織機に備えられる耳組装置であって、耳糸が挿通される一対のヤーンガイドを回転軸線周りに回転(公転)運動させて織布の織端に絡み耳を形成する耳組装置として、特許文献1〜3に開示されたものがある。なお、特許文献1に開示された耳組装置は、所謂プロペラ形式の耳組装置であり、特許文献2に開示された耳組装置は、所謂ディスク形式の耳組装置である。また、特許文献3に記載された耳組装置は、遊星歯車式の耳組装置である。そして、これらの耳組装置においては、一対のヤーンガイドが、前記回転軸線を挟んで対称的に配置されると共に、その回転軸線周りを回転(公転)するように駆動されることにより、一対の耳糸を互いに撚り合わせつつ、緯糸が挿入される開口をその一対の耳糸により形成すべく、耳糸に開口運動を与えるものとなっている。また、特許文献1〜3に開示された耳組装置では、一対のヤーンガイドに回転運動を与える駆動手段は専用の駆動モータとなっており、製織中においては、その駆動モータが織機の主軸と同期駆動され、一対のヤーンガイドが予め設定された駆動態様で織機の主軸と同期して回転駆動されるものとなっている。
また、織機においては、特許文献3に開示されているように、停止状態からの起動時において、起動後から直ぐに緯入れを伴った製織が開始されるのではなく、起動時からの予め定められた期間に亘って空打ち工程を実行し、その後に製織を開始する所謂空打ち起動(空打ちスタート)が行われる場合がある。これは、起動直後の筬打ち力不足による織段(停止段)の発生を防止するためのものである。
より詳しくは、一般的な織機においては、筬打ち装置は織機の主軸と同期して駆動されるものとなっており、その筬打ち時における筬打ち力は主軸の回転数に比例したものとなっているが、織機の起動直後では、主軸の回転数は定常運転時の回転数に達しておらずに低い回転数となっているため、筬打ち力も定常運転時と比べて低い状態(筬打ち力が不足した状態)となっている。そのため、織機の起動から直ぐに製織を開始した場合、前記のような筬打ち力不足に起因し、製織された織布に織段が発生する場合がある。そこで、起動直後を含む予め設定された期間に亘って前記空打ち工程を実行し、筬打ち力が回復した以降に製織を開始することにより、前記のような織段の発生を防止しようとするものである。
ところで、前記のような空打ち起動を行う織機においては、前記した空打ち工程の間に、停止直前に正常に織り込まれた緯糸(以下、「最終緯糸」と言う。)に緩みが発生し、製織される織物に欠点が生じるといった問題が発生する場合がある。より詳しくは、以下の通りである。
例えば、平織り組織を形成する開口パターンに従って綜絖枠が駆動されて製織が行われる織機について、その織機が停止した際の起動において前記の空打ち起動が行われると共に、その空打ち工程において4回の空打ちが行われるものとする。また、その起動時における主軸の回転角度(クランク角度)については、クランク角度300°に設定されている、すなわち、最終緯糸の緯入れが行われた織機サイクルにおけるクランク角度300°から織機が起動されるものとする。なお、ここで言う織機サイクルについて、定常運転時においては、連続的に回転する主軸のクランク角度0°〜360°の間に緯糸を織布に織り込む一連の動作(緯入れ→筬打ち)が実行され、その一連の動作が繰り返されて製織が行われるものであるため、それに基づき、クランク角度0°〜360°を1単位とする織機の工程を1つの織機サイクルとするものである。但し、この織機サイクルは、製織(緯入れ)が実行されない場合も含む。
その場合において、織機が起動されて前記のように空打ち工程が実行されると、起動後最初のクランク角度0°からの織機サイクル及びそれに続く3織機サイクルの4織機サイクルでは、緯入れ装置が停止状態に維持され、緯入れが行われない状態となる。但し、筬打ち装置、開口装置及び耳組装置については、織機の主軸と同期して駆動される。
また、前記のように起動時におけるクランク角度が300°に設定されていることから、その起動時点においては、経糸の開口はほぼ閉口に近い状態となっており、最終緯糸はその経糸に拘束された状態となっている。そして、その状態から前記の空打ち工程が実行されるものであるが、その場合、緯入れが行われずに経糸(地経糸)が開口運動を行うため、1回目の空打ちが行われた後の起動後2番目の織機サイクル、及び3回目の空打ちが行われた後の起動後4番目の織機サイクルにおいて、最終緯糸が挿入された杼口が開放され、その最終緯糸が織前に露出した状態(最終緯糸が地経糸から解放された状態)となる。その結果、緯糸に緩みが生じ、それが織物の欠点となってしまう。また、緯糸が緩んで縮んだ場合であってその緯糸の端部が織幅内に位置する程度まで縮んだ場合には、その緯糸が空打ちによって複数回筬打ちされることにより、織前付近に位置する緯糸に部分的なズレが生じ、片ヒマ段といった織段が発生して織物の欠点となる場合がある。
なお、織機が前述のような絡み耳を形成する耳組装置を備えている場合には、前記空打ち工程において前述のように最終緯糸が織前に露出される状態となっても、その最終緯糸は、両端部において耳糸に挟持されて保持された状態となっている。しかしながら、その場合であっても、依然として前記のような織り欠点を生じる可能性がある。
