JP3482781B2 - 窒化物化合物半導体層の形成方法 - Google Patents

窒化物化合物半導体層の形成方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】窒化物化合物半導体層を形成
する方法に係わり、特に、ピット(細孔)密度が低く表
面状態に優れる窒化物化合物半導体層の形成方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】耐環境指向の電界効果型トランジスタ
(FET)や青色等の短波長可視発光ダイオード(LE
D)などの窒化物化合物半導体素子は、一般式 Alx
Gay Inz N(x+y+z=1、0≦x,y,z≦
1)で表わされる窒化物化合物半導体層を利用して構成
されている。一般にα−アルミナ単結晶(サファイ
ア)、炭化珪素(SiC)や酸化亜鉛(ZnO)などの
結晶基板上に形成される。或いは、窒化物化合物半導体
材料からなるエピタキシャル成長層上にも形成される。
また、有機金属熱分解(MOCVD)法などの気相成長
方法による窒化物化合物半導体層の形成にあっては、水
素(H2 )ガスをキャリアガスとすることによる水素を
主体とする成長雰囲気下で実施するのが通例である。こ
れは水素が有機金属化合物等の原料の熱分解によって生
ずる、成長に不要なメチル基(−CH3 )等のフラグメ
ントと化合して、成長系外に搬出し易い高揮発性の物質
を創出するに都合が良いとされているからである(特開
昭60−175412号公報)。また、窒化物化合物半
導体層を水素ガスの存在下で成長させると、層表面のモ
フォロジーが向上する傾向があるとされるからである
(ジャーナル オブ クリスタルグロース(J.Cry
stal Growth)、68(1984)、16
3)。
【0003】窒化物化合物半導体層の形成(成長)温度
は一般に高く、例えば、サファイア(0001)面(C
面)基板上に窒化ガリウム(GaN)を形成する際の成
膜温度は、一般には約1000℃を越える。Alx Ga
1-x N(0<x≦1)の如くのアルミニウム(Al)を
含む混晶では、最適な形成温度は更におおよそ50℃〜
100℃程度高くなる。この様な1000℃を越える形
成温度を必要とする成長環境下では、成長用原料ガスや
水素キャリアガスの高温でのいわゆる“巻上がり”が顕
著に生じる。“巻上がり”とは、高温環境下で受熱した
気体がその圧力を増すことに主に起因するものである。
この“巻上がり”は、成長環境内で特に、温度が高い基
板表面近傍で顕著に起こる。この“巻上がり”のため
に、原料ガスが基板表面或いは下地層となる被堆積層表
面に充分に到達せずに上方へ巻き上がり、意図する層厚
の窒化物化合物半導体層が得られないばかりか、成膜が
殆ど達成されない等の問題が発生している。即ち、水素
単体からなる成長雰囲気下での窒化物化合物半導体層の
形成で一般に経験される不具合は、被堆積物表面に発生
する成長島の密度が少なく、結果として成長層表面が粗
面となることである(前出の特開昭60−175412
号公報)。
【0004】図1乃至3は水素のみからなる成長雰囲気
下での窒化ガリウム(GaN)層の形成過程を時系列的
に示した模式図である。図1は、(0001)面(C
面)サファイア基板(101)上の成長核(102)を
中心として、窒化ガリウムからなる成長島(103)が
発生し始める窒化物化合物半導体層の成長の初期過程を
模式的に示すものである。サファイアC面基板上には、
六角柱状の成長島(103)が多く乱立して散在してい
る。図2は成長島の肥大がより進行して成長島(10
3)が縦横に発達し、一部の成長島間で合体が始まって
いる段階を示している。更に、経時した段階に於いては
成長島(103)の合体が繰り返され、成長島が相互に
密接に接合した領域では表面が平坦な層が形成される。
しかし、水素雰囲気中の成長にあっては、縦方向(高さ
方向)の成長が横方向(水平方向)に比べ選択的且つ優
先的に起こるため、柱状結晶の水平幅の大幅な拡幅はな
されず、成長島が相互に合着する機会はさほど大とはな
らない。成長島(103)間の合体、融合が不完全であ
ると成長島間に間隙(104)が生じ、この間隙(10
4)が最終的には成長島で囲まれたピット(細孔)(1
05)として残存する(図3参照)。この様なピットの
発生原因に鑑みれば、層形成の初期段階からより大きな
成長島の発生或いは成長島の密度をより大きくする形成
(成膜)方法或いは成長島の横方向(水平方向)の2次
元的な成長を促す形成方法であれば、成長島間の間隙が
狭まり、ピットの発生を抑制することも可能であると示
唆される。
【0005】窒化物化合物半導体層の表面状態にも影響
を与えるこの被堆積物表面近傍の高温領域での“巻上が
り”を抑制するために、従来にあっては水素と水素より
気体比重を大とする窒素(N2 )等の不活性気体とを混
在させてなる混合気体をキャリアガスとして利用する気
相成長技術が開示されている(例えば、ジャーナルオブ
エレクトロニック マテリアルズ(J.Electr
on.Mater.)、Vol.14、No.5(19
85)、633〜644頁など)。この従来技術の意図
するところは、キャリアガスとしての水素ガスや原料ガ
スの”巻き上がり”を、水素よりも比重を大とする分子
を成長系内に存在させることによって抑制することを意
図しているものである。水素−窒素の組み合わせ(特開
平4−164895号公報、米国特許USP−5,33
4,277)の他に、水素とアルゴン(Ar)との混合
ガスを成長用雰囲気とする窒化物化合物半導体層の気相
成長方法も開示されている(前出の特開昭60−175
412号公報)。
【0006】しかし、水素等の通常のキャリアガスに、
水素とは比重(分子量)や熱伝導率を異にする窒素やア
ルゴン等のガスを混合させた成長雰囲気下の窒化物化合
物半導体の形成方法にあって、水素と他のガスの体積混
合比率如何では、成長島の形状や成長形態にさえ変化を
来すことは知られていない。以下、一般的なMOCVD
気相成長方式に於ける窒化物化合物半導体層の形成方法
に於いて、水素とアルゴンの体積混合比率が成長島の形
状、しいては結晶成長様式に与える影響を、本発明者に
依る窒化ガリウム(GaN)層の形成結果を基に概略す
る。ここで、水素(H2 )とアルゴン(Ar)との体積
混合比率(γ)とは、成長雰囲気を構成するH2 の体積
(流量)に対するArの体積(流量)の比率、即ち、γ
=Ar/H2 である。図4に(0001)−サファイア
(C面)基板上に直接、1000℃で形成した層厚を約
5μmとするGaN成長層の表面状態を模式的に示す。
成長雰囲気を構成する水素及びアルゴンの流量は各々、
3.0リットル/分及び0.1リットル/分とした。従
って、γは約0.03であって、全ど水素の雰囲気内で
の成長に相当するものである。窒素(N)源としたアン
モニア( NH3 )の流量は6.0リットル/分とし
た。ガリウム(Ga)源としては、トリメチルガリウム
((CH33 Ga)を使用し、その流量はN(窒素)
/Ga(ガリウム)比、いわゆるV/ III比が約104
と極く一般的な比率となる様に設定した。形成温度、成
長系内に導入する成長雰囲気を創出するガスと原料ガス
の総量が一般的であるにも拘らず、表面には図4に掲示
する如く、天板部を平坦とする結晶体(106)と角錘
状の突起を持つ結晶体(107)とが混在している。こ
の角錘状の結晶体(107)の混在により、成長層表面
は、凹凸の激しい、粗いものとなっている。突起状の成
長粒(107)は天板部を平坦とする成長粒(106)
上にも発達している。天板部が平坦な結晶体(106)
の層厚は概ね、2.2μmである。図5は、上記の形成
条件下で更に、層形成を進行させた後のGaN成長層の
表面の模式図である。天板部を平坦とする結晶体(10
6)上には、角錘状の結晶粒(107)が更に発達し、
