JP2015165011A - ポリブチレンテレフタレートの製造方法 - Google Patents

ポリブチレンテレフタレートの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、機械的強度に優れ、ヘイズや異物が低減され、フィルター詰まりや送液トラブルを防止でき、ポリブチレンテレフタレートを安定して連続的に直接エステル化反応し、重縮合反応することにより製造する方法を提供する。
【解決手段】ポリブチレンテレフタレートの製造方法において、エステル化反応槽内の気相と接している壁面に1分間に5リットル以上の1,4−ブタンジオールを噴霧することで、エステル化反応槽内で発生する異物の固着を防止することを特徴とする、連続的なポリブチレンテレフタレートの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、優れた品質のポリブチレンテレフタレートを直接連続重合により製造する方法に関する。
ポリブチレンテレフタレート樹脂は優れた物理的、化学的性質を有するため、繊維、フィルム、その他多くの成形品など、種々の用途に広く用いられている。また、強度や弾性率等の機械特性、耐熱性等が優れているため、特にエンジニアリングプラスチックとして広く用いられている。
このようなポリブチレンテレフタレート樹脂の製造方法の中で、テレフタル酸と1,4−ブタンジオールとのエステル化反応によりビスヒドロキシブチルテレフタレートおよびその低重合物を得るエステル化工程と、ビスヒドロキシブチルテレフタレートおよびその低重合物を高温、高真空下で過剰の1,4−ブタンジオールを留出させつつ重縮合させて高重合度ポリブチレンテレフタレートを得る重縮合工程とからなる直接連続重合を用いた製造方法は、従来の生産性を著しく向上させる技術として、現在主流に成りつつある。この製造方法では、触媒に有機チタン化合物やスズ化合物を用いて反応促進を行い、かつ分解抑制剤としてリン化合物などを添加剤として用いる技術が好適に用いられている。特に有機チタン化合物は、原料の1,4−ブタンジオールが分解して副生するテトラヒドロフランの発生量を低減し、高粘度品を得る場合の重合反応を効率化できるため、添加量の増加が望まれる。
しかし、触媒や添加剤の利用は凝集物の原因となり、これが原因とみられる製品への異物混入が増加するため、生成したポリブチレンテレフタレート樹脂を濾過した際に、濾圧の上昇、さらにはヘイズ上昇等を発生させて、最終的には引張破断強度の低下、フィルムとした際の表面異物の増加といった、成形品とした時の物性低下を引き起こす。例えば特許文献1では、エステル化反応槽の出口からポリマー抜き出しダイの出口までの間の反応生成物流路にフィルターを設置する提案がされているが、この方法ではフィルターの目開きに相当した大きさの異物しか除去出来ず、フィルターの目開きをより小さくすると、濾圧が上昇し、目詰まりやフィルター交換の頻度増加となる。さらには、反応で発生する異物を根本的に少なくするといった問題は解決できていない。
例えば特許文献2では、重縮合反応を行う反応槽の上部に設置された減圧溜去配管内壁及び/または該反応槽内の気相部と接する壁面を一定の温度以下に制御することで、壁面に付着した物質の加熱による変質を抑制できることが開示されている。
また、例えば特許文献3では、エステル化反応槽内の気相と接している壁面温度を、反応槽内の気相圧力における1,4−ブタンジオールの沸点以下、エステル化反応により得られるビスヒドロキシブチルテレフタレートおよび低重合物の融点以上に制御することで、気相と接している壁面全体に液膜を形成し更新させ異物の生成を防止することが記載されている。
特開2001−270937号公報 特開2002−194072号公報 特開2008−308679号公報
しかしながら、これらの方法では、ある程度異物の生成は低減されるものの、反応槽壁面にいったん異物が固着、乾固すると、反応を長時間連続的に行なう過程で異物が粗大化する傾向にあったため、異物の固着を防止する観点から更なる改善が求められていた。
本発明は、上述した従来技術における課題に鑑み、生産性や反応効率、さらには品質安定を目的に用いている添加剤や触媒、かかる高効率なエステル化反応によって生じたオリゴマーなどが反応槽の気相部に付着固化し、これが反応液中に落下、混入することで生じる問題を、生産性に影響を与えること無く解消することで、製造工程における濾過圧力の高まりを抑制し、色調に優れ、ヘイズや異物が低減され、成形品、フィルム、モノフィラメント、繊維等に好適に使用することができる高品位のポリブチレンテレフタレート樹脂を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、本発明に至った。すなわち、本発明は、
(1)テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸と1,4−ブタンジオールを主成分とするジオールとを、エステル化反応槽において連続式にてエステル化反応させた後、次いで重縮合反応槽において重縮合反応させてポリブチレンテレフタレートを製造する方法において、エステル化反応槽内の気相と接している壁面に、1分間に5リットル以上の1,4−ブタンジオールを噴霧することを特徴とするポリブチレンテレフタレートの製造方法、
(2)エステル化反応槽内の気相と接している壁面に、180℃から220℃の1,4−ブタンジオールを噴霧することを特徴とする(1)記載のポリブチレンテレフタレートの製造方法、
