本発明は、自動車やポンプ等の各種産業機械の変速機などに利用可能なトロイダル型無段変速機に関する。
例えば自動車用変速機として用いるダブルキャビティ式トロイダル型無段変速機は、図6および図7に示すように構成されている。図6に示すように、ケーシング50の内側には入力軸1が回転自在に支持されており、この入力軸1の外周には、2つの入力側ディスク2,2と2つの出力側ディスク3,3とが取り付けられている。また、入力軸1の中間部の外周には出力歯車(伝達歯車)4が回転自在に支持されている。この出力歯車4の中心部に設けられた円筒状のフランジ部4a,4aには、出力側ディスク3,3がスプライン結合によって連結されている。
入力軸1は、図6中左側に位置する入力側ディスク2とカム板(ローディングカム)7との間に設けられたローディングカム式の押圧装置12を介して、駆動軸22により回転駆動されるようになっている。また、出力歯車4は、2つの部材の結合によって構成された仕切壁13を介してケーシング50内に支持されており、これにより、入力軸1の軸線Oを中心に回転できる一方で、軸線O方向の変位が阻止されている。
出力側ディスク3,3は、入力軸1との間に介在されたニードル軸受5,5によって入力軸1の軸線Oを中心に回転自在に支持されている。また、図6中左側の入力側ディスク2は、入力軸1にボールスプライン6を介して支持され、図6中右側の入力側ディスク2は、入力軸1にスプライン結合されており、これら入力側ディスク2は入力軸1とともに回転するようになっている。また、入力側ディスク2,2の内側面(凹面;トラクション面とも言う)2a,2aと出力ディスク3,3の内側面(凹面;トラクション面とも言う)3a,3aとの間には、パワーローラ11(図7参照)が回転自在に挟持されている。
図6中右側に位置する入力側ディスク2の内周面2cには、段差部2bが設けられ、この段差部2bに、入力軸1の外周面1aに設けられた段差部1bが突き当てられるとともに、入力側ディスク2の背面(図6の右面)は、入力軸1の外周面に形成されたネジ部に螺合されたローディングナット9に突き当てられている。これによって、入力側ディスク2の入力軸1に対する軸線O方向の変位が実質的に阻止されている。また、カム板7と入力軸1の鍔部1dとの間には、皿ばね8が設けられており、この皿ばね8は、各ディスク2,2,3,3の凹面2a,2a,3a,3aとパワーローラ11,11の周面11a,11aとの当接部に押圧力(予圧)を付与する。
図7は、図6のA−A線に沿う断面図である。図7に示すように、ケーシング50の内側には、入力軸1に対し捻れの位置にある一対の枢軸14,14を中心として揺動する一対のトラニオン15,15が設けられている。なお、図7においては、入力軸1の図示は省略している。各トラニオン15,15は、支持板部16の長手方向(図7の上下方向)の両端部に、この支持板部16の内側面側に折れ曲がる状態で形成された一対の折れ曲がり壁部20,20を有している。そして、この折れ曲がり壁部20,20によって、各トラニオン15,15には、パワーローラ11を収容するための凹状のポケット部Pが形成される。また、各折れ曲がり壁部20,20の外側面には、各枢軸14,14が互いに同心的に設けられている。
支持板部16の中央部には円孔21が形成され、この円孔21には変位軸23の基端部23aが支持されている。そして、各枢軸14,14を中心として各トラニオン15,15を揺動させることにより、これら各トラニオン15,15の中央部に支持された変位軸23の傾斜角度を調節できるようになっている。また、各トラニオン15,15の内側面から突出する変位軸23の先端部23bの周囲には、各パワーローラ11が回転自在に支持されており、各パワーローラ11,11は、各入力側ディスク2,2および各出力側ディスク3,3の間に挟持されている。なお、各変位軸23,23の基端部23aと先端部23bとは、互いに偏心している。
また、各トラニオン15,15の枢軸14,14はそれぞれ、一対のヨーク23A,23Bに対して揺動自在および軸方向(図7の上下方向)に変位自在に支持されており、各ヨーク23A,23Bにより、トラニオン15,15はその水平方向の移動を規制されている。各ヨーク23A,23Bは鋼等の金属のプレス加工あるいは鍛造加工により矩形状に形成されている。各ヨーク23A,23Bの四隅には円形の支持孔18が4つ設けられており、これら支持孔18にはそれぞれ、トラニオン15の両端部に設けた枢軸14がラジアルニードル軸受30を介して揺動自在に支持されている。また、ヨーク23A,23Bの幅方向(図7の左右方向)の中央部には、円形の係止孔19が設けられており、この係止孔19の内周面は円筒面として、球面ポスト64,68を内嵌している。すなわち、上側のヨーク23Aは、ケーシング50に固定部材52を介して支持されている球面ポスト64によって揺動自在に支持されており、下側のヨーク23Bは、球面ポスト68およびこれを支持する駆動シリンダ31の上側シリンダボディ61によって揺動自在に支持されている。
