以下、本発明の第1実施形態である車両用灯具について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1実施形態である車両用灯具10の縦断面図である。
図1に示すように、本実施形態の車両用灯具10は、励起光源12、集光レンズ14で集光された励起光源12からの励起光Rayを二次元的に(水平方向及び垂直方向に)走査する光偏光器201、光偏光器201が二次元的に(水平方向及び垂直方向に)走査する励起光Rayにより所定配光パターンに対応する二次元像が描画される波長変換部材18、波長変換部材18に描画された二次元像を前方に投影する投影レンズ20等を備えた車両用前照灯として構成されている。
光偏光器201、波長変換部材18及び投影レンズ20は、図1に示すように、光偏光器201が二次元的に(水平方向及び垂直方向に)走査する励起光源12からの励起光Rayが、波長変換部材18の後面18aから前面18bに透過するように配置されている。すなわち、光偏光器201が波長変換部材18に対して後方側に配置され、投影レンズ20が波長変換部材18に対して前方側に配置されている。このような配置は透過型と称される。この場合、励起光源12は、波長変換部材18に対して後方側又は前方側のいずれに配置されていてもよい。なお、図1においては、投影レンズ20が4枚のレンズ20A〜20D群からなる投影レンズとして構成されているが、投影レンズ20は1枚の非球面レンズからなる投影レンズとして構成されていてもよい。
なお、光偏光器201、波長変換部材18及び投影レンズ20は、図2に示すように、光偏光器201が二次元的に(水平方向及び垂直方向に)走査する励起光源12からの励起光Rayが、波長変換部材18の前面18bに入射するように配置されていてもよい。すなわち、光偏光器201及び投影レンズ20がいずれも波長変換部材18に対して前方側に配置されていてもよい。このような配置は反射型と称される。この場合、励起光源12は、波長変換部材18に対して後方側又は前方側のいずれに配置されていてもよい。この図2に示す反射型の配置によれば、図1に示す透過型の配置と比べ、車両用灯具10の基準軸AX方向の寸法を短くできるという利点がある。なお、図2においては、投影レンズ20が1枚の非球面レンズからなる投影レンズとして構成されているが、投影レンズ20は複数枚のレンズ群からなる投影レンズとして構成されていてもよい。
励起光源12は、例えば、励起光として青色域(例えば、発光波長が450nm)のレーザー光を放出するレーザーダイオード(LD)等の半導体発光素子である。なお、励起光源12は、近紫外域(例えば、発光波長が405nm)のレーザー光を放出するレーザーダイオード等の半導体発光素子であってもよい。また、励起光源12は、LEDであってもよい。励起光源12からの励起光は、集光レンズ14で集光されて(例えばコリメートされて)光偏光器201(ミラー部)に入射する。
波長変換部材18は、光偏光器201が二次元的に(水平方向及び垂直方向に)走査する励起光としてのレーザー光を受けて当該レーザー光の少なくとも一部を異なる波長の光に変換する外形が矩形形状の板状(又は層状)の波長変換部材である。波長変換部材18は、図1においては、その後面18aの外形に沿った周囲が枠体22に固定されて、投影レンズ20の焦点F近傍に配置されている。なお、図2においては、波長変換部材18は、その後面18aが支持体46に固定されて、投影レンズ20の焦点F近傍に配置されている。
例えば、励起光源12として青色域のレーザー光を放出するレーザーダイオード(LD)を用いる場合、波長変換部材18として青色域のレーザー光によって励起されて黄色光を発光する外形が矩形形状の板状(又は層状)の蛍光体が用いられる。波長変換部材18には、光偏光器201が二次元的に(水平方向及び垂直方向に)走査する青色域のレーザー光により所定配光パターンに対応する二次元像が白色の像として描画される。二次元像が白色の像として描画されるのは、青色域のレーザー光が照射された場合、波長変換部材18は、これを透過(通過)する青色域のレーザー光と青色域のレーザー光による発光(黄色光)との混色による白色光(疑似白色光)を放出することによるものである。
一方、励起光源12として近紫外域のレーザー光を放出するレーザーダイオード(LD)を用いる場合、波長変換部材18として近紫外域のレーザー光によって励起されて赤、緑、青の3色の光を発光する外形が矩形形状の板状(又は層状)の蛍光体が用いられる。波長変換部材18には、光偏光器201が二次元的に(水平方向及び垂直方向に)走査する近紫外域のレーザー光により所定配光パターンに対応する二次元像が白色の像として描画される。二次元像が白色の像として描画されるのは、近紫外域のレーザー光が照射された場合、波長変換部材18は、近紫外域のレーザー光による発光(赤、緑、青の3色の光)の混色による白色光(疑似白色光)を放出することによるものである。
投影レンズ20は、図1に示すように、像面が平面になるように収差(像面湾曲)が補正され(かつ色収差が補正され)た4枚のレンズ20A〜20D群からなる投影レンズとして構成されている。この場合、波長変換部材18は、平板形状のものが用いられ、像面(平面)に沿って配置される。投影レンズ20の焦点Fは、波長変換部材18近傍に位置している。この投影レンズ20により、一枚の凸レンズを用いる場合と比べ、所定配光パターンに対する収差の影響を除去することができる。また、波長変換部材18が平板形状であるため、波長変換部材18が曲面形状である場合と比べ、その製造が容易となる。さらに、波長変換部材18が平板形状であるため、波長変換部材18が曲面形状である場合と比べ、二次元像の描画が容易となる。
なお、投影レンズ20は、像面が平面になるように収差(像面湾曲)が補正されていない1枚の非球面レンズからなる投影レンズとして構成されていてもよい。この場合、波長変換部材18は、像面湾曲に対応して湾曲した形状のものが用いられ、像面湾曲に沿って配置される。投影レンズ20の焦点Fは、波長変換部材18近傍に位置している。
投影レンズ20は、波長変換部材18に描画される所定配光パターンに対応する二次元像を前方に投影して、車両用灯具10に正対した仮想鉛直スクリーン(車両用灯具10の前方約25mの位置に配置されている)上に、所定配光パターン(ロービーム用配光パターン又はハイビーム用配光パターン等)を形成する。
光偏光器201は、集光レンズ14で集光(例えばコリメート)された励起光源12からの励起光Rayを二次元的に(水平方向及び垂直方向に)走査する。
光偏光器201は、例えば、MEMSスキャナである。光偏光器の駆動方式には大別して圧電方式、静電方式、電磁方式があるが、いずれの方式であってもよい。本実施形態では、圧電方式の光偏光器を代表して説明する。
圧電方式には大別して1軸非共振・1軸共振タイプ、2軸非共振タイプ、2軸共振タイプがあるが、いずれの方式であってもよい。
まず、1軸非共振・1軸共振タイプの光偏光器201について説明する。
<1軸非共振・1軸共振タイプ>
図3は、1軸非共振・1軸共振タイプの光偏光器201の斜視図である。
図3に示すように、1軸非共振・1軸共振タイプの光偏光器201は、ミラー部202(MEMSミラーとも称される)と、ミラー部202をトーションバー211a、211bを介して駆動する第1圧電アクチュエータ203、204と、第1圧電アクチュエータ203、204を支持する可動枠212と、可動枠212を駆動する第2圧電アクチュエータ205、206と、第2圧電アクチュエータ205、206を支持する台座215とを備えている。
ミラー部202は円形形状で、その両端から外側へ延びたトーションバー211a、211bが連結されている。また、ミラー部202を囲むように、半円弧形状の第1圧電アクチュエータ203、204が空隙を隔てて設けられている。第1圧電アクチュエータ203、204は、それぞれの一方の端部が一方のトーションバー211aを挟んで対向して連結され、それぞれの他方の端部が他方のトーションバー211bを挟んで対向して連結されている。また、第1圧電アクチュエータ203、204は、その円弧部の中心位置の外側が、ミラー部202と第1圧電アクチュエータ203、204とを囲むように設けられた可動枠212に連結されて支持されている。
可動枠212は矩形形状で、トーションバー211a、211bに直交する方向の1対の両側が、可動枠212を挟んで対向した第2圧電アクチュエータ205、206の先端部にそれぞれ連結されている。また、第2圧電アクチュエータ205、206は、その基端部が、可動枠212と第2圧電アクチュエータ205、206とを囲むように設けられた台座215上の支持体基端部214に連結されて支持されている。
第1圧電アクチュエータ203、204は、それぞれ、図4(a)に示すように、支持体203a、204aと下部電極203b、204bと圧電体203c、204cと上部電極203d、204dとを有する1つの圧電カンチレバーを備えている。
図3に示すように、第2圧電アクチュエータ205、206は、それぞれ、6つの圧電カンチレバー205A〜205F、206A〜206Fがそれぞれの端部において折り返すように連結されて、全体として蛇腹状の圧電アクチュエータを構成している。各々の圧電カンチレバー205A〜205F、206A〜206Fは、第1圧電アクチュエータ203、204が有する圧電カンチレバーと同様の構成とされている。
次に、ミラー部202の動作(第1軸X1周りの揺動)について説明する。
図4(a)(b)には、図3に示すAA断面図が示されている。図4(a)は第1圧電アクチュエータ203、204に電圧を印加していない状態を示し、図4(b)は電圧を印加している状態を示す。
図4(b)に示すように、第1圧電アクチュエータ203、204の上部電極203d、204dと下部電極203b、204bとの間にそれぞれ互いに逆極性の電圧±Vdを印加して駆動させると、互いに逆方向に屈曲変形する。この屈曲変形により、トーションバー211bが図4(b)に示すように回転する。トーションバー211aも同様である。このトーションバー211a、211bの回転に応じてミラー部201が可動枠212に対して第1軸X1を中心に揺動する。
次に、ミラー部202の動作(第2軸X2周りの揺動)について説明する。
図5(a)は第2圧電アクチュエータ205、206に電圧を印加していない状態を示し、図5(b)は電圧を印加している状態を示す。
図5(b)に示すように、第2圧電アクチュエータ206に電圧を印加して、可動枠212側から奇数番目の圧電カンチレバー206A、206C、206Eを上方向に屈曲変形させると共に、偶数番目の圧電カンチレバー206B、206D、206Fを下方向に屈曲変形させる。これにより、圧電アクチュエータ206では、各圧電カンチレバー206A〜206Fの屈曲変形の大きさを加算した大きさの角度変位が発生する。第2圧電アクチュエータ205についても同様である。この角度変位により、可動枠212(及びこれに保持されたミラー部202)が台座215に対して第1軸X1と直交する第2軸X2を中心に回転する。なお、第1軸X1と第2軸X2は、ミラー部202の中心(重心)において直交している。
ミラー部202のミラー部支持体、トーションバー211a、211b、第1圧電アクチュエータ203、204の支持体、可動枠212、第2圧電アクチュエータ205、206の支持体、台座215上の支持体基端部214は、シリコン基板を形状加工することにより1枚の支持体として一体的に形成されている。さらに、台座215もシリコン基板から形成され、シリコン基板を形状加工することにより前記1枚の支持体と一体的に形成されている。このようにシリコン基板を形状加工する手法については、例えば、特開2008−40240号公報に詳細に記載されている。また、ミラー部202と可動枠212との間には空隙が設けられ、ミラー部202が可動枠212に対して第1軸X1を中心に所定角度まで揺動可能となっている。また、可動枠212と台座215との間には空隙が設けられ、可動枠212(及びこれに支持されたミラー部202)が台座215に対して第2軸X2を中心に所定角度まで揺動可能となっている。
光偏光器201は、各々の圧電アクチュエータ203〜206に駆動電圧を印加するための電極セット207、208を備えている。
一方の電極セット207は、第1圧電アクチュエータ203に駆動電圧を印加するための上部電極パッド207aと、第2圧電アクチュエータ205の先端部から奇数番目の圧電カンチレバー205A、205C、205Eに駆動電圧を印加するための第1上部電極パッド207bと、第2圧電アクチュエータ205の先端部から偶数番目の圧電カンチレバー205B、205D、205Fに駆動電圧を印加するための第2上部電極パッド207cと、上部電極パッド207a〜207cの共通の下部電極として用いられる共通下部電極207dとを含んでいる。
同様に、他方の電極セット208は、第1圧電アクチュエータ204に駆動電圧を印加するための上部電極パッド208aと、第2圧電アクチュエータ206の先端部から奇数番目の圧電カンチレバー206A、206C、206Eに駆動電圧を印加するための第1上部電極パッド208bと、第2圧電アクチュエータ205の先端部から偶数番目の圧電カンチレバー206B、206D、206Fに駆動電圧を印加するための第2上部電極パッド208cと、これらの3つの上部電極パッド208a〜208cの共通の下部電極として用いられる共通下部電極208dとを含んでいる。
本実施形態では、第1圧電アクチュエータ203に駆動電圧として第1交流電圧を印加し、第1圧電アクチュエータ204に駆動電圧として第2交流電圧を印加する。第1交流電圧と第2交流電圧とは、互いに逆位相或いは位相のずれた交流電圧(例えば正弦波)とする。その際、トーションバー211a、211bを含むミラー部202の機械的な共振周波数(第一次共振点)付近の周波数の交流電圧を印加して、第1圧電アクチュエータ203、204を共振駆動させる。これにより、ミラー部202が可動枠212に対して第1軸X1を中心に往復揺動し、ミラー部202に入射する励起光源12からの励起光としてのレーザー光が第1方向(例えば水平方向)に走査される。
また、第2圧電アクチュエータ205、206にそれぞれ駆動電圧として第3交流電圧を印加する。その際、ミラー部202、トーションバー211a、211b、及び第1圧電アクチュエータ203、204を含む可動枠212の機械的な共振周波数(第一次共振点)より小さい所定値以下の周波数の交流電圧を印加して、第2圧電アクチュエータ205、206を非共振駆動させる。これにより、ミラー部202が台座215に対して第2軸X2を中心に往復揺動し、ミラー部202に入射する励起光源12からの励起光としてのレーザー光が第2方向(例えば垂直方向)に走査される。
1軸非共振・1軸共振タイプの光偏光器201は、第1軸X1が鉛直面に含まれ、第2軸X2が水平面に含まれた状態で配置されている。光偏光器201をこのように配置することで、車両用前照灯において求められる、水平方向にワイドで垂直方向に薄い所定配光パターン(所定配光パターンに対応する二次元像)を容易に形成(描画)することができる。その理由は次のとおりである。
