JP2015157982A - 溶射による補修方法 - Google Patents

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【課題】コークス炉の炭化室のような工業窯炉等の炉壁を溶射により補修する際などにおいて、材料の吐出速度を下げて良好な補修を行うことができる溶射による補修方法を提案する。【解決手段】耐火性粉末と耐火性粉末を搬送するためのガスとを混合し、耐火性粉末を材料吐出ノズルまで搬送する工程において、耐火性粉末と耐火性粉末を搬送するためのガスとが混合されてから、耐火性粉末が材料吐出ノズルまで搬送されるまでの間に混合するガスの量を、材料の吐出速度の制御前の基準となるガス量より増やすことにより、材料の吐出速度を下げて溶射を実施する。【選択図】なし

Description

本発明は、コークス炉の炭化室のような工業窯炉等の炉壁を溶射により補修する方法に関し、特に、用いる材料の吐出速度を制御することで好適な補修を達成できる溶射による補修方法に関するものである。
工業窯炉や溶融金属用容器等は、その使用に伴って、内張りされた耐火物等に損傷が生ずる。このような損傷部位に対しては、適宜、補修が施される。例えば、製鉄所のコークス炉は、建設してから20年以上のものが多く、特に、その炭化室の内壁は補修を繰り返しながら操業を継続している。
コークス炉の補修に際し操業を継続しながら補修する技術の一つとして、溶射による補修方法(以下「溶射補修」とも言う)が知られている。この溶射補修方法としては、プラズマ溶射法やレーザー溶射法、火炎溶射法等があるが、これらの溶射方法には、大掛かりな設備、装置が必要となるという問題がある。そのため、近年では、比較的簡易な装置で実施可能な、金属粉末の酸化発熱反応を利用した溶射方法が開発されている(例えば、特許文献1〜4)。
上記溶射方法は、金属粉末(燃焼剤)と耐火性粉末との混合物を酸素ガスで搬送して高熱の補修面(コークス炉炭化室の場合)に吹き付けることによって、混合物中の金属粉末が補修面からの受熱により酸化発熱反応(テルミット反応等)を起こさせて耐火性粉末を溶融し、補修面に付着させる技術である。
一般に、溶射は、溶射ノズルが付いたランスを人が直接操作する方法と機械により動作させる方法とに大別される。ランスを機械により動作させる方法としては、垂直移動や水平移動、これらを組み合わせた動作方法等が開示されている(例えば、特許文献5〜7)。
特開2006−098029号公報 特開2006−151771号公報 特開2009−120406号公報 特開2000−159579号公報 特開平7−126635号公報 特開2005−206727号公報 特開2006−63275号公報
溶射ノズルが付いたランスを機械的に動作させる方法については、溶射ノズルが付いたランスの方向を変える際に、ランスの減速や加速を伴うこととなる。例えば、自動車を製造する際の溶接等で利用されている産業用ロボットを使えば俊敏に動くので、この加速や減速は速い。しかし、コークス炉のような大きな炉を補修するには、10m以上のランスを動作させる必要があり、さらに高温下で使用されるため、冷却装置も付随していることから、ランスは必然的に大きく重くなる。そのため、ランスの俊敏な動作が困難になる。
コークス炉で使用される溶射機のランスの加速度−減速度は、一般に、最大でも0.1m/s程度である。耐火性粉末の吐出速度が一定の場合において、この加速度−減速度で溶射ノズルの方向が変わると、溶射ノズルが方向を変える部位付近とそれ以外の部位とでは、補修すべき部位に盛られる溶射被膜の厚みが異なったものとなる。このとき、溶射ノズルが方向を変える部位では、それ以外の部位よりも約2倍の量が盛られることになり、補修厚みが異なるという問題が生じる。
また、ランスの加速度−減速度が速くできるような場合でも、方向を変える際のランス走査速度が速いとランスの振動が大きくなり、意図した部位とは違う部位に溶射してしまう問題がある。さらに、これらの問題が無い場合でも、溶射ノズルが方向を変える端部では、溶射部と非溶射部とで炉壁に段差が生じやすい問題がある。そのため、コークス炉の場合、コークス押出し時にコークスが、溶射被膜が厚く盛られた部分に引っ掛かり、押し詰まりを起こすおそれがある。