なお、各トラニオン15,15に設けられた各変位軸23,23は、入力軸1に対し、互いに180度反対側の位置に設けられている。また、これらの各変位軸23,23の先端部23bが基端部23aに対して偏心している方向は、両ディスク2,2,3,3の回転方向に対して同方向(図7で上下逆方向)となっている。また、偏心方向は、入力軸1の配設方向に対して略直交する方向となっている。したがって、各パワーローラ11,11は、入力軸1の長手方向に若干変位できるように支持される。その結果、押圧装置12が発生するスラスト荷重に基づく各構成部材の弾性変形等に起因して、各パワーローラ11,11が入力軸1の軸方向に変位する傾向となった場合でも、各構成部材に無理な力が加わらず、この変位が吸収される。
また、パワーローラ11の外側面とトラニオン15の支持板部16の内側面との間には、パワーローラ11の外側面の側から順に、スラスト転がり軸受であるスラスト玉軸受(スラスト軸受)24と、スラストニードル軸受25とが設けられている。このうち、スラスト玉軸受24は、各パワーローラ11に加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、これら各パワーローラ11の回転を許容するものである。このようなスラスト玉軸受24はそれぞれ、複数個ずつの玉(以下、転動体という)26,26と、これら各転動体26,26を転動自在に保持する円環状の保持器27と、円環状の外輪28とから構成されている。また、各スラスト玉軸受24の内輪軌道は各パワーローラ11の外側面(大端面)に、外輪軌道は各外輪28の内側面にそれぞれ形成されている。
また、スラストニードル軸受25は、トラニオン15の支持板部16の内側面と外輪28の外側面との間に挟持されている。このようなスラストニードル軸受25は、パワーローラ11から各外輪28に加わるスラスト荷重を支承しつつ、これらパワーローラ11および外輪28が各変位軸23の基端部23aを中心として揺動することを許容する。
さらに、各トラニオン15,15の一端部(図7の下端部)にはそれぞれ駆動ロッド(トラニオン軸)29,29が設けられており、各駆動ロッド29,29の中間部外周面に駆動ピストン(油圧ピストン)33,33が固設されている。そして、これら各駆動ピストン33,33はそれぞれ、上側シリンダボディ61と下側シリンダボディ62とによって構成された駆動シリンダ31内に油密に嵌装されている。これら各駆動ピストン33,33と駆動シリンダ31とで、各トラニオン15,15を、これらトラニオン15,15の枢軸14,14の軸方向に変位させる駆動装置32を構成している。
このように構成されたトロイダル型無段変速機の場合、入力軸1の回転は、押圧装置12を介して、各入力側ディスク2,2に伝えられる。そして、これら入力側ディスク2,2の回転が、一対のパワーローラ11,11を介して各出力側ディスク3,3に伝えられ、さらにこれら各出力側ディスク3,3の回転が、出力歯車4より取り出される。
入力軸1と出力歯車4との間の回転速度比を変える場合には、一対の駆動ピストン33,33を互いに逆方向に変位させる。これら各駆動ピストン33,33の変位に伴って、一対のトラニオン15,15が互いに逆方向に変位する。例えば、図7の左側のパワーローラ11が同図の下側に、同図の右側のパワーローラ11が同図の上側にそれぞれ変位する。
その結果、これら各パワーローラ11,11の周面11a,11aと各入力側ディスク2,2および各出力側ディスク3,3の内側面2a,2a,3a,3aとの当接部に作用する接線方向の力の向きが変化する。そして、この力の向きの変化に伴って、各トラニオン15,15が、ヨーク23A,23Bに枢支された枢軸14,14(傾転中心O2)を中心として、互いに逆方向に揺動(傾転)する。
その結果、各パワーローラ11,11の周面11a,11aと各内側面2a,3aとの当接位置が変化し、入力軸1と出力歯車4との間の回転速度比が変化する。また、これら入力軸1と出力歯車4との間で伝達するトルクが変動し、各構成部材の弾性変形量が変化すると、各パワーローラ11,11およびこれら各パワーローラ11,11に付属の外輪28,28が、各変位軸23,23の基端部23a,23aを中心として僅かに回動する。これら各外輪28,28の外側面と各トラニオン15,15を構成する支持板部16の内側面との間には、それぞれスラストニードル軸受25,25が存在するため、前記回動は円滑に行われる。したがって、前述のように各変位軸23,23の傾斜角度を変化させるための力が小さくて済む。