詳しくは、製織に用いられる緯糸が伸縮性を有するものである場合には、緯糸は伸張された状態で経糸に織り込まれており、地経糸及び耳糸には緯糸の収縮力が作用した状態となっている。その場合において、空打ち工程で前記のように地経糸が開口されて耳糸のみで最終緯糸が保持された状態となった場合には、緯糸自身の収縮力によってその最終緯糸が耳糸から抜けてしまうことがある。そして、そのような緯糸の抜けは、特に起動直後において発生し易い。
より詳しくは、前述のように、耳組装置は、一対(2本)の耳糸を撚り合わせつつ耳糸に開口運動を与えるものであるため、空打ち工程により緯入れが行われずに耳組装置が正転駆動された場合には、その空打ち回数に応じて織前に位置する耳糸の撚り合わせ部分に対し撚りが加えられる(追撚される)こととなる。従って、空打ち回数が増すにつれて前記撚り合わせ部分の撚り数が増し、耳糸による保持力が次第に増すことになる。しかしながら、起動直後においては、その撚り数はまだ少ないため、耳糸による最終緯糸の保持力は弱い。従って、前記した2番目の織機サイクルにおける地経糸が開口する時点では、前記撚り部分において耳糸は2〜3回撚られているが、その撚り数による保持力では耳糸のみで最終緯糸を保持する力としては十分ではなく、前記した緯糸の抜けが発生してしまう場合がある。また、前記した4番目の織機サイクルであっても、緯糸の種類(例えば、伸縮性が大きい等)によっては耳糸による保持力が十分ではなく、前記した緯糸の抜けが発生してしまう場合がある。そして、そのような緯糸の抜けが発生した結果として、緯糸に緩み(縮み)が生じ、前記のような織り欠点が発生してしまうのである。
また、以上では、平織り組織に対応する開口パターンに従って綜絖枠が駆動されて製織が行われる場合であって空打ち工程において最終緯糸が挿入された地経糸による杼口が完全に開放される状態が発生する場合について述べたが、平織り組織以外の組織に対応する開口パターンに従って綜絖枠が駆動されて製織が行われる場合であっても、開口パターンによっては、経糸の開口運動に伴って最終緯糸を拘束する地経糸の本数が少なくなり、地経糸によって十分に最終緯糸が拘束されない状態となる結果として、前記のように緯糸が緩み、織り欠点が発生するといった問題が生じる場合がある。
以下に、本発明の一実施例について図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜3に示すのは、本発明が適用される耳組装置の一例であって、図示の耳組装置10は、所謂プロペラ形式の耳組装置である。そして、その耳組装置10は、織機の両側のサイドフレーム1、1間に架設されたビーム(梁)3に対し、支持ブロック5等を介して支持され、複数本の経糸から成る経糸列Tの両外側の近傍に配置されている。但し、図2には、経糸列Tの両側における一方のみが示されている。なお、経糸列Tの両側に設けられる各耳組装置10は、経糸列に対する配置が対称的であることを除いては、基本的に同じ構成である。従って、以下では、その一方の側(図2に示す反給糸側)についてのみ説明する。
耳組装置10は、駆動源である専用の駆動モータ14と、駆動モータ14の出力軸14aに取り付けられたアーム16を備える。そして、耳組装置10は、織機のビーム3上に設置された支持ブロック5に対し、ステー21及びブラケット22を介し、駆動モータ24がブラケット22に取り付けられることによって支持されている。
駆動モータ14は、その出力軸14aが中空状に形成されており、その内部には、給糸体7、7から引き出された2本(一対)の耳糸ST、STが挿通される。なお、給糸体7、7は、耳組装置10よりも経糸の送り出し側においてサイドフレーム1上に設けられた給糸スタンド(図示略)によって支持されている。そして、各耳糸STは、給糸体7から引き出され、バルーンブレーカ9a、テンサ9b、ガイド9cを経て、両耳糸ST、STに共通の耳糸ガイド9dによって案内され、耳組装置10における駆動モータ14の出力軸14aに導かれている。
また、駆動モータ14の出力軸14aには、織前CF側(耳糸STの引き出し方向下流側)の端部に、ガイド孔が形成された一対のヤーンガイドとしての耳糸ガイド16a、16aを端部に備えたアーム16が回転不能に取り付けられている。より詳しくは、アーム16には、その両端部であって長手方向における中心から等距離の位置に耳糸ガイド16a、16aが取り付けられており、アーム16は、その長手方向における中心を駆動モータ14の出力軸14aの中心に一致させるかたちで出力軸14aに取り付けられている。すなわち、耳糸ガイド16a、16aは、前記回転軸線を中心とした円周軌道上に位置し、出力軸14aを挟んだ対称的な位置で出力軸14aに対し固定的に設けられるものとなっている。但し、耳糸ST、STが挿通される耳組装置10おける一対のヤーンガイドについては、図示のようにアーム16とは別体の耳糸ガイド16a、16aをアーム16に取り付けて構成するものに限らず、その耳糸ガイド16a、16aを省略し、アーム16の両端部のそれぞれにヤーンガイドとしての目孔を形成することで構成されたものであってもよい。また、アーム16aについても、一体的に形成された部材に限らず、出力軸14aに取り付けられた2つのアームとしもよい。
