JP2015169224A - トロイダル型無段変速機 - Google Patents

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智巳 山口
井上 智博
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Abstract

【課題】動力伝達用の外周歯車が設けられた第2のディスクまたは第2のディスクに結合された動力伝達用の伝達歯車を軸で支持する場合において、軸の耐久性を向上させることができるトロイダル型無段変速機を提供する。【解決手段】入力軸(軸)1に、当該入力軸1と出力側ディスク(第2のディスク)3Aとの間に潤滑油を供給するための油穴1Cが入力軸1の軸方向に対して傾斜して設けられているので、従来に比して入力軸1の軸方向と直交する断面の断面積が大きくなる。このため、入力軸1に設けられた油穴1Cに発生する応力を従来に比して低くすることができるので、入力軸1の耐久性を向上させることができる。【選択図】図1

Description

本発明は、自動車や各種産業機械の変速機などに利用可能なトロイダル型無段変速機に関する。
例えば自動車用変速機として用いるダブルキャビティ式トロイダル型無段変速機は、図2および図3に示すように構成されている。図2に示すように、ケーシング50の内側には入力軸1が回転自在に支持されており、この入力軸1の外周には、2つの入力側ディスク2,2と2つの出力側ディスク3,3とが取り付けられている。また、入力軸1の中間部の外周には出力歯車(伝達歯車)4が回転自在に支持されている。この出力歯車4の中心部に設けられた円筒状のフランジ部4a,4aには、出力側ディスク3,3がスプライン結合によって連結されている。
入力軸1は、図2中左側に位置する入力側ディスク2とカム板(ローディングカム)7との間に設けられたローディングカム式の押圧装置12を介して、駆動軸22により回転駆動されるようになっている。また、出力歯車4は、2つの部材の結合によって構成された仕切壁13を介してケーシング50内に支持されており、これにより、入力軸1の軸線Oを中心に回転できる一方で、軸線O方向の変位が阻止されている。
出力側ディスク3,3は、入力軸1との間に介在されたニードル軸受5,5によって入力軸1の軸線Oを中心に回転自在に支持されている。また、図2中左側の入力側ディスク2は、入力軸1にボールスプライン6を介して支持され、図2中右側の入力側ディスク2は、入力軸1にスプライン結合されており、これら入力側ディスク2は入力軸1とともに回転するようになっている。また、入力側ディスク2,2の内側面(凹面;トラクション面とも言う)2a,2aと出力ディスク3,3の内側面(凹面;トラクション面とも言う)3a,3aとの間には、パワーローラ11(図3参照)が回転自在に挟持されている。
図2中右側に位置する入力側ディスク2の内周面2cには、段差部2bが設けられ、この段差部2bに、入力軸1の外周面1aに設けられた段差部1bが突き当てられるとともに、入力側ディスク2の背面(図2の右面)は、入力軸1の外周面に形成されたネジ部に螺合されたローディングナット9に突き当てられている。これによって、入力側ディスク2の入力軸1に対する軸線O方向の変位が実質的に阻止されている。また、カム板7と入力軸1の鍔部1dとの間には、皿ばね8が設けられており、この皿ばね8は、各ディスク2,2,3,3の凹面2a,2a,3a,3aとパワーローラ11,11の周面11a,11aとの当接部に押圧力(予圧)を付与する。
図3は、図2のA−A線に沿う断面図である。図3に示すように、ケーシング50の内側には、入力軸1に対し捻れの位置にある一対の枢軸14,14を中心として揺動する一対のトラニオン15,15が設けられている。なお、図3においては、入力軸1の図示は省略している。各トラニオン15,15は、支持板部16の長手方向(図3の上下方向)の両端部に、この支持板部16の内側面側に折れ曲がる状態で形成された一対の折れ曲がり壁部20,20を有している。そして、この折れ曲がり壁部20,20によって、各トラニオン15,15には、パワーローラ11を収容するための凹状のポケット部Pが形成される。また、各折れ曲がり壁部20,20の外側面には、各枢軸14,14が互いに同心的に設けられている。
