JP2015150942A - 車両用ブレーキシステム、及び液圧系統の正常判定方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】車両用ブレーキシステムは、液圧を発生させるマスタシリンダと、ブレーキペダルのストロークを検出するストロークセンサと、液圧を検出する液圧センサと、を備え、液圧系統にリークが生じていない正常状態に対応する正常領域が前記ストローク及び前記液圧に基づいて予め設定され、ストロークセンサによって検出されるストロークが所定閾値以上に保持された状態で、当該ストロークと液圧とが前記正常領域に所定時間以上留まった場合、前記液圧系統は前記正常状態であると判定する正常判定手段を備える。
【選択図】図3
Description
このような車両ブレーキシステムに関して、その検査段階で作業員がブレーキペダルを踏込み、その踏込量と液圧とに基づいて、液圧系統にリークが発生していない(つまり、配管チューブに孔が空いていない)ことを確認する作業が行われている。
このような技術を、例えば、車両の出荷前の検査段階に適用し、前記した実ストローク及び液圧によって特定される点が、予め作成されたマップの正常領域に入った場合に「リーク失陥なし」と判定することが考えられる。
しかしながら、このような方法でリーク失陥の有無を検査する場合、検査工程が煩雑になるという問題がある。また、ユーザによる通常の使用時にリーク失陥の有無を判定することが困難になるという問題もある。
液圧系統にリークが発生していない状態で押圧部材のストロークが所定閾値以上に保持されると、当該ストローク及び液圧は、ほとんど移動することなく正常領域に留まる。したがって、正常判定手段によって「液圧系統は正常状態である」と適切に判定できる。
また、液圧系統の検査を簡単化できるとともに、ユーザによって車両用ブレーキシステムが使用されている間も液圧系統が正常状態であるか否かを容易に判定できる。
<車両用ブレーキシステムの構成>
図1は、本実施形態に係る車両用ブレーキシステムの油圧回路図である。車両用ブレーキシステムAは、ブレーキペダルBのストロークを電気信号に変換してスレーブシリンダ30を作動させ、このスレーブシリンダ30によって発生する液圧で車両を制動するバイ・ワイヤ式のブレーキシステムである。なお、システム異常時にはマスタカットバルブ60a,60bを開弁し、マスタシリンダ10からの液圧で直接的に制動するようになっている。
マスタシリンダ10(液圧発生手段)は、少なくとも配管チューブ81a,81b内において、ブレーキペダルBの踏力に応じた液圧を発生させる装置である。マスタシリンダ10は、例えば、図1に示すタンデム型のシリンダであり、シリンダ本体11と、プッシュロッド12と、ピストン13a,13bと、ばね部材15a,15bと、を有している。
プッシュロッド12は、ブレーキペダルB(押圧部材)を介して作用する運転者の踏力をピストン13aに伝達するロッドであり、一端がブレーキペダルBに連結され、他端がピストン13aに連結されている。
ばね部材15aは、ピストン13a,13bから受ける力に応じて伸縮可能な圧縮コイルばねである。ばね部材15bは、シリンダ本体11の内壁面及びピストン13bから受ける力に応じて伸縮可能な圧縮コイルばねである。
また、ピストン13a,13bが紙面右向きに後退すると、圧力室FaがリリーフポートRaを介してサプライポートSa及び環状の背室Eaに連通するとともに、リザーバ14内にも連通するようになっている(圧力室Fbについても同様)。
また、圧力室Fbの出力ポートTbは、配管チューブ81b、マスタカットバルブ60b、配管チューブ82b、及びVSA装置50を介して、ホイールシリンダ71FL(左側前輪),71RR(右側後輪)に接続されている。
ストロークシミュレータ20は、ブレーキペダルBの踏力に応じた操作反力を発生させる装置であり、シリンダ本体21と、ピストン22と、ばね部材23,24と、ばね座25と、を有している。
ピストン22は円柱状を呈しており、入力ポートUを介して印加される液圧に応じて、シリンダ本体21内で軸線方向に摺動可能となっている。
