JP6616565B2 - アニオン伝導性材料 - Google Patents

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Description

本発明は、アニオン伝導性材料、並びに、これを含んで構成される電極前駆体、電極、及び、電池に関する。
電池は、近年においては、携帯機器から自動車等まで多くの産業においてその開発・改良の重要性が高まっており、主に電池の性能やその二次電池化の面で優れた新たな電池系が種々開発・改良されている。
例えば、亜鉛種を負極活物質とする亜鉛負極が、電池の普及とともに古くから研究されてきた。中でも、正極活物質にニッケル含有化合物を用いるニッケル・亜鉛電池や空気(酸素)を用いる空気・亜鉛電池は、アルカリ水溶液で構成される安全性と、使用する電極材料にレアメタルを用いないことが可能であるという元素戦略的な優位性とを有する。
しかしながら、亜鉛電極を負極として用いた電池は亜鉛酸イオン([Zn(OH) 2−])を介した溶解析出反応によって充放電が進行する。同じ溶解析出反応を用いた鉛蓄電池やNi−Cd電池と異なり、反応中間体の電解液への溶解性が高く、電解液中に拡散してしまうためにデンドライトの成長や電極のシェイプチェンジが進行し電極が劣化してしまうという課題があった。
このような課題に関し、多くの技術開発がなされており、例えば、正極と、亜鉛を含んでなる負極と、前記正極及び前記負極が浸漬又は接触される、アルカリ金属水酸化物を含む水溶液である電解液と前記正極及び前記負極の間に配置されて前記正極及び前記負極を互いに隔離する、水酸化物イオン伝導性の無機固体電解質体からなるセパレーターとを備えた、亜鉛二次電池が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、MOa(OH)b(式中、Mは周期表第4族、13族、または14族の元素を表し、aおよびbは、Mの原子価に応じて電気的に中性となるように定められる値)のゲル化物であって、塩基性水酸化物を含む電解質材料が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
国際公開第2013/118561号 特開2012−74371号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の発明は、実施例としてはMg−Al型層状複水酸化物のみを固体電解質として用いるが、充放電サイクルを繰り返した後にデンドライトやシェイプチェンジによる電極劣化を充分に防止するうえで更なる工夫の余地があった。
また、上記特許文献2に記載の電解質材料は、亜鉛酸イオンの透過を抑制する効果が低いものであった。
そもそもデンドライトは、充電時に亜鉛等の金属が電極に析出するときに形成される。特に亜鉛負極を含んで構成される電池では、亜鉛の析出により形成されるデンドライトは、亜鉛の結晶性の高さに由来して非常に形成されやすい。これを抑制するためには、亜鉛の表面エネルギーをできる限り下げる必要があり、これまでの例としては電極にインジウム等の第二成分を添加してデンドライトを抑制するものがあった。
しかしながら、充放電サイクルの繰返しの過程でZn(OH) 2−等の金属イオンは電極面内で電流が流れやすい個所に移動するため、充放電サイクルを繰返し、金属亜鉛が析出・露出した電極面内の一部で電流が流れやすくなると、電極面内の当該一部の周りでZn(OH) 2−等の金属イオン濃度が高くなる。上述したように電極に第二成分を添加してデンドライトを抑制していた場合は、金属イオン濃度が高くなった箇所では、デンドライトを抑制するための成分が相対的に不足し、デンドライトの成長を充分に抑制できない可能性がある。
また電池反応に伴って活物質の溶解・析出反応が生じる場合、活物質の析出形態を制御することは極めて重要である。特にニッケル・亜鉛電池やニッケル・カドミウム電池では負極活物質である亜鉛種やカドミウム種の負極での析出形態が制御できていないと、充放電反応を重ねるごとに電極のシェイプチェンジが進行し、負極の活物質が枯渇して水素が発生するという現象が生じる。これは電池開発における重要な課題のひとつとなっている。
なお、亜鉛を負極に用いる電池は、上述したように古くから研究されてきたが、他の元素を負極に用いた新たな電池が開発されるにつれ、電池開発の主流ではなくなっていた。
しかしながら、亜鉛極を使用する電池は、アルカリ水溶液で構成される安全性、及び、レアメタルを用いずに電極を形成することが可能であるという元素戦略的な確固たる優位性を有しており、また、充放電サイクルを繰り返した後もデンドライトやシェイプチェンジによる電極劣化を充分に抑制することができれば、上述した安全性及び優位性を有するニッケル・亜鉛電池や空気・亜鉛電池等を広く普及させることができる可能性がある。なお、デンドライトやシェイプチェンジに関する課題は、電極として亜鉛負極以外の電極を用いる電池も有する。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、亜鉛負極やその他の電極を覆うのに用いられ、電池反応に関与する水酸化物イオンを透過しやすく、かつ亜鉛酸イオンの透過を抑制でき、アニオン選択性に優れるアニオン伝導性材料、並びに、これを含んで構成される電極前駆体、電極、及び、電池を提供することを目的とする。
本発明者らは、本質的なデンドライト抑制には、亜鉛の表面エネルギーを下げる工夫の他にZn(OH) 2−等の金属イオンの移動(拡散)を抑える機構が必要であると考え、活物質の表面エネルギーを下げることができ、デンドライトの成長、及び、これによる短絡を抑えることができる構成を有するとともに、Zn(OH) 2−等の金属イオンの拡散を充分に防止し、充放電サイクルを繰り返した後もデンドライトやシェイプチェンジによる電極劣化を抑えることができる電極を種々検討した。
そして、本発明者らは、電極に含まれる活物質層に着目し、活物質層からのZn(OH) 2−等の金属イオンの拡散を制御する方法を種々検討した。そして、本発明者らは、ニッケル・亜鉛電池や空気・亜鉛電池の亜鉛負極において、金属水酸化物と、ランタノイド、及び、周期表の第4族から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する単体及び/又は化合物とを含み、該化合物は、酸化物、水酸化物、硫酸化合物、及び、リン酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物であるアニオン伝導性材料を用い、このアニオン伝導性材料で活物質及び/又は活物質層を覆うことにより、Zn(OH) 2−等の金属イオンの拡散を充分に防止し、デンドライトやシェイプチェンジによる電極劣化を抑えることができる効果を顕著に発揮できることを見出した。
亜鉛酸イオンの透過を高度に抑制できる原因としては、以下の(1)〜(3)が考えられる:(1)ランタノイド、及び、周期表の第4族から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する単体及び/又は化合物が亜鉛酸イオンと相互作用し、亜鉛酸イオンの拡散を抑制する;(2)ランタノイド、及び、周期表の第4族から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する単体及び/又は化合物が金属水酸化物の粒界に存在し、亜鉛酸イオンの拡散を抑制する;(3)添加物を加えることで、例えばポリマーとの混練性が向上すること等により、緻密な膜を形成する。
なお、本発明者らは、このようなアニオン伝導性材料が電池反応に関与する水酸化物イオン等のアニオンは充分に透過することができることを既に見出している。このようなアニオン伝導性材料を用いることで良好な電池反応を維持しながら上記効果を発揮できる。
なお、このようなアニオン伝導性材料を用いることで、金属イオンの拡散を充分に低減することができるため、微多孔膜の積層体等の込み入った構造のセパレーターを用いなくても、金属イオンがセパレーター内に入り込んで生じる短絡の発生がなくなる。したがって、簡便に作製できる単一層からなる安価な不織布等をセパレーターとして用いることが可能である。また、アニオン伝導性材料そのものが、セパレーターとして機能することも可能である。更に、これまで負極に用いる添加剤には正極に影響を及ぼさないものを選択しなければならないという制約があったが、アニオン伝導性材料を用いて負極活物質及び/又は負極活物質層を覆うことで添加剤の拡散を低減するため、負極に用いる添加剤にこの制約がなくなる。また、正極に用いる添加剤の負極への到達も抑制するため、正極に用いる添加剤にも同様の制約がなくなる。同様に、アニオン伝導性材料を用いて正極活物質及び/又は正極活物質層を覆う場合も、正負極に用いる添加剤に制約がなくなる。また、アニオン伝導性材料を用いて負極活物質及び/又は負極活物質層を覆うことで、同様に電解液に用いる添加剤の充放電中の分解も抑制するため、電解液に用いる添加剤にも制約がなくなる。すなわち、アニオン伝導性材料が負極活物質及び/又は負極活物質層を覆うことで電解液中の添加剤が負極へ到達することを防ぎ、該添加剤の還元分解又は該添加剤による負極反応の阻害を防ぐことができ、その結果、電解液に用いる添加剤にも制約がなくなる。
更に、このようなアニオン伝導性材料は、ニッケル・亜鉛電池や空気・亜鉛電池の亜鉛負極のみならず、その他の種々の電極に適用した場合も同様に、電池反応に関与するイオンを充分に透過するとともに、デンドライトの成長や電極のシェイプチェンジの原因となる金属イオンの拡散を充分に防止するため、デンドライトやシェイプチェンジによる電極劣化を抑えることが可能である。以上のようにして、本発明者らは本発明に想到した。
すなわち本発明は、電極の活物質及び/又は活物質層を覆うのに用いられるアニオン伝導性材料であって、上記アニオン伝導性材料は、金属水酸化物と、ランタノイド、及び、周期表の第4族から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する単体及び/又は化合物とを含み、上記化合物は、酸化物、水酸化物、硫酸化合物、及び、リン酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物であるアニオン伝導性材料である。