角錘状の結晶体(107)が表面のほぼ全域に支配的に
存在する状態となる。このため、成長層表面はピラミッ
ド状の突起を有する乱雑なものとなる。ピラミッド状の
突起間の間隙(108)は層厚の増大に伴って埋没され
ることは希有であり、逆にその深さを増す様な形態のピ
ットとなる。
【0007】水素とアルゴンの総量は上記と同じくし、
水素及びアルゴンの流量を各々、2.0リットル/毎分
及び3.8リットル/分に変更し、他の成長条件を上記
と同一として形成した窒化ガリウム成長層の表面状態を
図6に模式的に示す。この場合、γは1.9である。こ
の条件下に於いては、表面には天板部が平坦な結晶体
(106)が多く存在するため、結晶体の不完全な合体
に起因するピット(105)は残存するものの、多くの
領域は表面が平坦である。形成時間の増大によって、結
晶体(106)の層厚は顕著には増加せず、むしろ、横
方向の成長が優勢に進行して平面的に拡張された結晶体
に発展する。この平面的に拡張された結晶体が合体、融
合し、やがて平坦な成長層表面をもたらす。即ち、表面
の平坦性に優れる成長層を得るためには、この様な天板
部を平坦とする結晶体を効率良く形成することが基本で
ある。
【0008】成長雰囲気は結晶体の形状に影響を及ぼす
ばかりでなく、成長雰囲気を構成する気体種に依っては
成長層の揮散が助長される結果を招く。成長層が揮散す
る程度は勿論、層を構成する物質に依って相違するが、
特に窒化インジウム(InN)や窒化ガリウム・インジ
ウム(GaInN)等のインジウムを含有する窒化物化
合物半導体で顕著に生ずる。これは、比較的低い温度で
ある約600℃で分解(昇華)する窒化インジウムの易
昇華性に主に起因している(日本産業技術振興協会新材
料技術委員会編著、「化合物半導体デバイス」(197
3年9月15日発行)、397頁参照)。更に、インジ
ウムの水素化物(InH3 )の分解温度(水素放出温
度)は80℃とされており、他のIII 族元素であるガリ
ウム(Ga)やアルミニウム(Al)の水素化物の分解
温度(GaH3 =140℃、AlH3 =150℃)に比
較すれば最も低い(I.A.SHEKA他著、「THE
CHEMISTRYOF GALLIUM」、ELS
EVIER PUB.,1966、24頁)。成長雰囲
気が多量の水素から構成されている場合、この様な易分
解性のインジウム水素化物が形成されるであろうことは
容易に想到され、インジウム含有窒化物化合物半導体層
の分解はより進行すると予想される。成長雰囲気の構成
は上記の高温に於ける流体学的な見地からのみではな
く、成長層との不具合な化学反応を回避するための反応
不活性の観点からも検討されるべきものであった。
【0009】窒化ガリウム・インジウムは、現在実用に
供されている代表的なインジウム含有窒化物化合物半導
体である。窒化ガリウム・インジウムは例えば青色、青
緑或いは緑色等の短波長光を発する発光ダイオード(L
ED)の発光層として利用されている。LED等の発光
素子にあって、発光層は発光の機能を担う重要な活性層
であり、この発光層の表面状態や結晶性は発光強度等の
発光素子の特性の優劣を決定付ける主要な因子である。
従って、窒化インジウムや窒化ガリウム・インジウムの
形成に当っては少なからず注意が払われてきた。例え
ば、成長雰囲気の観点からすれば、ハイドライド(hy
dride)法(VPE法)による窒化インジウムの気
相成長を窒素雰囲気下で実施することなどである(J.
Crystal Growth、144(1994)、
15〜19頁)。また、分子線エピタキシャル気相成長
方法(MBE法)にあって、ヘリウム(He)雰囲気内
で窒化ガリウム・インジウムの成長が試行されているこ
となどである(Appl.Phys.Lett.、66
13)(1995)、1632〜1634頁)。しか
し、成長雰囲気を構成する気体を水素から窒素或いは不
活性ガスへと単に、変更しただけでは、表面状態特に表
面の平坦性に優れるインジウム含有窒化物化合物半導体
成長層の成長が達成されるとは限らないのは周知の事実
である。例えば、有機金属熱分解気相成長法(所謂、M
OCVD法)による窒化ガリウム・インジウム(Gax
In1-x N:0≦x<1)の成長にあっては、低インジ
ウム組成比の場合には平坦な層表面を付与する好ましい
成長雰囲気の構成条件であったとしても、xがおおよ
そ、0.2を越える様な高インジウム組成比の窒化ガリ
ウム・インジウム層の成長には必ずしも表面平坦性に優
れる成長層が付与されるとは限らなかった。即ち、窒化
ガリウム・インジウムの成長にあって、成長雰囲気の構
成はインジウム組成比(x)に鑑みて適宣変更を加える
べきものであった。また、特にインジウム含有窒化物化
合物半導体層の表面状態は10℃〜20℃程度の僅かな
成長層の形成温度の変化に対応して微妙に変化するため
(前出のJ.Crystal Growth、144
(1994)、15〜19頁参照)、表面状態の形成温
度依存性を緩慢にできる化学的な反応性に乏しく、形成
温度の多少の変動にも安定して良好な表面モフォロジー
を付与する成長雰囲気の構成の提示が望まれていた。し
かしながら、インジウムの組成比(x)或いは形成温度
に応じて成長雰囲気の構成に変化を加える発想は成され
ておらず、インジウム組成比(x)等に対応した好適な
成長雰囲気下でインジウム含有窒化物化合物半導体層を
形成する方法も開示されるに至っていない。従来のイン
ジウム組成比や形成温度に関連させて充分な適正化が果
たされていない形成方法では、LED等の発光素子の特
性の向上をもたらす発光層を安定して得るには不充分で
あった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】混合気体からなる成長
雰囲気を単に利用するだけでは、表面平坦性を備えた窒
化物化合物半導体成長層が形成されるとは限らない。平
坦な表面を有する成長層は、天板部を平坦とする結晶体
(表面平坦性をもたらす素要素)が平面的に集合する結
果としてもたらされるものである。従って、素要素の厚
さ(高さ)が表面の平坦性が保持できる窒化物化合物半
導体層の層厚を決定する。しかし、素要素の高さは明ら
かにγによって変化する。換言すれば、表面平坦性を保
有する窒化物化合物半導体層を得るに際しては、意図す
る成長層の層厚に対応した適正なγが存在することを示
唆している。即ち、従来技術に於いては、所望する窒化
物化合物半導体層の層厚に応じたγの適正化が果たされ
ていないが故に、表面平坦性を与える素要素以外の突起
状の結晶体等が成長し、乱雑な表面となるのである。
【0011】省みるに、成長雰囲気を構成する気体種に
拘らず、窒化物化合物半導体層の気相成長にあっては、
成長層の種別に依らず同一の成長雰囲気下で成長が実施
されるのが一般的な手法であった。別の一般的な手法
は、例えば窒化ガリウム・インジウムの成長時に成長雰
囲気を構成する気体種或いは成長雰囲気を構成する気体
の混合比に変更を加える程度のものであった。何れにし
ても、成長雰囲気の構成は窒化物化合物半導体層の成長
開始時から終了時に至る間に一定に保持されるのが従来
の成長技術に於ける通例であった。即ち、成長層別に成
長雰囲気の構成に変化を加える手段は知られていても、
層の成長の進行に対応して成長雰囲気の構成を経時的に
変化させる手段は採用されていない。窒化物化合物半導
体層の形成方法にあって、γを意図する窒化物化合物半
導体層の層厚に応じて変化させて形成する方法は開示さ
れていない。本発明は、所望する窒化物化合物半導体層
の層厚を基準としてγの適正化する手段をもって、ピッ
ト密度が小さく表面が平坦な窒化物化合物半導体層を得
る気相成長方法を提供するものである。また、本発明は
平坦な表面を構成するための素要素である表面が平坦な
成長島の発生を効率良く促すに加え、成長層表面に対し
て低反応性であり、易分解性のインジウム含有窒化物化