そして、前記のような構成によれば、駆動モータ14の出力軸14aが1回転すると、それに伴い、アーム16が前記回転軸線を中心として1回転し、そのアーム16に取り付けられた耳糸ガイド16a、16aが前記回転軸線周りに1回転する(360°回転する)ものとなる。なお、図示の例では、耳組装置10は、前記回転軸線が緯入れ方向と交差する方向に延在するように配置されている。従って、耳組装置10においては、出力軸14a(アーム16)の回転に伴い、耳糸ガイド16a、16aが、緯入れ方向に関し、耳糸ガイド16aが最も上方(下方)にあるときの位置を中心に左右に往復運動するものとなっている。
その上で、駆動モータ14における出力軸14aの中空部に挿通された耳糸ST、STは、その出力軸14aの中空部を通過した後、アーム16の耳糸ガイド16a、16aのガイド孔に挿通されて案内され、耳糸ガイド16a、16aから筬8を経由して織布Wの織前CFに向けて引き出されている。
また、耳組装置10には、アーム16の耳糸ガイド16a、16aから引き出された耳糸ST、STの水平方向の位置を規制するためのガイド18が付設されている。図示の例では、ガイド18は、図3(b)に示すように、U字形をして上下方向に延在する部材であって、ステー19aによってブラケット22に支持されている。このガイド19は、アーム16の回転中における耳糸ST、STの水平方向の位置を規制するためのものであって、例えば、アーム16が水平状態もしくはそれに近い状態となったときでも、筬8の進行方向に対して耳糸ST、STが為す角度をより小さいものとし、筬8の筬羽と耳糸ST、STとの摺接による影響を小さいものとしている。
そして、そのような耳組装置10において、駆動モータ14は、例えば、主軸が1回転する期間毎に間欠的な回転を繰り返すような駆動態様で駆動されるものとなっている。より詳しくは、耳組装置10においては、図4に示すように、駆動モータ14は、耳糸ST、STで形成される開口が最大開口となる回転位相で停止している状態から、各織機サイクルにおける緯入れ終了後の所定の駆動開始タイミング(図4:クランク角度θ1)で駆動が開始され、その次の織機サイクルにおける緯入れ開始前の所定の駆動終了タイミング(図4:クランク角度θ2)までに180°回転駆動されて再び停止状態とされる。このように、駆動モータ14は、緯入れが終了した後の前記駆動開始タイミングθ1から、次の緯入れによる緯糸が耳糸ST、STで形成される開口内を通過するよりも前の前記駆動終了タイミングθ2までの期間において回転駆動され、次の前記駆動開始タイミングθ1まで停止状態にされるといった間欠的な駆動態様であって、織機の主軸が1回転される期間(クランク角度θ1〜θ1)内で主軸1回転毎に180°回転するような駆動態様で駆動される。
そして、駆動モータ14が前記のように駆動されることに伴い、出力軸14aに取り付けられたアーム16が回転して、耳糸ガイド16a、16aが駆動モータ14の出力軸14aの回転軸線周りに回転(公転)運動を行い、それに伴い、耳糸ガイド16a、16aに挿通されて織前CFに連なる耳糸ST、STが開口運動を行う。より詳しくは、耳糸ガイド16a、16aの前記回転運動に伴い、耳糸ST、STで形成される開口は、緯糸が挿入された状態から一旦閉じられ、再び次の緯入れによる緯糸が挿入されるための開口が形成され、その開口量が最大となった状態で停止して次の緯入れにおける緯糸の通過に備える。そして、その開口運動の過程において、前記回転軸線が緯入れ方向と交差する方向に延在することによる耳糸ガイド16a、16aの緯入れ方向における前記往復運動により、耳糸ST、STは互いに撚り合わされ、それによって織布Wに対する絡み耳の形成が行われる。
因みに、本実施例の耳組装置10では、耳糸ガイド16a、16a(アーム16)の回転運動に伴い、耳組装置10の上流側(給糸体7側)でも、耳糸ST、STが撚り合わされた状態となる。そこで、本実施例の耳組装置10においては、アーム16は、所定回数(例えば、50回転)ずつ回転した時点で回転方向が反転されるように回転駆動されるものとなっている。
図5は、前記のように駆動モータ14の駆動を制御するための制御ブロック図を示したものである。図示のように、織機は、前記した反給糸側の耳組装置10の駆動モータ14、及び給糸側の耳組装置10の駆動モータ14の駆動を制御するための耳組制御装置30を備えている。この耳組制御装置30は、その入力端において、織機の主制御装置40に接続されると共に、織機上の各装置の制御値等を入力設定するために織機上に設けられた入力設定器42に接続されている。
また、耳組制御装置30には、織機の主軸2の回転角度(クランク角度)を検出するエンコーダENが接続されており、このエンコーダENによって検出されたクランク角度(0°〜360)を示すクランク角度信号θが入力されるものとなっている。そして、耳組制御装置30は、その出力端において、給糸側、反給糸側の各耳組装置10、10の駆動モータ14、14を駆動するために各駆動モータ14、14に対応して設けられたドライバ31、31に接続されている。なお、前記した入力設定器42は主制御装置40の入力端にも接続されており、また、エンコーダENからのクランク角度信号θは主制御装置40にも入力されている。さらに、主制御装置40には、織機の起動させるために操作される運転釦41、及び織機を低速逆転させるための逆転釦43が接続されている。
