JP2015153909A - 金属錯体組成物、金属酸化物薄膜及びその製造方法、電子素子、薄膜トランジスタ、表示装置、イメージセンサ、並びにx線センサ - Google Patents

金属錯体組成物、金属酸化物薄膜及びその製造方法、電子素子、薄膜トランジスタ、表示装置、イメージセンサ、並びにx線センサ Download PDF

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Abstract

【課題】性能のバラつきが抑制された金属酸化物薄膜を製造できる金属錯体組成物及び金属酸化物薄膜の製造方法、並びに、金属酸化物薄膜、電子素子、薄膜トランジスタ、表示装置、イメージセンサ、及びX線センサを提供する。
【解決手段】昇華温度が150℃〜450℃である金属錯体と、分子量が73〜175であるルイス塩基性添加剤と、を含む金属錯体組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、金属錯体組成物、金属酸化物薄膜及びその製造方法、電子素子、薄膜トランジスタ、表示装置、イメージセンサ、並びにX線センサに関する。
半導体薄膜又は導電体薄膜としての金属酸化物薄膜は、真空成膜法による製造において実用化がなされ、現在注目を集めている。
近年では、上記金属酸化物薄膜をより簡便に形成する技術として、金属酸化物の前駆体を含む溶液を塗布することによって上記金属酸化物薄膜を形成する方法が検討されている。
例えば、硝酸インジウムを含む溶液を塗布し、紫外線を照射することによりIn−Ga−Zn−O(IGZO)薄膜を形成すること、及び、得られたIn−Ga−Zn−O(IGZO)薄膜を備えた薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)が高い移動度を有することが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
また、ジエチル亜鉛またはジエチル亜鉛等の有機亜鉛化合物の部分加水分解物をベースとした組成物であってIGZO等の酸化物半導体膜等に適用可能な複合酸化物薄膜を成膜することができる組成物として、特定の有機亜鉛化合物または前記有機亜鉛化合物の水による部分加水分解物と3B族元素化合物または3B族元素化合物の水による部分加水分解物を、亜鉛に対する3B族元素のモル比が0.1を超え5以下の範囲で含有する複合酸化物薄膜製造用組成物が知られている(例えば、特許文献1参照)。そして特許文献1の段落0025では、3B族元素として、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウムが例示されている。特許文献1にいう「3B族」は、より一般的には、「第13族」であると解される。
また、有効に動作し、且つ、トランジスタの使用開始時と安定動作時とでのリーク電流値の差が小さく、使用開始時と安定動作時とでの閾値電圧のシフト幅とが小さく、On−Off比(Ion/Ioff)が高いトランジスタを与える酸化物半導体膜を容易に形成できる酸化物半導体膜の製造方法として、1)基板上に形成された、酸化物半導体の前駆体薄膜に紫外線を照射する、紫外線照射工程と、2)高周波印加装置により、特定の条件下に紫外線照射された前駆体薄膜を処理して、前駆体薄膜から酸化物半導体膜を形成させる半導体膜形成工程と、を含む酸化物半導体膜の製造方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
また、塗布により金属酸化物薄膜を製造できる化合物として、特定構造の金属シロキサノレート化合物が知られている(例えば、特許文献3参照)。
また、金属アルコキシドとキレート安定化剤とを含む感光性ゾルゲル材料を用い、エッチング溶液としてアルカリ水溶液を用いたポジ型金属酸化物パターン薄膜の形成方法が知られている(例えば、特許文献4参照)。
特開2012−106916号公報 特開2013−197539号公報 特開2010−105979号公報 特開2003−255522号公報
Nature, 489(2012) 128.
ところで、塗布による金属酸化物薄膜の製造において、金属酸化物の前駆体として、昇華性を有する金属錯体が用いられることがある。塗布による金属酸化物薄膜の製造において、金属酸化物の前駆体として昇華性を有する金属錯体を用いる態様には、昇華精製により高純度の金属錯体が簡便に得られるという利点がある。
しかし、塗布及び加熱処理を含む金属酸化物薄膜の製造において、金属酸化物の前駆体として昇華性を有する金属錯体を用いると、加熱処理時に金属錯体の一部が昇華することにより、製造される金属酸化物薄膜の性能(例えば、薄膜トランジスタの活性層としたときの移動度)にバラつきが生じる場合があることが判明した。
従って、本発明の目的は、性能のバラつきが抑制された金属酸化物薄膜を製造できる金属錯体組成物及び金属酸化物薄膜の製造方法を提供することである。
また、本発明の目的は、上記金属酸化物薄膜の製造方法によって作製された金属酸化物薄膜、並びに、上記金属酸化物薄膜を備えた、電子素子、薄膜トランジスタ、表示装置、イメージセンサ、及びX線センサを提供することである。
本発明者等は鋭意検討した結果、昇華温度が150℃〜450℃である金属錯体と、分子量が73〜175であるルイス塩基性添加剤と、を含む金属錯体組成物を用い、塗布及び加熱処理を経て金属酸化物薄膜を製造することにより、加熱処理による金属錯体の分解によって金属酸化物薄膜を製造でき、かつ、ルイス塩基性添加剤が金属錯体中の金属イオンに配位することによって加熱処理時の金属錯体の昇華を抑制でき、ひいては、性能のバラつきが抑制された金属酸化物薄膜を製造できる、との知見を得た。本発明者等は、上記知見に基づき本発明を完成させた。
即ち、上記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 昇華温度が150℃〜450℃である金属錯体と、分子量が73〜175であるルイス塩基性添加剤と、を含む金属錯体組成物。
<2> 金属錯体が、一分子中に、In3+及びGa3+の少なくとも一方を含む<1>に記載の金属錯体組成物。
<3> 金属錯体が、一分子中に、アニオン配位子を含む<1>又は<2>に記載の金属錯体組成物。
<4> ルイス塩基性添加剤の共役酸のpKaが、3〜12である<1>〜<3>のいずれか1項に記載の金属錯体組成物。
<5> ルイス塩基性添加剤の共役酸のpKaが、7〜12である<1>〜<4>のいずれか1項に記載の金属錯体組成物。
<6> 金属錯体に対するルイス塩基性添加剤の含有量比が、100mol%〜300mol%である<1>〜<5>のいずれか1項に記載の金属錯体組成物。
<7> アニオン配位子が、下記一般式(1)又は下記一般式(2)で表されるアニオン配位子である<3>に記載の金属錯体組成物。
一般式(1)中、R11、R12、及びR13は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。
一般式(2)中、R21は、炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基を示す。
<8> アニオン配位子が、一般式(1)で表されるアニオン配位子である<7>に記載の金属錯体組成物。
<9> ルイス塩基性添加剤が、アミン化合物、アニリン化合物、及び含窒素複素環化合物からなる群から選択される少なくとも1種である<1>〜<8>のいずれか1項に記載の金属錯体組成物。
<10> 更に、溶媒を含む<1>〜<9>のいずれか1項に記載の金属錯体組成物。
<11> <10>に記載の金属錯体組成物を塗布し、乾燥させて塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、塗布膜を加熱処理する加熱処理工程と、を有する金属酸化物薄膜の製造方法。
<12> <11>に記載の金属酸化物薄膜の製造方法によって製造された金属酸化物薄膜。
<13> <12>に記載の金属酸化物薄膜を備えた電子素子。
<14> <12>に記載の金属酸化物薄膜を備えた薄膜トランジスタ。
<15> <14>に記載の薄膜トランジスタを備えた表示装置。