合物半導体の成長に好適な成長雰囲気を提示する。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者は窒化物化合物
半導体層の成長層の表面の平坦化を促進するために必須
の上記の素要素(表面が平坦な成長島)を効率良く形成
するには、被堆積物の表面から上方への温度が層厚に応
じて急峻に変化する温度環境を創出する必要があること
を見出した。また、この様な温度環境は熱伝導率を互い
に異にする気体の混合体からなる成長雰囲気にあって、
層厚の増加に応じて異種気体の混合比率を経時的に変化
させることに依り、成長雰囲気を構成する気体の全体と
しての熱伝導率を経時的に変化させる方法が有効である
ことを見出し、本発明に至ったものである。即ち、本発
明は熱伝導率を異にする2種の気体から構成される成長
雰囲気内で窒化物化合物半導体層を形成する方法にあっ
て、熱伝導率を大とする気体の体積(V0 )に対する、
熱伝導率をより小とする気体の体積(V)の比率(γ=
V/V0 )を、窒化物化合物半導体層の層厚の増加に伴
い経時的に減少させてなる成長雰囲気下で窒化物化合物
半導体層の形成方法を提供するものである。特に、水素
とアルゴンとから構成される成長雰囲気内で層厚をt
(単位:μm)とする窒化物化合物半導体層を形成する
方法にあって、水素の体積(V0 )に対する熱伝導率を
水素よりも小とするアルゴン(Ar)の体積(V)の比
率(体積混合比:γ)を0.2/t以上6.0/t以下
の範囲にある初期値(γ0 )より、該半導体層の層厚の
増加に対応させて経時的に減少させてなる成長雰囲気下
で窒化物化合物半導体層を形成することを特徴とする。
更に、本発明は形成温度(T:単位℃)を600℃以上
900℃以下とし、III 族原子に対するインジウム(I
n)原子の含有比率(x:単位%)を2%以上50%以
下とする層厚がt(単位:μm)のインジウム含有窒化
物化合物半導体層を形成するに際し、初期値(γ0 )を
0.2・x・(1/t)・(T/550)以上1.8・
x・(1/t)・(T/550)以下としてインジウム
含有窒化物化合物半導体層を形成することを特徴とする
ものである。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の窒化物化合物半導体層に
は、一般式 Alx Gay Inz N(x+y+z=1、
0≦x,y,z≦1)に加え、Alx Gay Inza
1-a (0<a≦1)及びAlx Gay Inzb As
1-b (0<b≦1)で表される窒素以外にリン(P)や
ヒ素(As)等の第V族元素を含む窒化物化合物半導体
等が含まれる。これらの窒化物化合物半導体層はサファ
イア等の窒化物化合物半導体の成膜用として周知の基板
上に形成することができる。基板としてはハフニウム
(Hf)等の金属製材料やヒ化ガリウム(GaAs)や
リン化ガリウム(GaP)等の面心立方格子構造の III
−V族化合物半導体結晶、若しくはシリコン(Si)等
の元素(単体)半導体結晶も使用できる。何れの半導体
結晶基板も導電形は不問であり、基板表面をなす結晶面
の面方位やオフカット(ミスオリエンテーション角度)
等の仕様は、低温緩衝層の成長方式や成長条件に鑑みて
適宣選択すれば良い。GaNと格子不整合度が0.5%
未満と小さいリチウム(Li)とガリウム(Ga)或い
はLiとアルミニウム(Al)との複合酸化物であるL
2 GaO3 やLi2 AlO3 等も基板として使用でき
る。
【0014】表1に気相成長に於ける成長雰囲気の創出
に利用されている主要な気体の0℃に於ける熱伝導率を
掲げる(例えば、「理化年表」(1984年(丸善
(株)発行)、476頁参照)。これより、熱伝導率を
異にする気体を混合させてなる成長雰囲気ガスの構成例
には、周知の水素−アルゴン、水素−窒素(N2 )、水
素−ヘリウム(He)等が挙げられる。この他、水素−
アルゴン−窒素等の多種の気体の混合体も成長雰囲気ガ
スである。
【0015】
【表1】
【0016】窒化物化合物半導体層の気相成長に際し、
窒素源として多用されるアンモニアは水素やアルゴン等
と異なる熱伝導率を有する気体であるが、ここではアン
モニア等の原料ガスは成長雰囲気を構成する気体には含
めない。成長雰囲気を創出するガスとは、気相成長法に
成膜に於ける原料ガスではなく、一般にキャリアガスや
ドーピングガスの希釈ガスとして利用されるガス種であ
る。熱伝導率を異にする2種の気体から成長雰囲気を構
成するにあって、γは両種ガスの体積混合比率を表す。
即ち、γは体積をV0 とする気体と、それよりも熱伝導
率を小とし、体積をVとする気体とが混合されてなる成
長雰囲気にあって、次式(1)から算出する。 γ = V / V0 ・・・・・ 式(1) 熱伝導度(k)と体積(Vn )を異にする3種類以上の
n種(nは整数でn≧1)の気体から構成される成長用
雰囲気にあっても、γはkを最大とする気体の体積値
(V0 )と、それ以外の気体についてのkの加重平均値
を利用して求める。成長雰囲気を構成する気体の体積混
合比率(γ)は、成長雰囲気を創出するために成長系内
に導入される気体の流量比でもある。一例として挙げれ
ば、毎分5リットルの流量をもって供給される水素と、
同じく毎分10リットルの流量の窒素とから構成される
成長雰囲気のγは2.00となる。
【0017】図7は水素流量を5.8リットル/分とし
た際のサファイア基板表面上方の熱分布を示す計算結果
である。この場合、成長雰囲気は水素単体から構成され
ているので、上記の式(1)よりγ=0と計算される。
基板(101)表面の温度を1000℃と仮定した際の
計算結果では、基板表面から5mm程度隔てた上方でも
900℃以上の高温領域となっている。熱伝導度が比較
的、大きな水素のみからなる成長雰囲気では、被堆積物
表面からの上方距離に対して温度が変化する割合は小さ
い。即ち、高温の等温領域の幅(基板上方の距離)は大
きい。この様な高温の帯域が広く、成長が猶予される温
度分布が存在する状況下では、六方晶系の窒化ガリウム
(GaN)等の窒化物化合物半導体は横方向(水平方
向)よりもc結晶軸方向(鉛直方向)に優先的に成長す
る。即ち、被堆積物の表面近傍の層成長可能な領域に供
給される原料の多くは、成長島の高さを増加させる方向
に消費される。この様な環境下で成長する成長島は水平
方向を略六角形状で底面積を高さ方向にほぼ一定とする
柱状結晶であって、尚且、横方向の成長が顕著に生じな
いために近接する柱状結晶が互いに融着して連結する機
会が少ないため、結果として被堆積物表面に散在して乱
立する状況を招く(図1参照)。柱状結晶となった成長
島が散在し、成長島間に大きな間隙が大である状況とな
ると、それらの空隙を埋没するに充分な水平方向の成長
が生じないため、結果として表面に凹凸のある連続性に
欠ける窒化物化合物半導体層がもたらされる。即ち、意
図する膜厚に対してγを極端に或いは不必要に小とする
成長雰囲気下での窒化物化合物半導体層の形成方法で
は、表面の平坦性、平滑性に劣る連続性に欠ける層が形
成され易い。
【0018】一方、例えば、γ=1.00の水素−アル
ゴン混合気体を成長雰囲気とした際には、基板(10
1)の上方の温度変化は水素単体雰囲気に比較すれば急
激となり、等温幅は狭くなる。即ち、等温度の帯域が狭
まり、基板(101)表面から上方への距離に対して、
温度は急激に低下する。被堆積物表面からより上方に在
る高温領域から低温領域への温度遷移領域ではもはや成
長は妨げられ、高温帯域の幅が狭いが故に成長島の鉛直
方向(高さ方向)への成長は抑制される。成長に必要と
される温度領域が狭帯化されれば、得られる成長島の層
厚(高さ)は小さく制限される。成長島の形成が許容さ
れる高温帯域への原料供給量が一定であるならば形成さ
れる成長島の体積はほぼ同一となることから、高さ方向
