以下、本発明の電動作業機の一実施形態であるインパクトドライバを、図1を用いて詳細に説明する。図1に示すインパクトドライバ10は、充電及び放電が可能な電池セルを収容した電池パック11と、電池パック11から電力が供給されて駆動する電動モータであるブラシレスモータ12と、を有する。ブラシレスモータ12は、電気エネルギを運動エネルギに変換する動力源である。インパクトドライバ10はハウジング13を有しており、ブラシレスモータ12はハウジング13の内部に配置されている。
ブラシレスモータ12は、回転軸14と回転子15と固定子16と、を有する。回転子15は回転軸14に固定されており、回転子15は永久磁石を有し、かつ、回転軸14と共に一体回転可能である。回転軸14は2個の軸受17により回転可能に支持されている。
本実施形態のブラシレスモータ12は、3相4極の直流電動モータである。永久磁石は、極性が異なる4極の磁石、具体的には、2個のN極と2個のS極とを有する。S極とN極とが、回転軸14の円周方向に交互に並べられている。また、固定子16は、回転子15を囲むように配置されており、固定子16は、図2のように、導電性のコアプレートを複数枚積層した固定子コア18と、3相、つまり、U相、V相、W相に相当する固定子コイル13U,13V,13Wと、を備えている。3本の固定子コイル13U,13V,13Wは、相互にスター結線されている。そして、ブラシレスモータ12は、固定子コイル13U,13V,13Wに電力が供給されると回転磁界が形成されて回転子15が回転する。ブラシレスモータ12は、固定子コイル13U,13V,13Wへの通電の向きを切り替えることにより、回転子15の回転方向を正逆に切り替えることができる。
インパクトドライバ10は、先端工具19が着脱されるアンビル20を有し、アンビル20は、ハウジング13に取り付けたスリーブ21により回転可能に支持されている。アンビル20は軸線A1を中心として回転可能である。
一方、ハウジング13の内部に減速機22が設けられている。軸線A1に沿った方向で、減速機22は、ブラシレスモータ12とアンビル20との間に配置されている。減速機22は、ブラシレスモータ12のトルクをアンビル20に伝達する動力伝達装置であり、減速機22はシングルピニオン型の遊星歯車機構により構成されている。減速機22は、回転軸14と同軸に配置されたサンギヤ23と、サンギヤ23の外周側を取り囲むように設けたリングギヤ24と、サンギヤ23及びリングギヤ24に噛み合わされた複数のピニオンギヤ25を自転、かつ、公転可能に支持したキャリヤ26と、を有する。リングギヤ24はハウジング13に固定されており、回転不可能である。
また、キャリヤ26と共に軸線A1を中心として一体回転するスピンドル27が設けられている。つまり、ブラシレスモータ12の回転軸14、減速機22、スピンドル27、アンビル20は、軸線A1を中心として設けられている。スピンドル27は、軸線A1に沿った方向でアンビル20と減速機22との間に配置されており、スピンドル27におけるアンビル20側の端部には、軸線A1に沿った方向に突出された軸部28が形成されている。ハウジング13内には、筒形状のホルダ29が取り付けられており、スピンドル27の長手方向の端部は、軸受30を介してホルダ29により回転可能に支持されている。さらに、スピンドル27の外周面に2本の第1カム溝27bが設けられている。
一方、アンビル20におけるスピンドル27側の端部には、軸線A1と同心の保持孔31が設けられており、軸部28が保持孔31に回転可能に挿入されている。すなわち、アンビル20とスピンドル27とは、軸線A1を中心として相対回転可能である。さらに、アンビル20には軸線A1と同心に工具取付孔32が設けられている。工具取付孔32は、アンビル20のうち、ハウジング13の外部に露出した部分に開口されており、工具取付孔32は先端工具19を着脱するために設けられている。
また、スピンドル27の外周には、環状のハンマ33が取り付けられている。ハンマ33は、軸線A1に沿った方向で、減速機22とアンビル20との間に配置されている。ハンマ33は、スピンドル27と相対回転可能であり、かつ、軸線A1に沿った方向でスピンドル27と相対移動可能である。ハンマ33の内周面には、軸線A1に沿った方向に延ばされた2つの第2カム溝33aが形成されている。
そして、第1カム溝27b及び第2カム溝33aを1組として、1個のボール34が保持されている。ボール34は、金属製の転動体である。このため、ハンマ33は、スピンドル27に対して、ボール34が転動可能な範囲で軸線A1に沿った方向に移動可能である。また、ハンマ33は、スピンドル27に対して、ボール34が転動可能な範囲で軸線A1を中心とする円周方向に移動可能である。
さらに、スピンドル27の外周であって、軸線A1に沿った方向で第1カム溝27bとキャリヤ26との間には、環状のプレート35が取り付けられている。また、軸線A1に沿った方向で、ハンマ33とプレート35との間には、圧縮ばね36が圧縮された状態で設けられている。キャリヤ26は、軸受30、ホルダ29に接触することで、軸線A1に沿った方向の移動が規制されており、圧縮ばね36の押圧力はハンマ33に加えられている。ハンマ33は、圧縮ばね36の押圧力により、軸線A1に沿った方向でアンビル20に向けて押されている。
