JP2015159250A - 化合物半導体構造の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 高効率の発光が可能な発光ダイオード(LED)やレーザダイオード(LD)などを構成可能な品質を有する化合物半導体構造の製造方法を提供する。
【解決手段】 この製造方法は、基板上に第1ガスを供給し第1層を形成する第1ステップと、第1ガスが供給された処理容器のパージを行う第2ステップと、第1層上に第2ガスを供給し第2層を形成する第3ステップと、第2ガスが供給された処理容器のパージを行う第4ステップとを備え、第1ガスは、III族元素を含む有機金属化合物ガスであり、第2ガスは、V族元素を含む水素化合物ガスであり、第2ステップの期間t(秒)は、所定の関係を満たしている。
【選択図】図4
【解決手段】 この製造方法は、基板上に第1ガスを供給し第1層を形成する第1ステップと、第1ガスが供給された処理容器のパージを行う第2ステップと、第1層上に第2ガスを供給し第2層を形成する第3ステップと、第2ガスが供給された処理容器のパージを行う第4ステップとを備え、第1ガスは、III族元素を含む有機金属化合物ガスであり、第2ガスは、V族元素を含む水素化合物ガスであり、第2ステップの期間t(秒)は、所定の関係を満たしている。
【選択図】図4
Description
本発明は、化合物半導体構造の製造方法に関する。
従来、GaN系LED製造時の結晶成膜においては、有機金属気相成長(MOCVD)法が用いられている。MOCVD法においては、有機金属原料ガスとNH3ガスを基板に供給し、供給されたガスと基板表面との熱的化学反応を用いて、化合物半導体層を形成する。
MOCVD法には、様々な技術が知られている。例えば、大気圧近傍のMOCVD法を用いてGaN成長させる技術(特許文献1)、AlGaInNの成長において、有機金属化合物ガスをパルス供給する技術(特許文献2)、MOCVD法を用いたAlGaNバッファ層の成長において、熱処理を行う技術(特許文献3)、Mgを添加することでp型半導体を形成する技術(特許文献4)が知られている。
また、MOCVD法で圧力を1〜10kPaに設定し、温度を900〜1100℃とした技術(特許文献5)、MOCVD法において、1気圧で有機窒化化合物原料を用いた技術(特許文献6)、温度850〜730℃で、MQWを形成する場合に、所望の濃度(0.01%〜50%)のH2を添加する技術(特許文献7)が知られている。
更に、成膜途中に成長抑制時間を設ける技術(特許文献8)、GaCl3,NH3,H2,Arを交互供給する技術(特許文献9)が知られている。
しかしながら、従来よりも更に高効率の発光が得られる結晶性の高い化合物半導体構造が要望されている。本発明の態様は、このような課題に鑑みてなされたものであり、高効率の発光が可能な発光ダイオード(LED)やレーザダイオード(LD)などを構成可能な品質を有する化合物半導体構造の製造方法を提供することを目的とする。
上述の課題を解決するため、本発明の態様に係る第1の化合物半導体構造の製造方法は、処理容器内に配置された基板に対して1又は複数のサイクル工程からなる原子層エピタキシー(ALE)法を実行して化合物半導体構造を製造する方法において、前記サイクル工程は、前記基板上に第1ガスを供給し第1層を形成する第1ステップと、前記第1ガスが供給された前記処理容器のパージを行う第2ステップと、前記第1層上に第2ガスを供給し第2層を形成する第3ステップと、前記第2ガスが供給された前記処理容器のパージを行う第4ステップと、を備え、前記第1ガスは、III族元素を含む有機金属化合物ガスであり、前記第2ガスは、V族元素を含む水素化合物ガスであり、前記第2ステップの期間t(秒)は、T(K)を絶対温度、Q(eV)をIII族原子の表面拡散に必要な活性化エネルギー、kをボルツマン定数として、以下の数式を満たすように設定される。
0.0003≦(t・exp(−Q/kT))1/2≦0.00064…(式1)
第2ステップの期間tが、上記範囲にある場合、形成された化合物半導体層の表面粗さ(RMS)は1nm以下に抑制することも可能である。これは、III族原子の表面拡散距離が、一定の範囲内に存在する場合には、表面粗さが低減することを示している。なぜならば、下地膜の貫通転位に起因するピットが拡がらないようピット箇所へのIII族原子の十分な到達量を確保しつつ、III族原子同士の凝集を抑制するためである。
また、第2の化合物半導体構造の製造方法は、第1の化合物半導体構造の製造方法において、前記第3ステップにおいて、前記第1ステップよりも相対的に高い流量で、Mgを含むドーパントガスを供給することを特徴とする。なお、第1ステップにおいて、Mgを含むドーパントガスを全く供給しなくてもよい。この場合、第2層においてMgによるキャリア濃度を高めることができる。
また、第3の化合物半導体構造の製造方法は、第1の化合物半導体構造の製造方法において、前記第1ガスはトリメチルガリウム(TMG)又はトリエチルガリウム(TEG)とトリメチルインジウム(TMI)とを含み、前記第1ステップにおいて、H2ガスを前記第1ガスと共に供給することを特徴とする。第1ステップにおいてH2ガスを供給すると、炭素(C)、水素(H)、酸素(O)などの不純物元素とH2ガスとが結合し、これらの不純物元素の濃度が大幅に低下する。
また、第4の化合物半導体構造の製造方法は、第2の化合物半導体構造の製造方法において、前記第1ガスはトリメチルガリウム(TMG)又はトリエチルガリウム(TEG)とトリメチルインジウム(TMI)とを含み、前記第1ステップにおいて、H2ガスを前記第1ガスと共に供給することを特徴とする。この場合は、第1、第2及び第3の化合物半導体構造の製造方法の効果が奏されて、更に高品質な化合物半導体構造を得ることが可能である。