すなわち、1軸非共振・1軸共振タイプの光偏光器201においては、ミラー部202の第2軸X2を中心とする最大振り角より、ミラー部202の第1軸X1を中心とする最大振り角が大きくなる。例えば、ミラー部202の第1軸X1を中心とする往復揺動が共振駆動によるものであるため、ミラー部202の第1軸X1を中心とする最大振り角が図6(a)に示すように10〜20度となるのに対して、ミラー部202の第2軸X2を中心とする往復揺動が非共振駆動によるものであるため、ミラー部202の第2軸X2を中心とする最大振り角が図6(b)に示すように7度程度となる。その結果、1軸非共振・1軸共振タイプの光偏光器201を上記のように配置することで、車両用前照灯において求められる、水平方向にワイドで垂直方向に薄い所定配光パターン(所定配光パターンに対応する二次元像)を容易に形成(描画)することができる。
以上のように各々の圧電アクチュエータ203〜206の駆動により、励起光源12からの励起光としてのレーザー光が二次元的に(水平方向及び垂直方向に)走査される。
光偏光器201は、図3に示すように、トーションバー211aのミラー部202側の付け根に配置されたHセンサ220、第2圧電アクチュエータ205、206の基端部側(例えば、圧電カンチレバー205F、206F)に配置されたVセンサ222を備えている。
Hセンサ220は、第1圧電アクチュエータ203、204が有する圧電カンチレバーと同様の圧電素子(PZT)で、第1圧電アクチュエータ203、204の屈曲変形(変位量)に応じた電圧を発生する。Vセンサ222は、第2圧電アクチュエータ205、206が有する圧電カンチレバーと同様の圧電素子(PZT)で、第2圧電アクチュエータ205、206の屈曲変形(変位量)に応じた電圧を発生する。
光偏光器201においては、温度変化により光偏光器201を構成する材料の固有振動数が変化することに起因して、図19に示すように、ミラー部202の第1軸X1を中心とする機械振り角(半角)が変化する。これは、次のようにして抑制することができる。例えば、駆動信号(第1圧電アクチュエータ203、204に印加する第1交流電圧、第2交流電圧)とセンサ信号(Hセンサ220の出力)に基づいて、ミラー部202の第1軸X1を中心とする機械振り角(半角)が目標値となるように、第1圧電アクチュエータ203、204に印加する第1交流電圧、第2交流電圧の周波数(又は第1交流電圧、第2交流電圧自体)をフィードバック制御することで、抑制することができる。
次に、本出願の発明者らが検討した、第1圧電アクチュエータ203、204に印加する第1交流電圧、第2交流電圧の周波数として望ましい周波数、第2圧電アクチュエータ205、206に印加する第3交流電圧として望ましい周波数について説明する。
本出願の発明者らは、実験を行いその結果を検討した結果、上記構成の1軸非共振・1軸共振タイプの光偏光器201においては、第1圧電アクチュエータ203、204に印加する第1交流電圧、第2交流電圧の周波数(以下水平走査周波数fHと称する)としては、約4〜30kHz(正弦波)が望ましく、27kHz±3kHz(正弦波)がより望ましいとの結論に達した。
また、本出願の発明者らは、ハイビーム用配光パターンを考慮すると、鉛直軸Vに対して左15度、右15度の範囲において水平方向に0.1度(又はそれ以下)刻みでオンオフ(点灯非点灯)できるように、水平方向の解像度(画素数)を300(又はそれ以上)とするのが望ましいとの結論に達した。
また、本出願の発明者らは、実験を行いその結果を検討した結果、上記構成の1軸非共振・1軸共振タイプの光偏光器201においては、第2圧電アクチュエータ205、206に印加する第3交流電圧の周波数(以下垂直走査周波数fVと称する)としては、55Hz以上(鋸歯状波)が望ましく、55Hz〜120Hz(鋸歯状波)がより望ましく、55Hz〜100Hz(鋸歯状波)がさらに望ましく、特に、70Hz±10Hz(鋸歯状波)が望ましいとの結論に達した。
また、予め定められた通常走行速度(例えば時速0km〜150km)を考慮すると、第2圧電アクチュエータ205、206に印加する第3交流電圧の周波数(垂直走査周波数fV)としては、50Hz以上(鋸歯状波)が望ましく、50Hz〜120Hz(鋸歯状波)がより望ましく、50Hz〜100Hz(鋸歯状波)がさらに望ましく、特に、70Hz±10Hz(鋸歯状波)が望ましいとの結論に達した。なお、フレームレートは垂直走査周波数fVに依存するため、垂直走査周波数fVが70Hzの場合、フレームレートは70fpsとなる。
垂直走査周波数fVが55Hz以上の場合、所定配光パターンは、仮想鉛直スクリーン上において、フレームレートが55fps以上の画像(動画又は映像ともいえる)として形成される。同様に、垂直走査周波数fVが55Hz〜120Hzの場合、所定配光パターンは、仮想鉛直スクリーン上において、フレームレートが55fps以上120fps以下の画像(動画又は映像ともいえる)として形成される。同様に、垂直走査周波数fVが55Hz〜100Hzの場合、所定配光パターンは、仮想鉛直スクリーン上において、フレームレートが55fps以上100fps以下の画像(動画又は映像ともいえる)として形成される。同様に、垂直走査周波数fVが70Hz±10Hzの場合、所定配光パターンは、仮想鉛直スクリーン上において、フレームレートが70fps±10fpsの画像(動画又は映像ともいえる)として形成される。垂直走査周波数fVが50Hz以上、50Hz〜120Hz、50Hz〜100Hz、70Hz±10Hzの場合も同様である。
垂直方向の解像度(垂直走査線数)は、次の式で求められる。
垂直方向の解像度(垂直走査線数)=2×(垂直走査の利用時間係数:KV)×fH/fV
この式に基づけば、例えば、水平走査周波数fH=25kHz、垂直走査周波数fV=70Hz、垂直走査の利用時間係数KV=0.9〜0.8の場合、垂直走査線数は、2×25kHz/70Hz*0.9〜0.85=約600本となる。
以上の望ましい垂直走査周波数fVは、従来、車両用前照灯等の車両用灯具において全く用いられていなかった周波数であり、本願の発明者らが行った実験の結果、見出したものである。すなわち、従来、一般照明分野(自動車用前照灯等の車両用灯具以外)においてちらつきを抑制するには100Hz以上の周波数を用いるのが技術常識とされ、車両用前照灯等の車両用灯具においてちらつきを抑制するには220Hz以上の周波数を用いるのが技術常識とされており、以上の望ましい垂直走査周波数fVは、従来、車両用前照灯等の車両用灯具において全く用いられていなかった。
次に、従来、一般照明分野(自動車用前照灯等の車両用灯具以外)においてちらつきを抑制するには100Hz以上の周波数を用いるのが技術常識とされていた点について、参考例を用いて説明する。
例えば、電気用品の技術上の基準を定める省令(昭和37年通商産業省令第85号)においては、「光出力はちらつきを感じないものであること」とされており、これは、「繰り返し周波数が100Hz以上で光出力に欠落部がない又は繰り返し周波数が500Hz以上のものは「ちらつきを感じないもの」と解釈」するとされている。なお、この省令は、自動車用前照灯等の車両用灯具を対象としていない。
また、日経新聞(2010/8/26)においては、「・・・交流の周波数は50Hz。整流器を介した電圧は1秒間に100回の頻度でオンとオフを繰り返していた。電圧の変化による明るさの変化は、蛍光灯でも起こる。ただし、LED照明は蛍光灯のように残光時間がなく、明るさが瞬時に変わる。その結果、ちらつきを感じやすくなる。・・・」のように、周波数が100Hz以上でちらつきを感じやすくなることが紹介されている。
また、一般に、蛍光灯においては、フリッカ(ちらつき)を感じなくなる明滅周期は100Hz〜120Hz(電源周期で50Hz〜60Hz)とされている。
次に、従来、車両用前照灯等の車両用灯具においてちらつきを抑制するには220Hz以上の周波数(又は220fps以上のフレームレート)を用いるのが技術常識とされていた点について、参考例を用いて説明する。
一般に、車両用前照灯に用いられるHID(メタルハライドランプ)においては、その点灯条件は、矩形波350〜500Hzとされている。これは、800Hz以上では音のノイズが聞こえる、周波数が低いとHIDの発光効率が悪い、150Hz以下だと電極の加熱摩耗への影響で寿命が低下する等の理由によるもので、好ましくは250Hz以上とされている。
また、ISAL2013論文、タイトル「Glare-free High Beam with Beam-scanning」(第340〜347頁)においては、車両用前照灯等の車両用灯具における周波数として、220Hz以上、300〜400Hz以上が推奨されている。同様に、ISAL2013論文、タイトル「Flickering effects of vehicle exterior light systems and consequences」(第262〜266頁)においても、車両用前照灯等の車両用灯具における周波数として、約400Hzが記載されている。
以上のように、従来、車両用前照灯等の車両用灯具において、垂直走査周波数fVとして55Hz以上(55Hz〜120Hzが望ましい)の周波数を用いることで、ちらつきを抑制することができる点については全く知られていなかった。
次に、本出願の発明者らが、上記望ましい垂直走査周波数fVを検討するに際して行った実験等について説明する。
<実験>
本願の発明者らは、走行中の車両用前照灯(ヘッドランプ)をイメージした試験システムを用いて実験を行い、被験者の感じるちらつき度合いを評価した。
図7は試験システムの概略図である。
図7に示すように、試験システムは、回転速度を変化させることができる回転ベルトBを用いた可動道路モデル(回転ベルトBの表面には、実際の道路を模した白線等が描かれている。スケール1/5)と、励起光源12と同様の励起光源の出力(走査照度)を変化させることができる、車両用灯具10と同様の灯具モデルMとを用いた。
まず、灯具モデルM(励起光源がLED)により回転ベルトBの表面を照射する場合と灯具モデルM(励起光源がLD)により回転ベルトBの表面を照射する場合とで、被験者の感じるちらつきに差が出るかを実験した。その結果、灯具モデルM(励起光源がLED)により回転ベルトBの表面を照射する場合と灯具モデルM(励起光源がLD)により回転ベルトBの表面を照射する場合とで、垂直走査周波数fVが一致していれば、被験者の感じるちらつきに乖離が無いことを確認した。
次に、各々の走行速度(0km/h、50km/h、100km/h、150km/h、200km/h)となるように回転ベルトBを回転させて、被験者がちらつかないと感じた垂直走査周波数fVを測定した。具体的には、被験者がダイヤル操作することで垂直走査周波数fVを変更し、ちらつかないと感じたところでダイヤル操作を止め、その時点での垂直走査周波数fVを測定した。この測定は、車両から30〜40m程度前方(ドライバーが運転しているときに最も注視している領域)の路面照度と同程度の照度(60lx)、車両から10m程度前方(車両手前領域)の路面照度と同程度の照度(300lx)、接近した前走車やガードレールからの反射光と同程度の照度(2000lx)の下でそれぞれ行った。図8は、その実験結果(測定結果)をプロットしたグラフで、走行速度とちらつきの関係を表している。縦軸が垂直走査周波数fV、横軸が走行速度(時速)を表している。
図8を参照すると、次のことを理解できる。
第1に、路面照度(60lx)かつ走行速度(時速0km/h〜200km/h)において、ちらつかないと感じる垂直走査周波数fVは、55kHz以上であること。このこと(及びドライバーが運転しているときに最も注視している領域の路面照度が60lx程度であること)を考慮すると、車両用前照灯等の車両用灯具においてちらつきを抑制するには、垂直走査周波数fVを55kHz以上とするのが望ましいこと。
第2に、路面照度(60lx)かつ通常走行速度(時速0km/h〜150km/h)において、ちらつかないと感じる垂直走査周波数fVは、50kHz以上であること。このこと(及びドライバーが運転しているときに最も注視している領域の路面照度が60lx程度であること)を考慮すると、車両用前照灯等の車両用灯具においてちらつきを抑制するには、垂直走査周波数fVを50kHz以上とするのが望ましいこと。
第3に、走行速度が増加すると、ちらつかないと感じる垂直走査周波数fVが高くなる傾向があること。このことを考慮すると、車両用前照灯等の車両用灯具においてちらつきを抑制するには、垂直走査周波数fVを可変にするのが望ましいこと。例えば、走行速度が増加するに従って垂直走査周波数fVを高くするのが望ましいこと。
第4に、照度が増加すると、ちらつかないと感じる垂直走査周波数fVが高くなる傾向があること。このことを考慮すると、車両用前照灯等の車両用灯具においてちらつきを抑制するには、垂直走査周波数fVを可変にするのが望ましいこと。例えば、照度が増加するに従って垂直走査周波数fVを高くするのが望ましいこと。
第5に、走行時(時速50km/h〜150km/h)と比べ、停止時(時速0km/h)の方がちらつかないと感じる垂直走査周波数fVが高いこと。このことを考慮すると、車両用前照灯等の車両用灯具においてちらつきを抑制するには、垂直走査周波数fVを可変にするのが望ましいこと。例えば、停止時の垂直走査周波数をfV1とし、走行時の垂直走査周波数をfV2とすると、fV1>fV2の関係とするのが望ましいこと。
第6に、照度(60lx、300lx、2000lx)かつ走行速度(時速0km/h〜200km/h)において、ちらつかないと感じる垂直走査周波数fVは、70kHzを超えないこと。このことを考慮すると、車両用前照灯等の車両用灯具においてちらつきを抑制するには、垂直走査周波数fVを70kHz以上又は70Hz±10Hzとするのが望ましいこと。
また、本願の発明者らは、ミラー部202、トーションバー211a、211b、及び第1圧電アクチュエータ203、204を含む可動枠212の機械的な共振点(以下V側の共振点と称する)を考慮すると、第2圧電アクチュエータ205、206に印加する第3交流電圧の周波数(垂直走査周波数fV)としては、120Hz以下(鋸歯状波)が望ましく、100Hz以下(鋸歯状波)がより望ましいとの結論に達した。その理由は次のとおりである。
図9は、ミラー部202の振り角と周波数との関係を表すグラフで、縦軸が振り角、横
軸が印加電圧の周波数(例えば正弦波又は三角波)を表している。
