以下、本発明に係る通信用マルチコアファイバ(以降、マルチコアファイバと呼ぶ)の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な断面の構造を示す図である。図1に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ10は、クラッド12と、クラッド12の断面における中心に配される1個のコア11aと、1個のコア11aを囲むように等間隔で配される9個のコア11bと、クラッド12の外周面を被覆する内側保護層13と、内側保護層13の外周面を被覆する外側保護層14と、を備える。つまり本実施形態のマルチコアファイバ10は、複数のコア11a,11bが1−9配置とされている。
このマルチコアファイバ10は、光信号を伝播する光ファイバであり、それぞれのコア11a、11bを伝播する光のモードフィールド径は、9μm〜13μmとされることが好ましい。モードフィールド径が9μmより以上とされることにより、光がコアに集中しすぎて、非線形光学効果による光の損失が大きくなることを抑制することができ、モードフィールド径が13μmより以下とされることにより、光がコアの外に漏れる量が大きくなることで、光の損失が大きくなることを抑制することができる。
クラッド12は、断面における外形が略円形とされ、複数のコア11a、11bの外周面を隙間なく囲んでいる。クラッド12と形成する材料は、通常クラッドに用いられる材料であれば特に制限されないが、例えば、何もドーパントが添加されていないピュアシリカガラスから形成される。
それぞれのコア11a,11bは、互いに隣り合うコア11a,11bの中心同士の距離が30μm以上となりように配置されることが好ましく、40μm以上となるように配置されることがより好ましい。このように、それぞれのコア11a,11bが配置されることで、互いに隣り合うコア11a,11b同士のクロストークを抑制することができる。特に、上記のようにモードフィールド径が9〜13μmである場合、このようにコア11a,11bが配置されることによりクロストークを抑制することができる。また、外周側に配されるコア11bは、コア11bの中心とクラッド12の外周面との距離が35μm以上となるように配置されることが好ましく、40μm以上とされることがより好ましい。このように外周側のコア11bが配置されることにより、外周側のコア11bを伝播する光が内側保護層13に吸収されることに起因する、光信号の損失を抑制することができる。
また、外周側に配されるそれぞれのコア11bは、クラッド12の中心からそれぞれ等距離とされ、等間隔の位置に配されている。このように配置されたコア11a、11bは、クラッド12の中心軸に対して対称とされている。つまり、マルチコアファイバ10をクラッド12の中心軸の周りに所定の角度回転させた場合に、外周側のそれぞれのコア11bの回転後における位置は、回転前における外周側の他のコア11bの位置となる。また、中心に配置されたコア11aは、マルチコアファイバ10を中心軸の周りに回転させても動かない。このようにそれぞれのコア11a、11bがクラッド12の中心軸に対して対称となる位置に配置されることにより、それぞれのコア11a、11bの配置による光学的性質を均質にすることができる。
また、このように配置されたコア11aと、互いに隣り合う2つのコア11bとにより二等辺三角形を描くため、中心コア11aと、外側コア11bの中心間距離は、互いに隣り合う外側コア11bの中心間距離よりも大きくなる。
また、それぞれのコア11a,11bの直径は、特に限定されないが、例えば、8.7μm〜12μmとされる。なお、互いに隣り合うそれぞれのコア11a、11bの直径が、互いに僅かに異なるようにさることが好ましい。この場合、例えば、外周側に配置されるコア11bの直径は、中心に配置されるコア11aの直径に対して、約3%異なるようにされ、さらに、互いに隣り合う外周側に配置されたコア11b同士は、直径が互いに約0.5%〜5%異なるようにされる。このように、互いに隣り合うコア11a、11bの直径が、物理的に僅かに異なっていても、コア11a、11bを伝播する光にしてみれば、それぞれのコア11a、11bの直径は、殆ど変わらず、略同等の光学特性となるが、このように互いに隣り合うコア11a、11bの直径が、物理的に僅かに異なることにより、互いに隣り合うコア11a、11bのクロストークを抑制することができる。
また、それぞれのコア11a,11bの屈折率は、クラッド12の屈折率よりも高くされ、それぞれのコア11a,11bのクラッドに対する比屈折率差Δは、特に限定されないが、例えば、0.21%〜0.5%とされる。
