し、容量劣化や短寿命化が起こるという課題があった。このような課題に対し、ゲル電解質を用いたり電極組成物にポリマーを添加したりする技術がこれまでに報告されている(例えば、特許文献1参照。)。
国際公開第2013/027767号
上記特定の蓄電池等のように、電池反応に伴って活物質の溶解・析出反応が生じる場合、活物質の析出形態を制御することは極めて重要である。特にニッケル・亜鉛電池やニッケル・カドミウム電池では負極活物質である亜鉛種やカドミウム種の負極での析出形態が制御できていないと、充放電反応を重ねるごとにシェイプチェンジが進行し、負極の活物質が枯渇して水素が発生するという現象が生じる。これは電池開発における重要な課題のひとつとなっている。
上記特許文献1に記載の発明は、アニオンとなっていた活物質が充電時に電極の近傍で再度析出するものに関してはシェイプチェンジを抑制する効果を発揮できるが、放電時に溶出したアニオンがその後電池内の電極近傍以外で過飽和状態となって再度析出することを防止するよう考慮したものではなかった。したがって、長期にわたって充放電を繰り返すと、電池形状によって電解液の対流が偶発的に生じるところ、この対流に依存して発生し得る電極のシェイプチェンジを抑制するための検討の余地があった。
このような課題は、亜鉛負極やカドミウム負極を用いる電池において特に重要であるが、これら以外の電極を用いる電池も有するものである。
なお、亜鉛種によって構成される亜鉛負極を用いる電池は、電池の普及と共に古くから研究されてきたものであり、アルカリ水溶液で構成される安全性、及び、活物質としてレアメタルを用いずに電極を形成できるという元素戦略的な確固たる優位性を有するが、上記課題等のために近年電池開発の主流ではなくなっていた。上記課題を解決すれば、安全性・優位性と性能とが両立できる電池として、携帯機器から自動車等まで多くの産業において極めて好適に使用できる可能性がある。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、亜鉛負極やその他の電極であって、電池を構成した際に、電極のシェイプチェンジを充分に制御することができ、長寿命化でき、また、水素発生を抑制できる電池用電極、及び、電池を提供することを目的とする。
本発明者らは、先ず上述した安全性・優位性を有する亜鉛負極を用いる電池に着目し、亜鉛負極のシェイプチェンジを防止するために、放電時にアニオン(亜鉛酸イオン)であった活物質(酸化亜鉛)の再析出を負極の近傍に制御する機構について種々検討した。そして、本発明者らは、鋭意検討の結果、等電点が7よりも大きい化合物を電池用負極組成物に添加して負極を作製することにより、該負極を用いて構成した電池において、当該化合物が負極の近傍において正に帯電して、放電時に溶出したアニオンを引きつけ、アニオンが負極近傍で過飽和状態となり、活物質が負極の近傍で再析出するように制御でき、その結果亜鉛負極のシェイプチェンジの抑制効果を顕著に発揮できることを見いだした。これにより、アニオンが負極近傍で枯渇せず、活物質を負極上に豊富に保持できることから、水素発生を抑制できることを見いだした。更に、本発明者らは、亜鉛負極以外の負極や正極も、等電点が7よりも大きい化合物を用いて形成すれば同様にシェイプチェンジの抑制効果や水素発生の抑制効果を発揮できることを見いだし、本発明に想到したものである。
すなわち本発明は、活物質粒子と、等電点が7よりも大きい化合物とを含む電池用電極組成物である。
また本発明は、本発明の電池用電極組成物、及び、集電体を用いて構成される電池用電極でもある。
更に、本発明は、本発明の電池用電極、及び、電解質を用いて構成される電池でもある。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載される本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせた形態もまた、本発明の好ましい形態である。
<本発明の電池用電極組成物>
本発明の電池用電極組成物は、負極の活物質層を形成するための負極組成物であってもよく、正極の活物質層を形成するための正極組成物であってもよいが、負極組成物であることが好ましい。
本発明の電池用電極組成物は、活物質粒子、及び、等電点が7よりも大きい化合物を含む。また、後述する結着剤として用いられるポリマーや導電助剤、その他の成分を更に含んでもよい。以下では、本発明の電池用電極組成物に含まれる、等電点が7よりも大きい化合物を先ず説明し、次いで、活物質粒子、ポリマー、導電助剤、その他の成分について順に説明する。
〔等電点が7よりも大きい化合物〕
上記化合物は、等電点が7よりも大きいものであればよい。
等電点とは、その等電点をもつ成分が水溶液中にてプロトンを解離しないpHの最大値である。
上記化合物は、等電点が7.1以上であることが好ましい。より好ましくは、7.5以上であり、更に好ましくは8以上であり、一層好ましくは9以上であり、特に好ましくは10以上であり、最も好ましくは11以上である。化合物の等電点が大きいほど、当該化合物粒子表面にアニオンを引きつける能力が向上し、本発明の効果をより顕著に発揮することができる。
本明細書中における等電点は、滴定を行いながら、レーザー・ドップラー法を用いてゼータ電位が0になるときのpHを測定することで求めることができる。
また本発明の電池用電極組成物において、上記化合物が活物質粒子の等電点よりも大きい等電点をもつことがより好ましい。これにより、上記化合物粒子表面にアニオンを引きつける能力が向上し、本発明の効果をより顕著に発揮することができる。
上記化合物の等電点は、活物質粒子の等電点よりも0.1以上大きいことが更に好ましい。一層好ましくは、0.5以上大きいことであり、特に好ましくは、1以上大きいことである。また、5以下大きいことが好ましい。
例えば、活物質粒子が酸化亜鉛である場合は、酸化亜鉛の等電点が9.3であるから、上記化合物の等電点が9.3より大きいことがより好ましい。更に好ましくは、9.4以上であり、一層好ましくは、9.8以上であり、特に好ましくは、10.3以上である。また、14.3以下であることが好ましい。
上記化合物は、無機化合物であってもよく、有機化合物であってもよい。
上記化合物が無機化合物である場合、上記化合物は、金属元素を含むことが好ましい。