<16> <14>に記載の薄膜トランジスタを備えたイメージセンサ。
<17> <14>に記載の薄膜トランジスタを備えたX線センサ。
本発明によれば、性能のバラつきが抑制された金属酸化物薄膜を製造できる金属錯体組成物及び金属酸化物薄膜の製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、上記金属酸化物薄膜の製造方法によって作製された金属酸化物薄膜、並びに、上記金属酸化物薄膜を備えた、電子素子、薄膜トランジスタ、表示装置、イメージセンサ、及びX線センサを提供することができる。
本発明により製造される薄膜トランジスタの一例(トップゲート−トップコンタクト型)の構成を示す概略図である。 本発明により製造される薄膜トランジスタの一例(トップゲート−ボトムコンタクト型)の構成を示す概略図である。 本発明により製造される薄膜トランジスタの一例(ボトムゲート−トップコンタクト型)の構成を示す概略図である。 本発明により製造される薄膜トランジスタの一例(ボトムゲート−ボトムコンタクト型)の構成を示す概略図である。 実施形態の液晶表示装置の一部分を示す概略断面図である。 図5の液晶表示装置の電気配線の概略構成図である。 実施形態の有機EL表示装置の一部分を示す概略断面図である。 図7の有機EL表示装置の電気配線の概略構成図である。 実施形態のX線センサアレイの一部分を示す概略断面図である。 図9のX線センサアレイの電気配線の概略構成図である。
以下、適宜図面を参照しながら、本発明の、金属錯体組成物、金属酸化物薄膜及びその製造方法、電子素子、薄膜トランジスタ、表示装置、イメージセンサ、並びにX線センサについて具体的に説明する。
なお、図中、同一又は対応する機能を有する部材(構成要素)には同じ符号を付して適宜説明を省略する。
また、本明細書において「〜」の記号により数値範囲を示す場合、下限値及び上限値が含まれる。
<金属錯体組成物>
本発明の金属錯体組成物は、昇華温度が150℃〜450℃である金属錯体と、分子量が73〜175であるルイス塩基性添加剤と、を含む。
昇華性を有する金属錯体、特に、昇華温度が450℃以下である金属錯体は、昇華精製によって高純度の金属錯体を得やすいという利点がある。
しかし、本発明者等の検討の結果、塗布及び加熱処理を含む金属酸化物薄膜の製造において、金属酸化物の前駆体として昇華温度450℃以下の金属錯体を用いると、加熱処理時に金属錯体の一部が昇華することにより、製造される金属酸化物薄膜の特性にバラつきが生じる場合があることが判明した。
本発明者等は更に検討した結果、金属酸化物薄膜の製造において、昇華温度450℃以下の金属錯体と、分子量が73以上であるルイス塩基性添加剤と、の組み合わせを含む金属錯体組成物を用いると、金属錯体の昇華を抑制でき、ひいては、金属酸化物薄膜の性能のバラつきを抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明の金属錯体組成物によれば、性能のバラつきが抑制された金属酸化物薄膜を製造できる。
本発明において、金属酸化物薄膜の性能のバラつきは、金属酸化物薄膜を電子素子(例えば薄膜トランジスタ(TFT))の一部として用いたときの、素子特性のバラつき(例えば、トランジスタ特性(移動度など)のバラつき)に対応する。従って、素子特性のバラつきを評価することにより、金属酸化物薄膜の性能のバラつきを評価することができる。
本発明において、ルイス塩基性添加剤とは、非共有電子対を有する化合物を指す。
金属錯体の昇華温度が450℃以下であると、金属錯体の昇華という問題が生じやすくなる。本発明では、この金属錯体の昇華という問題が、分子量73以上のルイス塩基性添加剤によって解決される。この理由は、以下のように推測される。
即ち、分子量が73以上とある程度大きいルイス塩基性添加剤が、このルイス塩基性添加剤の非共有電子対によって金属錯体の金属イオンに配位することにより、金属錯体の分子量が増大し、加熱処理時においても、金属錯体が昇華し難くなるためと考えられる。更に、ルイス塩基性添加剤の分子量が73以上であることは、(加熱処理時などにおいて)ルイス塩基性添加剤自体が揮発しにくい点でも有利である。
そして、金属錯体の昇華が抑制された状態で、加熱処理によって金属錯体が分解することにより、金属酸化物が安定的に生成されると考えられる。その結果、性能のバラつきが少ない金属酸化物薄膜が製造されると考えられる。
また、本発明では、金属錯体の昇華温度が150℃以上とある程度高いことによっても、金属錯体の昇華が抑制され、金属酸化物薄膜の性能のバラつきが抑制される。
本発明において、昇華温度とは、大気圧下、TG−DTA(Thermogravimetry−Differential Thermal Analysis;熱重量測定−示差熱分析)を行ったときの重量減少率が80%となる温度を指す。
本発明における金属錯体の昇華温度は、150℃〜450℃であるが、150℃〜350℃が好ましく、150℃〜250℃がより好ましい。
また、本発明では、ルイス塩基性添加剤の分子量が175以下であることによっても、金属酸化物薄膜の性能のバラつきが抑制される。この理由は、ルイス塩基性添加剤の分子量が175以下とある程度小さいことにより、金属酸化物薄膜中へのルイス塩基性添加剤自身の残留が抑制されるため、と考えられる。
本発明におけるルイス塩基性添加剤の分子量は、上述のとおり73〜175であるが、本発明の効果がより効果的に奏される点で、75〜150が好ましく、75〜135がより好ましい。
本発明において、上記ルイス塩基性添加剤の共役酸のpKaは、特に制限はないが、3〜12が好ましく、7〜12がより好ましい。
上記pKaが3以上(より好ましくは7以上)であると、金属錯体の昇華抑制の効果がより効果的に奏される。この理由は、金属との配位結合が強くなるためと推測される。
一方、上記pKaが12以下であると、金属との配位結合が強くなりすぎず、かつ、ルイス塩基性添加剤が熱分解しやすくなる点で有利である。
本発明において、ルイス塩基性添加剤の共役酸のpKaは、25℃のジメチルスルホキシド中で測定された値を指す。
ルイス塩基性添加剤の共役酸のpKaについては、J. Am. Chem. Soc. 1988, 110, p.2964-2968、Acc. Chem. Res. 1988, 21, p.456-463、J. Am. Chem. Soc. 1968, 90, p.23-28を参照することができる。
また、本発明において、金属錯体に対するルイス塩基性添加剤の含有量比〔ルイス塩基性添加剤の含有量/金属錯体の含有量〕は、100mol%〜300mol%であることが好ましい。
上記含有量比が100mol%以上であると、金属錯体の昇華抑制の効果がより効果的に奏され、その結果、金属酸化物薄膜の性能のバラつきがより抑制される。
一方、上記含有量比が300mol%以下であると、金属酸化物薄膜中へのルイス塩基性添加剤の残留がより抑制され、その結果、金属酸化物薄膜の性能のバラつきがより抑制される。
(金属錯体)
本発明の金属錯体組成物は、昇華温度が150℃〜450℃である金属錯体を少なくとも1種含む。
昇華温度の好ましい範囲は前述したとおりである。
また、金属錯体に対するルイス塩基性添加剤の好ましい含有量比についても前述したとおりである。
上記金属錯体の構造には特に制限はないが、以下に例示する好ましい金属錯体の中から、昇華温度が150℃〜450℃である金属錯体を適宜選択して用いることができる。
上記金属錯体は、金属イオンとして、In3+及びGa3+の少なくとも一方を含むことが好ましい。
上記金属錯体が、一分子中に、In3+を含みGa3+を含まない場合には、本発明の金属錯体組成物により、金属酸化物薄膜として、In−O薄膜(酸化インジウム薄膜)を製造できる。
上記金属錯体が、一分子中に、Ga3+を含みIn3+を含まない場合には、本発明の金属錯体組成物により、金属酸化物薄膜として、Ga−O薄膜(酸化ガリウム薄膜)を製造できる。
上記金属錯体が、一分子中に、In3+及びGa3+を含む場合には、本発明の金属錯体組成物により、金属酸化物薄膜として、In−Ga−O薄膜を製造できる。