また、第5の化合物半導体構造の製造方法は、処理容器内に配置された基板に対して1又は複数のサイクル工程からなる原子層エピタキシー法を実行して化合物半導体構造を製造する方法において、前記サイクル工程は、前記基板上に第1ガスを供給し第1層を形成する第1ステップと、前記第1ガスが供給された前記処理容器のパージを行う第2ステップと、前記第1層上に第2ガスを供給し第2層を形成する第3ステップと、前記第2ガスが供給された前記処理容器のパージを行う第4ステップと、を備え、前記第1ガスは、トリメチルガリウム(TMG)又はトリエチルガリウム(TEG)とトリメチルインジウム(TMI)とを含み、前記第1ステップにおいて、H2ガスを前記第1ガスと共に供給することを特徴とする。
この場合、第3の化合物半導体構造の製造方法と同様の作用効果を奏する。すなわち、炭素(C)、水素(H)、酸素(O)などの不純物元素とH2ガスとが結合し、これらの不純物元素の濃度が大幅に低下する。
また、第6の化合物半導体構造の製造方法は、第5の化合物半導体構造の製造方法において、前記第3ステップにおいて、前記第1ステップよりも相対的に高い流量で、Mgを含むドーパントガスを供給する、ことを特徴とする。
この場合、第5の化合物半導体構造の製造方法の効果に加えて、第2の化合物半導体構造の製造方法と同様の作用効果を奏する。すなわち、第2層においてMgによるキャリア濃度を高めることができる。
また、第7の化合物半導体構造の製造方法は、処理容器内に配置された基板に対して1又は複数のサイクル工程からなる原子層エピタキシー法を実行して化合物半導体構造を製造する方法において、個々の前記サイクル工程は、前記基板上に第1ガスを供給し第1層を形成する第1ステップと、前記第1ガスが供給された前記処理容器のパージを行う第2ステップと、前記第1層上に第2ガスを供給し第2層を形成する第3ステップと、前記第2ガスが供給された前記処理容器のパージを行う第4ステップと、を備え、前記第1ガスは、III族元素を含む有機金属化合物ガスであり、前記第2ガスは、V族元素を含む水素化合物ガスであり、前記第3ステップにおいて、前記第1ステップよりも相対的に高い流量で、Mgを含むドーパントガスを供給することを特徴とする。
この場合、第2の化合物半導体構造の製造方法と同様の作用効果を奏する。すなわち、第2層においてMgによるキャリア濃度を高めることができる。
本発明によれば、高品質な化合物半導体構造を製造することが可能である。
以下、実施の形態に係る化合物半導体構造について説明する。同一要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
化合物半導体構造の一例として、発光ダイオード(LED)について説明する。
図1は、発光ダイオードの縦断面図である。
この発光ダイオードは、基板1上にバッファ層2、下部第1クラッド層3、下部第2クラッド層4、活性層5、上部クラッド層6、キャップ層7、第1電極層8、電極パッド9をこの順番に備えている。また、下部第2クラッド層4上には、その露出面上に第2電極層10及び電極パッド11をこの順番に備えている。
各層の材料と厚みの一例は以下の通りである。
基板:サファイア、Si又はSiC(50μm〜1000μm)
バッファ層2:低温成長GaN(30nm)
下部第1クラッド層3:アンドープGaN(2μm)
下部第2クラッド層4:n型GaN(3μm)
活性層5:多重量子井戸構造(InGaN/GaN)(2.5nm/10nm)
上部クラッド層6:p型AlGaN(20nm)
キャップ層7:p型GaN(100nm)
第1電極層8;(NiAu又はITO(Indium Tin-Oxide))
第2電極層10:(NiAu又はITO(Indium Tin-Oxide))
基板:サファイア、Si又はSiC(50μm〜1000μm)
バッファ層2:低温成長GaN(30nm)
下部第1クラッド層3:アンドープGaN(2μm)
下部第2クラッド層4:n型GaN(3μm)
活性層5:多重量子井戸構造(InGaN/GaN)(2.5nm/10nm)
上部クラッド層6:p型AlGaN(20nm)
キャップ層7:p型GaN(100nm)
第1電極層8;(NiAu又はITO(Indium Tin-Oxide))
第2電極層10:(NiAu又はITO(Indium Tin-Oxide))
なお、活性層5と上部クラッド層6との間に、原子層エピタキシー(ALE)法で形成されるGaN(10nm)からなるキャップ層を挿入してもよい。なお、AlGaNにおいては、Al含有量が多いほど低屈折率で高抵抗となるが、エネルギーバンドギャップは大きくなる。
各層の成長温度と形成法の一例は以下の通りである。
バッファ層2:550℃(MOCVD法)
下部第1クラッド層3:1050℃(MOCVD法)
下部第2クラッド層4:1050℃(MOCVD法)
活性層5:700℃以下(ALE法)
上部クラッド層6:700℃以下(ALE法)
キャップ層7:700℃以下(ALE法)
バッファ層2:550℃(MOCVD法)
下部第1クラッド層3:1050℃(MOCVD法)
下部第2クラッド層4:1050℃(MOCVD法)
活性層5:700℃以下(ALE法)
上部クラッド層6:700℃以下(ALE法)
キャップ層7:700℃以下(ALE法)
ここで、ALE法を用いた場合、MOCVD法を用いる場合に比べて、低い温度で結晶成長を行うことができる。したがって、活性層5に含まれるInGaN層の熱分解を抑制することができ、また、活性層5に接触するGaNキャップ層の形成を省略することができる。また、ALE法を用いた場合、各層間の界面における組成変化が急峻になるため、活性層5におけるGaNバリア層を薄膜化することができ、したがって、活性層5内におけるInGaN発光層への正孔分散によって結合効率が増加し、高効率の発光ダイオードを構成することができる。
なお、p型及びn型のドーパント濃度は、例えば、1×1018/cm3〜5×1019/cm3の間の範囲内で適宜選択すればよい。
図2は、ALE成膜装置の構成を示す図である。