また、耳組制御装置30には、入力設定器42によって設定された各耳組装置10(駆動モータ14)の駆動を制御するための制御値が、内蔵されたメモリ(図示略)に記憶されているものとする。なお、この記憶される制御値は、前記した各駆動モータ14の駆動を開始する駆動開始タイミングθ1、1回の駆動においてアーム16(駆動モータ14の出力軸14a)を回転させる回転量(本実施例の場合は180°)、駆動モータ14の駆動を停止する駆動終了タイミングθ2、及び回転方向を反転させる反転回転回数(例えば、50回転)等である。
そして、耳組制御装置30は、エンコーダENからのクランク角度信号θに基づき、クランク角度が設定された駆動開始タイミングθ1となった時点で、駆動開始タイミングθ1と駆動終了タイミングθ2とから求められる期間において設定された回転量(180°)だけ駆動モータ14の出力軸14aが回転するような駆動信号C1を、各耳組装置10に対応させて設けられたドライバ31に対し出力する。そして、ドライバ31が対応する耳組装置10における駆動モータ14を駆動することにより、各耳組装置10におけるアーム16(耳糸ガイド16a、16a)が、前記のような駆動態様で回転駆動される。
また、主制御装置40には、織機サイクル数をカウントするピックカウンタ(図示略)が内蔵されており、主制御装置40は、エンコーダENからのクランク角度信号θに基づいて織機サイクル数をカウントすると共に、そのカウント値を耳組制御装置30に出力している。そして、耳組制御装置30は、主制御装置40からの前記カウント値に基づいてアーム16の回転回数を把握し、その把握された回転回数と設定された前記反転回転回数とを比較すると共に、両者が一致した時点で、駆動モータ14の出力軸14aの回転方向を反転させる。
すなわち、耳組制御装置30は、先ず駆動モータ14の出力軸14a(アーム16)が正転方向へ回転駆動されるような駆動信号C1を出力し、その回転回数が設定された前記反転回転回数に達した時点からは、駆動信号を駆動モータ14の出力軸14a(アーム16)が逆転方向へ回転駆動される駆動信号C2に変更して出力し、その逆転方向への回転駆動の回転回数が前記反転回転回数となるまでその出力を継続する。これにより、アーム16(耳糸ガイド16a、16a)の正転方向の回転に伴って耳組装置10の上流側(給糸体7側)で生じた耳糸ST、STが撚り合わされた状態が、アーム16(耳糸ガイド16a、16a)の正転方向の回転によって順次解消される。そして、駆動モータ14の出力軸14a(アーム16)は、逆転方向へ前記反転回転回数だけ回転駆動された後、再び回転方向が反転され、正転方向へ回転するように回転駆動される。
次に、 本発明が前提とする織機において行われる空打ち起動について、図6〜8に基づいて説明する。但し、図示の例は、緯入れ不良が発生したことに伴う織機の製織停止時から織機を再起動させる場合を示すものであり、また、地経糸の開口パターンについては、平織り組織を形成する開口パターンであるものとする。その上で、図6は、織機のクランク角度と製織停止後の織機の各工程との関係を示す図であり、図7は、製織停止時から起動待機状態となるまでの各工程における地経糸及び耳糸ST、STの開口状態、及び緯糸との関係を示す図である。また、図8は、空打ち工程における各時点の地経糸及び耳糸ST、STの開口状態、及び緯糸との関係を示す図である。但し、図8に示す耳糸ST、STの状態は、製織中の駆動態様に従った駆動のみで駆動モータ14(アーム16)を回転駆動した場合である。
さらに、本実施例では、起動後の最初のクランク角度0°からの4織機サイクルにおいて緯入れを伴わない空打ち工程が行われ、4回の空打ちが行われた後、各織機サイクルで緯入れが行われる定常運転工程(製織)が開始されるものとする。なお、この空打ち工程の織機サイクル数(空打ち回数)については、入力設定器42によって設定され、主制御装置42に内蔵されたメモリ(図示略)に記憶されるものとする。
先ず、緯入れ不良が発生すると、その緯入れ不良が発生した織機サイクルにおける所定のクランク角度で停止指令信号が発生され、その停止指令信号の発生に伴い、織機は、緯入れ不良が発生した織機サイクルの次の織機サイクルにおけるクランク角度300°付近で一旦停止し(図6:第1次停止)、それに続いて低速で自動逆転して、緯入れ不良が発生した織機サイクルにおけるクランク角度300°で停止した状態(補修待機状態)となる(図6:第2次停止)。また、その状態では、図7(a)に示すように、地経糸及び耳糸ST、STは、不良緯糸が挿入された杼口が閉口に近い状態(閉口状態から開口側へ若干開いた状態)となっている。
その後、緯入れ不良が発生した状態を補修するために、織工による不良緯糸の除去作業が行われる。そのために、先ず織工は、織機の逆転釦43を操作し、不良緯糸が口出しされた状態(緯入れ不良が発生した織機サイクルにおけるクランク角度180°)となるまで織機(主軸2)を低速で逆転させる。それにより、図7(b)に示すように、地経糸及び耳糸ST、STが開口した状態となり、不良緯糸が口出しされた状態となる。そして、その状態において、織工による不良緯糸の除去が行われる。なお、不良緯糸が除去された状態においては、最終緯糸が織前CFに位置した状態となる。
