JP2015159646A - モータ制御システム - Google Patents

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Abstract

【課題】モータ制御システムにおいて、低いキャリア周波数でインバータを駆動してモータを低回転、大トルクで運転した際の昇圧電圧の変動を抑制する。【解決手段】昇圧コンバータ20から出力された昇圧直流電力を交流電力に変換して交流モータ40に供給するインバータ30と昇圧コンバータ20の昇圧電圧を調整する制御部60を備えるモータ制御システム100であって、制御部60は、要求回転数と要求トルクで交流モータ40を運転する際の最適昇圧電圧を規定した最適昇圧電圧マップ67、キャリア周波数Fcが所定の閾値Fc0以下の場合に、昇圧コンバータ20の昇圧電圧(直流高電圧VH)を最適昇圧電圧マップ67で規定する最適昇圧電圧VHsよりも高い電圧とする昇圧電圧変更プログラム68と、を有する。【選択図】図1

Description

本発明は、昇圧した直流電力を交流電力に変換してモータを駆動するモータ制御システムに関する。
バッテリ等の直流電源からの直流電力をインバータで交流電力に変換して三相同期電動機等のモータを駆動するモータ制御システムが多く用いられている。インバータは、複数のスイッチング素子を所定のキャリア周波数でオン・オフさせることによって直流電力を三相交流電力に変換するものである。キャリア周波数が高く、オン・オフの頻度が高い場合には出力される三相交流電力の波形は滑らかでモータの制御が安定するがスイッチング素子の発熱が大きくその温度が上昇してしまう。一方、キャリア周波数が低く、オン・オフの頻度が低い場合には出力される三相交流電力の波形は変動成分を含みモータの制御安定性が低下してしまうがスイッチング素子の発熱がさほど大きくなくその温度上昇は小さくなる。このため、モータの回転数が高い場合は高いキャリア周波数を用い、モータの回転数が低い場合には低いキャリア周波数を用いることが多い。また、モータの出力トルクが大きい場合にはスイッチング素子に流れる電流が大きいので発熱が大きくなり、モータの出力トルクが小さい場合にはスイッチング素子に流れる電流が小さいので発熱が小さくなる。このため、モータの回転数が低く、トルクが大きい場合には、スイッチング素子の発熱、温度上昇を抑制するためにキャリア周波数を低くし、回転数が高い場合には制御の安定性を確保するためにキャリア周波数を高くする制御方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2002−010668号公報
しかし、モータが低回転、大トルクの場合に低いキャリア周波数でインバータを動作させると、変動成分を含む大きな交流電流によってモータを駆動することになるので、モータのトルク変動が大きくなり、モータからの逆起電力が大きく変動する。この結果、インバータの電圧変動が誘起される場合がある。
一方、近年、より広い回転数、トルクの範囲でモータを運転するために、バッテリの電圧を昇圧コンバータによって昇圧し、昇圧した直流電力をインバータで交流電力に変換してモータの駆動を行う方法が多く用いられている。このような昇圧を行うモータ制御装置において低いキャリア周波数でインバータを動作させ、モータを低回転、大トルクで駆動すると、モータの逆起電力の変動が大きくなり、これにより昇圧電圧が大きく変動し、場合によっては昇圧コンバータの制御性を低下させてしまうという問題がある。
本発明は、モータ制御システムにおいて、低いキャリア周波数でインバータを駆動してモータを低回転、大トルクで運転した際の昇圧電圧の変動を抑制することを目的とする。