上記金属元素は、周期表の第1族〜第15族から選ばれる少なくとも1種の金属元素であればよいが、周期表の第1族〜第13族からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素であることが好ましい。より好ましくは、Be、Mg、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Cd、及び、Alからなる群より選択される少なくとも1つの元素であり、更に好ましくは、Be、Mg、Y、Mn、Fe、Co、Ni、及び、Cdからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を含むものであり、特に好ましくは、Mg、Y、及び、Niからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を含むものである。
上記化合物は、金属酸化物、金属水酸化物、及び、金属硫化物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
上記金属酸化物としては、例えば酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、酸化イットリウム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化カドミウム、酸化アルミニウムが挙げられる。好ましくは、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、酸化イットリウム、酸化ニッケル、酸化カドミウムである。上記酸化物は、酸素欠陥を持つものであってもよい。
上記金属水酸化物としては、例えば水酸化マグネシウム、水酸化マンガン、水酸化鉄、水酸化コバルト、水酸化ニッケル、水酸化カドミウム、水酸化アルミニウムが挙げられる。好ましくは、水酸化マグネシウム、水酸化マンガン、水酸化鉄、水酸化コバルト、水酸化ニッケル、水酸化カドミウムである。
上記金属硫化物としては、例えば硫化マグネシウム、硫化イットリウム、硫化ニッケルが挙げられる。
上記化合物が有機化合物である場合、上記有機化合物としては、正に帯電し得る置換基を有するものが好ましい。正に帯電し得る置換基としては、例えばアミノ基、ヒドロキシル基、アルキル基等が好ましい。より好ましくは、アミノ基である。上記化合物が有機化合物である場合も、電極の近傍において正に帯電することにより、アニオンを引きつけ、活物質の再析出を電極の近傍に制御でき、その結果、本発明の作用効果を発揮することができる。
上記化合物を含む粒子においては、粒子の表面の少なくとも一部が上記化合物からなることが重要である。粒子の表面の少なくとも一部が上記化合物からなり、粒子表面が正に帯電することにより、本発明のシェイプチェンジを抑制する効果を顕著に発揮することができる。粒子の表面の少なくとも一部が上記化合物からなるとは、その他の部分、すなわち、該粒子の内部及び/又は表面の残りの部分が、等電点が7以下の成分からなるものや、正に帯電しない成分からなるものであってもよい。例えば、上記粒子の内部及び/又は表面の残りの部分がポリスチレン等の非帯電成分であってもよい。
上記化合物は、上記活物質粒子以外の粒子の少なくとも一部を構成し、該活物質粒子以外の粒子の表面は、表面積の1/2以上が上記化合物からなることが好ましい。上記表面積比は、より好ましくは、3/5以上であり、更に好ましくは、7/10以上であり、一層好ましくは、4/5以上であり、特に好ましくは9/10以上である。最も好ましくは、上記活物質粒子以外の粒子の表面は、表面積の全部が上記化合物からなることである。ここで、上記化合物が、上記活物質粒子以外の粒子の全体を構成してもよい。なお、この場合、本発明の電池用電極組成物は上記活物質粒子や上記化合物粒子以外の成分からなる粒子を含んでいてもよい。
上記化合物が少なくとも一部を構成する粒子の表面で上記化合物が正に帯電することで、アニオンを上記活物質粒子以外の粒子近傍に引きつける作用をより発揮でき、電極のシェイプチェンジを抑制し、水素発生を抑制する本発明の効果を更に発揮できる。
上記化合物は、電池用電極組成物中において、溶解状態、コロイド等の分散状態、その他の不溶状態等のいずれであっても良い。なお、上記化合物は、電池用電極組成物中において、その表面が正電荷に帯電する状態で使用することが本発明の好ましい形態の1つであるが、正電荷に帯電しない状態で使用してもよい。
上記化合物が少なくとも一部を構成する粒子は、下記平均粒子径、及び/又は、下記比表面積を満たすことが好ましい。
上記化合物が少なくとも一部を構成する粒子は、平均粒子径が1000μm以下であるものが好ましい。該平均粒子径は、より好ましくは、200μm以下であり、更に好ましくは、100μm以下であり、特に好ましくは、75μm以下であり、最も好ましくは、20μm以下である。一方、平均粒子径は、5nm以上であることが好ましい。より好ましくは、10nm以上である。
上記平均粒子径は、粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
上記化合物が少なくとも一部を構成する粒子の形状としては、微粉状、粉状、粒状、顆粒状、鱗片状、多面体状、ロッド状、曲面含有状等が挙げられる。なお、平均粒子径が上述のような範囲の粒子は、例えば、粒子をボールミル等により粉砕し、得られた粗粒子を分散剤に分散させて所望の粒子径にした後に乾固する方法や、該粗粒子をふるい等にかけて粒子径を選別する方法のほか、粒子を製造する段階で調製条件を最適化し、所望の粒径の(ナノ)粒子を得る方法等により製造することが可能である。
上記化合物が少なくとも一部を構成する粒子は、比表面積が0.01m/g以上であることが好ましい。該比表面積は、より好ましくは、0.1m/g以上であり、更に好ましくは、0.5m/g以上である。一方、1500m/g以下であることが好ましい。該比表面積は、より好ましくは、500m/g以下であり、更に好ましくは、450m/g以下であり、特に好ましくは、400m/g以下である。
上記比表面積は、窒素吸着BET法で比表面積測定装置等により測定することができる。
なお、比表面積が上述のような範囲の粒子は、例えば、粒子をナノ粒子化したり、粒子製造の際の調製条件を選択することにより粒子表面に凹凸をつけたりすることにより製造することが可能である。