例えば、第2圧電アクチュエータ205、206に約2V程度の電圧を印加した場合(低電圧起動時)、図9に示すように、V側の共振点は、1000Hz、800Hz付近に存在する。一方、第2圧電アクチュエータ205、206に約45V程度の高電圧を印加した場合(高電圧起動時)、V側の共振点は、最大振り角のとき350Hz、200Hz付近に存在する。周期的に振動(揺動)して安定した角度制御を実現するには、垂直走査周波数fVはV側の共振点を避ける必要がある。この観点から、第2圧電アクチュエータ205、206に印加する第3交流電圧の周波数(垂直走査周波数fV)としては、120Hz以下(鋸歯状波)が望ましく、100Hz以下(鋸歯状波)がさらに望ましい。また、第2圧電アクチュエータ205、206に印加する第3交流電圧の周波数(垂直走査周波数fV)が120Hzを超えると、光偏光器201の信頼性、耐久性、寿命等が低下する。したがって、この観点からも、第2圧電アクチュエータ205、206に印加する第3交流電圧の周波数(垂直走査周波数fV)としては、120Hz以下(鋸歯状波)が望ましく、100Hz以下(鋸歯状波)がさらに望ましい。
上記望ましい垂直走査周波数fVは、本願の発明者らが新たに見出した以上の知見から導かれたものである。
次に、励起光源12及び光偏光器201を制御する制御システムの構成例について説明する。
図10は、励起光源12及び光偏光器201を制御する制御システムの構成例である。
図10に示すように、この制御システムは、制御部24、及び、この制御部24に電気的に接続された、MEMS電源回路26、LD電源回路28、撮像装置30、照度センサ32、車速センサ34、車両の傾きセンサ36、距離センサ38、アクセル・ブレーキの操作を検知するアクセル・ブレーキセンサ40、振動センサ42、記憶装置44等を備えている。
MEMS電源回路26は、制御部24からの制御に従って、第1圧電アクチュエータ203、204に第1、第2交流電圧(例えば25MHzの正弦波)を印加して当該第1圧電アクチュエータ203、204を共振駆動させることで、ミラー部202を第1軸X1を中心に往復揺動させ、かつ、第2圧電アクチュエータ205、206に第3交流電圧(例えば55Hzの鋸歯状波)を印加して当該第2圧電アクチュエータ205、206を非共振駆動させることで、ミラー部202を第2軸X2を中心に往復揺動させる圧電アクチュエータ制御手段(又はミラー部制御手段)として機能する。
図11中中段は第1圧電アクチュエータ203、204に第1、第2交流電圧(例えば25MHzの正弦波)が印加されている様子を表し、図11中下段は第2圧電アクチュエータ205、206に第3交流電圧(例えば55Hzの鋸歯状波)が印加されている様子を表している。また、図11中上段はミラー部202の往復揺動に同期して励起光源12(レーザー光)が変調周波数fL(25MHz)で変調されている様子を表している。なお、図11中、網掛けの部分は励起光源12が発光していないことを表している。
図12(a)は、第1圧電アクチュエータ203、204に印加される第1、第2交流電圧(例えば25MHzの正弦波)の詳細及び励起光源12(レーザー光)の出力パターン等を表している。図12(b)は、第2圧電アクチュエータ205、206に印加される第3交流電圧(例えば55Hzの鋸歯状波)の詳細及び励起光源12(レーザー光)の出力パターン等を表している。
LD電源回路28は、制御部24からの制御に従って、ミラー部202の往復揺動に同期して励起光源12(レーザー光)を変調する変調手段として機能する。
励起光源12(レーザー)の変調周波数(変調速度)は、次の式で求められる。
変調周波数fL=(画素数)×(フレームレート:fV)/(ブランキング時間割合:Br)
この式に基づけば、例えば、画素数300×600、fV=70、Br=0.5の場合、変調周波数fLは、300×600×70/0.5=約25MHzとなる。変調周波数fLが25MHzの場合、1/25MHz秒ごとに、励起光源12の出力をオン/オフ又は発光強度を複数段階(例えば0を最小として複数段階)に制御することができる。
LD電源回路28は、光偏光器201が二次元的に(水平方向及び垂直方向に)走査する励起光としてのレーザー光により波長変換部材18に所定配光パターンに対応する二次元像が描画されるように、記憶装置44に格納された所定配光パターン(デジタルデータ)に基づき、励起光源12(レーザー光)を変調する。
所定配光パターン(デジタルデータ)としては、例えば、ハイビーム用配光パターン(デジタルデータ)、ロービーム用配光パターン(デジタルデータ)、高速道路用配光パターン(デジタルデータ)、市街地用配光パターン(デジタルデータ)、それ以外の各種の配光パターンが考えられる。所定配光パターン(デジタルデータ)は、各々の配光パターンの外形や光度分布(照度分布)を表すデータを含んでいる。その結果、光偏光器201が二次元的に(水平方向及び垂直方向に)走査する励起光としてのレーザー光により波長変換部材18に描画される二次元像は、各々の配光パターン(例えばハイビーム用配光パターン)の外形及び光度分布(例えばハイビーム用配光パターンに求められる中心付近が最大の光度分布)を持つものとなる。なお、所定配光パターン(デジタルデータ)の切替は、例えば、車室内に設けられた切替スイッチを操作することで行うことができる。
図13(a)〜図13(c)は、光偏光器201が二次元的に(水平方向及び垂直方向に)走査するレーザー光(スポット)の走査パターンを表している。
光偏光器201が二次元的に(水平方向及び垂直方向に)走査するレーザー光(スポット)の水平方向の走査パターンには、図13(a)に示すように、双方向走査(往復走査)するパターンと、図13(b)に示すように、片方向走査(往路のみ走査又は復路のみ走査)するパターンとがある。
また、光偏光器201が二次元的に(水平方向及び垂直方向に)走査するレーザー光(スポット)の垂直方向の走査パターンには、1ラインずつ密に走査するパターンと、図13(c)に示すように、インターレース方式と同様、1ラインおきに走査するパターンとがある。
また、光偏光器201が二次元的に(水平方向及び垂直方向に)走査するレーザー光(スポット)の垂直方向の走査パターンには、図14(a)に示すように、上端から下端に向かって走査し、下端に達すると上端に戻って再度上端から下端に向かって走査し、以下これを繰り返すパターンと、図14(b)に示すように、上端から下端に向かって走査し、下端に達すると上端に向かって走査し、以下これを繰り返すパターンとがある。
なお、波長変換部材18(画面)の左右端や、下端から上端に戻る間にブランキングと呼ばれる励起光源12が点灯しない時間が発生する。
次に、図10に示す制御システムによるその他の制御例について説明する。
図10に示す制御システムによれば、上記制御例以外にも各種の制御を行うことができる。例えば、配光可変型の車両用前照灯(ADB:Adaptive Driving Beam)を実現することができる。これは、例えば、制御部28が、自車両前方の物体を検出する検出手段として機能する撮像装置30の検出結果に基づいて、仮想鉛直スクリーン上に形成される所定配光パターン内に照射禁止対象(例えば歩行者又は対向車)が存在しているか否かを判定し、照射禁止対象が存在していると判定した場合、その照射禁止対象が存在する照射エリアに対応する波長変換部材18上の領域に励起光としてのレーザー光が走査されるタイミングで励起光源12の出力がオフ又は低下するように励起光源12を制御することで実現することができる。
また、本願の発明者らが明らかにした知見、すなわち、「走行速度が増加すると、ちらつかないと感じる垂直走査周波数fVが高くなる傾向がある」に基づけば、車両に取り付けられた車速センサ34の検出結果である走行速度に基づいて、第2圧電アクチュエータ205、206を非共振駆動させるための駆動周波数(垂直走査周波数fV)を変化させることができる。例えば、走行速度が増加するに従って垂直走査周波数fVを高くすることができる。これは、例えば、予め複数の走行速度(又は走行速度範囲)と複数の走行速度(又は走行速度範囲)それぞれに対応する複数の垂直走査周波数fVとの対応関係(走行速度又は走行速度範囲が大きくなるに従って大きい垂直走査周波数を対応づけておく)を記憶装置44に格納しておき、車速センサ34により検出された車速に対応する垂直走査周波数を記憶装置44から読み出す。そして、MEMS電源回路26が、第2圧電アクチュエータ205、206に第3交流電圧(当該読み出した垂直走査周波数)を印加して当該第2圧電アクチュエータ205、206を非共振駆動させることで実現することができる。
また、本願の発明者らが明らかにした知見、すなわち、「走行時(時速50km/h〜150km/h)と比べ、停止時(時速0km/h)の方がちらつかないと感じる垂直走査周波数fVが高い」に基づけば、走行時(時速50km/h〜150km/h)と比べ、停止時(時速0km/h)の垂直走査周波数fVを高くすることができる。これは、例えば、予め走行時用の垂直走査周波数fV2と停止時用の垂直走査周波数fV1を記憶装置44に格納しておき(fV1>fV2)、車速センサ34の検出結果に基づき、走行中か停止中かを判定する。そして、走行中と判定した場合、走行時用の垂直走査周波数を記憶装置44から読み出し、MEMS電源回路26が、第2圧電アクチュエータ205、206に第3交流電圧(当該読み出した走行時用の垂直走査周波数)を印加して当該第2圧電アクチュエータ205、206を非共振駆動させ、一方、停止中と判定した場合、停止時用の垂直走査周波数を記憶装置44から読み出し、MEMS電源回路26が、第2圧電アクチュエータ205、206に第3交流電圧(当該読み出した停止時用の垂直走査周波数)を印加して当該第2圧電アクチュエータ205、206を非共振駆動させることで実現することができる。
また、本願の発明者らが明らかにした知見、すなわち、「照度が増加すると、ちらつかないと感じる垂直走査周波数fVが高くなる傾向がある」に基づけば、車両に取り付けられた照度センサ32の検出結果である運転者に戻る照度(例えば、運転者の眼前照度)に基づいて、第2圧電アクチュエータ205、206を非共振駆動させるための駆動周波数(垂直走査周波数fV)を変化させることができる。例えば、照度が増加するに従って垂直走査周波数fVを高くすることができる。これは、例えば、予め複数の照度(又は照度範囲)と複数の照度(又は照度範囲)それぞれに対応する複数の垂直走査周波数fVとの対応関係(照度又は照度範囲が大きくなるに従って大きい垂直走査周波数を対応づけておく)を記憶装置44に格納しておき、照度センサ32により検出された照度値に対応する垂直走査周波数を記憶装置44から読み出す。そして、MEMS電源回路26が、第2圧電アクチュエータ205、206に第3交流電圧(当該読み出した垂直走査周波数)を印加して当該第2圧電アクチュエータ205、206を非共振駆動させることで実現することができる。
同様に、車両に取り付けられた距離センサ38の検出結果である照射物との距離に基づいて、第2圧電アクチュエータ205、206を非共振駆動させるための駆動周波数(垂直走査周波数fV)を変化させることができる。
同様に、車両に取り付けられた振動センサ42の検出結果に基づいて、第2圧電アクチュエータ205、206を非共振駆動させるための駆動周波数(垂直走査周波数fV)を変化させることができる。
同様に、所定配光パターンに応じて、第2圧電アクチュエータ205、206を非共振駆動させるための駆動周波数(垂直走査周波数fV)を変化させることができる。例えば、高速道路用配光パターンと市街地用配光パターンとで、第2圧電アクチュエータ205、206を非共振駆動させるための駆動周波数(垂直走査周波数fV)を変化させることができる。
以上のように垂直走査周波数fVを可変とすることで、第2圧電アクチュエータ205、206を非共振駆動させるための駆動周波数を一定とする場合と比べ、光偏光器201
の信頼性、耐久性、寿命等を向上させることができる。
上記構成の1軸非共振・1軸共振タイプの光偏光器201に代えて、2軸非共振タイプの光偏光器161を用いてもよい。
<2軸非共振タイプ>
図15は、2軸非共振タイプの光偏光器161の斜視図である。
図15に示すように、2軸非共振タイプの光偏光器161は、ミラー部162(MEMSミラーとも称される)と、ミラー部162を駆動する圧電アクチュエータ163〜166と、圧電アクチュエータ163〜166を支持する可動枠171と、台座174とを備えている。
圧電アクチュエータ163〜166の構成及び動作は、1軸非共振・1軸共振タイプの光偏光器201の第2圧電アクチュエータ205、206と同様である。
本実施形態では、第1圧電アクチュエータ163、164には、それぞれ駆動電圧として第1の交流電圧を印加する。その際、ミラー部162の機械的な共振周波数(第一次共振点)より小さい所定値以下の周波数の交流電圧を印加して非共振駆動させる。これにより、ミラー部162が可動枠171に対して第3軸X3を中心に往復揺動し、ミラー部162に入射する励起光源12の励起光が第1方向(例えば水平方向)に走査される。
また、第2圧電アクチュエータ165、166には、それぞれ駆動電圧として第2の交流電圧を印加する。その際、ミラー部162、及び第1圧電アクチュエータ165、166を含む可動枠171の機械的な共振周波数(第一次共振点)より小さい所定値以下の周波数の交流電圧を印加して非共振駆動させる。これにより、ミラー部162が台座174に対して第2軸X4を中心に往復揺動し、ミラー部162に入射する励起光源12からの励起光が第2方向(例えば垂直方向)に走査される。
図16(a)は、第1圧電アクチュエータ163、164に印加される第1交流電圧(例えば6kHzの鋸歯状波)の詳細及び励起光源12(レーザー光)の出力パターン等を表している。図16(b)は、第2圧電アクチュエータ165、166に印加される第3交流電圧(例えば60Hzの鋸歯状波)の詳細及び励起光源12(レーザー光)の出力パターン等を表している。
以上のように各々の圧電アクチュエータ163〜166の駆動により、励起光源12からの励起光としてのレーザー光が二次元的に(水平方向及び垂直方向に)走査される。
また、上記構成の1軸非共振・1軸共振タイプの光偏光器201に代えて、2軸共振タイプの光偏光器201Aを用いてもよい。
<2軸共振タイプ>
図17は、2軸共振タイプの光偏光器201Aの平面図である。
図17に示すように、2軸共振タイプの光偏光器201Aは、ミラー部13A(MEMSミラーとも称される)と、ミラー部13Aをトーションバー14Aa、14Abを介して駆動する第1圧電アクチュエータ15Aa、15Abと、第1圧電アクチュエータ15Aa、15Abを支持する可動枠12Aと、可動枠12Aを駆動する第2圧電アクチュエータ17Aa、17Abと、第2圧電アクチュエータ17Aa、17Abを支持する台座11Aとを備えている。
圧電アクチュエータ15Aa、15Ab、17Aa、17Abの構成及び動作は、1軸非共振・1軸共振タイプの光偏光器201の第1圧電アクチュエータ203、204と同様である。