本発明のモータ制御システムは、複数の第1スイッチング素子を所定のキャリア周波数でオン・オフ動作させてバッテリの電圧を昇圧して昇圧直流電力とする昇圧コンバータと、複数の第2スイッチング素子を所定のキャリア周波数でオン・オフ動作させて前記昇圧コンバータから出力された昇圧直流電力を交流電力に変換してモータに供給するインバータと、前記昇圧コンバータの昇圧電圧を調整する制御部と、を備えるモータ制御システムであって、前記制御部は、要求回転数と要求トルクで前記モータを運転する際の最適昇圧電圧を規定した最適昇圧電圧マップと、前記キャリア周波数が所定の閾値以下の場合に、前記昇圧コンバータの昇圧電圧を前記最適昇圧電圧マップで規定する前記最適昇圧電圧よりも高い電圧とする昇圧電圧変更手段と、を有すること、を特徴とする。
本発明のモータ制御システムにおいて、前記昇圧電圧変更手段は、前記キャリア周波数が所定の閾値以下の場合に、前記昇圧コンバータの昇圧電圧をシステム最大電圧とすることとしても好適である。
本発明のモータ制御システムにおいて、前記昇圧電圧変更手段は、前記キャリア周波数が所定の閾値以下の場合に、前記モータのトルクが大きいほど前記昇圧コンバータの昇圧電圧を高くすることとしても好適である。
本発明は、モータ制御システムにおいて、低いキャリア周波数でインバータを駆動してモータを低回転、大トルクで運転した際の昇圧電圧の変動を抑制することができるという効果を奏する。
本発明の実施形態におけるモータ制御システムの構成を示す系統図である。 本発明の実施形態におけるモータ制御システムの制御部に格納されている最適昇圧電圧マップである。 本発明の実施形態におけるモータ制御システムのモータトルクに対する昇圧電圧(直流高電圧VH)を示すグラフである。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1に示す様に、本実施形態のモータ制御システムは、充放電可能な二次電池であるバッテリ10と、バッテリ10に接続される昇圧コンバータ20と、昇圧コンバータ20に接続されるインバータ30と、インバータ30に接続される交流モータ40と、昇圧コンバータ20とインバータ30とを制御する制御部60と、を備えている。バッテリ10にはバッテリ電圧VBを検出するバッテリ電圧センサ51が取り付けられ、交流モータ40には回転数及び回転角度を検出するレゾルバ41が取り付けられている。
図1に示すように、昇圧コンバータ20は、バッテリ10のマイナス側に接続されたマイナス側電路17と、バッテリ10のプラス側に接続された低圧電路18と、昇圧コンバータ20のプラス側出力端の高圧電路19とを含んでいる。昇圧コンバータ20は、低圧電路18と高圧電路19との間に配置された上アームスイッチング素子13(第1のスイッチング素子)と、マイナス側電路17と低圧電路18との間に配置された下アームスイッチング素子14(第1のスイッチング素子)と、低圧電路18に直列に配置されたリアクトル12と、低圧電路18とマイナス側電路17との間に配置されたフィルタコンデンサ11とフィルタコンデンサ11の両端の直流低電圧VLを検出する低電圧センサ52とを含んでいる。また、各スイッチング素子13,14には、それぞれダイオード15,16が逆並列に接続されている。昇圧コンバータ20は、所定のキャリア周波数Fcで下アームスイッチング素子14をオン、上アームスイッチング素子13をオフとしてリアクトル12にバッテリ10からの電気エネルギを蓄積した後、下アームスイッチング素子14をオフとし、上アームスイッチング素子13をオンとして、リアクトル12に蓄積した電気エネルギによって電圧を上昇させて高圧電路19に昇圧した昇圧電圧である直流高電圧VHを供給する。上アームスイッチング素子13のオン・オフの時間比率及び下アームスイッチング素子14のオン・オフの時間比率は、直流低電圧VLと直流高電圧VHの比率で決定される。