不良緯糸の除去が完了すると、織工は再び織機の逆転釦43を操作し、起動位置(本実施例では、緯入れ不良が発生した織機サイクルの1つ前の織機サイクルにおけるクランク角度300°)まで織機(主軸2)を低速で逆転させる。その結果、図7(c)に示すように、地経糸及び耳糸ST、STは、最終緯糸(停止直前に正常に織り込まれた緯糸)が挿入された杼口が閉口に近い状態(閉口状態から開口側へ若干開いた状態)となる。
そして、織機が前記起動位置で停止した状態(起動待機状態)で織工による運転釦41の操作が行われると、起動指令信号Dが発生され、その起動指令信号Dの発生に応じて織機の運転(主軸2の正転駆動)が開始される。その上で、本実施例では、図6に示すように、前記のような織機の起動後、4織機サイクルに亘る期間において空打ち工程が実行され、その後、緯入れを伴う製織が開始されるものとなっている。
より詳しくは、起動指令信号Dの発生後、主制御装置40よる主軸2(主軸2を回転駆動する原動モータ(図示略))の駆動が開始され、主軸2を駆動源とする筬打ち装置及び開口装置は作動を開始する一方、緯入れ装置、経糸送出装置及び巻取装置(いずれも図示略)については、それらの制御装置に対し主制御装置40からの駆動指令信号は出力されず停止状態とされる。また、耳組装置10については、主軸2の駆動開始に伴い、主軸2と同期して作動を開始する。そして、織機の起動後における緯入れ装置、経糸送出装置及び巻取装置を停止させた状態は、主制御装置40におけるピックカウンタによりカウントされた織機サイクル数が設定された空打ち工程の織機サイクル数(4)に達する時点まで継続され、それによって設定された織機サイクル数での空打ち工程が実行されることとなる。その後、ピックカウンタによるカウント値が設定された空打ち工程の織機サイクル数である4に達した時点で、主制御装置40から緯入れ装置、経糸送出装置及び巻取装置の各制御装置に対し駆動指令信号が出力され、その時点(起動後の5織機サイクル目)から緯入れを伴う製織が再開される。
そして、前記空打ち工程中においては、地経糸及び耳糸ST、STの開口状態は、図8に示すような状態となる。但し、図8においては、起動後の最初のクランク角度0°からの織機サイクルを第1サイクルとし、それに続く織機サイクルを第2サイクル、その次の織機サイクルを第3サイクルとして示してある。より詳しくは、以下の通りである。
図8(a)は、図7(c)に示す状態から織機が起動された後の第1サイクルにおけるクランク角度180°の状態を示す。この状態では、最終緯糸が挿入された杼口が閉じられて次の杼口が形成された状態となっており、最終緯糸は、地経糸及び耳糸ST、STにより拘束された状態となっている。但し、その第1サイクルが含まれる空打ち工程中では緯入れが行われないため、図8(a)の状態からクランク角度が進むにつれて、地経糸については、最終緯糸が挿入された杼口を開くように変位し、第1サイクルのクランク角度300°の時点(起動時点から主軸が1回転した時点)では、図8(b)に示す状態(最終緯糸が挿入された杼口が開く直前の状態)となる。一方、耳糸ST、STについては、撚り合わされつつ開口運動を行うものであるため、次の杼口に緯糸が挿入されていなくても最終緯糸が挿入された杼口が開くことはなく、図8(b)に示す第1サイクルのクランク角度300°時点では、織前CFの位置において1回半程度撚り合わされた状態となっている。
その後、クランク角度が進み、第2サイクルのクランク角度180°の時点では、図8(c)に示すように、地経糸については、最終緯糸が挿入された杼口が完全に開放された状態となり、地経糸の範囲において最終緯糸が織前CFに露出した状態(最終緯糸が織前CFに口出しされた状態)となる。一方、耳糸ST、STについては、その時点では、織前CFの位置において2回撚り合わされた状態(撚り数2の状態)となっている。従って、その状態においては、最終緯糸は、織布の端部(耳部)の位置において、耳糸ST、STのみによって保持された状態となっている。
そして、その後においては、クランク角度が進むにつれて、図8(d)、(e)に示すように、地経糸については、再び最終緯糸が挿入された杼口が閉じる方向に変位し、第3サイクルのクランク角度180°の時点(図8(e))において図8(a)に示す第1サイクルのクランク角度180°の時点と同じ状態になると共に、耳糸ST、STについては、更に撚り合わされ、図8(e)に示す第3サイクルのクランク角度180°の時点では、織前CFの位置において3回撚り合わされた状態(撚り数3の状態)となる。従って、図示は省略するが、第3サイクルに続く織機サイクル(第4サイクル)におけるクランク角度180°の時点では、地経糸については、図8(c)に示す第2サイクルのクランク角度180°の時点と同じ状態になると共に、耳糸ST、STについては、織前CFの位置において4回撚り合わされた状態(撚り数4の状態)となる。そして、その第4サイクルに続く織機サイクルからは、緯入れが開始されて製織が再開される。
