以下、本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態は、本発明を限定するものではない。また、下記の実施形態で開示された構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることが可能である。
図1−1は、電子回路モジュール部品の断面図である。図1−2及び図1−3は、電子部品と基板との接続部を示す拡大図である。図2は、電子回路モジュール部品を電子機器等の基板に取り付けた状態を示す側面図である。図1−1に示すように、電子回路モジュール部品1は、複数の電子部品2を回路基板3に実装して、ひとまとまりの機能を持つ電子部品としたものである。電子部品2は、回路基板3の表面に実装されていてもよいし、回路基板3の内部に実装されていてもよい。本実施形態において、電子回路モジュール部品1が有する電子部品2としては、例えば、コイルやコンデンサ、あるいは抵抗等の受動素子があるが、ダイオードやトランジスタ等の能動素子やIC(Integral Circuit)等も電子部品2として回路基板3の表面や回路基板3の内部に実装されていてもよい。また、電子部品2は、これらに限定されるものではない。
図1−1に示すように、電子回路モジュール部品1は、電子部品2が実装される回路基板3と、電子部品2を覆う絶縁樹脂4と、絶縁樹脂4の表面を被覆するシールド層5と、を含む。なお、電子回路モジュール部品1は、シールド層5を有していなくてもよい。図1−2及び図1−3に示す接続部100a、100bのように、電子部品2の端子電極2Tと回路基板3の端子電極3Tとは、接合金属10によって接合される。接合金属10は、本実施形態に係るPbフリーはんだが溶融した後、硬化した金属である。このような構造により、電子部品2が回路基板3に実装される。このように、接合金属10は、電子部品2の端子電極2Tと回路基板3の端子電極3Tという二部材を接合するものである。
図1−2に示すように、電子回路モジュール部品1の接合金属10は、回路基板3の端子電極3Tの表面から接合金属10の最も離れた位置Hまでの距離(最大距離)はDである。回路基板3の端子電極3Tから最大距離Dに対して10%以下の距離にある領域に含まれる接合金属10の部分を、第1の領域部10E1と定義する。すなわち、回路基板3の端子電極3Tの表面から第1の領域部10E1内にある点までの距離は、0以上0.1D以下である。また、回路基板3の端子電極3Tの表面から最大距離Dに対して90%以上の距離にある領域に含まれる接合金属10の部分を、第2の領域部10E2と定義する。すなわち、回路基板3の端子電極3Tの表面から第2の領域部10E2内にある点までの距離は、0.9D以上D以下である。
図1−3に示すように、電子部品2の端子電極2Tが、電子部品2の底面に端子電極2Tが設けられ、回路基板3の端子電極3Tと接合されている接続部100bの場合にも、第1の領域部10E1と第2の領域部10E2が同様に定義される。
電子回路モジュール部品1の接合金属10は、以下のような特徴を有する。接合金属10は、Sn合金を主成分とするSn合金相11と、Ni−Fe合金を主成分とするNi−Fe合金相12とを含む。そして、第1の領域部10E1における、第1の領域部10E1の体積に対するNi−Fe合金相12の体積率は、第2の領域部10E2におけるNi−Fe合金相12の体積率よりも大きく、第2の領域部10E2における、第2の領域部10E2の体積に対するSn合金相11の体積率は、第1の領域部10E1における、第1の領域部の体積に対するSn合金相11の体積率よりも大きい。
ここで、Sn合金を主成分とするSn合金相11とは、相を構成するSnが、相を構成する原子の総質量に対して、80質量%以上である合金相をいう。また、Ni−Fe合金を主成分とするNi−Fe合金相12とは、相を構成するNiとFeとの合計が、相を構成する原子の総質量に対して、90質量%以上である合金相をいう。各合金相におけるSn、又は、Ni及びFeの質量%は、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(Dispersive X-ray Fluorescence Spectrometer)により測定することができる。
第1の領域部10E1又は第2の領域部10E2におけるSn合金相11の体積率及びSn−Ni合金相12の体積率は、電子部品2の端子電極2Tと回路基板3の端子電極3Tとが接合金属10により接合された電子回路モジュール部品1を、回路基板3の端子電極3Tの表面から接合金属10の最も離れた位置Hを通り、かつ回路基板3の端子電極3Tの表面と垂直である面で切断し、断面の組織を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)と電子線マイクロアナライザー(EPMA:Electron Probe Micro Analyzer)により観察して測定する。観察は、複数の電子回路モジュール部品1について行い(例えば5個)、その平均値で判断することが好ましい。
Ni−Fe合金相12又はSn合金相11の体積率は、断面の組織観察により、空隙部を除いた断面に対するNi−Fe合金相12又はSn合金相11の面積率を算出し、得られた各面積率を各合金相の体積率として用いる。
第1の領域部10E1がNi−Fe合金相12を含み、さらに第1の領域部10E1におけるNi−Fe合金相12の体積率が、第2の領域部10E2における体積率よりも大きいので、電子部品2を回路基板3へ固定している部分である第1の領域部10E1の溶融温度は第2の領域部10E2よりも上昇する。その結果、電子回路モジュール部品1を電子機器の基板に搭載する際に行われる再熱処理(リフロー)により、基板上の他の端子電極へ第1の領域部10E1のはんだが移動してしまう、いわゆるはんだフラッシュを抑制することができる。