への成長が抑止された成長島は横方向(水平方向)に成
長し、底面積をより大とするものとなる。横方向への成
長が促進されれば、近隣に存在する成長島が相互に融着
する機会が増すため、成長島相互の融着の不完全性に起
因して発生するピット(細孔)の密度の低下がもたらさ
れる。即ち、表面が平坦で平滑な窒化物化合物半導体層
を形成するに好都合となる。
【0019】意図する窒化物化合物半導体層の層厚が比
較的厚いにも拘らず、不適当にγが大きいとこれまた、
平坦な表面の形成に支障を来す。この場合の不具合はγ
の過大による上記した機構に基づく成長に必要な温度の
温度領域幅の不要な縮小に原因がある。γが過大である
ために被堆積物表面の上方の温度変化は過度に急激とな
る。このことは、平坦表面形成のための素要素である表
面を平坦とする成長島の形成に必須な高温の領域が被堆
積物の表面に充分に拡張していないことを意味する。こ
の様な高温領域が縮小した温度分布状態の成長環境下で
は、水平方向に2次元的に成長した成長島が多く発生す
る。例えば、サファイアや酸化亜鉛(ZnO)結晶等の
(0001)面(C面)に水平な方向に窒化ガリウムの
C面が層状に拡張して成長する様式が端的な例である。
即ち、この高温領域が狭帯化された温度環境は成長島の
2次元的な成長を促すには好都合である。しかし、この
高温領域の直上では急激に低温となるため、成長島の成
長が進行しこの温度遷移領域に成長島の表面が侵入する
段階となると、成長島の表面は平坦表面の形成を阻害す
る角錘状(ピラミッド状)の突起が発生する。従って、
成長島が形成される成長の初期段階には、都合良く成長
島の2次元的な成長を進行させることができるが、成長
がもたらされる高温の温度領域が縮小されているために
成長島の表面がその領域から比較的早期に逸脱するた
め、成長の後半に於いては表面に突起を有する成長島が
多量に形成される。この様な表面が突起で被覆された成
長島が連結したところで、平滑で平坦な表面を有する成
長層をもたらすには至らない。従って、平滑で平坦な表
面を有する成長層をもたらす素要素を高い効率で発生さ
せるには、その成長島の高さ、即ち、表面を平坦とする
成長層の層厚に相当する成長可能領域を等温的に高温と
する必要がある。
【0020】γを調整することの意義は窒化物化合物半
導体層の形成時に於いて、成長が進行している層の上域
に在る、成長がもたらされる高温の温度帯域の幅を層厚
に応じたものとすることにある。本発明では、意図する
最終的な層厚に応じて与えられる数値をγの初期値(γ
0 とする)として、層厚の増加に伴い、体積混合比率
(γ:γ>0)を初期値(γ0 )経時的に減少させる。
意図する最終的な層厚とは例えば、層厚を異にする各積
層体構成層を重層させた積層体にあって、その積層体の
全体としての厚さを指すのではなく、各積層体構成層の
層厚を云う。本発明のγ0 は平坦で平滑な連続膜を帰結
する表面を平坦とする成長島の形成をもたらすに適す
る、層厚に対応した混合比率の上限値としての最適値を
与えるものである。水素とアルゴンとの混合気体から構
成される成長雰囲気に於ける窒化物化合物半導体層の形
成では、γ0 は意図する層厚(t:単位μm)との関係
式(2)によって最適な範囲が示される。即ち、 0.2/t ≦ γ0 ≦ 6.0/t ・・・・・ 式(2) この値は窒化ガリウムからなる成長島が連結し層状の窒
化ガリウム層を形成する過程の成長実験から求められた
実験値であるが、成長島の構成物質、即ち窒化物化合物
半導体の種別に殆ど関係なく通用する。インジウム(I
n)を構成元素として認知される程多量に含有しない限
り、水素−アルゴン成長雰囲気下での窒化物化合物半導
体の形成にとって、γ0 は然して変化しない。最適なγ
0 の値は多量のインジウムを含有する窒化物化合物半導
体を形成する場合でない限り、おおよそ、約700℃〜
約1200℃の広い温度領域で層の温度に殆ど依存しな
い。また、成長装置によって成長島の大きさ等の形状に
は多少の差異はあるが、γに依存する成長様式は共通で
あることが認められている。γ0 が6.0/tより大で
あると成長を招く高温帯域が不適当に狭められるため、
上記の如く成長が進行している成長島表面がすぐさま、
低温度帯域に突入するため、成長島表面にはピラミッド
状の突起が発生する。逆に、0.2/tより小さな値を
初期値(γ0 )とすると成長を招く高温の温度帯域が不
必要に拡張されるため、上記の如く鉛直方向に優先的に
延長した六角柱状の成長島が孤立して散在する状態を招
き、表面が平坦な層を形成するには不具合となる。
【0021】水素とアルゴンから成長雰囲気を構成する
場合に限定されず、例えば、水素と窒素とからなる成長
雰囲気下で窒化物化合物半導体層を形成にあっても、γ
の初期値を設定する効用は発揮される。水素と窒素との
混合気体を成長雰囲気とする場合、層厚(t)について
の適正な γ0 ’は式(2)を基に次式(3)で近似さ
れる。 γ0 ’ = γ0 ・(kN2/kAr) ・・・・・ 式(3) ここで、kArはアルゴンの熱伝導率を、kN2は窒素の熱
伝導率を表す。成長島の発生の初期段階に於いてγを本
発明の提示する初期値(γ0 )とすることにより、被堆
積物表面近傍での意図する層厚に応じた高温領域の適度
な狭帯化が成長の初期段階からもたらされる。この温度
の適度な狭帯化により、成長島の横方向への2次元的な
発達が促進され、成長の初期段階から既に、平坦な表面
の成長層の形成が高い効率でもたらされる利点がある。
表面を平坦とする成長島の高密度の発生が達成されれば
成長島相互の合体の機会が増すため、平面的に連続した
ピットの少ない平滑な膜を安定して形成するに効果があ
る。
【0022】昇華速度より成長速度が大となる様に創出
された成長環境下に於いては、層厚に相当する成長島の
高さは成長時間(原料ガスの成長反応系へ供給が継続さ
れる時間)の経過と共に増加する。γが一定であれば、
被堆積層表面近傍の温度分布は然して変化せず、高温領
域の帯幅は成長開始前の被堆積層表面を基準にしてほぼ
一定の幅が維持される。従って、成長島の増大に伴い成
長島の表面が成長が許容される高温の温度帯域から突出
して、より低温の領域に侵入する確率が増す。成長が達
成される高温領域と低温の温度領域間の温度遷移が急峻
でない限り上記の如くの突起の発生を招く。この模様を
図8に模式的に示す。従って、本発明では、成長島の高
さの増大に伴いγをγ0 から経時的に減少させることを
もって、成長時間の経過と共に時々刻々、高さを増す成
長島の先端部(表面)が低温領域に突入することを回避
する。即ち、成長島の高さが経時的に増加しても、成長
島先端(表面)部が高温領域に充分に留まる様に、成長
島先端部と低温領域との間隔が充分で保持される様にγ
の減少をもって高温領域の帯域幅を拡張する。図9は成
長島(106)が発達し(129)、経時的に高さ(1
30)を増しても、γを経時的に減少変化させることに
よって、成長の進行がもたらされる高温の成長温度領域
(131)がより上方に拡張されるため(132)、成
長島(106)の先端部(表面)(133)が高温領域
(131)に留まる様子を模式的に示したものである。
【0023】図10にγの経時的な変化例を示す。γは
初期値γ0 より層の形成時間に対して直線的に(13
4)、非線形的に(135)或いはまた段階的に(13
6)変化させることが許容される。何れのγの変化法で
あっても層厚の増加に伴って(形成時間の経過に伴っ
て)初期値(γ0 )より減少させることに変わりはな
い。具体的には、例えば、成長雰囲気を創出する混合ガ
スの流量を質量流量計(英略称:MFC)等の制御計器
を利用して連続的に変化することにより連続的に変化さ
せることができる。本発明の如くγを経時的に減少させ
る窒化物化合物半導体層の形成にあっては、堆積用下地
層として緩衝層を設けられば尚更のこと、下地層の存在