アンビル20におけるハンマ33側の端部には、半径方向に突出された突部37が設けられている。突部37は、アンビル20の円周方向において180度の間隔で2個設けられている。これに対して、ハンマ33におけるアンビル20側の端部には、軸線A1に沿った方向に突出された突部38が設けられている。突部38は、ハンマ33の円周方向において180度の間隔で2個設けられている。突部37及び突部38は軸線A1を中心とする同一円周上に配置されており、突部37と突部38とは係合及び解放が可能である。
ハウジング13に連続してグリップ39が設けられている。グリップ39は、軸線A1に対して交差する向きで、ハウジング13の外面から延ばされている。グリップ39は、作業者が手で握る箇所であり、グリップ39とハウジング13との接続箇所に、押付け力検出スイッチ40及び運転モード切替スイッチ41が設けられている。押付け力検出スイッチ40は、アンビル20に取り付けた先端工具19が、対象物に押し付けられたか否かを検出する。運転モード切替スイッチ41は、ブラシレスモータ12を制御する複数の運転モードを作業者が切り替えるために設けられている。運転モード切替スイッチ41は、作業者がグリップ39を手で握った状態で、人差し指で操作可能である。なお、運転モードは後述する。
押付け力検出スイッチ40及び運転モード切替スイッチ41は、共に作業者により操作される。押付け力検出スイッチ40及び運転モード切替スイッチ41は、グリップ39に対して、軸線A1に沿った方向に往復作動が可能な状態で取り付けられている。押付け力検出スイッチ40及び運転モード切替スイッチ41は、グリップ39に対する作動範囲が所定のストロークとなるように規制されている。また、グリップ39内には、押付け力検出スイッチ40及び運転モード切替スイッチ41に加えられた操作力に反発する力を生じる弾性部材がそれぞれ設けられている。弾性部材は、金属製のバネを含む。
作業者が、押付け力検出スイッチ40または運転モード切替スイッチ41を操作する場合は、弾性部材の力に抗して作動させる。作業者が押付け力検出スイッチ40または運転モード切替スイッチ41に操作力を加えていない場合、力が加えられていないスイッチは、グリップ39から所定量突出した初期位置でそれぞれ停止する。
さらに、ハウジング13において、スリーブ21の外側にライト42が設けられている。ライト42としては、例えば、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を用いることができる。ライト42は、先端工具19をネジ43に押し付ける箇所、ネジ43を木材44に押し付ける箇所等を照らす。
次に、インパクトドライバ10の使用例、つまり、ブラシレスモータ12に電力を供給する制御の概略を説明する。なお、ブラシレスモータ12に電力を供給するか否かを定める条件は、後述する。ブラシレスモータ12に電力が供給されないと回転軸14は停止している。また、圧縮ばね36に押圧されているハンマ33は、アンビル20に接触して停止している。このため、図3(A)のように、先端工具19が、ネジ43に接触していても、先端工具19は回転しない。
これに対して、ブラシレスモータ12に電力が供給されると、回転軸14が回転する。回転軸14のトルクは減速機22のサンギヤ23に伝達される。サンギヤ23にトルクが伝達されると、リングギヤ24が反力要素となり、キャリヤ26が出力要素となる。すなわち、サンギヤ23のトルクがキャリヤ26に伝達されるとき、サンギヤ23の回転速度に対してキャリヤ26の回転速度が低速となることで、トルクが増幅される。
キャリヤ26にトルクが伝達されると、スピンドル27がキャリヤ26と共に一体回転する。スピンドル27のトルクは、ボール34を介してハンマ33に伝達される。ハンマ33のトルクは、突部38と突部37との係合力によりアンビル20に伝達され、アンビル20が回転する。このため、アンビル206の回転力は先端工具19を介してネジ43に伝達され、図3(B)のように、ネジ43が木材44にねじ込まれる。ネジ43が木材44にねじ込まれて、木材44とネジ43との摩擦抵抗が増加し、先端工具19を回転させるために必要な回転力が高くなると、アンビル20は停止して、ボール34と第2カム溝33aの内面との接触箇所で生じる反力により、ボール34が第1カム溝27b及び第2カム溝33a内を転動し、ハンマ33がアンビル20から離れる向きで移動する。
ここで、ハンマ33は、圧縮ばね36の押圧力に抗して軸線A1に沿って移動する。すると、突部38と突部37とが解放され、ハンマ33の回転力はアンビル20に伝達されなくなる。さらに、ハンマ33の回転が継続されて、突部38が突部37を乗り越えると、ハンマ33をアンビル20から離れさせる向きの力よりも、圧縮ばね36がハンマ33に加える押圧力の方が高くなる。すると、ボール34が第1カム溝27b及び第2カム溝33a内を転動することで、ハンマ33とスピンドル27とが相対回転し、かつ、ハンマ33はアンビル20に近づく向きで移動する。
その後、回転しているハンマ33の突部38が、停止しているアンビル20の突部37に衝突し、アンビル20及び先端工具19に回転方向の打撃力が加えられる。なお、ブラシレスモータ12の回転軸14の回転方向を逆にすると、ネジ43を緩めることができる。