第1の領域部10E1におけるNi−Fe合金相12の体積率は、5体積%以上40体積%以下であることが好ましく、7体積%以上25体積%以下であることがさらに好ましい。これにより、接合金属10の耐熱性及び接合強度がより向上する。
また、第1の領域部10E1におけるNi−Fe合金相12の代表寸法は、3μm以上40μm以下であることが好ましい。これにより、接合金属10の耐熱性及び接合強度がより向上する。ここで、代表寸法として、等価直径を用いる。等価直径は、Ni−Fe合金相12の面積をA、周囲長をCとしたとき、4×A/Cである。等価直径は、複数のNi−Fe合金相12(例えば3個)の平均を用いる。代表寸法は、接合金属10の断面の画像から求める。すなわち、接合金属10の断面の、例えば任意の3箇所を走査型電子顕微鏡(SEM)で写真撮影して得られた画像から求める。
第2の領域部10E2がSn合金相11を含み、さらに第2の領域部10E2におけるSn合金相11の体積率が、第1の領域部10E1における体積率よりも大きいので、第2の領域部10E2の溶融温度は第1の領域部10E1の溶融温度よりも低くなる。その結果、第2の領域部10E2にある接合金属10は電子部品2の端子電極2Tの表面にぬれ広がりやすくなり、端子電極2Tと強固に接合する。接合金属10が電子部品2の端子電極2Tの表面にぬれ広がることにより、端子電極2Tに腐食因子が接触することが抑制される。さらに、電子回路モジュール部品1を電子機器の基板に搭載する際に加えられる熱により、接合金属10はさらに端子電極2Tの表面上にぬれ広がる。その結果、回路基板3の端子電極3Tと電子部品2の端子電極2Tの位置整合性が向上する(セルフアライメント機能)とともに、端子電極2Tの表面と接合金属10との反応が促進され、接合強度が向上する。
電子回路モジュール部品1は、第1の領域部10E1及び第2の領域部10E2が、Sn−Ni合金を主成分とするSn−Ni合金相を含む。ここで、Sn−Ni合金を主成分とするSn−Ni合金相とは、加熱処理で反応したSn3Ni4相などをいう。
少なくとも第1の領域部10E1及び第2の領域部10E2が、Sn−Ni合金相を含むことによって、第1の領域部10E1及び第2の領域部10E2の溶融温度が高くなり、接合金属10の耐熱性及び接合強度が向上する。Sn合金を主成分とするSn合金相11であっても、Ni元素を含有することによってNi元素が含まれていないものに比べ溶融温度は10℃程度高くなる。第2の領域部10E2に存在するSn合金相11の溶融温度がこの程度高くなることで、接合金属10の端子電極2Tに対するぬれ性を維持して電子部品のセルフアライメント機能を発揮させると同時に、はんだが他の端子電極に移動することを抑制できる。
第2の領域部10E2の全質量に対する、第2の領域部10E2におけるNiの質量率は、第1の領域部10E1の全質量に対する、第1の領域部10E2におけるNiの質量率よりも小さいことが好ましい。上述したように、Sn合金相11が、Ni元素を含有することで、接合金属10の再溶融温度が上昇する。したがって、電子部品2の端子電極2T表面へ接合金属10が十分にぬれ広がり、また接合金属10と端子電極2Tとの反応を促進させるために、第2の領域部10E2におけるNiの質量率は、第1の領域部10E1におけるNiの質量率よりも小さいほうが好ましい。また、第2の領域部10E2と第1の領域部10E1とで、Niの質量率に差があることによって、Niの質量率の大きい第1の領域部10E1からNiの質量率の小さい第2の領域部10E2へ向かうNi元素の流れが生じて、第2の領域部10E2を押し広げ、端子電極2Tの表面に接合金属10がぬれ広がると考えられる。
第2の領域部10E2の全質量に対して、第2の領域部10E2におけるNiの含有量が、0.5質量%以上20質量%以下、さらに好ましくは1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
図1−1に示すように、電子回路モジュール部品1は、回路基板3の表面に実装された電子部品2が絶縁樹脂4で覆われる。電子回路モジュール部品1は、電子部品2が実装される側の回路基板3の表面(部品実装面という)も同時に絶縁樹脂4で覆われる。このように、電子回路モジュール部品1は、絶縁樹脂4で複数の電子部品2及び部品実装面を覆うことで、回路基板3及び複数の電子部品2を一体化するとともに、強度が確保される。
電子回路モジュール部品1は、複数の電子部品2を覆った絶縁樹脂4の表面に、シールド層5を有する。本実施形態において、シールド層5は導電材料(導電性を有する材料であり、本実施形態では金属)で構成されている。本実施形態では、シールド層5は単数の導電材料であってもよいし、複数の導電材料の層であってもよい。シールド層5は、絶縁樹脂4の表面を被覆することにより、絶縁樹脂4の内部に封入された電子部品2を電子回路モジュール部品1の外部からの高周波ノイズや電磁波等から遮蔽したり、電子部品2から放射される高周波ノイズ等を遮蔽したりする。このように、シールド層5は、電磁気シールドとして機能する。本実施形態において、シールド層5は、絶縁樹脂4の表面全体を被覆している。しかし、シールド層5は、電磁気シールドとして必要な機能を発揮できるように絶縁樹脂4を被覆すればよく、必ずしも絶縁樹脂4の表面全体を被覆する必要はない。したがって、シールド層5は、絶縁樹脂4の表面の少なくとも一部を被覆していればよい。
電子回路モジュール部品1は、例えば、次のような手順で製造される。
(1)回路基板3の端子電極に本実施形態に係るPbフリーはんだを含むはんだペーストを印刷する。