(3)エステル化反応槽内の気相と接している壁面に噴霧する1,4−ブタンジオールが、エステル化反応槽へ還流する1,4−ブタンジオールを主成分とした還流液であることを特徴とする(1)または(2)記載のポリブチレンテレフタレートの製造方法、
(4)反応触媒として、有機チタン化合物の存在下でエステル化反応を行うことを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレートの製造方法、
(5)該有機チタン化合物が、テトラブトキシチタンであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレートの製造方法である。
本発明によれば、生産性を落とすこと無く、製品段階で問題となる異物の発生を抑制して濾過圧力の上昇を抑え、色調に優れ、ヘイズや異物が低減されたポリブチレンテレフタレート樹脂を生産することが可能となる。さらに、濾過した際の圧力が低下することによるフィルターの交換頻度は飛躍的に低減し、有機チタン化合物由来の粗大異物が原因となっていた送液ポンプ詰まりなど、多くの工程トラブルを解消することができる。このような高品位のポリブチレンテレフタレート樹脂は、成形品、フィルム、モノフィラメント、繊維等に好適に使用することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において製造されるポリブチレンテレフタレート樹脂とは、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分を用いた重縮合反応によって得られた、主鎖にエステル結合を有する高分子量の熱可塑性ポリエステルである。ここで、「主成分」とは、全ジカルボン酸または全ジオール中、60モル%以上を占める成分を指す。好ましくは90モル%以上である。他の酸成分および/または他のジオール成分を共重合成分として一部用いる事もできる。この場合、酸成分の例としてはイソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、セバシン酸、アジピン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。ジオール成分の例としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン等の芳香族ジオールなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらの共重合成分はそれぞれテレフタル酸または1,4−ブタンジオールに対して40モル%以下であることが好ましい。
本発明のポリブチレンテレフタレートの製造方法は、少なくとも、(1)テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸と1,4−ブタンジオールを主成分とするジオールとを、エステル化反応槽において連続的にエステル化反応させてオリゴマーを得る工程、(2)前記(1)により得られるオリゴマーを予備重縮合反応槽において連続的に重縮合反応させて低重合ポリマーを得る工程および(3)前記(2)により得られる低重合ポリマーを重縮合反応槽において連続的にさらに重縮合反応させてポリブチレンテレフタレートを得る工程を有する。かかるポリブチレンテレフタレートの製造方法には、エステル化反応槽、予備重縮合反応槽および重縮合反応槽を有する直列連続槽型反応器が好ましく用いられる。
具体的にはジオール成分とジカルボン酸成分を主体とする原料をスラリー調整し、そのスラリーをエステル化反応槽に供給し、エステル化反応を行い、得られたエステル化反応生成物であるオリゴマーを予備重縮合反応槽及び最終重合機を経て重縮合反応させる。
まず、上記工程(1)について説明する。テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸と1,4−ブタンジオールを主成分とするジオールを含む原料をスラリー調製し、そのスラリーをエステル化反応槽に連続的に供給し、連続的にエステル化反応を行うことが好ましい。エステル化反応槽に供給するスラリーは、ジカルボン酸と、ジオールの少なくとも一部を混合することにより得ることができる。原料となるジオールの一部を用いてスラリー調製された場合、残りのジオールをエステル化反応槽へ直接供給することもできる。本発明の好ましい形態としては、ジカルボン酸成分に対するジオール成分の仕込みモル比は、多ければ多いほど異物の少ないポリマーが出来やすいが、エネルギー負荷も増大するため1.4以上が好ましく、1.5以上が好ましい。2.0以下が好ましく、1.8以下が好ましい。ジカルボン酸に対するジオールの仕込み比率(モル比)を1.4以上とすることにより、エステル化反応率および重縮合反応速度をより向上させ、得られるポリブチレンテレフタレートの物性を向上させることができる。一方、ジカルボン酸に対するジオールの仕込み比率(モル比)を2.0以下とすることにより、各反応槽の熱効率を高く保ち、テトラヒドロフランの副生を抑制することができる。なお、過剰に仕込まれたジオールは、後述の重縮合反応において系外へ抜き出されることが好ましい。
本発明に用いるエステル化反応槽の型式としては特に限定されるものではないが、例えば、縦型攪拌完全混合槽、縦型熱対流式混合槽、棚段型反応槽などを用いることができ、複数の反応槽を用いる場合はこれら同種または異種の複数基の槽を直列する複数槽とすることができる。本発明においては、好ましくは縦型撹拌完全混合槽である。エステル化反応槽は、反応槽内部に熱媒コイルと熱媒ジャケットを上部と下部へ設けることが好ましい。上部ジャッケットと下部ジャッケットは分割されており、別々に温度制御されている。