インバータ30は、昇圧コンバータ20の高圧電路19に接続される共通の高圧電路22と、昇圧コンバータ20のマイナス側電路17に接続される共通のマイナス側電路21とを含んでいる。高圧電路22とマイナス側電路21との間には、昇圧コンバータ20から供給された直流電流を平滑にする平滑コンデンサ23が接続されている。インバータ30に供給される昇圧電圧である直流高電圧VHは、平滑コンデンサ23の両端の電圧を検出する高電圧センサ53によって検出される。従って、高電圧センサ53によって検出される直流高電圧VHは実際の昇圧電圧(実昇圧電圧VHr)である。インバータ30は、昇圧コンバータ20から入力された直流電力を三相交流電力に変換して交流モータ40に供給する。
インバータ30は、内部にU,V,Wの各相についてそれぞれ第2のスイッチング素子である上アームスイッチング素子31、下アームスイッチング素子32の合計6個のスイッチング素子を含んでいる。各スイッチング素子31,32にはそれぞれダイオード33,34が逆並列に接続されている(図1では、1つの相の上、下の各スイッチング素子31,32と各ダイオード33,34のみを図示し、他の相のスイッチング素子、ダイオードの図示は省略する)。インバータ30のU,V,Wの各相の上アームのスイッチング素子と下アームのスイッチング素子との間には、それぞれU,V,Wの各相の電流を出力する出力線35,36,37が取り付けられており、各出力線35,36,37が交流モータ40のU,V,Wの各相の入力端子に接続されている。また、本実施形態では、V相とW相の各出力線36,37には、それぞれの電流を検出する電流センサ42,43が取り付けられている。なお、U相の出力線35には電流センサは取りつけられていないが、三相交流では、U,V,Wの各相の電流の合計はゼロとなることから、U相の電流値はV相,W相の電流値から計算によって求めることができる。
図1に示すように、制御部60は、演算処理を行うCPU61と、記憶部62と、機器・センサインターフェース63とを含み、演算処理を行うCPU61と、記憶部62と、機器・センサインターフェース63とはデータバス64で接続されているコンピュータである。記憶部62の内部には、交流モータの制御プログラム65、制御データ66、及び、後で説明する最適昇圧電圧マップ67と、昇圧電圧変更プログラム68が格納されている。また、先に説明した、昇圧コンバータ20のスイッチング素子13,14、インバータ30の各スイッチング素子31,32は機器・センサインターフェース63を通して制御部60に接続され、制御部60の指令によって動作するよう構成されている。また、バッテリ電圧センサ51,低電圧センサ52,高電圧センサ53、レゾルバ41の各センサの出力は機器・センサインターフェース63を通して制御部60に入力されるよう構成されている。
次に、図2(a)を参照しながら記憶部62に格納された最適昇圧電圧マップ67について説明する。図2(a)に示す最適昇圧電圧マップ67は、交流モータ40を要求回転数と要求トルクで運転する際に、昇圧コンバータ20がインバータ30に供給する直流高電圧VHの最適値(最適昇圧電圧VHs)をマップにしたものである。図2(a)の実線aは交流モータ40のトルクTが大きい(T=T1)場合の最適昇圧電圧VHsを示すラインであり、一点鎖線bは交流モータ40のトルクTが中程度(T=T2<T1)の場合の最適昇圧電圧VHsを示すラインであり、破線cは交流モータ40のトルクTが小さい(T=T3<T2<T1)の場合の最適昇圧電圧VHsを示すラインである。
図2(a)の実線aに示すように、交流モータ40のトルクTがT1の場合(トルクTが大きい場合)、最適昇圧電圧VHsは、交流モータ40の回転数Rが0からN1までの間は、交流モータ40、昇圧コンバータ20、インバータ30の各機器に連続して通電できる最大電圧であるシステム最大電圧VHmaxの75%程度のVHs1となっている。交流モータ40の回転数RがN1を超えると、最適昇圧電圧VHsは、VHs1から交流モータ40、昇圧コンバータ20、インバータ30の各機器に連続して通電できる最小電圧であるシステム最低電圧VHs0(例えば、バッテリ電圧VB)よりも少し高い電圧まで低下する。そして、交流モータ40の回転数RがN2を超えて高くなっていくと、最適昇圧電圧VHsは回転数Rの上昇に応じて高くなり、交流モータ40の回転数RがN6でシステム最大電圧VHmaxとなり、交流モータ40の回転数RがN6以上ではシステム最大電圧VHmaxに保たれる。