(2)実装装置(マウンタ)を用いて電子部品2を回路基板3に載置する。
(3)電子部品2が搭載された回路基板3をリフロー炉に入れて前記はんだペーストを加熱することにより、前記はんだペーストに含まれる本実施形態に係るPbフリーはんだが溶融し、硬化する。そして、硬化後のPbフリーはんだ、すなわち接合金属10が、電子部品2の端子電極2Tと回路基板3の端子電極3Tとを接合する。
(4)電子部品2及び回路基板3の表面に付着したフラックスを洗浄する。
(5)絶縁樹脂4で電子部品2及び回路基板3を覆う。
上述の(1)及び(2)の手順は、本実施形態に係るPbフリーはんだを、電子部品2の端子電極2Tと電子部品2が搭載される回路基板3の端子電極3Tとの間に設ける手順に相当し、上述の(3)の手順は、本実施形態に係るPbフリーはんだを溶融させる手順に相当する。
電子回路モジュール部品1の回路基板3は、部品実装面の反対側に、端子電極(モジュール端子電極)7を有する。モジュール端子電極7は、電子回路モジュール部品1が備える電子部品2の端子電極2Tと電気的に接続されるとともに、図2に示す、電子回路モジュール部品1が取り付けられる基板(例えば、電子機器の基板であり、以下、装置基板という)8の端子電極(装置基板端子電極)9とはんだ20によって接合される。このような構造により、電子回路モジュール部品1は、電子部品2と装置基板8との間で電気信号や電力をやり取りする。
図2に示す装置基板8は、電子回路モジュール部品1が実装される基板であり、例えば、電子機器(車載電子機器、携帯電子機器等)に搭載される。装置基板8に電子回路モジュール部品1を実装する場合、例えば、装置基板端子電極9にはんだ20を含むはんだペーストを印刷し、実装装置を用いて電子回路モジュール部品1を装置基板8に搭載する。そして、電子回路モジュール部品1が搭載された装置基板8をリフロー炉に入れて前記はんだペーストを加熱することにより、前記はんだペーストのはんだ20が溶融し、その後硬化することによりモジュール端子電極7と装置基板端子電極9とが接合される。その後、電子回路モジュール部品1や装置基板8の表面に付着したフラックスを洗浄する。
次に、図1−2及び図1−3の電子回路モジュール部品1の接合金属10が得られるような、Pbフリーはんだについて説明する。
現在多く使用されているPbフリーはんだの溶融温度は約220℃であるが、リフローにおける最高温度は240℃〜260℃程度である。電子回路モジュール部品1が有する電子部品2を回路基板3に実装する際に用いられるはんだは、上述したように、電子回路モジュール部品1が装置基板8へ実装される際にリフローされる。このため、前記リフローにおける温度で溶融しないはんだ(高温はんだ)が使用される。
Pbを使用するはんだには、溶融温度が300℃程度のはんだが存在する。しかし、現在のところ、Pbフリーはんだでは溶融温度が260℃以上かつ適切な特性を有するものは存在しない。このため、Pbフリーはんだを用いる場合、電子回路モジュール部品1が有する電子部品2の接合に用いるはんだと、電子回路モジュール部品1を装置基板8へ実装する際に用いるはんだとには、両者の溶融温度差が少ないものを使用せざるを得ない。
電子回路モジュール部品1が有する電子部品2の接合に用いるはんだがリフロー時に再溶融すると、当該はんだの移動や、はんだフラッシュ(はんだの飛散)といった不具合が発生する。その結果、短絡や電子部品2の端子電極2Tと回路基板3の端子電極3Tとの接触不良を招くおそれがある。このため、電子回路モジュール部品1の電子部品2を接合するはんだには、電子回路モジュール部品1を実装する際のリフロー時において再溶融しないもの、又は再溶融がはんだの移動やはんだフラッシュを招かない程度であるものを使用することが望まれている。溶融温度の高いはんだの代替として導電性接着材(Agペースト等)もあるが、機械的な強度が低く、電気抵抗も高く、コストも高い等の課題があり、Pbを用いたはんだの代替とはなっていない。本実施形態に係るPbフリーはんだは、電子回路モジュール部品1が有する電子部品2の接合に用いられるものであって、上述したような要求を満たすものである。
図3は、本実施形態に係るPbフリーはんだの概念図である。図4は、本実施形態に係るPbフリーはんだが有する第2金属粒子及び第3金属粒子の拡大図である。本実施形態に係るPbフリーはんだ6は、使用前(最初に溶融する前)において、第1金属粒子6Aと、第2金属粒子6Bと、第3金属粒子6Cとを含む。第1金属粒子6Aは、Snを主成分とする。Snを主成分とするとは、第1金属粒子6Aを構成している成分のうち、最も多く含まれている成分がSnであることをいう。本実施形態において、Pbフリーはんだ6は、第1金属粒子6Aと、第2金属粒子6Bと、第3金属粒子3Cとの他にフラックスPEを含み、第1金属粒子6Aと第2金属粒子6Bと第3金属粒子6CとがフラックスPEに混合され、分散された状態のはんだペーストである。Pbフリーはんだ6は、少なくとも第1金属粒子6Aと第2金属粒子6Bと第3金属粒子6Cとを含んでいればよく、フラックスPEは必ずしも必要ではない。
図4に示すように、第2金属粒子6Bは、Ni−Fe合金を主成分とする粒子(コア粒子)6BCの表面が、Sn又はSnと合金を作る金属を主成分とする少なくとも1つの被覆層6BSで覆われている。同様に、第3金属粒子6Cは、Ni−Fe合金を主成分とする粒子(コア粒子)6CCの表面が、Sn又はSnと合金を作る金属を主成分とする少なくとも1つの被覆層6CSで覆われている。ここで、Ni−Fe合金を主成分とするとは、コア粒子6BC又はコア粒子6CCを構成する成分のうち、最も多く含まれている成分がNi−Fe合金であることをいう。第3金属粒子6Cのコア粒子6CCの平均粒子径は、第2金属粒子6Bのコア粒子6BCの平均粒子径よりも小さい。これにより、Pbフリーはんだ6が最初に溶融したときに、第2金属粒子は回路基板の端子電極に近い側に分布し、第3金属粒子は第2金属粒子よりも回路基板の端子電極から離れた場所まで分布する。