また本発明は、本発明のアニオン伝導性材料と、活物質を含む活物質層と、集電体とを含んで構成される電極であって、上記活物質及び/又は上記活物質層が該アニオン伝導性材料によって覆われている電極でもある。
更に本発明は、本発明の電極、電解質、及び、セパレーターを用いて構成される電池でもある。
そして本発明は、集電体と、活物質を含む電極合剤組成物とを含んで構成される電極前駆体であって、上記電極前駆体は、混合物を更に含んで構成され、上記混合物は、金属水酸化物と、ランタノイド、及び、周期表の第4族から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する単体及び/又は化合物とを含み、上記化合物は、酸化物、水酸化物、硫酸化合物、及び、リン酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物であり、上記電極合剤組成物が該混合物によって覆われている電極前駆体でもある。なお、上記混合物は、アニオン伝導性材料を形成するためのものであり、粉体、ペースト、スラリー混合物の形態であることが好ましい。
なお、本明細書中、金属水酸化物と、ランタノイド、及び、周期表の第4族から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物とは、異なるものである。なお、ランタノイド、及び、周期表の第4族から選ばれる少なくとも1種の金属元素を含有する水酸化物を1種のみ含み、その他の金属水酸化物を含まないアニオン伝導性材料は、本発明に係る金属水酸化物を含まないことになる。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載される本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせた形態もまた、本発明の好ましい形態である。
<本発明のアニオン伝導性材料>
本発明のアニオン伝導性材料は、電極の活物質及び/又は活物質層を覆うのに用いられるものである。「電極の活物質及び/又は活物質層を覆う」ことに関しては、後述する<本発明の電極>にて詳しく説明する。
本発明のアニオン伝導性材料は、金属水酸化物と、ランタノイド、及び、周期表の第4族から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する単体及び/又は化合物(本明細書中、該単体又は該化合物のいずれかに該当するものを単に無機物とも言う。)とを含み、該化合物は、酸化物、水酸化物、硫酸化合物、及び、リン酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物であればよく、後述するポリマー、その他の成分を更に含んでもよい。
本発明のアニオン伝導性材料は、上記金属水酸化物と上記無機物との組み合わせにより、電池反応に関与する水酸化物イオン等のアニオンは透過しやすく、アニオンであってもイオン半径の大きな金属イオンの拡散は充分に防止することができる。本発明のアニオン伝導性材料は、水酸化物イオンと比較して金属イオン等のイオン半径の大きなアニオンをより透過しにくいものであり、当該イオン半径の大きなアニオンを全く透過しなくても構わない。このような本発明のアニオン伝導性材料は、電池反応に関与するアニオンを選択的に透過しやすくし、イオン半径の大きな金属イオンを選択的に透過しにくくする。例えば、亜鉛負極の活物質及び/又は活物質層を覆うのに用いる場合は、電池反応に関与する水酸化物イオンは透過しやすく、Zn(OH) 2−は透過しにくいため、電池性能を充分に優れたものとした上で、デンドライトによる短絡、活物質の形態変化や不動態化、電極のシェイプチェンジを防止してサイクル寿命を長くする効果を顕著に発揮できる。
上記アニオン伝導性材料とは、陰イオンを優先的に透過する物質を意味する。これは、本発明と同じ又は類似の技術分野に属する下記公知文献に記載のいずれの発明においても共通する概念である。本発明では、アニオン伝導性材料とは、陰イオン、特に水酸化物イオンを透過する物質(膜等)を意味する。
(特表2014−503689号公報、特開2013−145758号公報、特開2013−091598号公報、特開2014−011000号公報、特開2013−211201号公報、国際公開第2011/070658号、特開2011−255302号公報、特開2010−215744号公報、特表2009−529222号公報、特開2010−049871号公報、特開2009−108395号公報、特表2007−507704号公報、特開2007−091582号公報、特開2007−273280号公報、特表2006−505099号公報、特表2003−528019号公報、特表2003−531711号公報、特開2002−226498号公報)
上記アニオン伝導性材料は、三次元構造を持つゲル状であってもよい。また、上記アニオン伝導性材料は、本発明の効果を発揮できる限り、その表面、内部に空孔を有するものであってもよく、空孔を有さないものであってもよい。例えば、アニオン伝導性を向上する観点からは空孔を有することが好ましい場合がある。また、金属イオンの拡散をより抑える観点からは、空孔を有さないことが好ましい場合がある。
以下、本発明のアニオン伝導性材料に含まれるものとして、無機物、金属水酸化物、ポリマー、その他の成分を順に説明する。
〔無機物〕
上記ランタノイド、及び、周期表の第4族から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する単体及び/又は化合物(無機物)は、ランタノイド、Ti、Zr、及び、Hfからなる群より選択される少なくとも1つの元素を含有する単体及び/又は化合物であることが好ましい。中でも、ランタノイド、Ti、及び、Zrからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を含有する単体及び/又は化合物がより好ましく、ランタン、Ti、及び、Zrからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を含有する単体及び/又は化合物が更に好ましい。
上記ランタノイド、及び、上記周期表の第4族から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物は、酸化物、水酸化物、硫酸化合物、及び、リン酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物であり、中でも、酸化物が好ましい。
なお、上記酸化物としては、例えばランタノイド、Ti、Zr、及び、Hfからなる群より選択される少なくとも1つの元素を含む酸化物であることが好ましい。中でも、ランタノイド、Ti、及び、Zrからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を含む酸化物が更に好ましい。特に好ましくは、ランタン、Ti、及び、Zrからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を含む酸化物である。最も好ましくは、酸化ジルコニウムである。上記酸化物は、酸素欠陥を持つものであってもよい。
上記水酸化物としては、例えば水酸化ジルコニウムが好ましい。なお、本明細書中、水酸化物は、層状複水酸化物以外の水酸化物を言う。
上記硫酸化合物は、例えば硫酸ジルコニウムが好ましい。
上記リン酸化合物は、例えばリン酸ジルコニウムが好ましい。
上記無機物は、それを電解液原料、電解液、ゲル電解質等に導入した際に、溶解状態、コロイド等の分散状態、不溶状態等のいずれであっても良く、その表面の一部がプラスやマイナスの電荷に帯電するものが好ましく、ゼータ電位の測定等により、粒子の帯電状態を推察することができる。これら無機物は、後述するように、ポリマーが有する官能基との共有結合、配位結合や、イオン結合、水素結合、π結合、ファンデルワールス結合、アゴスチック相互作用等の非共有性結合により相互作用することもできる。また、上記無機物は、それを電解液原料、電解液、ゲル電解質等に導入した際に、その表面の一部がプラスやマイナスの電荷に帯電しない状態(等電点に相当)で使用してもよい。
上記アニオン伝導性材料は、電解液原料、電解液、ゲル電解質等に導入した際に水和物となるようなものであってもよい。水和物であることにより、電池反応に関与する水酸化物イオン等の伝導性を更に高めることができる。
上記無機物は、下記平均粒子径、及び/又は、下記比表面積を満たす粒子を含むことが好ましい。より好ましくは、該無機物が、下記平均粒子径、及び/又は、下記比表面積を満たすことである。
上記無機物は、平均粒子径が1000μm以下であるものが好ましい。該平均粒子径は、より好ましくは、200μm以下であり、更に好ましくは、100μm以下であり、特に好ましくは、75μm以下であり、最も好ましくは、20μm以下である。一方、平均粒子径は、5nm以上であることが好ましい。より好ましくは、10nm以上である。
上記平均粒子径は、粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
上記無機物の粒子の形状としては、微粉状、粉状、粒状、顆粒状、鱗片状、多面体状、ロッド状、曲面含有状等が挙げられる。なお、平均粒子径が上述のような範囲の粒子は、例えば、粒子をボールミル等により粉砕し、得られた粗粒子を分散剤に分散させて所望の粒子径にした後に乾固する方法や、該粗粒子をふるい等にかけて粒子径を選別する方法のほか、粒子を製造する段階で調製条件を最適化し、所望の粒径の(ナノ)粒子を得る方法等により製造することが可能である。
上記無機物は、比表面積が0.01m/g以上であることが好ましい。これにより、亜鉛酸イオンとの相互作用の効力を強めることができ、亜鉛酸イオンの透過をより抑制できると考えられる。該比表面積は、より好ましくは、0.1m/g以上であり、更に好ましくは、0.5m/g以上である。一方、該比表面積は、1500m/g以下であることが好ましい。該比表面積は、より好ましくは、500m/g以下であり、更に好ましくは、450m/g以下であり、特に好ましくは、400m/g以下である。