に依る素要素(成長島)の横方向への2次元的な成長の
促進作用と相俟って、表面が平坦で連続性のある成長層
を得るに有利である。結晶基板上に数種類の層厚の窒化
物化合物半導体層から構成される積層体構造を得る場合
は、各窒化物化合物半導体層構成層をその層厚に応じた
γ0 並びにγの成長雰囲気下で形成する。例えば、積層
体を構成する第一の構成層の層厚に対応したγ0 及びγ
の成長雰囲気下で第一の積層体構成層を形成した後、γ
0 及びγを第ニの構成層に適する数値に変更して第ニの
積層体構成層を形成する方法がこれに該当する。但し、
本発明のγ0 及びγの規定は例えば、500℃前後の低
温で基板上に堆積される、いわゆる低温緩衝層の成長に
敢えて適用する必要はない。約700℃〜約1000℃
未満の低温での窒化物化合物半導体層の成長にあって
は、基板(被堆積物)上方の温度の緩慢な変化や高温環
境下で生ずる熱対流が成長島の形状に与える影響は必ず
しも大きくないからである。
【0024】インジウムを含有する窒化物化合物半導体
層の形成にあっては、本発明では形成温度及びインジウ
ム原子の含有比率の範囲を規定した上で最適な初期値γ
0 を開示する。インジウム含有窒化物化合物半導体の例
には窒化ガリウム・インジウム(GaInN)、窒化ア
ルミニウム・インジウム混晶等の3元混晶或いは窒化ア
ルミニウム・ガリウム・インジウム4元混晶などが挙げ
られる。形成温度(T:単位℃)は600℃以上900
℃以下の範囲に限定する。600℃を下回る温度では、
混在するガリウム(Ga)等のIII 族原子の量に対する
インジウム(In)原子の含有比率(x:単位%)に拘
らず、表面状態に優れるインジウム含有窒化物化合物層
を安定して得るのが非常に困難である。概ね、表面は球
状、半球状或いは島状の成長丘が密集した粗悪なものと
なり、窒化物化合物半導体素子の作製に供するに相当し
ないものである。一方、形成温度が900℃を越えると
インジウム化合物の易昇華性に主に起因してインジウム
を含有する窒化物化合物半導体層の形成自体が困難であ
る。従って、本発明ではインジウム含有窒化物化合物半
導体の形成に実用的な温度の範囲に於けるγ0 を規定す
る。また、インジウム含有比率(x)は2%〜50%の
実用的な範囲に限定してγ0 の最適値を提示する。イン
ジウム含有比率が概ね、50%を越える例えば、窒化イ
ンジウム(InN)結晶の様な高インジウム濃度の窒化
物化合物半導体層の形成は、γを規定したところで充分
に安定して形成するのがそもそも困難であるからであ
り、γを規定する実用上の効用が殆どないからである。
インジウム含有率を2%未満とする低インジウム含有率
の窒化物化合物半導体の形成には、上記の式(2)で示
されるγ0 が適応できる。
【0025】形成温度(T:単位℃)を600℃以上9
00℃以下とし、III 族原子に対するインジウム(I
n)原子の含有比率(x:単位%)を2%以上50%以
下とする層厚がt(単位:μm)のインジウム含有窒化
物化合物半導体層を形成するに際しては、具体的には初
期値(γ0 )を上記の式(2)に示される好ましいγ0
の範囲を基にして、次の式(4)で示される範囲内に設
定すれば良い。即ち、 0.2・x・(T/550)・(1/t)≦γ0 ≦ 6.0・x・(T/550)・(1/t) 式(4) 例えば、830℃(T=830)に於いて、インジウム
原子の含有比率を8%(x=8)とする層厚が0.1μ
m(t=0.1)のインジウム含有窒化ガリウム層(G
0.92In0.08N)の形成に適するγ0 の範囲は24.
1≦γ0 ≦724.3となる。γ0 は、tを大、即ち、
意図する最終的な層厚を大とする程、小とするのは上述
の理由による([0022]項参照)。インジウムを含
む窒化物層の成長に特異的なのは、インジウム原子の含
有比率(x)及び形成温度が高い程、γ0 を大とする必
要がある。即ち、γ0 はインジウム原子の含有比率
(x)に比例させて増加させる必要がある。また、γ0
はインジウム含有窒化物層の形成温度をT(℃)とした
場合、比率T/550で与えられる数値だけ乗ずる必要
がある。比率を表す式T/550にあって、係数(=1
/550)は、本発明者が鋭意、繰り返し実施した形成
実験の結果から実験的に求めたものである。例えば、イ
ンジウム組成比(x)を0.06とする窒化ガリウム・
インジウム混晶(Ga0.94In0.06N)の水素−アルゴ
ン成長雰囲気下での形成を例に挙げれば形成温度を高く
設定する程γ0 を大とする、即ち、水素よりも熱伝導率
を小とするアルゴンの水素との混合比率を大とすること
を意味している。同じく、インジウム組成比(x)の増
大に伴いγ0 を大とする。即ち、水素よりも熱伝導率を
小とするアルゴンの混合比率を大とする。これにより、
層形成温度の高温化並びにインジウム組成比の高比率化
によって、益々、助長される水素との表面反応に因る昇
華を抑制する効果も同時に達成される。しかしながら、
インジウム含有窒化物層の形成にあって留意すべきは、
アルゴンが支配的な成長雰囲気で同層を形成するとイン
ジウムが取り込まれる率が時として高比率側に変動する
のが認められる。換言すれば、目的とするインジウム原
子の含有比率を越える領域が発生する傾向がある。しか
も、この様なインジウム原子の含有比率が異常に高い領
域を含むインジウム含有窒化物層の形成確率は変動す
る。従って、本発明では、意図するインジウム原子の含
有比率を有するインジウム含有窒化物層を安定して形成
するために、上記の式(4)で許容されるγ0 の上限値
を更に、規定した次の式(5)で示されるγ0 を特に、
好ましい範囲として開示する。 0.2・x・(T/550)・(1/t)≦γ0 ≦ 1.8・x・(T/550)(1/t) 式(5) 式(5)に記されるγ0 の上限値を規定する算式項に於
ける係数(=1.8)もこれまた、インジウム含有窒化
物層の表面モフォロジーを良好な状態に保持出来、尚
且、所望のインジウム原子の含有比率を有するインジウ
ム含有窒化物層を安定して得る上限値を与えるものとし
て実験により求められたものである。従って、830℃
(T=830)に於いて、インジウム原子の含有比率を
8%(x=8)とする層厚が0.1μm(t=0.1)
のインジウム含有窒化ガリウム層(Ga0.92In
0.08N)を形成すると上記の例に於いて、特に、好まし
いγ0 の範囲は24.1≦γ0 ≦217.3となる。イ
ンジウム含有窒化物半導体層の形成にあっても、γを初
期値(γ0 )より層厚の増加に伴い経時的に減少させる
ことには変化はない。
【0026】本発明に係わる成長雰囲気は、有機金属気
相成長(MOCVD)法やハロゲン方式やハイドライド
(hydride)方式の気相成長(VPE)法による
窒化物化合物半導体層の成膜に利用され得る。MOCV
D法にあっては、常圧法、減圧法に拘らず本発明の成長
雰囲気が利用可能である。上記の式(2)に示される様
に水素−アルゴン成長雰囲気にあって、好ましいγに或
る範囲があるのは、成長時圧力等の窒化物化合物半導体
層の成膜環境条件の差異によって、γが多少なりとも異
なるからである。
【0027】
【作用】意図する窒化物化合物半導体層の層厚に応じて
γを規制することによる意義を纏める。上述した様に、
γは被堆積物表面上方の温度分布に変化をもたらすもの
である。例えば、γの増大は急激な温度変化をもたら
し、窒化物化合物半導体の成長に必要な高温帯域の幅を
狭める。この高温帯域の幅は窒化物化合物半導体層の層
厚に対応するものである。即ち、γの調整は意図する窒
化物化合物半導体層の層厚に応じた被堆積物表面上方領
域の熱環境を創出する作用を及ぼすものである。
【0028】
【実施例】
(実施例1)面方位を(0001)(C面)とするサフ
ァイアを基板(101)として、膜厚を3μmとするア
ンドープ(undope)窒化ガリウム(GaN)層