また、本発明の金属錯体組成物が、In3+を含む金属錯体と、Ga3+を含む上記金属錯体と、を含む場合にも、本発明の金属錯体組成物により、金属酸化物薄膜として、In−Ga−O薄膜を製造できる。
また、上記金属錯体は、一分子中に、金属イオンとして、Zn2+、Sn2+、Sn4+、及びAl3+からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
上記金属錯体が、一分子中に、In3+及びGa3+の少なくとも一方と、Zn2+、Sn2+、Sn4+、及びAl3+からなる群から選択される少なくとも1種と、を含む場合には、金属酸化物薄膜として、In−Ga−Zn−O薄膜、In−Zn−O薄膜、In−Sn−O薄膜、In−Sn−Zn−O薄膜、等の複合酸化物薄膜を製造できる。
また、上記金属錯体は、一分子中にアニオン配位子を含むことが好ましく、一分子中に、アニオン配位子と、金属イオン(好ましくは、In3+及びGa3+の少なくとも一方)と、を含むことがより好ましい。
一分子中にアニオン配位子を有する金属錯体は、金属錯体の安定性の点で有利である。
上記金属錯体が一分子中にアニオン配位子を含む場合、上記金属錯体の一分子中に含まれるアニオン配位子は、1種のみであっても2種以上であってもよい。
上記金属錯体は、中性配位子を含んでいてもよい。
中性配位子としては、後述の溶媒の分子が挙げられる。
また、上記金属錯体の一分子は、金属錯体の安定性の点で、金属イオンと、アニオン配位子と、(更に、必要に応じ中性配位子と、)を含み、電気的に中性であることが好ましい。
上記アニオン配位子としては、下記一般式(1)又は下記一般式(2)で表されるアニオン配位子が特に好ましい。
一般式(1)中、R11、R12、及びR13は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。
一般式(2)中、R21は、炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基を示す。
一般式(1)中、R11、R12、及びR13で表される炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基が挙げられ、メチル基、エチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
一般式(1)の特に好ましい形態は、R11及びR13が炭素数1〜3のアルキル基(好ましい範囲は上記のとおりである)であって、R12が水素原子である形態である。
一般式(1)で表されるアニオン配位子として、最も好ましくは、アセチルアセトナート配位子(一般式(1)中、R11及びR13がメチル基であり、R12が水素原子であるアニオン配位子)である。
一般式(2)中、R21で表される炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基とは、少なくとも1つのハロゲン原子によって置換された炭素数1〜3のアルキル基を指す。この炭素数1〜3のアルキル基の好ましい範囲は、前述のR11、R12、及びR13で表される炭素数1〜3のアルキル基の好ましい範囲と同様である。
また、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましく、フッ素原子が好ましい。
一般式(2)で表されるアニオン配位子として、最も好ましくは、一般式(2)中、R21がトリフルオロメチル基であるアニオン配位子である。
上記一般式(1)又は下記一般式(2)で表されるアニオン配位子の中でも、製造される金属酸化物薄膜の性質により優れる点で(例えば、薄膜トランジスタの活性層としたときの移動度がより高い点で)、上記一般式(1)で表されるアニオン配位子が特に好ましい。
以下、昇華温度が150℃〜450℃である金属錯体の例示化合物(金属錯体1及び2)を示す。
下記金属錯体1及び2において、カッコ内の温度は、昇華温度である。
上記金属錯体1は、In(acac)と称されることがある。
上記金属錯体2は、トリフルオロメタンスルホン酸インジウムである。
(ルイス塩基性添加剤)
本発明の金属錯体組成物は、分子量が73〜175であるルイス塩基性添加剤を少なくとも1種含む。
ルイス塩基性添加剤の分子量の好ましい範囲、ルイス塩基性添加剤の共役酸のpKaの好ましい範囲は、それぞれ、前述したとおりである。
ルイス塩基性添加剤としては、分子量が上記範囲であり、かつ、非共有電子対を有する化合物であればよい。
ルイス塩基性添加剤としては、特に制限されないが、金属錯体へ配位する効果(即ち、金属錯体の昇華を抑制する効果)が高い点で、非共有電子対を有する窒素原子を含む化合物が好ましい。
非共有電子対を有する窒素原子を含む化合物としては、アミン化合物、アニリン化合物、含窒素複素環化合物が好ましい。
上記アミン化合物としては、トリエチルアミン(分子量101)、ジブチルアミン(分子量129)、等が挙げられる。
上記アニリン化合物としては、アニリン(分子量93)、N,N−ジメチルアニリン(分子量121)、等が挙げられる。
上記含窒素複素環化合物としては、ピリジン(分子量79)、ピペリジン(分子量85)、等が挙げられる。
(溶媒)
本発明の金属錯体組成物は、更に、溶媒を少なくとも1種含むことができる。
以下では、溶媒を含む金属錯体組成物を、「金属錯体溶液」ということがある。
本発明の金属錯体組成物が溶媒を含む場合、本発明の金属錯体組成物(金属錯体溶液)は、金属酸化物薄膜を製造するための塗布液として好適に用いられる。
金属酸化物薄膜の具体的な製造方法については後述する。
上記溶媒としては特に限定はないが、金属錯体の溶解性に優れる点で、ルイス塩基性を有する溶媒、ハロゲン系溶媒が好適である。
特に、ルイス塩基性を有する溶媒を用いた場合には、金属錯体溶液中における金属錯体の安定性を向上させる効果も期待できる。
ルイス塩基性を有する溶媒としては、非共役電子対を有する原子(窒素原子、酸素原子、硫黄原子、等)を含む化合物を用いることができる。
ルイス塩基性を有する溶媒として、具体的には、水、アルコール溶媒(メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール等)、アミド溶媒(N,N−ジメチルホルムアミド等)、アミン溶媒(トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン等)、ケトン溶媒(アセトン、N−メチル−2−ピロリドン、スルホラン、N,N−ジメチルイミダゾリジノン等)、エーテル溶媒(テトラヒドロフラン、メトキシエタノール、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル等)、エステル溶媒(酢酸エチル等)、ニトリル溶媒(アセトニトリル、ベンゾニトリル等)、その他上記以外のヘテロ原子含有溶媒、等が挙げられる。
ハロゲン系溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、p−クロロフェノール、等が挙げられる。
溶媒としては、金属錯体の溶解性の点で、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、塩化メチレン、酢酸エチルが特に好ましい。
本発明の金属錯体組成物が溶媒を含む場合、即ち、本発明の金属錯体組成物が金属錯体溶液である場合、金属錯体溶液中における上記金属錯体の濃度は、本発明の効果がより効果的に奏される点で、0.01〜0.5mol/Lが好ましい。
なお、本発明の金属錯体組成物において、溶媒は必須の成分ではない。
本発明の金属錯体組成物が溶媒を含まない場合、本発明の金属錯体組成物は、金属錯体溶液(溶媒を含む金属錯体組成物)を調製するための溶質として用いることができる。
本発明の金属錯体組成物が溶媒を含まない場合の実施態様としては、金属酸化物薄膜の製造に先立って、予め、本発明の金属錯体組成物と溶媒とを混合して金属錯体溶液(塗布液)を調製し、次いで、調製された金属錯体溶液を用いて金属酸化物薄膜を製造する態様が挙げられる。
金属酸化物薄膜の具体的な製造方法については後述する。