ところで、このようなトロイダル型無段変速機では、図6および図7に示す出力側ディスク3,3を一体的に構成した一体型の出力側ディスク3Aの外周面に動力伝達用の歯車(ヘリカルギア)4Aが設けられた、図8に示すような構造を成すものもある(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
この場合、出力側ディスク3Aは、ラジアルニードル軸受35を介して入力軸1に相対回転自在に支持される。また、一対の柱状ポスト69,69間に出力側ディスク3Aが配置され、この出力側ディスク3Aの軸方向両端には、出力側ディスク3Aを軸方向に位置決めするとともに軸回りに回転可能に支持するスラスト軸受60が設けられている。すなわち、柱状ポスト69と出力側ディスク3Aの小径側端部3aとの間にスラスト軸受60が配置され、それにより、出力側ディスク3Aの入力軸1の軸方向に沿った位置が規制されるとともに、出力側ディスク3Aの軸回りの回転を許容している。
特開2014−81019号公報
特開2014−181722号公報
出力側ディスク3Aの外周のヘリカルギア4Aを用いて動力を取り出す図8に示されるトロイダル型無段変速機では、ギア反力Fを軸受で受ける必要がある。具体的には、出力側ディスク3Aの内径側に配置されるラジアルニードル軸受35でラジアル力(径方向の力)を受け、出力側ディスク3Aの小径側端部3aに隣接するスラスト軸受60でアキシャル力(軸方向の力)を受けるようになっている。
しかしながら、出力側ディスク3Aの内径側に配置されるラジアルニードル軸受35には隙間が存在するため、出力側ディスク3Aはヘリカルギア4Aによるモーメントによって図8に破線で示すように傾く。そのため、ポスト69,69間に隙間がないと、スラスト軸受60に過大なラジアル力が作用する虞がある。
このような問題に関して、従来技術は何ら対策を講じてこなかった。例えば、前述した特許文献1は、出力側ディスク3Aの位置決めの寸法測定を排除するべくポスト穴を長穴とする構造を開示しているものの、ポスト69,69間に隙間がないことに起因してスラスト軸受60に過大なラジアル力が作用することに関する前述した問題の解決策を何ら見出していない。
一方、特許文献2は、出力側ディスク3Aの小径側端部3aに隣接するスラスト軸受60に偏芯荷重が作用することを防止するためにポスト69の接触部に軸直交方向の隙間を設けているが、特許文献1と同様、ポスト69,69間に隙間がないことに起因してスラスト軸受60に過大なラジアル力が作用することに関する問題の解決策を何ら見出していない。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、ディスクが傾いてもスラスト軸受に過大なラジアル力が作用することを防止できるトロイダル型無段変速機を提供することを目的としている。
前記目的を達成するために、本発明は、それぞれの内側面同士を互いに対向させた状態で互いに同心的にかつ回転自在に設けられた第1ディスクおよび第2ディスクと、これら両ディスク間に挟持されるパワーローラとを備え、前記第2ディスクは、軸方向外側に位置する一対の前記第1ディスク間に配置されて、その外周面に動力伝達用の歯車を有するとともに、一対の柱状ポスト間でラジアルニードル軸受により回転自在に支持され、前記柱状ポストと前記第2ディスクの軸方向両端にある小径側端部との間には、前記第2ディスクを軸方向に位置決めするとともに軸回りに回転可能に支持するスラスト軸受が設けられるトロイダル型無段変速機において、前記一対の柱状ポスト間には、前記第2ディスクの軸方向の一方側において生じ得る前記小径側端部の軸方向変位の変位量の2倍以上に相当する軸方向隙間が設けられることを特徴とする。
このような構成によれば、第2ディスクの軸方向の一方側において生じ得る小径側端部の軸方向変位の変位量(S)の2倍以上に相当する軸方向隙間(≧2S)、すなわち、第2ディスクの軸方向両側で生じ得る小径側端部の軸方向変位量の合計以上に相当する軸方向隙間(≧2S)が一対の柱状ポスト間に設けられるため、例えばラジアルニードル軸受に存在する隙間に起因して第2ディスクがヘリカルギアによるモーメントによって傾いた場合でも、スラスト軸受に過大なラジアル力が作用することが防止される。これにより、スラスト軸受を小型化できるだけでなく、長寿命化することができる。