支持板部16の中央部には円孔21が形成され、この円孔21には変位軸23の基端部23aが支持されている。そして、各枢軸14,14を中心として各トラニオン15,15を揺動させることにより、これら各トラニオン15,15の中央部に支持された変位軸23の傾斜角度を調節できるようになっている。また、各トラニオン15,15の内側面から突出する変位軸23の先端部23bの周囲には、各パワーローラ11が回転自在に支持されており、各パワーローラ11,11は、各入力側ディスク2,2および各出力側ディスク3,3の間に挟持されている。なお、各変位軸23,23の基端部23aと先端部23bとは、互いに偏心している。
また、各トラニオン15,15の枢軸14,14はそれぞれ、一対のヨーク23A,23Bに対して揺動自在および軸方向(図3の上下方向)に変位自在に支持されており、各ヨーク23A,23Bにより、トラニオン15,15はその水平方向の移動を規制されている。各ヨーク23A,23Bは鋼等の金属のプレス加工あるいは鍛造加工により矩形状に形成されている。各ヨーク23A,23Bの四隅には円形の支持孔18が4つ設けられており、これら支持孔18にはそれぞれ、トラニオン15の両端部に設けた枢軸14がラジアルニードル軸受30を介して揺動自在に支持されている。また、ヨーク23A,23Bの幅方向(図3の左右方向)の中央部には、円形の係止孔19が設けられており、この係止孔19の内周面は円筒面として、球面ポスト64,68を内嵌している。すなわち、上側のヨーク23Aは、ケーシング50に固定部材52を介して支持されている球面ポスト64によって揺動自在に支持されており、下側のヨーク23Bは、球面ポスト68およびこれを支持する駆動シリンダ31の上側シリンダボディ61によって揺動自在に支持されている。
なお、各トラニオン15,15に設けられた各変位軸23,23は、入力軸1に対し、互いに180度反対側の位置に設けられている。また、これらの各変位軸23,23の先端部23bが基端部23aに対して偏心している方向は、両ディスク2,2,3,3の回転方向に対して同方向(図3で上下逆方向)となっている。また、偏心方向は、入力軸1の配設方向に対して略直交する方向となっている。したがって、各パワーローラ11,11は、入力軸1の長手方向に若干変位できるように支持される。その結果、押圧装置12が発生するスラスト荷重に基づく各構成部材の弾性変形等に起因して、各パワーローラ11,11が入力軸1の軸方向に変位する傾向となった場合でも、各構成部材に無理な力が加わらず、この変位が吸収される。
また、パワーローラ11の外側面とトラニオン15の支持板部16の内側面との間には、パワーローラ11の外側面の側から順に、スラスト転がり軸受であるスラスト玉軸受(スラスト軸受)24と、スラストニードル軸受25とが設けられている。このうち、スラスト玉軸受24は、各パワーローラ11に加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、これら各パワーローラ11の回転を許容するものである。このようなスラスト玉軸受24はそれぞれ、複数個ずつの玉(以下、転動体という)26,26と、これら各転動体26,26を転動自在に保持する円環状の保持器27と、円環状の外輪28とから構成されている。また、各スラスト玉軸受24の内輪軌道は各パワーローラ11の外側面(大端面)に、外輪軌道は各外輪28の内側面にそれぞれ形成されている。
また、スラストニードル軸受25は、トラニオン15の支持板部16の内側面と外輪28の外側面との間に挟持されている。このようなスラストニードル軸受25は、パワーローラ11から各外輪28に加わるスラスト荷重を支承しつつ、これらパワーローラ11および外輪28が各変位軸23の基端部23aを中心として揺動することを許容する。