上記比表面積は、窒素吸着BET法で比表面積測定装置により測定することができる。
なお、比表面積が上述のような範囲の粒子は、例えば、粒子をナノ粒子化したり、粒子製造の際の調製条件を選択することにより粒子表面に凹凸をつけたりすることにより製造することが可能である。
上記無機物は、アスペクト比(縦/横)が1.1以上であることが好ましい。該アスペクト比(縦/横)は、より好ましくは、2以上であり、更に好ましくは、3以上である。また、該アスペクト比(縦/横)は、100000以下であることが好ましい。該アスペクト比(縦/横)は、より好ましくは50000以下である。
上記アスペクト比(縦/横)は、SEMにより観察した粒子の形状から求めることができる。例えば、上記無機物の粒子が直方体状の場合は、最も長い辺を縦、2番目に長い辺を横として、縦の長さを横の長さで除することにより求めることができる。その他の形状の場合には、アスペクト比が最も大きくなるように、ある一つの部分を底面に置き、それをアスペクト比が最も大きくなるような方向から投影した時にできる二次元の形において、ある一点から最も離れた一点の長さを測定し、その最も長い辺を縦、縦の中心点を通る直線のうち最も長い辺を横として、縦の長さを横の長さで除することにより求めることができる。
なお、アスペクト比(縦/横)が上述のような範囲の無機物の粒子は、例えば、そのようなアスペクト比を有する粒子を選択する方法や、粒子を製造する段階で調製条件を最適化し、該粒子を選択的に得る方法等により得ることが可能である。
上記無機物は、ルイス酸性度が酸化ジルコニウムと同等以上であることが好ましい。ルイス酸性度が酸化ジルコニウムと同等以上である無機物としては、例えば、ランタノイド、及び、チタンから選ばれる少なくとも1種の元素を含む無機化合物や、ランタノイド、及び、周期表の第4族から選ばれる少なくとも1種の元素とともに、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、イットリウム、及び、ニオブから選ばれる少なくとも1種の元素を更に含む無機化合物が好適なものとして挙げられる。これにより、亜鉛酸イオンとの相互作用の力を強めることができ、亜鉛酸イオンの透過をより抑制できると考えられる。なお、ルイス酸は電子受容体であり、通常は電子密度が高い元素ほどルイス酸性度が高いと言える。したがって、基本的には、周期表上では左上の方に記載される元素ほどルイス酸性度が高いと言える。
〔金属水酸化物〕
上記金属水酸化物は、Mg、Fe、Zn、Ca、Li、Ni、Co、Cu、Al、Fe、及び、Mnから選ばれる少なくとも1種の金属元素を含むことが好ましく、Mg、Fe、Zn、Ca、Li、Ni、Co、及び、Cuから選ばれる少なくとも1種の金属元素と、Al、Fe、及び、Mnから選ばれる少なくとも1種の金属元素とを含むことがより好ましい。
また上記金属水酸化物は、例えば複水酸化物が好ましく、層状複水酸化物がより好ましい。
ハイドロタルサイト等の層状複水酸化物は、層間にて水酸化物イオンが拡散している。これにより、水酸化物イオン伝導性を有する。したがって、層状複水酸化物を含む膜は、通常、水酸化物イオンを透過することができる。なお、特願2014−015740号に記載したように、活物質及び/又は活物質層をアニオン伝導性材料で覆った電極を備える電池において亜鉛活物質の充放電が進行しており、この事実からも層状複水酸化物等を含む膜が水酸化物イオン伝導性を有することが分かる。
上記層状複水酸化物は、ハイドロタルサイトが好ましい。これにより、上記アニオン伝導性材料のアニオン伝導性を際立って優れたものとすることができる。
上記ハイドロタルサイトは、下記式(1);
[M 1−x (OH)](An−x/n・mHO (1)
(式中、M=Mg、Fe、Zn、Ca、Li、Ni、Co、Cu等;M=Al、Fe、Mn等;A=CO 2−等、mは0以上の正数、nは2又は3、xは、0.20≦x≦0.40程度)で示される化合物であることが好ましい。この化合物を、150℃〜900℃で焼成することにより脱水した化合物や、層間内の陰イオンを分解させた化合物、層間内の陰イオンを水酸化物イオン等に交換した化合物等を上記無機物として使用してもよい。上記ハイドロタルサイトには、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、シラノール基等の官能基を持つ化合物が配位していてもよい。層間内に有機物を有していてもよい。
上記金属水酸化物の好ましい平均粒子径は、上述した無機物の好ましい平均粒子径と同様である。
上記金属水酸化物の平均粒子径は、上記した無機物の平均粒子径と同様の方法で測定することができる。
上記金属水酸化物の粒子の形状、所望の平均粒子径をもつ金属水酸化物の粒子の調製方法は、それぞれ、上記した無機物の形状、所望の平均粒子径をもつ無機物の粒子の調製方法と同様である。
上記金属水酸化物の粒子の好ましい比表面積、比表面積の測定方法、所望の比表面積をもつ金属水酸化物の粒子の調製方法は、上記した無機物の好ましい比表面積、比表面積の測定方法、所望の比表面積をもつ無機物の粒子の調製方法と同様である。
上記金属水酸化物の好ましいアスペクト比(縦/横)、アスペクト比の測定方法、所望のアスペクト比をもつ金属水酸化物の粒子の調製方法は、上記した無機物のアスペクト比(縦/横)、アスペクト比の測定方法、所望のアスペクト比をもつ無機物の粒子の調製方法と同様である。
本発明のアニオン伝導性材料における、上記金属水酸化物と上記無機物との質量割合は、98/2〜41/59が好ましく、95/5〜42/58がより好ましく、90/10〜43/57が更に好ましく、80/20〜53/47が一層好ましく、75/25〜54/46がより一層好ましく、70/30〜55/45が特に好ましい。
上記金属水酸化物と上記無機物との質量割合を上記範囲内とすることにより、本発明のZn(OH) 2−等の金属イオンの拡散を防止する効果を顕著に発揮できる。また、アニオン伝導性材料のクラックを生じにくくする効果も発揮できる。
なお、本明細書中、無機物(単体及び/又は化合物)の質量とは、本発明のアニオン伝導性材料が上記単体と上記化合物とを両方含む場合は該単体と該化合物との合計質量を言い、本発明のアニオン伝導性材料が該単体又は該化合物のいずれか一方のみを含む場合は該単体又は該化合物の質量を言う。
上記金属水酸化物と上記無機物との合計質量割合は、アニオン伝導性材料の固形分100質量%中、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましく、30質量%が一層好ましく、40質量%以上が特に好ましい。また、該質量割合は、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましく、60質量%以下が一層好ましく、55質量%以下が特に好ましい。これにより、アニオン伝導性材料のクラックを生じにくくする効果をも発揮し、本発明の効果を顕著なものとすることができる。
〔ポリマー〕
本発明のアニオン伝導性材料は、更にポリマーを含むことが好ましい。これにより、上記無機物及び金属水酸化物をアニオン伝導性材料中に充分に結着することができる。また、アニオン伝導性材料の強度、アニオン伝導度等を適切に調節することができる。
上記ポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等の炭化水素部位含有ポリマー;ポリスチレン等の芳香族基含有ポリマー;アルキレングリコール等のエーテル基含有ポリマー;ポリビニルアルコール、ポリ(α−ヒドロキシメチルアクリル酸塩)等の水酸基含有ポリマー;ポリアミド、ナイロン、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、N−置換ポリアクリルアミド等のアミド基含有ポリマー;ポリマレイミド等のイミド基含有ポリマー;ポリ(メタ)アクリル酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、ポリメチレングルタル酸等のカルボキシル基含有ポリマー;ポリ(メタ)アクリル酸塩、ポリマレイン酸塩、ポリイタコン酸塩、ポリメチレングルタル酸塩等のカルボン酸塩基含有ポリマー;ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のハロゲン原子含有ポリマー;エポキシ樹脂等のエポキシ基が開環することにより結合したポリマー;スルホン酸塩部位含有ポリマー;ARB(Aは、N又はPを表す。Bは、ハロゲンアニオンやOH等のアニオンを表す。R、R、Rは、同一又は異なって、炭素数1〜7のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルキルカルボキシル基、又は、芳香環基を表す。R、R、Rは、結合して環構造を形成してもよい。)で表される基が結合したポリマーに代表される第四級アンモニウム塩や第四級ホスホニウム塩含有ポリマー;陽イオン・陰イオン交換膜等に使用されるイオン交換性重合体;天然ゴム;スチレンブタジエンゴム(SBR)等に代表される人工ゴム;セルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシエチルセルロース)、カルボキシメチルセルロース、キチン、キトサン、アルギン酸(塩)等の糖類;ポリエチレンイミン等のアミノ基含有ポリマー;カルバメート基部位含有ポリマー;カルバミド基部位含有ポリマー;エポキシ基部位含有ポリマー;複素環、及び/又は、イオン化した複素環部位含有ポリマー;ポリマーアロイ;ヘテロ原子含有ポリマー;低分子量界面活性剤等が挙げられる。中でも、上記ポリマーは、芳香族基、ハロゲン原子、カルボキシル基、カルボン酸塩基、水酸基、アミノ基、及び、エーテル基からなる群より選択される少なくとも1種を含有するか、又は、炭化水素であることが好ましい。該ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。また、該カルボン酸塩基は、カルボン酸リチウム塩基、カルボン酸ナトリウム塩基、カルボン酸カリウム塩基が好ましく、カルボン酸ナトリウム塩基がより好ましい。該炭化水素は、例えばポリオレフィンが挙げられる。中でも、上記ポリマーは、(1)絶縁物であること、(2)アニオン伝導性材料の粉末を増粘・結着させることができること、(3)物理的強度に優れることの3点を総合的に考慮して適宜選択することが好ましく、このような観点からは、炭化水素部位含有ポリマー、芳香族基含有ポリマー、エーテル基含有ポリマー、カルボキシル基含有ポリマー、カルボン酸塩基含有ポリマー、ハロゲン原子含有ポリマー、スルホン酸塩部位含有ポリマー、第四級アンモニウム塩や第四級ホスホニウム塩含有ポリマー、糖類が好ましい。上記ポリマーは熱や圧力等により繊維化された状態になってもよい。ポリマーの繊維化により、活物質(層)やアニオン伝導性材料の強度、アニオン伝導度等を調節することもできる。