本発明の前記構成において、前記第2ディスクの前記小径側端部の軸方向変位は、例えば、前記ラジアルニードル軸受に存在する隙間に起因する前記第2ディスクの傾動によってもたらされる。
本発明によれば、ディスクの軸方向の一方側において生じ得る小径側端部の軸方向変位の変位量の2倍以上に相当する軸方向隙間が一対の柱状ポスト間に設けられるため、ディスクが傾いてもスラスト軸受に過大なラジアル力が作用することを防止できる。
本発明の実施の形態に係るトロイダル型無段変速機の側断面図である。
図1のトロイダル型無段変速機の平断面図である。
出力側ディスクの内径側に配置されるラジアルニードル軸受に存在する隙間を示す出力側ディスクの概略断面図である。
ラジアルニードル軸受に存在する隙間に起因する出力側ディスクの傾動を示す出力側ディスクの概略断面図である。
柱状ポストと出力側ディスクの小径側端部との間に設けられる軸方向隙間の例を示す概略断面図である。
従来のトロイダル型無段変速機の一例を示す断面図である。
図6におけるA−A線に沿う断面図である。従来のトロイダル型無段変速機の要部構成を示す模式図である。
従来のトロイダル型無段変速機の他の例を示す断面図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
ここで、図1は、本実施の形態に係るトロイダル型無段変速機の側断面図、図2は、図1のトロイダル型無段変速機の平断面図であり、これらの図において、図6および図7に示す従来のトロイダル型無段変速機と共通する部分については、同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
本実施の形態のトロイダル型無段変速機では、図6および図7に示す従来の出力側ディスク3,3を一体的に構成した一体型の出力側ディスク(第2ディスク)3Aの外周面に、動力伝達用の歯車(ヘリカルギア)4Aが設けられるとともに、ケーシングに収容する前の段階で、入力軸1、所定の曲率の内側面2a,2aを有する入力側ディスク(第1ディスク)2,2、所定の曲率の内側面3a,3aを有する出力側ディスク3A、外周歯車4A、上下のヨーク23A,23B、トラニオン15、パワーローラ11、駆動装置32、油圧式のローディング機構(以下、押圧装置という)80、固定部材52(アッパープレート)等が一体に組み立てられてバリエータ43とされ、このバリエータ43をケーシング内に収容して取り付けるようになっている。
このようなバリエータ43においては、駆動装置32の駆動シリンダ31を構成する上側シリンダボディ61および下側シリンダボディ62に固定される下側の球面ポスト68と、アッパープレート52に固定される上側の球面ポスト64とが上下に一体に接合された柱状ポスト(支持部材)69とされ、バリエータ43において一対の柱状ポスト69がアッパープレート52と、駆動シリンダ31のシリンダボディ(上側シリンダボディ61および下側シリンダボディ62)を接続した状態となっている。
また、柱状ポスト69の上下の中央部分を入力軸1が貫通した状態となっている。この入力軸1に一対の入力側ディスク2,2、出力側ディスク3A、押圧装置80等が支持されている。
出力側ディスク3Aは、ラジアルニードル軸受35を介して入力軸1に相対回転自在に支持されている。また、一対の柱状ポスト69,69間に出力側ディスク3Aが配置され、この出力側ディスク3Aの軸方向両端には、出力側ディスク3Aを軸方向に位置決めするとともに軸回りに回転可能に支持するスラスト軸受60が設けられている。すなわち、柱状ポスト69と出力側ディスク3Aの小径側端部との間に予圧バネ39を伴うスラスト軸受60が配置され、それにより、出力側ディスク3Aの入力軸1の軸方向に沿った位置が規制されるとともに、出力側ディスク3Aの軸回りの回転を許容している。
また、図2に示すように、パワーローラ11のスラスト荷重を受けるスラスト玉軸受24の外輪28には、これと一体に支持軸23cが形成される。また、トラニオン15の支持板部16の内側面が枢軸14の軸方向に軸方向を沿わせた凸状の円筒面の一部となっている。また、支持板部16の内側面に対向する外輪28の背面側には、支持板部16の突状の円筒面に当接する凹状の円筒面となっており、支持板部16に対して外輪28とともにパワーローラ11が首を振るように揺動することにより、パワーローラ11が、入力軸1の略軸方向に沿って変位可能となっている。