さらに、各トラニオン15,15の一端部(図3の下端部)にはそれぞれ駆動ロッド(トラニオン軸)29,29が設けられており、各駆動ロッド29,29の中間部外周面に駆動ピストン(油圧ピストン)33,33が固設されている。そして、これら各駆動ピストン33,33はそれぞれ、上側シリンダボディ61と下側シリンダボディ62とによって構成された駆動シリンダ31内に油密に嵌装されている。これら各駆動ピストン33,33と駆動シリンダ31とで、各トラニオン15,15を、これらトラニオン15,15の枢軸14,14の軸方向に変位させる駆動装置32を構成している。
このように構成されたトロイダル型無段変速機の場合、入力軸1の回転は、押圧装置12を介して、各入力側ディスク2,2に伝えられる。そして、これら入力側ディスク2,2の回転が、一対のパワーローラ11,11を介して各出力側ディスク3,3に伝えられ、さらにこれら各出力側ディスク3,3の回転が、出力歯車4より取り出される。
入力軸1と出力歯車4との間の回転速度比を変える場合には、一対の駆動ピストン33,33を互いに逆方向に変位させる。これら各駆動ピストン33,33の変位に伴って、一対のトラニオン15,15が互いに逆方向に変位する。例えば、図3の左側のパワーローラ11が同図の下側に、同図の右側のパワーローラ11が同図の上側にそれぞれ変位する。
その結果、これら各パワーローラ11,11の周面11a,11aと各入力側ディスク2,2および各出力側ディスク3,3の内側面2a,2a,3a,3aとの当接部に作用する接線方向の力の向きが変化する。そして、この力の向きの変化に伴って、各トラニオン15,15が、ヨーク23A,23Bに枢支された枢軸14,14を中心として、互いに逆方向に揺動(傾転)する。
その結果、各パワーローラ11,11の周面11a,11aと各内側面2a,3aとの当接位置が変化し、入力軸1と出力歯車4との間の回転速度比が変化する。また、これら入力軸1と出力歯車4との間で伝達するトルクが変動し、各構成部材の弾性変形量が変化すると、各パワーローラ11,11およびこれら各パワーローラ11,11に付属の外輪28,28が、各変位軸23,23の基端部23a、23aを中心として僅かに回動する。これら各外輪28,28の外側面と各トラニオン15,15を構成する支持板部16の内側面との間には、それぞれスラストニードル軸受25,25が存在するため、前記回動は円滑に行われる。したがって、前述のように各変位軸23,23の傾斜角度を変化させるための力が小さくて済む。
前記のようなトロイダル型無段変速機では、出力側ディスク3とは別体の出力歯車(伝達歯車)4によって動力を伝達するようになっているが、例えば図4に示すように、出力側ディスク3,3を一体的に構成した一体型の出力側ディスク3Aの外周面に、動力伝達用の歯車(外周歯車)4Aを設ける場合もある。
なお、図4に示すトロイダル型無段変速機において、前記図2に示すトロイダル無段変速機と共通構成部分には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
このようなトロイダル型無段変速機は、例えば、ケーシングに収容する前の段階で、前述の入力軸1、入力側ディスク2,2、出力側ディスク3A、外周歯車4A、上下のヨーク23A,23B、トラニオン、パワーローラ11、駆動装置32、油圧式の押圧装置80、固定部材52(アッパープレート)等が一体に組み立てられてバリエータモジュール43とされ、このバリエータモジュール43をケーシング内に収容して取り付けるようになっている。
このようなバリエータモジュール43においては、パワーローラ11を支持するトラニオンは駆動装置32に支持されている。
また、駆動装置32の駆動シリンダ31を構成する上側シリンダボディ61および下側シリンダボディ62に固定される下側の球面ポスト68と、アッパープレート52に固定される上側の球面ポスト64とが上下に一体に接合された柱状ポスト69とされ、バリエータモジュール43において一対の柱状ポスト69がアッパープレート52と、駆動シリンダ31のシリンダボディ(上側シリンダボディ61および下側シリンダボディ62)を接続した状態となっている。
また、柱状ポスト69の上下の中央部分を入力軸1が貫通した状態となっている。この入力軸1に一対の入力側ディスク2,2、出力側ディスク3A、押圧装置80等が支持されている。
この出力側ディスク3Aは、ラジアルニードル軸受35を介して入力軸1に回転自在に支持されている。