上記ポリマーは、その構成単位に該当するモノマーより、ラジカル(共)重合、アニオン(共)重合、カチオン(共)重合、グラフト(共)重合、リビング(共)重合、分散(共)重合、乳化(共)重合、懸濁(共)重合、開環(共)重合、環化(共)重合、光、紫外線や電子線照射による重合、メタセシス(共)重合、電解(共)重合等により得ることができる。これらポリマーが官能基を有する場合には、それを主鎖及び/又は側鎖に有していてもよく、架橋剤との結合部位として存在してもよい。
上記ポリマーは、上記無機物以外の有機架橋剤化合物により、架橋されていてもよい。ただし、架橋されたポリマーが吸水性を有する場合、アニオン伝導性材料にクラックを生じることがあるため、架橋されたポリマーは吸水性を持たない方がよい。
上記ポリマーの重量平均分子量は、200〜7000000であることが好ましい。これにより、アニオン伝導性材料のイオン伝導性、粘性、可とう性、強度等を調節することができる。該重量平均分子量は、より好ましくは、400〜6500000であり、更に好ましくは、500〜5000000である。
上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
上記ポリマーの質量割合は、アニオン伝導性材料の固形分100質量%中、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましく、25質量%以上が一層好ましく、30質量%以上が特に好ましい。また、該質量割合は、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましく、70質量%以下が一層好ましく、60質量%以下が特に好ましい。これにより、アニオン伝導性材料のクラックを生じにくくする効果をも発揮し、本発明の効果を顕著なものとすることができる。
〔その他の成分〕
上記その他の成分は、特に限定されないが、例えば、粘土化合物;固溶体;合金;ゼオライト;ハロゲン化物;カルボキシラート化合物;炭酸化合物;炭酸水素化合物;硝酸化合物;スルホン酸化合物;亜リン化合物;次亜リン酸化合物、ホウ酸化合物;ケイ酸化合物;アルミン酸化合物;硫化物;オニウム化合物;塩;有機化合物等を1種又は2種以上含んでいてもよい。上記その他の成分は、上記無機物や、上記金属水酸化物、上記ポリマーとは異なるものである。上記その他の成分は、イオン伝導性を補助したり、溶媒・熱・焼成・電気等の手法を用いて除去されることによって後述するアニオン伝導性材料中の空孔を形成したりする等の働きを有していてもよい。
上記その他の成分の好ましい平均粒子径は、上述した無機物の好ましい平均粒子径と同様である。
上記その他の成分の平均粒子径は、上記した無機物の平均粒子径と同様の方法で測定することができる。
上記その他の成分の粒子の形状、所望の平均粒子径をもつその他の成分の粒子の調製方法は、それぞれ、上記した無機物の形状、所望の平均粒子径をもつ無機物の粒子の調製方法と同様である。
上記その他の成分の粒子の好ましい比表面積、比表面積の測定方法、所望の比表面積をもつその他の成分の粒子の調製方法は、上記した無機物の好ましい比表面積、比表面積の測定方法、所望の比表面積をもつ無機物の粒子の調製方法と同様である。
上記その他の成分の好ましいアスペクト比(縦/横)、アスペクト比の測定方法、所望のアスペクト比をもつその他の成分の粒子の調製方法は、上記した無機物のアスペクト比(縦/横)、アスペクト比の測定方法、所望のアスペクト比をもつ無機物の粒子の調製方法と同様である。
上記その他の成分を用いる場合、その他の成分の質量割合は、アニオン伝導性材料100質量%に対して、0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上が更に好ましい。また、該質量割合は、90質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、45質量%以下が更に好ましい。なお、本発明のアニオン伝導性材料は、その他の成分を全く含まなくてもよい。
本発明のアニオン伝導性材料は、上述した無機物、金属水酸化物、ポリマー、その他の成分を、それぞれ、1種のみ含んでいてもよいし2種以上を含んでいてもよい。なお、ポリマーが2種以上含まれる場合、ポリマーの質量とは、特に断らない限り、2種以上のポリマーの合計質量を言う。無機物、金属水酸化物、その他の成分のそれぞれが2種以上含まれる場合についても同様である。
<本発明の電極>
本発明の電極は、集電体と、活物質を含む活物質層とを含んで構成され、更に、アニオン伝導性材料を含んで構成される。活物質及び/又は該活物質層は、本発明のアニオン伝導性材料によって覆われている。
上記活物質及び/又は活物質層がアニオン伝導性材料によって覆われているとは、電極を用いて電池を形成したときに、活物質と電解質とが直接接しないように活物質及び/又は活物質層の少なくとも一部がアニオン伝導性材料によって覆われていることを意味する。中でも、電極を用いて電池を形成したときに、活物質の実質的にすべてが電解質とは直接接しないように活物質及び/又は活物質層がアニオン伝導性材料によって覆われていることが好ましい。
なお、本発明の電極を用いて電池を形成したとき、活物質と電解質とがアニオン伝導性材料を介して作用するため、該電池は電池としての電気化学反応を生じることができる。
上記活物質がアニオン伝導性材料によって覆われているとは、アニオン伝導性材料が活物質層を構成する活物質毎に覆うことを言い、活物質がアニオン伝導性材料によって覆われている活物質層は、例えば、活物質層を形成するための活物質を予めアニオン伝導性材料で覆い、その後、アニオン伝導性材料で覆われた活物質を用いて層形状となるように形成される。ここで、上記活物質は、活物質だけでアニオン伝導性材料に覆われていてもよく、活物質と、導電助剤やその他の添加剤等の活物質以外の活物質層構成材料とを含むものがアニオン伝導性材料に覆われていてもよい。
上記活物質層がアニオン伝導性材料によって覆われているとは、電極に形成された活物質層の一部又は全体が覆われていることを言い、アニオン伝導性材料によって覆われている活物質層は、通常は、活物質及び必要に応じて活物質以外の活物質層構成材料を用いて活物質層を形成し、その後、当該活物質層をアニオン伝導性材料で覆うことにより形成される。なお、電極に形成された活物質層の全体がアニオン伝導性材料によって覆われていることが本発明の1つの好ましい形態である。また、電極中で活物質層がいくつかの単位に分けられている場合は、当該単位毎に覆うものであってもよい。活物質層がアニオン伝導性材料によって覆われている場合は、活物質がある程度まとまった単位のもの毎にアニオン伝導性材料に覆われているとも言える。上記単位は、2つ以上とすることができる。上記単位の上限は、特に限定されないが、例えば20である。
活物質及び/又は活物質層がアニオン伝導性材料によってより大きな単位で覆われている程、活物質間の電気伝導性をより向上することができる。一方、活物質及び/又は活物質層がアニオン伝導性材料によってより小さな単位で覆われている程、デンドライトによる短絡をより充分に抑制することができる。
なお、アニオン伝導性材料によって、活物質層を構成する活物質粒子毎に覆うとともに、活物質層の一部又は全体を覆ったり、又は、活物質層が分けられている単位毎に覆ったりしてもよい。また、電極中で活物質層がいくつかの単位に分けられている場合に、アニオン伝導性材料で、ある1つ又は2つ以上の単位については単位毎に覆い、その他の単位については該単位を形成する活物質粒子毎に覆ったり、その他の単位を纏めて覆ったりするものであってもよい。
電極の活物質層がアニオン伝導性材料によって覆われている場合、本発明の電極は、アニオン伝導性材料とは異なる絶縁性の保護部材を更に含んで構成され、活物質層の表面の一部が該絶縁性の保護部材で覆われているものであってもよい。このときは、該保護部材で覆われていない活物質層の残りの一部又は全体がアニオン伝導性材料で覆われていればよい。例えば、保護部材で覆われていない活物質層の残りの全体がアニオン伝導性材料で覆われているものとすることができる。
保護部材は、例えば、イオンを通過させないイオン非伝導性の材料から構成されたものとすることができる。例えば、電池を構成した場合に、アニオン伝導性材料は、電池反応で電流が通過する活物質面を覆い、保護部材は、該電池反応で電流が通過しない活物質面を覆うものとすることができる。
なお、「電池反応で電流が通過する活物質面」とは、電池反応において電池の正極から負極に向かって電流が通過する際に、電流が通過する活物質面を言う。「電池反応で電流が通過しない面」とは、電池反応において電池の正極から負極に向かって電流が通過する際に、電流が実質的に通過しない面を言う。
なお、本発明の電極の活物質層がアニオン伝導性材料によって覆われている場合、電極を構成する活物質層の少なくとも1つの面が集電体層と結着しているときは、活物質層の集電体と結着していない残りの面の一部又は全部がアニオン伝導性材料で覆われていればよく、当該残りの面の全部がアニオン伝導性材料で覆われていることが好ましい。また、本発明の効果が顕著に発揮される点で、活物質層において電解質に面する側の表面が複数あり、これら複数の面がアニオン伝導性材料で覆われていることがより好ましい。