次に、インパクトドライバ10の制御系統を、図1及び図2に基づいて説明する。グリップ39におけるハウジング13とは反対の端部に装着部45が設けられており、装着部45に本体側端子46が設けられている。そして、電池パック11は装着部45に対して着脱可能である。電池パック11は、収容ケース47と、収容ケース47内に収容した電池セルとを有する。電池セルは、充電及び放電が可能な二次電池であり、電池セルは、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、リチウムイオンポリマー電池、ニッケルカドミウム電池等を用いることができる。電池パック11は、電池セルの電極に接続された電池側端子を有し、電池パック11が装着部45に取り付けられると本体側端子46と電池側端子とが接続される。
電池パック11の電力をブラシレスモータ12に供給する経路に、インバータ回路48が設けられている。インバータ回路48は、3相ブリッジ形式に接続されたFET等の6個のスイッチング素子Q1〜Q6を備える。図2の例では、スイッチング素子Q1〜Q3は、電池パック11の正極側にそれぞれ接続され、スイッチング素子Q4〜Q6は、電池パック11の負極側にそれぞれ接続されている。軸受17と固定子16との間にインバータ回路基板49が設けられており、インバータ回路48は、インバータ回路基板49に搭載されている。
また、インバータ回路基板49に、回転子15の回転位置を検出する回転子位置検出素子50が設けられている。回転子位置検出素子50はホール素子等により構成されており、回転子位置検出素子50は、インバータ回路基板49に対して、回転子15の周方向に所定の間隔毎、例えば、角度60度毎に3個配置されている。
また、装着部45内に制御回路基板51が設けられている。制御回路基板51に制御回路52が設けられている。制御回路52は、演算部53と、制御信号出力回路54と、モータ電流検出回路55と、電池電圧検出回路56と、回転子位置検出回路57と、モータ回転数検出回路58と、制御回路電圧検出回路59と、スイッチ操作検出回路60,61と、印加電圧設定回路62と、を有している。
回転子位置検出素子50から出力される信号は、回転子位置検出回路57に入力され、回転子位置検出回路57は、回転子15の回転位相を検出し、回転子位置検出回路57から出力された信号は演算部53に入力される。
演算部53は、処理プログラムとデータに基づいてインバータ回路48の駆動信号を出力する中央処理装置(CPU)と、処理プログラムや制御データを記憶するためのROMと、データを一時記憶するためのRAMと、タイマとを含むマイクロコンピュータである。
電池パック11からインバータ回路48に電力を供給する経路に抵抗Rsが配置されており、モータ電流検出回路55は、抵抗Rsの電圧降下から、ブラシレスモータ12に供給される電流値を検出し、検出信号を演算部53へ出力する。電池電圧検出回路56は、電池パック11からインバータ回路48に供給される電圧を検出し、検出信号を演算部53へ出力する。
回転子位置検出回路57は、各回転子位置検出素子50の出力信号を受けて、回転子15の位置信号を演算部53及びモータ回転数検出回路58へ出力する。モータ回転数検出回路58は、入力される位置信号から回転子15の回転数を検出し、その検出結果を演算部53へ出力する。
スイッチ操作検出回路61は、アンビル20に取り付けた先端工具19が、ネジ43を介して木材44に押し付けられているか否かを検出し、検出結果に応じた信号を演算部53へ出力する。先端工具19が、ネジ43を介して木材44に押し付けられていると、押付け力検出スイッチ40はオンされる。先端工具19がネジ43に接触していても、木材44に押し付けられていない場合は、押付け力検出スイッチ40はオフされる。
電池パック11の電圧は、制御回路電圧供給回路63を介して所定電圧値で制御回路52の全体に供給される。また、制御回路電圧検出回路59は、制御回路電圧供給回路63から制御回路52に供給される電圧値を検出し、検出結果を演算部53へ出力する。演算部53は、各種の回路から入力される信号に基づいて、ブラシレスモータ12に対する通電方向、通電タイミング、通電期間等を求め、その信号を制御信号出力回路54へ出力する。
なお、ハウジング13または装着部45等に表示部64が設けられており、表示部64は液晶ディスプレイ、ランプ等により構成されている。演算部53から表示部64に表示信号が出力される。作業者は、表示部64を目視して、回転子15の回転数、ブラシレスモータ12の運転モード等を確認可能である。さらに、ハウジング13内に、ブラシレスモータ12の温度を検出する温度検出センサ65が設けられており、温度検出センサ65の出力信号は演算部53に入力される。
本実施形態では、スイッチ操作検出回路60は、押付け力検出スイッチ40が操作されていない場合に、運転モード切替スイッチ41が操作されたか否かを検出し、検出結果に応じた信号を演算部53へ出力する。スイッチ操作検出回路60は、運転モード切替スイッチ41が操作されているとオン信号を出力し、かつ、運転モード切替スイッチ41が操作されていなければオフ信号を出力する。