なお、それぞれのコア11a,11bの内、互いに隣り合うコアの屈折率が、互いに異なることが、それぞれのコア11a,11b同士のクロストークを抑制できる観点から好ましい。この場合、互いに隣り合うコア11a,11bの屈折率の差は、屈折率の1%〜5%であることが、クロストークを抑制しつつ、それぞれのコアの光学的特性を同等にする観点から好ましい。
このようなコア11a、11bの材料としては、クラッド12よりも屈折率が高く、上記のようなクラッドに対する比屈折率差である限りにおいて、特に限定されないが、例えば、屈折率を上げるゲルマニウム等のドーパントが添加されたシリカガラスを挙げることができる。
また、内側保護層13及び外側保護層14の材料としては、互いに異なる種類の紫外線硬化樹脂を挙げることができる。
なお、このようなマルチコアファイバ10は、スタックアンドドロー法により製造することができる。すなわち、まず、コア11a,11bとなる複数のロッド状のコアガラス部材、及び、クラッド12の一部となる管状のクラッドガラス部材、及び、クラッド12の一部となるロッド状のクラッドガラス部材を準備する。そして、それぞれのコアガラス部材を管状のクラッドガラス部材の貫通孔内に配置し、管状のクラッドガラス部材とそれぞれのコアガラス部材との間にロッド状のクラッドガラス部材を配置して、隙間を埋める。そして、コアガラス部材が配置された状態で、コラプスすることにより、断面における配置が、図1に示すマルチコアファイバ10における内側保護層13、外側保護層14を除いた部分と相似形のファイバ用母材を作製する。そして、作成したファイバ用母材加熱溶融し紡糸することでマルチコアファイバとし、このマルチコアファイバを内側保護層13、外側保護層14で被覆して、マルチコアファイバ10とする。或いは、上記のコアガラス部材、及び、ロッド状のクラッドガラス部材を管状のクラッドガラス部材の貫通孔内に配置した状態で、コラプスしながら紡糸しても良い。
或いは、中心にコア11aとなるコアガラス部材を有する中間母材において、クラッドガラス部材における中心のコアガラス部材の周辺に貫通孔をドリルなどを用いて孔開し、その貫通孔にコアとなるコアガラス部材を有するガラスロッドを挿入し、このガラスロッドとクラッドガラス体との間の隙間を潰すようにコラプスすることにより、上記と同様のファイバ用母材を作製する。そして、上記と同様にして紡糸すると共に、内側保護層13、外側保護層14で被覆して、マルチコアファイバ10とする。或いは、上記の貫通孔に上記のガラスロッドを挿入した状態で、コラプスしながら紡糸しても良い。
次に、クラッド12の直径について説明する。従来より、光信号伝送用の光ファイバに許容される最小の曲げ半径は、曲げ損失特性の観点から、30mm以上とされてきた。一方、近年、曲げによる光の損失(曲げ損失)が小さく、曲げ半径15mm以下でも曲げ損失を生じない、曲げに強いファイバが開発されている。しかし、光ファイバは、小径で曲げた状態で長期間を経ると、僅かな石英ガラス内のキズなどに起因して破断する場合があることが知られている。従って、光ファイバに求められる最小の曲げ半径は、曲げ損失の観点による条件よりも、信頼性の観点による条件が優先されて決まる。そして、信頼性を確保するための指標として、クラッドの外径が125μmの光ファイバについては、上記曲げ半径が30mmよりも厳しい条件とされ、曲げ半径が15mmで100回巻かれた状態で、20年間の破断確率が1.0×10−7以下であることが好ましいといわれている。ここで、光ファイバのスクリーニングレベルは、1%の伸び歪を仮定している。そこで、クラッドの外径が125μm以上の光ファイバについては、従来より示されている曲げ半径を用いて、更に、クラッドの外径が125μmの光ファイバの条件である上記の100回巻く条件を用いて、曲げ半径が30mmで100回巻かれた状態で、20年間の破断確率が1.0×10−7以下であれば、通信用光ファイバとして十分な信頼性を確保することができると考えられる。
図2は、光ファイバの曲げ半径と破断確率との関係を示す図である。図2においては、クラッドの直径が、125μm、150μm、200μm、230μm、250μ、300μmの光ファイバが100回巻かれた場合、曲げ半径と20年間における破断確率との関係を示す曲線が示されている。