エステル化反応槽の留出口には精留塔をつけることが好ましく、精留塔により留出物中の水及びテトラヒドロフランと1,4−ブタンジオールを分離することができる。精留塔の塔頂からは水及びテトラヒドロフランを主成分とする留出物が留出され、コンデンサーで凝縮された後、回収工程へ送液される。1,4−ブタンジオールを主成分とする留出物は精留塔の底部で凝縮し還流液として、エステル化反応槽へ返送されることが好ましい。また、その際に、ジカルボン酸に対するジオールの仕込み量を過剰にした場合にはエステル化反応槽中でのモル比を調整するため、還流液の一部を系外へ留出させてもよい。この場合、留出させた1,4−ブタンジオールを主成分とする留出物は再度、原料として用いることができ、精留して使用してもよいし、そのまま使用してもよい。
エステル化反応槽へ返送される1,4−ブタンジオールの一部は、エステル化反応槽内に設けたリング状のヘッダーを設置したスプレーへ導入してもよく、また、原料の1,4−ブタンジオールの一部を該スプレーへ導入してもよい。
エステル化反応槽へ返送される1,4−ブタンジオールをスプレーへ導入する場合、還流液の40%以上をエステル化反応槽へ還流させ、残りをスプレーへ導入することが好ましい。また、原料の1,4−ブタンジオールの一部をスプレーへ導入する場合は、原料の80%以上は原料調整に用い、残りをスプレーへ導入することが好ましい。スプレーからの噴霧流量を1L/分/個以上とすることで、ノズル詰まりを防止し連続して安定的に噴霧できるため好ましい。これにより、得られるポリブチレンテレフタレートの品質が安定するため好ましい。
エステル化反応を効率的に進めるために、エステル化反応触媒を用いることが好ましい。エステル化反応触媒としては、有機チタン化合物が好ましい。本発明で好ましく用いられる有機チタン化合物は、
(RO)nTi(OR4−n
(ただし、R、Rは炭素数1〜10の脂肪族、脂環族または芳香族の炭化水素基、nは0〜4の数字(小数含む)である。)で表されるチタン酸エステルおよび縮合物で代表される。
有機チタン化合物は具体的には、チタン酸のメチルエステル、テトラ−n−プロピルエステル、テトライソプロピルエステル、テトラ−n−ブチルエステル、テトライソブチルエステル、テトラ−tert−ブチルエステル、テトラ−2エチルヘキシルエステル、テトラオクチルエステル、フェニルエステル、ベンジルエステル、トリルエステルあるいはこれらの混合エステルなどがある。これらの中でも安価に入手できることからチタン酸のテトラ−n−プロピルエステル(テトラ−n−プロピルチタネート)、テトライソプロピルエステル(テトラ−イソプロピルチタネート)、テトラ−n−ブチルエステル(テトラ−n−ブチルチタネート)が好ましく、チタン酸のテトラ−n−ブチルエステル(テトラ−n−ブチルチタネート)が特に好ましく用いられる。これらの有機チタン化合物は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用することができる。また、エステル化反応および重縮合時に同一種を用いてもよく、異種の有機チタン化合物を用いてもよい。
上記、有機チタン化合物は後述する有機溶媒で希釈してエステル化反応槽へ添加してもよく、希釈することなく1,4−ブタンジオール中へ添加し、1,4−ブタンジオールとともにエステル化反応槽へ添加してもよい。また、エステル化反応槽へ返送される還流液に直接添加してもよく、有機溶媒で希釈したものを還流液に添加してもよい。なお、還流液の一部をスプレーへ導入した場合は、残った還流液に前記有機チタン化合物を直接添加してもよく、有機溶媒で希釈したものを添加してもよい。
この場合の有機溶媒としてはイソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなどが挙げられるが、品質面の影響等を考慮すると1,4−ブタンジオールが好ましく用いられる。
該有機チタン化合物の添加量は、Ti原子換算でポリマー総重量に対して25〜75ppmであることが好ましく、30〜70ppmがより好ましい。添加量が25ppm以上であるとエステル化速度が遅くなることを抑制し、テトラヒドロフランの副生を抑えることができるため好ましい。また、75ppm以下であると、得られるポリマーのヘイズを低くすることができるため好ましい。
また、有機チタン化合物を添加する場合、ジカルボン酸成分のエステル化反応率を95〜98%としてエステル化反応槽に添加することが好ましく、96〜97%がより好ましい。エステル化反応槽に添加する際、ジカルボン酸成分のエステル化反応率が95%以上で有機チタン化合物を添加するとオリゴマー中のテレフタル酸の残存量が少ないため異物の発生を低減することができる。また、98%以下で添加すると、テレフタル酸の残存と有機チタン化合物が反応を抑制し、ポリマーの溶液ヘイズを低減することができるため好ましい。
本発明におけるエステル化反応は有機チタン化合物の存在下で、反応温度は好ましくは210〜260℃、より好ましくは220〜250℃で行なうことが好ましい。圧力は好ましくは13.3〜93kPa以下、より好ましくは20〜87kPaの減圧下で行うことが好ましい。エステル化反応により得られるオリゴマーの平均重合度は通常2〜5である。なお、オリゴマーの平均重合度、後述する低重合度ポリマーの平均重合度、ポリブチレンテレフタレートの平均重合度は、いずれも、GPC(Gel Permeation Chromatography)にてMn(数平均分子量)を測定し、ポリブチレンテレフタレート1繰り返し単位の分子量220で割ることにより求めることができる。