また、図2(a)の一点鎖線bに示すように、交流モータ40のトルクTがT2の場合(トルクTが中程度の場合)にはトルクTが大きい場合と同様、最適昇圧電圧VHsは、交流モータ40の回転数Rが0からN1までの間はVHs1で、交流モータ40の回転数RがN1を超えるとVHs1からシステム最低電圧VHs0よりも少し高い電圧まで低下し、交流モータ40の回転数RがN2を超えて高くなると回転数Rの上昇に応じて高くなり、交流モータ40の回転数RがN6よりも高いN7でシステム最大電圧VHmaxとなり、交流モータ40の回転数RがN7以上では、システム最大電圧VHmaxに保たれる。
また、図2(a)の破線cに示すように、交流モータ40のトルクTがT1の場合(トルクTが小さい場合)、最適昇圧電圧VHsは、交流モータ40の回転数Rが0からN1までの間は、システム最大電圧VHmaxの30%程度のVHs3となっている(VHs3<VHs1)。交流モータ40の回転数RがN1を超えると最適昇圧電圧VHsは、VHs3からシステム最低電圧VHs0よりも少し高い電圧まで低下し、交流モータ40の回転数RがN2を超えて高くなると回転数Rの上昇に応じて高くなり、交流モータ40の回転数RがN6,N7よりも高いN8でシステム最大電圧VHmaxとなり、交流モータ40の回転数RがN8以上では、システム最大電圧VHmaxに保たれる。
以上説明したように、最適昇圧電圧VHsは、交流モータ40の回転数がN1よりも低い場合には交流モータ40のトルクTが大きいあるいは中程度の場合には、システム最大電圧VHmaxの75%程度のVHs1に、交流モータ40のトルクTが小さい場合にはシステム最大電圧VHmaxの30%程度のVHs3になり、交流モータ40の回転数がN1とN2との間では、システム最低電圧VHs0よりも少し高い電圧になる。そして、交流モータ40の回転数がN2を超えると、トルクTの大きさに応じた増加比率で回転数Rが高くなるに従って高くなる。そして、交流モータ40のトルクTが大きい場合には回転数RがN6以上で、トルクTが中程度の場合は回転数RがN6より高いN7以上で、トルクTが小さい場合は回転数RがN6,N7よりも高いN8以上でそれぞれシステム最大電圧VHmaxとなる。
また、制御部60は、記憶部62の制御データ66の中に、図2(b)に示すような交流モータ40の回転数Rに対してキャリア周波数Fcを規定するキャリア周波数マップを格納している。図2(b)に示すように、キャリア周波数Fcは、交流モータ40の回転数Rが0からN1までの間は一番低いFc1、回転数RがN1からN3までの間は少し高いFc2、回転数RがN3からN4までの間はもう少し高いFc3、回転数RがN4以上では最も高いFc4、のように回転数Rが高くなるにつれて4段階に高くなっていくように規定されている。
したがって、図2(a)に示すように、交流モータ40の回転数Rが0からN1までの間のN11,N12では、交流モータ40のトルクTが中程度以上の場合には、昇圧コンバータ20はキャリア周波数Fcが一番低いFc1で、昇圧電圧(直流高電圧VH)がVHs1となる動作点P11,P12,P21,P22で動作し、交流モータ40のトルクTが小さい場合には、キャリア周波数Fcが一番低いFc1で、昇圧電圧(直流高電圧VH)がシステム最大電圧VHmaxの30%程度のVHs3となる動作点P13,P23で動作する。
本実施形態のモータ制御システム100の昇圧電圧変更プログラム68(昇圧電圧変更手段)は、キャリア周波数Fcが所定の閾値以下の場合に、昇圧コンバータ20の昇圧電圧(直流高電圧VH)を最適昇圧電圧マップ67で規定する最適昇圧電圧VHsよりも高い電圧とするものである。