上記化合物が少なくとも一部を構成する粒子は、アスペクト比(縦/横)が1.1以上であることが好ましい。該アスペクト比(縦/横)は、より好ましくは、2以上であり、更に好ましくは、3以上である。また、該アスペクト比(縦/横)は、100000以下であることが好ましい。該アスペクト比(縦/横)は、より好ましくは50000以下である。
上記アスペクト比(縦/横)は、例えば、SEMにより観察した粒子の形状から求めることができる。例えば、上記化合物の粒子が直方体状の場合は、最も長い辺を縦、2番目に長い辺を横として、縦の長さを横の長さで除することにより求めることができる。その他の形状の場合には、アスペクト比が最も大きくなるように、ある一つの部分を底面に置き、それをアスペクト比が最も大きくなるような方向から投影した時にできる二次元の形において、ある一点から最も離れた一点の長さを測定し、その最も長い辺を縦、縦の中心点を通る直線のうち最も長い辺を横として、縦の長さを横の長さで除することにより求めることができる。
なお、アスペクト比(縦/横)が上述のような範囲の化合物の粒子は、例えば、そのようなアスペクト比を有する粒子を選択する方法や、粒子を製造する段階で調製条件を最適化し、該粒子を選択的に得る方法等により得ることが可能である。
上記化合物の質量割合としては、電池用電極組成物100質量%に対して、0.05質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、0.25質量%以上であり、更に好ましくは、0.5質量%以上であり、特に好ましくは2質量%以上である。また、30質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、20質量%以下であり、更に好ましくは、10質量%以下であり、特に好ましくは、4質量%以下である。
上記化合物の質量割合を上記範囲内とすることにより、本発明の効果をより充分に発揮することができる。
〔活物質粒子〕
本発明の電池用電極組成物に含まれる活物質粒子を構成する活物質は、正極の活物質でもよく、負極の活物質でもよいが、負極の活物質が好ましい。
本発明の電池用電極組成物が負極組成物である場合は、上記負極の活物質としては、炭素種・リチウム種・ナトリウム種・マグネシウム種・カドミウム種・鉛種・亜鉛種・錫種・シリコン含有材料・水素吸蔵合金材料、白金等の貴金属材料等、電池の負極活物質として通常用いられるものを用いることができる。これらの中でも、本発明の電池用電極組成物における上記活物質は、亜鉛種を含有することが好ましい。これにより、シェイプチェンジを抑制する効果が顕著になる。ここで亜鉛種とは、亜鉛含有化合物を言う。なお、上記亜鉛種は、亜鉛を含有する限り、電池の駆動によりそれ自体が反復的に酸化・還元されるものであってもよい。
上記亜鉛含有化合物は、活物質として用いることができるものであればよく、例えば、酸化亜鉛(JIS K 1410(2006年)に規定する1種/2種/3種)や、水酸化亜鉛・硫化亜鉛・テトラヒドロキシ亜鉛アルカリ金属塩・テトラヒドロキシ亜鉛アルカリ土類金属塩・亜鉛ハロゲン化合物・亜鉛カルボキシラート化合物・亜鉛合金・亜鉛固溶体・ホウ酸亜鉛・リン酸亜鉛・リン酸水素亜鉛・ケイ酸亜鉛・アルミン酸亜鉛・炭酸化合物・炭酸水素化合物・硝酸化合物・硫酸化合物等に代表される周期表の第1族〜第17族に属する元素からなる群より選択される少なくとも1つの元素を有する亜鉛(合金)化合物、有機亜鉛化合物、亜鉛化合物塩等が挙げられる。これらの中でも、酸化亜鉛(JIS K 1410(2006年)に規定する1種/2種/3種)、水酸化亜鉛、テトラヒドロキシ亜鉛アルカリ金属塩、テトラヒドロキシ亜鉛アルカリ土類金属塩、亜鉛ハロゲン化合物、亜鉛カルボキシラート化合物、亜鉛合金、亜鉛固溶体、ホウ酸亜鉛、リン酸亜鉛、ケイ酸亜鉛、アルミン酸亜鉛、炭酸亜鉛、周期表の第1族〜第17族に属する元素からなる群より選択される少なくとも1つの元素を有する亜鉛(合金)化合物がより好ましい。上記亜鉛合金は、(アルカリ)乾電池や空気電池に使用される亜鉛合金であってもよい。上記亜鉛含有化合物は、1種でも2種以上でも使用することができる。
本発明の電池用電極組成物が正極組成物である場合は、上記正極の活物質としては、一次電池や二次電池の正極活物質として通常用いられるものを用いることができる。例えば、オキシ水酸化ニッケル、水酸化ニッケル、コバルト含有水酸化ニッケル等のニッケル含有化合物;二酸化マンガン等のマンガン含有化合物;酸化銀;コバルト酸リチウム等のリチウム含有化合物;鉄含有化合物;コバルト含有化合物等が挙げられる。
上記活物質粒子の形状としては、微粉状、粉状、粒状、顆粒状、鱗片状、多面体状、ロッド状、曲面含有状等が挙げられる。活物質粒子は、一次粒子だけでなく、一次粒子が凝集した二次粒子であってもよい。
本発明の電池用電極組成物は、これを用いて蓄電池を作製した際に水含有電解液を使用した場合には、電池の使用の過程で水の分解副反応を進行させる場合があり、該副反応を抑制するために、特定の元素を活物質に導入してもよい。特定の元素としては、Al、B、Ba、Bi、Br、C、Ca、Cd、Ce、Cl、Cu、Eu、F、Ga、Hg、In、La、Mg、Mn、N、Nb、Nd、Ni、P、Pb、S、Sb、Sc、Si、Sm、Sn、Sr、Ti、Tl、Y、Zr等が挙げられる。
ここで、特定の元素を活物質に導入するとは、活物質を、これらの元素を構成元素とする化合物とすることを意味する。
上記活物質粒子の平均粒子径は、1nm〜500μmであることが好ましい。より好ましくは5nm〜200μmであり、更に好ましくは10nm〜100μmであり、特に好ましくは、10nm〜60μmである。
上記平均粒子径は、上記した等電点が7よりも大きい化合物の平均粒子径と同様の方法で測定することができる。
上記活物質粒子の比表面積は、0.1m/g以上であることが好ましい。より好ましくは、1m/g以上である。また、1500m/g以下であることが好ましい。より好ましくは、1200m/g以下であり、更に好ましくは、900m/g以下であり、より更に好ましくは、250m/g以下であり、特に好ましくは、50m/g以下である。
活物質粒子の比表面積を上記範囲内とすることにより、電池の使用の過程で活物質のシェイプチェンジや不動態の形成を抑制することができる等の効果がある。
上記比表面積は、上記した等電点が7よりも大きい化合物の比表面積と同様の方法で測定することができる。