(酸化剤)
また、本発明の金属錯体組成物は、更に、酸化剤を含むことが好ましい。
本発明の金属錯体組成物は、更に、酸化剤を含むことにより、加熱処理時における金属錯体の分解がより促進されるので、より良質な金属酸化物薄膜を形成できる。例えば、金属酸化物薄膜を備えた薄膜トランジスタ(TFT)の移動度をより向上させることができる。
酸化剤としては特に制限はなく、公知の有機系酸化剤や、公知の無機系酸化剤を用いることができる。
また、本発明の金属錯体組成物が酸化剤を含む場合、金属錯体組成物に含まれる酸化剤は、1種のみであっても2種以上であってもよい。
また、酸化剤は、有機系酸化剤を含むことが好ましく、下記一般式(X)で表される化合物を含むことがより好ましい。
酸化剤が有機系酸化剤(特に、下記一般式(X)で表される化合物)を含むと、薄膜の形成の際、有機系酸化剤自体が分解されることにより、薄膜中の不純物をより低減することができる。従って、より良質な薄膜を形成できる。例えば、薄膜を備えた薄膜トランジスタ(TFT)の移動度をより向上させることができる。
一般式(X)中、R21は、一般式(X)中の窒素原子とともにヘテロ環を形成する2価の連結基を示し、X21は、ヒドロキシ基又はオキシル基を示す。
ここで、オキシル基とは、−O基(酸素ラジカル基)を意味する。
21で表される2価の連結基は、置換基を有していてもよい。
上記置換基は、アルキル基、オキソ基(=O基)、又はカルボキシル基であることが好ましい。
また、アルキル基、オキソ基(=O基)、又はカルボキシル基である置換基は、少なくとも、一般式(X)中の窒素原子に隣接する炭素原子に結合していることが好ましい。
また、一般式(X)中の窒素原子及びR21によって形成されるヘテロ環は、単環であっても縮環(例えばベンゾ縮環)であってもよい。
上記ヘテロ環としては、ピペリジン環、フタルイミド環、マレイミド環、スクシンイミド環が挙げられ、ピペリジン環、フタルイミド環がより好ましい。
一般式(X)で表される化合物の具体例としては、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(TEMPO)、N−ヒドロキシフタルイミド(NHPI)、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシマレイミドが挙げられ、TEMPO、NHPIが好ましい。
また、酸化剤としては、一般式(X)で表される化合物以外のその他の酸化剤を用いることもできる。
その他の酸化剤としては、マンガン錯体、鉄錯体、コバルト錯体が挙げられる。
ここで、「錯体」は広義の錯体を意味し、例えば、塩化鉄などの無機塩(無機錯体)も、「錯体」の概念に含まれる。
マンガン錯体の具体例としては、二酸化マンガン、過マンガン酸カリウム、塩化マンガン、臭化マンガン、硫酸マンガン、硝酸マンガン等のマンガン無機錯体;マンガン−サレン錯体、マンガン−フタロシアニン錯体、マンガン−ポルフィリン錯体等のマンガン有機錯体;が挙げられ、好ましくはマンガン有機錯体であり、より好ましくはマンガン−サレン錯体である。
鉄錯体の具体例としては、酸化鉄、塩化鉄、臭化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄等の鉄無機錯体;鉄−サレン錯体、鉄−フタロシアニン錯体、鉄−ポルフィリン錯体等の鉄有機錯体;が挙げられ、好ましくは鉄無機錯体であり、より好ましくは塩化鉄である
コバルト錯体の具体例としては、酸化コバルト、塩化コバルト、臭化コバルト、硫酸コバルト、硝酸コバルト等のコバルト無機錯体;二酢酸コバルト、コバルト−サレン錯体、コバルト−フタロシアニン錯体、コバルト−ポルフィリン錯体等のコバルト有機錯体;が挙げられ、好ましくはコバルト有機錯体であり、より好ましくはコバルト−サレン錯体である。
本発明の金属錯体組成物が酸化剤を含む場合、金属錯体組成物中の酸化剤の濃度は、金属錯体に対する濃度として、0.1mol%〜50mol%が好ましく、1mol%〜20mol%がより好ましく、5mol%〜15mol%が更に好ましく、5mol%〜10mol%が特に好ましい。
また、本発明の金属錯体組成物が有機系酸化剤(例えば上記一般式(X)で表される化合物)を含む場合、金属錯体組成物中の有機系酸化剤の濃度は、金属錯体に対する濃度として、0.1mol%〜50mol%が好ましく、1mol%〜20mol%がより好ましく、5mol%〜15mol%が更に好ましく、5mol%〜10mol%が特に好ましい。
(その他の成分)
本発明の金属錯体組成物は、上記以外のその他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分の例としては、例えば、亜鉛、錫、及びアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属原子を含む化合物が挙げられる。
本発明の金属錯体組成物が、In及びGaの少なくとも一方を有する上記金属錯体と、上記少なくとも1種の金属原子を含む化合物と、を含む場合、本発明の金属錯体組成物により、金属酸化物薄膜として、In−Ga−Zn−O薄膜、In−Zn−O薄膜、In−Sn−O薄膜、In−Sn−Zn−O薄膜、等の複合酸化物薄膜を製造できる。
<金属酸化物薄膜及びその製造方法>
本発明の金属酸化物薄膜の製造方法は、上述した本発明の金属錯体組成物のうち、溶媒を含む金属錯体組成物(以下、「金属錯体溶液」ともいう)を塗布し、乾燥させて塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、塗布膜を加熱処理する加熱処理工程と、を有する。
本発明の金属酸化物薄膜の製造方法によれば、上述したとおり、性能のバラつきが抑制された金属酸化物薄膜を製造できる。
また、本発明の金属酸化物薄膜の製造方法は、加熱処理による金属錯体の分解によって金属酸化物薄膜を得る方法であるため、例えば、紫外線照射やプラズマ照射といった特別な処理を行わなくても、金属酸化物薄膜を容易に製造することができる。但し、本発明の金属酸化物薄膜の製造方法において、補助的に、紫外線照射やプラズマ照射を行ってもよいことは言うまでもない。
(塗布膜形成工程)
塗布膜形成工程は、金属錯体溶液を塗布し、乾燥させて塗布膜を形成する工程である。
本工程において、金属錯体溶液は、好ましくは基板上に塗布される。
基板の形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。基板の構造は単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
基板を構成する材料としては特に限定はなく、ガラス、YSZ(Yttria−Stabilized Zirconia;イットリウム安定化ジルコニウム)等の無機基板、樹脂基板、その複合材料等を用いることができる。中でも軽量である点、可撓性を有する点から樹脂基板又はその複合材料が好ましい。
具体的には、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、アリルジグリコールカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリベンズアゾール、ポリフェニレンサルファイド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素樹脂、液晶ポリマー、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アイオノマー樹脂、シアネート樹脂、架橋フマル酸ジエステル、環状ポリオレフィン、芳香族エーテル、マレイミド・オレフィン、セルロース、エピスルフィド化合物等の合成樹脂基板、酸化珪素粒子との複合プラスチック材料、金属ナノ粒子、無機酸化物ナノ粒子、無機窒化物ナノ粒子等との複合プラスチック材料、カーボン繊維、カーボンナノチューブとの複合プラスチック材料、ガラスフレーク、ガラスファイバー、ガラスビーズとの複合プラスチック材料、粘土鉱物や雲母派生結晶構造を有する粒子との複合プラスチック材料、薄いガラスと上記単独有機材料との間に少なくとも1つの接合界面を有する積層プラスチック材料、無機層と有機層を交互に積層することで、少なくとも1つの接合界面を有するバリア性能を有する複合材料、ステンレス基板或いはステンレスと異種金属を積層した金属多層基板、アルミニウム基板或いは表面に酸化処理(例えば陽極酸化処理)を施すことで表面の絶縁性を向上させた酸化皮膜付きのアルミニウム基板等を用いることができる。また、樹脂基板は耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、加工性、低通気性、又は低吸湿性等に優れていることが好ましい。樹脂基板は、水分や酸素の透過を防止するためのガスバリア層や、樹脂基板の平坦性や下部電極との密着性を向上するためのアンダーコート層等を備えていてもよい。