ALE成膜装置の処理容器20は、石英管などで実現することもできるが、金属製のチャンバを用いることもできる。処理容器20には、予備ガス、第1ガス、第2ガスが横方向から供給される(サイドフロー方式)。第1ガス及び第2ガスには、必要に応じて、ドーパントガスを混入させることができる。予備ガスは、H2やN2であり、第1ガスは、III−V族化合物半導体を成長する際のIII族元素を含むガスであり、第2ガスはV族元素を含むガスである。処理容器20の一端からは、内部の気体が排気されている。処理容器20では、成膜処理される基板Sが配置され、基板Sは回転台21上に配置されている。回転台21は、ヒータ及び温度計(熱電対)を内蔵しており、導入されるガス流に垂直な方向の軸を中心に回転することができる。ヒータとしては種々のものがあるが、カーボンヒータの表面をPBN(窒化ホウ素)でコーティングしたものを用いることができ、高速に温度を変化させることができる。なお、処理容器20の形状は、ガス流が、基板Sの表面に平行に流れるように、凹部などを設けて、部分的に変形させることができる。なお、実験においては、回転台21を無回転もしくは低速で回転させながらALEを行った。
この装置を用いて、化合物半導体層(化合物半導体構造)を成膜する場合、以下の工程を用いる。
まず、処理容器20内に配置された基板Sに対して1又は複数のサイクル工程からなる原子層エピタキシー(ALE)法を実行する。各サイクル工程は、以下の4つのステップを備えている。
(第1ステップ)
(第1ステップ)
基板S上に第1ガスを供給し第1層を形成する。第1ガスは、III族元素を含む有機金属化合物ガスとキャリアガス(H2ガス、N2ガス、又はH2とN2の混合ガス)である。III族元素としては、以下の金属元素を含む有機金属化合物ガス(以下、MOガス)のいずれか1種を用いることができる。
Al:TMA(トリメチルアルミニウム)
Ga:TMG(トリメチルガリウム)又はTEG(トリエチルガリウム)
In:TMI(トリメチルインジウム)
(第2ステップ)
Al:TMA(トリメチルアルミニウム)
Ga:TMG(トリメチルガリウム)又はTEG(トリエチルガリウム)
In:TMI(トリメチルインジウム)
(第2ステップ)
第1ガスが供給された処理容器20のパージ(気体の追い出し)を行う。H2ガス、N2ガス、又はH2とN2の混合ガスを予備ガスとして処理容器内に供給し、他のガスの供給を停止すればよい。
(第3ステップ)
(第3ステップ)
第1層上に第2ガスを供給し第2層を形成する。第2ガスは、V族元素を含む水素化合物ガスである。V族元素としては、以下の元素を含むガスのいずれか1種を用いることができる。
N:NH3(アンモニア)
P:PH3(ホスフィン)
As:AsH3(アルシン)
Sb:SbH3(スチビン)
(第4ステップ)
N:NH3(アンモニア)
P:PH3(ホスフィン)
As:AsH3(アルシン)
Sb:SbH3(スチビン)
(第4ステップ)
第2ガスが供給された処理容器20のパージを行う。H2ガス、N2ガス、又はH2とN2の混合ガスを予備ガスとして処理容器内に供給し、他のガスの供給を停止すればよい。
1サイクルでは、第1、第2、第3及び第4ステップを順次実行し、1サイクルが終了すると、次のサイクルの処理を同様に実行する。
なお、各層の形成の際には、必要に応じて、ドーパントガスを追加することができる。ドーパントガスとしては、以下の元素を含むガスのいずれか1種もしくはそれらの混合ガスを用いることができる。
(p型):EtCp2Mg(ビス(エチルシクロペンタジエニル)マグネシウム)
(p型):Cp2Mg(ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウム)
(n型):SiH4(モノシラン)
(n型):SiH3(CH3)(モノメチルシラン)
(n型):Si(CH3)4(テトラメチルシラン)
(p型):EtCp2Mg(ビス(エチルシクロペンタジエニル)マグネシウム)
(p型):Cp2Mg(ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウム)
(n型):SiH4(モノシラン)
(n型):SiH3(CH3)(モノメチルシラン)
(n型):Si(CH3)4(テトラメチルシラン)
GaN層を形成する場合は、GaとNの原料ガスとなるTMG、NH3を選択すればよい。AlGaNを形成する場合は、Al、Ga、Nの原料ガスとなるTMA,TMG、NH3を選択すればよい。InGaNを形成する場合は、In、Ga、Nの原料ガスとなるTMI,TMG、NH3を選択すればよい。その他の元素からなる化合物を成膜する時も同様である。
(1)標準サイクル
(1)標準サイクル
一例として、以下のサイクルを実行することができる。まず、GaN膜の形成されたテンプレート基板もしくはGaN基板を用意して、以下のステップを順次行う。これを標準サイクルとする。
(第1ステップ)
(第1ステップ)
予備ガスとして窒素ガス(流量12.5(SLM))を、予備供給ラインを介して、処理容器に供給しつつ、第1ガスとしてTMG(流量78.1μmol/min)を、第1供給ラインを介して、処理容器に供給する。
(第2ステップ)
(第2ステップ)
予備ガスとして窒素ガス(流量12.5(SLM))を、予備供給ラインを介して、処理容器に供給しつつ、その他のガスの供給を停止する。
(第3ステップ)
(第3ステップ)
予備ガスとして窒素ガス(流量12.5(SLM))を、予備供給ラインを介して、処理容器に供給しつつ、第2ガスとしてNH3(流量5(SLM))を、第2供給ラインを介して、処理容器に供給する。
(第4ステップ)
(第4ステップ)
予備ガスとして窒素ガス(流量12.5(SLM))を、予備供給ラインを介して、処理容器に供給しつつ、その他のガスの供給を停止する。
この場合、TMGとNH3に含まれるGa及びNを構成元素とするGaN層をALE法で成長させることができる。
(2)第1実施サイクル
(2)第1実施サイクル
一例として、標準サイクルの条件に加えて、以下の条件を追加することができる。これを第1実施サイクルとして、図8に示す。第1〜第4ステップを通じて、第1ガスにH2(流量8(SLM))を混入し、第1、第2、第4ステップにおいて、第2ガスにH2(流量9(SLM))を混入させ、第3ステップにおいて第2ガスにH2(流量5(SLM))を混入させ、第1〜第4ステップを通じて、圧力は大気圧よりも低い一定圧力(500Torr=6.7×104Pa)に保持する。
(実験1)
(実験1)