本実施形態では、第1圧電アクチュエータ15Aaに駆動電圧として第1交流電圧を印加し、第1圧電アクチュエータ15Abに駆動電圧として第2交流電圧を印加する。第1交流電圧と第2交流電圧とは、互いに逆位相或いは位相のずれた交流電圧(例えば正弦波)とする。その際、トーションバー14Aa、14Abを含むミラー部13Aの機械的な共振周波数(第一次共振点)付近の周波数の交流電圧を印加して、第1圧電アクチュエータ15Aa、15Abを共振駆動させる。これにより、ミラー部13Aが可動枠12Aに対して第5軸X5を中心に往復揺動し、ミラー部13Aに入射する励起光源12からの励起光が第1方向(例えば水平方向)に走査される。
また、第2圧電アクチュエータ17Aaに駆動電圧として第3交流電圧を印加し、第2圧電アクチュエータ17Abに駆動電圧として第4交流電圧を印加する。第3交流電圧と第4交流電圧とは、互いに逆位相或いは位相のずれた交流電圧(例えば正弦波)とする。その際、ミラー部13A及び第1圧電アクチュエータ15Aa、15Abを含む可動枠12Aの機械的な共振周波数(第一次共振点)付近の周波数の交流電圧を印加して、第1圧電アクチュエータ17Aa、17Abを共振駆動させる。これにより、ミラー部13Aが台座11Aに対して第6軸X6を中心に往復揺動し、ミラー部13Aに入射する励起光源12からの励起光が第2方向(例えば垂直方向)に走査される。
図18(a)は、第1圧電アクチュエータ15Aa、15Abに印加される第1交流電圧(例えば24kHzの正弦波)の詳細及び励起光源12(レーザー光)の出力パターン等を表している。図18(b)は、第2圧電アクチュエータ17Aa、17Abに印加される第3交流電圧(例えば12Hzの正弦波)の詳細及び励起光源12(レーザー光)の出力パターン等を表している。
以上のように各々の圧電アクチュエータ15Aa、15Ab、17Aa、17Abの駆動により、励起光源12からの励起光としてのレーザー光が二次元的に(水平方向及び垂直方向に)走査される。
以上説明したように、本実施形態によれば、従来、車両用前照灯等の車両用灯具においてちらつきが発生すると考えられてきた220Hzよりも大幅に低い周波数(又は220fpsよりも大幅に低いフレームレート)である「55fps以上」、「55fps以上120fps以下」、「55fps以上100fps以下」又は「70fps±10fps」を用いても、ちらつきを抑制することができる車両用灯具を提供することができる。
また、本実施形態によれば、220Hzよりも大幅に低い周波数(又は220fpsよりも大幅に低いフレームレート)、すなわち、「55fps以上」、「55fps以上120fps以下」、「55fps以上100fps以下」又は「70fps±10fps」を用いることができるため、220Hz以上の周波数(又は220fps以上のフレームレート)を用いる場合と比べ、光偏光器201等の信頼性、耐久性、寿命等を向上させることができる。
また、本実施形態によれば、第2圧電アクチュエータ205、206等を非共振駆動させるための駆動周波数を可変とすることで、第2圧電アクチュエータ205、206等を非共振駆動させるための駆動周波数を一定とする場合と比べ、光偏光器201等の信頼性、耐久性、寿命等を向上させることができる。
次に、第2実施形態として、1軸非共振・1軸共振タイプの光偏光器201を3つ用いた車両用灯具について図面を参照しながら説明する。なお、1軸非共振・1軸共振タイプの光偏光器201に代えて、上記第1実施形態で例示した各種の光偏光器を用いることができるのは無論である。
図20は本発明の第2実施形態である車両用灯具300の概略図、図21は斜視図、図22は正面図、図23は図22に示した車両用灯具300のA−A断面図、図24は図23に示した車両用灯具300のA−A断面斜視図である。図25は、本実施形態の車両用灯具300により、車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(車両前面から約25m前方に配置されている)上に形成される所定配光パターンPの例である。
本実施形態の車両用灯具300は、図25に示すように、中心光度(PHot)が相対的に高く、そこから周囲に向かう(PHot→PMid→PWide)に従って光度がグラデーション状に低くなる、遠方視認性及び配光フィーリングに優れた所定配光パターンP(例えば、ハイビーム用配光パターン)を形成するように構成されている。
本実施形態の車両用灯具300と上記第1実施形態の車両用灯具10とを対比すると、主に、上記第1実施形態においては、図1に示すように、1つの励起光源12及び1つの光偏光器201を用いていたのに対して、本実施形態においては、図20に示すように、3つの励起光源(ワイド用励起光源12Wide、ミドル用励起光源12Mid及びホット用励起光源12Hot)及び3つの光偏光器(ワイド用光偏光器201Wide、ミドル用光偏光器201Mid及びホット用光偏光器201Hot)を用いている点で、両者は相違する。
それ以外、上記第1実施形態の車両用灯具10と同様の構成である。以下、上記第1実施形態の車両用灯具10との相違点を中心に説明し、上記第1実施形態の車両用灯具10と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
車両用灯具300は、図20〜図24に示すように、3つの励起光源12Wide、12Mid、12Hot、3つの励起光源12Wide、12Mid、12Hotに対応して設けられた3つの光偏光器201Wide、201Mid、201Hot、3つの光偏光器201Wide、201Mid、201Hotに対応して設けられた3つの走査領域AWide、AMid、AHot(図20参照)を含む波長変換部材18、3つの走査領域AWide、AMid、AHotそれぞれに形成される光度分布を投影して、所定配光パターンPを形成する光学系としての投影レンズ20等を備えた車両用前照灯として構成されている。なお、励起光源12、光偏光器201及び走査領域Aは3つに限定されず、2つ又は4つ以上であってもよいのは無論である。
図23に示すように、投影レンズ20、波長変換部材18、光偏光器201Wide、201Mid、201Hotは、この順に、車両前後方向に延びる基準軸AX(光軸とも称される)に沿って配置されている。
励起光源12Wide、12Mid、12Hotは、それぞれの励起光RayWide、RayMid、RayHotが後方、かつ、基準軸AX寄りに向かうように傾斜した姿勢でレーザー保持部46に固定されて、基準軸AXを取り囲むように配置されている。
具体的には、励起光源12Wide、12Mid、12Hotは、次のようにレーザー保持部46に固定されて配置されている。
レーザー保持部46は、基準軸AX方向に延びる筒部48の外周面のうち上部、下部、左部、右部それぞれから基準軸AXに対して略直交する方向に放射状に延びる延長部50U、50D、50L、50Rを含んでいる(図22参照)。各々の延長部50U、50D、50L、50Rの先端部は後方に向かって傾斜しており(図23参照)、各々の延長部50U、50D、50L、50R間には、放熱部54(放熱フィン)が配置されている(図22参照)。
ワイド用励起光源12Wideは、図23に示すように、その励起光RayWideが後方斜め上方向に向かって進行するように傾斜した姿勢で延長部50Dの先端部に固定されている。同様に、ミドル用励起光源12Midは、その励起光RayMidが後方斜め下方向に向かって進行するように傾斜した姿勢で延長部50Uの先端部に固定されている。同様に、ホット用励起光源12Hotは、その励起光RayHotが正面視で後方斜め右方向に向かって進行するように傾斜した姿勢で延長部50Lの先端部に固定されている。
投影レンズ20(レンズ20A〜20D)が固定されたレンズホルダ56は、その後端部が筒部48の先端開口に螺合することで、当該筒部48に固定されている。
各々の励起光源12Wide、12Mid、12Hotからの励起光RayWide、RayMid、RayHotは、各々の集光レンズ14で集光されて(例えばコリメートされて)各々の光偏光器201Wide、201Mid、201Hot(各々のミラー部202)に入射する。
光偏光器201Wide、201Mid、201Hotは、それぞれ、図24に示すように、励起光源12Wide、12Mid、12Hotのうち対応する励起光源からの励起光が各々のミラー部202に入射し、かつ、各々のミラー部202からの反射光としての励起光が走査領域AWide、AMid、AHotのうち対応する走査領域に向かうように、励起光源12Wide、12Mid、12Hotより基準軸AX寄り、かつ、当該基準軸AXを取り囲むように配置されている。
具体的には、光偏光器201Wide、201Mid、201Hotは、次のように光偏光器保持部58に固定されて配置されている。
光偏光器保持部58は前方に突出した四角錐形状の前面を含んでおり、当該四角錐形状の前面は、図24に示すように、上面58U、下面58D、左面58L、右面58R(図示せず)により構成されている。
ワイド用光偏光器201Wide(本発明の第1光偏光器に相当)は、そのミラー部202がワイド用励起光源12Wideからの励起光RayWideの光路上に位置した状態で、四角錐形状の前面のうち下面58Dに傾斜した姿勢で固定されている。同様に、ミドル用光偏光器201Mid(本発明の第2光偏光器に相当)は、そのミラー部202がミドル用励起光源12Midからの励起光RayMidの光路上に位置した状態で、四角錐形状の前面のうち上面58Uに傾斜した姿勢で固定されている。同様に、ホット用光偏光器201Hot(本発明の第3光偏光器に相当)は、そのミラー部202がホット用励起光源12Hotからの励起光RayHotの光路上に位置した状態で、四角錐形状の前面のうち正面視で左側に配置された左面58Lに傾斜した姿勢で固定されている。
各々の光偏光器201Wide、201Mid、201Hotは、第1軸X1が鉛直面に含まれ、第2軸X2が水平面に含まれた状態で配置されている。各々の光偏光器201Wide、201Mid、201Hotをこのように配置することで、車両用前照灯において求められる、水平方向にワイドで垂直方向に薄い所定配光パターン(所定配光パターンに対応する二次元像)を容易に形成(描画)することができる。
ワイド用光偏光器201Wideは、そのミラー部202によって水平方向及び垂直方向に二次元的に走査される励起光RayWideにより、ワイド用走査領域AWide(本発明の第1走査領域に相当)に第1二次元像を描画することで、当該ワイド用走査領域AWideに第1光度分布を形成する。
ミドル用光偏光器201Midは、そのミラー部202によって水平方向及び垂直方向に二次元的に走査される励起光RayMidにより、ミドル用走査領域AMid(本発明の第2走査領域に相当)に第1二次元像の一部に重なった状態で第2二次元像を描画することで、当該ミドル用走査領域AMidに第1光度分布より光度が高い第2光度分布を形成する。
図20に示すように、ミドル用走査領域AMidはワイド用走査領域AWideより小サイズで、かつ、ワイド用走査領域AWideの一部と重なっている。その結果、当該重なったミドル用走査領域AMidに形成される光度分布が相対的に高くなる。
ホット用光偏光器201Hotは、そのミラー部202によって水平方向及び垂直方向に二次元的に走査される励起光RayHotにより、ホット用走査領域AHot(本発明の第3走査領域に相当)に第1二次元像の一部及び第2二次元像の一部に重なった状態で第3二次元像を描画することで、当該ホット用走査領域AHotに第2光度分布より光度が高い第3光度分布を形成する。
図20に示すように、ホット用走査領域AHotはミドル用走査領域AMidより小サイズで、かつ、ミドル用走査領域AMidの一部と重なっている。その結果、当該重なったホット用走査領域AHotに形成される光度分布が相対的に高くなる。
なお、各々の走査領域AWide、AMid、AHotは、図20に例示した外形が矩形の領域に限らず、例えば、外形が円形、楕円形又はそれ以外の各種の形状の領域であってもよい。
図26(a)は波長変換部材18の正面図、図26(b)は上面図、図26(c)は側面図である。
図26(a)〜図26(c)に示すように、波長変換部材18は、外形が矩形形状の板状(例えば、水平方向の長さ:18mm、垂直方向の長さ:9mm)の波長変換部材(蛍光体パネルとも称される)として構成されている。
波長変換部材18は、図23、図24に示すように、筒部48の後端開口を閉塞する蛍光体保持部52に固定されている。具体的には、波長変換部材18は、その後面18aの外形に沿った周囲が蛍光体保持部52に形成された開口52a周囲に固定されており、当該開口52aを覆っている。
波長変換部材18は、最大偏向角βh_max(図29(a)参照)時のワイド用光偏光器201Wideのミラー部202の中心線AX202と、最大偏向角βv_max(図29(b)参照)時のワイド用光偏光器201Wideのミラー部202の中心線AX202との間に収まるように配置されている。すなわち、波長変換部材18は、次の二つの式1、式2を満たすように配置されている。
tan(βh_max)≧L/d ・・・(式1)
tan(βv_max)≧S/d ・・・(式2)
但し、Lは波長変換部材18の水平方向長さの1/2、Sは波長変換部材18の垂直方向長さの1/2である。
次に、走査領域AWide、AMid、AHotのサイズ(水平方向の長さ及び垂直方向の長さ)を調整する手法について説明する。
走査領域AWide、AMid、AHotのサイズ(水平方向の長さ及び垂直方向の長さ)は、各々の光偏光器201Wide、201Mid、201Hot(のミラー部202の中心)と波長変換部材18との間の距離を同一(又は略同一)とした場合(図22、図23参照)、第1圧電アクチュエータ203、204に印加する第1交流電圧、第2交流電圧、第2圧電アクチュエータ205、206に印加する第3交流電圧を変え、各々の光偏光器201Wide、201Mid、201Hotのミラー部202の第1軸X1を中心とする揺動範囲及び第2軸X2を中心とする揺動範囲を変えることで調整することができる。その理由は次のとおりである。
すなわち、光偏光器201Wide、201Mid、201Hotにおいては、図27(a)に示すように、第1軸X1を中心とするミラー部202の機械振れ角(半角。縦軸参照)は、第1圧電アクチュエータ203、204に印加される駆動電圧(横軸参照)が増加するに従って増加する。また、図27(b)に示すように、第2軸X2を中心とするミラー部202の機械振れ角(半角。縦軸参照)も、第2圧電アクチュエータ205、206に印加される駆動電圧(横軸参照)が増加するに従って増加する。
したがって、各々の光偏光器201Wide、201Mid、201Hot(のミラー部202の中心)と波長変換部材18との間の距離を同一(又は略同一)とした場合(図23、図24参照)、第1圧電アクチュエータ203、204に印加する第1交流電圧、第2交流電圧、第2圧電アクチュエータ205、206に印加する第3交流電圧を変え、各々の光偏光器201Wide、201Mid、201Hotのミラー部202の第1軸X1を中心とする揺動範囲及び第2軸X2を中心とする揺動範囲を変えることで、走査領域AWide、AMid、AHotのサイズ(水平方向の長さ及び垂直方向の長さ)を調整することができる。