被覆層6BS及び被覆相6CSに含まれる、Snと合金を作る金属は、例えば、Cu、Ni、Au、Ag、Pd、Bi等がある。本実施形態では、被覆層6BS、6CSとしてSnを用いている。被覆層6BS及び被覆層6CSは、Snを主成分とすることが好ましい。このようにすると、Pbフリーはんだ6が溶融したときには、第1金属粒子6AからのSnと第2金属粒子6Bとのなじみ及び第1金属粒子6AからのSnと第3金属粒子とのなじみが向上するので、接合金属10のSn相にNi−Fe合金が分散しやすくなる。本実施形態では、第2金属粒子6Bの被覆層6BSと第3金属粒子6Cの被覆層6CSはともにSnであるが、被覆層6BSと被覆層6CSとを構成する金属やその組成は互いに異なっていてもよい。図4中の符号RBcは、コア粒子6BCの直径を示し、符号RBsは、被覆層6BSの厚みを示し、符号RCcは、コア粒子6CCの直径を示し、符号RCsは、被覆層6CSの厚みを示す。
図5は、本実施形態に係るPbフリーはんだが有する第2金属粒子の他の例を示す拡大図である。図5に示すように、第2金属粒子6Bは、複数(本実施形態では2つ)の互いに異なる種類の被覆層6BSa、6BSbを有していてもよい。被覆層6BSa、6BSbの数は2つに限定されるものではなく、3つ又は4つ又はそれ以上であってもよい。第2金属粒子6Bが複数の被覆層を有することにより、それぞれの被覆層に異なる特性を与え、接合強度と耐熱性とぬれ性とをバランスよく向上させることができる。図5中の符号RBsa、RBsbは、それぞれ被覆層6BSa、6Bsbの厚みを示す。また、図5中の符号RBsは、第2金属粒子6Bが有する被覆層の総厚みを示す。図5に示す例では、総厚みRBsは、被覆層6BSaの厚みRBsaと被覆層6BSbの厚みRsbとの和(RBsa+RBsb)になる。第3金属粒子6Cについても第2金属粒子6Bと同様に複数の互いに異なる種類の被覆層を有していてもよく、被覆層の総厚みは、第2金属粒子6Bと同様に定義される。
Pbフリーはんだ6はPbを含まないため、Snを主成分とする第1金属粒子6AもPbを含まない。本実施形態において、第2金属粒子6B及び第3金属粒子6Cは、Ni−Fe合金を主成分としているが、他の成分を含んでいてもよい。このため、第2金属粒子6B及び第3金属粒子6Cは、Ni−Fe合金を必須とし、この他にCo(コバルト)、Mo(モリブデン)、Cu(銅)、Cr(クロム)のうち少なくとも一つを含んでいてもよい。
本実施形態において、第1金属粒子6Aとしては、Snを基材としたPbフリーはんだを用いる。より具体的には、第1金属粒子6Aとして、Sn−Ag(銀)系やSn−Cu(銅)系(Snが90質量%以上)のはんだ(Pbフリーはんだ)を用いる。例えば、第1金属粒子6Aとしては、Sn−3.5%Ag(錫−銀共晶はんだ、融点221℃)又はSn−3%Ag−0.5%Cu(錫−銀−銅はんだ、融点217〜219℃)又はSn−0.75%Cu(錫−銅共晶はんだ、融点227℃)を用いることができる。例外的に、Sn−58%Bi(融点139℃)を用いることができる。本実施形態において第1金属粒子6Aに用いるSnを基材としたPbフリーはんだは、Snが90質量%以上(Sn−58%BiはSnが40質量%以上)である。このようなはんだは、リフロー後における組織はSn相が大半を占めるので、一度溶融して硬化した後に複数回リフローをするとSn相が再溶融する。
本実施形態では、Pbフリーはんだ6が初めて溶融して硬化した後の組織を、Sn相にNi−Fe合金が分散している組織とする。図1に示す電子回路モジュール部品1の接合金属10は、図1−2及び図1−3に示すように、回路基板3の端子電極3Tに近い領域では、Sn相にNi−Fe合金が分散している組織となり、回路基板3の端子電極3Tから離れた領域では、Ni−Fe合金が回路基板3の端子電極3Tに近い領域よりも少なく、Sn相がより多い組織となる。
Sn相にNi−Fe合金が分散している組織は、Snが大半を占める組織と比較して強度が高くなる。このため、Pbフリーはんだ6を用いて、図1に示す電子部品2の端子電極2Tと回路基板3の端子電極3Tとを接合した場合には、両者の接合強度が向上する。また、Sn相にNi−Fe合金を分散させた組織は、Snが大半を占める組織と比較して耐熱性が高くなる。このため、接合金属10は、例えば、再度のリフロー等によって加熱された場合でも、自身の再溶融が抑制される。さらに、接合金属10に含まれるNiはSnと合金を作りやすいので、再度のリフロー時に接合金属10が加熱されると、NiがSn相に拡散してSnと合金を作る。その結果、加熱後の接合金属10は、Ni−Sn相を有する組織となり、加熱前と比較して融点が高くなる。このため、加熱された接合金属10は、さらに耐熱性が向上するので、再度のリフロー等によって加熱された場合でも、自身の再溶融をさらに抑制できる。また、Ni−Fe合金を主成分とする相は、Sn相に比べ硬い組織である。硬度の異なる組織が混在する接合金属10の組織は、より硬い相のNi−Fe合金を主成分とする相によるくさび効果が得られるために接合強度及び耐熱性が増加する。
NiはSn相への拡散速度が大きいため、第1金属粒子6Aと、Ni−Fe合金の金属粒子とを組み合わせたPbフリーはんだを用いると、当該Pbフリーはんだが最初に溶融したときにNiがSn相へ拡散して金属間化合物が生成される結果、溶融したPbフリーはんだの粘度が上昇して端子電極に対するぬれ性が低下することがある。その結果、リフロー時において、電子部品2のセルフアライメント機能が低下すること等の不具合が発生するおそれがある。