実験1では、基板としてGaNテンプレートを用いた。第1実施サイクルを採用し、成長温度を640℃、第1ステップを0.2秒、第2ステップを1秒、第3ステップを10秒、第4ステップを1秒として、これを実行し、このサイクルを1000回繰り返した。この場合、GaN層が形成され、その断面TEM像を観察すると貫通転位が観察され、表面にピットが観察された。表面粗さ(RMS)は1.886nmであった。
(実験2)
(実験2)
実験2では、実験1と同様にGaNテンプレート基板上にGaNを形成した。実験2では、第2ステップにおけるパージ時間の4条件について表面粗さを評価した。なお、サイクル時間が変化しているが表面粗さの評価には問題ない範囲である。
(実験2−1)実験2−1では、第1実施サイクルを採用し、成長温度を700℃、処理容器内圧力を500Torr、TMGを供給する第1ステップ0.4秒、NH3を供給する第3ステップ10秒、第4ステップ3秒として、第2ステップにおけるパージ時間を1秒とし、このサイクルを1000回繰り返した。
(実験2−2)
実験2−1において、第4ステップのパージ時間を3秒とし、第2ステップにおけるパージ時間を3秒とし、このサイクルを1000回繰り返した。
実験2−1において、第4ステップのパージ時間を3秒とし、第2ステップにおけるパージ時間を3秒とし、このサイクルを1000回繰り返した。
(実験2−3)
実験2−1において、第4ステップのパージ時間を3秒とし、第2ステップにおけるパージ時間を10秒とし、このサイクルを600回繰り返した。
実験2−1において、第4ステップのパージ時間を3秒とし、第2ステップにおけるパージ時間を10秒とし、このサイクルを600回繰り返した。
(実験2−4)
実験2−1において、第4ステップのパージ時間を3秒とし、第2ステップにおけるパージ時間を20秒としこのサイクルを600回繰り返した。
実験2−1において、第4ステップのパージ時間を3秒とし、第2ステップにおけるパージ時間を20秒としこのサイクルを600回繰り返した。
図3は、実験2−1〜実験2−4で得られたGaNの表面写真(AFM像)を示す図である。なお、図中のスケールの単位はμmである。
実験2−1では、厚みが165nm、表面粗さRMS=7.268nmのアンドープGaN層が得られた。層の表面は大きく荒れている。
実験2−2では、厚みが150nm、表面粗さRMS=0.315nmのアンドープGaN層が得られた。表面にはピットが観察された。
実験2−3では、厚みが77nm、表面粗さRMS=0.250nmのアンドープGaN層が得られた。表面にはピットが観察された。
実験2−4では、厚みが78nm、表面粗さRMS=8.040nmのアンドープGaN層が得られた。層の表面は大きく荒れている。
以上の実験結果から、成長温度700℃において、第2ステップにおけるパージ時間tが3秒以上10秒以下の場合には、ピットが低減し、表面粗さRMSを低減することが可能である。また、ALE法においては、その成長レートは膜質の観点から1サイクルあたり1分子層以下で成長することが望ましい。ホモエピタキシー成長時に下地膜の貫通転位箇所からピットが拡大しやすいが、パージ時間tを調整することで、抑制することが可能である。
また、実験2において、成長温度を650℃とした場合、第2ステップにおけるパージ時間tが10秒以上20秒以下の場合には、ピットが低減し、表面粗さRMSを低減することが可能である。この実験では、パージ時間t=5sec、t=10sec、t=20sec、T=650℃とした場合、それぞれ、RMS=6.5nm、RMS=0.92(nm)、RMS=0.44(nm)であった。
また、実験2において、成長温度を600℃とした場合、それぞれの条件で、パージ時間t=20sec、t=40sec、t=60sec、t=90sec、T=600℃とした場合、それぞれ、RMS=6.72nm、RMS=14.23nm、RMS=7.20nm、RMS=0.25nmであった。温度600℃では平坦性が良いパージ時間tは100秒近くになり製造上現実的な条件ではない。
平坦な表面上又はピットを有する下地層上にGaN層を形成する場合、III族原子の基板表面上における拡散(マイグレーション)は、ピット周囲の結晶成長に影響する。成長温度が高い場合には、III族原子の拡散距離(マイグレーション)も大きくなり、平坦性が高くなる傾向にあると考えられるが、実際には拡散距離が大きくなると表面粗さが大きくなる場合も考えられる。なぜならば、下地膜の貫通転位に起因するピットが拡がらないようピット箇所へのIII族原子の十分な到達量を確保するには拡散距離を長くするのが良いが、長くしすぎると表面拡散したIII族原子同士の凝集が進行するためである。この場合には、表面粗さRMSが拡散距離Xの関数になっているものと考えられる。本願発明者らは、理論的に計算されるIII族原子(Ga)の拡散距離X毎に、実験で求められた表面粗さRMSをプロットしていくと具体的な関数(以下、X−RMS関数)が求められることを発見した。
図4は、Ga原子の拡散距離X(任意単位)と表面粗さRMS(nm)との関係を示すグラフである。実験2において比較的平坦性が良好であった、650℃、700℃の実験結果についてプロットしたものである。
上述のX−RMS関数は、下に凸な曲線となる。すなわち、第2ステップにおけるパージ時間tと成長時の絶対温度Tを設定すれば、これらのパラメータから拡散距離Xが求められ、拡散距離Xに応じた表面粗さRMSを求めることができる。絶対温度T(K)はこれまで述べた成膜温度(単位℃)に273を足して変換して求めた。
拡散距離Xは、時間tと拡散係数Dで一般に以下の式で与えられる。ここで拡散係数の単位(SI)は長さの二乗を時間で割った[m2/sec]である。また本発明では表面拡散係数を意味する。
X=(t・D)1/2
X=(t・D)1/2
更に拡散係数の温度依存性は一般に以下の式で表される。
D=D0・exp(−Q/kT)
従ってある温度における拡散距離Xは次式で与えられる。
X=(t・D0・exp(−Q/kT))1/2 ・・・(式2)
D=D0・exp(−Q/kT)
従ってある温度における拡散距離Xは次式で与えられる。
X=(t・D0・exp(−Q/kT))1/2 ・・・(式2)