上記活物質の電池用電極組成物中の配合割合は、電池用電極組成物の全量100質量%に対して、40〜99.9質量%であることが好ましい。活物質の配合量がこのような範囲であると、電池用電極組成物を用いて構成される電極を電池に用いた場合に、より良好な電池性能を発揮する。より好ましくは、60〜99.5質量%であり、更に好ましくは、80〜99質量%であり、特に好ましくは91〜95質量%である。
〔ポリマー〕
本発明の電池用電極組成物は、更に、ポリマーを含むものであることが好ましい。
上記ポリマーとしては、ポリエチレン等の炭化水素部位含有ポリマー、ポリスチレン等の芳香族基含有ポリマー;アルキレングリコール等のエーテル基含有ポリマー;ポリビニルアルコール等の水酸基含有ポリマー;ポリアクリルアミド等のアミド基含有ポリマー;ポリマレイミド等のイミド基含有ポリマー;ポリ(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有ポリマー;ポリ(メタ)アクリル酸塩等のカルボン酸塩基含有ポリマー;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のハロゲン含有ポリマー;スルホン酸塩部位含有ポリマー;第四級アンモニウム塩や第四級ホスホニウム塩含有ポリマー;イオン交換性重合体;天然ゴム;スチレンブタジエンゴム(SBR)等の人工ゴム;ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシエチルセルロース)、カルボキシメチルセルロース等の糖類;ポリエチレンイミン等のアミノ基含有ポリマー等が挙げられる。中でも、上記ポリマーは、芳香族基、ハロゲン原子、カルボキシル基、カルボン酸塩基、水酸基、アミノ基、及び、エーテル基からなる群より選択される少なくとも1種を含有するか、又は、炭化水素であることが好ましい。ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましい。より好ましくは、フッ素原子である。また、カルボン酸塩基は、カルボン酸リチウム塩基、カルボン酸ナトリウム塩基、カルボン酸カリウム塩基が好ましい。より好ましくは、カルボン酸ナトリウム塩基である。上記炭化水素は、例えばポリオレフィンが挙げられる。中でも、上記ポリマーは、(1)絶縁物であること、(2)上記した等電点が7よりも大きい化合物を増粘・結着させることができること、(3)物理的強度に優れることの3点を総合的に考慮して適宜選択することが好ましく、このような観点からは、炭化水素部位含有ポリマー、芳香族基含有ポリマー、エーテル基含有ポリマー、カルボキシル基含有ポリマー、カルボン酸塩基含有ポリマー、ハロゲン含有ポリマー、スルホン酸塩部位含有ポリマー、第四級アンモニウム塩や第四級ホスホニウム塩含有ポリマー、糖類が好ましい。上記ポリマーが有する官能基と、上記化合物との共有結合、配位結合や、イオン結合、水素結合、π結合、ファンデルワールス結合、アゴスチック相互作用等の非共有性結合により相互作用することもできる。当該相互作用により上記化合物が電極に留まる作用がより強固になり、その結果電極のシェイプチェンジを抑制する効果がより顕著になる。
なお、上記ポリマーは熱や圧力等により繊維化された状態になってもよい。ポリマーの繊維化により、活物質(層)の強度、アニオン伝導度等を調節することもできる。
上記ポリマーは、その構成単位に該当するモノマーより、ラジカル(共)重合、アニオン(共)重合、カチオン(共)重合、グラフト(共)重合、リビング(共)重合、分散(共)重合、乳化(共)重合、懸濁(共)重合、開環(共)重合、環化(共)重合、光、紫外線や電子線照射による重合、メタセシス(共)重合、電解(共)重合等により得ることができる。これらポリマーが官能基を有する場合には、それを主鎖及び/又は側鎖に有していても良く、架橋剤との結合部位として存在してもよい。これらポリマーは、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
上記ポリマーは、上記等電点が7よりも大きい化合物以外の有機架橋剤化合物により、架橋されていてもよい。ただし、架橋されたポリマーが吸水性を有する場合、活物質(層)にクラックを生じることがあるため、架橋されたポリマーは吸水性を持たない方がよい。
上記ポリマーの重量平均分子量は、200〜7000000であることが好ましい。これにより、活物質(層)のイオン伝導性、粘性、可とう性、強度等を調節することができる。該重量平均分子量は、より好ましくは、400〜6500000であり、更に好ましくは、500〜5000000である。
上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
上記ポリマーの質量割合は、電池用電極組成物100質量%に対して、0.05質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、0.25質量%以上であり、更に好ましくは、0.5質量%以上であり、特に好ましくは、3質量%以上である。また、30質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、20質量%以下であり、更に好ましくは、10質量%以下であり、特に好ましくは、5質量%以下である。
本発明の電池用電極組成物における、活物質と、等電点が7よりも大きい化合物と、ポリマーとの質量割合は、40〜99.9/0.05〜30/0.05〜30であることが好ましい。より好ましくは、60〜99.5/0.25〜20/0.25〜20であり、更に好ましくは、80〜99/0.5〜10/0.5〜10である。特に好ましくは、91〜95/2〜4/3〜5である。上記質量割合を満たすことにより、本発明の効果をより顕著に発揮することができる。
〔導電助剤〕
本発明の電池用電極組成物は、上記化合物、上記活物質粒子とともに、導電助剤を含んでいてもよい。
上記導電助剤としては、例えば、導電性カーボン、導電性セラミックス、亜鉛・亜鉛末・亜鉛合金・(アルカリ)(蓄)乾電池や空気電池に使用される亜鉛(以下、纏めて金属亜鉛とも称する)、銅・真鍮・ニッケル・銀・ビスマス・インジウム・鉛・錫等の金属等を用いることができる。