一方、演算部53は、押付け力検出スイッチ40が操作されない状態で、運転モード切替スイッチ41が操作されると、運転モード切替スイッチ41のオン及びオフが1回繰り返される毎に、ブラシレスモータ12を制御する運転モードを切り替える。これに対して、印加電圧設定回路62は、押付け力検出スイッチ40が操作されている状態において、運転モード切替スイッチ41の操作量を検出し、検出結果に応じた信号を演算部53へ出力する。運転モード切替スイッチ41の操作量は、初期位置を基準とする移動量である。
演算部53は、回転子位置検出回路57の位置検出信号に基づいて、所定のスイッチング素子Q1〜Q3を、それぞれ交互にオン・オフ動作するスイッチング制御を実行するための駆動信号、所定のスイッチング素子Q4〜Q6をスイッチング制御するためのパルス変調幅信号を形成して制御信号出力回路54に出力する。
制御信号出力回路54は、演算部53からの駆動信号に基づいて、スイッチング素子Q1のゲートにスイッチング素子駆動信号H1を出力し、スイッチング素子Q2のゲートにスイッチング素子駆動信号H2を出力し、スイッチング素子Q3のゲートにスイッチング素子駆動信号H3を出力し、スイッチング素子Q4のゲートにパルス幅変調信号H4を出力し、スイッチング素子Q5のゲートにパルス幅変調信号H5を出力し、スイッチング素子Q6のゲートにパルス幅変調信号H6を出力する。つまり、3個のスイッチング素子Q1〜Q3は、スイッチング素子駆動信号により別々にオン・オフされ、3個のスイッチング素子Q4〜Q6は、パルス幅変調信号により別々にオン・オフされ、そのオン割合であるデューティ比が制御される。
この制御により、固定子コイル13U,13V,13Wのそれぞれに、所定の通電の向き、所定の通電タイミング、所定の期間で交互に通電が行われ、回転子15が目標の回転方向に目標の回転数、目標のトルクで回転される。目標の回転方向、目標の回転数、目標のトルクは、作業者が運転モード切替スイッチ41を操作して設定することができる。
上記の制御により、6個のスイッチング素子Q1〜Q6の各ドレインまたは各ソースは、スター結線された固定子コイル13U,13V,13Wに別個に接続または遮断される。スイッチング素子Q1は、制御信号出力回路54から入力されたスイッチング素子駆動信号H1によってスイッチング動作し、スイッチング素子Q2は、制御信号出力回路54から入力されたスイッチング素子駆動信号H2によってスイッチング動作し、スイッチング素子Q3は、制御信号出力回路54から入力されたスイッチング素子駆動信号H3によってスイッチング動作する。スイッチング素子Q4は、制御信号出力回路54から入力されたパルス幅変調信号H4によってスイッチング動作し、スイッチング素子Q5は、制御信号出力回路54から入力されたパルス幅変調信号H5によってスイッチング動作し、スイッチング素子Q6は、制御信号出力回路54から入力されたパルス幅変調信号H6によってスイッチング動作する。インバータ回路48に印可される電圧は、U相に対応する電圧Vuとして固定子コイル13Uに供給され、V相に対応する電圧Vvとして固定子コイル13Vに供給され、W相に対応する電圧Vwとして固定子コイル13Wに供給される。
押し付け力検出スイッチ40がオンされると、ブラシレスモータ12に電力を供給して回転軸14でトルクを発生する。この場合、6個のスイッチング素子Q1〜Q6のうち、電池パック11の負極側に接続された3個のスイッチング素子Q4、Q5、Q6の各ゲートには、PWM信号H4,H5,H6が供給される。また、演算部53は、運転モード切替スイッチ41の操作量に応じてPWM信号のパルス幅、つまり、デューティ比を変化させる。この制御によって、ブラシレスモータ12に供給する電力を制御可能であり、回転子15の回転方向の切り替え、ブラシレスモータ12の起動と停止との切り替え、回転子15の回転数及びトルク等を制御する。PWM信号は、Pulse Width Modulation信号の略記であり、パルス幅変調信号を意味する。
さらに、演算部は53は、印加電圧設定回路62から入力される信号に基づいて、回転子15の目標回転数を求める。また、演算部53は、モータ回転数検出回路58から入力される信号に基づいて、回転子15の実際の回転数を検出する。そして、演算部53は、パルス幅変調信号H4,H5,H6のデューティ比を制御して、回転子15の実際の回転数を目標回転数に近づけるように、フィードバック制御を実行する。
なお、PWM信号は、電池パック11の負極側に接続されたスイッチング素子Q4〜Q6(ローサイドスイッチ)に供給する代わりに、電池パック11の正極側に接続されたスイッチング素子Q1〜Q3(ハイサイドスイッチ)に供給する構成でもよい。
図4は、インパクトドライバ10の具体的な制御例を示すフローチャートである。まず、制御回路52は、ステップS1において、押付け力検出スイッチ40の信号から、先端工具19が木材44に押し付けられたか否かを判断する。制御回路52は、図3(A)のように、押し付け力検出スイッチ40がオフされていると、ステップS1でNOと判断し、ステップS1の判断を繰り返す。