また、材料吐出ノズルが付いたランスを人が直接操作する方法においては、損傷したれんが(耐火物)の広い範囲を補修するような場合には、材料の吐出速度が速い方が効率的に補修をすることができるが、れんがとれんがとの間の目地のような狭くかつ浅い部位を補修するような場合には、材料の吐出速度が速いと意図した厚み以上に盛ってしまうおそれがある。
本発明は、従来技術が抱える上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、材料吐出ノズル位置を機械により動作させる方法においては、材料吐出ノズルが方向を変える際の減速度や加速度が遅い場合でも溶射被膜の盛り過ぎを抑止することや、溶射部と非溶射部の段差を小さくする溶射による補修方法を提案することにある。また、材料吐出ノズルが付いたランスを人が直接操作する方法においては、意図した厚み以上に盛ってしまうおそれを小さくする溶射による補修方法を提案することにある。
本発明の溶射による補修方法は、前記課題を解決するために、耐火性粉末と耐火性粉末を搬送するためのガスとを混合し、耐火性粉末を材料吐出ノズルまで搬送する工程において、耐火性粉末と耐火性粉末を搬送するためのガスとが混合されてから、耐火性粉末が材料吐出ノズルまで搬送されるまでの間に混合するガスの量を、材料の吐出速度の制御前の基準となるガス量より増やすことにより、材料の吐出速度を下げて溶射を実施することを特徴とするものである。
なお、制御前の基準となる酸素量は、使用する材料の種類や吐出速度等によって異なるので、材料の搬送性や溶射によって得られる溶射被膜の強度を考慮して、実験によって適宜決定することが望ましい。
なお、前記のように構成される本発明に係る溶射による補修方法においては、
(1)耐火性粉末と耐火性粉末を搬送するためのガスが混合されてから、耐火性粉末が材料吐出ノズルまで搬送されるまでの間に混合するガスが、酸素、空気、窒素およびアルゴンから選ばれる1種以上のガスであること、がより好ましい解決手段となるものと考えられる。
本発明によれば、例えば当社により炉壁を補修する際に、材料の吐出速度を容易に下げることができるようになる。その結果、材料吐出ノズル位置を機械により動作させる方法では、材料吐出ノズルが方向を変える際の減速度や加速度が遅い場合でも溶射被膜の盛り過ぎを抑止することや、溶射部と非溶射部の段差を小さくすることができるようになる。また、材料吐出ノズルが付いたランスを人が直接操作する方法では、意図した厚み以上に盛ってしまうおそれを小さくすることができる。
(a)〜(c)は、それぞれ、本発明に係る溶射による補修方法を実施する装置構成の一例を示す図である。 表1のデータに基づきガス流量比と材料と出速度比との関係を示すグラフである。
図1(a)、(b)、(c)はそれぞれ本発明に係る溶射による補修方法を実施する装置構成の一例を示す図である。図1(a)に示す例では、まず、管路を介して耐火性粉末からなる材料を1次酸素により搬送する。次に、材料吐出ノズルまで材料を搬送する途中で、2次酸素を管路に供給する。図1(a)に示す例では、2次酸素の量を、材料の吐出速度の制御前の基準となる量より増やすことで、本発明を達成することができる。材料の吐出速度の制御前の基準での酸素ガス量とは、加速・減速を行なわない通常時の酸素量である。
また、図1(b)に示す例では、材料吐出ノズルまで材料を搬送する途中で、2次酸素または空気、窒素およびアルゴンから選ばれる1種以上のガスを管路に供給する。2次酸素または空気、窒素およびアルゴンから選ばれる1種以上のガスの選択は、切替弁によって行われる。図1(b)に示す例では、2次酸素または空気、窒素、アルゴンから選ばれる1種以上のガスの量を、材料の吐出速度の制御前の基準となるガスの量より増やすことで、本発明を達成することができる。