基板の厚みに特に制限はないが、50μm以上500μm以下であることが好ましい。基板の厚みが50μm以上であると、基板自体の平坦性がより向上する。また、基板の厚みが500μm以下であると、基板自体の可撓性がより向上し、フレキシブルデバイス用基板としての使用がより容易となる。
本工程における塗布方法は特に限定されず、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、ミスト法、インクジェット法、ディスペンサー法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、及び凹版印刷法等が挙げられる。
本工程では、塗布された金属錯体溶液を乾燥し、塗布膜を得る。
この乾燥は、自然乾燥であってもよいし、加熱乾燥であってもよい。
加熱乾燥とする場合に加熱温度には特に限定はないが、例えば、40℃〜200℃が挙げられ、60℃〜180℃が好ましく、80℃〜180℃がより好ましく、100℃〜170℃が特に好ましい。
加熱乾燥とする場合の加熱の方法には特に限定されず、ホットプレート加熱、電気炉加熱、赤外線加熱、マイクロ波加熱等から選択することができる。
加熱乾燥は膜の平坦性を均一に保つ観点から、塗布後、5分以内に開始することが好ましい。
乾燥を行う時間は特に制限はないが、膜の均一性、生産性の観点から15秒以上10分以下であることが好ましい。
また、乾燥における雰囲気に特に制限はないが、製造コスト等の観点から大気圧下、大気中で行うことが好ましい。
本工程では、塗布から乾燥までの操作を複数回行ってもよい。
これにより、最終的に得られる金属酸化物薄膜の膜質をより向上させることができる。
(加熱処理工程)
加熱処理工程は、上記塗布膜形成工程で形成された塗布膜を加熱処理することにより、金属酸化物薄膜を得る工程である。
本工程における加熱処理により、上記金属錯体が分解し、金属酸化物薄膜が得られる。
本工程における加熱処理は、例えば、炉を用いて行うことができる。
加熱処理における最高到達温度は、より良質な金属酸化物薄膜を作製する観点から、200℃〜300℃が好ましく、220℃〜280℃がより好ましく、230℃〜270℃が特に好ましい。
また、加熱処理において、最高到達温度での保持時間は、5分〜2時間が好ましく、10分〜1時間がより好ましく、20分〜1時間が特に好ましい。
加熱処理における最高到達温度への昇温速度には特に制限はないが、10℃/sec〜100℃/secが好ましく、20℃/sec〜80℃/secがより好ましく、30℃/sec〜70℃/secが特に好ましい。
昇温速度が100℃/sec以下であると、より良質な金属酸化物薄膜が得られる。
昇温速度が10℃/sec以上であると、金属酸化物薄膜の生産性に優れる。
加熱処理の雰囲気には特に制限はなく、大気雰囲気下であってもよいし、不活性ガス(窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等)を含む雰囲気下であってもよい。
上記加熱処理は、大気雰囲気下、不活性ガスと酸素ガスとの混合ガス雰囲気下、又は、酸素100体積%の雰囲気下で行うことが好ましい。この場合の不活性ガスと酸素ガスとの混合ガス雰囲気における酸素濃度としては、例えば、1体積%〜50体積%が挙げられ、5体積%〜40体積%が好ましく、10体積%〜30体積%がより好ましい。
本発明の金属酸化物薄膜の製造方法は、上記以外のその他の工程を含んでもよい。
その他の工程としては、金属酸化物薄膜の製造工程として公知の工程を適宜採用することができる。
また、その他の工程として、金属酸化物薄膜に対し、補助的に紫外線照射やプラズマ照射を行う工程を採用することもできる。
<金属酸化物薄膜>
本発明の金属酸化物薄膜は、上記本発明の金属酸化物薄膜の製造方法によって製造された金属酸化物薄膜である。
本発明の金属酸化物薄膜に含まれる金属酸化物としては、酸化インジウム、酸化ガリウム、In−Ga−O、In−Ga−Zn−O、In−Zn−O、In−Sn−O、In−Sn−Zn−O、等が挙げられる。
本発明の金属酸化物薄膜中における、金属酸化物の含有量は、本発明の金属酸化物薄膜の全質量に対し、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が特に好ましい。
また、本発明の金属酸化物薄膜がIn及びGaの少なくとも一方を含む場合、金属酸化物薄膜に含まれる全金属元素中に占めるIn及びGaの合計の比率は、50atom%以上であることが好ましく、80atom%以上であることがより好ましい。
ここで、「全金属元素中に占めるIn及びGaの合計の比率」とは、金属酸化物薄膜がInを含みGaを含まない場合には、全金属元素中に占めるInの比率を指し、金属酸化物薄膜がGaを含みInを含まない場合には、全金属元素中に占めるGaの比率を指し、金属酸化物薄膜がGa及びInの両方を含む場合には、全金属元素中に占めるIn及びGaの比率を指す。
また、金属酸化物薄膜の膜厚には特に制限はないが、金属酸化物薄膜の平坦性及び生産性の観点から、5nm〜200nmが好ましく、5nm〜100nmがより好ましく、10nm〜80nmが更に好ましく、30nm〜70nmが特に好ましい。
また、本発明の金属酸化物薄膜は、パターニングされていない金属酸化物薄膜であってもよいし、パターニングされた金属酸化物薄膜であってもよい。パターニングの方法としては、エッチングやリフトオフ法等の公知の方法を用いることができる。
本発明の金属酸化物薄膜は、半導体薄膜又は導電体薄膜として好適に用いられるものである。
<電子素子>
本発明の電子素子は、上記本発明の金属酸化物薄膜を備える。
本発明の電子素子としては、例えば、薄膜トランジスタ、キャパシタ(コンデンサ)、ダイオード、センサー類(撮像素子など)等、半導体薄膜及び導電体薄膜の少なくとも一方を備えた各種の素子が挙げられる。
<薄膜トランジスタ>
以下、活性層(半導体層)として、本発明の金属酸化物薄膜を備えた薄膜トランジスタ(TFT)の実施形態について説明する。
尚、実施形態としてはトップゲート型の薄膜トランジスタについて記述するが、本発明の薄膜トランジスタはトップゲート型に限定されることなく、ボトムゲート型の薄膜トランジスタであってもよい。
本発明におけるTFTの素子構造は特に限定されず、ゲート電極の位置に基づいた、いわゆる逆スタガ構造(ボトムゲート型とも呼ばれる)及びスタガ構造(トップゲート型とも呼ばれる)のいずれの態様であってもよい。また、活性層とソース電極及びドレイン電極(適宜、「ソース・ドレイン電極」という。)との接触部分に基づき、いわゆるトップコンタクト型、ボトムコンタクト型のいずれの態様であってもよい。
トップゲート型とは、TFTが形成されている基板を最下層としたときに、ゲート絶縁膜の上側にゲート電極が配置され、ゲート絶縁膜の下側に活性層が形成された形態である。ボトムゲート型とは、ゲート絶縁膜の下側にゲート電極が配置され、ゲート絶縁膜の上側に活性層が形成された形態である。また、ボトムコンタクト型とは、ソース・ドレイン電極が活性層よりも先に形成されて活性層の下面がソース・ドレイン電極に接触する形態である。トップコンタクト型とは、活性層がソース・ドレイン電極よりも先に形成されて活性層の上面がソース・ドレイン電極に接触する形態である。