上記導電性カーボンとしては、天然黒鉛・人造黒鉛等の黒鉛、グラッシーカーボン、アモルファス炭素、易黒鉛化炭素、難黒鉛化炭素、カーボンナノフォーム、活性炭、グラフェン、ナノグラフェン、グラフェンナノリボン、フラーレン、カーボンブラック、黒鉛化カーボンブラック、ケッチェンブラック、気相法炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、メソカーボンマイクロビーズ、金属によりコートしたカーボン、カーボンコートした金属、ファイバー状カーボン、ホウ素含有カーボン、窒素含有カーボン、多層/単層カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、バルカン、アセチレンブラック、酸素含有官能基を導入することにより親水処理したカーボン、SiCコートカーボン、分散・乳化・懸濁・マイクロサスペンジョン重合等により表面処理したカーボン、マイクロカプセルカーボン等が挙げられる。
上記導電性セラミックスとしては、例えば、酸化亜鉛と共に焼成したBi、Co、Nb、及び、Yから選ばれる少なくとも1種を含有する化合物等が挙げられる。
上記導電助剤の中でも、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛、易黒鉛化炭素、難黒鉛化炭素、グラフェン、カーボンブラック、黒鉛化カーボンブラック、ケッチェンブラック、気相成長炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、メソカーボンマイクロビーズ、ファイバー状カーボン、多層/単層カーボンナノチューブ、バルカン、アセチレンブラック、酸素含有官能基を導入することにより親水処理したカーボン、金属亜鉛、銅・真鍮・ニッケル・銀・ビスマス・インジウム・鉛・錫等の金属が好ましい。なお、金属亜鉛はアルカリ(蓄)電池や空気電池のような実電池に使用されるものであってもよく、表面を他元素やカーボン等で処理されたものであってもよいし、合金化されていてもよい。固溶体であってもよい。上記導電助剤は、1種でも2種以上でも使用することができる。
上記金属亜鉛は活物質としても働くことが可能である。言い換えれば、電池の使用の過程で、導電助剤である金属亜鉛は酸化還元反応をおこなって活物質としても機能する。なお、同様に、電池の使用の過程で、活物質である亜鉛含有化合物から生成する金属亜鉛は導電助剤としても機能する。負極等の電極の調製段階で電池用電極組成物に添加する金属亜鉛及び亜鉛含有化合物は、電池の使用の過程では、活物質かつ導電助剤として実質的に機能する。
上記導電助剤は、これを用いて蓄電池を作製した際に水含有電解液を使用した場合には、電池の使用の過程で水の分解副反応を進行させる場合があり、該副反応を抑制するために、特定の元素を導電助剤に導入してもよい。特定の元素としては、上述した活物質に導入する特定の元素と同様のものが挙げられる。導電性カーボンを導電助剤の一つとして使用する場合には、特定の元素としては、Al、B、Ba、Bi、C、Ca、Cd、Ce、Cu、F、Ga、In、La、Mg、Mn、N、Nb、Nd、Ni、P、Pb、S、Sb、Sc、Si、Sn、Ti、Tl、Y、Zrが好ましい。
ここで、特定の元素を導電助剤に導入するとは、導電助剤を、これらの元素を構成元素とする化合物とすることを意味する。
上記導電助剤の粒子の好ましい平均粒子径は、上記した活物質粒子の好ましい平均粒子径と同様である。
なお、上記平均粒子径は、上記した等電点が7よりも大きい化合物の平均粒子径と同様の方法で測定することができる。
上記導電助剤の好ましい比表面積は、上記した活物質粒子の好ましい比表面積と同様である。導電助剤の比表面積を上記範囲内とすることにより、電池の使用の過程で電極のシェイプチェンジや不動態の形成を抑制することができる等の効果がある。
なお、上記比表面積は、上記した等電点が7よりも大きい化合物の比表面積と同様の方法で測定することができる。
本発明の電池用電極組成物が導電助剤を含む場合は、上記導電助剤の電池用電極組成物中の含有割合は、本発明の電池用電極組成物中の活物質100質量%に対して、0.0001〜100質量%であることが好ましい。導電助剤の含有割合がこのような範囲であると、電池用電極組成物を用いて構成される電極を電池に用いた場合に、より良好な電池性能を発揮する。より好ましくは、0.0005〜60質量%であり、更に好ましくは、0.001〜40質量%である。
なお、金属亜鉛を電池用電極組成物や亜鉛負極の調製時に使用する場合には、金属亜鉛は活物質ではなく、導電助剤として考えて計算する。また、亜鉛含有化合物である酸化亜鉛や水酸化亜鉛等から電池の使用の過程で生成する金属亜鉛は、系中で導電助剤としての機能も果たすことになるが、電池用電極組成物や亜鉛負極調製時には0価の金属亜鉛ではないため、ここでは導電助剤と考えず、活物質と考えて計算する。すなわち、上記活物質、導電助剤の好ましい含有割合は、電池用電極組成物や亜鉛負極の調製時における亜鉛含有化合物は活物質として考え、金属亜鉛は導電助剤として考えて計算する。
〔その他の成分〕
本発明の電池用電極組成物は、更に、周期表の第1族〜第17族に属する元素からなる群より選択される少なくとも1つの元素を有する化合物、有機化合物、及び、有機化合物塩からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。上記その他の成分は、上記等電点が7よりも大きい化合物や、上記活物質、上記導電助剤、上記ポリマーとは異なる化合物である。
本発明の電池用電極組成物が上記その他の成分を含む場合は、上記その他の成分の質量割合は、本発明の電池用電極組成物100質量%に対して、0.001質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、0.01質量%以上であり、更に好ましくは、0.05質量%以上である。また、30質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、20質量%以下であり、更に好ましくは、10質量%以下である。本発明の電池用電極組成物は、その他の成分を全く含まなくてもよい。