スレーブシリンダ30(液圧発生手段)は、電動モータ31によってピストン35a,35bを摺動させることで液圧を発生させ、ホイールシリンダ71FR,71RL,71FL,71RRを作動させる装置である。スレーブシリンダ30は、主に、電動モータ31と、ギヤ機構32と、ボールねじ構造体33と、シリンダ本体34と、ピストン35a,35bと、ばね部材37a,37bと、を有している。
ピストン35a,35bは円柱状を呈しており、軸線方向で摺動可能となるようにシリンダ本体34に収容されている。
ばね部材37aは、ピストン35a,35bから受ける圧力に応じて伸縮可能な圧縮コイルばねである。ばね部材37bは、シリンダ本体34の内壁面及びピストン35bから受ける圧力に応じて伸縮可能な圧縮コイルばねである。
電動モータ31が駆動すると、その回転駆動力がギヤ機構32を介してボールねじ構造体33に伝達され、ボールねじ軸33bが紙面左向きに前進する。これによって、シリンダ本体34内でピストン35a,35bが前進し、圧力室Ha,Hbで液圧が発生する。なお、環状の背室GaはリザーバポートVaを介してリザーバ36内に連通し、環状の背室GbはリザーバポートVbを介してリザーバ36内に連通している。このリザーバ36は、配管チューブ86を介してマスタシリンダ10のリザーバ14に接続されている。
また、圧力室Hbの出力ポートWbは、配管チューブ83b,82b(一部)、及びVSA装置50を介して、ホイールシリンダ71FL,71RRに接続されている。
ストロークセンサ41(ストローク検出手段)は、ピストン13a,13bを押圧するブレーキペダルB(押圧部材)のストロークを検出するセンサである。ここで、ブレーキペダルBの「ストローク」とは、ブレーキペダルBの踏込量のことを意味している。
なお、ストロークセンサ41として、ポテンショメータ式、光学式等のセンサを用いることができる。ストロークセンサ41は、検出したストロークを制御装置90(図2参照)に出力する。
前記した角度センサ42として、ホールセンサ、レゾルバ等を用いることができる。なお、位置センサ等を用いてボールねじ軸33bのストロークを直接的に検出してもよい。角度センサ42は、検出した機械角を制御装置90(図2参照)に出力する。
液圧センサ44(液圧検出手段)は、マスタカットバルブ60a,60bよりも下流側(スレーブシリンダ30側)の液圧を検出するセンサであり、配管チューブ82bに設置されている。
液圧センサ43,44はそれぞれ、検出した液圧を制御装置90(図2参照)に出力する。
VSA装置50(Vehicle Stability Assist)は、運転者によるブレーキ操作に関わらず液圧を発生させ、車両の挙動を安定化させる装置である。VSA装置50は、各種のブレーキアクチュエータを有しており、ホイールシリンダ71FR,71RL,71FL,71RRに接続されている。例えば、ホイールシリンダ71FRは、液圧に応じた制動力をディスクブレーキ70FRに作用させ、右側前輪を制動する(他のホイールシリンダ71RL,71FL,71RRについても同様)。
なお、VSA装置50の構成は周知であるため、詳細な説明を省略する。
マスタカットバルブ60aは、制御装置90(図2参照)からの指令に従って配管チューブ81a,82aを遮断/連通する常開型の電磁弁である。マスタカットバルブ60bは、制御装置90(図2参照)からの指令に従って配管チューブ81b,82bを遮断/連通する常開型の電磁弁である。
図2は、車両用ブレーキシステムが備える制御装置の機能ブロック図である。制御装置90は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、各種インタフェースなどの電子回路を備えて構成され、その内部に記憶したプログラムに従って各種機能を発揮する。
図2に示すように、制御装置90は、記憶部91と、カウンタ92と、上流側正常判定部93と、下流側正常判定部94と、を有している。