図2に示すように、直径が230μm以下であれば、光ファイバが100回巻かれた場合における20年間における破断確率が、1.0×10−7以下となる。従って、信頼性を確保して敷設できるためには、マルチコアファイバ10のクラッドの外径は、230μm以下とされる。さらに、互いに隣り合うコア11a,11bの中心同士の距離が30μm以上とされ、外周側に配されるコア11bの中心とクラッド12の外周面との距離が35μm以上とされる場合においては、本実施形態のようにコアが1−9配置されるマルチコアファイバ10において、クラッド12の外径は、158μm〜230μmとされる。また、互いに隣り合うコア11a,11bの中心同士の距離が40μm以上とされ、外周側に配されるコア11bの中心とクラッド12の外周面との距離が40μm以上とされる場合においては、本実施形態のようにコアが1−9配置されるマルチコアファイバ10において、クラッド12の外径は、197μm〜230μmとされる。
以上説明したように、このようなマルチコアファイバ10によれば、クラッド12の外径が230μm以内とされるため、敷設される場合に破断に対する信頼性を確保することができる。また、コアが1−6−12配置される光ファイバと比べて、このマルチコアファイバと同じコア間距離とされる場合に、最も外周側のコア11bの中心とクラッド12の外周面との距離を大きくすることができる。従って、マイクロベンド損失を抑制することができ、信頼性を確保することができる。
さらに、マルチコアファイバ10は、このように信頼性を有するにもかかわらず、10個のコアが配置されるため、従来の一般的なコアが1−6配置されるマルチコアファイバよりも、多くの情報を伝送することができる。
また、コアが1−6配置されるマルチコアファイバにおいては、中心に配置されるコアと、外側に配置される互いに隣接する2個のコアにより正三角形が形成されるが、本発明のマルチコアファイバ10においては、外周側のコア11bが7個以上とされるため、中心に配置されるコア11aと、外側に配置される互いに隣接する2個のコア11bにより二等辺三角形が形成される。従って、中心のコア11aと外周側のコア11bとの中心間距離は、互いに隣り合う外周側のコア11b同士の中心間距離よりも大きくなる。クロストークはコア間距離が大きくなると小さくなるため、中心のコア11aと外周側のコア11bのクロストークは、外周側のコア11b同士のクロストークよりも小さくなる。従って、すべてのコア11a,11bに光信号を入射した場合、最近接コアの多い中心のコア11aは、クロストークの総和が大きくなるが、上記関係より、中心のコア11aのクロストークの総和を低く抑えることができる。マルチコアファイバ10のコア11a,11b全体として、クロストークのバランスをとることができる。
さらに、互いに隣り合うコア11a,11bの中心同士の距離がそれぞれ30μm以上とされる場合においては、クロストークを低減することができ、40μm以上とされる場合においては、よりクロストークを低減することができるため、より高い信頼性とすることができる。さらに、それぞれのコア11bの中心とクラッド12の外周面との距離が35μm以上とされる場合においては、内側保護層13に光が吸収されることによる信号光の損失を抑制することができるので、通信用途として信頼性を確保することができ、40μm以上とされる場合においては、より高い信頼性を確保することができる。
なお、本実施形態においては、中心に1個のコアが配置されて、外周側に9個のコアが配置される例について説明したが、外周側のコアの数は、これに限らず、コアが従来の一般的な1−6配置されるマルチコアファイバよりも多い限りにおいて、適宜変形することができる。図3は、中心に1個のコアが配置され、その周りに複数のコアが等間隔で配置されるマルチコアファイバにおいて、互いに隣り合うコアの中心間距離を40μmとする場合に、クラッドの外径と、外周側のコアとクラッドの外周面との距離と、の関係を示す図である。
図3に示すように、最も左の線は、コア11a,11bが1−6配置される場合において、クラッド12の外径と、外周側のコア11bの中心とクラッド12の外周面との距離と、の関係を示している。そして、この線の右隣から順に、コア11a,11bが、1−7配置、1−8配置、1−9配置、1−10配置、1−11配置、1−12配置される場合の、クラッド12の外径と、外周側のコア11bの中心とクラッド12の外周面との距離と、の関係が示されている。