これに対して、制御回路52は、ステップS1において、先端工具19が木材44に押し付けられた(YES)と判断すると、ステップS2の処理を実行する。制御回路52は、ステップS2でブラシレスモータ12に電力を供給して駆動する。このため、回転軸14のトルクが先端工具19に伝達され、図3(B)のようにネジ43が木材44にねじ込まれる。制御回路52は、ステップS2の処理を実行するにあたり、ブラシレスモータ12に供給する電力量を予め決定してあり、回転子15の回転数は、供給される電力量に応じた値となる。
また、制御回路52は、ブラシレスモータ12の回転中に、ステップS3で運転モード切替スイッチ41がオンされているか否かを判断する。制御回路52は、ステップS3でYESと判断されると、ステップS4の処理を実行してステップS2に戻る。制御回路52は、ステップS4において、運転モード切替スイッチ41の操作量に応じて、ブラシレスモータ12に供給する電力量を制御する。つまり、運転モード切替スイッチ41の操作量に応じて回転子15の目標回転数が求められ、回転子15の実回転数を目標回転数に近づける制御が実行される。なお、ステップS4の具体的な制御例は後述する。
一方、制御回路52は、ステップS3でNOと判断するとステップS5に進み、押し付け力検出スイッチ40がオフされたか否かを判断する。制御回路52は、ステップS5でNOと判断するとステップS3に戻る。また、制御回路52は、ステップS5でYESと判断すると、ステップS6に進んでブラシレスモータ12を停止し、図4の制御ルーチンを終了する。
制御回路52は、上記のステップS4で制御例1または制御例2を実行可能である。制御例1は、運転モード切替スイッチ41の操作量が少ないほど、ブラシレスモータ12に印加される電圧が高くなる一方、運転モード切替スイッチ41の操作量が多いほど、ブラシレスモータ12に印加される電圧が低くなる特性である。この制御例1における運転モード切替スイッチ41の操作量と、ブラシレスモータ12の印加電圧との関係は、例えば、図5(A)の線図のように表される。運転モード切替スイッチ41が初期位置では操作量が最小であり、運転モード切替スイッチ41が初期位置から最大操作量に向けて増加すると、ブラシレスモータ12に印加される電圧が低下する。制御回路52が、ステップS4で制御例1を実行すると、運転モード切替スイッチ41の操作量が増加することに伴い、ブラシレスモータ12に供給される電力量が減少して回転子15の回転数は低下する。
これに対して、制御例2は、運転モード切替スイッチ41の操作量が少ないほど、ブラシレスモータ12に印加される電圧が低くなる一方、運転モード切替スイッチ41の操作量が多いほど、ブラシレスモータ12に印加される電圧が高くなる特性である。この制御例2における運転モード切替スイッチ41の操作量と、ブラシレスモータ12の印加電圧との関係は、例えば、図5(B)の線図のように表される。運転モード切替スイッチ41が最大操作量から初期位置に向けて減少すると、ブラシレスモータ12に印加される電圧が低下する。
制御回路52が、ステップS4で制御例1を実行すると、運転モード切替スイッチ41の操作量が増加することに伴い、ブラシレスモータ12に供給される電力量が減少して回転子15の回転数は低下する。制御回路52が、ステップS4で制御例2を実行すると、運転モード切替スイッチ41の操作量が減少することに伴い、ブラシレスモータ12に供給される電力量が減少して回転子15の回転数は低下する。
図6は、制御例1、2を包括して示すタイムチャートの一例である。まず、制御回路が制御例1を実行する場合を説明する。押し付け力検出スイッチは、時刻t1以前においてオフされており、ブラシレスモータに電圧は印加されていない。また、モード切替スイッチも、時刻t1以前において押されていない。制御回路は、押し付け力検出スイッチが時刻t1でオンされると、ブラシレスモータに電圧の印加を開始する。ここで、ブラシレスモータに印加される電圧は、時間の経過に伴い所定の勾配で増加する。このため、ブラシレスモータの回転数は、時刻t1以降上昇する。また、デューティ比は、時刻t2以降において100%に維持されており、ブラシレスモータの回転数は一定に制御される。なお、モード切替スイッチは、時刻t2の時点でも押されていない。このように、制御回路52は、時刻t1〜時刻t2の間、ブラシレスモータに印加する電圧を、時間の経過に伴い所定の勾配で増加させるソフトスタートを実行している。
そして、押し付け力検出スイッチは、時刻t3以降において押されており、かつ、運転モード切替スイッチの操作が開始されている。制御回路は、運転モード切替スイッチの操作量が時間の経過と共に増加すると、時刻t3以降、ブラシレスモータに対する印加電圧のデューティ比を低下する。このため、ブラシレスモータの回転数は時刻t3以降において低下する。そして、押し付け力検出スイッチが時刻t4でオフされると、制御回路は、時刻t4でブラシレスモータに対する印加電圧を零%とし、ブラシレスモータは、時刻t4で停止する。
次に、制御回路が制御例2を実行する場合を、図6のタイムチャートにより説明する。押し付け力検出スイッチは時刻t1以前においてオフされており、ブラシレスモータに電圧は印加されていない。また、運転モード切替スイッチも押されていない。時刻t1で押し付け力検出スイッチがオンされ、かつ、運転モード切替スイッチが操作されると、制御回路は、ブラシレスモータに電圧の印加を開始し、電圧は所定の勾配で増加する。このため、ブラシレスモータの回転数は、時刻t1以降上昇する。また、デューティ比は、時刻t2以降は100%に維持されており、ブラシレスモータの回転数は一定に制御されている。