本願において、DはIII族原子(Ga)の表面拡散係数、tはパージ時間となり、D0は温度に依存しないIII族原子(Ga)の拡散定数(振動数因子)、QはIII族原子(Ga)の表面拡散に必要な活性化エネルギー、kはボルツマン定数(=8.6171×10−5eV/K)である。Q=1.45eV(Ref.:H.Liu et al.,Appl.Phys.Lett.71(3),347(1997))である。なお、したがって、図4は、式2にから各温度、各パージ時間によって定まる拡散距離Xと表面平坦性との関係を表す。図4において横軸の拡散距離Xの値はD0=1とした場合である。そのため横軸は任意単位である。
RMS(nm)が1nm以下の場合には、従来よりも優れた結晶が形成されるものと考えられる。そこで、RMSが1nm以下となる場合となるXの範囲を求めると、以下の関係式を満たす。ただしD0を1とした場合である。
0.0003≦X≦0.00064
拡散距離Xを用いない場合には、以下の関係式を満たす。
0.0003≦(t・exp(−Q/kT))1/2≦0.00064
表面拡散における拡散定数D0によってこの拡散距離の範囲は変化するのであるが、III族原子の表面拡散定数の正確な測定値が知られていないため、本発明では実験による知見を一般化するため、式2の右辺を(D0)1/2で除した値が上記範囲にある場合(D0=1とした場合と同じになる)、即ち式1が成立する場合にRMSが1nm以下の良好な平坦な膜が得られるとした。
0.0003≦(t・exp(−Q/kT))1/2≦0.00064
表面拡散における拡散定数D0によってこの拡散距離の範囲は変化するのであるが、III族原子の表面拡散定数の正確な測定値が知られていないため、本発明では実験による知見を一般化するため、式2の右辺を(D0)1/2で除した値が上記範囲にある場合(D0=1とした場合と同じになる)、即ち式1が成立する場合にRMSが1nm以下の良好な平坦な膜が得られるとした。
第2ステップの期間tが、上記範囲にある場合、形成された化合物半導体層の表面粗さ(RMS)は1nm以下に抑制することも可能である。これは、III族原子の表面拡散距離が、一定の範囲内に存在する場合には、表面粗さが低減することを示している。なぜならば、下地膜の貫通転位に起因するピットが拡がらないようピット箇所へのIII族原子の十分な到達量を確保しつつ、III族原子同士の凝集を抑制するからである。
なお、図4にプロットされた各データの条件は、以下の通りである。なお、実験条件は、上述の実験2と同じである。
・データ1:t=1sec、T=973K(700℃)、D=3.09×10−8、X=0.000176、RMS=7.3(nm)。
・データ2:t=3sec、T=973K(700℃)、D=3.09×10−8、X=0.000304、RMS=0.32(nm)。
・データ3:t=10sec、T=973K(700℃)、D=3.09×10−8、X=0.000555、RMS=0.25(nm)。
・データ4:t=20sec、T=973K(700℃)、D=3.09×10−8、X=0.000786、RMS=8(nm)。
・データ5:t=5sec、T=923K(650℃)、D=1.21×10−8、X=0.000246、RMS=6.5(nm)。
・データ6:t=10sec、T=923K(650℃)、D=1.21×10−8、X=0.000348、RMS=0.92(nm)。
・データ7:t=20sec、T=923K(650℃)、D=1.21×10−8、X=0.000492、RMS=0.44(nm)。
(実験3)
・データ1:t=1sec、T=973K(700℃)、D=3.09×10−8、X=0.000176、RMS=7.3(nm)。
・データ2:t=3sec、T=973K(700℃)、D=3.09×10−8、X=0.000304、RMS=0.32(nm)。
・データ3:t=10sec、T=973K(700℃)、D=3.09×10−8、X=0.000555、RMS=0.25(nm)。
・データ4:t=20sec、T=973K(700℃)、D=3.09×10−8、X=0.000786、RMS=8(nm)。
・データ5:t=5sec、T=923K(650℃)、D=1.21×10−8、X=0.000246、RMS=6.5(nm)。
・データ6:t=10sec、T=923K(650℃)、D=1.21×10−8、X=0.000348、RMS=0.92(nm)。
・データ7:t=20sec、T=923K(650℃)、D=1.21×10−8、X=0.000492、RMS=0.44(nm)。
(実験3)
上述の第1実施サイクルにおいて、成長温度と膜中のカーボン濃度との関係を調査した。実験2では、第1実施サイクルを採用し、成長温度を600℃、650℃、700℃に設定し、第1ステップを0.2秒、第2ステップを20秒、第3ステップを10秒、第4ステップを1秒として、これを実行し、このサイクルを1000回繰り返した。この場合、GaN層が形成され、その断面TEM像を観察すると貫通転位が観察され、表面にピットが観察された。表面粗さ(RMS)は1.886nmであった。
図5は、実験2における成長温度(℃)とカーボン濃度(/cm3)の関係を示すグラフである。それぞれのカーボン濃度は、以下の通りである。
・データ1(成長温度600℃):2×1017/cm3
・データ2(成長温度650℃):0.7×1017/cm3
・データ3(成長温度600℃):3×1017/cm3
・データ1(成長温度600℃):2×1017/cm3
・データ2(成長温度650℃):0.7×1017/cm3
・データ3(成長温度600℃):3×1017/cm3
成長温度が650℃の場合において、不純物であるカーボンの濃度が最小となる。すなわち、不純物低減の観点からは、成長温度は、630℃以上660℃以下が好ましい。これは、成長温度が650℃よりも低下した場合、有機金属化合物に残留するメチル基が増加してカーボン濃度が高くなり、650℃よりも増加した場合、気相中におけるCH4が膜内に取り込まれたり、第1ステップにおいてCを介してGaが結合する場合が生じるためと考えられる。
次に、Mgを含むドーパントの好適な添加方法について説明する。上述のようにドーパントガスには様々なものがあるが、ドーパントガスとして、EtCp2Mgを用いる場合、成長温度650℃において、TMGに対する比率を増加させると、p型GaN内におけるMg濃度がリニアに増加することが実験的に確かめられている。