エステル化反応槽内の気相と接している壁面温度は、該反応槽内の気相圧力における1,4−ブタンジオールの沸点よりも低くすることが好ましく、また、エステル化反応によって得られるビスヒドロキシブチルテレフタレートおよび低重合物の融点よりも高くすることが好ましい。具体的には、壁面温度は、1,4−ブタンジオールの沸点よりも、5℃以下が好ましく、ビスヒドロキシブチルテレフタレートおよび低重合物の融点よりも、5℃以上高い方が好ましい。ここでいう気相と接している壁面温度とは、エステル化反応槽上部ジャケット温度のことである。
具体的な壁面温度としては、気相圧力によって異なるが、65〜90kPaにおいて、175〜220℃が好ましく、より好ましくは、65〜90kPaにおいて、180〜215℃である。さらに好ましくは、壁面温度は、67〜87kPaにおいて、180〜210℃であり、さらにより好ましくは、75〜85kPaにおいて、180〜210℃である。
壁面温度を上記温度範囲とすることで、エステル化反応槽内の気相と接している壁面に、1,4−ブタンジオールを主成分とする液膜が形成され、かつ、前記液膜が継続的に形成され更新することができる。
本発明で言う液膜とは、エステル化反応槽内の1,4−ブタンジオールを主成分とする蒸気が、前記反応槽内の気相と接している壁面で凝縮することによって形成される膜をいい、後述する1,4−ブタンジオールの噴霧による液流下と合わさって、継続的に更新される。
液膜を継続的に更新させるための壁面温度は、反応槽内気相部圧力における、1,4−ブタンジオールの沸点よりも、5℃以上低い方が好ましく、10℃以上低い方がより好ましい。温度差が5℃以上低いと、液膜形成が十分に行われるため好ましい。また、壁面温度は、ビスヒドロキシブチルテレフタレートおよび低重合物の融点よりも5℃以上高い方が好ましく、10℃以上高い方がより好ましい。5℃以上高いことで、壁面温度とビスヒドロキシブチルテレフタレートとの融点に差が出るため、液膜形成が十分となったり、また、攪拌負荷の低減にもつながる。温度差が十分あると液膜の形成と更新が十分にできることで、飛沫したビスヒドロキシブチルテレフタレートが気相部壁面にて固化し、撹拌トラブルの原因となることなく、安定してエステル化反応を行うことができる。
しかし、液膜には1,4−ブタンジオールの他にオリゴマーやチタンカルボン酸塩を含んでいるため、これらが前記壁面に付着、固化していったん異物として析出すると、反応過程において粗大化してしまう。液膜形成に加えて、後述する噴霧によって、反応槽壁面の凝縮液を絶えず更新することで、異物が壁面に付着することを防止し、さらにたとえ異物が付着しても、その異物が粗大化する前に、反応液中に流れ落ちるようにすることができる。なお、本発明でいう異物は、得られたポリブチレンテレフタレートを乾燥後、温度255℃〜265℃、濾過面積2.0cmの10μm焼結繊維フィルターを用いて、吐出量6.8g/minの条件下で濾過した際に焼結繊維フィルターに付着したポリマーをO−クロロフェノールで加熱溶解させた溶解液を、50μmのメンブレンフィルターで濾過し、濾液をさらに5μmのメンブレンフィルターで濾過して回収される濾上物をいう。なお、粗大異物とは、100μm以上の大きさの異物をいい、後述するフィルターの孔径よりも大きいため、フィルターを詰まらせる原因となる。
なお、凝縮液とは、エステル化反応槽内で発生する1,4−ブタンジオールの蒸気が壁面で凝縮することによって形成される液と、噴霧する1,4−ブタンジオールが合わさって気相部壁面を流下する液を言う。1,4−ブタンジオールを主成分とするものである。
本発明においては、エステル化反応槽内の気相と接している壁面に、1分間に5リットル以上の1,4−ブタンジオールを噴霧することを特徴とする。1分間に5リットル以上の1,4−ブタンジオールを噴霧することで、気相部壁面を継続的に洗い流すことができる。より好ましくは1分間に10リットル以上、さらに好ましくは1分間に15リットル以上である。流量が1分間に5リットル未満になると気相部壁面に満遍なく噴霧することができなくなったり、連続的に安定して噴霧できなくなり本発明の目的を達成することができない。上限としては、用いる原料の量、生産量にもよるが、好ましくは、エステル化反応槽へ返送される還流液の60%以下が好ましい。原料の一部をスプレーへ導入する場合は、1分間に100リットル以下が好ましい。
噴霧する方法としては、エステル化反応槽の壁面に噴霧することができれば、特に制限はないが、好ましくはエステル化反応槽上部に複数のスプレーノズルを取り付けたリング状のヘッダーを設けることが好ましい。エステル化反応槽の壁面全体に噴霧することができれば好ましい。
なお、噴霧する流量は、エステル化反応槽気相部壁面へ噴霧される1,4−ブタンジオールの流量を言う。例えばスプレーノズルを用いて噴霧する場合、スプレーノズルの個数とノズル1個あたりの流量の積がエステル化反応槽気相部壁面へ噴霧する流量となる。ノズルから出る1,4−ブタンジオールの線速度を一定に保つために、ノズルの口径はノズル1個あたりの流量により適宜選択する。