図1は、トップゲート構造でトップコンタクト型の本発明に係るTFTの一例を示す模式図である。図1に示すTFT10では、基板12の一方の主面上に活性層14として上述の本発明の金属酸化物薄膜が積層されている。そして、活性層14上にソース電極16及びドレイン電極18が互いに離間して設置され、更にこれらの上にゲート絶縁膜20と、ゲート電極22とが順に積層されている。
図2は、トップゲート構造でボトムコンタクト型の本発明に係るTFTの一例を示す模式図である。図2に示すTFT30では、基板12の一方の主面上にソース電極16及びドレイン電極18が互いに離間して設置されている。そして、活性層14として上述の本発明の金属酸化物薄膜と、ゲート絶縁膜20と、ゲート電極22と、が順に積層されている。
図3は、ボトムゲート構造でトップコンタクト型の本発明に係るTFTの一例を示す模式図である。図3に示すTFT40では、基板12の一方の主面上にゲート電極22と、ゲート絶縁膜20と、活性層14として本発明の金属酸化物薄膜と、が順に積層されている。そして、活性層14の表面上にソース電極16及びドレイン電極18が互いに離間して設置されている。
図4は、ボトムゲート構造でボトムコンタクト型の本発明に係るTFTの一例を示す模式図である。図4に示すTFT50では、基板12の一方の主面上にゲート電極22と、ゲート絶縁膜20と、が順に積層されている。そして、ゲート絶縁膜20の表面上にソース電極16及びドレイン電極18が互いに離間して設置され、更にこれらの上に、活性層14として本発明の金属酸化物薄膜が積層されている。
以下の実施形態としては図1に示すトップゲート型の薄膜トランジスタ10ついて主に説明するが、本発明の薄膜トランジスタはトップゲート型に限定されることなく、ボトムゲート型の薄膜トランジスタであってもよい。
(活性層)
本実施形態の薄膜トランジスタ10を製造する場合、まず、本発明の金属酸化物薄膜の製造方法により、基板12上に金属酸化物薄膜を形成する。
金属酸化物薄膜のパターニングは前述したインクジェット法、ディスペンサー法、凸版印刷法、又は凹版印刷法によって行ってもよく、金属酸化物薄膜の形成後にフォトリソグラフィー及びエッチングによりパターニングを行ってもよい。
フォトリソグラフィー及びエッチングによりパターン形成を行うには、金属酸化物薄膜を形成した後、活性層14として残存させる部分にフォトリソグラフィーによりレジストパターンを形成した後、塩酸、硝酸、希硫酸、又は、燐酸、硝酸及び酢酸の混合液等の酸溶液によりエッチングすることにより活性層14のパターンを形成する。
(保護層)
活性層14上にはソース・ドレイン電極16,18のエッチング時に活性層14を保護するための保護層(不図示)を形成することが好ましい。保護層の成膜方法に特に限定はなく、本発明の金属酸化物薄膜を形成した後、パターニングする前に形成してもよいし、本発明の金属酸化物薄膜のパターニング後に形成してもよい。
また、保護層としては金属酸化物層であってもよく、樹脂のような有機材料であってもよい。なお、保護層はソース電極16及びドレイン電極18(適宜「ソース・ドレイン電極」と記す)の形成後に除去しても構わない。
(ソース・ドレイン電極)
本発明の金属酸化物薄膜で形成される活性層14上にソース・ドレイン電極16,18を形成する。ソース・ドレイン電極16,18はそれぞれ電極として機能するように高い導電性を有するものを用い、Al,Mo,Cr,Ta,Ti,Au,Au等の金属、Al−Nd、Ag合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)、In−Ga−Zn−O等の金属酸化物導電膜等を用いて形成することができる。
ソース・ドレイン電極16,18を形成する場合、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式等の中から使用する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って成膜すればよい。
ソース・ドレイン電極16,18の膜厚は、成膜性、エッチング又はリフトオフ法によるパターニング性、導電性等を考慮すると、10nm以上1000nm以下とすることが好ましく、50nm以上100nm以下とすることがより好ましい。
ソース・ドレイン電極16,18は、導電膜を形成した後、例えば、エッチング又はリフトオフ法により所定の形状にパターニングして形成してもよく、インクジェット法等により直接パターン形成してもよい。この際、ソース・ドレイン電極16,18及びこれらの電極に接続する配線(不図示)を同時にパターニングすることが好ましい。
(ゲート絶縁膜)
ソース・ドレイン電極16,18及び配線(不図示)を形成した後、ゲート絶縁膜20を形成する。ゲート絶縁膜20は高い絶縁性を有するものが好ましく、例えばSiO、SiN、SiON、Al、Y、Ta、HfO等の絶縁膜、又はこれらの化合物を2種以上含む絶縁膜としてもよい。
ゲート絶縁膜20は、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式等の中から使用する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って成膜すればよい。
尚、ゲート絶縁膜20はリーク電流の低下及び電圧耐性の向上のための厚みを有する必要がある一方、ゲート絶縁膜20の厚みが大きすぎると駆動電圧の上昇を招いてしまう。ゲート絶縁膜20は材質にもよるが、ゲート絶縁膜20の厚みは10nm以上10μm以下が好ましく、50nm以上1000nm以下がより好ましく、100nm以上400nm以下が特に好ましい。
(ゲート電極)
ゲート絶縁膜20を形成した後、ゲート電極22を形成する。ゲート電極22は高い導電性を有するものを用い、Al,Mo,Cr,Ta,Ti,Au,Au等の金属、Al−Nd、Ag合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)、IGZO等の金属酸化物導電膜等を用いて形成することができる。ゲート電極22としてはこれらの導電膜を単層構造又は2層以上の積層構造として用いることができる。
ゲート電極22は、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式等の中から使用する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って成膜する。
ゲート電極22を形成するための金属膜の膜厚は、成膜性、エッチングやリフトオフ法によるパターニング性、導電性等を考慮すると、10nm以上1000nm以下とすることが好ましく、50nm以上200nm以下とすることがより好ましい。
成膜後、エッチング又はリフトオフ法により所定の形状にパターニングすることにより、ゲート電極22を形成してもよく、インクジェット法等により直接パターン形成してもよい。この際、ゲート電極22及びゲート配線(不図示)を同時にパターニングすることが好ましい。
以上で説明した本実施形態の薄膜トランジスタ10の用途には特に限定はないが、高い輸送特性を示すことから、例えば電気光学装置、具体的には、液晶表示装置、有機EL(Electro Luminescence)表示装置、無機EL表示装置等の表示装置における駆動素子、耐熱性の低い樹脂基板を用いたフレキシブルディスプレイの作製に好適である。
更に本発明により製造される薄膜トランジスタは、X線センサ、イメージセンサ等の各種センサ、MEMS(Micro Electro Mechanical System)等、種々の電子デバイスにおける駆動素子(駆動回路)として好適に用いられる。
<液晶表示装置>
本発明の一実施形態である液晶表示装置について、図5にその一部分の概略断面図を示し、図6に電気配線の概略構成図を示す。
図5に示すように、本実施形態の液晶表示装置100は、図1に示したトップゲート構造でトップコンタクト型のTFT10と、TFT10のパッシベーション層102で保護されたゲート電極22上に画素下部電極104およびその対向上部電極106で挟まれた液晶層108と、各画素に対応させて異なる色を発色させるためのR(赤)G(緑)B(青)のカラーフィルタ110とを備え、TFT10の基板12側およびRGBカラーフィルタ110上にそれぞれ偏光板112a、112bを備えた構成である。