昇圧電圧変更プログラム68を実行すると、制御部60は、図2(b)に示すように交流モータ40の回転数RがN11、トルクTが中程度以上で、キャリア周波数Fcが所定の閾値Fc0よりも低いFc1の場合、昇圧コンバータ20の昇圧電圧(直流高電圧VH)を各最適昇圧電圧VHsよりも大きいシステム最大電圧VHmaxに設定する。これにより、図2(a)に示すように、昇圧コンバータ20の動作点は昇圧電圧変更プログラム68を実行する前の動作点P11,P12,P13からP10に移動し、昇圧コンバータ20は、システム最大電圧VHmaxの昇圧電圧をインバータ30に供給する。
両端に直流高電圧VH(昇圧電圧)が印加されている平滑コンデンサ23に蓄えられる電気エネルギPcは、平滑コンデンサ23の静電容量をCとして以下の(式1)のように表される。
Pc=(1/2)×C×VH2 −−−−−−−−− (式1)
ここで、直流高電圧VHがVHs1の場合に直流高電圧VHがΔVHだけ変動するのに必要なエネルギΔPc1と、直流高電圧VHがVHmaxの場合に直流高電圧VHがΔVHだけ変動するのに必要なエネルギΔPcmaxとは下記の(式2)、(式3)で表される。
ΔPc1=(1/2)×C×[(VHs1+ΔVH)2−VHs1 2
=(1/2)×C×[ΔVH2+(2×VHs1×ΔVH)] −− (式2)
ΔPcmax=(1/2)×C×[(VHmax+ΔVH)2−VHmax2
=(1/2)×C×[ΔVH2+(2×VHmax×ΔVH)] − (式3)
ΔPcmaxとΔPc1との差は、
ΔPcmax−ΔPc1=(1/2)×C×2×ΔVH×(VHmax−VHs1
=C×ΔVH×(VHmax−VHs1) −−− (式4)
先に述べたように、VHs1はVHmaxの75%程度であり、VHmaxはVHs1よりも大きいから(VHmax>VHs1)、(式4)中の(ΔPcmax−ΔPc1)は正となり、ΔPcmaxはΔPc1よりも大きくなる。したがって、直流高電圧VHの高い場合の方が直流高電圧VHの低い場合よりも直流高電圧VHを電圧ΔVHだけ変動させるのに必要なエネルギが大きくなる。換言すると、直流高電圧VHの高い場合には直流高電圧VHの低い場合よりも大きなエネルギが入力されないと電圧がΔVHだけ変動せず、同様のエネルギが入力された場合には、直流高電圧VHの高い場合には直流高電圧VHの低い場合よりも電圧の変動幅が小さくなる。
したがって、図2(a)に示すように、昇圧コンバータ20の動作点が昇圧電圧変更プログラム68を実行する前の動作点P11,P12,P13から昇圧電圧変更プログラム68を実行した際の動作点P10に移動し、直流高電圧がVHs1あるいはVHs3からVHmaxに上昇すると、直流高電圧VHの電圧変動が小さくなる。
このように、昇圧電圧変更プログラム68によって昇圧電圧をシステム最大電圧VHmaxまで上昇させると、キャリア周波数Fcが所定の閾値Fc0よりも低い周波数で、インバータ30を駆動し、これにより大きな変動成分を含む交流電流によって交流モータ40が駆動され、交流モータ40のトルク変動、交流モータ40の逆起電力の変動が大きい場合でも、昇圧コンバータ20からインバータ30に供給される直流高電圧VHの電圧変動を抑制でき、昇圧コンバータ20の制御性が低下することを抑制することができる。また、VHの変動が抑制されることにより交流モータ40の制御応答性の低下を抑制することができる。