上述のように、敷設される場合に破断に対する信頼性を確保する観点から、クラッド12の外径は230μm以下である必要があり、更に、内側保護層13に光が吸収されることによる信号光の損失を抑制する観点から、外周側に配置されるコア11bの中心とクラッド12の外周面との距離は35μm以上とされることが好ましく、40μm以上とされることがより好ましい。従来の一般的なマルチコアファイバであるコアが1−6配置されるマルチコアファイバよりもコアの数が多いマルチコアファイバにおいて、クラッド12の中心に1個のコア11aが配され、この1個のコア11aを囲むように外周側に複数のコア11bが配される場合、敷設される場合に破断に対する信頼性を確保しつつ、より多くのコアを配置するためには、コア11bの中心とクラッド12の外周面との距離が35μm以下である場合には、外周側のコア11bの数が7個〜12個とされ、コア11bの中心とクラッド12の外周面との距離が40μm以下である場合には、外周側のコア11bの数が7個〜11個とされる。なお、コア11a,11bが1−9配置される場合の、上記クラッド12の外径の下限は、図3からも求めることができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図4を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
図4は、本発明の第2実施形態に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な断面の構造を示す図である。図4に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ20は、コア11a,11bの配置が第1実施形態のマルチコアファイバ10と異なる。具体的には、クラッド12の断面における中心Cを囲むように等間隔で3個のコア11aが配され、クラッド12の中心Cを中心にして、この3個のコア11aを囲むように等間隔で9個のコア11bが配されている。つまり本実施形態のマルチコアファイバ20においては、複数のコア11a,11bが3−9配置とされる。
本実施形態のマルチコアファイバ20は、第1実施形態のマルチコアファイバ10と同様に、光信光を伝播する光ファイバであり、それぞれのコア11a,11bを伝播する光のモードフィールド径は、第1実施形態のマルチコアファイバ10と同様の理由から9μm〜13μmとされることが好ましい。
また、第1実施形態のマルチコアファイバ10と同様の理由から、それぞれのコア11a、11bの中心間距離は30μm以上とされることが好ましく、40μm以上とされることがより好ましい。また、第1実施形態のマルチコアファイバ10と同様の理由から、外周側のコア11bの中心とクラッド12の外周面との距離も35μm以上とされることが好ましく、40μm以上とされることがより好ましい。
本実施形態においては、上述のように互いに隣り合うコア11a,11bの中心間距離が30μm以上とされ、外周側に配されるコア11bの中心とクラッド12の外周面との距離が35μm以上とされる場合においては、クラッド12の外径は、165μm〜230μmとされ、互いに隣り合うコア11a,11bの中心間距離が40μm以上とされ、外周側に配されるコア11bの中心とクラッド12の外周面との距離が40μm以上とされる場合においては、クラッド12の外径は、207μm〜230μmとされる。クラッド12の外径の上限が230μmであるのは、第1実施形態のマルチコアファイバ10のクラッド12の外径の上限が230μmである理由と同様である。
本実施形態によるマルチコアファイバ20のコア11a,11bの配置によれば、12個のコアが配置されるため、従来の一般的なコアが1−6配置されるマルチコアファイバよりも多くのコアを配置され、より多くの情報を伝送することができる。
なお、本実施形態のマルチコアファイバ20のように、クラッド12の中心Cを囲むように3個のコアが配される場合、この3個のコア11aを囲む外周側のコア11bは、5個以上であれば、従来の一般的なコアが1−6配置されるマルチコアファイバよりも多くのコアを配置することができる。そして、クラッド12の外径が230μm以下であるため、外周側のコア11bの数は12個以下とされる。従って、クラッド12の中心Cを囲むように3個のコアが配される場合、外周側のコアは5個〜12個配置される。つまり、本実施形態のように中心に3個のコアが配される場合においては、敷設される場合に破断に対する信頼性を確保しつつ、より多くのコアを配置するためには、コア11a,11bが3−5配置〜3―12配置とされる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図5を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