ここで、Mgの活性化率を増加させ、キャリア濃度を増加させるためには、ドーパントガスを水素化合物ガスと同時に供給することが好ましい。
(比較例1)
(比較例1)
比較例1では、p型のGaNの成長においてドーパントガス(EtCp2Mg)を有機金属化合物ガス(TMG)と同時に供給した。詳細には、C面サファイア基板を用意し、その上にMOCVD法を用いてアンドープGaN層を2μm成長させ、更に、アンドープGaN層上にp型のGaNを、ALE法を用いて成長させた。成長温度は670℃である。成長の際のガス供給は、水素化合物(NH3)の流量を除いて、図8に示した上述の第1実施サイクルに従い、このサイクルを900回行い、厚さ100nmのp型GaN層を形成した。水素化合物(NH3)の流量は8SLMとした。ここで、比較例1では、第1サイクルにおいてのみ、有機金属化合物ガス(TMG)に加えて、ドーパントガス(EtCp2Mg)を、第1供給ラインを介して処理容器内に供給した。なお、各ステップの期間は、第1サイクルが0.3秒、第2サイクルが30秒、第3サイクルが10秒、第4サイクルが3秒である。Mg濃度は2×1019/cm3から6×1019/cm3である。
(実施例1)
実施例1では、ドーパントガスを水素化合物(NH3)と共に供給した。実施例1は、以下の条件を除いて、比較例1と同じ工程を行った。すなわち、実施例1では、第3ステップの終了する直前の0,3秒の期間においてのみ、水素化合物(NH3)に加えて、ドーパントガス(EtCp2Mg)を、第2供給ラインを介して処理容器内に供給した。なお、各ステップの期間は、第1サイクルが0.3秒、第2サイクルが30秒、第3サイクルが10.3秒、第4サイクルが3秒である。
実施例1では、ドーパントガスを水素化合物(NH3)と共に供給した。実施例1は、以下の条件を除いて、比較例1と同じ工程を行った。すなわち、実施例1では、第3ステップの終了する直前の0,3秒の期間においてのみ、水素化合物(NH3)に加えて、ドーパントガス(EtCp2Mg)を、第2供給ラインを介して処理容器内に供給した。なお、各ステップの期間は、第1サイクルが0.3秒、第2サイクルが30秒、第3サイクルが10.3秒、第4サイクルが3秒である。
すなわち、実施例1における化合物半導体構造の製造方法は、第3ステップにおいて、第1ステップよりも相対的に高い流量で、Mgを含むドーパントガスを処理容器内(基板表面上)に供給している。詳説すれば、実施例1では、第1ステップにおいて、Mgを含むドーパントガスを全く供給していない。このような場合、第2層(窒素層)においてMgによるキャリア濃度を高めることができる。
図6は、比較例1(TMG+EtCp2Mg)と実施例1(NH3+EtCp2Mg)におけるドーパントガス比率(TMGに対するEtCp2Mgのモル比)と、成長したp型GaN層内におけるキャリア濃度(/cm3)との関係を示すグラフである。キャリア濃度は、ホール効果測定によって測定した。
実施例1の場合、比較例1よりもキャリア濃度が高くなっていることが分かる。また、ドーパントガス比率を増加させると、キャリア濃度が増加していることが分かる。
(p型AlGaNの成長)
なお、MgはAlGaN等の化合物半導体にもドープすることができる。実施例1と同じサイクルに従い、第1ステップにおいて更にTMAを加え、このサイクルを175回行い、厚さ20μmのp型AlGaN層を形成した。なお、各ステップの期間は、第1サイクルが0.3秒、第2サイクルが1秒、第3サイクルが10秒、第4サイクルが1秒であり、成長温度は700℃〜850℃、TMGとTMAの流量(供給量)は、それぞれ71.3μmol/min、6.7μmol/minとし、EtCp2Mgの流量は0.1μmol/minとした。温度の上昇に伴い、不純物となる酸素濃度は減少する傾向があり、酸素濃度は、700℃では3×1019/cm3、750℃では4.5×1019/cm3、800℃では7.8×1018/cm3、850℃では1.8×1019/cm3であった。
なお、MgはAlGaN等の化合物半導体にもドープすることができる。実施例1と同じサイクルに従い、第1ステップにおいて更にTMAを加え、このサイクルを175回行い、厚さ20μmのp型AlGaN層を形成した。なお、各ステップの期間は、第1サイクルが0.3秒、第2サイクルが1秒、第3サイクルが10秒、第4サイクルが1秒であり、成長温度は700℃〜850℃、TMGとTMAの流量(供給量)は、それぞれ71.3μmol/min、6.7μmol/minとし、EtCp2Mgの流量は0.1μmol/minとした。温度の上昇に伴い、不純物となる酸素濃度は減少する傾向があり、酸素濃度は、700℃では3×1019/cm3、750℃では4.5×1019/cm3、800℃では7.8×1018/cm3、850℃では1.8×1019/cm3であった。
AlGaNにおいて、ドーパントの供給は、第1ステップにおいて行った。成長温度700℃におけるMg濃度は4×1019/cm3であり、p型GaNで行った場合と同等レベルであった。なお、本例では、供給ガスとして、窒素(42%:モル比)及び水素(58%:モル比)を用いたが、水素のみを用いた場合(全体の供給流量=29.5SLM)、Mg濃度は1.5×1019/cm3に減少した。水素のみを用いた場合の酸素濃度は6×1018/cm3である。
(InGaNの成長)
次に、図1に示した活性層5を構成するInGaNについて考察した。上述のように、活性層5は多重量子井戸構造(InGaN/GaN)からなる。本願発明者らの研究によれば、MOCVD法で作製した多重量子井戸構造を有するLEDと、従来のALE法で作製した多重量子井戸構造を有するLEDを比較すると、発光強度が弱く、長波長側で発光が観察されている。これは、膜内の不純物が原因と考えられる。有機金属化合物ガスと共に、水素を処理容器内に供給することで、不純物は減少すると考えられるが、InGaNの成長においては、InNが水素雰囲気中で分解してしまう。そこで、窒素ガスを有機金属化合物ガスの主なキャリアガスとするが、これに水素ガスを僅かに混入させると、InGaNの組成比を大きく低下させることなく、不純物を除去することが可能である。