本実施形態において、図3に示すPbフリーはんだ6は、図4に示すNi−Fe合金のコア粒子6BCの表面に被覆層6BSを、コア粒子6CCの表面に被覆層6CSを設けている。被覆層6BS及び被覆層6CSは、Sn又はSnと合金を作る金属なので、Pbフリーはんだ6が最初に溶融したときには、被覆層6BS及び被覆層6CSがSn相に拡散する。このため、Pbフリーはんだ6が溶融している間においては、NiのSn相への拡散及び両者の反応が抑制される。その結果、Pbフリーはんだ6は、溶融中におけるぬれ性の低下が抑制されるので、リフロー時においては、電子部品2のセルフアライメント機能が低下すること等の不具合が抑制される。このため、電子回路モジュール部品1の歩留りは向上するとともに、不良率は低下する。
次に、図3に示すPbフリーはんだ6に含まれる第1金属粒子6A及び第2金属粒子6B及び第3金属粒子6Cについて詳細に説明する。第1金属粒子6Aの平均粒子径は特に規定するものではないが、本実施形態においては、第1金属粒子6Aの平均粒子径(レーザー回折式粒度分布測定装置((株)島津製作所製 SALD−2200)で測定)を30μm程度、より具体的には25μmから36μmの範囲としている。これは、チップ型電子部品の寸法が0603M(0.6mm×0.3mm)を実装する際におけるはんだペーストの印刷に対応できる大きさである。
さらに小さいチップ型電子部品又はより大きいチップ型電子部品を実装する場合は、前記範囲に対して第1金属粒子6Aの平均粒子径を小さくしたり、大きくしたりすることが好ましい。例えば、0603Mよりも小さいチップ型電子部品に対しては、第1金属粒子6Aの平均粒子径を15μmから25μm(平均粒子径20μm程度)の範囲としたり、0603Mよりも大きいチップ型電子部品に対しては、第1金属粒子6Aの平均粒子径を25μmから45μm(平均粒子径35μm程度)の範囲としたりすることができる。なお、第1金属粒子6Aの平均粒子径が小さくなるにしたがって第1金属粒子6Aの表面積は大きくなる。その結果、第1金属粒子6Aは酸化しやすくなる傾向があるので、はんだペーストの印刷が可能な範囲で、第1金属粒子6Aの平均粒子径をできる限り大きくすることが好ましい。
また、第2金属粒子6Bが複数の被覆層6BSa、6BSbを有する場合、最内の被覆層6BSaはCuを主成分とすることが好ましい。このようにすることで、溶融中のPbフリーはんだ6は、コア粒子6BCの表面にCuとSnとの合金、より具体的にはCu6Sn5の層が形成されて、NiとSn相との反応が抑制される。その結果、接合金属10は、Sn相にNi−Fe合金を分散させた組織を有することになるので、接合強度及び耐熱性が向上する。第2金属粒子6Bが複数の被覆層6BSa、6BSbを有する場合、最外の被覆層(図5に示す例では被覆層6BSb)は、Snを主成分とすることが好ましい。このようにすると、Pbフリーはんだ6が溶融したときには、第1金属粒子6AからのSnと第2金属粒子6Bとのなじみが向上するので、接合金属10のSn相にNi−Fe合金が分散しやすくなる。第3金属粒子が複数の被覆層を有する場合も同様に、最内の被覆層はCuを主成分とすることが好ましい。これにより、接合金属10は、接合強度及び耐熱性が向上する。また、最外の被覆層はSnを主成分とすることが好ましい。これにより、接合金属10のSn相にNi−Fe合金が分散しやすくなる。第3金属粒子6Cが複数の被覆層を有する場合も、最内の被覆層はCuを主成分とすることが好ましく、最外の被覆層はSnを主成分とすることが好ましい。
Snを主成分とする被覆層を最外とすることで、当該被覆層よりも内側の被覆層の酸化を抑制できる。その結果、Pbフリーはんだ6が溶融したときのぬれ性を確保しつつ、Sn相へNi−Fe合金を均一に分散させることができるので、接合金属10の耐熱性及び接合強度を向上させることができる。
次に、第2金属粒子6Bのコア粒子6BC及び第3金属粒子6Cのコア粒子について説明する。上述したように、コア粒子6BC及びコア粒子6CCは、Ni−Fe合金を主成分とする。第3金属粒子6Cを用いないで、第2金属粒子6Bのみを用いた場合、コア粒子6BCの平均粒子径が大きくなるにしたがって、Pbフリーはんだ6が溶融して硬化した後における融点の上昇が小さくなる傾向がある。このため、再度のリフローにおける不具合の発生が予想される。また、コア粒子6BCの平均粒子径が小さくなると、接合強度が低下する傾向がある。
本実施形態においては、Pbフリーはんだ6は、第2金属粒子6Bと、第2金属粒子6Bのコア粒子6BCよりも平均粒子径の小さいコア粒子6CCとを含む。これにより、Pbフリーはんだ6が溶融したときに、平均粒子径の大きいコア粒子6BCは回路基板の端子電極近傍に沈降して、接合金属の耐熱性及び接合強度を向上させる。同時に、平均粒子径の小さいコア粒子6CCは、コア粒子6BCよりも回路基板の端子電極から離れた電子回路の端子電極側まで分布して、接合金属の耐熱性及び接合強度を保持しつつ、溶融したPbフリーはんだ6のぬれ性を向上させ、電子回路のセルフアライメント機能を発揮させる。コア粒子6BCの平均粒子径は、10μm以上30μm以下が好ましく、20μm以上30μm以下が特に好ましい。コア粒子6CCの平均粒子径は、1μm以上10μm以下が好ましい。このような範囲のコア粒子6BC及びコア粒子6CCを用いれば、接合金属10の接合強度及び耐熱性を向上させることができると同時に、Pbフリーはんだ6のぬれ性を向上させて電子回路のセルフアライメント機能を発揮させることができる。