本発明の電池用電極組成物は、上記亜鉛を負極に使用する電池の負極組成物として使用する以外にも、当該電池の正極組成物や、リチウム金属等のアルカリ金属負極電池、マグネシウム金属等のアルカリ土類金属負極電池、アルミニウム金属負極電池、リチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池、マグネシウムイオン電池、カルシウムイオン電池、アルミニウムイオン電池、ニッケル・水素電池、ニッケル・金属水素化物電池、ニッケル・カドミウム電池、リチウム・空気電池等の空気電池や、燃料電池等における正極組成物及び/又は負極組成物として使用することが可能である。
<本発明の電池用電極>
本発明の電池用電極は、本発明の電池用電極組成物、及び、集電体を用いて構成される。
本発明の電池用電極を構成するのに用いる電池用電極組成物の好ましい形態は、上述した本発明の電池用電極組成物の好ましい形態と同様である。
本発明の電池用電極を構成するのに用いる集電体としては、(電解)銅箔、銅メッシュ(エキスパンドメタル)、発泡銅、パンチング銅、真鍮等の銅合金、真鍮箔、真鍮メッシュ(エキスパンドメタル)、発泡真鍮、パンチング真鍮、ニッケル箔、耐食性ニッケル、ニッケルメッシュ(エキスパンドメタル)、パンチングニッケル、金属亜鉛、耐食性金属亜鉛、亜鉛箔、亜鉛メッシュ(エキスパンドメタル)、(パンチング)鋼板、導電性を付与した不織布;Ni・Zn・Sn・Pb・Hg・Bi・In・Tl・真鍮等を添加した(電解)銅箔・銅メッシュ(エキスパンドメタル)・発泡銅・パンチング銅・真鍮等の銅合金・真鍮箔・真鍮メッシュ(エキスパンドメタル)・発泡真鍮・パンチング真鍮・ニッケル箔・耐食性ニッケル・ニッケルメッシュ(エキスパンドメタル)・パンチングニッケル・金属亜鉛・耐食性金属亜鉛・亜鉛箔・亜鉛メッシュ(エキスパンドメタル)・(パンチング)鋼板・不織布;Ni・Zn・Sn・Pb・Hg・Bi・In・Tl・真鍮等によりメッキされた(電解)銅箔・銅メッシュ(エキスパンドメタル)・発泡銅・パンチング銅・真鍮等の銅合金・真鍮箔・真鍮メッシュ(エキスパンドメタル)・発泡真鍮・パンチング真鍮・ニッケル箔・耐食性ニッケル・ニッケルメッシュ(エキスパンドメタル)・パンチングニッケル・金属亜鉛・耐食性金属亜鉛・亜鉛箔・亜鉛メッシュ(エキスパンドメタル)・(パンチング)鋼板・不織布;銀;アルカリ(蓄)電池や空気亜鉛電池に集電体や容器として使用される材料等が挙げられる。
本発明の電池用電極の厚さは、電池構成や集電体からの活物質の剥離抑制等の点から1nm以上、10000μm以下であることが好ましい。より好ましくは、10nm以上であり、更に好ましくは、20nm以上である。また、より好ましくは、1500μm以下であり、更に好ましくは、1000μm以下である。
電極の厚さは、マイクロメーター、段差計や輪郭形状測定器等により測定することができる。
本発明の電池用電極は、正極であってもよく、負極であってもよいが、負極であることが好ましい。また、本発明の電池用電極は、上述した以外に、電極に用いられる保護部材等の一般的な部材を更に含んで構成されるものであってもよい。
本発明の電池用電極は、後述する本発明の電池用電極の調製方法により得られるものであることが好ましい。中でも、後述する本発明の電池用電極の調製方法の好ましい方法により得られるものであることが特に好ましい。
なお、本発明の電池用電極は、上記亜鉛負極以外にも、本発明の電池用電極組成物を用いることができる上記の種々の電池の正極・負極として使用することが可能である。
〔本発明の電池用電極の調製方法〕
本発明の電池用電極の調製方法を以下に説明する。
本発明の電池用電極は、上記等電点が7よりも大きい化合物、電極活物質、及び、必要に応じて導電助剤やポリマー、その他の成分を含む電極組成物を集電体に塗工・圧着・接着・圧電・圧延・延伸・溶融等して活物質を含む活物質層を形成する工程により調製することができる。なお、活物質層を形成するための上記等電点が7よりも大きい化合物、活物質、導電助剤、ポリマー、及び、その他の成分の好ましい種類・配合割合は、本発明の電池用電極組成物において上述したものと同様である。
(電極の活物質層を形成する方法)
上記電極の活物質層の形成方法としては、例えば、次のような方法が挙げられる。
上記活物質層を調製するのに用いられる電池用電極組成物は、上記等電点が7よりも大きい化合物、及び、活物質粒子と共に、必要に応じて、導電助剤や、ポリマー、その他の成分を混合して調製することができる。混合には、ミキサー、ブレンダー、ニーダー、ビーズミル、レディミル、ボールミル等を使用することができる。混合の際、水や、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノール、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン等の有機溶剤、又は、水と有機溶剤との混合溶剤を加えてもよい。混合の前後に、粒子を所望の粒子径に揃えるために、ふるいにかける等の操作を行ってもよく、造粒を行ってもよい。混合は、固体成分に水や有機溶剤等の液体成分を加えて行う湿式法、又は、液体成分を加えずに固体成分のみで行う乾式法のいずれの方法で行ってもよい。混合を湿式法で行った場合は、混合した後、乾燥により水や有機溶剤等の液体成分を除去してもよい。混合は、湿式法と乾式法を組み合わせて行うこともできる。混合の際に加圧・減圧を行ってもよいし、温度をかけてもよい。
例えば、上記等電点が7よりも大きい化合物、及び、活物質粒子と、必要に応じてポリマー、その他の成分とを湿式法で混合した後、乾燥により液体成分を除去して得られる固体の混合物と、導電助剤とを乾式法で混合して、電池用電極組成物を調製してもよい。活物質と、その他の成分である周期表の第1族〜第17族に属する元素からなる群より選択される少なくとも1つの元素を有する化合物とを、合金化してもよい。また、電池用電極組成物に電気を流すことにより、亜鉛含有化合物に該元素を導入することも可能である。スプレー・レーザー等を使用してもよいし、メカノケミカル法・ゾル−ゲル法・共沈法等を使用することもできる。
上述した調製方法により、本発明の電池用電極組成物を、スラリー又はペースト混合物として得る。次に、得られたスラリー又はペースト混合物を、集電体の上に、できる限り膜厚が一定になるように塗工、圧着、接着、圧電、圧延、延伸、溶融等する。これらは、層状であってもよいし、非層状であってもよい。
