JP2015153640A - スパークプラグ及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】着火性と耐久性の両方に優れたスパークプラグを提供する。【解決手段】スパークプラグは、接地電極の放電面と中心電極の放電面との間の軸線方向に沿った距離が接地電極の先端に行くほど小さくなるように、中心電極の放電面に対して接地電極の放電面が傾いている。接地電極の形状パラメータθ、X、Zは、次式を満足する:θ≧−44.5(X/Z)+35.6 …(1)θ≰−2.86(X/Z)+10.7 …(2)(X/Z)≰0.95 …(3)θ≧0.1 …(4)【選択図】図2

Description

本発明は、スパークプラグ及びその製造方法に関する。
一般に、スパークプラグは、その先端側に中心電極と接地電極とを有している。中心電極は、絶縁体の軸孔に保持された状態で、絶縁体の先端から突出している。一方、接地電極は、主体金具の先端部に接合されている。最も一般的なスパークプラグでは、接地電極の放電面と中心電極の放電面が平行な状態に設定されている。
近年では、特に着火性に優れたスパークプラグが求められている。そこで、従来から、接地電極を傾けて、接地電極の放電面と中心電極の放電面との間の角度を適切な範囲に設定することによって、着火性を向上させる技術が知られている(特許文献1〜3)。
特開2004−87464号公報 特開2002−324650号公報 特開2001−307857号公報
確かに、接地電極の放電面の傾き角を調整することによって着火性を向上させることが可能である。一方、本願の発明者らは、接地電極の放電面の傾き角が過度に大きくなると、スパークプラグの耐久性が低下するという課題を見出した。発明者らは、更に、接地電極の放電面の傾き角の他に、接地電極全体の曲がり具合がスパークプラグの着火性に影響を与えることを発見した。本発明は、これらの知見を基に、着火性と耐久性を両立させる構成を採用したものである。
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本発明の一形態によれば、軸線方向に貫通する軸孔を有する筒状の絶縁体と、前記絶縁体の先端から突出し前記軸線方向と直交する方向に延びる放電面を先端に有する中心電極と、軸孔内に前記絶縁体を収容する主体金具と、基端部が前記主体金具の先端部に接合された接地電極であって前記接地電極の先端にある放電面が前記中心電極の放電面と火花ギャップを隔てて配置されるように曲げられた曲げ部を有する接地電極と、を備えるスパークプラグが提供される。このスパークプラグにおいて、前記軸線方向に沿った前記中心電極の中心線と、前記接地電極のうちで前記中心電極の放電面と同じ軸線方向高さを有する部位における断面の面心とを通る平面上に、前記中心電極と前記接地電極とを投影した投影図を考える。この投影図上において、前記軸線方向と垂直な方向を横方向と呼ぶ。また、前記接地電極の放電面と前記中心電極の放電面との間の前記軸線方向に沿った距離が前記接地電極の先端に行くほど小さくなるように前記中心電極の放電面に対して前記接地電極の放電面が傾いており、前記中心電極の放電面に対して前記接地電極の放電面が傾く角度をθ(°)とする。更に、前記接地電極の前記曲げ部の内面のうちで前記中心電極の放電面と同じ軸線方向高さを有する部位における接線と前記接地電極の放電面の接線とが交わる交点位置と、前記中心電極の中心線との間の前記横方向に沿った距離をX(mm)とする。更に、前記中心電極の中心線と、前記接地電極の内面のうちで前記絶縁体の先端と同じ軸線方向高さを有する部位との間の最短距離をZ(mm)とする。前記スパークプラグは、前記θ、X、Zが、次式:
θ≧−44.5(X/Z)+35.6 …(1)
θ≦−2.86(X/Z)+10.7 …(2)
(X/Z)≦0.95 …(3)
θ≧0.1 …(4)
を満足する、ことを特徴とする。
この構成によれば、着火性と耐久性の両方に優れたスパークプラグを提供することができる。
(2)上記スパークプラグにおいて、前記θ、X、Zが、上記(1)式及び(4)式の代わりに次式:
θ≧−75(X/Z)+61 …(1a)
θ≧1.0 …(4a)
を満足するものとしてもよい。