次に、Pbフリーはんだ6の第1金属粒子6Aの質量に対する、第2金属粒子6B及び第3金属粒子6CのNi−Fe合金の総質量(添加割合)の影響を説明する。Pbフリーはんだ6は、Ni−Fe合金の添加割合が10質量%以上であると、接合金属10の接合強度及び耐熱性がさらに向上する。このため、本実施形態では、Ni−Fe合金の添加割合を10質量%以上とし、接合強度及び耐熱性を確保する。
また、Ni−Fe合金の添加割合が大きくなるほど、溶融時におけるぬれ性は低下する。リフロー時における電子部品2のセルフアライメント機能を向上させるためには、Ni−Fe合金の添加割合が35質量%を超えないことが好ましい。したがって、Pbフリーはんだ6において、Ni−Fe合金の添加割合は10質量%以上30質量%以下であることが好ましい。これにより、Pbフリーはんだ6の十分なぬれ性を確保した上で、接合強度及び耐熱性を向上させる。
第2金属粒子6Bの添加割合は、耐熱性の向上のためには7質量%以上であることが好ましく、セルフアライメント機能の向上のためには25質量%以下であることが好ましい。
このPbフリーはんだ6を用いて回路基板3に電子部品2を実装する場合は、上述したように適切な電子部品2のセルフアライメント機能が発揮される。このため、電子部品2の位置決めができる。また、接合金属10も、接合強度及び耐熱性も向上する。このため、Pbフリーはんだ6を用いて製造された電子回路モジュール部品1を再度リフローした場合でも、接合金属10の溶融は抑制される。その結果、電子回路モジュール部品1内におけるはんだフラッシュやはんだの移動が発生するおそれを低減できる。そして、Pbフリーはんだ6を用いた電子回路モジュール部品1は、電子部品2の端子電極2Tと回路基板3の端子電極3Tとの接合不良等が発生するおそれを低減できるので、歩留り及び信頼性が向上する。このように、Pbフリーはんだ6は、電子回路モジュール部品1に搭載される電子部品2の実装に好適である。Pbフリーはんだ6を用いて電子回路モジュール部品1を製造することで、接合金属10の接合強度及び耐熱性が向上し、電子部品2のセルフアライメント機能が発揮される電子回路モジュール部品1が得られる。
また、Pbフリーはんだ6は、一旦溶融して硬化した後は融点が上昇するため、耐熱性が要求される部分の接合等にも有効である。この場合、Pbフリーはんだ6が最初に溶融するときの温度は、Sn系(Snを基材とするはんだであり、例えば、Sn−3.5%Agはんだ等)のはんだと同等(220℃程度)なので、接合時における作業性は、Sn系のはんだを用いた場合と同等である。
第2金属粒子6Bのコア粒子6BCに含まれる酸素量を異ならせて、Pbフリーはんだ6を溶融させた。その結果、コア粒子6BCに含まれる酸素の割合が1.5質量%を超えると、コア粒子6BCの表面および/または被覆層6BSの表面に酸化膜が形成され、Pbフリーはんだ6の溶融時に、Pbフリーはんだ6から第2金属粒子6Bが分離してしまった。このため、コア粒子6BCに含まれる酸素は、1.5質量%以下とすることが好ましい。分離を防ぐためには、酸素量はより少ないことが好ましく、このような範囲とすることによって、接合金属10にNi−Feの第1金属相11を存在させて、接合強度及び耐熱性を向上させることができる。第3金属粒子6Cのコア粒子6CCに含まれる酸素も、同様の理由により1.5質量%以下とすることが好ましい。
第2金属粒子6B又は第3金属粒子6Cに占めるFeの割合は、8質量%以上あれば溶融後硬化したPbフリーはんだ6の融点の上昇が認められる。前記割合が8質量%以上であれば、溶融後硬化したPbフリーはんだ6の融点は、最初の溶融温度よりも高くなる。一方、16質量%を超えると、コストアップや、偏析、流動性の劣化といった恐れが出てくる一方で、添加量増分ほどには溶融温度上昇の効果は見込めない。したがって、第2金属粒子6B又は第3金属粒子6Cに占めるFeの割合は、8質量%以上16質量%以下が好ましい。
Pbフリーはんだ6は、例えば以下のようにして作製される。まず、コア粒子6BC及びコア粒子6CCを作製する。
第2金属粒子6Bのコア粒子6BC及び第3金属粒子6Cのコア粒子6CCの粉末は、例えば、水アトマイズ法、ガスアトマイズ法等の金属粉末製造方法によって作製される。その後、分級機によって粒子径にしたがって分級され、所定の平均粒子径のコア粒子が、コア粒子6BC又はコア粒子6CCとして使用される。平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置((株)島津製作所製 SALD−2200)により測定して得られた結果を用いる。
特に水アトマイズ法を用いた場合、作製されたコア粒子6BC又は6CCの表面が酸化される。第2金属粒子6Bの表面が酸化した状態で第1金属粒子6Aと組み合わされ、Pbフリーはんだ6とされた場合、Pbフリーはんだ6が溶融した状態においては、酸化膜の影響により第2金属粒子6Bの粉末が、硬化したPbフリーはんだ6の表面に集まってしまう。その結果、第1金属粒子6AからのSn相と第2金属粒子6Bの被覆層6BSからのSnと合金を作る金属との反応が促進されず、Sn相にNi−Fe合金を分散させた組織の接合金属10が得られないおそれが高くなる。また、コア粒子6BC及びコア粒子6CCの表面が酸化された状態で被覆層6BS及び被覆層6CSの形成を行うと、表面の酸化膜の影響により、被覆層6BS及び被覆層6CSの接着の強度が弱くなり、被覆層6BS及び被覆層6CSとしての機能が十分に得られない。