さらに、図1(c)に示す例では、材料吐出ノズルまで搬送する途中で、2次酸素を管路に供給する。さらに、材料吐出ノズルまで搬送する途中で、3次酸素または空気、窒素およびアルゴンから選ばれる1種以上のガスを管路に供給する。3次酸素または空気、窒素およびアルゴンから選ばれる1種以上のガスの選択は、切替弁によって行われる。図1(c)に示す例では、2次酸素や3次酸素または空気、窒素、アルゴンから選ばれる1種以上のガスの量を、材料の吐出速度の制御前の基準となるガスの量より増やすことで、本発明を達成することができる。
また、図1(b)に示した例では酸素を1次酸素、2次酸素(別のガスの場合もある)と2箇所(1箇所)から供給したのに対し、図1(c)に示した例では、1次酸素、2次酸素、3次酸素(別のガスの場合もある)と3箇所(2箇所)から供給しており、図1(b)に示す例も図1(c)に示す例も実質的な内容は同じである。
本発明によれば、耐火性粉末と耐火性粉末を搬送するためのガスとを混合し、耐火性粉末を材料吐出ノズルまで搬送する工程において、耐火性粉末と耐火性粉末を搬送するためのガスとが混合されてから、耐火性粉末が材料吐出ノズルまで搬送されるまでの間に混合するガスの量を、材料の吐出速度の制御前の基準となるガス量より増やすことにより、耐火性粉末を搬送するためのガスの流動が抑制され、その結果として材料の吐出速度を下げることができるようになる。
材料の吐出速度の抑制効果は、耐火性粉末が材料吐出ノズルまで搬送されるまでの間に混合するガスの種類によって影響を受けることは無い。したがって、材料の吐出速度の抑制の点からは、ガスの種類は特に限定されるものではない。ただし、使用するガスの種類によって、材料の燃焼性が変わる。材料の燃焼性はノズル先端から吐出されるガス中の酸素濃度の影響を受け、酸素濃度が高いほど燃焼性に優れる。燃焼性は溶射被膜が盛られる厚みに影響を及ぼす。すなわち、材料の吐出速度が同じ場合には、燃焼性に優れるほど溶射被膜が厚く盛られることとなる。したがって、燃焼性を損なわないようにするのであれば、耐火性粉末が材料吐出ノズルまで搬送されるまでの間に混合するガスは、酸素を選定すると良い。次いで酸素を含有する空気である。できる限り溶射被膜を薄く盛りたい場合には、窒素やアルゴンなどを選定すると良い。
耐火性粉末と耐火性粉末を搬送するためのガスとが混合されてから、耐火性粉末が材料吐出ノズルまで搬送されるまでの間にガスを混合する方法は、特に限定しないが、図1(a)、(b)、(c)に示す方法を例としてあげることができる。図1(b)に示す例では、2次酸素、空気、窒素およびアルゴンから選ばれる1種以上のガスが切り替えられるようになっており、2次酸素、空気、窒素およびアルゴンから選ばれる1種以上のガスを材料の吐出速度制御前の1次酸素流量に増加させることにより、材料の吐出速度の抑制ができる。図1(c)に示す例では、3次酸素、空気、窒素およびアルゴンから選ばれる1種以上のガスが切り替えられるようになっており、3次酸素、空気、窒素およびアルゴンから選ばれる1種以上のガスを材料の吐出速度制御前の1次酸素流量と2次酸素流量に増加させることにより、材料の吐出速度の抑制ができる。また、2次酸素を増やすことによっても材料の吐出速度の抑制ができる。
なお、図1(a)、(b)、(c)において、材料の吐出速度の制御前と制御時において、1次酸素を必ずしも同じ流量にする必要は無い。
図2にガス流量比と材料吐出速度比の関係を示す。図2は図1(c)で3次酸素と空気を切り替えた場合であり、ガス流量比は以下の式(1)で表すことができる。
ガス流量比(%)=〔(1次酸素+2次酸素+材料の吐出速度制御時の3次酸素、空気、窒素及びアルゴンから選ばれる1種以上)/(1次酸素+2次酸素+材料の吐出速度制御前の3次酸素、空気、窒素及びアルゴンから選ばれる1種以上〕×100 (1)
図2より、ガス流量比を1.35にすれば材料吐出速度を約1/2に抑制できることがわかる。したがって、吐出速度を抑制したいレベルに合わせてガス流量比を設定すれば良い。また、図1(b)で2次酸素と空気を切り替えた場合には、ガス流量比は以下の式(2)で表すことができる。