図5は、本発明の第3実施形態に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な断面の構造を示す図である。図5に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ30は、中心に配されるコア11a、及び、複数のコア11bの他に最外周側に複数のコア11cが配される点において、第1実施形態のマルチコアファイバ10と異なる。具体的には、クラッド12の断面における中心に1個のコア11aが配され、この1個のコア11aを囲むように等間隔で最も外周側の6個のコア11cが配され、6個のコア11cのうち互いに隣り合う2個のコア11cを結ぶそれぞれの結線Lc(図5において破線で示す)と、クラッド12の中心に配される1個のコア11aとの間において、それぞれの結線Lcに垂直でコア11aを通るそれぞれの線Lv(図5において一点鎖線で示す)上にコア11bが配されている。従って、コア11bは6個配されている。つまり本実施形態のマルチコアファイバ30においては、複数のコア11a,11b,11cが1−6−6配置とされる。なお、本実施形態においては、それぞれのコア11a,11b,11cは、三角格子状となるように配されている。
本実施形態のマルチコアファイバ30は、第1実施形態のマルチコアファイバ10と同様に、光信号を伝播する光ファイバであり、それぞれのコア11a,11b,11cを伝播する光のモードフィールド径は、第1実施形態のマルチコアファイバ10と同様の理由から9μm〜13μmとされることが好ましい。
また、第1実施形態のマルチコアファイバ10と同様の理由から、それぞれのコア11a,11b,11cの中心間距離は30μm以上とされることが好ましく、40μm以上とされることがより好ましい。また、第1実施形態のマルチコアファイバ10と同様の理由から、外周側のコア11cの中心とクラッド12の外周面との距離も35μm以上とされることが好ましく、40μm以上とされることがより好ましい。
図6は、中心に1個のコアが配置され、その周りに6個のコアが配され、その6個のコアの周りに複数のコアが等間隔で配される場合において、互いに隣り合うコアの中心間距離を40μmとする場合に、クラッドの直径と、外周側のコアとクラッドの外周面との距離と、の関係を示す図である。図6において、左側の直線が、本実施形態と同様にして1−6−6配置される場合のクラッドの直径と、外周側のコアとクラッドの外周面との距離と、の関係を示し、右側の直線が1−6−12配置される場合のクラッドの直径と、外周側のコアとクラッドの外周面との距離と、の関係を示す。図6に示すように、本実施形態のようにコアが配される1−6−6配置であれば、クラッド12の外径は230μm以下で、外周側に配置されるコア11cの中心とクラッド12の外周面との距離が40μm以上とされる領域内に線が位置する。一方、1−6−12配置では、この領域内に線が位置しなく、このような配置は採用できないことが分かる。
本実施形態においては、上述のように互いに隣り合うコア11a,11b,11cの中心間距離が30μm以上とされ、外周側に配されるコア11cの中心とクラッド12の外周面との距離が35μm以上とされる場合においては、クラッド12の外径は、174μm〜230μmとされ、互いに隣り合うコア11a,11bの中心間距離が40μm以上とされ、外周側に配されるコア11bの中心とクラッド12の外周面との距離が40μm以上とされる場合においては、図6からクラッド12の外径は、219μm〜230μmとされる。なお、クラッド12の外径の上限が230μmであるのは、第1実施形態のマルチコアファイバ10のクラッド12の外径の上限が230μmである理由と同様である。
本実施形態によるマルチコアファイバ30のコア11a,11b,11cの配置によれば、13個のコアが配置されるため、従来の一般的なコアが1−6配置されるマルチコアファイバよりも多くのコアを配置され、より多くの情報を伝送することができる。
また、本実施形態においては、コア11bが6個の例を示したが、コア11bは1個〜6個とすることができる。したがって、クラッド12の中心に1個のコア11aが配され、この1個のコア11aを囲むように等間隔で6個のコア11cが配され、これら6個のコア11cのうち互いに隣り合う2個のコア11cを結ぶ結線Lcとクラッド12の中心に配される1個のコア11aとの間において、結線Lcに垂直でクラッド12の中心に配される1個のコア11aを通る線Lv上に少なくとも1個のコア11bが配されるようにしても良い。つまり、本実施形態のように中心に1個のコアが配されて、全体として3層にコアが配される場合においては、敷設される場合に破断に対する信頼性を確保しつつ、より多くのコアを配置するためには、コア11a,11b,11cは、1−1−6配置〜1−6−6配置とされる。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図7を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