また、上述の一対の柱状ポスト69の間に、出力側ディスク3Aが配置され、柱状ポスト69と、出力側ディスク3Aの内周側部分との間にスラスト玉軸受(スラスト軸受)60が配置され、出力側ディスク3Aの入力軸1の軸方向に沿った位置が規制されている。
また、入力軸1の中心部には、軸方向に沿って延在する油穴1Aが設けられ、この油穴1Aの長手方向中央部には、入力軸1の外周面と出力側ディスク3Aの内周面との間に潤滑油を供給するための油穴1B,1Bが入力軸1の軸方向と直交して接続され、当該油穴1B,1Bの先端は入力軸1の外周面に開口している。なお、油穴1B,1Bは平行離間して配置されている。
特開2004−197793号公報 特開2002−48206 特開2013−177909号公報
ところで、図4に示す従来のトロイダル型無段変速機では、押圧装置80によって、一方(図4(a)において右方)の入力側ディスク2が左方に押圧されると、その反力として押圧装置80が右方に押圧される。押圧装置80は入力軸(軸)1に支持されているので、この押圧装置80が右方に押圧されることで、入力軸1は右方に引っ張られる。したがって、入力軸1には大きな引張力が発生する。
一方、出力側ディスク(第2のディスク)3Aは、ラジアルニードル軸受35を介して入力軸(軸)1に支持されているので、出力側ディスク(第2のディスク)3Aの外周面に設けられた動力伝達用の外周歯車4Aにかかるギヤ反力(ラジアル力)は、ラジアルニードル軸受35を介して入力軸(軸)1が受けることになる。
入力軸1の両端部の支持点から離れた位置に出力側ディスク(第2のディスク)3Aがラジアルニードル軸受35を介して支持されており、この部分にギヤ反力(ラジアル力)がかかるので、入力軸(軸)1が大きく撓んで、つまり入力軸(軸)1の曲がりが大きくなって、当該入力軸(軸)1に曲げ応力が負荷するため、出力側ディスク(第2のディスク)3A付近の油穴1Bに、入力軸1が回転するたびに引張応力、圧縮応力が繰り返し発生し、その結果、入力軸(軸)1の耐久性が低下してしまうおそれがある。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、動力伝達用の外周歯車が設けられた第2のディスクを軸受を介して軸で支持する場合において、軸の耐久性を向上させることができるトロイダル型無段変速機を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明のトロイダル型無段変速機は、軸と、この軸に支持された第1のディスクと、前記軸に軸受を介して相対回転可能に支持された第2のディスクと、この第2のディスクの外周面に設けられた動力伝達用の外周歯車と、前記第1のディスクの側面と前記第2のディスクの側面との間に設けられたパワーローラとを備えたトロイダル型無段変速機において、
前記軸に、当該軸と前記第2のディスクの間に潤滑油を供給するための油穴が前記軸の軸方向に対して傾斜して設けられていることを特徴とする。
本発明においては、軸に、当該軸と第2のディスクとの間に潤滑油を供給するための油穴が前記軸の軸方向に対して傾斜して設けられているので、軸の軸方向と直交する断面には、油穴の径方向の断面のみが現れる。
一方、軸の軸方向と直交して設けられた従来の油穴では、軸の軸方向と直交する断面には、油穴の長さ方向の断面が全て現れる。
油穴の径方向の断面は、油穴の長さ方向の断面に比して断面積が小さいので、本発明では従来に比して軸の軸方向と直交する断面の断面積が大きくなる。
応力は荷重/断面積であるので、軸に設けられた油穴に発生する応力を従来に比して低くすることができ、よって、軸の耐久性を向上させることができる。
また、軸の耐久性が向上するので、軸を従来に比して小径にすることができ、この結果、ディスク(第2のディスク、第1のディスク)を小型化することができ設計の自由度を高めることができる。
本発明によれば、軸に、当該軸と第2のディスクとの間に潤滑油を供給するための油穴が軸の軸方向に対して傾斜して設けられているので、軸の耐久性を向上させることができる。