次に、具体的な調整例について説明する。以下の説明では、各々の光偏光器201Wide、201Mid、201Hot(のミラー部202の中心)と波長変換部材18との間の距離が同一(例えば、図29(a)、図29(b)中のd=24.0mm)で、投影レンズ20の焦点距離が32mmであるものとする。
例えば、図28(a)中の「WIDE」の行に示すように、ワイド用光偏光器201Wideの第1圧電アクチュエータ203、204に駆動電圧として5.41Vppを印加すると、第1軸X1を中心とする機械振れ角(半角:γh_max)、最大偏向角(半角:βh_max)がそれぞれ、±9.8度、±19.7度となる。この場合、ワイド用走査領域AWideのサイズ(水平方向の長さ)が、±8.57mmに調整される。
なお、図28(a)に記載の「L」及び「βh_max」は、図29(a)に示す距離及び角度を表している。なお、図28(a)等に記載の「ミラー機械半角」(機械半角とも称される)は、ミラー部202が実際に動いた角度のことで、ミラー部202の法線方向からのなす角でプラスマイナスで表している。一方、図28(a)等に記載の「ミラーの偏向角度」(光学半角とも称される)は、ミラー部で反射した励起光(光線)とミラー部202の法線方向とのなす角のことで、こちらもミラー部202の法線方向からプラスマイナスで表している。フレネルの法則により光学半角は機械半角の2倍となる。
また、図28(b)中の「WIDE」の行に示すように、ワイド用光偏光器201Wideの第2圧電アクチュエータ205、206に駆動電圧として41.2Vppを印加すると、第1軸X1を中心とする機械振れ角(半角:γv_max)、最大偏向角(半角:βv_max)がそれぞれ、±4.3度、±8.6度となる。この場合、ワイド用走査領域AWideのサイズ(垂直方向の長さ)が、±3.65mmに調整される。
なお、図28(b)に記載の「S」及び「βv_max」は、図29(b)に示す距離及び角度を表している。
以上のように、ワイド用光偏光器201Wideの第1圧電アクチュエータ203、204に駆動電圧(第1交流電圧、第2交流電圧)として5.41Vppを印加し、第2圧電アクチュエータ205、206に駆動電圧(第3交流電圧)として41.2Vppを印加し、ワイド用光偏光器201Wideのミラー部202の第1軸X1を中心とする揺動範囲及び第2軸X2を中心とする揺動範囲を変えることで、ワイド用走査領域AWideのサイズ(水平方向の長さ及び垂直方向の長さ)を、水平方向が±8.57mm、垂直方向が±3.65mmの矩形に調整することができる。
このワイド用走査領域AWideに形成される光度分布は投影レンズ20によって前方に投影されることで、仮想鉛直スクリーン上に水平方向±15度、垂直方向±6.5度の矩形のワイド用配光パターンPWide(図25参照)を形成する。
一方、図28(a)中の「MID」の行に示すように、ミドル用光偏光器201Midの第1圧電アクチュエータ203、204に駆動電圧として2.31Vppを印加すると、第1軸X1を中心とする機械振れ角(半角:γh_max)、最大偏向角(半角:βh_max)がそれぞれ、±5.3度、±11.3度となる。この場合、ミドル用走査領域AMidのサイズ(水平方向の長さ)が、±4.78mmに調整される。
また、図28(b)中の「MID」の行に示すように、ミドル用光偏光器201Midの第2圧電アクチュエータ205、206に駆動電圧として24.4Vppを印加すると、第1軸X1を中心とする機械振れ角(半角:γv_max)、最大偏向角(半角:βv_max)がそれぞれ、±2.3度、±4.7度となる。この場合、ミドル用走査領域AMidのサイズ(垂直方向の長さ)が、±1.96mmに調整される。
以上のように、ミドル用光偏光器201Midの第1圧電アクチュエータ203、204に駆動電圧(第1交流電圧、第2交流電圧)として2.31Vppを印加し、第2圧電アクチュエータ205、206に駆動電圧(第3交流電圧)として24.4Vppを印加し、ミドル光偏光器201Midのミラー部202の第1軸X1を中心とする揺動範囲及び第2軸X2を中心とする揺動範囲を変えることで、ミドル用走査領域AMidのサイズ(水平方向の長さ及び垂直方向の長さ)を、水平方向が±4.78mm、垂直方向が±1.96mmの矩形に調整することができる。
このミドル用走査領域AMidに形成される光度分布は投影レンズ20によって前方に投影されることで、仮想鉛直スクリーン上に水平方向±8.5度、垂直方向±3.5度の矩形のミドル用配光パターンPMid(図25参照)を形成する。
一方、図28(a)中の「HOT」の行に示すように、ホット用光偏光器201Hotの第1圧電アクチュエータ203、204に駆動電圧として0.93Vppを印加すると、第1軸X1を中心とする機械振れ角(半角:γh_max)、最大偏向角(半角:βh_max)がそれぞれ、±2.3度、±4.7度となる。この場合、ホット用走査領域AHotのサイズ(水平方向の長さ)が、±1.96mmに調整される。
また、図28(b)中の「HOT」の行に示すように、ホット用光偏光器201Hotの第2圧電アクチュエータ205、206に駆動電圧として13.3Vppを印加すると、第1軸X1を中心とする機械振れ角(半角:γv_max)、最大偏向角(半角:βv_max)がそれぞれ、±1.0度、±2.0度となる。この場合、ホット用走査領域AHotのサイズ(垂直方向の長さ)が、±0.84mmに調整される。
以上のように、ホット用光偏光器201Hotの第1圧電アクチュエータ203、204に駆動電圧(第1交流電圧、第2交流電圧)として0.93Vppを印加し、第2圧電アクチュエータ205、206に駆動電圧(第3交流電圧)として13.3Vppを印加し、ホット用光偏光器201Hotのミラー部202の第1軸X1を中心とする揺動範囲及び第2軸X2を中心とする揺動範囲を変えることで、ホット用走査領域AHotのサイズ(水平方向の長さ及び垂直方向の長さ)を、水平方向が±1.96mm、垂直方向が±0.84mmの矩形に調整することができる。
このホット用走査領域AHotに形成される光度分布は投影レンズ20によって前方に投影されることで、仮想鉛直スクリーン上に水平方向±3.5度、垂直方向±1.5度の矩形のミドル用配光パターンPHot(図25参照)を形成する。
以上のように、各々の光偏光器201Wide、201Mid、201Hot(のミラー部202の中心)と波長変換部材18との間の距離を同一(又は略同一)とした場合(図23、図24参照)、第1圧電アクチュエータ203、204に印加する駆動電圧(第1交流電圧、第2交流電圧)、第2圧電アクチュエータ205、206に印加する駆動電圧(第3交流電圧)を変え、各々の光偏光器201Wide、201Mid、201Hotのミラー部202の第1軸X1を中心とする揺動範囲及び第2軸X2を中心とする揺動範囲を変えることで、走査領域AWide、AMid、AHotのサイズ(水平方向の長さ及び垂直方向の長さ)を調整することができる。
次に、走査領域AWide、AMid、AHotのサイズ(水平方向の長さ及び垂直方向の長さ)を調整する別の手法について説明する。
走査領域AWide、AMid、AHotのサイズ(水平方向の長さ及び垂直方向の長さ)は、各々の光偏光器201Wide、201Mid、201Hotに印加される駆動電圧を同一(又は略同一)とした場合、各々の光偏光器201Wide、201Mid、201Hot(のミラー部202の中心)と波長変換部材18との間の距離を変える(例えば、図30参照)ことで調整することができる。
次に、具体的な調整例について説明する。以下の説明では、各々の光偏光器201Wide、201Mid、201Hotに印加される駆動電圧が同一で、投影レンズ20の焦点距離が32mmであるものとする。
例えば、図31(a)中の「WIDE」の行に示すように、ワイド用光偏光器201Wide(のミラー部202の中心)と波長変換部材18との間の距離を24.0mmとし、当該ワイド用光偏光器201Wideの第1圧電アクチュエータ203、204に駆動電圧として5.41Vppを印加すると、第1軸X1を中心とする機械振れ角(半角:γh_max)、最大偏向角(半角:βh_max)がそれぞれ、±9.8度、±19.7度となる。この場合、ワイド用走査領域AWideのサイズ(水平方向の長さ)が、±8.57mmに調整される。
なお、図31(a)に記載の「L」、「βh_max」及び「d」は、図29(a)に示す距離及び角度を表している。
また、図31(b)中の「WIDE」の行に示すように、ワイド用光偏光器201Wide(のミラー部202の中心)と波長変換部材18との間の距離を24.0mmとし、当該ワイド用光偏光器201Wideの第2圧電アクチュエータ205、206に駆動電圧として41.2Vppを印加すると、第1軸X1を中心とする機械振れ角(半角:γv_max)、最大偏向角(半角:βv_max)がそれぞれ、±4.3度、±8.6度となる。この場合、ワイド用走査領域AWideのサイズ(垂直方向の長さ)が、±3.65mmに調整される。
なお、図31(b)に記載の「S」、「βv_max」及び「d」は、図29(b)に示す距離及び角度を表している。
以上のように、ワイド用光偏光器201Wide(のミラー部202の中心)と波長変換部材18との間の距離を24.0mmとすることで、ワイド用走査領域AWideのサイズ(水平方向の長さ及び垂直方向の長さ)を、水平方向が±8.57mm、垂直方向が±3.65mmの矩形に調整することができる。
このワイド用走査領域AWideに形成される光度分布は投影レンズ20によって前方に投影されることで、仮想鉛直スクリーン上に水平方向±15度、垂直方向±6.5度の矩形のワイド用配光パターンPWide(図25参照)を形成する。
一方、図31(a)中の「MID」の行に示すように、ミドル用光偏光器201Mid(のミラー部202の中心)と波長変換部材18との間の距離を13.4mmとし、当該ミドル用光偏光器201Midの第1圧電アクチュエータ203、204に駆動電圧としてワイド用光偏光器201Widの場合と同様、5.41Vppを印加すると、第1軸X1を中心とする機械振れ角(半角:γh_max)、最大偏向角(半角:βh_max)がそれぞれ、ワイド用光偏光器201Widの場合と同様、±9.8度、±19.7度となる。しかし、ミドル用光偏光器201Mid(のミラー部202の中心)と波長変換部材18との間の距離(13.4mm)がワイド用光偏光器201Wide(のミラー部202の中心)と波長変換部材18との間の距離(24.0mm)より短いため、ミドル用走査領域AMidのサイズ(水平方向の長さ)が、±4.78mmに調整される。
また、図31(b)中の「MID」の行に示すように、ミドル用光偏光器201Mid(のミラー部202の中心)と波長変換部材18との間の距離を13.4mmとし、当該ミドル用光偏光器201Midの第2圧電アクチュエータ205、206に駆動電圧としてワイド用光偏光器201Widの場合と同様、41.2Vppを印加すると、第1軸X1を中心とする機械振れ角(半角:γv_max)、最大偏向角(半角:βv_max)がそれぞれ、ワイド用光偏光器201Widの場合と同様、±4.3度、±8.6度となる。しかし、ミドル用光偏光器201Mid(のミラー部202の中心)と波長変換部材18との間の距離(13.4mm)がワイド用光偏光器201Wide(のミラー部202の中心)と波長変換部材18との間の距離(24.0mm)より短いため、ミドル用走査領域AMidのサイズ(垂直方向の長さ)が、±1.96mmに調整される。
以上のように、ミドル用光偏光器201Mid(のミラー部202の中心)と波長変換部材18との間の距離を13.4mmとすることで、ミドル用走査領域AMidのサイズ(水平方向の長さ及び垂直方向の長さ)を、水平方向が±4.78mm、垂直方向が±1.96mmの矩形に調整することができる。
このミドル用走査領域AMidに形成される光度分布は投影レンズ20によって前方に投影されることで、仮想鉛直スクリーン上に水平方向±8.5度、垂直方向±3.6度の矩形のミッド用配光パターンPMid(図25参照)を形成する。
一方、図31(a)中の「HOT」の行に示すように、ホット用光偏光器201Hot(のミラー部202の中心)と波長変換部材18との間の距離を5.5mmとし、当該ホット用光偏光器201Hotの第1圧電アクチュエータ203、204に駆動電圧としてワイド用光偏光器201Widの場合と同様、5.41Vppを印加すると、第1軸X1を中心とする機械振れ角(半角:γh_max)、最大偏向角(半角:βh_max)がそれぞれ、ワイド用光偏光器201Widの場合と同様、±9.8度、±19.7度となる。しかし、ホット用光偏光器201Hot(のミラー部202の中心)と波長変換部材18との間の距離(5.5mm)がミドル用光偏光器201Mid(のミラー部202の中心)と波長変換部材18との間の距離(13.4mm)より短いため、ホット用走査領域AHotのサイズ(水平方向の長さ)が、±1.96mmに調整される。
また、図31(b)中の「HOT」の行に示すように、ホット用光偏光器201Hot(のミラー部202の中心)と波長変換部材18との間の距離を5.5mmとし、当該ホット用光偏光器201Hotの第2圧電アクチュエータ205、206に駆動電圧としてワイド用光偏光器201Widの場合と同様、41.2Vppを印加すると、第1軸X1を中心とする機械振れ角(半角:γv_max)、最大偏向角(半角:βv_max)がそれぞれ、ワイド用光偏光器201Widの場合と同様、±4.3度、±8.6度となる。しかし、ホット用光偏光器201Hot(のミラー部202の中心)と波長変換部材18との間の距離(5.5mm)がミドル用光偏光器201Mid(のミラー部202の中心)と波長変換部材18との間の距離(13.4mm)より短いため、ホット用走査領域AHotのサイズ(垂直方向の長さ)が、±0.84mmに調整される。
以上のように、ホット用光偏光器201Hot(のミラー部202の中心)と波長変換部材18との間の距離を5.5mmとすることで、ホット用走査領域AHotのサイズ(水平方向の長さ及び垂直方向の長さ)を、水平方向が±1.96mm、垂直方向が±0.84mmの矩形に調整することができる。
このホット用走査領域AHotに形成される光度分布は投影レンズ20によって前方に投影されることで、仮想鉛直スクリーン上に水平方向±3.5度、垂直方向±1.5度の矩形のホット用配光パターンPHot(図25参照)を形成する。
以上のように、各々の光偏光器201Wide、201Mid、201Hotに印加される駆動電圧を同一(又は略同一)とした場合、各々の光偏光器201Wide、201Mid、201Hot(のミラー部202の中心)と波長変換部材18との間の距離を変えることで、走査領域AWide、AMid、AHotのサイズ(水平方向の長さ及び垂直方向の長さ)を調整することができる。