図7は、本発明の第4実施形態に係るマルチコアファイバの様子を示す図である。図7に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ40は、第1実施形態のマルチコアファイバ10における複数のコア11a,11bが、隙間なく内側クラッド層15a,15bで囲まれ、更に、内側クラッド層15a,15bが、それぞれ低屈折率層16a,16bで囲まれている点において、第1実施形態のマルチコアファイバ10と異なる。本実施形態においては、このようなコア11a,11b、内側クラッド層15a,15b、低屈折率層16a,16bによりコア要素41a,41bが構成されている。
それぞれの内側クラッド層15a,15bの外径は互いに等しく、それぞれの低屈折率層16a,16bの外径は互いに等しくされている。従って、それぞれの内側クラッド層15a,15bの厚さは、互いに等しく、さらに、それぞれの低屈折率層16a,16bの厚さは互いに等しくされている。
ここで、それぞれの内側クラッド層15a,15bの屈折率n5、及び、クラッド12の屈折率n2は、それぞれのコア11a,11bの屈折率n1よりも低くされ、低屈折率層16a,16bの屈折率n6は、内側クラッド層15a,15bの屈折率n5、及び、クラッド12の屈折率n2よりも更に低くされている。別言すれば、それぞれの屈折率n1,n2,n5,n6は、
n1>n5>n6
n1>n2
n6<n2
を全て満たしている。
さらに、本実施形態においては、内側クラッド層15a,15bの屈折率n5とクラッド12の屈折率n2とが、互いに等しくされている。つまり、n5=n2とされている。
それぞれのコア要素41a,41bを屈折率の観点から見る場合に、それぞれのコア要素41a,41bにおいて、低屈折率層16a,16bは、溝状に低い形状となるので、それぞれのコア要素41a,41bは、トレンチ構造を有している。なお、本実施形態において、それぞれの低屈折率層16a,16bの屈折率は、それぞれの低屈折率層16a,16b内で一様であるため、それぞれの低屈折率層16a,16bにおける屈折率と平均屈折率は同意である。
なお、内側クラッド層15a,15bは、上述のようにクラッド12と等しい屈折率とされるため、例えば、クラッド12と同じ材料から形成される。また、低屈折率層16a,16bは、屈折率を下げるドーパントが添加されたシリカガラスから成る。このようなドーパントとしては、フッ素を挙げることができる。
このようなマルチコアファイバ40においては、それぞれのコア要素41a,41bにおいて、低屈折率層16a,16bの屈折率n6が、内側クラッド層15a,15bの屈折率n5及びクラッド12の屈折率n2よりも低くされることで、コア11a,11bへの光の閉じ込め効果が大きくなり、コア11a,11bから光が漏えいしづらくなる。従って、コア11a,11bを伝播する光がそれぞれのコア要素41a,41bから漏えいすることを防止することができる。さらに、屈折率の低い低屈折率層16a,16b及びクラッド12が障壁となり、互いに隣り合うコア要素におけるコア11a,11b同士のクロストークを抑制することができる。
ここで、本実施形態の特性例について示す。このマルチコアファイバ40においては、クラッド12の外径が204.4μmとされ、中心のコア11aと外周側のコア11bとの中心間距離が59.2μmとされ、外周側のコア11b同士の距離が40.5μmとされ、外周側のコア11bの中心とクラッド12の外周面との距離が43μmとされ、内側クラッド層15a,15bの厚さが、それぞれ6.0μmとされ、低屈折率層16a,16bの厚さが、それぞれ4.3μmとされ、中心コアの比屈折率差は、0.23%、低屈折率層の比屈折率差は、−0.65%とされている。
このマルチコアファイバ40においては、波長が1.55μm帯の光信号をそれぞれのコア11a,11bが伝播する場合、中心のコア11aの実効断面積Aeffは、116.04μm2となり、カットオフ波長は、1.25μmとなり、また、外周側のコア11bの実効断面積Aeffは、118.2μm2〜125.2μm2となり、カットオフ波長は、1.28μm〜1.39μmとなる。さらに、測定条長が3.96kmである場合の外周側のコア11b同士のクロストークは、−38.6dB〜−41.6dBであり、中心のコア11aと外周側のコア11bとのクロストークは、−71.7〜−75.2bBとなる。