を、γを成長時間の増大(層厚の増大)に応じて漸次、
初期値γ0 から変化させながら形成する方法を記す。基
板(101)の鏡面研磨された表面は、均一な成膜を促
すために清浄化処理を施した。先ず、基板(101)を
アセトン等の有機溶剤により脱脂し、水洗した後、市販
の半導体工業用の高純度フッ化アンモニウム水溶液を使
用して酸洗浄を施した。超純水により水洗後、赤外線ラ
ンプにより加熱して乾燥させた。
【0029】清浄化したサファイア基板(101)を常
圧方式のMOCVD成長装置内の成長炉(110)内に
室温で搬送した。図11にそのMOCVD成長装置を模
式的に示す。成長炉(110)内を一旦ロータリポンプ
(111)で10-3トール(Torr)程度の真空に排
気した。約20分経過後、真空ポンプ(111)と接続
する真空排気用配管(116)の中途に設置した開閉バ
ルブ(117)を閉状態とし、炉(110)の真空排気
操作を停止した。然る後、炉(110)内にモレキュラ
ーシーブ(分子ふるい)吸着方式で精製されたアルゴン
(Ar)を316Lステンレス鋼製の配管(112)内
を通流させて導入した。これにより、炉(110)内を
大気圧に復帰させ、以後、成膜時の炉内の圧力はほぼ大
気圧に保持した。その後、銀(Ag)−パラジウム(P
d)透過膜方式で高純度に精製された水素ガスを配管
(113)を通して供給した。水素ガス及びアルゴンガ
スの流量は、各々の配管((112)及び(113))
の中途に個別に設置した一般的な電子式質量流量制御計
(略称:MFC)((114)及び(115))で精密
に制御した。
【0030】水素ガスの流量を電子式質量流量計(11
5)により8.00リットル/分に制御した。これよ
り、水素のみからなる成長雰囲気を創出した。次に、基
板(101)の温度を室温から430℃に抵抗加熱方式
により昇温した。基板(101)を同温度に保持して2
5分を経過した後、窒素(N)の原料としたアンモニア
(NH3 )ガスを配管(118)内を通流させて、成長
炉(110)内に載置された基板(101)の表面へ供
給し始めた。アンモニア源(119)としては、アルミ
ニウム合金製ボンベに収納された液化アンモニアを使用
した。
【0031】アンモニアガスの供給を開始してから5分
経過後に、バブリング(発泡)操作により気化されたガ
リウム(Ga)の原料(126)であるトリメチルガリ
ウム((CH33 Ga)を含む水素ガスを、配管(1
20)内を通流させて基板(101)の表面近傍に供給
した。アンモニアガス(119)の流量は配管(11
8)の中途に設けたアンモニアガス専用の電子式質量流
量計(121)により1.00リットル/分に調整、制
御した。市販の半導体工業用トリメチルガリウムを収納
するステンンレス製バブリング容器の温度は、電子制御
式恒温槽で13℃に保持し、バブリング用の水素ガスの
流量は20ミリリットル(ml)/分とした。ガリウム
原料(126)としてのトリメチルガリウムを含む水素
ガスは成長炉(110)内へ20分間継続して供給し
た。これにより、膜厚を約7nmとする窒化ガリウム
(GaN)薄膜緩衝層を成長させた。
【0032】窒化ガリウム(GaN)からなる薄膜緩衝
層の成長終了後、成長雰囲気を創出していた水素ガスと
トリメチルガリウムを含む水素ガスの成長炉(110)
内へ供給を一旦中断した。ほぼ同時に成長炉(110)
内にアルゴンガスを導入した。アルゴンガスの流量は電
子式質量流量計(114)により、6.00リットル/
分とした。アンモニアガスの流量は窒化ガリウム(Ga
N)薄膜緩衝層成長時と同じく1.00リットル/分と
した。アルゴンガスとアンモニアガスからなる雰囲気内
で表面に窒化ガリウム薄膜緩衝層が堆積された基板(1
01)の温度を1000℃に昇温した。
【0033】基板(101)の温度が1000℃に安定
した後、電子式質量流量計(114)によりアルゴンガ
スの流量を2.88リットル/分に減じ、併行して流量
計(115)により流量を4.00リットル/分に調整
された水素ガスの成長炉(110)内への供給を再開し
た。これにより、γ0 を0.72とする水素−アルゴン
混合雰囲気を創出した。水素ガスの成長炉(110)へ
の供給を再開するとほぼ、同時にアンモニアガスの炉
(110)内への供給流量を6.00リットル/分に増
加させた。アンモニアガスの供給を開始して5分経過し
た後、ガリウム(Ga)源(126)としてのトリメチ
ルガリウムの蒸気を含む、毎分20ミリリットル(m
l)/分の流量のバブリング用水素ガスを炉(110)
内へ供給を開始した。この時点より90分間に亘り、γ
を初期値(γ0 )の0.72より0.03/分の割合で
最終的には、0.45迄減少させた。このγの変化は流
量計(114)によってアルゴンの流量を電子式質量流
量計(114)によって初期の2.88リットル/分か
ら1.80リットル/分に減ずることによって得た。水
素の流量は90分間に亘り4.00リットル/分に保持
した。この様な流量条件下でガリウム原料(126)を
含む水素ガス(バブリングガス)の供給を90分間に亘
り継続し、窒化ガリウム(GaN)層を成長させた。成
長時間を90分間としたのは、層厚を3μmとする窒化
ガリウム成長層の形成を意図したからである。
【0034】トリメチルガリウム((CH33 Ga)
の成長系への供給を停止して2分経過後に、GaN薄膜
緩衝層上にアンドープGaN成長層が形成された積層構
成を備えた基板(101)の加熱を停止し、冷却を開始
した。基板(101)の温度が約400℃に低下する
迄、成長雰囲気を創出した水素及びアルゴンの流量は変
更しなかった。室温近傍迄、冷却した後には、水素及び
アルゴンの成長系内への供給も停止した。以後、真空排
気用配管(116)に付帯する開閉バルブ(117)を
閉状態から開状態に切り換え、成長炉(110)内をロ
ータリーポンプ(111)で10-3トール程度の真空度
に至る迄排気して、同程度の真空状態を10分間保持し
た後に、アルゴンガスを配管(112)を介して成長炉
(110)内に導入して炉内をパージ(purge)し
大気圧に復帰させた。この真空排気/パージ操作を3回
繰り返し、最後は成長炉(110)をアルゴンガスで充
満させた状態とした。然る後に、成長炉(110)から
基板(101)を取り出した。
【0035】成長層表面は、一般的な走査電子顕微鏡
(略称SEM)による観察では、角錘状の突起もなく、
平滑で且つ平坦であった。また、直径2インチの基板
(101)上の全面に形成された窒化ガリウム(Ga
N)成長層表面のピットは、成長層表面の中央部には、
殆ど認められず、基板の周縁部(円形基板周縁より約5
mm内側の縁領域)に散見される程度であった。その周
縁部のピット密度は概ね、3〜5個/cm2 と極めて低
減されているのが認められた。
【0036】(比較例1)γ以外の形成条件並びに操作
条件は実施例1と同一として、3μmのアンドープGa
N層を形成した。成長雰囲気を構成する主体である水素
の流量は毎分6.5リットルとし、γ(=Ar/H2
は90分間の層形成中にあって時間的に変化させず、
0.05に固定した。この値は、本文中の式(2)に示
した適正なγの範囲を満たさず、意図するGaN層の層
厚である3μmに対しては過小となっている。本発明に
依れば、層厚3μmについての適正なγの最小値は約
0.06である。図12は、このγが過小である成長雰
囲気下で成長させた窒化ガリウム(GaN)の表面状態
を示す模式図である。(0001)サファイア基板表面
には、多数の断面形状を略六角形とするGaNの柱状結
晶(109)が発生している。この柱状結晶(109)
の高さは様々であるが、平均すると3μm程度である。
この様に、γが膜厚に対して過小であると、柱状結晶
(109)が乱立した状態となり、柱状結晶間の間隙が
ピットの発生源となるため、ピットの多い平坦性に欠け
た表面の成長層が形成された。