次に、図1に示した活性層5を構成するInGaNについて考察した。上述のように、活性層5は多重量子井戸構造(InGaN/GaN)からなる。本願発明者らの研究によれば、MOCVD法で作製した多重量子井戸構造を有するLEDと、従来のALE法で作製した多重量子井戸構造を有するLEDを比較すると、発光強度が弱く、長波長側で発光が観察されている。これは、膜内の不純物が原因と考えられる。有機金属化合物ガスと共に、水素を処理容器内に供給することで、不純物は減少すると考えられるが、InGaNの成長においては、InNが水素雰囲気中で分解してしまう。そこで、窒素ガスを有機金属化合物ガスの主なキャリアガスとするが、これに水素ガスを僅かに混入させると、InGaNの組成比を大きく低下させることなく、不純物を除去することが可能である。
InGaNを成長させた。下地基板としてMOCVD法で成長したGaN層上に、アンドープGaNをALE成長させたものを用いた。InGaNを成長させるため、図8に示した第1実施サイクルにおいて、第1ステップにおいて、第1供給ラインに供給する有機金属化合物ガスとして、TEG(流量=15.6μmol/min)とTMI(流量=23.4μmol/min)を用い、キャリアガスとして窒素(流量=7.95SLM)と水素(H2)(流量=50sccm)を用い、第2供給ラインに供給するガスとして、NH3(流量=8SLM)と、窒素ガス(流量=1SLM)を用いた。各ステップの期間は、第1サイクルが1秒、第2サイクルが1秒、第3サイクルが20秒、第4サイクルが1秒である。成長温度は670℃である。予備ラインから供給される窒素の流量は12.5SLMとした。なお、単位体積当たりの供給ガスに含まれるTEGとTMIの合計モル比(流量)に対する、TMIのモル比(流量)は0.6であり、Inの減少による耐性を高くしてある。このサイクルを200回繰り返した。
図7は、InGaN成長における水素流量(sccm)とIn比率(%)及び表面粗さRMS(nm)との関係を示すグラフである。なお、In比率(%)は、InGaN膜中に含まれるInN組成の比率を示し、InNとGaNの比率の合計が100%になる。水素流量は、第1ステップにおける水素流量を示している。水素流量が増加すると、In比率が減少し、表面粗さは低下する。In比率を15%以上に保持するためには、水素流量は25sccm以下であることが必要であり、In比率を13%以上に保持するためには、水素流量は50sccm以下であることが必要である。
次に、上述のInGaNを用いた多重量子井戸構造(MQW)を作製した。C面サファイア基板上に、アンドープGaN層、GaN層(MOCVD法)を形成し、この上にMQWを作製した。このMQWでは、InGaN層(ALE法:50サイクル)とGaN層(ALE法:200サイクル)を1組として、これを3組形成する。MQW上にGaNからなるキャップ層をCVD法で形成した。
InGaN層の成長方法は、上記の通りであり、第1ステップにおける水素流量は50sccmである。
GaN層の成長方法は、図8に示した第1実施サイクルにおいて、TMGの代わりにTEGを用い、各ステップの期間は、第1サイクルを1秒、第2サイクルを1秒、第3サイクルを20秒、第4サイクルを1秒とした。
成長温度は、690℃である。この場合、不純物としてのカーボン(C)の濃度は2〜3×1017/cm3、水素(H)の濃度は1×1018/cm3以下、酸素(O)の濃度は2〜3×1017/cm3であった。なお、比較のために、InGaN層の成長時において、水素を用いないで成長する実験を行った。この比較例(成長温度620℃)の場合、不純物としてのカーボン(C)の濃度は6×1017/cm3、水素(H)の濃度は5×1018/cm3以下、酸素(O)の濃度は1〜2×1018/cm3であった。なお、この比較例を変形して成長温度を670℃にし、TEGに代えてTMGを用いた場合、不純物としてのカーボン(C)の濃度は8×1017/cm3、水素(H)の濃度は2×1018/cm3以下、酸素(O)の濃度は2×1018/cm3であった。このように、InGaN層の成長時において、若干の水素導入を行うことにより、InGaN層の成長において、十分に不純物を低下させることができる。有機金属化合物ガスの単位体積当たりのInのモル比M(In)に対する、水素ガスの単位体積当たりの水素のモル比M(H2)は、50≦M(H2)/M(In)≦150であることが好ましい。水素量が上限を超えるとInが低下し、下限を下回ると十分に不純物が除去できないからである。
なお、水素ガスは、InGaN成長におけるIII族供給ステップ時のみに微量添加することができる。
また、同じ成膜装置にてGaN/InGaN/GaNの量子井戸構造を、ALE法及びMOCVD法で成長し、界面のIn組成の急峻性をX線CTR散乱法により評価した。この場合、ALE法で成長した量子井戸構造のほうが界面の組成変化の急峻性に優れていることが分かった。
なお、InGaN成長において、TEGに代えて、TMGを用いることも可能である。
以上、説明したように、上記化合物半導体構造の製造方法は、第1ガスはトリメチルガリウム(TMG)又はトリエチルガリウム(TEG)とトリメチルインジウム(TMI)とを含み、第1ステップにおいて、H2ガスを第1ガスと同時に供給することを特徴とする。第3ステップにおいては、H2ガスは供給しないこともできる。第1ステップにおいてH2ガスを供給すると、炭素(C)、水素(H)、酸素(O)などの不純物元素とH2ガスとが結合し、これらの不純物元素の濃度が大幅に低下する。
上述の実施形態は、以下の3つの形態(1)〜(3)を含んでいる。
(1)図4に示すように、第2ステップの期間(パージ期間)と温度を(式1)が満たされる所定範囲とすることで、表面粗さを改善することができる。
(2)図6に示すように、Mgを含むドーパントガスを添加する場合において、水素化合物ガス(NH3)の供給時に、選択的にドーパントガスを供給することで、キャリア濃度を高めることができる。