上記の実施形態では、最適昇圧電圧マップは、図2(a)に示すように、交流モータ40を要求回転数と要求トルクで運転する際に、昇圧コンバータ20がインバータ30に供給する直流高電圧VHの最適値(最適昇圧電圧VHs)をマップにしたものとして説明したが、最適昇圧電圧マップはこれに限定されず様々な形式のマップでもよい。例えば、交流モータ40を要求回転数と要求トルクで運転するために必要な下限電圧を規定した要求下限電圧マップは、昇圧コンバータ20の昇圧損失をできるだけ小さく(最適化)しつつ交流モータ40を要求回転数と要求トルクで運転可能な電圧をマップとしたものであり、最適昇圧電圧マップの一例である。この場合、昇圧電圧変更プログラム68によってキャリア周波数Fcが所定の閾値Fc0よりも低い場合に、昇圧電圧を要求下限電圧マップに規定されている下限電圧以上、例えば、システム最大電圧VHmaxまで上昇させるようにしてもよい。
次に、本実施形態のモータ制御システム100の他の動作について説明する。先に図2(a)を参照して説明した動作では、交流モータ40のトルクがT2からT1の間で交流モータ40の回転数Rが0とN1との間では最適昇圧電圧VHsは最適昇圧電圧マップ67によって同一のVHs1に設定され、キャリア周波数Fcが所定の閾値Fc0よりも低い場合に昇圧電圧変更プログラム68によって昇圧電圧(直流高電圧VH)をシステム最大電圧VHmaxまで上昇させることとして説明したが、直流高電圧VHの電圧変動を抑制することができれば、昇圧電圧(直流高電圧VH)をシステム最大電圧VHmaxよりも低い電圧まで上昇させることとしてもよい。
例えば、交流モータ40のトルクTが大きいほど交流モータ40に流れる電流は大きく、交流モータ40がトルク変動を起こした場合にはより大きな変動の逆起電力が発生し、大きな変動エネルギが平滑コンデンサ23に入力される。一方、トルクTが小さい場合には、交流モータ40に流れる電流が小さいので、トルク変動の際に発生する逆起電力はあまり大きくならない。したがって、交流モータ40のトルクTが小さい場合には、昇圧電圧(直流高電圧VH)をVHmaxよりも低い電圧としても昇圧電圧(直流高電圧VH)の電圧変動を抑制することができる。
昇圧電圧変更プログラム68は、その中に図3に示すような交流モータ40のトルクTに対する昇圧電圧(直流高電圧VH)のマップを有している。図3の実線dに示すように、交流モータ40のトルクTが中程度のT2では、昇圧電圧(直流高電圧VH)は図2(a)に示す最適昇圧電圧マップと同様のVHs1で、トルクTがT2からT1(T2<T1)の間では昇圧電圧(直流高電圧VH)はトルクTが大きくなるほど高くなり、トルクTがT1を超えると昇圧電圧(直流高電圧VH)はシステム最大電圧VHmaxとなる。
図3に示すマップを用いた場合、制御部60は、図2(b)に示すように、交流モータ40の回転数がN12、キャリア周波数Fcが所定の閾値Fc0よりも低いFc1で、交流モータ40のトルクがT2とT1との中間のT3の場合には、昇圧電圧(直流高電圧VH)をVHs1より高くVHmaxより低いVHs5とする。これにより、昇圧コンバータ20の動作点は、昇圧電圧変更プログラム68を実行する前の動作点P21から昇圧電圧変更プログラム68を実行した際の動作点P25に移動し、昇圧コンバータ20は、VHs5の昇圧電圧(直流高電圧VH)をインバータ30に供給する。また、交流モータ40のトルクがT2とT1との中間でT3より大きいT4の場合には、昇圧電圧(直流高電圧VH)をVHs1,VHs5より高くVHmaxより低いVHs4とする。これにより、昇圧コンバータ20の動作点は、昇圧電圧変更プログラム68を実行する前の動作点P22から昇圧電圧変更プログラム68を実行した際の動作点P24に移動し、昇圧コンバータ20は、VHs4の昇圧電圧(直流高電圧VH)をインバータ30に供給する。同様に、昇圧コンバータ20は、交流モータ40のトルクTが中程度のT2の場合にはVHs1の昇圧電圧(直流高電圧VH)をインバータ30に供給し、交流モータ40のトルクTがT1を超える場合にはVHmaxの昇圧電圧(直流高電圧VH)をインバータ30に供給する。