この構成によれば、着火性が更に優れたスパークプラグを提供できる。
(3)上記スパークプラグにおいて、前記θ、X、Zが、上記(2)式の代わりに次式:
θ≦−4.7(X/Z)+8.1 …(2a)
を満足するものとしてもよい。
この構成によれば、耐久性が更に優れたスパークプラグを提供できる。
(4)本発明の他の形態によれば、上記スパークプラグの製造方法であって、前記主体金具の先端部に、棒状の接地電極部材の基端部を接合する接合工程と、前記接地電極部材を曲げることによって前記曲げ部を有する前記接地電極を形成する曲げ工程と、を備える製造方法が提供される。前記曲げ工程は、前記接地電極部材を仮曲げする第1曲げ工程と、前記仮曲げ後の前記接地電極部材を前記接地電極の形状になるまで更に曲げる第2曲げ工程と、を含む。前記仮曲げ後の前記接地電極部材のうちで前記中心電極の放電面と同じ軸線方向高さを有する部位における断面の面心と前記中心電極の中心線とを通る断面上において、前記接地電極部材の曲げ部の内面のうちで前記接地電極部材の基端部に最も近い部位を曲げ部起点Aと呼び、前記接地電極部材の基端部から最も遠い部位を曲げ部終点Bと呼ぶ。前記製造方法は、前記曲げ部起点Aと前記曲げ部終点Bとの間の前記横方向に沿った距離L1と、前記曲げ部起点Aと前記曲げ部終点Bとの間の前記軸線方向に沿った距離L2と、前記曲げ部起点Aと前記主体金具の先端部との間の前記軸線方向に沿った距離L3と、前記主体金具の先端部と前記中心電極の放電面との間の距離LGとが、
1.0<(L2/L1)<1.6、及び、1.1≦(L3/LG)≦1.2
を満足する、ことを特徴とする。
この構成によれば、上記の好ましい形状を有する接地電極を備えたスパークプラグを容易に製造することができる。
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能である。例えば、スパークプラグ、スパークプラグの製造方法、スパークプラグの接地電極の成形方法等の形態で実現することができる。
一実施形態としてのスパークプラグを示す正面図。 スパークプラグの先端部を拡大して示す説明図。 着火性と耐久性と耐折損性の試験結果を示す図。 着火性試験における正規放電部NDと非正規放電部DDを示す説明図。 形状パラメータ(X/Z),θの第1の好ましい範囲を示すグラフ。 形状パラメータ(X/Z),θの第2の好ましい範囲を示すグラフ。 形状パラメータ(X/Z),θの第3の好ましい範囲を示すグラフ。 仮曲げ工程と本曲げ工程を示す説明図。 仮曲げ工程と本曲げ工程における各種の形状パラメータを示す説明図。 仮曲げ時の距離L2を変化させた場合に得られる形状パラメータ(X/Z),θを示す図。 仮曲げ時の距離L3を変化させた場合に得られる形状パラメータ(X/Z),θを示す図。
図1は、本発明の一実施形態としてのスパークプラグ100を示す正面図である。図1において、スパークプラグ100の発火部が存在する下側をスパークプラグ100の先端側と定義し、上側を後端側と定義して説明する。このスパークプラグ100は、絶縁体10と、中心電極20と、接地電極30と、端子金具40と、主体金具50とを備えている。絶縁体10は、軸線Oに沿って延びる軸孔を有している。なお、軸線Oを「中心軸」とも呼ぶ。中心電極20は、軸線Oに沿って延びる棒状の電極であり、中心電極20の中心線は軸線Oと一致している。また、中心電極20は、絶縁体10の軸孔内に挿入された状態で保持されており、絶縁体10の先端から突出している。接地電極30は、一端が主体金具50の先端部52に固定され、他端が中心電極20と対向する電極である。端子金具40は、電力の供給を受けるための端子であり、中心電極20に電気的に接続されている。主体金具50は、絶縁体10の外周を囲む筒状の部材であり、絶縁体10を内部に固定している。主体金具50の外周には、ねじ部54が形成されている。ねじ部54は、ねじ山が形成された部位であり、スパークプラグ100をエンジンヘッドに取付ける際にエンジンヘッドのねじ孔に螺合する。