(3)図7を用いて説明したように、有機金属化合物ガスと共に、若干の水素を添加することにより、In比率を大きく低下させることなく、カーボン等の不純物を、InGaN層等から除去することができる。
(1)図4に示すように、第2ステップの期間(パージ期間)と温度を(式1)が満たされる所定範囲とすることで、表面粗さを改善することができる。
(2)図6に示すように、Mgを含むドーパントガスを添加する場合において、水素化合物ガス(NH3)の供給時に、選択的にドーパントガスを供給することで、キャリア濃度を高めることができる。
(3)図7を用いて説明したように、有機金属化合物ガスと共に、若干の水素を添加することにより、In比率を大きく低下させることなく、カーボン等の不純物を、InGaN層等から除去することができる。
これらの形態(1)〜(3)は、組み合わせることができる。すなわち、各を単独で実行することも可能であるが、形態(1)+形態(2)、形態(1)+形態(2)+形態(3)、形態(2)+形態(3)を実行することも可能であり、組み合わせによって更に高品質な化合物半導体構造を得ることができる。なお、形態(1)ではパージ期間tに所望範囲があり、形態(2)、(3)では、所望範囲外の場合もあるが、上述の原理に従えば、形態(2)、(3)の場合においても、パージ時間が(式1)を満たせば、結晶性が改善する。なお、上述の数値は、特に範囲を指定しない限り、±30%の誤差を含むことができる。
なお、上述の実施形態では、LEDの作製において、MOCVD法とALE法を組み合わせて用いており、従来のMOCVD法でLED全層を成長する場合に比べ、優れた品質の結晶が得られるので、LEDの発光効率向上が可能となる。すなわち、好適には、ALE法を用いて700℃以下の低温で、MQW及びp型の化合物半導体層を成長することで、発光層であるInGaN膜のダメージを抑制でき、MQW等における界面急峻性を改善することができる。
1…基板、2…バッファ層、3…下部第1クラッド層、4…下部第2クラッド層、5…活性層、6…上部クラッド層、7…キャップ層。8…第1電極層。9…電極パッド、10…第2電極層、11…電極パッド、20…処理容器。
Claims (7)
- 処理容器内に配置された基板に対して1又は複数のサイクル工程からなる原子層エピタキシー法を実行して化合物半導体構造を製造する方法において、
前記サイクル工程は、
前記基板上に第1ガスを供給し第1層を形成する第1ステップと、
前記第1ガスが供給された前記処理容器のパージを行う第2ステップと、
前記第1層上に第2ガスを供給し第2層を形成する第3ステップと、
前記第2ガスが供給された前記処理容器のパージを行う第4ステップと、
を備え、
前記第1ガスは、III族元素を含む有機金属化合物ガスであり、
前記第2ガスは、V族元素を含む水素化合物ガスであり、
前記第2ステップの期間t(秒)は、
T(K)を絶対温度、
Q(eV)をIII族原子の表面拡散に必要な活性化エネルギー、
kをボルツマン定数として、
以下の数式:
0.0003≦(t・exp(−Q/kT))1/2≦0.00064、
を満たすように設定される、
ことを特徴とする化合物半導体構造の製造方法。 - 前記第3ステップにおいて、前記第1ステップよりも相対的に高い流量で、Mgを含むドーパントガスを供給する、
ことを特徴とする請求項1に記載の化合物半導体構造の製造方法。 - 前記第1ガスはトリメチルガリウム(TMG)又はトリエチルガリウム(TEG)とトリメチルインジウム(TMI)とを含み、
前記第1ステップにおいて、H2ガスを前記第1ガスと共に供給する、
ことを特徴とする請求項1に記載の化合物半導体構造の製造方法。 - 前記第1ガスはトリメチルガリウム(TMG)又はトリエチルガリウム(TEG)とトリメチルインジウム(TMI)とを含み、
前記第1ステップにおいて、H2ガスを前記第1ガスと共に供給する、
ことを特徴とする請求項2に記載の化合物半導体構造の製造方法。 - 処理容器内に配置された基板に対して1又は複数のサイクル工程からなる原子層エピタキシー法を実行して化合物半導体構造を製造する方法において、
前記サイクル工程は、
前記基板上に第1ガスを供給し第1層を形成する第1ステップと、
前記第1ガスが供給された前記処理容器のパージを行う第2ステップと、
前記第1層上に第2ガスを供給し第2層を形成する第3ステップと、
前記第2ガスが供給された前記処理容器のパージを行う第4ステップと、
を備え、
前記第1ガスは、トリメチルガリウム(TMG)又はトリエチルガリウム(TEG)とトリメチルインジウム(TMI)とを含み、
前記第1ステップにおいて、H2ガスを前記第1ガスと共に供給する、
ことを特徴とする化合物半導体構造の製造方法。 - 前記第3ステップにおいて、前記第1ステップよりも相対的に高い流量で、Mgを含むドーパントガスを供給する、
ことを特徴とする請求項5に記載の化合物半導体構造の製造方法。 - 処理容器内に配置された基板に対して1又は複数のサイクル工程からなる原子層エピタキシー法を実行して化合物半導体構造を製造する方法において、
個々の前記サイクル工程は、
前記基板上に第1ガスを供給し第1層を形成する第1ステップと、
前記第1ガスが供給された前記処理容器のパージを行う第2ステップと、
前記第1層上に第2ガスを供給し第2層を形成する第3ステップと、
前記第2ガスが供給された前記処理容器のパージを行う第4ステップと、
を備え、
前記第1ガスは、III族元素を含む有機金属化合物ガスであり、
前記第2ガスは、V族元素を含む水素化合物ガスであり、
前記第3ステップにおいて、前記第1ステップよりも相対的に高い流量で、Mgを含むドーパントガスを供給する、
ことを特徴とする化合物半導体構造の製造方法。
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JP2022015556A (ja) * | 2020-07-09 | 2022-01-21 | 豊田合成株式会社 | Iii族窒化物半導体素子とその製造方法 |
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2014
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