以上のような織機、すなわち、前記した絡み耳を形成する耳組装置を備えると共に、前記のように起動後の4織機サイクルに亘る期間において空打ち工程が実行される空打ち起動が行われる織機においては、前記のように起動後の第2サイクル及び第4サイクルで最終緯糸が挿入された地経糸による杼口が開放され、地経糸の範囲において最終緯糸が織前CFに露出した状態となり、最終緯糸は織布の端部(耳部)の位置において耳糸ST、STのみによって保持された状態となる。そのため、特に、耳糸ST、STの撚り数が少なく最終緯糸に対する耳糸ST、STの保持力が弱い第2サイクルにおいては、最終緯糸が耳糸ST、STから抜け、最終緯糸に緩み(縮み)が生じてしまう場合がある。
そこで、本発明においては、織機の起動に先立ち、耳糸ガイド16a、16a(アーム16)を、製織中(定常運転行程中)の駆動態様に従った駆動とは異なる駆動態様で駆動モータ14により回転駆動するものである。但し、ここで言う製織中の駆動態様とは、本実施例では、前記したように織機の主軸1回転毎に駆動モータ14(アーム16)を180°回転させる駆動態様である。
そして、本実施例では、起動位置に織機が停止した状態で織機の運転釦41が操作されることに伴い、織機の起動(主軸2の正転開始)に先立ち、耳組装置10を作動させ、耳糸ST、STが、織前CFの位置において、織機の停止状態において耳組装置10が停止状態に維持される従来の場合と比べて多い撚り数で撚り合わされた状態となるようにするものである。
すなわち、起動前の織機が停止した状態では、主軸2も停止しているため、製織中の駆動態様に従う場合、耳組装置10における駆動モータ14(耳糸ガイド16a、16a)も停止状態に維持されるものとなる。これに対し、本実施例では、織機(主軸2)が停止した状態において駆動モータ14(耳糸ガイド16a、16a)を回転駆動する、言い換えれば、製織中の駆動態様に従った駆動とは異なる駆動態様で駆動モータ14(耳糸ガイド16a、16a)が回転駆動されるものである。
また、起動時点における耳糸ST、STの撚り数について、前記従来の場合では、図7(a)に示すように、耳糸ST、STは織前CFの位置においてほぼ撚りが解かれた状態(撚り数0に近い状態)となっている。しかも、織機の起動までは主軸2は停止状態とされるため、主軸2の回転に応じた撚り数も0に近い状態のままである。これに対し、前記のように起動前の織機が停止した状態で耳組装置10を作動させて耳糸ガイド16a、16aを回転させるものとすれば、耳糸ST、STは、その耳糸ガイド16a、16aの回転量に応じた前記従来の場合よりも多い撚り数(>0)で織前CFの位置において撚り合わされた状態となるものである。そして、本実施例では、耳糸ガイド16a、16aが駆動モータ14の出力軸14a周りに3回転(360°×3)するように、起動位置に織機が停止した状態において駆動モータ14が駆動されるものとする。
そのために、耳組制御装置30には、前記停止状態において行われる駆動モータ14の駆動の駆動量(出力軸14aの回転回数:3)が入力設定器42によって設定されて内蔵された前記メモリに記憶されると共に、運転釦41が操作されることによって発生される起動指令信号Dが主制御装置40を介して入力されるものとなっている。また、耳組制御装置30は、起動指令信号Dが入力されると、設定された前記駆動量で各耳組装置10における駆動モータ14が駆動されるように前記駆動量に応じた駆動信号C3を出力すると共に、各耳組装置10において前記駆動量分の駆動モータ14の駆動が完了した時点で、主制御装置40に対し駆動完了信号Fを出力するものとなっている。また、主制御装置40は、起動指令信号Dの発生に応じて直ぐに織機の運転(主軸2の正転駆動)を開始する(起動する)のではなく、起動指令信号Dの発生時点では停止状態に維持され、耳組制御装置30からの駆動完了信号Fが入力された時点で織機を起動させるものとなっている。
従って、本実施例の織機においては、織機が前記起動位置で停止した状態において、運転釦41が操作されて起動指令信号Dが発生されると、主制御装置40は、主軸2を停止状態に維持すると共に、耳組制御装置30に対し起動指令信号Dを出力する。そして、耳組制御装置30は、起動指令信号Dが入力されると、給糸側及び反給糸側の各耳組装置10における駆動モータ14が設定された前記駆動量だけ駆動されるように、駆動信号C3を出力する。それにより、各耳組装置10においては、起動前の織機が停止した状態において、出力軸14aが設定された前記駆動量である3回転だけ回転されるように駆動モータ14が駆動され、耳糸ガイド16a、16aが駆動モータ14の出力軸14a周りに連続的に3回転するように回転駆動される。その結果として、耳糸ST、STは、織機の起動前の状態において、織前CFの位置で6回撚り合わされた状態となる。
そして、前記のような耳組装置10(駆動モータ14)の駆動が完了すると、その完了を示す駆動完了信号Fが、耳組制御装置30から主制御装置40に対し出力される。その後、主制御装置40に駆動完了信号Fが入力されることに伴い、主制御装置40により織機が起動され、前述の空打ち工程が開始される。また、その織機の起動に伴い、各耳組装置10は、製織中の駆動態様に従った作動を開始する。