図2(A),(B)は、スパークプラグ100の先端部を拡大して示す説明図である。各図の左半分は、図示の便宜上、主体金具50と接地電極30と中心電極20についての断面を示しており、主体金具50の先端部内面58iの内側には、主体金具50の孔58が見えている。なお、各図の左半分において、断面であることを示すハッチングは省略されている。図2(A),(B)は同一の形状を示しており、図2(B)は後述するオフセットX、Zを示すために使用されている。なお、図2(A),(B)の左側半分は、中心電極20の中心線Oと接地電極30の中心とを通る平面上に、中心電極20と接地電極30とを投影した投影図であると考えることができる。なお、「中心電極20の中心線Oと接地電極30の中心とを通る平面」は、中心電極20の中心線Oと、接地電極30のうちで中心電極20の放電面22と同じ軸線方向高さを有する部位における断面の面心とを通る平面と考えることも可能である。また、「接地電極30のうちで中心電極20の放電面22と同じ軸線方向高さを有する部位における断面」は、軸線Oに垂直な断面である。また、「面心」とは、その接地電極30の断面の幾何学的な重心を意味する。
中心電極20は、絶縁体10の先端から突出しており、その先端面は放電面22を構成している。本実施形態では、放電面22は、軸線Oに垂直な平面である。接地電極30は、一端が主体金具50の先端部52に固定され、他端が中心電極20と対向している。接地電極30は、基端部32と曲げ部34と先端部36とで構成されている。基端部32は、主体金具50の先端部52から軸線方向に沿って直線状に延びる部分である。先端部36は、接地電極30の最も先端側において直線状に延びる部分である。曲げ部34は、基端部32と先端部36の間にあり、軸線Oに近づく方向に曲がる部分である。接地電極30の内面30i全体のうち、先端部36の内面36iは、中心電極20の放電面22との間で正規の放電が発生する放電面として機能する。
接地電極30の先端部36は、その先端に行くほど中心電極20の放電面22に近づく状態で傾いている。すなわち、接地電極30の放電面36iは、接地電極30の放電面36iと中心電極20の放電面22との間の軸線方向に沿った距離が、接地電極30の先端に行くほど小さくなるように、中心電極20の放電面22に対して傾いている。放電面22,36iの間の傾き角θは、0°を越える値である。傾き角θの好ましい範囲については後述する。
接地電極30の放電面36iの先端と、中心電極20の放電面22との間で構成される最小火花ギャップG(図2(B))は、未使用時において、例えば約0.7mm〜約1.5mmの範囲に設定される。但し、最小火花ギャップGの値は、用途等に応じて適宜設定可能である。なお、本実施形態では、最小火花ギャップGは約0.7mm(例えば0.65〜0.75mmの範囲)に設定される。
本実施形態では、接地電極30全体の曲がり具合を示す形状パラメータとして、以下に説明するオフセットX,Z(図2(B))を使用する。
(1)オフセットX:接地電極30の曲げ部34の内面30iのうちで中心電極20の放電面22と同じ軸線方向高さを有する部位34aにおける接線と、接地電極30の放電面36iの接線とが交わる交点位置と、中心電極20の中心線Oとの間の横方向に沿った距離。ここで、「横方向」とは、軸線方向と垂直な方向を意味する。
(2)オフセットZ:中心電極20の中心線Oと、接地電極30の内面30iのうちで絶縁体10の先端と同じ軸線方向高さを有する部位32aとの間の最短距離。なお、この部位32aは、基端部32の内面にあることが好ましい。
オフセットXを規定するための2つの接線は、以下のように求めることができる。接地電極30の放電面36iの接線は、図2の断面において、平面状の放電面36iに沿った直線である。一方、接地電極30の曲げ部34の内面の部位34aにおける接線は、この部位34aを挟む2つの内面部位(内面部位のペア)を選び、それらの2つの内面部位を結ぶ直線から求めることができる。この際、接線を決定するための内面部位のペアとして、部位34aにより遠いペアからより近いペアまで複数のペアを選択し、部位34aにより近いペアほど、部位34aにおける接線に近い直線を構成すると考えることができる。すなわち、内面部位のペアが部位34aに近づくと、その極限は部位34aに一致するので、その極限における直線を部位34aにおける接線として決定することが可能である。