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について図8を参照して詳細に説明する。なお、第4実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
図8は、本発明の第5実施形態に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な断面の構造の様子を示す図である。図8に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ50は、第4実施形態のそれぞれのコア要素41a,41bの代わりに、それぞれのコア要素41a,41bと同じ場所に配置されるコア要素51a,51bが配される点において、第4実施形態のマルチコアファイバ40と異なる。具体的には、それぞれのコア要素51a,51bは、第4実施形態の低屈折率層16a,16bの代わりに低屈折率層17a,17bが配されている。
それぞれの低屈折率層17a,17bには、クラッド12及び内側クラッド層15a,15bよりも屈折率が低い低屈折率部18が、内側クラッド層15a,15bを囲むように複数形成されて成っている。本実施形態においては、低屈折率層17a,17bに円形の空孔が複数形成されており、この空孔が低屈折率部18とされている。従って、低屈折率部18の断面における形状は円形である。本実施形態においては、このようなコア11a,11b、内側クラッド層15a,15b、低屈折率層17a,17bによりコア要素51a,51bが構成されている。
また、本実施形態においては、それぞれの低屈折率層17a,17bにおける低屈折率部18以外の領域は、クラッド12、及び、内側クラッド層15a,15bと同様の材料から成っている。そして、低屈折率部18が空孔であることから、低屈折率部18の屈折率は1であり、内側クラッド層15a,15b、及び、クラッド12の屈折率よりも低いため、低屈折率層17a,17bの平均屈折率は、内側クラッド層15a,15b及びクラッド12よりも低くされている。
本実施形態におけるマルチコアファイバ50によれば、屈折率が低い低屈折率部18が、それぞれのコア11a,11bを囲むように環状に連続して形成されていないため、各コア11a,11bから適切に高次モードを逃がすことができる。従って、各コア11a,11bのカットオフ波長が長波長化することを抑制することができる。
また、低屈折率部18が空孔であるため、低屈折率層17a,17bの屈折率をより低くすることができ、各コア11a,11bの高次モードの閉じ込めが強くなりすぎることを抑制しつつも、各コア11a,11b同士のクロストークをより低減することができる。
なお、本実施形態においては、低屈折率部18を空孔で形成しているため、低屈折率部18の屈折率をより小さくすることができるが、低屈折率部18は、空孔に限らず、内側クラッド層15a,15b及びクラッド12よりも低屈折率の材料であれば、特に限定されない。例えば、低屈折率部18が屈折率を下げるフッ素等のドーパントが添加された石英から構成されても良い。この場合においても、本実施形態のマルチコアファイバ50によれば、単価の高いフッ素が添加された石英の数を少なくすることができるので、安価に製造することができる。
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について図9を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
図9は、本発明の第6実施形態に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な断面の構造を示す図である。図6に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ60は、コア11bの数や配置が第1実施形態のマルチコアファイバ10と異なる。具体的には、クラッド12の中心に配された1個のコア11aを8個のコア11bが囲み、この8個のコア11bは、全体が正方形となるように等間隔で配されている。
本実施形態のマルチコアファイバ60は、第1実施形態のマルチコアファイバ10と同様に、光信光を伝播する光ファイバであり、それぞれのコア11a,11bを伝播する光のモードフィールド径は、第1実施形態のマルチコアファイバ10と同様の理由から9μm〜13μmとされることが好ましい。
また、第1実施形態のマルチコアファイバ10と同様の理由から、それぞれのコア11a、11bの中心間距離は30μm以上とされることが好ましく、40μm以上とされることがより好ましい。また、第1実施形態のマルチコアファイバ10と同様の理由から、外周側のコア11bの中心とクラッド12の外周面との距離も35μm以上とされることが好ましく、40μm以上とされることがより好ましい。