したがって、第2金属粒子6Bの製造過程において第2金属粒子6Bが酸化した場合、例えば、水素雰囲気中でこれを還元してから、第1金属粒子6Aと組み合わせる。このようにすることで、Pbフリーはんだ6は、最初の溶融中において、第1金属粒子6AからのSn相と第2金属粒子6Bの被覆層6BSからのSnと合金を作る金属との反応が促進される。その結果、Sn相にNi−Fe合金を分散させた組織の接合金属10が得られるので、接合金属10の接合強度及び耐熱性が向上する。
コア粒子6BC又はコア粒子6CCを作製した後、例えば真空蒸着法、電気めっき法、無電解めっき法、バレルスパッタ法などによって、コア粒子6BC及びコア粒子6CCの表面にそれぞれ被覆層6BS及び被覆層6CSを形成する。被覆層6BS又は被覆層6CSを多層とする場合には、これらの方法を組み合わせて行ってもよい。例えば、電気めっき法は以下のようにして行われる。
(Cu被覆層の形成)分級した後の、所定の平均粒子径を有するNi−Feコア粒子に、めっきに先立ち脱塩処理を行う。次いで有機添加剤等を含む硫酸銅めっき浴槽中で、不溶性アノード電極を用い、Ni−Feコア粒子をカソードとして、電気めっきによりCu被覆層の形成を行う。Ni−Feコア粒子を、絶縁体の撹拌用ボールとともに絶縁体のケースに収容する。ケースは、めっき浴に対して不溶性であり、めっき液が置換できる構造(例えばかご)である。ケースを振動させることによって収容したNi−Feコア粒子を撹拌し、めっき液のエアバブリングを行いながら、NiFeコア粒子へまんべんなく被覆層が形成されるようにして電気めっきを行う。
(Sn被覆層の形成)NiFeコア粒子にSnの被覆層を形成するには、硫酸銅めっき浴槽に変えて錫めっき浴槽を用い、同様の電気めっき法を行う。CuとSnとの2層の被覆層を形成させるには、被覆層が形成されていないNi−Feコア粒子に変えて、Cu被覆が形成されたNi−Fe粒子を用いて電気めっき法を行えばよい。
次に、本実施形態に係るPbフリーはんだ6を用いて電子回路モジュール部品1を製造する方法について説明する。
図6は、本実施形態に係る電子回路モジュール部品の製造方法の手順を示すフローチャートである。図7は、リフロー時における温度の時間変化の一例を示す図である。
本実施形態に係る電子回路モジュール部品の製造方法により、図1−1に示す電子回路モジュール部品1を製造するにあたり、印刷等の手段を用いて、回路基板3の端子電極3Tの表面にPbフリーはんだ6のはんだペーストを塗布する(ステップS101)。次に、回路基板3に電子部品2を載置する(ステップS102)。その後、電子部品2が搭載された回路基板3をリフロー炉でリフローする(ステップS103)。リフロー炉内における温度変化は、例えば、図7に示すようなものである。温度θmでPbフリーはんだ6が溶融し始める。リフロー炉内の温度が最高温度θmaxに到達した後、前記温度は時間の経過とともに低下する。この過程で、溶融したPbフリーはんだ6が硬化して、図1−1、図1−2及び図1−3に示す接合金属10となる。接合金属10によって、電子部品2は回路基板3に固定される。リフローが終了したら、電子部品2が搭載された回路基板3が洗浄され(ステップS104)、本実施形態に係る電子回路モジュール部品の製造手順が終了する。
(評価例)
本実施形態に係るPbフリーはんだ6を使用した電子回路モジュール部品1及び比較例に係るPbフリーはんだを用いた電子回路モジュール部品について、電子部品のセルフアライメント機能、強度、及び耐熱性を評価した。強度及び耐熱性の評価は、電子回路モジュール部品の製造に用いたPbフリーはんだを溶融後硬化させて得た接合金属について、接合強度及び耐熱性を評価することにより行った。
セルフアライメント機能は、リフロー後における電子部品2の位置の誤差が、設定位置に対し±25μm未満の場合をセルフアライメント機能が高いとして◎、±25μm以上40μm未満を○、±40μm以上50μm未満を△、±50μm以上をセルフアライメント機能が十分でないとして×とした。
図8は、Pbフリーはんだが溶融して硬化して得られた接合金属の接合強度を評価する際の説明図である。接合金属の強度は、シェア(せん断)試験により評価した。シェア(せん断)試験では、溶融後硬化したPbフリーはんだに対してせん断応力を負荷した。シェア試験は、図8に示すように、基板70の電極71にPbフリーはんだと電子部品2(寸法は0603M)とを乗せて溶融させ、電極71の表面で電子部品2と接合している試験片(硬化したPbフリーはんだ)72を対象とした。試験片72を有する基板70は、試験装置のテーブル73に取り付けられる。この状態で、テーブル73がシェアツール74に向かって移動する。このとき、テーブル73は、電子部品2の長手方向と直交する方向に移動するので、シェアツール74は、電子部品2の長手方向と直交する方向から電子部品2に衝突する。そして、試験片72がシェアツール74で破壊されるときの破断の様子を観察し、これによって接合強度を評価した。シェア試験には、ハイスピードボンドテスター(Dage社、Dage−4000HS)を用いた。試験速度Vは0.1mm/secとした。接合強度は、強度試験の破壊箇所で判断した。図8において、硬化した試験片72内で破壊せずに基板70又は電子部品2で破壊した場合には試験片72の強度は十分が高いとして◎、電極71と基板70との界面で破壊した場合には試験片72の強度は高いとして○、電子部品2の端子電極2Tとの界面近傍で破壊した場合には△、接合部のはんだ組織で破壊した場合には試験片72の強度が十分高くないとして×とした。