なお、各々の光偏光器201Wide、201Mid、201Hotの第1圧電アクチュエータ203、204に印加される第1交流電圧、第2交流電圧をフィードバック制御する場合、各々の光偏光器201Wide、201Mid、201Hotに印加される駆動電圧を完全に同一とはならないが、この場合であっても、各々の光偏光器201Wide、201Mid、201Hot(のミラー部202の中心)と波長変換部材18との間の距離を変えることで、各々の走査領域AWide、AMid、AHotのサイズ(水平方向の長さ及び垂直方向の長さ)を調整することができる。
次に、走査領域AWide、AMid、AHotのサイズ(水平方向の長さ及び垂直方向の長さ)を調整する別の手法について説明する。
走査領域AWide、AMid、AHotのサイズ(水平方向の長さ及び垂直方向の長さ)は、図32に示すように、各々の励起光源12Wide、12Mid、12Hotと各々の光偏光器201Mid、201Wide、201Hotとの間(又は、各々の光偏光器201Mid、201Wide、201Hotと波長変換部材18との間)にレンズ66(例えば、焦点距離が異なるレンズ)を配置することによって調整することも考えられる。
本実施形態によれば、励起光を二次元的に走査する複数の光偏光器を用いた車両用灯具において、コンパクト化を可能とし、かつ、コストアップの要因となる部品点数を低減することが可能となる。
これは、従来のように複数の波長変換部材(蛍光物質)、複数の光学系(投影レンズ)を用いるのではなく、複数の光偏光器201Wide、201Mid、201Hotに対して1つの波長変換部材18及び1つの光学系(投影レンズ20)を用いたことによるものである。
また、本実施形態によれば、励起光を二次元的に走査する複数の光偏光器を用いた車両用灯具において、一部の光度が相対的に高く、そこから周囲に向かうに従って光度がグラデーション状に低くなる所定配光パターン、例えば、図25に示すように、中心光度(PHot)が相対的に高く、そこから周囲に向かう(PHot→PMid→PWide)に従って光度がグラデーション状に低くなる、遠方視認性及び配光フィーリングに優れた所定配光パターンP(例えば、ハイビーム用配光パターン)を形成することができる。
これは、図20に示すように、ミドル用走査領域AMidがワイド用走査領域AWideより小サイズでかつワイド用走査領域AWideと重なっており、かつ、ホット用走査領域AHotがミドル用走査領域AMidより小サイズでかつミドル用走査領域AMidと重なっている結果、ワイド用走査領域AWideに形成される第1光度分布、ミドル用走査領域AMidに形成される第2光度分布、ホット用走査領域AHotに形成される第3光度分布がこの順に光度が高くなりかつ小サイズとなること、そして、所定配光パターンP(図25参照)は、このワイド用走査領域AWide、ミドル用走査領域AMid、ホット用走査領域AHotそれぞれに形成される第1光度分布、第2光度分布、第3光度分布が投影されることで形成されること、によるものである。
また、本実施形態によれば、後述の車両用灯具400(灯具ユニット)と比べ、上下左右方向に大きくなるものの、車両用灯具300(灯具ユニット)を基準軸AX方向に薄くすることができる。
次に、第3実施形態として、1軸非共振・1軸共振タイプの光偏光器201を3つ用いた別の車両用灯具について図面を参照しながら説明する。なお、1軸非共振・1軸共振タイプの光偏光器201に代えて、上記第1実施形態で例示した各種の光偏光器を用いることができるのは無論である。
図33は本発明の第3実施形態である車両用灯具400の縦断面図、図34は図33に示した車両用灯具400の断面斜視図である。
本実施形態の車両用灯具400は、図25に示すように、中心光度(PHot)が相対的に高く、そこから周囲に向かう(PHot→PMid→PWide)に従って光度がグラデーション状に低くなる、遠方視認性及び配光フィーリングに優れた所定配光パターンP(例えば、ハイビーム用配光パターン)を形成するように構成されている。
本実施形態の車両用灯具400と上記第2実施形態の車両用灯具300とを対比すると、主に、上記第2実施形態においては、図23、図24に示すように、各々の励起光源12Wide、12Mid、12Hotからの励起光としてのレーザー光が直接、各々の光偏光器201Wide、201Mid、201Hotに入射するように構成されていたのに対して、本実施形態においては、図33、図34に示すように、各々の励起光源12Wide、12Mid、12Hotからの励起光としてのレーザー光が各々の反射面60Wide、60Mid、60Hotで反射された後、各々の光偏光器201Wide、201Mid、201Hotに入射するように構成されている点で、両者は相違する。
それ以外、上記第2実施形態の車両用灯具300と同様の構成である。以下、上記第2実施形態の車両用灯具300との相違点を中心に説明し、上記第2実施形態の車両用灯具300と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
車両用灯具400は、図33、図34に示すように、3つの励起光源12Wide、12Mid、12Hot、3つの励起光源12Wide、12Mid、12Hotに対応して設けられた3つの反射面60Wide、60Mid、60Hot、3つの反射面60Wide、60Mid、60Hotに対応して設けられた3つの光偏光器201Wide、201Mid、201Hot、3つの光偏光器201Wide、201Mid、201Hotに対応して設けられた3つの走査領域AWide、AMid、AHot(図20参照)を含む波長変換部材18、3つの走査領域AWide、AMid、AHotそれぞれに形成される光度分布を投影して、所定配光パターンPを形成する光学系としての投影レンズ20等を備えた車両用前照灯として構成されている。なお、励起光源12、反射面60、光偏光器201及び走査領域Aは3つに限定されず、2つ又は4つ以上であってもよいのは無論である。
図33に示すように、投影レンズ20、波長変換部材18、光偏光器201Wide、201Mid、201Hotは、この順に、車両前後方向に延びる基準軸AX(光軸とも称される)に沿って配置されている。
励起光源12Wide、12Mid、12Hotは、それぞれの励起光RayWide、RayMid、RayHotが前方、かつ、基準軸AX寄りに向かうように傾斜した姿勢でレーザー保持部46Aに固定されて、基準軸AXを取り囲むように配置されている。
具体的には、励起光源12Wide、12Mid、12Hotは、次のようにレーザー保持部46Aに固定されて配置されている。
レーザー保持部46Aは、光偏光器保持部58の外周面のうち上部から前方斜め上方に向かって延びる延長部46AU、光偏光器保持部58の外周面のうち下部から前方斜め下方に向かって延びる延長部46AD、光偏光器保持部58の外周面のうち正面視で左部から前方斜め左方向に向かって延びる延長部46AL、光偏光器保持部58の外周面のうち正面視で右部から前方斜め右方向に向かって延びる延長部46AR(図示せず)を含んでいる。
ワイド用励起光源12Wideは、図33に示すように、その励起光RayWideが前方斜め上方向に向かって進行するように傾斜した姿勢で延長部46ADの前面に固定されている。同様に、ミドル用励起光源12Midは、その励起光RayMidが前方斜め下方向に向かって進行するように傾斜した姿勢で延長部46AUの前面に固定されている。同様に、ホット用励起光源12Hotは、その励起光RayHotが正面視で前方斜め左方向に向かって進行するように傾斜した姿勢で延長部46ALの前面に固定されている。
投影レンズ20(レンズ20A〜20D)が固定されたレンズホルダ56は、その後端部が筒部48の先端開口に螺合することで、当該筒部48に固定されている。
各々の励起光源12Wide、12Mid、12Hotからの励起光RayWide、RayMid、RayHotは、各々の集光レンズ14で集光され(例えばコリメートされ)、各々の反射面60Wide、60Mid、60Hotで反射された後、各々の光偏光器201Mid、201Wide、201Hot(各々のミラー部202)に入射する。
反射面60Wide、60Mid、60Hotは、それぞれ、励起光源12Wide、12Mid、12Hotのうち対応する励起光源からの励起光が入射し、かつ、各々の反射面60Wide、60Mid、60Hotからの反射光としての励起光RayWide、RayMid、RayHotが後方、かつ、基準軸AX寄りに向かうように傾斜した姿勢で反射面保持部62に固定されて、励起光源12Wide、12Mid、12Hotより基準軸AX寄り、かつ、当該基準軸AXを取り囲むように配置されている。
具体的には、反射面60Wide、60Mid、60Hot、は、次のように反射面保持部62に固定されて配置されている。
反射面保持部62は、基準軸AX方向に延びる筒部48の後端から後方外側に向かって延びるリング状の延長部64を含んでいる。リング状の延長部64の後面は基準軸AX寄りの内側より外側が後方に位置するように傾斜している(図33参照)。
ワイド用反射面60Wideは、その反射光としての励起光RayWideが後方斜め上方向に向かって進行するように傾斜した姿勢でリング状の延長部64の後面のうち下部に固定されている。同様に、ミドル用反射面60Midは、その反射光としての励起光RayMidが後方斜め下方向に向かって進行するように傾斜した姿勢でリング状の延長部64の後面のうち上部に固定されている。同様に、ホット用反射面60Hot(図示せず)は、その反射光としての励起光RayHotが正面視で後方斜め右方向に向かって進行するように傾斜した姿勢でリング状の延長部64の後面のうち正面視で左部に固定されている。
光偏光器201Wide、201Mid、201Hotは、それぞれ、図34に示すように、反射面60Wide、60Mid、60Hotのうち対応する反射面からの反射光としての励起光が各々のミラー部202に入射し、かつ、各々のミラー部202からの反射光としての励起光が走査領域AWide、AMid、AHotのうち対応する走査領域に向かうように、反射面60Wide、60Mid、60Hotより基準軸AX寄り、かつ、当該基準軸AXを取り囲むように配置されている。
具体的には、光偏光器201Wide、201Mid、201Hotは、上記第2実施形態と同様、光偏光器保持部58に固定されて配置されている。
ワイド用光偏光器201Wide(本発明の第1光偏光器に相当)は、そのミラー部202がワイド用反射面60Wideからの反射光としての励起光RayWideの光路上に位置した状態で、四角錐形状の前面のうち下面58Dに傾斜した姿勢で固定されている。同様に、ミドル用光偏光器201Mid(本発明の第2光偏光器に相当)は、そのミラー部202がミドル用反射面60Midからの反射光としての励起光RayMidの光路上に位置した状態で、四角錐形状の前面のうち上面58Uに傾斜した姿勢で固定されている。同様に、ホット用光偏光器201Hot(本発明の第3光偏光器に相当)は、そのミラー部202がホット用反射面60Hotからの反射光としての励起光RayHotの光路上に位置した状態で、四角錐形状の前面のうち正面視で左側に配置された左面58Lに傾斜した姿勢で固定されている。
各々の光偏光器201Wide、201Mid、201Hotは、第1軸X1が鉛直面に含まれ、第2軸X2が水平面に含まれた状態で配置されている。各々の光偏光器201Wide、201Mid、201Hotをこのように配置することで、車両用前照灯において求められる、水平方向にワイドで垂直方向に薄い所定配光パターン(所定配光パターンに対応する二次元像)を容易に形成(描画)することができる。
ワイド用光偏光器201Wideは、そのミラー部202によって水平方向及び垂直方向に二次元的に走査される励起光RayWideにより、ワイド用走査領域AWide(本発明の第1走査領域に相当)に第1二次元像を描画することで、当該ワイド用走査領域AWideに第1光度分布を形成する。
ミドル用光偏光器201Midは、そのミラー部202によって水平方向及び垂直方向に二次元的に走査される励起光RayMidにより、ミドル用走査領域AMid(本発明の第2走査領域に相当)に第2二次元像の一部に重なった状態で第2二次元像を描画することで、当該ミドル用走査領域AMidに第1光度分布より光度が高い第2光度分布を形成する。
図20に示すように、ミドル用走査領域AMidはワイド用走査領域AWideより小サイズで、かつ、ワイド用走査領域AWideの一部と重なっている。その結果、当該重なったミドル用走査領域AMidに形成される光度分布が相対的に高くなる。
ホット用光偏光器201Hotは、そのミラー部202によって水平方向及び垂直方向に二次元的に走査される励起光RayHotにより、ホット用走査領域AHot(本発明の第3走査領域に相当)に第3二次元像の一部及び第2二次元像の一部に重なった状態で第3二次元像を描画することで、当該ホット用走査領域AHotに第2光度分布より光度が高い第3光度分布を形成する。
図20に示すように、ホット用走査領域AHotはミドル用走査領域AMidより小サイズで、かつ、ミドル用走査領域AMidの一部と重なっている。その結果、当該重なったホット用走査領域AHotに形成される光度分布が相対的に高くなる。
なお、各々の走査領域AWide、AMid、AHotは、図20に例示した外形が矩形の領域に限らず、例えば、外形が円形、楕円形又はそれ以外の各種の形状の領域であってもよい。
波長変換部材18は、上記第2実施形態と同様、蛍光体保持部52に固定されている。
本実施形態においても、上記第2実施形態と同様の手法で、走査領域AWide、AMid、AHotのサイズ(水平方向の長さ及び垂直方向の長さ)を調整することができる。
本実施形態によれば、上記第2実施形態と同様、励起光を二次元的に走査する複数の光偏光器を用いた車両用灯具において、コンパクト化を可能とし、かつ、コストアップの要因となる部品点数を低減することが可能となる。
また、本実施形態によれば、励起光を二次元的に走査する複数の光偏光器を用いた車両用灯具において、一部の光度が相対的に高く、そこから周囲に向かうに従って光度がグラデーション状に低くなる所定配光パターン、例えば、図25に示すように、中心光度(PHot)が相対的に高く、そこから周囲に向かう(PHot→PMid→PWide)に従って光度がグラデーション状に低くなる、遠方視認性及び配光フィーリングに優れた所定配光パターンP(例えば、ハイビーム用配光パターン)を形成することができる。
また、本実施形態によれば、上記車両用灯具300(灯具ユニット)と比べ、反射が1回増えるため、その分の効率が若干低下するものの、車両用灯具400(灯具ユニット)を上下左右方向(水平方向及び鉛直方向)に関し、小型化することができる。
次に、変形例について説明する。
上記第1〜第3実施形態では、励起光源12(12Wide、12Mid、12Hot)として励起光を放出する半導体発光素子を用いた例を説明したが、本発明はこれに限定されない。