オフセットZは、接地電極30の曲がり具合に拘わらず一定の値となる。一方、オフセットXは、接地電極30の曲げ部34の内面の部位34aにおける接線の向きが軸線方向に近いほど大きくなる傾向にある。例えば、接地電極30の基端部32が比較長く、曲げ部34が急激に曲がっている場合には、部位34aにおける接線の向きが軸線方向により近づくので、オフセットXは大きくなる。逆に、基端部32が比較短く、曲げ部34が緩やかに曲がっている場合には、オフセットXは小さくなる。従って、オフセットXは、接地電極30全体の曲がり具合を示す形状パラメータとしての意味を有している。オフセット比(X/Z)も同様である。接地電極30全体の曲がり具合は、接地電極30と中心電極20の間の火花ギャップの形状とサイズとを決める重要な要素なので、スパークプラグ100の性能に大きな影響を与えることが推定される。
図3(A),(B),(C)は、図2に示した構成を有する多数のサンプルについて、着火性と耐久性と耐折損性に関して行った試験の結果を示している。図3(A)は、着火性試験の試験結果である。図の左端の欄は、主体金具50のねじ部54の呼び径を示している。試験に使用したサンプルのプラグ仕様は、M12HEX16,M10HEX16,M8HEX13の3種類である。図3(A)は、上述した2つのオフセットX,Zの比であるオフセット比(X/Z)の値と、接地電極30の放電面36iの傾き角θとが異なる種々のサンプルについて行った着火性試験の結果である。
着火性試験は、JISB8031に準じて、圧力チャンバーにスパークプラグを締付け、チャンバー内の圧力(大気)を大気圧から0.8MPa加圧した状態で端子金具40と主体金具50との間に電圧を印加して100回放電し、正規放電部と非正規放電部の飛火割合を確認した。
図4は、着火性試験における正規放電部NDと非正規放電部DDを示す説明図である。正規放電部NDは、中心電極20の放電面22と接地電極30の内面30iとの間に存在する空間のうち、中心電極20の真上に存在する空間である。この正規放電部NDは、接地電極30の先端部36の放電面36iの下方に存在する。非正規放電部DDは、中心電極20の放電面22と接地電極30の内面30iとの間に存在する空間のうち、正規放電部ND以外の空間である。正規放電部NDで放電した場合を「正規放電」とし、非正規放電部DDで放電した場合を「非正規放電」とした。
図3(A)では、同じ形状のサンプルを用いて行った100回の放電のうち、正規放電の割合が90%以上の場合を最良(BEST)とし、75%以上90%未満の場合を良(GOOD)とし、75%未満の場合を不良(BAD)とした。着火性試験の結果は、最良(BEST)又は良(GOOD)であることが好ましい。着火性試験結果を考慮した2つの形状パラメータ(X/Z),θの好ましい範囲については後述する。
図3(B)は、耐久性試験の試験結果である。耐久性試験では、スパークプラグを加圧チャンバーに取り付け、下記条件で250時間の火花放電を加えた後、最小火花ギャップG(図2(B))の変化量を測定した。
・火花回数:100回/秒×250時間
・加圧力(窒素):0.4MPa
図3(B)では、最小火花ギャップGの増加量が0.1mm未満の場合を最良(BEST)とし、0.1mm以上0.3mm未満の場合を良(GOOD)とし、0.3mm以上の場合を不良(BAD)とした。耐久性試験の結果は、最良(BEST)又は良(GOOD)であることが好ましい。耐久性試験結果を考慮した2つの形状パラメータ(X/Z),θの好ましい範囲については後述する。
図3(C)は、耐折損性試験の試験結果である。耐折損性試験は、ISO11565の3.4.4項に準じて、50Hz〜500Hzの間の加振周波数及び1オクターブ/分の変化率で加振周波数を往復でスイープさせ、加速度30Gで水平方向及び垂直方向に各8時間で合計16時間加振した後、接地電極30の破損の有無を確認した。スパークプラグのサンプルとしては、着火性試験及び耐久性試験と同様に、主体金具50のねじ部54の呼び径がM12,M10,M8の3種類のサイズのサンプルを用いた。また、接地電極30の放電面36iの傾き角θは0.5°の一定値とし、オフセット比(X/Z)としては、0.95と0.98の2つの場合について試験を行った。図3(C)では、接地電極30が破損しなかった場合を合格「○」とし、破損した場合を不合格「×」とした。この耐折損性試験の結果から考えると、オフセット比(X/Z)としては、0.96以下が好ましく、0.95以下が更に好ましい。なお、耐折損性の良否については、接地電極30全体の曲がり具合による影響が大きく、接地電極30の放電面36iの傾き角θによる影響は少ないものと考えられる。従って、図3(C)の試験で使用した値(0.5°)以外の傾き角θの場合にも、ほぼ同様の試験結果が得られるものと推定される。