本発明の電極の活物質層がアニオン伝導性材料によって覆われている場合、活物質層を覆うアニオン伝導性材料の厚さは、適宜選択できるが、0.1μm以上であることが好ましい。より好ましくは、0.5μm以上であり、更に好ましくは、1μm以上である。また、該厚さは、例えば50mm以下であることが好ましい。より好ましくは、5mm以下であり、更に好ましくは、1mm以下である。
アニオン伝導性材料の厚さは、マイクロメーター等での測定や、該電極を鋭利な器具で切断した断面を電子顕微鏡で観察し計測することができる。
上記活物質粒子毎にアニオン伝導性材料で覆われているとは、活物質層中の活物質粒子がそれぞれその表面をアニオン伝導性材料に覆われていることを意味する。例えば、活物質層中で活物質粒子どうしが分離し、アニオン伝導性材料を介して結着していてもよい。活物質層に含まれる活物質粒子のすべてがアニオン伝導性材料に覆われていなくてもよいが、当該活物質粒子の実質的にすべてがアニオン伝導性材料に覆われていることが好ましい。
上記活物質粒子の形状は、微粉状、粉状、粒状、顆粒状、鱗片状、多面体状、ロッド状、曲面含有状等が挙げられる。活物質粒子は、一次粒子だけでなく、一次粒子が凝集した二次粒子であってもよい。
本発明の電極の厚さは、電池構成や集電体からの活物質の剥離抑制等の点から1nm以上、10000μm以下であることが好ましい。該厚さは、より好ましくは、10nm以上であり、更に好ましくは、20nm以上である。また、該厚さは、より好ましくは、1500μm以下であり、更に好ましくは、1000μm以下である。
本発明の電極の厚さは、マイクロメーター、段差計や輪郭形状測定器等により測定することができる。
本発明の電極は、正極であってもよく、負極であってもよいが、負極であることが好ましい。また、本発明の電極は、上述した以外に、電極に用いられる一般的な部材を更に含んで構成されるものであってもよい。
以下、本発明の電極を構成する活物質層、集電体、保護部材について、順により詳細に説明する。
(電極の活物質層)
本発明に係る活物質層は、活物質を含むが、後述する導電助剤やその他の添加剤を更に含んでいてもよい。以下、本発明に係る活物質層に含まれる、活物質、導電助剤、その他の添加剤について、順に説明する。
〔活物質〕
本発明に係る活物質層に含まれる活物質は、正極の活物質であってもよく、負極の活物質であってもよいが、負極の活物質であることが好ましい。
本発明の電極が負極である場合は、上記負極の活物質としては、炭素種・リチウム種・ナトリウム種・マグネシウム種・カドミウム種・鉛種・亜鉛種・錫種・シリコン含有材料・水素吸蔵合金材料、白金等の貴金属材料等、電池の負極活物質として通常用いられるものを用いることができる。これらの中でも、本発明の電極における上記活物質は、亜鉛種を含有することが好ましい。活物質が亜鉛種を含有する場合はデンドライトによる短絡や電極のシェイプチェンジが発生しやすくなるところ、本発明の電極はこれを抑制することができるため、本発明の効果が顕著に発揮される。ここで亜鉛種とは、亜鉛含有化合物を言う。なお、上記亜鉛種は、亜鉛を含有する限り、電池の駆動によりそれ自体が反復的に酸化・還元されるものであってもよい。
上記亜鉛含有化合物は、活物質として用いることができるものであればよく、例えば、酸化亜鉛(JIS K1410(2006年)に規定する1種/2種/3種)や、水酸化亜鉛・硫化亜鉛・テトラヒドロキシ亜鉛アルカリ金属塩・テトラヒドロキシ亜鉛アルカリ土類金属塩・亜鉛ハロゲン化合物・亜鉛カルボキシラート化合物・亜鉛合金・亜鉛固溶体・ホウ酸亜鉛・リン酸亜鉛・リン酸水素亜鉛・ケイ酸亜鉛・アルミン酸亜鉛・炭酸化合物・炭酸水素化合物・硝酸化合物・硫酸化合物等に代表される周期表の第1族〜第17族に属する元素からなる群より選択される少なくとも1つの元素を有する亜鉛(合金)化合物、有機亜鉛化合物、亜鉛化合物塩等が挙げられる。これらの中でも、酸化亜鉛(JIS K1410(2006年)に規定する1種/2種/3種)、水酸化亜鉛、テトラヒドロキシ亜鉛アルカリ金属塩、テトラヒドロキシ亜鉛アルカリ土類金属塩、亜鉛ハロゲン化合物、亜鉛カルボキシラート化合物、亜鉛合金、亜鉛固溶体、ホウ酸亜鉛、リン酸亜鉛、ケイ酸亜鉛、アルミン酸亜鉛、炭酸亜鉛、周期表の第1族〜第17族に属する元素からなる群より選択される少なくとも1つの元素を有する亜鉛(合金)化合物がより好ましい。上記亜鉛合金は、(アルカリ)乾電池や空気電池に使用される亜鉛合金であってもよい。上記亜鉛含有化合物は、1種でも2種以上でも使用することができる。
本発明の電極が正極である場合は、上記正極の活物質としては、一次電池や二次電池の正極活物質として通常用いられるものを用いることができる。例えば、オキシ水酸化ニッケル、水酸化ニッケル、コバルト含有水酸化ニッケル等のニッケル含有化合物;二酸化マンガン等のマンガン含有化合物;酸化銀;コバルト酸リチウム等のリチウム含有化合物;鉄含有化合物;コバルト含有化合物等が挙げられる。
また、正極の活物質として酸素(酸素が正極活物質となる場合、正極は、酸素の還元や水の酸化が可能なペロブスカイト型化合物、コバルト含有化合物、鉄含有化合物、銅含有化合物、マンガン含有化合物、バナジウム含有化合物、ニッケル含有化合物、イリジウム含有化合物、白金含有化合物、パラジウム含有化合物、金含有化合物、銀含有化合物、炭素含有化合物等より構成される空気極となる)を用いることも可能である。
中でも、酸素、マンガン含有化合物、ニッケル含有化合物が好ましい。すなわち、正極としては、ニッケル極、マンガン極、又は、空気極であることがより好ましい。
上記活物質の活物質層中の含有割合は、活物質層の全量100質量%に対して、50〜99.9質量%であることが好ましい。活物質の配合量がこのような範囲であると、活物質層を含んで構成される電極を電池に用いた場合に、より良好な電池性能を発揮する。該含有割合は、より好ましくは、55〜99.5質量%であり、更に好ましくは、60〜99質量%である。上記活物質は、これを用いて蓄電池を作製した際に水含有電解液を使用した場合には、電池の使用の過程で水の分解副反応を進行させる場合があり、該副反応を抑制するために、特定の元素を活物質に導入してもよい。特定の元素としては、Al、B、Ba、Bi、Br、C、Ca、Cd、Ce、Cl、Cu、Eu、F、Ga、Hg、In、La、Mg、Mn、N、Nb、Nd、Ni、P、Pb、S、Sb、Sc、Si、Sm、Sn、Sr、Ti、Tl、Y、Zr等が挙げられる。
ここで、特定の元素を活物質に導入するとは、活物質を、これらの元素を構成元素とする化合物とすることを意味する。
〔導電助剤〕
上記活物質層は、電極活物質(正極活物質又は負極活物質を言う。)とともに、導電助剤を含むものであることが好ましい。
上記導電助剤としては、例えば、導電性カーボン、導電性セラミックや、亜鉛・亜鉛末・亜鉛合金・(アルカリ)乾電池や空気電池に使用される亜鉛(以下、纏めて金属亜鉛とも称する)、銅、真鍮、ニッケル、銀、ビスマス、インジウム、鉛、錫等の金属等を用いることができる。導電性カーボンとしては、黒鉛、グラッシーカーボン、アモルファス炭素、易黒鉛化炭素、難黒鉛化炭素、カーボンナノフォーム、活性炭、グラフェン、ナノグラフェン、グラフェンナノリボン、フラーレン、カーボンブラック、炭素繊維、ファイバー状カーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、バルカン、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。
上記導電助剤の活物質層中の含有割合は、活物質層中の活物質100質量%に対して、0.0001〜100質量%であることが好ましい。導電助剤の含有割合がこのような範囲であると、活物質層を含んで構成される電極を電池に用いた場合に、より良好な電池性能を発揮する。該含有割合は、より好ましくは、0.0005〜60質量%であり、更に好ましくは、0.001〜40質量%である。
なお、金属亜鉛を電極合剤調製時に使用する場合には、金属亜鉛は活物質ではなく、導電助剤として考えて計算する。また、亜鉛含有化合物である酸化亜鉛や水酸化亜鉛等から電池の使用の過程で生成する金属亜鉛は、系中で導電助剤としての機能も果たすことになるが、亜鉛負極合剤や亜鉛負極調製時には0価の金属亜鉛ではないため、ここでは導電助剤と考えず、活物質と考えて計算する。すなわち、上記活物質、導電助剤の好ましい含有割合は、亜鉛負極合剤や亜鉛負極の調製時における亜鉛含有化合物は活物質として考え、金属亜鉛は導電助剤として考えて計算する。
上記導電助剤の平均粒子径は、1nm〜500μmであることが好ましい。より好ましくは5nm〜200μmであり、更に好ましくは10nm〜100μmであり、最も好ましくは、10nm〜60μmである。
なお、上記導電助剤の平均粒子径は、上記した無機物の平均粒子径と同様の方法で測定することができる。
上記導電助剤の比表面積は、0.1m/g以上であることが好ましい。より好ましくは、1m/g以上である。また、該比表面積は、1500m/g以下であることが好ましい。より好ましくは、1200m/g以下であり、更に好ましくは、900m/g以下であり、より更に好ましくは、250m/g以下であり、特に好ましくは、50m/g以下である。
導電助剤の比表面積を上記範囲内とすることにより、電池の使用の過程で活物質の形状変化や不動態の形成を抑制することができる等の効果がある。
なお、上記比表面積は、上記した無機物の比表面積と同様の方法で測定することができる。
〔その他の添加剤〕
本発明に係る活物質層は、更に、周期表の第1族〜第17族に属する元素からなる群より選択される少なくとも1つの元素を有する化合物、有機化合物、及び、有機化合物塩からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。本発明に係る活物質層は、更に、多孔体を含むものであってもよい。
(電極の集電体)