例えば、励起光源12(12Wide、12Mid、12Hot)として、図30、図35に示すように、励起光を出射する光ファイバFの出射端面Faを用いてもよい。特に、励起光源12(12Wide、12Mid、12Hot)として、励起光を出射する光ファイバFの出射端面Faを用いることで、当該光ファイバFの入射端面Fbから導入される励起光を放出する励起光源(図示せず)を、車両用灯具10(車両用灯具本体)から離間した場所に配置することができるため、車両用灯具10のさらなるコンパクト化、軽量化を実現することができる。
図35は、3つの励起光源(図示せず)と、各々の励起光源からの励起光としてのレーザー光が入射する入射端面Fbと当該入射端面Fbから導入されるレーザー光が出射する出射端面Faとを含むコアと当該コアの周囲を取り囲むクラッドとを含む3本の光ファイバFとを組み合わせた例である。なお、説明の都合上、図35中、ホット用光ファイバFは省略してある。
図30は、1つの励起光源12と、励起光源12からの励起光としてのレーザー光を複数(例えば3)に分配する光分配器68と、当光分配器68で分配された各々の励起光としてのレーザー光が入射する入射端面Fbと当該入射端面Fbから導入されるレーザー光が出射する出射端面Faとを含むコアと当該コアの周囲を取り囲むクラッドとを含む分配数に応じた本数(例えば3本)の光ファイバFとを組み合わせた例である。
図36は、光分配器68の内部構造例で、複数の無偏向ビームスプリッタ68a、偏向ビームスプリッタ68b、1/2λ板68c及びミラー68dを図36のとおりに配置することで、集光レンズ14で集光された励起光源12からの励起光としてのレーザー光を、25%、37.5%、37.5%の割合で分配するように構成された光分配器の例である。
これら変形例によっても、上記各実施形態と同様の効果を奏することができる。
次に、第4実施形態として、上記第1実施形態で説明した車両用灯具10(図1参照)において、1軸非共振・1軸共振タイプの光偏光器201(図3参照)を用いて、一部領域の光度が相対的に高い光度分布(及び一部領域の光度が相対的に高い所定配光パターン)を形成する手法について説明する。
まず、一部領域の光度が相対的に高い光度分布(及び一部領域の光度が相対的に高い所定配光パターン)として、図37(a)に示すように、中央付近の領域B1(図37(a)中の一点鎖線で囲んだ領域参照)の光度が相対的に高い光度分布(及び中央付近の領域の光度が相対的に高いハイビーム用配光パターン)を形成する手法について説明する。なお、この手法は、上記第1実施形態で説明した車両用灯具10に限らず、上記第2実施形態で説明した車両用灯具300においても、上記第3実施形態で説明した車両用灯具400においても、その他各種の車両用灯具においても用いることができるのは無論である。
以下の説明では、車両用灯具10は、1軸非共振・1軸共振タイプの光偏光器201のミラー部202によって二次元的に走査される励起光により波長変換部材18の走査領域A1に二次元像が形成されるように、共振駆動により第1アクチュエータ203、204を制御し、かつ、非共振駆動により第2アクチュエータ205、206を制御する制御部(例えば、図10に示す制御部24、MEMS電源回路26等)を備えているものとする。また、励起光源12の出力(又は変調速度)は一定で、1軸非共振・1軸共振タイプの光偏光器201は、第1軸X1が鉛直面に含まれ、第2軸X2が水平面に含まれた状態で配置されているものとする。
図37(a)は、中央付近の領域B1の光度が相対的に高い光度分布の例で、ミラー部202によって二次元的に走査される励起光により波長変換部材18の走査領域A1に二次元像が描画されることで、当該波長変換部材18の走査領域A1に形成されている。なお、走査領域A1は、図37(a)に例示した外形が矩形の領域に限らず、例えば、外形が円形、楕円形又はそれ以外の各種の形状の領域であってもよい。
図37(a)に示す光度分布は、水平方向(図37(a)中左右方向)に関し、中央付近の領域の光度が相対的に低く(かつ、左右両端付近の領域の光度が相対的に高く)、かつ、垂直方向(図37(a)中上下方向)に関し、中央付近の領域B1の光度が相対的に高い(かつ、上下両端付近の領域の光度が相対的に低い)光度分布で、全体として、車両用前照灯に求められる中央付近の領域B1の光度が相対的に高い光度分布である。
図37(a)に示す光度分布は、次のようにして形成することができる。すなわち、制御部が、図37(b)に示す駆動信号(正弦波)に基づく共振駆動により第1アクチュエータ203、204を制御し、かつ、図37(c)に示す非線形領域を含む駆動信号(鋸歯状波又は矩形波)に基づく非共振駆動により第2アクチュエータ205、206を制御することで形成することができる。具体的には、制御部が、第1圧電アクチュエータ203、204に対して図37(b)に示す駆動信号(正弦波)に従って駆動電圧を印加し、かつ、第2圧電アクチュエータ205、206に対して図37(c)に示す非線形領域を含む駆動信号(鋸歯状波又は矩形波)に従って駆動電圧を印加することで形成することができる。その理由は次のとおりである。
すなわち、1軸非共振・1軸共振タイプの光偏光器201においては、第1圧電アクチュエータ203、204に対して図37(b)に示す駆動信号(正弦波)に従って駆動電圧を印加すると、ミラー部202の第1軸X1を中心とする往復揺動の速度(水平方向の走査速度)が、波長変換部材18の走査領域A1の水平方向の中央付近の領域で最大となり、かつ、水平方向の左右両端付近の領域で最小となる。その理由は、第1に、図37(c)に示す駆動信号が正弦波であること、第2に、制御部が、当該駆動信号(正弦波)に基づく共振駆動により第1アクチュエータ203、204を制御すること、によるものである。
この場合、ミラー部202の第1軸X1を中心とする往復揺動の速度が相対的に速くなる中央付近の領域では、単位面積当たりの励起光の照射量が相対的に減少する。逆に、ミラー部202の第1軸X1を中心とする往復揺動の速度が相対的に遅くなる左右両端付近の領域では、単位面積当たりの励起光の照射量が相対的に増加する。その結果、図37(a)に示す光度分布は、水平方向に関し、中央付近の領域の光度が相対的に低い(かつ、左右両端付近の領域の光度が相対的に高い)ものとなる。
図37(a)中の縦方向に延びる複数の線間の距離は、ミラー部202によって水平方向に走査される励起光源12からの励起光の単位時間当たりの走査距離を表している。つまり、縦方向に延びる複数の線間の距離は、ミラー部202の第1軸X1を中心とする往復揺動の速度(水平方向の走査速度)を表している。この距離が短いほど、ミラー部202の第1軸X1を中心とする往復揺動の速度(水平方向の走査速度)が遅いことを表す。
図37(a)を参照すると、縦方向に延びる複数の線間の距離は、中央付近の領域で相対的に広く(すなわちミラー部202の第1軸X1を中心とする往復揺動の速度が中央付近の領域で相対的に速く)、左右両端付近の領域で相対的に狭い(すなわちミラー部202の第1軸X1を中心とする往復揺動の速度が左右両端付近の領域で相対的に遅い)ことが分かる。
一方、1軸非共振・1軸共振タイプの光偏光器201においては、第2圧電アクチュエータ205、206に対して図37(c)に示す非線形領域を含む駆動信号(鋸歯状波又は矩形波)に従って駆動電圧を印加すると、ミラー部202の第2軸X2を中心とする往復揺動の速度(垂直方向の走査速度)が、波長変換部材18の走査領域A1の垂直方向の中央付近の領域B1で相対的に遅くなる。その理由は、第1に、図37(c)に示す非線形領域を含む駆動信号(鋸歯状波又は矩形波)が、ミラー部202によって二次元的に走査される励起光により波長変換部材18の走査領域A1中の中央付近の領域B1に二次元像が描画される間、ミラー部202の第2軸X2を中心とする往復揺動の速度が相対的に遅くなるように調整された非線形領域を含む駆動信号であること、第2に、制御部が、当該非線形領域を含む駆動信号(鋸歯状波又は矩形波)に基づく非共振駆動により第2アクチュエータ205、206を制御すること、によるものである。
この場合、ミラー部202の第2軸X2を中心とする往復揺動の速度が相対的に遅くなる中央付近の領域B1では、単位面積当たりの励起光の照射量が相対的に増加する。また、当該中央付近の領域B1では、相対的に画素が密で解像度が高くなる。逆に、ミラー部202の第2軸X2を中心とする往復揺動の速度が相対的に速くなる上下両端付近の領域では、単位面積当たりの励起光の照射量が相対的に減少する。また、当該上下両端付近の領域では、相対的に画素が粗で解像度が低くなる。その結果、図37(a)に示す光度分布は、垂直方向に関し、中央付近の領域B1の光度が相対的に高い(かつ、上下両端付近の領域の光度が相対的に低い)ものとなる。
図37(a)中の横方向に延びる複数の線間の距離は、ミラー部202によって垂直方向に走査される励起光源12からの励起光の単位時間当たりの走査距離を表している。つまり、横方向に延びる複数の線間の距離は、ミラー部202の第2軸X2を中心とする往復揺動の速度(垂直方向の走査速度)を表している。この距離が短いほど、ミラー部202の第2軸X2を中心とする往復揺動の速度(垂直方向の走査速度)が遅く、相対的に画素が密で解像度が高くなることを表す。
図37(a)を参照すると、横方向に延びる複数の線間の距離は、中央付近の領域B1で相対的に狭く(すなわちミラー部202の第2軸X2を中心とする往復揺動の速度が中央付近の領域B1で相対的に遅く)、上下両端付近の領域で相対的に広い(すなわちミラー部202の第2軸X2を中心とする往復揺動の速度が上下両端付近の領域で相対的に速い)ことが分かる。
以上のようにして波長変換部材18の走査領域A1に中央付近の領域B1の光度が相対的に高い光度分布(図37(a)参照)が形成される。この光度分布は、対向車等の見かけ上の大きさが相対的に小さくなる中央付近の領域B1において相対的に画素が密で解像度が高くなり、かつ、対向車等の見かけ上の大きさが相対的に大きくなる左右両端付近において相対的に画素が粗で解像度が低いものとなるため、特に、ADBを実現するためのハイビーム用配光パターンに適したものとなる。そして、この中央付近の領域B1の光度が相対的に高い光度分布(図37(a)参照)が投影レンズ20によって前方に投影されることで、仮想鉛直スクリーン上に中央付近の領域の光度が相対的に高いハイビーム用配光パターンが形成される。
次に、参考例として、制御部が、第1圧電アクチュエータ203、204に対して図38(b)に示す駆動信号(図37(b)に示す駆動信号と同じ)に従って駆動電圧を印加し、かつ、第2圧電アクチュエータ205、206に対して図37(c)に示す非線形領域を含む駆動信号に代えて、図38(c)に示す線形領域を含む駆動信号(鋸歯状波又は矩形波)に従って駆動電圧を印加することで波長変換部材18の走査領域A1に形成される光度分布(図38(a)参照)について説明する。
図38(a)に示す光度分布は、水平方向(図38(a)中左右方向)に関し、中央付近の領域の光度が相対的に低く(かつ、左右両端付近の領域の光度が相対的に高く)、かつ、垂直方向(図38(a)中上下方向)に関し、上下両端間の光度が均一(又は略均一)の光度分布で、車両用前照灯に適さない光度分布となる。垂直方向に関し、上下両端間の光度が均一(又は略均一)の光度分布となるのは、図38(c)に示す駆動信号が、図37(c)に示すような非線形領域を含む駆動信号ではなく、線形領域を含む駆動信号であり、その結果、垂直方向の走査速度が一定となることによるものである。
以上説明したように、本実施形態によれば、励起光を二次元的に走査する1軸非共振・1軸共振タイプの光偏光器201(図3参照)を用いた車両用灯具において、車両用灯具(特に、車両用前照灯)に求められる一部領域(例えば、中央付近の領域B1)の光度が相対的に高い光度分布(図37(a)参照)を形成することができる。
これは、制御部が、ミラー部202によって二次元的に走査される励起光により波長変換部材18の走査領域A1中の一部領域(例えば、中央付近の領域B1)に二次元像が描画される間、ミラー部202の第2軸X2を中心とする往復揺動の速度が相対的に遅くなるように第2アクチュエータ205、206を制御することによるものである。
また、本実施形態によれば、励起光を二次元的に走査する1軸非共振・1軸共振タイプの光偏光器201(図3参照)を用いた車両用灯具において、一部領域(例えば、中央付近の領域B1)の光度が相対的に高い所定配光パターン(例えば、ハイビーム用配光パターン)を形成することができる。
これは、上記のように、一部領域(例えば、中央付近の領域B1)の光度が相対的に高い光度分布(図37(a)参照)を形成することができること、そして、所定配光パターン(例えば、ハイビーム用配光パターン)は、この一部領域(例えば、中央付近の領域B1)の光度が相対的に高い光度分布が投影されることで形成されること、によるものである。
また、本実施形態によれば、走査領域A1に形成される光度分布は、対向車等の見かけ上の大きさが相対的に小さくなる中央付近の領域B1において相対的に画素が密で解像度が高くなり、かつ、対向車等の見かけ上の大きさが相対的に大きくなる左右両端付近において相対的に画素が粗で解像度が低いものとなるため、特に、ADBを実現するためのハイビーム用配光パターンに適したものとなる。
なお、第2圧電アクチュエータ205、206を制御する基礎となる非線形領域を含む駆動信号(例えば、図37(c)参照)を調整することで、中央付近の領域B1に限らず、任意の領域の光度が相対的に高い光度分布(及び任意の領域の光度が相対的に高い所定配光パターン)を形成することができる。
例えば、図39に示すように、カットオフラインに対応する辺e付近の領域B2(図39中の一点鎖線で囲んだ領域参照)の光度が相対的に高い光度分布(及びカットオフライン付近の領域の光度が相対的に高いロービーム用配光パターン)を形成することができる。これは、第2圧電アクチュエータ205、206を制御する基礎となる非線形領域を含む駆動信号(鋸歯状波又は矩形波)として、ミラー部202によって二次元的に走査される励起光により波長変換部材18の走査領域A2中のカットオフラインに対応する辺e付近の領域B2に二次元像が描画される間、ミラー部202の第2軸X2を中心とする往復揺動の速度が相対的に遅くなるように調整された非線形領域を含む駆動信号を用いることで容易に実現することができる。
次に、第5実施形態として、上記第1実施形態で説明した車両用灯具10(図1参照)において、1軸非共振・1軸共振タイプの光偏光器201に代えて、2軸非共振タイプの光偏光器161(図15参照)を用いて、一部領域の光度が相対的に高い光度分布(及び一部領域の光度が相対的に高い所定配光パターン)を形成する手法について説明する。