リング状のヘッダーへ取り付けたスプレーノズルの個数は噴霧する放射角を考慮し、気相部壁面へ満遍なく噴霧できる個数が好ましい。個数が少なすぎると全体に満遍なく噴霧することが出来なく、多すぎても噴霧するスプレーが重なり合い打ち消し合うことがあるため好ましくない。スプレーノズルから噴霧する1,4−ブタンジオールの放射角は、スプレーノズル出口から円周状へ広がる1,4−ブタンジオールの角度をいう。通常1個のスプレーノズルの放射角は60〜120度が一般的であるため、上記放射角を有するスプレーノズルを用いる場合は、スプレーノズルは3〜6個が好ましい。
また、スプレーノズルはリング状のヘッダーへ等間隔に配置することが好ましい。これにより、反応槽壁面全体に満遍なく噴霧させることが好ましい。
噴霧する1,4−ブタンジオールの温度は、180℃から220℃とすることが好ましい。温度を180℃から220℃とすることで、内液のビスヒドロキシブチルテレフタレートおよび低重合物の融点以上となり、気相部壁面温度と近いため、液膜形成と噴霧による凝縮液の流下を効率的に実施することが可能となる。また上記温度は、気相部における1,4−ブタンジオールの沸点以下であるため、スプレーノズルから噴霧された1,4−ブタンジオールが瞬時に気化することがない。そのため、スプレーノズルの流量が変動することを防止し安定して反応槽壁面に満遍なく噴霧することが可能となる。
噴霧する1,4−ブタンジオールの温度は、壁面温度と20℃以内の温度差とすることが好ましい。20℃以内の温度差であれば、1,4−ブタンジオールの温度が、壁面温度より高くても低くても構わない。上記範囲にある場合、エステル化反応槽内温を一定に保つための熱量が大きくなることを防げるので、効率よくポリマーを生産することができる。
気相部壁面へ1,4−ブタンジオールを噴霧することで、気相部壁面温度を制御させ液膜の形成を継続的に実施させた場合に比べ、更に流下による効果を飛躍的に向上させ、気相部壁面でフィルター目詰まりの原因となる粗大異物を減少でき、濾過圧力上昇を抑制し製造工程内のポリマーフィルター交換頻度を少なくすることができる。
次に、(2)上記(1)により得られるオリゴマーを予備重縮合反応槽において連続的に重縮合反応させて低重合ポリマーを得る工程について説明する。本発明において使用する予備重縮合反応槽について、その型式は特に制限されるものではないが、例えば、縦型攪拌重合槽、横型攪拌重合槽、薄膜蒸発式重合槽などを用いることができる。
特に高粘度品を生産する際、重合効率を上げるために、予備重縮合反応または後述する重縮合反応において、重縮合反応触媒を用いてもよい。重縮合反応触媒は、前述のスラリーまたはエステル化反応槽に添加してもよいし、重縮合反応槽に添加してもよい。重縮合反応触媒としては、有機チタン化合物が一般的に用いられる。エステル化反応触媒と同じ触媒を重縮合反応触媒として用いることもできる。その添加量はエステル化同様25〜75ppm追添加することが好ましく、30〜70ppmがより好ましい。予備重縮合反応装置に添加する触媒量を上乗せして、エステル化反応槽に一括添加した場合は、ヘイズや濾過圧力上昇速度が上昇することがある。
予備重縮合反応槽は1基または同種または異種の複数基の槽を直列する複数槽とすることができる。予備重縮合反応の反応温度は好ましくは210〜270℃、より好ましくは220〜260℃で圧力は好ましくは7kPa以下、より好ましくは1〜6kPaの減圧下で行うことが好ましい条件として挙げられる。予備重縮合反応により得られる低重合ポリマーの平均重合度は通常20〜50が好ましい。
本発明において最終重合機を用いる場合、その型式は特に制限されるものではないが、例えば、横型1軸反応機、横型2軸反応機などを用いることができる。
次に、(3)前記(2)により得られる低重合ポリマーを重縮合反応槽において連続的にさらに重縮合反応させてポリブチレンテレフタレートを得る工程について説明する。最終重合機の反応温度は好ましくは220〜260℃、より好ましくは230〜250℃で圧力は好ましくは1.3kPa以下、より好ましくは0.67kPa以下の減圧下で行うことが好ましい条件として挙げられる。重縮合反応により得られるポリブチレンテレフタレートの平均重合度は通常70〜180であることが好ましい。
得られたポリブチレンテレフタレートは、重縮合反応槽の底部よりダイを経てストランド状に抜き出し、冷却水にて水冷した後、ペレタイザーでカッティングし、ペレット状などの粒状体とすることが好ましい。
本発明の方法でポリブチレンテレフタレートを製造するに際し、本発明の目的を損なわない範囲で、通常の添加剤、例えば紫外線吸収剤、熱安定剤、滑剤、離型剤、染料および顔料を含む着色剤などを1種以上添加することができる。
本発明で得られるポリブチレンテレフタレートは、ヘイズが20%以下であることが好ましい。好ましくは10%以下、更に好ましくは5%以下である。ヘイズが20%より高い場合は、ポリマー中に異物が多いこと意味し、成形品やフィルムにした際に、強度や表面性で問題になる。ヘイズは、試料をフェノール/四塩化エタンに溶解させ、積分式ヘーズメーターで測定することにより得られる。
また、本発明で得られたポリブチレンテレフタレートを濾過した際の濾過圧力上昇速度は、2kg/cm/h以下が好ましく、より好ましくは1kg/cm/h以下、さらに好ましくは0.5kg/cm/h以下であり、特に好ましくは0.3kg/cm/h以下である。濾過圧力上昇速度が2kg/cm/hを超える場合は、工程内のポリマーフィルターの濾圧上昇が早く、交換頻度が増加し運転面と品質面の両方において変動が大きく好ましくない。なおフィルターは、エステル化反応槽の出口からポリマー抜き出しダイの出口までの間に設置するのが好ましい。フィルターの孔径は5μm〜100μmが好ましい。濾過圧力が大きくなる原因としては、製造中に発生した異物が粗大化して、フィルターに目詰まりを起こすことが原因として考えられる。