図5(A),(B)は、図3(A)〜(C)に示した3つの試験結果を考慮して決定した形状パラメータ(X/Z),θの第1の好ましい範囲を示すグラフである。図5(A),(B)の横軸はオフセット比(X/Z)であり、縦軸は接地電極30の放電面36iの傾き角θである。図5(A)のグラフにプロットされている点は図3(A)に示した着火性試験結果を示し、図5(B)のグラフにプロットされている点は図3(B)に示した耐久性試験結果を示す。例えば、「BEST_M12」の点は、呼び径がM12で試験結果が最良(BEST)であったサンプルを示している。他の点も同様である。2つの形状パラメータ(X/Z),θの範囲としては、着火性試験及び耐久性試験がいずれも良(GOOD)又は最良(BEST)であり、また、耐折損性試験が合格である範囲を選択することが好ましい。
図5(A),(B)では、形状パラメータ(X/Z),θの第1の好ましい範囲を以下の4つの直線で囲まれた範囲として示している。
・直線f1:θ=−44.5(X/Z)+35.6
・直線f2:θ=−2.86(X/Z)+10.7
・直線f3:(X/Z)=0.95
・直線f4:θ=0.1
すなわち、この第1の好ましい範囲は、以下の4つの式で表される。
θ≧−44.5(X/Z)+35.6 …(1)
θ≦−2.86(X/Z)+10.7 …(2)
(X/Z)≦0.95 …(3)
θ≧0.1 …(4)
上記(1),(2),(4)式(直線f1,f2,f4)は、着火性試験及び耐久性試験においていずれも良(GOOD)又は最良(BEST)である範囲を画定するための境界を示す。上記(3)式(直線f3)は、耐折損性試験が合格である範囲を画定するための境界を示す。2つの形状パラメータ(X/Z),θをこの第1の範囲内に設定すれば、着火性と耐久性の両方に優れており、また、十分な耐折損性を有するスパークプラグを得ることができる。
なお、これらの4つの直線f1〜f4で画定される第1の好ましい範囲は、0.8≦(X/Z)≦9.5、及び、0.1≦θ≦8.0で規定される矩形状の範囲を含んでいる。この矩形状の範囲は、その境界がより単純で明確であり、また、着火性と耐久性と耐折損性がいずれも良好であるという点で好ましい。
図6(A),(B)は、形状パラメータ(X/Z),θの第2の好ましい範囲を示すグラフである。図6(A),(B)のグラフにプロットされている点は、図5(A),(B)と同じである。図6(A),(B)では、形状パラメータ(X/Z),θの第2の好ましい範囲を以下の4つの直線で囲まれた範囲として示している。
・直線f1a:θ=−75(X/Z)+61
・直線f2:θ=−2.86(X/Z)+10.7
・直線f3:(X/Z)=0.95
・直線f4a:θ=1.0
すなわち、この第2の好ましい範囲は、以下の4つの式で表される。
θ≧−75(X/Z)+61 …(1a)
θ≦−2.86(X/Z)+10.7 …(2)
(X/Z)≦0.95 …(3)
θ≧1.0 …(4a)
2つの形状パラメータ(X/Z),θをこの第2の範囲内に設定すれば、図5に示した第1の範囲に比べてより着火性に優れたスパークプラグを得ることができる。
図7(A),(B)は、形状パラメータ(X/Z),θの第3の好ましい範囲を示すグラフである。図7(A),(B)のグラフにプロットされている点も、図5(A),(B)と同じである。図7(A),(B)では、形状パラメータ(X/Z),θの第3の好ましい範囲を以下の4つの直線で囲まれた範囲として示している。
・直線f1a:θ=−75(X/Z)+61
・直線f2a:θ=−4.7(X/Z)+8.1
・直線f3:(X/Z)=0.95
・直線f4a:θ=1.0
すなわち、この第3の好ましい範囲は、以下の4つの式で表される。
θ≧−75(X/Z)+61 …(1a)
θ≦−4.7(X/Z)+8.1 …(2a)