本発明の実施形態に係るトロイダル型無段変速機を示すもので、(a)はその断面図、(b)は油穴を含む入力軸の断面図である。 従来のトロイダル型無段変速機の一例を示す断面図である。 図2におけるA−A線に沿う断面図である。 従来のトロイダル型無段変速機の他の一例を示すもので、(a)はその断面図、(b)は油穴を含む入力軸の断面図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
なお、本実施形態のトロイダル型無段変速機の特徴は、軸に設けられた油穴の構成にあり、その他の構成および作用は上述した図4に示す従来のトロイダル型無段変速機構成および作用と略同様であるため、以下においては、本実施の形態の特徴部分についてのみ言及し、それ以外の部分については、図4と同一の符号を付して簡潔に説明するに留める。
図1に示す本実施の形態のトロイダル型無段変速機は、図4に示す従来のトロイダル型無段変速機と同様に、入力軸(軸)1、入力側ディスク(第1のディスク)2,2、出力側ディスク(第2のディスク)3A、当該出力側ディスク3Aの外周面に設けられた外周歯車4A、上下のヨーク23A,23B、トラニオン、パワーローラ11、駆動装置32、油圧式の押圧装置80、固定部材52(アッパープレート)等が一体に組み立てられてバリエータモジュール43とされ、このバリエータモジュール43を図示しないケーシング内に収容して取り付けるようになっている。
押圧装置80は、入力軸1の右端部に結合される第1のシリンダ部81と、入力側ディスク2に設けられた第2のシリンダ部82と、環状の第1のピストン部(油圧ピストン)83と、環状の第2のピストン部(油圧ピストン)84とを備えている。
第1のシリンダ部81の内面と、第1のピストン部83と、入力軸1の外周面の一部とによって囲まれた空間は、第1の油圧室85を構成している。
また、第2のシリンダ部82の内周面と、第2のピストン部84と、入力側ディスク2の背面2dと、入力軸1の外周面の一部とによって囲まれた空間は、第2の油圧室(油室)90を構成している。
また、第1の油圧室85を一部利用して、第1のピストン部83と第1のシリンダ部81との間には、予圧を付与するための皿バネ94が介挿され、第1のシリンダ部81に対して、入力軸1に沿って移動自在な第1のピストン部83を入力側ディスク2に向かって付勢している。
このような押圧装置80では、前記第1の油圧室85と第2の油圧室90とに、所定圧の圧油を送り込む。そして、これら両油圧室85,90内に、これら両油圧室85,90の軸方向寸法が増大する方向の力を惹起させる。
第1の油圧室85に圧油が送り込まれると、第1のピストン部83が図1中左側(入力側ディスク2側)に押圧され、これによって、入力側ディスク2の背面に一体に形成された第2のシリンダ部82を介して当該入力側ディスク2が左側に押圧される。
一方、第2の油圧室90に圧油が送り込まれると、第2のピストン部84は図1中右側への移動が規制されているので、入力側ディスク2が左側に押圧される。
このように両油圧室85,90で発生した力は、何れも、入力側ディスク2を出力側ディスク3A側に向け押圧するとともに、入力軸1を基端側(図1の右側)に引っ張り、他方の入力側ディスク2を出力側ディスク3Aに押圧する方向の力として加わり、その結果入力軸(軸)1には大きな引張力が発生する。
一方、出力側ディスク(第2のディスク)3Aは、ラジアルニードル軸受35を介して入力軸(軸)1に支持されているので、出力側ディスク3Aの外周面に設けられた動力伝達用の外周歯車4Aにかかるギヤ反力(ラジアル力)は、ラジアルニードル軸受35を介して入力軸(軸)1が受けることになる。
例えば、CVT(Continuously Variable Transmission)やIVT(Infinitely Variable Transmission)に本実施の形態に係るトロイダル型無段変速機を使用する場合は、外周歯車4Aに、CVTの前後進切替機構やIVTの遊星歯車機構からギヤ反力がかかり、このギヤ反力をラジアルニードル軸受35を介して入力軸(軸)1が受けることになる。特にIVTでは、トルクが大きいので、入力軸1には、大きな軸力とギヤ荷重により大きな曲げが負荷する。