なお、濾過圧力上昇速度は、得られたポリブチレンテレフタレートを150℃で4時間乾燥後、温度255℃〜265℃、濾過面積2.0cmの10μm焼結繊維フィルター、吐出量6.8g/minの条件下で測定し、4時間濾過圧力の上昇速度を測定、1時間あたりの圧力上昇速度に換算することにより測定できる。
異物含有量は、30ppm以下が好ましく、より好ましくは20ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下である。異物含有量が30ppm以上の場合は、運転面と品質面の両方において問題となることがあり、最終製品である成形品やフィルムにした際に、強度不足や表面性の悪化の原因になり好ましくない。なお、異物含有量は、濾過圧力上昇速度測定後のポリマーが付着した焼結繊維フィルターを、O−クロロフェノールに溶解させ、それをPTFEメンブレンフィルターで濾過し、乾燥した後、重量を測定し、フィルター濾上物の重量を濾過したポリマー量で割ることで算出することができる。
以下に実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中、各測定値は下記のとおり求めた。
(1)色調(色座標b値)
反射法によりスガ試験機社製カラーテスターSC−3−CH型を用いて、JIS Z 8730の参考1に記載されるLab表色系におけるハンターの色差式の色座標b値を測定した。測定は電源投入後4時間以上放置し、予め装置を十分安定させた後、内径60mm、深さ30mm、受光部が石英ガラス製である測定セルに試料ペレットをすり切り位置まで充填し、測定セルの向きを90度ずつ4方向変えて測定し、その平均値をもって値とした。
(2)固有粘度
ウベローデ型粘度計とo−クロロフェノールを用い、25℃において、ポリブチレンテレフタレートの濃度1.0dl/g、0.5dl/g及び0.25dl/gの溶液粘度を測定し、粘度数を濃度0に外挿し求めた。
(3)ヘイズ
試料ペレット5.4gをフェノール/四塩化エタン(60:40wt%)の混合溶媒40mlに100℃で2時間加熱溶解し、この溶液を光路長30mmのセルに入れて積分式ヘーズメーター(スガ試験機:HZ−2)でヘイズを測定した。
(4)濾過圧力上昇速度
試料ペレットを150℃で4時間乾燥後、富士フィルター製フジメルトスピニングテスター(MST−C400)で温度255℃、濾過面積2.0cmの10μm焼結繊維フィルター、吐出量6.8g/minの条件下で測定し、4時間濾過圧力の上昇速度を測定、1時間あたりの圧力上昇速度に換算した。
(5)異物含有量
濾過圧力上昇速度試験終了後のポリマーが付着した焼結繊維フィルターを取り出し、O−クロロフェノール20ml、100℃で2時間撹拌・溶解させ、それを50μmのミリポア社製PTFEメンブレンフィルターで濾過した。更にその濾液を5μmのミリポア社製のPTFEメンブレンフィルターで再濾過し、それらを50℃で一晩真空乾燥した後、重量を測定し、フィルター濾上物の重量を濾過したポリマー量で割ることで異物含有量を算出した。また、異物の大きさについては、上記単離した異物をキーエンス社製SEM(VE−8800)を用いて観察し、得られた画像をイメージアナライザーを用いて画像処理し、異物の粒径の分布を測定した。
実施例1
スラリー化槽、スラリー貯槽、エステル化反応槽1基、予備重合反応槽1基、最終重合機1基、ペレタイザーを直列に配した製造装置を用いた。該製造装置を用いて、まず、テレフタル酸100kgに対して1,4−ブタンジオール100kgの割合で両原料をスラリー化槽に供給し、攪拌混合を行い、スラリーを調整した後、50℃の定温にしたスラリー貯槽に移し、スラリー貯槽からスラリーをポンプにより8000kg/時の一定速度で精留塔を有する完全混合槽型エステル化反応槽に供給した。この際、エステル化反応槽付属の精留塔の塔頂からはテトラヒドロフランおよび水を留出させ、塔底から温度191℃の1,4−ブタンジオールを3200L/時で150メッシュのバケットフィルターを通過させ、その一部をエステル化反応槽内へ設けたリング状のヘッダーへ導入した。リング状のヘッダーと、エステル化反応槽上部壁面との距離は750mmでスプレーノズルを等間隔に3個配置し、191℃、流量10.5L/分/個、放射角118°、エステル化反応槽へ31.5L/分で連続的に噴霧した。残りの還流液は、テトラ−n−ブチルチタネート(TBT)2kg/時と合流させエステル化反応槽下部へ1310L/時で還流させた。エステル化反応槽は、内部へ熱媒コイルと熱媒ジャケットを上部と下部へ設ける構造となっており、反応条件は内部液温度230℃にてコイル入り熱媒量を制御させ、熱媒ジャケットは下部を225℃にて加熱し、上部ジャケット温度は200℃とした。エステル化反応槽の圧力は80kPaで維持し、滞留時間1.8時間でエステル化反応槽におけるジカルボン酸の反応率96%、平均重合度2.2のオリゴマーを得た。引き続いてこのオリゴマーをギヤポンプにて予備重合反応槽に供給し、温度255℃、圧力2.0kPaで維持し、滞留時間2時間で重縮合反応させ、平均重合度28、固有粘度0.30の低重合ポリマーを得た。