上記集電体としては、アルカリ蓄電池やアルカリ燃料電池に集電体や容器として使用される材料等が挙げられ、例えば、銅箔、電解銅箔、銅メッシュ(エキスパンドメタル)、発泡銅、パンチング銅、真鍮等の銅合金、真鍮箔、真鍮メッシュ(エキスパンドメタル)、発泡真鍮、パンチング真鍮、ニッケル箔、ニッケルメッシュ、耐食性ニッケル、ニッケルメッシュ(エキスパンドメタル)、パンチングニッケル、金属亜鉛、耐食性金属亜鉛、亜鉛箔、亜鉛メッシュ(エキスパンドメタル)、鋼板、パンチング鋼板、銀等が挙げられる。これらは、Ni・Zn・Sn・Pb・Hg・Bi・In・Tl等を更に添加したり、Ni・Zn・Sn・Pb・Hg・Bi・In・Tl等によりメッキしたりしたものであってもよい。
本発明の電極は、後述する本発明の電極の調製方法により得られるものであることが好ましい。中でも、後述する本発明の電極の調製方法の好ましい方法により得られるものであることが特に好ましい。
<本発明の電極の調製方法>
本発明の電極の調製方法を以下に説明する。
本発明の電極は、無機物及び金属水酸化物、並びに、必要に応じてポリマー及びその他の成分を含む組成物を活物質に塗工・圧着・接着・圧電・圧延・延伸・溶融等して活物質及び/又は活物質層を覆うアニオン伝導性材料を形成する工程と、アニオン伝導性材料で覆われていてもよい電極活物質、及び、必要に応じて導電助剤やその他の添加剤を含む電極合剤組成物(正極合剤組成物又は負極合剤組成物を言う。)を集電体に塗工・圧着・接着・圧電・圧延・延伸・溶融等して活物質を含む活物質層を形成する工程とにより調製することができる。両工程の順序は、特に限定されず、アニオン伝導性材料が活物質及び/又は活物質層を覆う態様に応じて、後述するように適宜選択することができる。なお、アニオン伝導性材料を形成するための無機物、金属水酸化物、ポリマー、及び、その他の成分の好ましい種類・配合割合や、活物質層を形成するための活物質、導電助剤、及び、その他の添加剤の好ましい種類・配合割合等は、上述したものと同様である。
(アニオン伝導性材料の形成方法)
本発明のアニオン伝導性材料の形成方法としては、例えば、次のような方法が挙げられる。
上記無機物と、金属水酸化物とを混合する。更に、必要に応じて、上記ポリマー、上記その他の成分を混合する。なお、本発明のアニオン伝導性材料において、無機物及び金属水酸化物が予め混合されたうえで、上記ポリマー、上記その他の成分が混合されたものであることが好ましい。混合には、ミキサー、ブレンダー、ニーダー、ビーズミル、レディミル、ボールミル等を使用することができる。混合の際、水や、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノール、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン等の有機溶剤、又は、水と有機溶剤との混合溶剤を加えてもよい。混合の前後に、粒子を所望の粒子径に揃えるために、ふるいにかける等の操作を行ってもよい。混合は、固体成分に水や有機溶剤等の液体成分を加えて行う湿式法、又は、液体成分を加えずに固体成分のみで行う乾式法のいずれの方法で行ってもよい。混合を湿式法で行った場合は、混合した後、乾燥により水や有機溶剤等の液体成分を除去してもよい。混合は、湿式法と乾式法を組み合わせて行うこともできる。混合の際に加圧・減圧を行ってもよいし、温度をかけてもよい。スプレー・レーザー等を使用してもよいし、メカノケミカル法・ゾル−ゲル法・共沈法等を使用してもよい。
上述した調製方法により、無機物及び金属水酸化物等を含むスラリー又はペースト混合物を得る。
次いで、本発明の電極において、電極を構成する1つの活物質層全体をアニオン伝導性材料で覆う場合は、後述する電極の活物質層を形成する方法で活物質層を予め形成しておき、当該活物質層の、電池を構成した場合に電解質に面することとなる表面に、できる限り膜厚が一定になるように、無機物及び金属水酸化物等を含むスラリー又はペースト混合物を塗工、圧着、接着、圧電、圧延、延伸、溶融等する。例えば、塗工、圧着、接着、圧電、圧延、延伸、溶融等によりスラリー又はペースト混合物を活物質層と一体化したり、スラリー又はペースト混合物の活物質層への塗工及び乾燥を複数回繰り返したりして、アニオン伝導性材料が活物質層を覆うようにすることが好ましい。このように、電極を構成する活物質層が1つだけであり、当該1つの活物質層全体を覆うアニオン伝導性材料の形成工程は、通常は活物質層を集電体上に形成した後におこなう。なお、活物質層が形成されている限り、活物質層を集電体上に配置する前にアニオン伝導性材料の形成工程をおこなっても構わない。層は平面であってもよいし、曲面であってもよい。
また本発明の電極において、活物質粒子毎にアニオン伝導性材料で覆う場合は、無機物及び金属水酸化物等を含むスラリー又はペースト混合物を活物質粒子に反応、塗工、圧着、撹拌、接着、圧電、圧延、延伸、溶融等を行い、活物質粒子を予めアニオン伝導性材料で覆う。例えば、撹拌、圧電、蒸着、スプレー、レーザー、メカノケミカル法、ゾル−ゲル法、共沈法等によりスラリー又はペースト混合物を活物質粒子に接着させたり、スラリー又はペースト混合物の活物質粒子への塗工及び乾燥を複数回繰り返したりして、アニオン伝導性材料で活物質粒子を覆うこともできる。このように得られた、アニオン伝導性材料で覆われた活物質粒子を原料として、後述する電極の活物質層を形成する方法で活物質層を形成する。すなわち、アニオン伝導性材料で覆われた活物質粒子を含む電極合剤組成物を作製し、電極合剤組成物を集電体に対して塗工・圧着・接着・圧電・圧延・延伸・溶融等する。これにより、活物質粒子毎にアニオン伝導性材料に覆われている本発明の電極を作製することができる。なお、活物質粒子毎にアニオン伝導性材料に覆われているものとすることができる限り、その他の方法を採用することができ、例えば、活物質粒子毎にアニオン伝導性材料に覆われていない活物質層を形成した後、無機物及び金属水酸化物等を含むスラリー又はペースト混合物を当該活物質層上に塗工・圧着・接着・圧電・圧延・延伸・溶融・蒸着等してアニオン伝導性材料を得、得られたアニオン伝導性材料を熱・圧力・溶媒等の使用により、活物質層内に導入する手法を採用することも可能である。層は平面であってもよいし、曲面であってもよい。
上記スラリー又はペースト混合物は、集電体の片面に塗工、圧着、接着、圧電、圧延、延伸、溶融等してもよいし、両面・全面に塗工、圧着、接着、圧電、圧延、延伸、溶融等してもよい。塗工・圧着・接着・圧電・圧延・延伸・溶融中、及び/又は、塗工・圧着・接着・圧電・圧延・延伸・溶融後、0〜400℃で乾燥を行う。この時、上記スラリー又はペースト混合物内に含まれる上記ポリマーは、溶融してもよい。乾燥を行う温度としてより好ましくは、15〜380℃である。乾燥は真空乾燥や減圧乾燥で行ってもよい。乾燥時間は、5分間〜48時間であることが好ましい。塗工と乾燥の工程を繰り返し行ってもよい。また、上記スラリー又はペースト混合物の乾燥前後にロールプレス機等により常圧〜20tの圧力で、ロールプレス機等によりプレスを行うことが好ましい。プレスする圧力としてより好ましくは、常圧〜15tの圧力である。プレス時に、10〜400℃の温度をかけてもよい。また、プレス工程は1回であってもよいし、複数回であってもよい。プレスを行う際に、活物質同士、活物質と結着剤、活物質と集電体等の密着性を向上させ、また、活物質量や活物質層の厚み、強度、可とう性等を調節することも可能である。
(電極の活物質層を形成する方法)
上記電極の活物質層の形成方法としては、例えば、次のような方法が挙げられる。
上記活物質層を調製するのに用いられる電極合剤組成物は、アニオン伝導性材料で覆われていてもよい活物質と共に、必要に応じて、導電助剤や、その他の添加剤を混合して調製することができる。混合には、ミキサー、ブレンダー、ニーダー、ビーズミル、レディミル、ボールミル等を使用することができる。混合の際、水や、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノール、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン等の有機溶剤、又は、水と有機溶剤との混合溶剤を加えてもよい。混合の前後に、粒子を所望の粒子径に揃えるために、ふるいにかける等の操作を行ってもよく、造粒を行ってもよい。混合は、固体成分に水や有機溶剤等の液体成分を加えて行う湿式法、又は、液体成分を加えずに固体成分のみで行う乾式法のいずれの方法で行ってもよい。混合を湿式法で行った場合は、混合した後、乾燥により水や有機溶剤等の液体成分を除去してもよい。混合は、湿式法と乾式法を組み合わせて行うこともできる。混合の際に加圧・減圧を行ってもよいし、温度をかけてもよい。上記ポリマーを結着剤や増粘剤等として添加してもよい。
例えば、アニオン伝導性材料で覆われていてもよい活物質と、必要に応じてその他の添加剤とを湿式法で混合した後、乾燥により液体成分を除去して得られる固体の混合物と、導電助剤とを乾式法で混合して、電極合剤組成物を調製してもよい。活物質と、その他の添加剤である周期表の第1族〜第17族に属する元素からなる群より選択される少なくとも1つの元素を有する化合物とを、合金化してもよい。また、電極合剤組成物に電気を流すことにより、亜鉛含有化合物に該元素を導入することも可能である。スプレー・レーザー等を使用してもよいし、メカノケミカル法・ゾル−ゲル法・共沈法等を使用することもできる。
上述した調製方法により、上記電極合剤組成物を、スラリー又はペースト混合物として得る。次に、得られたスラリー又はペースト混合物を、集電体の上に、できる限り膜厚が一定になるように塗工、圧着、接着、圧電、圧延、延伸、溶融等する。アニオン伝導性材料は、電極合剤組成物を塗工、圧着、接着、圧電、圧延、延伸、溶融等した後に、塗工、圧着、接着、圧電、圧延、延伸、溶融等してもよく、電極合剤組成物を塗工、圧着、接着、圧電、圧延、延伸、溶融等するのと同時に塗工、圧着、接着、圧電、圧延、延伸、溶融等してもよい。予め電極合剤組成物上にアニオン伝導性材料を塗工、圧着、接着、圧電、圧延、延伸、溶融等しておいてもよい。これらは、層状であってもよいし、非層状であってもよい。