【0037】(実施例2)上記の実施例1に記載の常圧
方式MOCVD成長装置(図11参照)を利用して、サ
ファイアC面基板上の窒化ガリウム(GaN)緩衝層上
に珪素(Si)をドーピングしたn形の窒化アルミニウ
ム・ガリウム(AlGaN)混晶層及び珪素(Si)と
亜鉛(Zn)をドーピングしたインジウム原子の含有量
を8.0%とした窒化ガリウム・インジウム(Ga0.92
In0.08N)層を形成した。緩衝層を形成する際の成長
雰囲気、成長温度、成長時間その他の形成条件並びに層
形成に伴う操作条件は上記実施例1と同じに設定した。
緩衝層の層厚は実施例1とほぼ同じ7nmであった。
【0038】窒化ガリウム緩衝層の成長後、実施例1に
記載の手順と条件に従い、基板(101)の温度を11
00℃に昇温させた。昇温後から成長開始に至る迄、実
施例1に則ったガス流通等の措置を施した。然る後、窒
化ガリウム緩衝層上には、珪素をドープしたアルミニウ
ム組成比を0.01とし、層厚を4μmとする窒化アル
ミニウム・ガリウム混晶(Al0.01Ga0.92N)を常圧
方式のMOCVD法により形成した。Al0.01Ga0.99
N層は、流量を3.00リットル/分とする水素に対し
て、流量を3.00リットル/分とするアルゴンを混合
させたγ0 を1.00とする成長雰囲気内で形成した。
アルミニウム(Al)原料(127)にはトリメチルア
ルミニウム((CH33 Al)を使用した。このアル
ミニウム原料(127)もガリウム(Ga)原料(12
6)としたトリメチルガリウムと同じく、同アルミニウ
ム源(127)をバブリングした水素ガスを配管(12
2)内に流通させ、成長炉(110)内に導入した。ト
リメチルアルミニウムを収納したステンレス鋼製容器は
電子式恒温槽により20℃に保持し、それをバブリング
する水素の流量は40ミリリットル/分に設定した。珪
素のドーピング原料(124)としては、水素ガスによ
り体積濃度を5ppmに希釈したジシラン(Si2
6 )を使用した。ジシランドーピングガスの流量は質量
流量計により10リットル/分に制御とした。その他の
原料ガスには、実施例1と同じくトリメチルガリウム
(Ga原料(126))及びアンモニア(N(窒素)原
料)(119)を使用し、これら原料ガスの成膜時の流
量条件も実施例1と同じくした。正確に100分間、原
料ガスの成長炉(110)内への供給を継続しながら、
成長雰囲気を構成する水素ガスの流量は一定として、ア
ルゴンガスの供給量をAl0. 01Ga0.99N混晶層の成長
開始時より20分を経過後、電子式質量流量計(11
4)をもって20分間の間隔でγを段階的に0.05づ
つ減ずる様に減少させた。この操作を4回繰り返して1
00分間に亘るAl0.01Ga0.99N混晶層の成長が終了
した時点では、γは0.80に低下した。珪素がドーピ
ングされたAl0. 01Ga0.99N層の形成は第 III族の原
料ガスと珪素ドーピングガス(124)の成長炉(11
0)内への供給を中断することをもって終了とした。成
長炉(110)内へのアンモニアガス(119)の供給
はその後も流量を変更せずに継続して行った。
【0039】上記の窒化アルミニウム・ガリウム混晶の
形成が終了して2分経過後、水素ガスの流量を質量流量
計(115)により0.1リットル/分に、アルゴンの
流量を質量流量計(115)により5.9リットル/分
に瞬時に変更した。これにより、γ0 を59.0とする
水素−アルゴン成長雰囲気を創出した。然る後、成長温
度を1100℃から830℃に約5分間で低下させた。
インジウム原子の含有比率を8%とする窒化ガリウム・
インジウム層(In0.08Ga0.92N)の目標とする層厚
を0.1μmとしたため、γ0 は2.00に変更した。
成長雰囲気を構成する各ガスの流量が安定した後、ガリ
ウム源(126)及びインジウム源(128)の蒸気を
随伴する水素ガスを個別に配管((122)及び(12
3))を介して成長炉(110)内へ供給した。インジ
ウム原料(128)には、結合価を一価とするシクロペ
ンタジエニルインジウム(C55 In(I))を用い
た。このインジウム原料(128)を収納するステンレ
ス鋼製容器を60℃の恒温に保持することによって、内
容物であるシクロペンタジエニルインジウムが昇華する
状態に設定しておいた。インジウム原料搬送用の水素ガ
スの流量を120ミリリットル(ml)/分に設定し
た。この第III 族元素の成長炉(110)の供給をもっ
て、Al0.01Ga0.99N層上へのn形のIn0.08Ga
0.92N層の形成を開始した。アンモニアガス(119)
の流量は質量流量計(121)で6.00リットル
(l)/分に制御して維持した。また、珪素と亜鉛が共
にドーピングされたIn0.08Ga0.92N層を形成するた
めに、予めn形ドーピングガス通流用配管(124)か
ら上記のジシランガス(124)を、p形ドーピングガ
ス(125)通流用配管からジメチル亜鉛((CH3
2 Zn)ガスを成長炉(110)内に導入しておいた。
双方のドーピングガスの導入量は共に概ね2×1018
-3となる様に設定した。第III 族原料ガス、アンモニ
アガス(第V族原料ガス)(119)並びにn形及びp
形ドーピングガスの成長炉(110)内への供給を30
分間、継続し層厚を0.1μmとする珪素と亜鉛が共に
ドーピングされたn形In0.08Ga0.92N層を形成し
た。
【0040】30分間に亘りインジウム含有窒化ガリウ
ム(In0.08Ga0.92N)層を形成した間に、γは初期
値(γ0 )の59.0から44.0に直線的に減少させ
た。即ち、0.5/分の割合でγを減少させた。γは水
素の供給量を0.1リットル/分と一定に維持しなが
ら、アルゴンガスの供給流量を毎分5.9リットルから
50ミリリットル/分の一定の割合で4.4リットル/
分に線形的に減少させることをもって減少させた。
【0041】上記のインジウム含有窒化ガリウム(In
0.08Ga0.92N)層の形成を、インジウム源(128)
及びガリウム源(126)の成長炉(110)内への供
給を停止することをもって終了した。III 族原料ガスの
成長炉への供給を停止した後、アンモニアガス(11
9)の成長炉(110)への供給量を毎分6.0リット
ルから1.0リットルへと電子式質量流量計(121)
によって瞬時に変化させた。然る後、基板(101)の
温度を約20℃の速度で約600℃に冷却し、それよ
り、自然に冷却した。基板温度が約450℃に降下した
時点でアンモニアガスの成長炉内への供給を打ち切っ
た。基板温度が室温近傍の温度となったことを確認した
後、水素ガスの成長炉への供給を停止し、成長炉内に供
給するガスをアルゴンガスのみとした。成長炉の真空排
気操作並びにアルゴンガスによるパ−ジ操作を数回繰り
返した後、成長炉より形成された積層体を取り出した。
【0042】SEM観察に依って積層体の表面は平滑で
平坦であることが認められた。市販のレーザー干渉型粗
さ計による表面粗さの測定では、表面の平滑度はrms
(粗さの絶対値の自乗平均平方根値)にして1.9nm
であった。積層体表面には、開口部を略六角形とするピ
ットの存在は殆ど認められなかった。プラズマエッチン
グ技法により露出させた下部のAl0.08Ga0.92N層の
表面状態をSEMで観察した。同層の表面もピットが殆
ど認められず平滑で平坦であった。
【0043】(比較例2)本発明の規定から外れたγを
利用して実施例2と同様の積層体を構成した。γは、層
厚を1μmとする珪素をドーピングしたn形の窒化アル
ミニウム・ガリウム層(Al0.01Ga0.99N)について
0.10に、層厚を0.1μmとする珪素(Si)と亜
鉛(Zn)とを共にドーピングしたn形のインジウム含
有窒化ガリウム層(In0.08Ga0.92N)については
1.00とした。γを0.10とする成長雰囲気は、流
量を5.45リットル/分とする水素ガスに流量を0.