また、図6に示すように、本実施形態の液晶表示装置100は、互いに平行な複数のゲート配線112と、該ゲート配線112と交差する、互いに平行なデータ配線114とを備えている。ここでゲート配線112とデータ配線114は電気的に絶縁されている。ゲート配線112とデータ配線114との交差部付近に、TFT10が備えられている。
TFT10のゲート電極22は、ゲート配線112に接続されており、TFT10のソース電極16はデータ配線114に接続されている。また、TFT10のドレイン電極18はゲート絶縁膜20に設けられたコンタクトホール116を介して(コンタクトホール116に導電体が埋め込まれて)画素下部電極104に接続されている。この画素下部電極104は、接地された対向上部電極106とともにキャパシタ118を構成している。
<有機EL表示装置>
本発明の一実施形態に係るアクティブマトリックス方式の有機EL表示装置について、図7に一部分の概略断面図を示し、図8に電気配線の概略構成図を示す。
本実施形態のアクティブマトリックス方式の有機EL表示装置200は、図1に示したトップゲート構造のTFT10が、パッシベーション層202を備えた基板12上に、駆動用TFT10aおよびスイッチング用TFT10bとして備えられ、TFT10a,10b上に下部電極208および上部電極210に挟まれた有機発光層212からなる有機EL発光素子214を備え、上面もパッシベーション層216により保護された構成となっている。
また、図8に示すように、本実施形態の有機EL表示装置200は、互いに平行な複数のゲート配線220と、該ゲート配線220と交差する、互いに平行なデータ配線222および駆動配線224とを備えている。ここで、ゲート配線220とデータ配線222、駆動配線224とは電気的に絶縁されている。スイッチング用TFT10bのゲート電極22は、ゲート配線220に接続されており、スイッチング用TFT10bのソース電極16はデータ配線222に接続されている。また、スイッチング用TFT10bのドレイン電極18は駆動用TFT10aのゲート電極22に接続されるとともに、キャパシタ226を用いることで駆動用TFT10aをオン状態に保つ。駆動用TFT10aのソース電極16は駆動配線224に接続され、ドレイン電極18は有機EL発光素子214に接続される。
なお、図7に示した有機EL表示装置において、上部電極210を透明電極としてトップエミッション型としてもよいし、下部電極208およびTFTの各電極を透明電極とすることによりボトムエミッション型としてもよい。
<X線センサ>
本発明の一実施形態であるX線センサについて、図9にその一部分の概略断面図を示し、図10にその電気配線の概略構成図を示す。
本実施形態のX線センサ300は基板12上に形成されたTFT10およびキャパシタ310と、キャパシタ310上に形成された電荷収集用電極302と、X線変換層304と、上部電極306とを備えて構成される。TFT10上にはパッシベーション膜308が設けられている。
キャパシタ310は、キャパシタ用下部電極312とキャパシタ用上部電極314とで絶縁膜316を挟んだ構造となっている。キャパシタ用上部電極314は絶縁膜316に設けられたコンタクトホール318を介し、TFT10のソース電極16およびドレイン電極18のいずれか一方(図9においてはドレイン電極18)と接続されている。
電荷収集用電極302は、キャパシタ310におけるキャパシタ用上部電極314上に設けられており、キャパシタ用上部電極314に接している。
X線変換層304はアモルファスセレンからなる層であり、TFT10およびキャパシタ310を覆うように設けられている。
上部電極306はX線変換層304上に設けられており、X線変換層304に接している。
図10に示すように、本実施形態のX線センサ300は、互いに平行な複数のゲート配線320と、ゲート配線320と交差する、互いに平行な複数のデータ配線322とを備えている。ここでゲート配線320とデータ配線322は電気的に絶縁されている。ゲート配線320とデータ配線322との交差部付近に、TFT10が備えられている。
TFT10のゲート電極22は、ゲート配線320に接続されており、TFT10のソース電極16はデータ配線322に接続されている。また、TFT10のドレイン電極18は電荷収集用電極302に接続されており、電荷収集用電極302はキャパシタ310に接続されている。
本実施形態のX線センサ300において、X線は図9中、上部電極306側から入射してX線変換層304で電子−正孔対を生成する。X線変換層304に上部電極306によって高電界を印加しておくことにより、生成した電荷はキャパシタ310に蓄積され、TFT10を順次走査することによって読み出される。
なお、上記実施形態の液晶表示装置100、有機EL表示装置200、及びX線センサ300においては、トップゲート構造のTFTを備えるものとしたが、TFTはこれに限定されず、図2〜図4に示す構造のTFTであってもよい。
以下に実施例を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
〔実施例1〕
<金属錯体の合成>
Organometallics, 2003, 22, 1690に記載された方法に準拠し、上記金属錯体1(In(acac))を合成した。
<金属錯体の昇華温度の測定>
SII社製のTG−DTA6200を用い、大気圧下、金属錯体1のTG−DTAを行った。このTG−DTAにおいて、重量減少率が80%となったときの温度を、金属錯体(例示化合物1)の昇華温度とした。
金属錯体1の昇華温度を下記表1に示す。
<金属錯体溶液(金属錯体組成物)の調製>
金属錯体として上記金属錯体1を、ルイス塩基性添加剤としてトリエチルアミン(分子量101)を、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)をそれぞれ用い、金属錯体溶液を調製した。
詳細には、金属錯体1(412mg)及びトリエチルアミン(418μL)に、常温(25℃。以下同じ。)のNMPを加えて振動撹拌することにより、金属錯体組成物として、金属錯体溶液(10mL)を得た。
この金属錯体溶液において、金属錯体1の濃度は0.1mol/Lであり、ルイス塩基の濃度は0.3mol/Lである。
<ルイス塩基性添加剤の共役酸のpKa>
上記ルイス塩基性添加剤(トリエチルアミン)の共役酸のpKaを以下のように分類した。結果を下記表1に示す。ここで、共役酸のpKaは、25℃のジメチルスルホキシド中で測定された値である。
表1におけるpKaの分類は以下の通りである。
−pKaの分類−
A: ルイス塩基性添加剤の共役酸のpKaが7以上12以下である。
B: ルイス塩基性添加剤の共役酸のpKaが3以上7未満である。
<金属酸化物薄膜の作製>
−塗布膜形成工程−
25mm四方の熱酸化膜付きp型Si基板上に、上記金属錯体溶液を、3000rpmの回転速度で60秒間スピンコートし、次いで150℃に加熱したホットプレート上で5分間乾燥させる操作を5回繰り返すことにより、塗布膜として、膜厚40nm程度の金属錯体薄膜(有機インジウム錯体薄膜)を得た。
−加熱処理(焼成)−
上記金属錯体薄膜に対し、下記条件の加熱処理(焼成)を施した。
加熱処理は、高速熱処理装置(Allwin21社製AW−410)を用いて、50℃/secの昇温速度で250℃の温度まで昇温し、次いで30分間保持し、その後、炉内で冷却することにより行った。
−−加熱処理の条件−−
・加熱温度: 250℃
・加熱雰囲気: 酸素濃度20体積%の酸素及びアルゴン雰囲気(体積基準の流量比〔O/(Ar+O)〕が0.2である雰囲気)
・雰囲気ガスの総流量: 2L/min
−X線回折測定−
加熱処理後の薄膜について、測定装置としてリガク社製のRINT−Ultima IIIを用い、X線回折測定を行った。
X線回折測定は、入射角を0.35°に固定した2θ測定とした。
X線回折測定の結果、酸化インジウムの存在を示す特徴的なピークが確認され、加熱処理後の薄膜が、酸化インジウム薄膜(金属酸化物薄膜)であることが確認された。