上記スラリー又はペースト混合物は、集電体の片面に塗工、圧着、接着、圧電、圧延、延伸、溶融等してもよいし、両面・全面に塗工、圧着、接着、圧電、圧延、延伸、溶融等してもよい。塗工・圧着・接着・圧電・圧延・延伸・溶融中、及び/又は、塗工・圧着・接着・圧電・圧延・延伸・溶融後、0〜400℃で乾燥する。乾燥温度としてより好ましくは、15〜380℃である。乾燥は真空乾燥や減圧乾燥で行ってもよい。乾燥時間は、5分間〜48時間であることが好ましい。塗工と乾燥の工程を繰り返し行ってもよい。また、上記スラリー又はペースト混合物の乾燥後にロールプレス機等により常圧〜20tの圧力で、ロールプレス機等によりプレスを行うことが好ましい。プレスする圧力としてより好ましくは、常圧〜15tの圧力である。プレス時に、10〜500℃の温度をかけてもよい。また、プレス工程は1回であってもよいし、複数回であってもよい。プレスを行う際に、活物質同士、活物質と結着剤、活物質と集電体等との密着性を向上させ、また、活物質層の厚み、強度、可とう性等を調節することも可能である。
上記活物質の電極合剤組成物中の配合割合は、電極合剤組成物の全量100質量%に対して、40〜99.9質量%であることが好ましい。活物質の配合量がこのような範囲であると、電極合剤組成物から形成される電極を電池に用いた場合に、より良好な電池性能を発揮する。より好ましくは、45〜99.5質量%であり、更に好ましくは、50〜99質量%である。
なお、上記活物質・導電助剤の電極合剤組成物中の配合割合に関し、負極合剤の調製時における金属亜鉛は、活物質ではなく、導電助剤として考えて計算する。また、負極合剤の調製時における亜鉛含有化合物は、導電助剤ではなく、活物質として考えて計算する。
上述した活物質粒子毎にアニオン伝導性材料で覆う活物質層を形成した後、得られた活物質層を覆うようにアニオン伝導性材料を更に形成する工程を経て、アニオン伝導性材料が活物質層及び活物質粒子の両方を覆う電極を形成することが可能である。これにより、デンドライトによる短絡や電極のシェイプチェンジを抑制する効果が最も顕著なものとなる。
このようにして得られた本発明の電極は、特に二次電池用負極として使用した場合に、電池反応に関与する水酸化物イオン等のアニオンは透過しやすく、かつ金属イオンの拡散を充分に防止して、デンドライトによる短絡や電極のシェイプチェンジを充分に抑制することができ、電池性能を充分に優れたものとした上で、サイクル寿命を長くすることができる。
<本発明の電極前駆体>
本発明は、集電体と、活物質を含む電極合剤組成物とを含んで構成される電極前駆体であって、上記電極前駆体は、混合物を更に含んで構成され、上記混合物は、金属水酸化物と、ランタノイド、及び、周期表の第4族から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する単体及び/又は化合物とを含み、上記化合物は、酸化物、水酸化物、硫酸化合物、及び、リン酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物であり、上記電極合剤組成物が該混合物によって覆われている電極前駆体であってもよい。
また本発明は、金属水酸化物と、ランタノイド、及び、周期表の第4族から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する単体及び/又は化合物とを含む混合物でもある。本発明の混合物は、活物質被覆用のものであることが好ましい。更に、上記混合物と活物質層を形成する電極合剤組成物とが2層になった積層体も本発明の1つである。
上記電極合剤組成物、及び、上記混合物は、それぞれ、粉体、ペースト、スラリー混合物の形態であることが好ましい。また、形状がある程度保持されるものであって、塗工、圧着、接着、圧電、圧延、延伸、溶融等することにより、それぞれ活物質層、アニオン伝導性材料を形成して本発明の電極を作製することができるものであればよい。上記混合物が電極合剤組成物の全てを覆うことが1つの好ましい形態である。
本発明の電極前駆体における構成は、本発明の電極及びその調製方法において上述した対応する構成と同様である。また、本発明の混合物、電極合剤組成物の構成は、それぞれ、上述したスラリー又はペースト混合物、電極合剤組成物の構成と同様である。
<本発明の電池>
本発明は、本発明の電極、電解質、及び、セパレーターを用いて構成される電池でもある。
本発明の電池の形態としては、一次電池;充放電が可能な二次電池(蓄電池);メカニカルチャージ(電極の機械的な交換)の利用;正極や負極とは別の第3極(例えば、充放電中に発生する酸素や水素を除去する極)の利用等、いずれの形態であってもよい。例えば、二次電池(蓄電池)であることが好ましい。
なお、本発明のアニオン伝導性材料は、上記亜鉛を負極に使用する電池に用いることが好ましいが、亜鉛を負極に使用する電池以外にも、リチウム金属等のアルカリ金属負極電池、マグネシウム金属等のアルカリ土類金属負極電池、アルミニウム金属負極電池、リチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池、マグネシウムイオン電池、カルシウムイオン電池、アルミニウムイオン電池、ニッケル・水素電池、ニッケル・金属水素化物電池、ニッケル・カドミウム電池、リチウム・空気電池等の空気電池や、燃料電池等の正負極材料や電解質、セパレーターにも使用することが可能である。
また本発明の電池は、電池反応に関与する水酸化物イオン等のアニオンは透過しやすく、かつ金属イオンの拡散を充分に防止し、デンドライトによる短絡や電極のシェイプチェンジを充分に抑制することができる。
本発明の電池は、正極及び/又は負極として本発明の電極を用いて構成される。中でも、本発明の電池が、少なくとも負極において本発明の電極を用いて構成されることが好ましい。
なお、本発明の電極が負極である場合に、該負極を用いて構成される電池において、正極としては本発明の電池が正極である場合に正極に用いることができる活物質として上述したものを適宜用いることができる。
なお、本発明の電極を負極として用いる限り、空気電池や燃料電池等、正極活物質が酸素であることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。すなわち、本発明の電池の、正極が酸素還元能を有する極であることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
上記セパレーターとは、正極と負極を隔離し、電解液を保持して正極と負極との間のイオン伝導性を確保する部材である。セパレーターとして特に制限はないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、セルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、セロファン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ビニロン、ポリ(メタ)アクリル酸等のマイクロポアを有する高分子量体やそれら共重合体、ゲル化合物、イオン交換膜性重合体やそれら共重合体、環化重合体やそれら共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸塩含有ポリマーやそれら共重合体、スルホン酸塩含有ポリマーやそれら共重合体、第四級アンモニウム塩含有ポリマーやそれら共重合体、第四級ホスホニウム塩ポリマーやそれら共重合体等が挙げられる。セパレーター内に、酸化銀、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、水酸化バリウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、カドミウム、酸化セリウム、酸化銅、酸化鉄、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ニッケル、水酸化ストロンチウム、ホウ酸、ホウ酸カリウム、ホウ酸カルシウム、フッ化カリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、界面活性剤等を含んでいても良い。また、上記セパレーターは、上述した本発明のアニオン伝導性材料と同様の材料を含んで構成されるものであってもよい。
上記セパレーターは、1種でも2種以上でも使用することができ、抵抗が上昇し電池性能が低下しなければ、任意の枚数を使用することができるが、1枚だけのものが好適である。本発明の電池においては、少ない工程数で簡便に作製できる単一層からなる安価な不織布等をセパレーターとして好適に用いることができる。すなわち、本発明の電池においては、電池のセパレーターとして不織布を用いることが1つの好ましい形態である。上記アニオン伝導性材料は、それ自身がセパレーターとしての役割を果たすことも可能である。
本発明の電池において、電解液を使用する場合、電解液は電池の電解液として通常用いられるものであればよく、国際公開第2013/027767号の段落番号〔0056〕〜〔0059〕に記載の電解液を用いることができる。なお、電解液は、循環させてもよいし、させなくてもよい。
また電解液を使用する代わりに、上記亜鉛負極と正極との間に固体電解質(ゲル電解質)が挟持されるものであってもよい。
本発明の電池は、特にアルカリ性電解液に対して耐久性がある点で、アルカリ水溶液含有電解液を使用する電池、例えば、ニッケル・亜鉛(蓄)電池、マンガン・亜鉛(蓄)電池、銀・亜鉛(蓄)電池、亜鉛イオン(蓄)電池、ニッケル・カドミウム(蓄)電池、ニッケル・水素(蓄)電池、燃料電池、空気(蓄)電池等の電極として好適に用いることが可能である。本発明の電池は、中でも、デンドライトを形成しやすいニッケル・亜鉛(蓄)電池、マンガン・亜鉛(蓄)電池、銀・亜鉛(蓄)電池、亜鉛イオン(蓄)電池、燃料電池、空気(蓄)電池として用いることが本発明の効果が顕著になる点で特に好ましい。また、アルカリ水溶液含有電解液以外の電解液を使用する電池、例えば、リチウムイオン電池や鉛蓄電池に対して用いることも可能である。なお、鉛蓄電池として用いた場合は、電極反応を反応系中でより均一に生じさせることができる。
例としてニッケル・亜鉛蓄電池の構成を以下に説明する。
上記ニッケル・亜鉛蓄電池は、上記亜鉛負極、ニッケル正極、正極と負極を隔てるセパレーター、電解質や電解液、それらを含むアッセンブリ、及び、保持容器から成る。