上記スラリー又はペースト混合物は、集電体の片面に塗工、圧着、接着、圧電、圧延、延伸、溶融等してもよいし、両面・全面に塗工、圧着、接着、圧電、圧延、延伸、溶融等してもよい。塗工・圧着・接着・圧電・圧延・延伸・溶融中、及び/又は、塗工・圧着・接着・圧電・圧延・延伸・溶融後、0〜400℃で乾燥する。乾燥温度としてより好ましくは、15〜380℃である。乾燥は真空乾燥や減圧乾燥で行ってもよい。乾燥時間は、5分間〜48時間であることが好ましい。塗工と乾燥の工程を繰り返し行ってもよい。また、上記スラリー又はペースト混合物の乾燥後にロールプレス機等により常圧〜20tの圧力で、ロールプレス機等によりプレスを行うことが好ましい。プレスする圧力としてより好ましくは、常圧〜15tの圧力である。プレス時に、10〜500℃の温度をかけてもよい。また、プレス工程は1回であってもよいし、複数回であってもよい。プレスを行う際に、上記化合物同士、上記化合物と結着剤、上記化合物と集電体、活物質同士、活物質と結着剤、活物質と集電体等の密着性を向上させ、また、活物質層の厚み、強度、可とう性等を調節することも可能である。
なお、上記活物質・導電助剤の電池用電極組成物中の配合割合に関し、負極組成物の調製時における金属亜鉛は、活物質ではなく、導電助剤として考えて計算する。また、電池用電極組成物の調製時における亜鉛含有化合物は、導電助剤ではなく、活物質として考えて計算する。
<本発明の電池>
本発明は、本発明の電池用電極、及び、電解質を用いて構成される電池でもある。
本発明の電池の形態としては、一次電池;充放電が可能な二次電池(蓄電池);メカニカルチャージ(電極の機械的な交換)の利用;正極や負極とは別の第3極(例えば、充放電中に発生する酸素や水素を除去する極)の利用等、いずれの形態であってもよいが、二次電池(蓄電池)であることが好ましい。
本発明の電池は、正極及び/又は負極として本発明の電池用電極を用いて構成される。中でも、本発明の電池が、少なくとも負極において本発明の電池用電極を用いて構成されることが好ましい。
なお、本発明の電池用電極が負極である場合に、該負極を用いて構成される電池において、正極としては本発明の電池が正極である場合に正極に用いることができる活物質として上述したものを適宜用いることができる。
また、本発明の電池用電極が負極である場合に、該負極を用いて構成される電池において、正極の活物質として酸素(酸素が正極活物質となる場合、正極は、酸素の還元や水の酸化が可能なペロブスカイト型化合物、コバルト含有化合物、鉄含有化合物、銅含有化合物、マンガン含有化合物、バナジウム含有化合物、ニッケル含有化合物、イリジウム含有化合物、白金含有化合物、パラジウム含有化合物、金含有化合物、銀含有化合物、炭素含有化合物等より構成される空気極となる)を用いることも可能である。
中でも、酸素、マンガン含有化合物、ニッケル含有化合物が好ましい。すなわち、正極としては、ニッケル極、マンガン極、又は、空気極であることが好ましい。より好ましくは、ニッケル極である。
本発明の電池において、セパレーターを使用する場合、上記セパレーターは、国際公開第2013/027767号に記載に代表される一般的なセパレーターを用いることができる。
上記セパレーターは、1種でも2種以上でも使用することができ、抵抗が上昇し電池性能が低下しなければ、任意の枚数を使用することができるが、1枚だけのものが好適である。本発明の電池においては、少ない工程数で簡便に作製できる単一層からなる安価な不織布等をセパレーターとして好適に用いることができる。すなわち、本発明の電池においては、電池のセパレーターとして不織布を用いることが1つの好ましい形態である。
本発明の電池において、電解液を使用する場合、電解液は電池の電解液として通常用いられるものであればよく、国際公開第2013/027767号の段落番号〔0056〕〜〔0059〕に記載の電解液を用いることができる。なお、電解液は、循環させてもよいし、させなくてもよい。
また電解液の代わりに、負極と正極との間に固体電解質(ゲル電解質)が挟持されるものであってもよい。
本発明の電池は、本発明の電池用電極組成物を用いることができる上記の種々の電池として用いることが可能であるが、特にアルカリ性電解液に対して耐久性がある点で、アルカリ水溶液含有電解液を使用する電池、例えば、ニッケル・亜鉛(蓄)電池、マンガン・亜鉛(蓄)電池、銀・亜鉛(蓄)電池、亜鉛イオン(蓄)電池、ニッケル・カドミウム(蓄)電池、ニッケル・水素(蓄)電池、燃料電池、空気(蓄)電池として好適に用いることが可能である。中でも、シェイプチェンジが発生しやすいニッケル・亜鉛(蓄)電池として用いることが本発明の効果が顕著になる点で特に好ましい。また、アルカリ水溶液含有電解液以外の電解液を使用する電池、例えば、鉛蓄電池に対して用いることも可能である。なお、鉛蓄電池として用いた場合は、電極反応を反応系中でより均一に生じさせることができる。
例としてニッケル・亜鉛蓄電池の構成を以下に説明する。
上記ニッケル・亜鉛蓄電池は、上記亜鉛負極、ニッケル正極、正極と負極を隔てるセパレーター、電解質や電解液、それらを含むアッセンブリ、及び、保持容器から成る。
ニッケル極としては、特に制限はなく、ニッケル・水素電池、ニッケル・金属水素化物電池(ニッケル水素吸蔵合金電池)、ニッケル・カドミウム電池等に使用されるニッケル極を使用することも可能である。アッセンブリや保持容器の内壁は、腐食や電池の使用の過程での反応等により劣化しない物質を使用する。アルカリ電池や空気亜鉛電池に使用される容器を使用することも可能である。蓄電池は、単一型、単二型、単三型、単四型、単五型、単六型、R123A型、R−1/3N型等の円筒型;9V型、006P型等の角型;ボタン型;コイン型;ラミネート型;積層型;短冊状に成形した正負極板をプリーツ加工したセパレーターに交互に挟み込んだ型等でもよく、また、密閉型や開放型でもよいし、ベント型でもよい。電池の使用の過程で発生する気体をリザーブする部位を有していてもよい。
本発明の電池の製造工程は、湿式工程でもよいし、乾式工程でもよい。湿式工程は、例えば、正極集電体を、正極組成物のペーストあるいはスラリーで被覆し、負極集電体を、負極組成物のペーストあるいはスラリーで被覆して、被覆した電極シートを乾燥・圧縮し、カッティングとクリーニングの後、カッティングした電極とセパレーターを層状に重ね、電池アッセンブリを形成する。乾式工程は、例えば、スラリーやペーストの代わりに、電極成分の粉末や顆粒状乾燥混合物を用いる工程で、(1)乾燥状態で負極組成物を集電体に塗布、(2)乾燥状態で正極組成物を集電体に塗布、(3)(1)と(2)のシートの間にセパレーターを配置して層状構造を作り、電池アッセンブリを形成、(4)(3)の電池アッセンブリを巻きつけ、あるいは、折りたたむ等して三次元構造を形成、等の工程を経るものである。電極は、セパレーター等で包んだり、それらでコートしたりしてもよい。正極や負極は電池を構成する容器を兼ねていてもよい。端子を取り付ける工程としては、スポット溶接、超音波溶接、レーザー溶接、はんだ付け、端子と集電体の材料に適したその他任意の導電接合法が選ばれる。電池の製造工程や保存時においては、該電池は(部分)充電状態であってもよいし、放電状態であってもよい。