ガス流量比(%)=〔(1次酸素+材料の吐出速度制御時の2次酸素、空気、窒素及びアルゴンから選ばれる1種以上)/(1次酸素+材料の吐出速度制御前の2次酸素、空気、窒素及びアルゴンから選ばれる1種以上)〕×100 (2)
図1(b)の場合も、図1(a)の場合と同様に、ガス流量比を設定すれば良いことがわかる。さらに、図1(a)の場合には、ガス流量比は以下の式(3)で表すことができる。
ガス流量比(%)=〔(1次酸素+材料の吐出速度制御時の2次酸素)/(1次酸素+材料の吐出速度制御前の2次酸素)〕×100 (3)
なお、耐火性粉末が材料吐出ノズルまで搬送されるまでの間に混合するガスの種類が空気以外の場合には、(1)式や(2)式の空気を、選定したガスに置き換えれば良い。
<実施例1>
表1に本発明の実施例と比較例を示す。表1は、図1(c)の配管条件とし、耐火性粉末と耐火性粉末を搬送するためのガスとが混合されてから、耐火性粉末が材料吐出ノズルまで搬送されるまでの間に混合するガスを、酸素、空気、窒素、アルゴンとしたものである。比較例の材料吐出速度80kg/hに対して、実施例は材料吐出速度が57kg/h以下に抑制されており、良好な結果が得られている。
Figure 2015157982
<実施例2>
次に、本発明を実炉に適用して、その効果を調べた。溶射方法は、溶射ノズルが付いたランスを機械的に動作させる方法とした。溶射の範囲(補修部位)は窯によってやや異なるが、おおよそ奥行き1m×高さ3mである。溶射体の厚みは、溶射範囲の中心部付近が20mmになるように設定した。吐出速度を制御(抑制)した範囲は、ノズルが折り返す150mm手前からノズルが折り返すまでとした。また、溶射ノズルが方向を変える際の減速度と加速度は0.1m/sとした。
評価は、溶射前後での押出し電流値の変化とした。電流値は押出し時の最大値とし、溶射前10回の電流値の平均と溶射後10回の電流値の平均とを比較した。電流値は、溶射前の電流値の平均を100としたときの押出し電流指数で表した。押出し電流指数は、その値が小さいほど補修効果が大きいことになる。
表2に試験結果を示す。ガス流量比1.00の比較例は、押出し電流指数が101であり、補修前後でほとんど変わらない。一方、ガス流量比を1.00よりも大きくした実施例では、押出し電流指数が小さくなり補修効果が見られる。
Figure 2015157982
*耐火性粉末と耐火性粉末を搬送するためのガスとが混合されてから、耐火性粉末が材料吐出ノズルまで搬送されるまでの間に混合するガスの種類
本発明に係る溶射による補修方法によれば、材料吐出ノズル位置を機械により動作させる方法においては、材料吐出ノズルが方向を変える際の減速度や加速度が遅い場合でも溶射被膜の盛り過ぎを抑止することや、溶射部と非溶射部の段差を小さくすることができ、また、材料吐出ノズルが付いたランスを人が直接操作する方法においては、意図した厚み以上に盛ってしまうおそれを小さくすることができ、コークス炉の炭化室のような工業窯炉や溶融金属用容器等の炉壁の溶射補修に好適に使用することができる。

Claims (2)

  1. 耐火性粉末と耐火性粉末を搬送するためのガスとを混合し、耐火性粉末を材料吐出ノズルまで搬送する工程において、耐火性粉末と耐火性粉末を搬送するためのガスとが混合されてから、耐火性粉末が材料吐出ノズルまで搬送されるまでの間に混合するガスの量を、材料の吐出速度の制御前の基準となるガス量より増やすことにより、材料の吐出速度を下げて溶射を実施することを特徴とする溶射による補修方法。
  2. 耐火性粉末と耐火性粉末を搬送するためのガスが混合されてから、耐火性粉末が材料吐出ノズルまで搬送されるまでの間に混合するガスが、酸素、空気、窒素およびアルゴンから選ばれる1種以上のガスであることを特徴とする請求項1に記載の溶射による補修方法。
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