ニッケル極としては、特に制限はなく、ニッケル・水素電池、ニッケル・金属水素化物電池(ニッケル水素吸蔵合金電池)、ニッケル・カドミウム電池等に使用されるニッケル極を使用することも可能である。アッセンブリや保持容器の内壁は、腐食や電池の使用の過程での反応等により劣化しない物質を使用する。アルカリ電池や空気亜鉛電池に使用される容器を使用することも可能である。蓄電池は、単一型、単二型、単三型、単四型、単五型、単六型、R123A型、R−1/3N型等の円筒型;9V型、006P型等の角型;ボタン型;コイン型;ラミネート型;積層型;短冊状に成形した正負極板をプリーツ加工したセパレーターに交互に挟み込んだ型等でもよく、また、密閉型や開放型でもよいし、ベント型でもよい。電池の使用の過程で発生する気体をリザーブする部位を有していてもよい。
本発明の電池の製造工程は、湿式工程でもよいし、乾式工程でもよい。湿式工程は、例えば、正極集電体と負極集電体を、それぞれ、正極材料のペーストあるいはスラリー、負極材料のペーストあるいはスラリーで被覆し、被覆した電極シートを乾燥・圧縮し、カッティングとクリーニングの後、カッティングした電極とセパレーターを層状に重ね、電池アッセンブリを形成する。乾式工程は、例えば、スラリーやペーストの代わりに、電極成分の粉末や顆粒状乾燥混合物を用いる工程で、(1)乾燥状態で負極材料を集電体に塗布、(2)乾燥状態で正極材料を集電体に塗布、(3)(1)と(2)のシートの間にセパレーターを配置して層状構造を作り、電池アッセンブリを形成、(4)(3)の電池アッセンブリを巻きつけ、あるいは、折りたたむ等して三次元構造を形成、等の工程を経るものである。電極は、セパレーター、アニオン伝導性材料、(ゲル)固体電解質等で包んだり、それらでコートしたりしてもよい。正極や負極は電池を構成する容器を兼ねていてもよい。端子を取り付ける工程としては、スポット溶接、超音波溶接、レーザー溶接、はんだ付け、端子と集電体の材料に適したその他任意の導電接合法が選ばれる。電池の製造工程や保存時においては、該電池は(部分)充電状態であってもよいし、放電状態であってもよい。
本発明の電池が蓄電池である場合、蓄電池の充放電レートとしては、0.01C以上、100C以下であることが好ましい。より好ましくは、0.05C以上、80C以下であり、更に好ましくは、0.1C以上、60C以下であり、特に好ましくは、0.1C以上、30C以下である。蓄電池は地球上の寒冷地及び熱帯地の両方で使用できることが好ましく、−50℃〜100℃の温度で使用できることが好ましい。
本発明のアニオン伝導性材料は、上述の構成よりなり、本発明のアニオン伝導性材料を用いて構成される電池において、活物質及び/又は活物質層を覆うことにより、電池反応に関与する水酸化物イオン等のアニオンは透過しやすく、電池性能を充分に優れたものとし、かつ金属イオンの拡散を充分に防止し、充放電サイクルを繰り返した後もデンドライトによる短絡や電極のシェイプチェンジを充分に抑制することができる。
図1は、亜鉛酸イオン透過性を測定するためにアニオン伝導性材料を8M KOH水溶液と、酸化亜鉛を飽和させた8M KOH水溶液との隔壁として用いている様子を示す概略図である。 図2は、ZrO添加量に対する8M KOH水溶液のサンプル中の亜鉛含有量を示すグラフである。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
参考例1、2、実施例1、参考例3
ハイドロタルサイト(和光純薬工業株式会社製)と酸化ジルコニウム(和光純薬工業株式会社製、試薬特級)とを95/5、80/20、60/40、20/80の質量比でそれぞれ混合した。この混合粉末とポリフロンD−210(ポリテトラフルオロエチレン、ダイキン工業株式会社製)と純水とを25/30/40の質量比で混練し、この混合物をロールプレスにてシート状にし、乾燥させた。
このシートを、8M KOH水溶液と、酸化亜鉛を飽和させた8M KOH水溶液との隔壁として用い(図1参照。)、室温で1週間静置後、8M KOH水溶液をサンプリングし、誘導結合プラズマ発光分光分析法(島津ICPE−9000)を用いて亜鉛含有量を測定した。
比較例1
参考例1と同様の作製方法で酸化ジルコニウムを添加せずハイドロタルサイト(和光純薬工業株式会社製)のみでシートを作製した。
比較例2
参考例1と同様の方法で酸化ジルコニウム(和光純薬工業・試薬特級)のみでシートを作製した。
以上の結果を図2に示す。これらの結果より、ハイドロタルサイト/酸化ジルコニウムが60/40の質量比であるとき、亜鉛酸イオン透過を顕著に抑制することが可能であることが見出された。
実施例において、亜鉛酸イオンの透過を高度に抑制できる原因としては、以下の(1)〜(3)が考えられる:(1)ジルコニウムが亜鉛酸イオンと相互作用し、亜鉛酸イオンの拡散を抑制する;(2)ジルコニウムがハイドロタルサイトの粒界に存在し、亜鉛酸イオンの拡散を抑制する;(3)添加物である酸化ジルコニウム及びハイドロタルサイトを加えることで、ポリマーとの混練性が向上し、緻密な膜を形成する。
上記実施例に示したような亜鉛酸イオンの透過を選択的に抑制できるアニオン伝導性材料を用いて電極の活物質及び/又は活物質層を覆えば、亜鉛酸イオンの拡散を抑制することができ、デンドライトやシェイプチェンジによる電極劣化を抑えることができることは明らかである。従って、上記実施例の結果から、本発明の技術的範囲全般において、また、本明細書において開示した種々の形態において本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮することができる。
なお、上記実施例においては、アニオン伝導性材料としてハイドロタルサイト及び酸化ジルコニウムを混合し、更にこの混合粉末とポリテトラフルオロエチレン及び水を混練して作製した膜を使用しているが、アニオン伝導性材料が金属水酸化物と、ランタノイド、及び、周期表の第4族から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する単体及び/又は化合物とを含み、該化合物は、酸化物、水酸化物、硫酸化合物、及び、リン酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物である場合には、(1)上記単体及び/又は化合物が、酸化ジルコニウムと同様に亜鉛酸イオンと相互作用し、亜鉛酸イオンの拡散を抑制する;(2)上記単体及び/又は化合物が、酸化ジルコニウムと同様に金属水酸化物の粒界に存在し、亜鉛酸イオンの拡散を抑制する;(3)添加物として上記単体及び/又は化合物、並びに、金属水酸化物を加えることで、酸化ジルコニウム及びハイドロタルサイトを加える場合と同様に、例えばポリマーとの混練性が向上すること等により、緻密な膜を形成でき、亜鉛酸イオンの拡散を抑制する。以上により、本発明のアニオン伝導性材料は、電池反応に関与する水酸化物イオン等のアニオンは透過しやすく、かつ亜鉛酸イオンの透過を抑制でき、本発明のアニオン伝導性材料を含んで構成される電池において、デンドライトやシェイプチェンジによる電極劣化を抑えることができる。
11:シート(アニオン伝導性材料)
13:O−リング

Claims (7)

  1. 亜鉛負極の、亜鉛含有化合物を含有する活物質及び/又は活物質層を覆うのに用いられるアニオン伝導性材料であって、
    該アニオン伝導性材料は、金属水酸化物と、ランタノイド、及び、周期表の第4族から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する単体及び/又は化合物とを含み、
    該金属水酸化物は、水酸化マグネシウム、及び/又は、ハイドロタルサイトであり、
    該化合物は、酸化物、水酸化物、硫酸化合物、及び、リン酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物であり、
    該金属水酸化物と、該単体及び/又は化合物との質量割合は、70/30〜55/45の範囲内である
    ことを特徴とするアニオン伝導性材料。
  2. 前記アニオン伝導性材料は、更にポリマーを含む
    ことを特徴とする請求項1に記載のアニオン伝導性材料。
  3. 前記ポリマーは、芳香族基、ハロゲン原子、カルボキシル基、カルボン酸塩基、水酸基、アミノ基、及び、エーテル基からなる群より選択される少なくとも1種を含有するか、又は、炭化水素である
    ことを特徴とする請求項に記載のアニオン伝導性材料。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のアニオン伝導性材料と、活物質を含む活物質層と、集電体とを含んで構成される亜鉛負極であって、
    該活物質及び/又は該活物質層が該アニオン伝導性材料によって覆われている
    ことを特徴とする亜鉛負極。
  5. 前記活物質層は、多孔体を含む
    ことを特徴とする請求項4に記載の亜鉛負極。
  6. 請求項4又は5に記載の亜鉛負極、電解質、及び、セパレーターを用いて構成される
    ことを特徴とする電池。
  7. 集電体と、亜鉛含有化合物を含有する活物質を含む亜鉛負極合剤組成物とを含んで構成される亜鉛負極前駆体であって、
    該亜鉛負極前駆体は、混合物を更に含んで構成され、
    該混合物は、金属水酸化物と、ランタノイド、及び、周期表の第4族から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する単体及び/又は化合物とを含み、
    該金属水酸化物は、水酸化マグネシウム、及び/又は、ハイドロタルサイトであり、
    該化合物は、酸化物、水酸化物、硫酸化合物、及び、リン酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物であり、
    該金属水酸化物と、該単体及び/又は化合物との質量割合は、70/30〜55/45の範囲内であり、
    該亜鉛負極合剤組成物が該混合物によって覆われている
    ことを特徴とする亜鉛負極前駆体。
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