本発明の電池が蓄電池である場合、蓄電池の充放電レートとしては、0.01C以上、100C以下であることが好ましい。より好ましくは、0.05C以上、80C以下であり、更に好ましくは、0.1C以上、60C以下であり、特に好ましくは、0.1C以上、30C以下である。蓄電池は地球上の寒冷地及び熱帯地の両方で使用できることが好ましく、−50℃〜100℃の温度で使用できることが好ましい。
本発明の電池用電極組成物は、上述の構成よりなり、本発明の電池用電極組成物を用いて電池を構成した場合に、電極のシェイプチェンジを充分に制御することができ、長寿命化することができる。また、水素発生を抑制することができる。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
なお、等電点は、上述の方法で測定した。
(実施例1)
負極活物質として、活物質である酸化亜鉛、正帯電粒子である酸化マンガン(MgO)、ポリテトラフルオロエチレンを93:3:4の割合で混錬し、銅メッシュに圧延したあと乾燥させ、亜鉛負極を作製した。なお、酸化亜鉛の等電点は9.3であった。また、酸化マンガンの等電点は11.8であり、酸化亜鉛の等電点よりも大きかった。
負極として上記作製した亜鉛極、正極としてニッケル極、参照極として正極と同じ電極を50%充電した電極、正極及び負極間には不織布を配置し、電解液として酸化亜鉛を飽和させた8M水酸化カリウム水溶液を用いて三極セルを構成し、充放電サイクル試験を行った。電極面積は1.948cmとし、電流値は25mA/cm(充放電時間:各1時間)とした。この時、充放電特性として200サイクル以上クーロン効率は低下することなく、安定充放電が可能であった。また、水素の発生は観測されなかった。
(実施例2)
正帯電粒子として酸化イットリウム(Y)を用いた以外は、実施例1と同様に三極セルを構成し、充放電サイクル試験を行った。なお、酸化イットリウムの等電点は9.6であり、活物質である酸化亜鉛の等電点よりも大きかった。この時、充放電特性として200サイクル以上クーロン効率は低下することなく、安定充放電が可能であった。また、水素の発生は観測されなかった。
(実施例3)
正帯電粒子として水酸化ニッケル(Ni(OH))を用いた以外は、実施例1と同様に三極セルを構成し、充放電サイクル試験を行った。なお、水酸化ニッケルの等電点は11.4であり、活物質である酸化亜鉛の等電点よりも大きかった。この時、充放電特性として200サイクル以上クーロン効率は低下することなく、安定充放電が可能であった。また、水素の発生は観測されなかった。
なお、上記実施例においては、帯電粒子として酸化マンガン、酸化イットリウム、水酸化ニッケルを使用しているが、正帯電粒子が電極に留まるとともに放電時に溶出したアニオンを引きつけ、アニオンが主に電極近傍で過飽和状態となり、活物質が電極の近傍で再析出するように制御でき、その結果電極のシェイプチェンジの顕著な抑制効果を発揮でき、電池を長寿命化でき、また、水素発生を抑制できる機構は、正帯電粒子として等電点が7より大きい化合物を用いた場合には全て同様である。
また、上記実施例は、亜鉛負極や当該亜鉛負極を用いたニッケル・亜鉛電池に係るものであり、これが本発明の好適な形態であるが、その他の種々の電極・電池においても、活物質粒子とともに等電点が7より大きい化合物を用いるものであれば、本発明の作用効果を発揮することが可能である。従って、上記実施例の結果から、本発明の技術的範囲全般において、また、本明細書において開示した種々の形態において本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮できることが実証されている。

Claims (10)

  1. 活物質粒子と、等電点が7よりも大きい化合物とを含む電池用電極組成物。
  2. 前記化合物は、前記活物質粒子の等電点よりも大きい等電点をもつ
    ことを特徴とする請求項1に記載の電池用電極組成物。
  3. 前記化合物は、前記活物質粒子以外の粒子の少なくとも一部を構成し、
    該活物質粒子以外の粒子の表面は、表面積の1/2以上が該化合物からなる
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電池用電極組成物。
  4. 前記化合物の等電点は、活物質粒子の等電点よりも1以上大きい
    ことを特徴とする請求項2に記載の電池用電極組成物。
  5. 前記化合物は、金属元素を含む
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電池用電極組成物。
  6. 前記金属元素は、周期表の第1族〜第13族からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素である
    ことを特徴とする請求項5に記載の電池用電極組成物。
  7. 前記化合物は、金属酸化物、金属水酸化物、及び、金属硫化物からなる群より選択される少なくとも1種である
    ことを特徴とする請求項5又は6に記載の電池用電極組成物。
  8. 前記活物質粒子は、亜鉛種を含有する
    ことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の電池用電極組成物。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の電池用電極組成物、及び、集電体を用いて構成される
    ことを特徴とする電池用電極。
  10. 請求項9に記載の電池用電極、及び、電解質を用いて構成される
    ことを特徴とする電池。
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