この低重合ポリマーを重縮合反応槽(横型2軸反応機)に供給し、温度248℃、圧力120Pa。滞留時間1.5時間の条件で重縮合反応させ平均重合度107のポリマーを得た。このポリマーをギヤポンプによりポリマーフィルターならびにダイを経て系外にストランド状に吐出し、冷却水により冷却し、ペレタイザーによりペレット化した。
上記条件にて120日間連続運転後、得られたペレットはb値5、固有粘度1.0dl/g、ヘイズ3%、濾過圧力上昇速度0.1kg/cm/h、異物(粒径10μm、100μmにピークを有する)含有量2ppmと成形品やフィルムに適したポリマーであった。その結果を表1に示す。
実施例2
エステル化反応槽内部へ設けたリング状のヘッダーから、200℃、流量8.6L/分/個、エステル化反応槽へ25.8L/分で噴霧し、残りをエステル化反応槽下部へ1652L/時で還流させたこと以外は、実施例1と同様の方法にて行った。結果、異物含有量は低めにて推移し成形品やフィルムに適したポリマーであった。その結果を表1に示す。
実施例3
エステル化反応槽内部へ設けたリング状のヘッダーから、210℃、流量6.2L/分/個、エステル化反応槽へ18.6L/分で噴霧し、残りをエステル化反応槽下部へ2084L/時で還流させたこと以外は、実施例1と同様の方法にて行った。結果、異物含有量は微少ながら上昇したが成形品やフィルムに適したポリマーであった。その結果を表1に示す。
実施例4
エステル化反応槽内部へ設けたリング状のヘッダーから、220℃、流量3.5L/分/個、エステル化反応槽へ10.5L/分で噴霧し、残りをエステル化反応槽下部へ2570L/時で還流させたこと以外は、実施例1と同様の方法にて行った。結果、異物含有量は微少ながら上昇したが成形品やフィルムに適したポリマーであった。その結果を表1に示す。
実施例5
エステル化反応槽内部へ設けたリング状のヘッダーへスプレーノズルを等間隔に5個配置し、220℃、流量1.7L/分/個、エステル化反応槽へ8.5L/分で噴霧し、残りをエステル化反応槽下部へ2690L/時で還流させたこと以外は、実施例1と同様の方法にて行った。結果、異物含有量は若干上昇したが成形品やフィルムに適したポリマーであった。その結果を表1に示す。
実施例6
エステル化反応槽内部へ設けたリング状のヘッダーから、180℃、流量1.9L/分/個、エステル化反応槽へ5.7L/分で噴霧し、残りをエステル化反応槽下部へ2858L/時で還流させたこと以外は、実施例1と同様の方法にて行った。結果、異物含有量は若干上昇したが成形品やフィルムに適したポリマーであった。その結果を表1に示す。
実施例7
エステル化反応槽内部へ設けたリング状のヘッダーへ原料の一部の1,4−ブタンジオールを導入し、50℃、流量3.5L/分/個、放射角118°、エステル化反応槽へ10.5L/分で連続的に噴霧し、残りの1,4−ブタンジオールをスラリー化槽に供給し、スラリーポンプにより7370kg/時の一定速度でエステル化反応槽に供給した。この際、精留塔底部からの1,4−ブタンジオールは、テトラ−n−ブチルチタネート(TBT)と合流しエステル化反応槽へ全量還流させたこと以外は実施例1と同様の方法にて行った。結果、エステル化反応槽内部液温を加熱するコイル入り熱媒流量が上昇し、熱エネルギーが増加する結果となった。
実施例8
エステル化反応槽内部へ設けたリング状のヘッダーから、175℃で噴霧したこと以外は、実施例1と同様の方法にて行った。エステル化反応槽の液面変動が大きかった。結果を表1に示す。
実施例9
エステル化反応槽内部へ設けたリング状のヘッダーから、225℃で噴霧したこと以外は、実施例1と同様の方法にて行った。スプレー流量が変動することがあったが問題となることはなかった。結果を表1に示す。
実施例10
エステル化反応槽内部へ設けたリング状のヘッダーから、230℃で噴霧したこと以外は、実施例1と同様の方法にて行った。結果、スプレーノズル近傍で1,4−ブタンジオールが沸騰状態となり急激に気化し、スプレー流量の変動が大きくなった。結果を表1に示す。
実施例11
エステル化反応槽内部へ設けたリング状のヘッダーから、220℃、流量1.7L/分/個、エステル化反応槽へ5.1L/分で噴霧し、残りをエステル化反応槽下部へ2894L/時で還流させたこと以外は、実施例1と同様の方法にて行った。結果、異物含有量は若干上昇したが成形品やフィルムに適したポリマーであった。その結果を表1に示す。
実施例12
テレフタル酸100kgに対して1,4−ブタンジオール76kgの割合で両原料をスラリー化槽に供給し、攪拌混合を行いスラリーポンプにより7040kg/時の一定速度で精留塔を有する完全混合槽型エステル化反応槽に供給し、滞留時間4時間でエステル化反応させ、エステル化槽付属の精留塔の塔底から2430L/時でバケットフィルターを通過させ、その一部をエステル化反応槽内部へ設けたリング状のヘッダーから、210℃、流量6.2L/分/個、エステル化反応槽へ18.6L/分で噴霧し、残りをエステル化反応槽下部へ1314L/時で還流させ、平均重合度2.5のオリゴマーを得たこと以外は、実施例1と同様の方法にて行った。その結果を表1に示す。
実施例13
テレフタル酸100kgに対して1,4−ブタンジオール109kgの割合で両原料をスラリー化槽に供給し、攪拌混合を行いスラリーポンプにより8360kg/時の一定速度で精留塔を有する完全混合槽型エステル化反応槽に供給し、エステル化槽付属の精留塔の塔底から3490L/時でバケットフィルターを通過させ、その一部をエステル化反応槽内部へ設けたリング状のヘッダーから、191℃、流量10.5L/分/個、エステル化反応槽へ31.5L/分で噴霧し、残りをエステル化反応槽下部へ1600L/時で還流させ、平均重合度2.0のオリゴマーを得たこと以外は、実施例1と同様の方法にて行った。結果、異物含有量は低めにて推移したが、エステル化反応槽内部液温を加熱するコイル入り熱媒流量が上昇し、エネルギー負荷が増加傾向となったが、連続運転に支障をきたすほどではなく成形品やフィルムに適したポリマーであった。その結果を表1に示す。