本動作は、先に説明した実施形態の動作と同様、低いキャリア周波数Fcでインバータ30を駆動して交流モータ40を低回転、大トルクで運転した際の昇圧電圧(直流高電圧VH)の変動を抑制することができるほか、昇圧電圧(直流高電圧VH)をVHmaxまで上昇させず、交流モータ40のトルクTに応じてVHmaxより低い電圧までしか上昇させないので、昇圧コンバータ20の損失増加を抑制しつつ、昇圧電圧(直流高電圧VH)の変動を抑制することができる。
また、図3に示すマップは複数のラインを含みうる。例えば、平滑コンデンサ23の容量が大きい場合には昇圧電圧(直流高電圧VH)の変動が小さくなるので、図3の破線eに示すように、交流モータ40のトルクTがT2よりも大きなT2´まで昇圧電圧(直流高電圧VH)をVHs1に保ち、トルクTがT2´からT1より大きいT1´の間では昇圧電圧(直流高電圧VH)をトルクTが大きくなるに従って高くし、トルクTがT1より大きいT1´を超えると昇圧電圧(直流高電圧VH)をシステム最大電圧VHmaxとなるようなラインとして、同じトルクTにおいて実線dの場合よりも低い昇圧電圧(直流高電圧VH)に昇圧するようにしてもよい。
図3の破線eのラインを用いて昇圧電圧変更プログラム68を実行した場合には、図3の実線dのラインを用いて昇圧電圧変更プログラム68を実行した場合よりも同じトルクTにおいて低い昇圧電圧(直流高電圧VH)となるので、実線dを用いた場合よりも昇圧コンバータ20の損失増加を抑制しつつ、昇圧電圧(直流高電圧VH)の変動を抑制することができる。
本発明は以上説明した各実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲により規定されている本発明の技術的範囲ないし本質から逸脱することない全ての変更及び修正を包含するものである。
10 バッテリ、11 フィルタコンデンサ、12 リアクトル、13,31 上アームスイッチング素子、14,32 下アームスイッチング素子、15,16,33,34 ダイオード、17,21 マイナス側電路、18 低圧電路、19,22 高圧電路、20 昇圧コンバータ、23 平滑コンデンサ、30 インバータ、35,36,37 出力線、40 交流モータ、41 レゾルバ、42,43 電流センサ、51 バッテリ電圧センサ、52 低電圧センサ、53 高電圧センサ、60 制御部、61 CPU、62 記憶部、63 機器・センサインターフェース、64 データバス、65 制御プログラム、66 制御データ、67 最適昇圧電圧マップ、68 昇圧電圧変更プログラム、100 モータ制御システム。

Claims (3)

  1. 複数の第1スイッチング素子を所定のキャリア周波数でオン・オフ動作させてバッテリの電圧を昇圧して昇圧直流電力とする昇圧コンバータと、
    複数の第2スイッチング素子を所定のキャリア周波数でオン・オフ動作させて前記昇圧コンバータから出力された昇圧直流電力を交流電力に変換してモータに供給するインバータと、
    前記昇圧コンバータの昇圧電圧を調整する制御部と、を備えるモータ制御システムであって、
    前記制御部は、
    要求回転数と要求トルクで前記モータを運転する際の最適昇圧電圧を規定した最適昇圧電圧マップと、
    前記キャリア周波数が所定の閾値以下の場合に、前記昇圧コンバータの昇圧電圧を前記最適昇圧電圧マップで規定する前記最適昇圧電圧よりも高い電圧とする昇圧電圧変更手段と、を有すること、
    を特徴とするモータ制御システム。
  2. 請求項1に記載のモータ制御システムであって、
    前記昇圧電圧変更手段は、
    前記キャリア周波数が所定の閾値以下の場合に、前記昇圧コンバータの昇圧電圧をシステム最大電圧とするモータ制御システム。
  3. 請求項1に記載のモータ制御システムであって、
    前記昇圧電圧変更手段は、
    前記キャリア周波数が所定の閾値以下の場合に、前記モータのトルクが大きいほど前記昇圧コンバータの昇圧電圧を高くするモータ制御システム。
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