そして、押し付け力検出スイッチが、時刻t3以降において押された状態に維持され、かつ、運転モード切替スイッチの操作量が減少すると、制御回路は、ブラシレスモータへの印加電圧のデューティ比を低下する。このため、ブラシレスモータの回転数は時刻t3以降で低下する。そして、押し付け力検出スイッチが時刻t4でオフされると、制御回路は、時刻t4でブラシレスモータに対する印加電圧を零%とし、ブラシレスモータは、時刻t4で停止する。
図7は、運転モード切替スイッチ41が操作されて、ブラシレスモータ12の運転モードを切り替える一例を示すフローチャートである。まず、制御回路52は、ステップS11でブラシレスモータ12が停止しているか否かを判断する。制御回路52は、ステップS11でNOと判断すると、ステップS11の判断処理を継続する。
これに対して、制御回路52は、ステップS11でYESと判断すると、制御回路52は、ステップS12において、運転モード切替スイッチ41をON及びOFFする操作が1回行われたか否かを判断する。制御回路52は、運転モード切替スイッチ41の操作量が最大になると、運転モード切替スイッチ41がONされたと判断する。制御回路52は、ステップS12で運転モード切替スイッチ41がONされていないと判断すると、図7の制御ルーチンを終了する。
一方、制御回路52は、ステップS12でYESと判断すると、ステップS13において、現時点で「運転モード1」が選択されているか否かを判断する。制御回路52は、ステップS13でYESと判断すると、ステップS14において「運転モード1」から「運転モード2」に変更する処理を行う。
制御回路52は、ステップS13でNOと判断した場合、またはステップS14の処理を行った後、ステップS15において、現時点で「運転モード2」が選択されているか否かを判断する。制御回路52は、ステップS15でYESと判断すると、ステップS16において「運転モード2」から「運転モード3」に変更する処理を行う。
制御回路52は、ステップS15でNOと判断した場合、またはステップS16の処理を行った後、ステップS17において、現時点で「運転モード3」が選択されているか否かを判断する。制御回路52は、ステップS17でYESと判断すると、ステップS18において「運転モード3」から「運転モード4」に変更する処理を行う。
制御回路52は、ステップS17でNOと判断した場合、またはステップS18の処理を行った後、ステップS19において、現時点で「運転モード4」が選択されているか否かを判断する。制御回路52は、ステップS19でYESと判断すると、ステップS20において「運転モード4」から「運転モード1」に変更する処理を行い、図7の制御ルーチンを終了する。制御回路52は、ステップS19でNOと判断すると、ステップS13の判断に戻る。
上記のように、制御回路52は、オフされている運転モード切替スイッチ41が操作されて、一旦オンされ、かつ、オフに戻される操作が1回繰り返される毎に、ブラシレスモータ12を制御する運転モードを、順次変更する。制御回路52により実行される「運転モード1」〜「運転モード4」の内容は、以下の通りである。
制御回路52は、「運転モード1」で回転軸14を正回転させ、「運転モード2」で回転軸14を逆回転させる。例えば、図3のようにネジ43を締め付ける場合に、インパクトドライバ10の平面視で先端工具19が時計回りに回転する向きが、回転軸14の正回転である。
制御回路52は、「運転モード3」でブラシレスモータ12に供給する電力量を「低」とし、「運転モード4」でブラシレスモータ12に供給する電力量を「高」とすることができる。例えば、ブラシレスモータ12に供給する電力量を「低」とする制御は、ブラシレスモータ12に対する印加電圧のデューティ比を50%とする制御を含む。また、ブラシレスモータ12に供給する電力量を「高」とする制御は、ブラシレスモータ12に対する印加電圧のデューティ比を100%とする制御を含む。
制御回路52は、図7のフローチャートに基づいて説明した4種類の運転モードを全てを実行しなくともよい。つまり、制御回路52は、運転モード切替スイッチ41がオン及びオフする操作が1回行われた場合に、少なくとも2種類の運転モードを切り替える制御を実行する。少なくとも2種類の運転モードは、ブラシレスモータ12に対する電力の供給量、出力等が異なる。
制御回路52により実行可能な2種類の運転モードの組み合わせ例を順次説明する。例えば、運転モード切替スイッチ41をオン及びオフする操作が1回繰り返される毎に、「運転モード3」と「運転モード4」とを交互に切り替える制御を実行してもよい。制御回路52が、「運転モード3」と「運転モード4」とを交互に切り替える制御の一例を、図8のタイムチャートを参照して説明する。
まず、押し付け力検出スイッチは、時刻t1以前においてオフされており、ブラシレスモータに電圧は印加されていない。また、運転モード切替スイッチも時刻t1以前において押されていない。制御回路は、押し付け力検出スイッチが時刻t1でオンされると、ブラシレスモータに電圧の印加を開始する。制御回路は、ブラシレスモータに印加する電圧を、時間の経過に伴い所定の勾配で増加し、時刻t2におけるデューティ比を100%とする。つまり、制御回路は「運転モード4」の制御を実行している。