本実施形態においては、上述のように互いに隣り合うコア11a,11bの中心間距離が30μm以上とされ、外周側に配されるコア11bの中心とクラッド12の外周面との距離が35μm以上とされる場合において、クラッド12の外径は、155μm〜230μmとされ、互いに隣り合うコア11a,11bの中心間距離が40μm以上とされ、外周側に配されるコア11bの中心とクラッド12の外周面との距離が40μm以上とされる場合において、クラッド12の外径は、194μm〜230μmとされる。クラッド12の外径の上限が230μmであるのは、第1実施形態のマルチコアファイバ10のクラッド12の外径の上限が230μmである理由と同様である。
本実施形態によるマルチコアファイバ60のコア11a,11bの配置によれば、10個のコアが配置されるため、従来の一般的なコアが1−6配置されるマルチコアファイバよりも多くのコアを配置され、より多くの情報を伝送することができる。
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態について図10を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
図10は、本発明の第7実施形態に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な断面の構造を示す図である。図10に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ70は、コア11a,11bの数や配置が第1実施形態のマルチコアファイバ10と異なる。具体的には、コア11aは、その数が4個とされ、クラッド12の中心Cをからそれぞれ等距離とされると共に、等間隔で配されている。更に、この4個のコア11aを囲むコア11bは、その数が8個とされ、4つのコア11aにおける互いに隣り合う2つのコア11aを結ぶ延長線Le(図10において破線で示す)上にそれぞれ1つずつ配置されると共に、4つのコア11aのうち最も近いコア11aとの中心間距離が、4つのコア11aにおける互いに隣り合う2つのコア11aの中心間距離と等しくされるように、配置されている。つまり、互いに隣り合う2つのコア11aの中心間距離をdとすると、特定のコア11bと、その特定のコア11bに最も近いコア11aとの中心間距離もdとなるのである。
本実施形態のマルチコアファイバ70は、第1実施形態のマルチコアファイバ10と同様に、光信光を伝播する光ファイバであり、それぞれのコア11a,11bを伝播する光のモードフィールド径は、第1実施形態のマルチコアファイバ10と同様の理由から9μm〜13μmとされることが好ましい。
また、第1実施形態のマルチコアファイバ10と同様の理由から、それぞれのコア11a、11bの中心間距離は30μm以上とされることが好ましく、40μm以上とされることがより好ましい。また、第1実施形態のマルチコアファイバ10と同様の理由から、外周側のコア11bの中心とクラッド12の外周面との距離も35μm以上とされることが好ましく、40μm以上とされることがより好ましい。
本実施形態においては、上述のように互いに隣り合うコア11a,11bの中心間距離が30μm以上とされ、外周側に配されるコア11bの中心とクラッド12の外周面との距離が35μm以上とされる場合において、クラッド12の外径は、165μm〜230μmとされ、互いに隣り合うコア11a,11bの中心間距離が40μm以上とされ、外周側に配されるコア11bの中心とクラッド12の外周面との距離が40μm以上とされる場合においてクラッド12の外径は、207μm〜230μmとされる。クラッド12の外径の上限が230μmであるのは、第1実施形態のマルチコアファイバ10のクラッド12の外径の上限が230μmである理由と同様である。
本実施形態によるマルチコアファイバ70のコア11a,11bの配置によれば、10個のコアが配置されるため、従来の一般的なコアが1−6配置されるマルチコアファイバよりも多くのコアを配置され、より多くの情報を伝送することができる。
以上、本発明について、第1〜第7実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、第1実施形態〜第3実施形態、及び、第6実施形態、第7実施形態において、それぞれのコア11a,11bを第4実施形態、第5実施形態のように内側クラッド層、低屈折率層で囲んでも良い。