押圧装置80は、図中の左側の入力側ディスク2(無論、右側の入力側ディスク2であってもよい)の背面側(左側)に配置され、入力軸1の左端部に結合される第1シリンダ部81と、入力側ディスク2に一体的に設けられた第2シリンダ部82と、環状の第1ピストン部83と、環状の第2ピストン部84とを備えている。
第1シリンダ部81の内面と、第1ピストン部83と、入力軸1の外周面の一部とによって囲まれた空間は、第1油圧室85を構成している。また、第2シリンダ部82の内周面と、第2ピストン部84と、入力側ディスク2の背面と、入力軸1の外周面の一部とによって囲まれた空間は、第2油圧室90を構成している。
また、第1油圧室85を一部利用して、第1ピストン部83と第1シリンダ部81との間には、予圧を付与するための皿ばね94が介挿され、この皿ばね94は、第1シリンダ部81に対し、入力軸1に沿って移動自在な第1ピストン部83を入力側ディスク2へ向けて付勢している。
このような押圧装置80では、第1油圧室85と第2油圧室90とに対して所定圧の圧油が送り込まれる。そして、これら両油圧室85,90内に、これら両油圧室85,90の軸方向寸法が増大する方向の力を惹起させる。
第1油圧室85に圧油が送り込まれると、第1ピストン部83が図1中右側(入力側ディスク2側)に押圧され、これによって、入力側ディスク2の背面に一体に形成された第2シリンダ部82を介して当該入力側ディスク2が右側に押圧される。同時に、第1シリンダ部81が左側に押圧され、この第1シリンダ部81と一体を成す入力軸1が左側へと移動することで、右側に位置し且つ入力軸1に軸方向外側(右側)への移動が規制されて設けられた入力側ディスク2が出力側ディスク3Aに向かって押圧される。
一方、第2油圧室90に圧油が送り込まれると、第2ピストン部84は図1中の左側への移動が規制されているので、入力側ディスク2が右側に押圧される。このように両油圧室85,90で発生した力は、何れも、入力側ディスク2を出力側ディスク3A側に向け押圧する。
このようにして、パワーローラ11のトラクション部が入出力側ディスク2,3Aの双方に転接し、入力側ディスク2の回転駆動力を所望の減速比で出力側ディスク3Aに伝達する。
ところで、前述したように、出力側ディスク3Aの外周のヘリカルギア4Aを用いて動力を取り出すこのようなトロイダル型無段変速機では、ギア反力F(図8参照)を軸受で受ける必要がある。具体的には、出力側ディスク3Aの内径側に配置されるラジアルニードル軸受35でラジアル力(径方向の力)を受け、出力側ディスク3Aの小径側端部3aに隣接するスラスト軸受60でアキシャル力(軸方向の力)を受けるようになっている。
しかしながら、出力側ディスク3Aの内径側に配置されるラジアルニードル軸受35には、図3に示すように隙間Cが存在するため、出力側ディスク3Aは、ヘリカルギア4Aによるモーメントにより、図4に二点鎖線で示す状態から図4に実線で示す状態へと傾く。そのため、この傾き量を吸収できる隙間がポスト69,69間に存在しないと、スラスト軸受60に過大なラジアル力が作用してスラスト軸受60が破損する虞がある。
そこで、本実施形態では、出力側ディスク3Aの軸方向の一方側において生じ得る小径側端部3aの軸方向変位の変位量S(図4参照)の2倍以上に相当する軸方向隙間(≧2S)、すなわち、出力側ディスク3Aの軸方向両側で生じ得る小径側端部3aの軸方向変位量の合計以上に相当する軸方向隙間(≧2S)を一対の柱状ポスト69,69間に設けるようにしている。例えば、具体的には、出力側ディスク3Aの両側のそれぞれにおいて、スラスト軸受60と柱状ポスト69との間にS以上の隙間100を設ける。そのため、たとえラジアルニードル軸受35に存在する隙間Cに起因して出力側ディスク3Aがヘリカルギア4Aによるモーメントによって傾いた場合でも、スラスト軸受60に過大なラジアル力が作用することが防止される。これにより、スラスト軸受60を小型化できるだけでなく、長寿命化することができる。
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、トロイダル型無段変速機では、入力側ディスクと出力側ディスクとの入出力関係を逆にする場合もある。したがって、本発明は、入力側ディスク2と出力側ディスク3Aとを入れ替えた場合にも適用できる。
また、本発明は、ダブルキャビティ式ハーフトロイダル型無段変速機、フルトロイダル型無段変速機等のトロイダル型無段変速機に適用することができる。
2 入力側ディスク(第1ディスク)
3A 出力側ディスク(第2ディスク)
3a 小径側端部
11 パワーローラ
35 ラジアルニードル軸受
60 スラスト軸受
69 柱状ポスト
100 隙間