このように、制御回路52は、時刻t1〜時刻t2の間、ブラシレスモータに印加する電圧を、時間の経過に伴い所定の勾配で増加させるソフトスタートを実行することができる。このため、ブラシレスモータの回転数は、時刻t1から時刻t2の間で上昇し、ブラシレスモータに対する供給電圧は、時刻t2以降において、デューティ比100%に維持されている。したがって、ブラシレスモータの回転数は、時刻t2以降で一定に制御される。
そして、制御回路は、押し付け力検出スイッチが押されている状態で、時刻t3において、運転モード切替スイッチをオン・オフする第1回目の操作が実行されると、「運転モード4」から「運転モード3」に変更する。つまり、制御回路は、ブラシレスモータへの印加電圧を、デューティ比100%から50%に低下させる。このため、ブラシレスモータの回転数は、時刻t3から低下し、時刻t3と時刻t4との間で、所定回転数に維持されている。
さらに、制御回路は、押し付け力検出スイッチがオンされた状態で、時刻t4において運転モード切替スイッチをオン・オフする第2回目の操作が行われると、「運転モード3」から「運転モード4」に切り替える。つまり、制御回路は、ブラシレスモータへの印加電圧を、デューティ比50%から100%に上昇する。このため、ブラシレスモータの回転数は、時刻t4から上昇し、時刻t4と時刻t5との間で、所定回転数に維持されている。
その後、制御回路は、押し付け力検出スイッチがオンされた状態で、時刻t5において運転モード切替スイッチをオン・オフする第3回目の操作が行われると、「運転モード4」から「運転モード3」に切り替える。つまり、制御回路は、ブラシレスモータへの印加電圧を、デューティ比100%から50%に低下する。このため、ブラシレスモータの回転数は、時刻t5から低下し、時刻t5と時刻t6との間で、所定回転数に維持される。
また、制御回路52は、運転モード切替スイッチ41をオン及びオフする操作が1回繰り返される毎に、「運転モード5」と「運転モード6」とを交互に切り替えることで、ブラシレスモータ12を停止させる条件を変更することも可能である。
例えば、ブラシレスモータ12を停止させる条件としてのトルクが異なる「運転モード5」と「運転モード6」とを切り替えることが可能である。例えば、ブラシレスモータ12は、回転子15の実際の回転数を目標回転数に近づけるフィードバック制御を行う。そして、ネジ43を締め付ける際の負荷トルクが増加すると、回転子15の実際の回転数の低下を抑制するために、ブラシレスモータ12に供給される電流値は増加される。ここで、押し付け力検出スイッチ40がオンされていても、電流値が所定値まで増加した時点で、ブラシレスモータ12を停止することで、ネジ43の締め付け過ぎを抑制する制御を実行できる。ブラシレスモータ12を停止させるとは、ブラシレスモータ12に対する印加電圧のデューティ比を零%にすることである。
そして、ネジ43の締め付け過ぎを抑制する制御を実行するにあたり、「運転モード5」と「運転モード6」とで、ブラシレスモータ12を停止する電流値を異ならせる。例えば、「運転モード5」では、ブラシレスモータ12に10Aの電流値が供給されるとブラシレスモータ12を停止し、「運転モード6」では、ブラシレスモータ12に20Aの電流値が供給されるとブラシレスモータ12を停止することが可能である。
次に、ブラシレスモータ12を停止させる条件としてのブラシレスモータ12の温度が異なる「運転モード7」と「運転モード8」とを切り替える例を説明する。ブラシレスモータ12は、通電により温度が上昇し、ブラシレスモータ12の熱がグリップ39に伝達されてグリップの温度が上昇する。
そこで、ブラシレスモータ12を停止させる温度を、「運転モード7」よりも「運転モード8」を高温とすることができる。そして、作業者は、インパクトドライバ10の使用環境や季節に応じて、「運転モード7」を選択すれば、グリップ39の温度上昇を抑制できる。
さらに、ブラシレスモータ12を停止させる条件としての電池パック11の電圧が異なる「運転モード9」と「運転モード10」とを切り替えることも可能である。例えば、ブラシレスモータ12を停止させる電圧を、「運転モード9」よりも「運転モード10」を高くすることができる。そして、作業者は、ネジ43を締め付けるために必要なトルク等に応じて、「運転モード10」を選択することで、ネジ43の締め付けトルクのばらつきをなくすことができる。
さらに、ブラシレスモータ12を停止させる条件としての駆動時間が異なる「運転モード11」と「運転モード12」とを切り替えることができる。駆動時間は、ブラシレスモータ12の運転が開始されてからの経過時間である。例えば、駆動時間を「運転モード11」よりも「運転モード12」を長くすることができる。そして、作業者は、ネジ43の長さ等に応じて、「運転モード12」を選択することで、ネジ43の締め付けトルクのばらつきをなくすことができる。
なお、上記したインパクトドライバ10において、運転モード切替スイッチ41を操作して、ライト42の点灯と消灯とを変更することも可能である。