その場合において、前記従来の場合では、図8(c)に示す起動後の第2サイクルの状態では、耳糸ST、STは織前CFの位置において2回だけ撚り合わされた状態であり、最終緯糸に対する耳糸ST、STによる保持力が弱い状態であるのに対し、本発明に基づく本実施例の場合では、前記のように織機の起動前の状態において、耳糸ST、STは、織前CFの位置において既に6回撚り合わされた状態となっており、起動後の第2サイクルにおけるクランク角度180°の時点(最終緯糸が織前CFに露出される時点)では、織前CFの位置において8回撚り合わされ、最終緯糸を強く保持した状態となる。そのため、最終緯糸が挿入された地経糸による杼口が開放されて地経糸による最終緯糸に対する拘束力が失われた場合でも、最終緯糸は織布の端部(耳部)の位置において耳糸ST、STにより十分に保持され、前記従来の場合のように最終緯糸に緩み(縮み)が生じることはなく、最終緯糸の緩み(縮み)に起因する織り欠点の発生を防止することができる。
以上では、本発明の一実施例について説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、以下のようなものであってもよい。
(1)本発明が前提とする織機における耳組装置は、前記実施例のプロペラ形式の耳組装置に限定されるものではなく、例えば、前記実施例の耳組装置におけるアームに代えて円板状のディスクが駆動モータに取り付けられると共に、ディスクにヤーンガイドとしての一対の目孔が形成されていてその各目孔に耳糸が挿通され、ディスクの回転により一対の耳糸を互いに撚り合わせつつ耳糸に開口運動を与えるディスク形式の耳組装置であってもよい。なお、耳組装置の製織中(定常運転行程中)の駆動態様について、前記実施例では、織機の主軸1回転毎に駆動モータ(ヤーンガイド)が180°回転されるものとしたが、前記実施例のプロペラ形式の耳組装置や前記のディスク形式の耳組装置においては、ヤーンガイドが主軸1回転毎に1回転、もしくはn/2回転(n:3以上の整数)されるものであってもよいし、主軸の複数回転(例えば、2回転)毎に180°回転されるものであってもよい。
また、前記したディスク形式やプロペラ形式の耳組装置については、耳糸を供給する給糸体がアームやディスクの回転に合せて回転(公転)するように、給糸体を支持する部材が回転駆動されるものであってもよい。さらには、耳組装置については、耳糸が巻き付けられた一対の耳糸ボビンを自転させながら公転させて一対の耳糸を互いに撚り合わせつつ耳糸に開口運動を与える所謂遊星歯車式の耳組装置(遊星耳組装置)であってもよい。
(2)前記実施例では、地経糸が平織り組織を形成する開口パターンに従って開口運動を与えられる織機を例として説明したが、本発明が前提とする織機についてはそのようなものに限定されず、他の開口パターンに従って地経糸に開口運動を与える織機にも本発明は適用可能である。
(3)本発明が前提とする織機において実行される空打ち起動(空打ち工程)について、前記実施例では、緯入れ不良が発生したことによる織機の停止時における空打ち起動時を例として説明したが、本発明は空打ち起動が行われる織機であれば適用可能であり、その空打ち起動の前提となる停止の原因等については限定されず、例えば、経糸切れに伴う織機の停止や、作業者による手動停止に伴って空打ち起動が行われる場合であってもよい。なお、空打ち起動時に実行される空打ち工程の織機サイクル数(空打ち回数)については、前記実施例の4織機サイクルに限定されるものではなく、そのときの製織における製織条件や停止原因等に応じて適宜に設定されるものである。
また、前記実施例では、前述の起動位置から織機の運転が開始される(空打ち起動が開始される)ものとしたが、公知の空打ち起動としては、前記起動位置から織機の主軸を1回転以上低速で逆転させた後に空打ち工程が開始される逆転空打ち起動、及び前記起動位置から織機の主軸を1回転以上低速で正転させた後に空打ち工程が開始される正転空打ち起動があるが、本発明は、このような公知の逆転空打ち起動、あるいは正転空打ち起動が実行される織機に適用可能である。
但し、逆転空打ち起動の場合、前記起動位置からの逆転の過程で、最終緯糸が挿入された杼口が、地経糸による杼口だけでなく耳糸による杼口まで開放された状態となり、最終緯糸に対する拘束が完全に解かれた状態となって最終緯糸に緩みが発生する場合がある。そこで、公知の手法に基づき、逆転空打ち起動時における前記起動位置からの逆転時において、耳組装置を停止状態とすることが考えられる。但し、その場合には、前記逆転後の空打ち工程開始時における一対の耳糸の開口状態は、織機が前記起動位置で停止しているときの状態のままであるため、そのまま空打ち工程を実行すると、前記従来の場合と同じ状態となる。そこで、そのような逆転空打ち起動時において、前記逆転が行われた時点で一旦織機を停止させ、その時点で、例えば、前記実施例のように耳組装置を作動させてヤーンガイドを複数回回転させることにより、前記実施例と同様に、空打ち工程中における緯糸の緩み(縮み)が生じるのを防止することができる。
また、正転空打ち起動の場合には、前記起動位置からの低速正転により、その正転回数に応じた撚り数だけ一対の耳糸が撚り合わされた状態となるため、前記の逆転空打ち起動時のように、空打ち工程の開始位置へ向けた織機の動作中に最終緯糸に対する耳糸による拘束が解かれた状態が発生することはない。しかしながら、その正転時においては、耳組装置は製織中(定常運転行程中)の駆動態様に従って駆動される駆動されるものであり、耳糸の撚り数は正転回数に依存したものとなる。そして、そのような正転回数に応じた撚り数では、最終緯糸に対する一対の耳糸による保持力が十分ではなく、依然として空打ち工程中において緯糸の緩み(縮み)が発生する場合がある。そこで、正転空打ち起動の場合においても、例えば、織機が前記起動位置に停止している状態(低速正転が開始される前の時点)で、もしくは、低速正転が行われた時点で、前記実施例のように耳組装置を作動させてヤーンガイドを複数回回転させることにより、空打ち工程中における緯糸の緩み(縮み)を確実に防止することができる。