(X/Z)≦0.95 …(3)
θ≧1.0 …(4a)
2つの形状パラメータ(X/Z),θをこの第3の範囲内に設定すれば、図6に示した第2の範囲に比べてより耐久性に優れたスパークプラグを得ることができる。
以上のように、接地電極30の形状パラメータ(X/Z),θを、図5、図6、又は図7に示したいずれかの範囲に設定することによって、着火性と耐久性の両方に優れたスパークプラグを提供することが可能である。
上述の好ましい形状を有する接地電極30を形成する際には、まず、直線的に伸びる棒状の接地電極部材を主体金具50の先端部52に接合する接合工程が行われ、次に、棒状の接地電極部材を曲げる曲げ工程が行われる。曲げ工程では、棒状の接地電極部材を1回の曲げ工程で曲げることも可能である。但し、仮曲げ(第1の曲げ工程)と本曲げ(第2の曲げ工程)の2つの工程に分けて接地電極部材を曲げることによって、上述した形状パラメータ(X/Z),θの好ましい範囲を達成するのがより容易となる。
図8(A),(B)は、仮曲げ工程と本曲げ工程を示す説明図である。図8(A)の仮曲げ工程(第1曲げ工程)は、棒状の接地電極部材30pを、図2に示す接地電極30の形状の途中まで曲げる工程である。この仮曲げ工程では、まず、仮曲げスペーサ210(仮曲げ補助具)を中心電極20の放電面22の上方にギャップを介して位置決めする。その後、接地電極部材30pの先端部36の外面36eに、仮曲げパンチ220(仮曲げ治具)を斜め方向に押し付けて仮曲げを行う。仮曲げスペーサ210は、主として、接地電極部材30pの基端部32が中心電極20の側に倒れることを防止するために使用される。図8(A)の例では仮曲げスペーサ210の上面は平面状であるが、この代わりに、仮曲げスペーサ210の上面を、仮曲げ工程の終了時における接地電極部材30pの基端部32と曲げ部34pと先端部36との内面にフィットする形状に整形しておいてもよい。図8(B)の本曲げ工程(第2曲げ工程)は、仮曲げ後の接地電極部材30pを、接地電極30の最終的な形状になるまで更に曲げる工程である。この本曲げ工程では、まず、本曲げスペーサ310(本曲げ補助具)を中心電極20の放電面22上に位置決めする。この本曲げスペーサ310も、主として、接地電極30の基端部32が中心電極20の側に倒れることを防止するために使用される。なお、本曲げスペーサ310は、中心電極20の放電面22の上方にギャップを介して位置決めしてもよい。その後、本曲げパンチ320(本曲げ治具)を接地電極30の先端部36の外面36eに押し付けることによって、最小火花ギャップGがその目標値に達するように本曲げを行う。
図9(A),(B)は、仮曲げ工程と本曲げ工程における各種の形状パラメータを示す説明図である。図9(B)は、図2(B)と同一である。図9(A),(B)の左側半分は、図2(A),(B)と同様に、主体金具50と接地電極30(又は接地電極部材30p)と中心電極20についての断面を示している。なお、図9(A)の左側半分は、仮曲げ後の状態において、接地電極部材30pのうちで中心電極20の放電面22と同じ軸線方向高さを有する部位における断面の面心と、中心電極20の中心線Oとを通る断面を示しているものと考えることができる。なお、「接地電極部材30pのうちで中心電極20の放電面22と同じ軸線方向高さを有する部位における断面」は、軸線Oに垂直な断面である。また、「面心」とは、その接地電極部材30pの断面の幾何学的な重心を意味する。
本実施形態では、仮曲げ後の接地電極部材30pの曲がり具合を示す形状パラメータとして、以下に説明する距離L1,L2,L3,LGを使用する。
(1)距離L1:接地電極部材30pの曲げ部34pの内面のうちで接地電極部材30pの基端部32に最も近い部位を曲げ部起点Aと呼び、接地電極部材30pの基端部32から最も遠い部位を曲げ部終点Bと呼ぶとき、曲げ部起点Aと曲げ部終点Bとの間の横方向に沿った距離。
(2)距離L2:曲げ部起点Aと曲げ部終点Bとの間の軸線方向に沿った距離。
(3)距離L3:曲げ部起点Aと主体金具50の先端部52との間の軸線方向に沿った距離。
(4)距離LG:主体金具50の先端部52と中心電極20の放電面22との間の距離。
なお、距離LGは、仮曲げ時の形状に依存しない一定値である。