耐熱性は、最初に溶融したPbフリーはんだが硬化して得られた接合金属を加熱することにより評価した。耐熱性は、接合金属をリフロー時の温度(240℃〜260℃)で加熱した際の吸熱量に基づいて評価した。吸熱量は、熱流束示差走査熱量計((株)島津製作所 DSC−50)を用いて測定した。吸熱量の絶対値が0J/gであれば接合金属は溶融しない。吸熱量があると、接合金属は溶融することになるが、吸熱量の絶対値が25J/gから35J/gの範囲であれば、接合金属が溶融したとしても、再度のリフロー時において、電子回路部品モジュールの絶縁樹脂にクラックが発生したり、はんだフラッシュその他の欠陥が発生したりすることはない。このため、耐熱性は、吸熱量の絶対値が25J/gよりも小さい場合には接合金属が溶融しない(○)、吸熱量の絶対値が25J/g以上35J/g以下である場合には接合金属の溶融が少ない(△)、吸熱量の絶対値が35J/gよりも大きい場合には接合金属が溶融した(×)と判定した。
評価結果を表1、表2に示す。表1において、はんだ母材の種類の表示は以下の条件を表す。なお、百分率表示は質量%である。
A:Sn−3%Ag−0.5%Cu(融点217℃〜219℃)
B:Sn−3.5%Ag(融点221℃)
C:Sn−0.75%Cu(融点227℃)
D:Sn−58%Bi(融点139℃)
E:Sn−3.5%Ag−0.1%Ni−0.1%Fe
また、各添加金属粒子の表示は以下の条件を表す。なお、かっこ内は、添加金属粒子のコア粒子中におけるFeの含有質量率を示す。
NiFe:Ni−Fe合金粒子
Ni+Fe:Ni粒子+Fe粒子
また、被覆層の表示は以下の意味を表す。
Sn(Th≦1):Sn被覆、厚さThが1μm以下
Sn(1<Th≦10):Sn被覆、厚さThが1μmより大きく10μm以下
CuSn(Th≦1):CuとSnとの2層被覆、厚さThが1μm以下
コア粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置((株)島津製作所製 SALD−2200)により測定した数値である。各添加金属粒子の量は、はんだ母材質量に対する各添加金属粒子の質量を、質量%で表示したものである。
セルフアライメント機能と耐熱性と接合強度とのいずれかが×である場合、総合評価は×とした。すべての項目の評価が△である場合、総合評価は△とした。セルフアライメント機能及び耐熱性及び接合強度のいずれか一項目のみが△であり、それ以外の少なくとも一項目が◎である場合、総合評価は○とした。セルフアライメント機能及び耐熱性及び接合強度のいずれか一項目のみの評価が○であり、それ以外の項目の評価が◎である場合、総合評価は◎とした。総合評価は○以上を許容とした。
表2より、以下の考察が導かれる。サンプル16〜19の結果から、第1の領域部及び第2の領域部の双方にNi−Fe合金相が存在しない場合は、セルフアライメント機能、耐熱性及び強度について、許容される評価が得られない。一方、サンプル1〜15の結果から、少なくとも第1の領域部にNi−Fe合金相が存在し、かつ第1の領域部におけるNi−Fe合金相の体積率が、第2の領域部におけるNi−Fe合金相の体積率よりも多い場合は、比較例と比較してセルフアライメント機能、耐熱性、及び強度が向上していることが分かる。なお、Sn合金相の体積率は、1−(Ni−Fe合金相の体積率)と近似してよい。したがって、サンプル1〜15の結果から、第2の領域部におけるSn合金相の体積率が、第1の領域部におけるSn合金相の体積率よりも大きい場合には、比較例と比較してセルフアライメント機能、耐熱性、及び強度が向上していることが分かる。
サンプル6の結果から、強度向上のためには、第1の領域部と第2の領域部との双方が、Sn−Ni合金相を含むことが好ましいことが分かる。また、サンプル7、16,18,19の結果より、セルフアライメント機能の向上のためには、各領域の全質量に対するNiの質量率は、第2の領域部よりも第1の領域部の数値が大きいことが好ましいことが分かる。
また、第2の領域部については、以下のことが分かる。サンプル7の結果より、セルフアライメント機能の向上のためには、第2の領域部における、第2の領域部の全質量に対するNiの質量率は、20質量%以下であることが好ましいことが分かる。また、サンプル6,8の結果より、耐熱性の向上のためには、第2の領域部における、第2の領域部の全質量に対するNiの質量率は、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがさらに好ましいことが分かる。
また、第1の領域部については、以下のことが分かる。サンプル4,8の結果から、耐熱性の向上のためには、第1の領域部におけるNi−Fe合金相の体積率は、5体積%以上であることが好ましく、7体積%以上であることがさらに好ましく、10体積%であることがさらにより好ましいことが分かる。また、サンプル3,9の結果から、セルフアライメント機能の向上のためには、第1の領域部におけるNi−Fe合金相の体積率は、40体積%以下であることが好ましく、25体積%以下であることがさらに好ましいことが分かる。
表1及び表2より、以下の考察が導かれる。サンプル16〜18(比較例)の結果より、Ni−Fe合金が配合されていないPbフリーはんだを用いた場合、セルフアライメント機能、耐熱性及び強度について、許容される評価が得られない。サンプル6、8の結果より、耐熱性及び強度の向上のためには、Pbフリーはんだに、第2金属粒子に加えて、第2金属粒子より平均粒子径の小さい第3金属粒子が配合されていることが好ましいことが分かる。
サンプル9の結果より、セルフアライメント機能の向上のためには、少なくとも第3金属粒子に被覆層が形成されていることが好ましいことが分かる。
また、第2金属粒子の添加量が多くなるほど、第1の領域部におけるNi−Fe合金相の体積率が大きくなり、第1の領域部における、第1の領域部の全質量に対するNiの質量率が大きくなる傾向があることが分かる。また、第3金属粒子の添加量が多くなるほど、第2の領域部における、第2の領域部の全質量に対するNiの質量率が大きくなる傾向があることが分かる。