(4)前記実施例では、織機が前記起動位置に停止している状態で耳組装置を作動させて、一対の耳糸による撚り合わせの状態に撚りを加えるものとしたが、本発明はそのようなものに限らず、例えば、前記した第1次停止後の織機の逆転時等において、製織中の駆動態様に従った駆動とは異なる駆動態様で一対のヤーンガイド(駆動モータ)が回転駆動されるものとしてもよい。
具体的には、前記実施例の場合で言うと、緯入れ不良が発生したことに伴う織機の製織停止時において、不良緯糸を口出し・除去した後の低速逆転時に、不良緯糸の口出し時における主軸の回転位相(クランク角度180°)から前記起動位置(クランク角度300°)まで主軸が240°逆転されることに伴い、ヤーンガイドが120°だけ織機が停止するまでの回転方向とは逆方向(逆転方向)に回転駆動されるものとなっているが、これに代えて、この低速逆転時にヤーンガイドが逆転方向へ複数回回転するように、ヤーンガイド(駆動モータ)が回転駆動されるものとしてもよい。また、前記低速逆転時において、ヤーンガイドを正転方向へ複数回回転駆動するものとしていよい。この場合には、前記低速逆転によって織機が前記起動位置に達した時点で、一対の耳糸は既に織前の位置において複数回撚り合わされた状態となっており、その後の空打ち起動による空打ち工程中における緯糸の緩み(縮み)を防止することができる。
但し、前記のようにヤーンガイドを逆転方向へ回転駆動して一対の耳糸が織前の位置において複数回撚り合わされた状態とする場合には、その一対の耳糸が撚り合わされる方向は、ヤーンガイドが正転方向へ回転駆動される場合とは逆方向となっている。そのため、その後の空打ち工程においてヤーンガイドが正転方向へ回転駆動されることに伴い、織前の位置における一対の耳糸が撚り合わされている部分の撚りが解かれていく(撚り数が減少する)こととなる。そこで、ヤーンガイドを前記のように逆転方向へ複数回回転駆動する場合には、空打ち工程における撚り数の減少分を見越してヤーンガイドの回転回数を設定した方がよい。
また、前記のように不良緯糸を口出し・除去した後における低速逆転時に限らず、前記した正転空打ち起動時における低速正転時において、その低速正転回数に応じた回転回数よりも多い回転回数でヤーンガイドが回転駆動されるものとしたもよい。例えば、織機が前記起動位置に停止した状態から主軸3回転分の低速正転工程を経て空打ち起動が開始される正転空打ち起動の場合には、前記実施例の耳組装置の場合では、製織中の駆動態様に従った駆動では、その低速正転工程中においてヤーンガイドが3/2回転するように回転駆動され、一対の耳糸は織前の位置において3回撚り合わされた状態(撚り数3)となるが、これに代えて、前記低速正転工程中に例えば3回転するようにヤーンガイドが回転駆動され、空打ち工程が開始される時点で一対の耳糸が織前の位置において6回撚り合わされた状態となるようにしてもよい。
(5)前記実施例では、織機の起動(空打ち起動)前における本発明による耳組装置(ヤーンガイド)の駆動が、織機の運転釦が操作されて起動指令信号が発生することに伴って実行される、すなわち、織機の起動操作に伴って本発明による耳組装置の駆動が自動的に実行されるものとしたが、本発明はこれに限らず、耳組装置を独立させて駆動する専用の手動釦等を設け、織機の運転釦が操作される前において、その手動釦の操作により、本発明による耳組装置(ヤーンガイド)の駆動が実行されるものとしてもよい。例えば、織機が停止した状態において釦操作で耳組装置のみが作動し、その1回の釦操作でヤーンガイドが1回転するような手動釦を設けておき、織機が前記起動位置に停止した状態や不良緯糸の除去が行われた後の織機の停止状態において、その手動釦を操作し、その手動釦の操作回数に応じた数だけ一対の耳糸が織前の位置において撚り合わされた状態となるものとしてもよい。
(6)前記実施例では、織機の起動(空打ち起動)前においてヤーンガイドが3回転するように回転駆動され、一対の耳糸が織前の位置において6回撚り合わされた状態で空打ち工程が開始されるものとしたが、この一対の耳糸を撚り合わせる数については、最終緯糸の種類を考慮して適宜に設定すればよい。また、耳糸の種類も最終緯糸に対する保持力に関係するため、最終緯糸の種類に加え、耳糸の種類も考慮して一対の耳糸が撚り合わせる数を設定するものとしてもよい。そして、その一対の耳糸を撚り合わせる数(ヤーンガイドの回転回数)については、最終緯糸に対する耳糸の保持力を高めるために複数であることが好ましいが、緯糸や耳糸の種類によっては、撚り数が1であってもよく、織機の起動前においてヤーンガイドが1/2回転(180°)だけ回転駆動されるものであってもよい。
なお、本発明は上記のいずれの実施形態にも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々に変更することが可能である。