図10は、仮曲げ時の距離L2を変化させたサンプルS11〜S16で得られた形状パラメータ(X/Z),θを示す図である。ここでは、距離L1,L3はそれぞれ一定値(L1=1.17mm,L3=3.45mm)とし、距離L2が変化するように仮曲げスペーサ210(図8(A))の形状を変えて仮曲げ工程を実行した。その後、最小火花ギャップGが目標値(約0.68mm)に達するまで本曲げ工程を実行した。なお、オフセットZと傾き角θは一定値(Z=3mm,θ=3°)とした。
上述したように、距離L2は、曲げ部起点Aと曲げ部終点Bとの間の軸線方向に沿った距離であり、距離L1は、曲げ部起点Aと曲げ部終点Bとの間の横方向に沿った距離である。従って、これらの比(L2/L1)は、仮曲げ時の放電面36iの傾き角θi(図9(A))を決める値である。すなわち、比(L2/L1)の値が大きいほど、仮曲げ時の放電面36iの傾き角θiが大きい。図10の結果を見ると、比(L2/L1)の値が大きいほど、オフセット比(X/Z)の値(すなわちオフセットXの値)が小さくなる傾向にある。この理由は、以下のように推定される。すなわち、比(L2/L1)の値が大きいほど、本曲げ工程において曲げ部34がより大きく曲げられるので、曲げ部34の全体がより中心電極20に近づくように曲げられる。この結果、接地電極30の曲げ部34の部位34a(図9(B))における接線の向きが、より横方向(軸線方向と垂直な方向)に近くなるので、オフセットXがより小さくなる。
図10のサンプルS11〜S16で得られた形状パラメータ(X/Z),θを見ると、サンプルS11では、これらの形状パラメータ(X/Z),θ(特にオフセット比(X/Z))が図5に示した好ましい範囲から外れており、サンプルS16は直線f1で規定される境界に近い。この結果を考慮すると、比(L2/L1)の値の範囲としては、1.0<(L2/L1)<1.6が好ましい。
図11は、仮曲げ時の距離L3を変化させたサンプルS21〜S31で得られた形状パラメータ(X/Z),θを示す図である。ここでは、距離L1は一定値(L1=1.17mm)とし、距離L3が変化するように仮曲げ工程を実行した。また、距離L2に関しては、比(L2/L1)の値が上述した好ましい範囲1.0<(L2/L1)<1.6を満たすように、距離L3が同一で距離L2が異なる複数のサンプルを作成した(例えばS23〜S26)。その後、最小火花ギャップGが目標値(約0.68mm)に達するまで本曲げ工程を実行した。なお、オフセットZは一定値(Z=3mm)とした。
上述したように、距離L3は、曲げ部起点Aと主体金具50の先端部52との間の軸線方向に沿った距離であり、距離LGは、主体金具50の先端部52と中心電極20の放電面22との間の距離である。従って、これらの比(L3/LG)は、仮曲げ時の曲げ部34pの高さを決める値である。すなわち、比(L3/LG)の値が大きいほど、仮曲げ時の曲げ部34pの高さが大きい。図11の結果を見ると、比(L3/LG)の値が大きいほど、放電面36iの傾き角θが大きくなる傾向にある。この理由は、以下のように推定される。すなわち、比(L3/LG)の値が大きいほど、仮曲げ時の曲げ部34pの位置が高くなるので、最小火花ギャップGを目標値(約0.68mm)に達するまで本曲げを行うと、放電面36iの傾き角θがより大きくなる。
図11のサンプルS21〜S31で得られた形状パラメータ(X/Z),θを見ると、サンプルS21,S22,S30,S31では、これらの形状パラメータ(X/Z),θ(特に傾き角θ)が図5に示した好ましい範囲から外れている。この結果を考慮すると、比(L3/LG)の値の範囲としては、1.1≦(L3/LG)≦1.2が好ましい。
・変形例
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
・変形例1:
スパークプラグとしては、図1に示したもの以外の種々の構成を有するスパークプラグを本発明に適用することが可能である。特に、端子金具や絶縁体の具体的な形状については、様々な変形が可能である。
10…絶縁体
20…中心電極
22…放電面
30…接地電極
30i…内面
30p…接地電極部材
32…基端部
32a…部位
34…曲げ部
34a…部位
36…先端部
36e…外面
36i…放電面