<簡易型TFTの作製及び評価>
上記加熱処理後の薄膜(酸化インジウム薄膜)上に、メタルマスクを用いた蒸着(パターン成膜)により、膜厚50nmのTi膜である、ソース電極及びドレイン電極を形成した。ここで、ソース電極及びドレイン電極のサイズ(電極幅)は各々1mmとし、両電極間の距離は0.2mmとした。
以上により、簡易型TFTを得た。
簡易型TFTについて、半導体パラメータ・アナライザー4156C(アジレントテクノロジー社製)を用い、トランジスタ特性(Vg−Id特性)の測定を行った。
Vg−Id特性の測定は、ドレイン電圧(Vd)を+1Vに固定し、ゲート電圧(Vg)を−15V〜+15Vの範囲内で変化させ、各ゲート電圧(Vg)におけるドレイン電流(Id)を測定することにより行った。
以上のトランジスタ特性(Vg−Id特性)の結果から、移動度を求めた。
<移動度の標準偏差及び相対移動度の算出>
本実施例1では、以上の金属酸化物薄膜を10枚作製し、10枚の金属酸化物薄膜をそれぞれ用い、10個の簡易型TFTを作製した。
上記10個の簡易型TFTについて、それぞれ、トランジスタ特性(Vg−Id特性)を測定し、移動度を求めた。
上記10個の簡易型TFTにおける移動度の平均値を平均移動度とし、更に、この平均移動度を100としたときの標準偏差(以下、「移動度の標準偏差」ともいう)を求めた。
実施例1の移動度の標準偏差を下記表1に示す。
後述の比較例1の簡易型TFTの平均移動度を100としたときの実施例1の平均移動度を、相対移動度として求めた。
実施例1の相対移動度を下記表1に示す。
〔実施例2〜10、比較例1〜3〕
実施例1において、金属錯体の種類、金属錯体の濃度、ルイス塩基性添加剤の種類、ルイス塩基性添加剤の濃度、及び溶媒の組み合わせを、下記表1に示す組み合わせに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を下記表1に示す。
また、実施例2〜10及び比較例1〜3における加熱処理(焼成)後の薄膜について、それぞれX線回折測定を行ったところ、いずれの例の薄膜においても酸化インジウムの存在を示す特徴的なピークが確認された。即ち、いずれの例の薄膜も、酸化インジウム薄膜(金属酸化物薄膜)であることが確認された。
−表1の説明−
・金属錯体1 ・・・ In(acac)
・金属錯体2 ・・・ トリフルオロメタンスルホン酸インジウム
・NMP ・・・ N−メチル−2−ピロリドン
表1に示すように、昇華温度が150℃〜450℃である金属錯体と、分子量が73〜175であるルイス塩基性添加剤と、を用いた実施例1〜10では、ルイス塩基性添加剤を用いなかった比較例1と比較して、移動度の標準偏差が小さく、移動度のバラつきが抑制されていた。この理由は、実施例1〜10では、上記ルイス塩基性添加剤が金属錯体に配位することによって金属錯体の分子量が増大し、その結果、加熱処理時の金属錯体の昇華が抑制されたため、と考えられる。
また、実施例1〜10では、相対移動度の低下が抑制されていた。
これに対し、分子量が73未満であるルイス塩基性添加剤を用いた比較例2では、実施例1〜10と比較して、移動度の標準偏差が大きく、移動度のバラつきが顕著であった。この理由は、比較例2では、ルイス塩基性添加剤の分子量が小さすぎるために、ルイス塩基性添加剤が金属錯体に配位することによる効果、即ち、金属錯体の昇華を抑制する効果が不十分であったためと考えられる。
また、実施例1〜10と比較して、分子量が175を超えるルイス塩基性添加剤を用いた比較例3では、移動度のバラつき抑制の効果が不十分であっただけでなく、相対移動度が低下した。この理由は、ルイス塩基性添加剤の分子量が大きすぎるために、ルイス塩基性添加剤が薄膜中に残留してしまったためと考えられる。
また、実施例1及び2と、実施例3及び4と、の対比から、ルイス塩基性添加剤の共役酸のpKaが「A」である(即ち、pKaが7以上12以下である)と、移動度のバラつきが特に低減されることが確認された。
また、実施例8と、実施例9と、の対比から、金属錯体に対するルイス塩基性添加剤の含有量比が100mol%以上であると、移動度のバラつきを抑制する効果がより顕著となることが確認された。
また、実施例10と、実施例1と、の対比から、金属錯体に対するルイス塩基性添加剤の含有量比が300mol%以下であると、相対移動度をより高く維持できることが確認された。
10,30,40,50 薄膜トランジスタ
12 基板
14 活性層
16 ソース電極
18 ドレイン電極
20 ゲート絶縁膜
22 ゲート電極
100 液晶表示装置
200 有機EL表示装置
300 X線センサ

Claims (17)

  1. 昇華温度が150℃〜450℃である金属錯体と、分子量が73〜175であるルイス塩基性添加剤と、を含む金属錯体組成物。
  2. 前記金属錯体が、一分子中に、In3+及びGa3+の少なくとも一方を含む請求項1に記載の金属錯体組成物。
  3. 前記金属錯体が、一分子中に、アニオン配位子を含む請求項1又は請求項2に記載の金属錯体組成物。
  4. 前記ルイス塩基性添加剤の共役酸のpKaが、3〜12である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の金属錯体組成物。
  5. 前記ルイス塩基性添加剤の共役酸のpKaが、7〜12である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の金属錯体組成物。
  6. 前記金属錯体に対する前記ルイス塩基性添加剤の含有量比が、100mol%〜300mol%である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の金属錯体組成物。
  7. 前記アニオン配位子が、下記一般式(1)又は下記一般式(2)で表されるアニオン配位子である請求項3に記載の金属錯体組成物。

    一般式(1)中、R11、R12、及びR13は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す。
    一般式(2)中、R21は、炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基を示す。
  8. 前記アニオン配位子が、前記一般式(1)で表されるアニオン配位子である請求項7に記載の金属錯体組成物。
  9. 前記ルイス塩基性添加剤が、アミン化合物、アニリン化合物、及び含窒素複素環化合物からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の金属錯体組成物。
  10. 更に、溶媒を含む請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の金属錯体組成物。
  11. 請求項10に記載の金属錯体組成物を塗布し、乾燥させて塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、
    前記塗布膜を加熱処理する加熱処理工程と、
    を有する金属酸化物薄膜の製造方法。
  12. 請求項11に記載の金属酸化物薄膜の製造方法によって製造された金属酸化物薄膜。
  13. 請求項12に記載の金属酸化物薄膜を備えた電子素子。
  14. 請求項12に記載の金属酸化物薄膜を備えた薄膜トランジスタ。
  15. 請求項14に記載の薄膜トランジスタを備えた表示装置。
  16. 請求項14に記載の薄膜トランジスタを備えたイメージセンサ。
  17. 請求項14に記載の薄膜トランジスタを備えたX線センサ。
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WO2020226045A1 (ja) * 2019-05-09 2020-11-12 国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学 薄膜トランジスタ及びその製造方法
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