実施例14
テレフタル酸100kgに対して1,4−ブタンジオール114kgの割合で両原料をスラリー化槽に供給し、攪拌混合を行いスラリーポンプにより8560kg/時の一定速度で精留塔を有する完全混合槽型エステル化反応槽に供給し、エステル化槽付属の精留塔の塔底から3650L/時でバケットフィルターを通過させ、その一部をエステル化反応槽内部へ設けたリング状のヘッダーから、191℃、流量10.5L/分/個、エステル化反応槽へ31.5L/分で噴霧し、残りをエステル化反応槽下部へ1760L/時で還流させ、平均重合度2.0のオリゴマーを得たこと以外は、実施例1と同様の方法にて行った。結果、異物含有量は低めにて推移したが、エステル化反応槽内部液温を加熱するコイル入り熱媒流量が上限となり、実施例13に比べてエネルギー負荷が更に増加傾向となったが、連続運転に支障をきたすほどではなかった。その結果を表1に示す。
比較例1
エステル化反応槽内部へ設けたリング状のヘッダーへスプレーノズルを等間隔に7個配置し、流量0.7L/分/個、放射角100°、エステル化反応槽へ4.9L/分で連続的に噴霧し、残りをエステル化反応槽下部へ2906L/時で還流させたこと以外は、実施例1と同様の方法にて行った。結果、ノズルの口径が小さくノズル詰まりが頻繁に起こり、連続的に噴霧することができなかった。結果を表1に示す。
比較例2
エステル化反応槽内部へ設けたリング状のヘッダーへスプレーノズルを等間隔に5個配置し、流量0.7L/分/個、放射角118°、エステル化反応槽へ3.5L/分で連続的に噴霧し、残りをエステル化反応槽下部へ2990L/時で還流させたこと以外は、実施例1と同様の方法にて行った。結果、ノズルの口径が小さくノズル詰まりが頻繁に起こり、連続的に噴霧することができなかった。結果を表1に示す。
比較例3
エステル化反応槽内部へ設けたリング状のヘッダーから、225℃、流量1.5L/分/個、エステル化反応槽へ4.5L/分で噴霧し、残りをエステル化反応槽下部へ2930L/時で還流させたこと以外は、実施例1と同様の方法にて行った。その結果を表1に示す。
比較例4
エステル化反応槽内部へ設けたリング状のヘッダーへ原料の一部の1,4−ブタンジオールを導入し、50℃、流量1.5L/分/個、放射角118°、エステル化反応槽へ4.5L/分で連続的に噴霧し、残りの1,4−ブタンジオールをスラリー化槽に供給し、スラリーポンプにより7730kg/時の一定速度でエステル化反応槽に供給した。この際、精留塔底部からの1,4−ブタンジオールは、テトラ−n−ブチルチタネート(TBT)と合流しエステル化反応槽へ全量還流させたこと以外は実施例1と同様の方法にて行った。結果、エステル化反応槽内部液温を加熱するコイル入り熱媒流量が上昇し、熱エネルギーが増加した。
比較例5
エステル化反応槽内部気相部壁面へスプレーすることなく、精留塔底部からの1,4−ブタンジオールは、テトラ−n−ブチルチタネート(TBT)と合流しエステル化反応槽へ全量還流させた。結果、気相部壁面へ異物が堆積し送液ポンプ詰まりが起こり、連続運転するには支障があった。
Figure 2015165011
本製造法でポリブチレンテレフタレートを製造した場合、従来の方法で製造した場合よりも異物量を少なくすることができ、洗浄周期を長くすることができるため生産性を向上させ、品質の優れたポリブチレンテレフタレートを得ることができる。本発明で得られたポリブチレンテレフタレートは品質に優れるので各種の自動車部品や電気・電子部品などに有用に用いることができる。

Claims (5)

  1. テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸と1,4−ブタンジオールを主成分とするジオールとを、エステル化反応槽において連続式にてエステル化反応させた後、次いで重縮合反応槽において重縮合反応させてポリブチレンテレフタレートを製造する方法において、エステル化反応槽内の気相と接している壁面に、1分間に5リットル以上の1,4−ブタンジオールを噴霧することを特徴とするポリブチレンテレフタレートの製造方法。
  2. エステル化反応槽内の気相と接している壁面に、180℃から220℃の1,4−ブタンジオールを噴霧することを特徴とする請求項1記載のポリブチレンテレフタレートの製造方法。
  3. エステル化反応槽内の気相と接している壁面に噴霧する1,4−ブタンジオールが、エステル化反応槽へ還流する1,4−ブタンジオールを主成分とした還流液であることを特徴とする請求項1または2記載のポリブチレンテレフタレートの製造方法。
  4. 反応触媒として、有機チタン化合物の存在下でエステル化反応を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレートの製造方法。
  5. 該有機チタン化合物が、テトラブトキシチタンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレートの製造方法。
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