まず、一部領域の光度が相対的に高い光度分布(及び一部領域の光度が相対的に高い所定配光パターン)として、図40(a)に示すように、中央付近の領域B1、B3(図40(a)中の一点鎖線で囲んだ領域参照)の光度が相対的に高い光度分布(及び中央付近の領域の光度が相対的に高いハイビーム用配光パターン)を形成する手法について説明する。なお、この手法は、上記第1実施形態で説明した車両用灯具10に限らず、上記第2実施形態で説明した車両用灯具300においても、上記第3実施形態で説明した車両用灯具400においても、その他各種の車両用灯具においても用いることができるのは無論である。
以下の説明では、車両用灯具10は、2軸非共振タイプの光偏光器161のミラー部162によって二次元的に走査される励起光により波長変換部材18の走査領域A1に二次元像が形成されるように、非共振駆動により第1アクチュエータ163、164及び第2アクチュエータ165、166を制御する制御部(例えば、図10に示す制御部24、MEMS電源回路26等)を備えているものとする。また、励起光源12の出力(又は変調速度)は一定で、2軸非共振タイプの光偏光器161は、第3軸X3が鉛直面に含まれ、第4軸X4が水平面に含まれた状態で配置されているものとする。
図40(a)は、中央付近の領域B1、B3の光度が相対的に高い光度分布の例で、ミラー部162によって二次元的に走査される励起光により波長変換部材18の走査領域A1に二次元像が描画されることで、当該波長変換部材18の走査領域A1に形成されている。なお、走査領域A1は、図40(a)に例示した外形が矩形の領域に限らず、例えば、外形が円形、楕円形又はそれ以外の各種の形状の領域であってもよい。
図40(a)に示す光度分布は、水平方向(図40(a)中左右方向)に関し、中央付近の領域B3の光度が相対的に高く(かつ、左右両端付近の領域の光度が相対的に低く)、かつ、垂直方向(図40(a)中上下方向)に関し、中央付近の領域B1の光度が相対的に高い(かつ、上下両端付近の領域の光度が相対的に低い)光度分布で、全体として、車両用前照灯に求められる中央付近の領域B1、B3の光度が相対的に高い光度分布である。
図40(a)に示す光度分布は、次のようにして形成することができる。すなわち、制御部が、図40(b)に示す第1非線形領域を含む第1駆動信号(鋸歯状波又は矩形波)に基づく非共振駆動により第1アクチュエータ163、164を制御し、かつ、図40(c)に示す第2非線形領域を含む第2駆動信号(鋸歯状波又は矩形波)に基づく非共振駆動により第2アクチュエータ165、166を制御することで形成することができる。具体的には、制御部が、第1圧電アクチュエータ163、164に対して図40(b)に示す第1非線形領域を含む第1駆動信号(鋸歯状波又は矩形波)に従って駆動電圧を印加し、かつ、第2圧電アクチュエータ165、166に対して図40(c)に示す第2非線形領域を含む第2駆動信号(鋸歯状波又は矩形波)に従って駆動電圧を印加することで形成することができる。その理由は次のとおりである。
すなわち、2軸非共振タイプの光偏光器161においては、第1圧電アクチュエータ163、164に対して図40(b)に示す第1非線形領域を含む第1駆動信号(鋸歯状波又は矩形波)に従って駆動電圧を印加すると、ミラー部162の第3軸X3を中心とする往復揺動の速度(水平方向の走査速度)が、波長変換部材18の走査領域A1の水平方向の中央付近の領域B3で相対的に遅くなる。その理由は、第1に、図40(b)に示す第1非線形領域を含む第1駆動信号(鋸歯状波又は矩形波)が、ミラー部162によって二次元的に走査される励起光により波長変換部材18の走査領域A1中の中央付近の領域B3に二次元像が描画される間、ミラー部162の第3軸X3を中心とする往復揺動の速度が相対的に遅くなるように調整された非線形領域を含む駆動信号であること、第2に、制御部が、当該第1非線形領域を含む第1駆動信号(鋸歯状波又は矩形波)に基づく非共振駆動により第1アクチュエータ163、164を制御すること、によるものである。
この場合、ミラー部162の第3軸X3を中心とする往復揺動の速度が相対的に遅くなる中央付近の領域B3では、単位面積当たりの励起光の照射量が相対的に増加する。また、当該中央付近の領域B3では、相対的に画素が密で解像度が高くなる。逆に、ミラー部162の第3軸X3を中心とする往復揺動の速度が相対的に速くなる左右両端付近の領域では、単位面積当たりの励起光の照射量が相対的に減少する。また、当該左右両端付近の領域では、相対的に画素が粗で解像度が低くなる。その結果、図40(a)に示す光度分布は、水平方向に関し、中央付近の領域B3の光度が相対的に高い(かつ、左右両端付近の領域の光度が相対的に低い)ものとなる。
図40(a)中の縦方向に延びる複数の線間の距離は、ミラー部162によって水平方向に走査される励起光源12からの励起光の単位時間当たりの走査距離を表している。つまり、縦方向に延びる複数の線間の距離は、ミラー部162の第3軸X3を中心とする往復揺動の速度(水平方向の走査速度)を表している。この距離が短いほど、ミラー部162の第3軸X3を中心とする往復揺動の速度(水平方向の走査速度)が遅く、相対的に画素が密で解像度が高くなることを表す。
図40(a)を参照すると、縦方向に延びる複数の線間の距離は、中央付近の領域B3で相対的に狭く(すなわちミラー部162の第3軸X3を中心とする往復揺動の速度が中央付近の領域B3で相対的に遅く)、左右両端付近の領域で相対的に広い(すなわちミラー部162の第3軸X3を中心とする往復揺動の速度が左右両端付近の領域で相対的に速い)ことが分かる。
一方、2軸非共振タイプの光偏光器161においては、第2圧電アクチュエータ165、166に対して図40(c)に示す第2非線形領域を含む第2駆動信号(鋸歯状波又は矩形波)に従って駆動電圧を印加すると、ミラー部162の第4軸X4を中心とする往復揺動の速度(垂直方向の走査速度)が、波長変換部材18の走査領域A1の垂直方向の中央付近の領域B1で相対的に遅くなる。その理由は、第1に、図40(c)に示す第2非線形領域を含む第2駆動信号(鋸歯状波又は矩形波)が、ミラー部162によって二次元的に走査される励起光により波長変換部材18の走査領域A1中の中央付近の領域B1に二次元像が描画される間、ミラー部162の第4軸X4を中心とする往復揺動の速度が相対的に遅くなるように調整された非線形領域を含む駆動信号であること、第2に、制御部が、当該第2非線形領域を含む第2駆動信号(鋸歯状波又は矩形波)に基づく非共振駆動により第2アクチュエータ165、166を制御すること、によるものである。
この場合、ミラー部162の第4軸X4を中心とする往復揺動の速度が相対的に遅くなる中央付近の領域B1では、単位面積当たりの励起光の照射量が相対的に増加する。また、当該中央付近の領域B1では、相対的に画素が密で解像度が高くなる。逆に、ミラー部162の第4軸X4を中心とする往復揺動の速度が相対的に速くなる上下両端付近の領域では、単位面積当たりの励起光の照射量が相対的に減少する。また、当該上下両端付近の領域では、相対的に画素が粗で解像度が低くなる。その結果、図40(a)に示す光度分布は、垂直方向に関し、中央付近の領域B1の光度が相対的に高い(かつ、上下両端付近の領域の光度が相対的に低い)ものとなる。
図40(a)中の横方向に延びる複数の線間の距離は、ミラー部162によって垂直方向に走査される励起光源12からの励起光の単位時間当たりの走査距離を表している。つまり、横方向に延びる複数の線間の距離は、ミラー部162の第4軸X4を中心とする往復揺動の速度(垂直方向の走査速度)を表している。この距離が短いほど、ミラー部162の第4軸X4を中心とする往復揺動の速度(垂直方向の走査速度)が遅く、相対的に画素が密で解像度が高くなることを表す。
図40(a)を参照すると、横方向に延びる複数の線間の距離は、中央付近の領域B1で相対的に狭く(すなわちミラー部162の第4軸X4を中心とする往復揺動の速度が中央付近の領域B1で相対的に遅く)、上下両端付近の領域で相対的に広い(すなわちミラー部162の第4軸X4を中心とする往復揺動の速度が上下両端付近の領域で相対的に速い)ことが分かる。
以上のようにして波長変換部材18の走査領域A1に中央付近の領域B1、B3の光度が相対的に高い光度分布(図40(a)参照)が形成される。この光度分布は、対向車等の見かけ上の大きさが相対的に小さくなる中央付近の領域B1において相対的に画素が密で解像度が高くなり、かつ、対向車等の見かけ上の大きさが相対的に大きくなる左右両端付近において相対的に画素が粗で解像度が低いものとなるため、特に、ADBを実現するためのハイビーム用配光パターンに適したものとなる。そして、この中央付近の領域B1、B3の光度が相対的に高い光度分布(図40(a)参照)が投影レンズ20によって前方に投影されることで、仮想鉛直スクリーン上に中央付近の領域の光度が相対的に高いハイビーム用配光パターンが形成される。
次に、参考例として、制御部が、第1圧電アクチュエータ163、164に対して図40(b)に示す第1非線形領域を含む第1駆動信号に代えて、図41(b)に示す線形領域を含む駆動信号(鋸歯状波又は矩形波)に従って駆動電圧を印加し、かつ、第2圧電アクチュエータ165、166に対して図40(c)に示す第2非線形領域を含む第2駆動信号に代えて、図41(c)に示す線形領域を含む駆動信号(鋸歯状波又は矩形波)に従って駆動電圧を印加することで波長変換部材18の走査領域A1に形成される光度分布(図41(a)参照)について説明する。
図41(a)に示す光度分布は、水平方向(図41(a)中左右方向)に関し、左右両端間の光度が均一(又は略均一)、かつ、垂直方向(図41(a)中左右方向)に関し、上下両端間の光度が均一(又は略均一)の光度分布で、車両用前照灯に適さない光度分布となる。水平方向に関し、左右両端間の光度が均一(又は略均一)の光度分布となるのは、図41(b)に示す駆動信号が、図40(b)に示すような非線形領域を含む駆動信号ではなく、線形領域を含む駆動信号であり、その結果、水平方向の走査速度が一定となることによるものである。同様に、垂直方向に関し、上下両端間の光度が均一(又は略均一)の光度分布となるのは、図41(c)に示す駆動信号が、図40(c)に示すような非線形領域を含む駆動信号ではなく、線形領域を含む駆動信号であり、その結果、垂直方向の走査速度が一定となることによるものである。
以上説明したように、本実施形態によれば、励起光を二次元的に走査する2軸非共振タイプの光偏光器161(図15参照)を用いた車両用灯具において、車両用灯具(特に、車両用前照灯)に求められる一部領域(例えば、中央付近の領域B1、B3)の光度が相対的に高い光度分布(図40(a)参照)を形成することができる。
これは、制御部が、ミラー部162によって二次元的に走査される励起光により波長変換部材18の走査領域A1中の一部領域(例えば、中央付近の領域B1、B3)に二次元像が描画される間、ミラー部162の第3軸X3及び第4軸X4を中心とする往復揺動の速度が相対的に遅くなるように第1アクチュエータ163、164及び第2アクチュエータ165、166を制御することによるものである。
また、本実施形態によれば、励起光を二次元的に走査する2軸非共振タイプの光偏光器161(図15参照)を用いた車両用灯具において、一部領域(例えば、中央付近の領域B1、B3)の光度が相対的に高い所定配光パターン(例えば、ハイビーム用配光パターン)を形成することができる。
これは、上記のように、一部領域(例えば、中央付近の領域B1、B3)の光度が相対的に高い光度分布(図40(a)参照)を形成することができること、そして、所定配光パターンは、この一部領域(例えば、中央付近の領域B1、B3)の光度が相対的に高い光度分布(図40(a)参照)が投影されることで形成されること、によるものである。
また、本実施形態によれば、走査領域A1に形成される光度分布は、対向車等の見かけ上の大きさが相対的に小さくなる中央付近の領域B1において相対的に画素が密で解像度が高くなり、かつ、対向車等の見かけ上の大きさが相対的に大きくなる左右両端付近において相対的に画素が粗で解像度が低いものとなるため、特に、ADBを実現するためのハイビーム用配光パターンに適したものとなる。
なお、第1アクチュエータ163、164及び第2アクチュエータ165、166を制御する基礎となる非線形領域を含む第1駆動信号及び第2駆動信号を調整することで、中央付近の領域B1、B3に限らず、任意の領域の光度が相対的に高い光度分布(及び任意の領域の光度が相対的に高い所定配光パターン)を形成することができる。
例えば、図39に示すように、カットオフラインに対応する辺e付近の領域B2(図39中の一点鎖線で囲んだ領域参照)の光度が相対的に高い光度分布(及びカットオフライン付近の領域の光度が相対的に高いロービーム用配光パターン)を形成することができる。これは、第2アクチュエータ165、166を制御する基礎となる第2非線形領域を含む第2駆動信号(鋸歯状波又は矩形波)として、ミラー部162によって二次元的に走査される励起光により波長変換部材18の走査領域A2中のカットオフラインに対応する辺e付近の領域B2に二次元像が描画される間、ミラー部162の第4軸X4を中心とする往復揺動の速度が相対的に遅くなるように調整された非線形領域を含む駆動信号を用いることで容易に実現することができる。
次に、参考例として、上記第1実施形態で説明した車両用灯具10(図1参照)において、1軸非共振・1軸共振タイプの光偏光器201に代えて、2軸共振タイプの光偏光器201A(図17参照)を用い、制御部が、第1圧電アクチュエータ15Aa、15Abに対して図42(b)に示す駆動信号(正弦波)に従って駆動電圧を印加し、かつ、第2圧電アクチュエータ17Aa、17Abに対して図42(c)に示す駆動信号(正弦波)に従って駆動電圧を印加することで波長変換部材18の走査領域A1に形成される光度分布(図42(a)参照)について説明する。
但し、車両用灯具10は、2軸共振タイプの光偏光器201Aのミラー部13Aによって二次元的に走査される励起光により走査領域Aに二次元像が形成されるように、共振駆動により第1アクチュエータ15Aa、15Abを制御し、かつ、共振駆動により第2アクチュエータ17Aa、17Abを制御する制御部(例えば、図10に示す制御部24、MEMS電源回路26等)を備えているものとする。また、励起光源12の出力(又は変調速度)は一定で、2軸共振タイプの光偏光器201Aは、第5軸X5が鉛直面に含まれ、第6軸X6が水平面に含まれた状態で配置されているものとする。
この場合、図42(a)に示す光度分布は、水平方向(図42(a)中左右方向)に関し、中央付近の領域の光度が相対的に低く(かつ、左右両端付近の領域の光度が相対的に高く)、かつ、垂直方向(図42(a)中上下方向)に関し、中央付近の領域の光度が相対的に低い(かつ、上下両端付近の領域の光度が相対的に高い)光度分布で、車両用前照灯に適さない光度分布となる。
上記実施形態及び各変形例で示した各数値は全て例示であり、これと異なる適宜の数値を用いることができる。
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。これらの記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。