40…端子金具
50…主体金具
52…先端部
54…ねじ部
58…孔
58i…先端部内面
100…スパークプラグ
210…仮曲げスペーサ
220…仮曲げパンチ
310…本曲げスペーサ
320…本曲げパンチ

Claims (4)

  1. 軸線方向に貫通する軸孔を有する筒状の絶縁体と、前記絶縁体の先端から突出し前記軸線方向と直交する方向に延びる放電面を先端に有する中心電極と、軸孔内に前記絶縁体を収容する主体金具と、基端部が前記主体金具の先端部に接合された接地電極であって前記接地電極の先端にある放電面が前記中心電極の放電面と火花ギャップを隔てて配置されるように曲げられた曲げ部を有する接地電極と、を備えるスパークプラグであって、
    前記軸線方向に沿った前記中心電極の中心線と、前記接地電極のうちで前記中心電極の放電面と同じ軸線方向高さを有する部位における断面の面心とを通る平面上に、前記中心電極と前記接地電極とを投影した投影図上において、
    前記軸線方向と垂直な方向を横方向と呼び、
    前記接地電極の放電面と前記中心電極の放電面との間の前記軸線方向に沿った距離が前記接地電極の先端に行くほど小さくなるように前記中心電極の放電面に対して前記接地電極の放電面が傾いており、前記中心電極の放電面に対して前記接地電極の放電面が傾く角度をθ(°)とし、
    前記接地電極の前記曲げ部の内面のうちで前記中心電極の放電面と同じ軸線方向高さを有する部位における接線と前記接地電極の放電面の接線とが交わる交点位置と、前記中心電極の中心線との間の前記横方向に沿った距離をX(mm)とし、
    前記中心電極の中心線と、前記接地電極の内面のうちで前記絶縁体の先端と同じ軸線方向高さを有する部位との間の最短距離をZ(mm)としたとき、
    前記θ、X、Zが、次式:
    θ≧−44.5(X/Z)+35.6 …(1)
    θ≦−2.86(X/Z)+10.7 …(2)
    (X/Z)≦0.95 …(3)
    θ≧0.1 …(4)
    を満足する、ことを特徴とするスパークプラグ。
  2. 請求項1に記載のスパークプラグであって、
    前記θ、X、Zが、上記(1)式及び(4)式の代わりに次式:
    θ≧−75(X/Z)+61 …(1a)
    θ≧1.0 …(4a)
    を満足する、ことを特徴とするスパークプラグ。
  3. 請求項2に記載のスパークプラグであって、
    前記θ、X、Zが、上記(2)式の代わりに次式:
    θ≦−4.7(X/Z)+8.1 …(2a)
    を満足する、ことを特徴とするスパークプラグ。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のスパークプラグの製造方法であって、
    前記主体金具の先端部に、棒状の接地電極部材の基端部を接合する接合工程と、
    前記接地電極部材を曲げることによって前記曲げ部を有する前記接地電極を形成する曲げ工程と、
    を備え、
    前記曲げ工程は、
    前記接地電極部材を仮曲げする第1曲げ工程と、
    前記仮曲げ後の前記接地電極部材を前記接地電極の形状になるまで更に曲げる第2曲げ工程と、
    を含み、
    前記仮曲げ後の前記接地電極部材のうちで前記中心電極の放電面と同じ軸線方向高さを有する部位における断面の面心と前記中心電極の中心線とを通る断面上において、
    前記接地電極部材の曲げ部の内面のうちで前記接地電極部材の基端部に最も近い部位を曲げ部起点Aと呼び、前記接地電極部材の基端部から最も遠い部位を曲げ部終点Bと呼ぶとき、
    前記曲げ部起点Aと前記曲げ部終点Bとの間の前記横方向に沿った距離L1と、
    前記曲げ部起点Aと前記曲げ部終点Bとの間の前記軸線方向に沿った距離L2と、
    前記曲げ部起点Aと前記主体金具の先端部との間の前記軸線方向に沿った距離L3と、
    前記主体金具の先端部と前記中心電極の放電面との間の距離LGとが、
    1.0<(L2/L1)<1.6、及び、1.1≦(L3/LG)≦1.2
    を満足する、ことを特徴とするスパークプラグの製造方法。
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