したがって、入力軸1が撓み、出力側ディスク(第2のディスク)3A付近の油穴に入力軸1が回転するたびに引張応力、圧縮応力が繰り返し発生し、入力軸1の耐久性が懸念される。入力軸1の耐久性を向上させるには油穴に発生する応力を低くすることが有効である。
そこで、本実施の形態では、入力軸(軸)1に、当該入力軸1と出力側ディスク(第2のディスク)3Aとの間に潤滑油を供給するための一対の油穴1C,1Cが入力軸1の軸方向に対して傾斜して設けられている。
油穴1Cは、入力軸1の中心部に軸方向に沿って延在する油穴1Aの長手方向中央部に入力軸1の軸方向に対して傾斜して接続され、当該油穴1Cの先端は入力軸1の外周面に開口している。
一対の油穴1C,1Cは、入力軸1の中心部の油穴1Aから入力軸1の外周面に向かうにしたがって、互いに離間するように傾斜している。
また、一対の油穴1C,1Cは左右に離間して設けられている前記ラジアルニードル軸受35,35間において入力軸1の内部に設けられており、一方の油穴1Cの先端は一方のラジアルニードル軸受35の近傍に開口し、他方の油穴1Cの先端は他方のラジアルニードル軸受35の近傍に開口している。したがって、油穴1C,1Cから吐出する潤滑油は、ラジアルニードル軸受35,35間に位置する入力軸1の外周面と出力側ディスク3Aの内周面との間に供給されるとともに、当該間からラジアルニードル軸受35,35に供給されるようになっている。
なお、本実施の形態では、入力軸1に2つの油穴1C,1Cを設けたが、油穴1Cは1つ設けてもよいし、3つ以上設けてもよい。
本実施の形態によれば、入力軸(軸)1に、当該入力軸1と出力側ディスク(第2のディスク)3Aの間に潤滑油を供給するための油穴1C,1Cが入力軸1の軸方向に対して傾斜して設けられているので、入力軸1の軸方向と直交する断面には、図1(b)に示すように、油穴1Cの径方向の断面のみが現れる。
一方、入力軸1の軸方向と直交して設けられた従来の油穴1Bでは、入力軸1の軸方向と直交する断面には、図4(b)に示すように、油穴1Bの長さ方向の断面が全て現れる。
油穴1Cの径方向の断面は、油穴1Bの長さ方向の断面に比して断面積が小さいので、本実施の形態では従来に比して入力軸1の軸方向と直交する断面の断面積が大きくなる。このため、入力軸1に設けられた油穴1Cに発生する応力を従来に比して低くすることができるので、入力軸1の耐久性を向上させることができる。
また、入力軸1の耐久性が向上するので、入力軸1を従来に比して小径にすることができ、この結果、ディスク(出力側ディスク3A、入力側ディスク2)を小型化でき設計の自由度を高めることができる。
なお、本実施の形態では、動力伝達用の外周歯車4Aが設けられた出力側ディスク(第2のディスク)3Aを入力軸(軸)1で支持する場合を例にとって説明したが、トロイダル型無段変速機では、入力側ディスクと出力側ディスクの入出力関係を逆にする場合もある。したがって、本発明は、入力側ディスク2と出力側ディスク3とを入れ替えた場合にも適用できる。
本発明は、シングルキャビティ式やダブルキャビティ式などの様々なハーフトロイダル型無段変速機のほか、フルトロイダル型無段変速機にも適用することができる。
1 入力軸(軸)
1C 油穴
2 入力側ディスク(第1のディスク)
3A 出力側ディスク(第2のディスク)
4A 外周歯車
11 パワーローラ

Claims (1)

  1. 軸と、この軸に支持された第1のディスクと、前記軸に軸受を介して相対回転可能に支持された第2のディスクと、この第2のディスクの外周面に設けられた動力伝達用の外周歯車と、前記第1のディスクの側面と前記第2のディスクの側面との間に設けられたパワーローラとを備えたトロイダル型無段変速機において、
    前記軸に、当該軸と前記第2のディスクの間に潤滑油を供給するための油穴が前記軸の軸方向に対して傾斜して設けられていることを特徴とするトロイダル型無段変速機。
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JP2002130412A (ja) * 2000-10-25 2002-05-09 Nissan Motor Co Ltd トロイダル型無段変速機
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