55リットル/分とするアルゴンガスを混合させて創出
した。また、γを1.00とする成長雰囲気は流量を各
々、3.0リットル/分とする水素とアルゴンガスを混
合させて創出した。γは、積層体を構成する窒化物化合
物半導体各層の層厚に応じて実施例2に記載と同様に変
化させているものの、γ0 は本発明の規定を満足する値
とはなっていない。これらの積層体構成層は、上記実施
例2と条件を同じくして形成した窒化ガリウム(Ga
N)緩衝層上に形成した。図13に珪素ドープn形Al
0.01Ga0.99N層と珪素と亜鉛を共にドーピングしたn
形In0.08Ga0.92N層とから成る窒化物化合物半導体
積層体の表面状態を模式的に示す。表面には、開口部を
略六角形状とするピットが多く認められた。ピットの密
度は一般の光学顕微鏡による計数観測では104 から1
5 個/cm2 であった。この多数のピットの存在のた
めに表面の平坦性は損なわれたものとなった。また、γ
0 が不適当に過小なため、即ち、水素が過剰に存在する
ためIn0.08Ga0.92N層の一部は昇華により失われて
いた。
【0044】
【発明の効果】表面モフォロジーに優れる窒化物半導体
層を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】窒化ガリウムの結晶体が相互に連結する過程を
時系列的に示す模式図であって、特に結晶体が発生する
窒化ガリウム半導体層の成長の初期過程を示すものであ
る。
【図2】窒化ガリウムの結晶体が相互に連結する過程を
時系列的に示す模式図であって、特に結晶体が相互に合
体する過程を示すものである。
【図3】窒化ガリウムの結晶体が相互に連結する過程を
時系列的に示す模式図であって、特に結晶体が相互に合
体する過程で合体が不完全であるためにピットが発生す
る状況を示すものである。
【図4】不適当に過小なγをもって成長させた窒化ガリ
ウム層の表面状態の模式図である。
【図5】γが不適当に過小な状態で成長を進行させた場
合の窒化ガリウム層の表面状態の模式図である。
【図6】適正なγをもって成長された窒化ガリウム層の
表面状態を示す模式図である。
【図7】水素流量を5.8リットル/分とし、サファイ
ア基板表面の温度を1000℃と仮定して計算された、
基板表面直上方向の温度の分布を示す図である。
【図8】成長島の増大に伴い成長島の表面が成長が許容
される高温の温度帯域から突出してより低温の領域に侵
入したため、成長島の平坦な表面上に突起が発生する模
様を説明するための模式図である。
【図9】成長島が発達して高さを増す場合にあっても、
成長雰囲気を構成する気体の体積混合比率(γ)を経時
的に減少変化させることによって、成長島の先端部(表
面)が高温領域に留まる様子を説明するための模式図で
ある。
【図10】体積混合比率(γ)を初期値(γ0 )より減
少させる際の変化様式の例を示す図である。
【図11】実施例に係わるMOCVD装置の概略構成図
である。
【図12】比較例1に於いて不適当に過小なγをもって
状態で成長させた窒化ガリウム層の表面状態を示す平面
模式図である。
【図13】比較例2に於いて不適当に過小なγをもって
状態で成長させたn形窒化ガリウム・インジウム層の表
面状態を示す模式図である。
【符号の説明】
(101) 基板 (102) 成長核 (103) 六角柱状の成長島 (104) 成長島間の間隙 (105) ピット(細孔) (106) 天板部が平坦な表面となっている成長島 (107) 角錘状の突起を持つ成長島 (108) 成長層表面の間隙 (109) 略六角形柱状に発達したGaN柱状結晶 (110) MOCVD成長炉 (111) 真空排気用ロータリーポンプ (112) アルゴンガス通流用ステンレス鋼製配管 (113) 水素ガス通流用ステンレス鋼製配管 (114) アルゴンガス用電子式質量流量制御計(M
FC) (115) 水素ガス用電子式質量流量制御計(MF
C) (116) 成長炉真空排気用配管 (117) 真空排気配管用開閉バルブ (118) 窒素原料通流用ステンレス鋼製配管 (119) 窒素原料(アンモニア源(液化アンモニ
ア)) (120) ガリウム(Ga)原料通流用ステンレス鋼
製配管 (121) 窒素原料(アンモニアガス)用電子式質量
流量制御計 (122) アルミニウム(Al)原料通流用ステンレ
ス鋼製配管 (123) インジウム(In)原料通流用ステンレス
鋼製配管 (124) n形不純物通流用配管 (125) p形不純物通流用配管 (126) ガリウム源 (127) アルミニウム源 (128) インジウム源 (129) 発達して高さを増した成長島 (130) 成長島の高さ (131) 成長がもたらされる高温帯域 (132) 体積混合比率(γ)の減少により拡張され
た成長がもたらされる高温領域 (133) 成長島の先端部(表面) (134) 体積混合比率(γ)を初期値(γ0 )より
経時的に直線的に減少させることを示す直線 (135) 体積混合比率(γ)を初期値(γ0 )より
経時的に非線形的に減少させることを示す曲線 (136) 体積混合比率(γ)を初期値(γ0 )より
経時的に段階的に減少させることを示す曲線
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI H01L 33/00 H01L 33/00 C (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01L 21/205 C23C 16/34 C23C 16/455 C30B 25/14 C30B 29/38 H01L 33/00

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水素と不活性元素ガスの混合気体から構
    成される成長雰囲気内で窒化物化合物半導体層を形成す
    る方法にあって、水素の体積(V0 )に対する、不活性
    元素ガスの体積(V)の比率(V/V0 )を窒化物化合
    物半導体層の成長層厚の増加に伴い減少させることを特
    徴とする窒化物化合物半導体層の形成方法。
  2. 【請求項2】 混合気体が水素とアルゴンとから構成さ
    れ、成長層厚をt(単位:μm)とし、水素の体積(V
    0 )に対するアルゴン(Ar)の体積(V)の比率γを
    0.2/t以上6.0/t以下の範囲にある初期値γ0
    より、成長層厚の増加に伴って減少させることを特徴と
    する請求項1記載の窒化物化合物半導体層の形成方法。
  3. 【請求項3】 形成温度(T:単位℃)を600℃以上
    900℃以下とし、III 族原子に対するインジウム(I
    n)原子の含有比率(x:単位%)を2%以上50%以
    下とし、かつ成長層厚をt(単位:μm)としたとき
    に、水素の体積に対するアルゴンの体積の比の初期値γ
    0 を0.2・x・(1/t)・(T/550)以上1.
    8・x・(1/t)・(T/550)以下とすることを
    特徴とする請求項2記載の窒化物化合物半導体層の形成
    方法。
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