さらに、押し付け力検出スイッチを設ける位置の他の例を、図9(A),(B)を参照して説明する。図9において、押し付け力検出スイッチ66はハウジング13内に設けられている。ハウジング13は、軸線A1を中心とする半径方向で、スリーブ21の外側に設けられた環状の壁67を有する。押し付け力検出スイッチ66は、軸線A1に沿った方向で、壁67と突部37との間に設けられており、押し付け力検出スイッチ66の出力信号は、図2のようにスイッチ操作検出回路61に入力される。また、保持孔31内に弾性体68が設けられている。弾性体68は、例えば金属製の圧縮コイルバネであり、弾性体68の力がアンビル20に加わっている。つまり、アンビル20は、弾性体68の力でハンマ33から離れる向きで軸線A1に沿って押されている。
先端工具19がネジ43に押し付けられていない場合、図9(A)のように、アンビル20の突部37が、弾性体68の力で押し付け力検出スイッチ66に押し付けられている。つまり、押し付け力検出スイッチ66はオフされている。これに対して、先端工具19がネジ43押し付けられると、弾性体68の力に抗してハンマ33に近づく向きで移動する。その結果、図9(B)のように、アンビル20の突部37が押し付け力検出スイッチ66から離れ、押し付け力検出スイッチ66はオンされる。
そして、図1の押し付け力検出スイッチ40に代えて、図9に示す押し付け力検出スイッチ66を備えたインパクトドライバ10は、図1に示すインパクトドライバ10と同様の制御を実行可能である。
本実施形態におけるインパクトドライバ10は、下記の効果のうち少なくとも1つを得ることができる。
(1)ネジ43に先端工具19を押し付けることで、グリップ39を握り直すことなく、作業者は、運転モード切替スイッチ41を操作して、先端工具19をネジ43に押し付ける力とは無関係に、2つ以上の運転モードのうち、いずれかを任意に選択可能である。このため、インパクトドライバ10の操作性または作業性を向上できる。
(2)ブラシレスモータ12が停止されていると、作業者が運転モード切替スイッチ41をオン及びオフする操作を1回繰り返す毎に、グリップ39を握り直すことなく、片手で容易に運転モードを切替えることが可能となり、インパクトドライバ10の操作性または作業性を向上できる。
(3)運転モード切替スイッチ41の操作量に応じてブラシレスモータ12の回転軸14の回転数を任意に変更でき、作業性が向上する。
(4)運転モード切替スイッチ41の操作量が少ないほど、ブラシレスモータ12への供給電力を増加させることができる。したがって、先端工具19をネジ43に押し付けるだけで、運転モード切替スイッチ41を操作することなく、回転軸14を高速回転させることができ、作業性が向上する。
(5)停止しているブラシレスモータ12を駆動する際に、ブラシレスモータ12に供給する電力量は、時間の経過に伴い増加することができる。つまり、回転軸14の回転数が徐々に上昇する。したがって、ネジ43を締め付けるに低反動とすることができ、作業性が向上する。
(6)作業者がグリップ39を握ったままの状態で、人差し指により運転モード切替スイッチ41を操作することができ、作業性が向上する。
本実施形態における制御回路52が、本発明の第1電力制御部及び第2電力制御部に相当する。本実施形態におけるインパクトドライバ10が、本発明の電動作業機に相当し、運転モード切替スイッチ41が、本発明の操作部に相当する。本実施形態における回転軸14の回転方向、回転軸14のトルク、回転軸14の回転数等が、本発明における電動モータの回転状態に含まれる。なお、回転軸14及び回転子15の回転数は、単位時間あたりの回転数であり、回転速度と同義である。また、木材44、ネジ43が、本発明の対象物に相当する。ハウジング13及びグリップ39が、本発明の作業機本体に相当する。
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、図7のフローチャートにおいては、運転モード切替スイッチが操作される毎に、「運転モード1」から「運転モード4」の順序でモードが切り替えられているが、供給電力が異なる3種類以上の運転モードを選択的に切り替え可能とし、タッチパネルの操作により、運転モード1から運転モード3に飛び越えて切り替え可能としてもよい。この場合、タッチパネルが、本発明の操作部に相当する。また、本発明の操作部は、スイッチ、タッチパネルの他、可動式のレバー、回転式のノブまたはダイヤル等を含む。さらに、制御回路は、図7に示されたステップS13,15,17,19の判断を順次行うことなく、同時に行うことも可能である。
また、本発明の電動作業機は、インパクトドライバに限らず、ドライバドリル、ディスクグラインダ等を含む。本発明の対象物は、木材の他、コンクリート、石膏ボード等を含む。本発明の対象物は、ネジ、ボルトを含む。本発明の先端工具は、砥石、ドリルビット、タップ等の他、ソケット、エキステンションバー、アダプタを含む。また、本発明の電動作業機は、交流電源の電力を電池パックを介さずに直流電動モータに供給可能な構造を含む。この場合、交流電流を直流電流に変換する整流器が設けられる。さらに、本発明の電動作業機に用いられる電動モータは、ブラシレスモータ、ブラシ付きモータのいずれでもよい。電動モータに用いる永久磁石の極数は、4極に限らず、6極、8極でもよい。本発明における電動モータは、直流電動モータまたは交流電動モータのいずれでもよい。