図3(a)は、マスタカットバルブよりも上流側の液圧系統の正常領域を示すマップ(斜線部分)である。なお、横軸はストロークセンサ41(図1参照)によって検出されるブレーキペダルB(図1参照)のストロークであり、縦軸は液圧センサ43によって検出される配管チューブ81a(図1参照)内の液圧である。図3(a)の斜線部分である正常領域Kaは、液圧系統にリークが生じていない(配管チューブに孔が空いていない)正常状態に対応しており、前記したストローク及び液圧に基づいて予め設定されている。
なお、正常領域Kaは、ストロークセンサ41及び液圧センサ43の検出誤差や、正常領域Kaの外縁に関するマージン(余裕)を考慮して設定されることが好ましい。
図3(b)に示すように、ボールねじ軸33bのストロークの閾値L3は、図3(a)に示す閾値L1よりも小さい値に設定されている。なお、閾値L1,L3の大小関係の詳細については後記する。
上流側正常判定部93及び下流側正常判定部94が実行する処理の詳細については、後記する。
図4は、制御装置が実行する正常判定処理の流れを示すフローチャートである。以下では、一例として、作業員がブレーキペダルBを踏込むことで、液圧系統においてリークが発生していないかを検査する場合について説明する。また、主に、上流側正常判定部93(図2参照)が実行する処理について説明する。
ちなみに、入力手段(図示せず)を介した「検査開始」の指令を「START」のトリガにしてもよいし、運転者によるIG−ONを「START」のトリガにしてもよい。
一方、ブレーキペダルBのストロークが閾値L1未満である場合(S101→No)、上流側正常判定部93はステップS101の処理を繰り返す。ちなみに、ブレーキペダルBの踏込量が小さすぎると、リークが発生していても孔から漏れ出るブレーキ液が微量であるため、液圧系統が正常状態であるか否かを判定することが困難になる。
ブレーキペダルBのストロークが閾値L2以下である場合(S102→Yes)、上流側正常判定部93の処理はステップS103に進む。一方、ブレーキペダルBのストロークが閾値L2よりも大きい場合(S102→No)、上流側正常判定部93の処理はステップS101に戻る。
一方、ブレーキペダルBのストロークが保持されていない場合(S103→No)、ステップS104において上流側正常判定部93はカウンタ92の値をクリアし、ブレーキペダルBのストロークが保持されてからの経過時間をゼロに戻す。カウンタ92の値をクリアした後、上流側正常判定部93の処理はステップS101に戻る。
液圧センサ43の検出値が正常領域Kaに含まれる場合(S105→Yes)、上流側正常判定部93の処理はステップS106に進む。
ステップS107において上流側正常判定部93は、ブレーキペダルBのストロークが保持されてから所定時間Δt(例えば、1sec)が経過したか否かを判定する。つまり、上流側正常判定部93は、カウンタ92の値が、所定時間Δtに対応する所定値に達したか否かを判定する。この所定時間Δtは、液圧系統にリークが発生している状態でブレーキペダルBのストロークLを保持(L1≦L≦L2)した場合、このストロークと、徐々に低下する液圧と、によって特定される点が所定時間Δt以内に正常領域Kaから外れるように予め設定されている。このように所定時間Δtが設定されることで、液圧系統にリークが発生している状態で「リークなし」と誤判定してしまうことを防止できる。
一方、ブレーキペダルBのストロークが保持されてから所定時間Δtが経過していない場合(S107→No)、上流側正常判定部93の処理はステップS101に戻る。
すなわち、ボールねじ軸33bのストロークが閾値L3以上かつ閾値L4以下に保持された状態で、図3(b)に示す点Qbが正常領域Kbに所定時間Δt以上留まった場合、下流側正常判定部94は、下流側の液圧系統にリークがないと判定する。
このように、マスタシリンダ10とスレーブシリンダ30とがマスタカットバルブ60a,60bによって遮断された状態で、マスタシリンダ10の上流側・下流側の液圧系統それぞれについて正常状態であるか否かが判定される。
図5(a)はブレーキペダルのストロークの時間的変化を示す説明図であり、図5(b)はマスタカットバルブよりも上流側の液圧の時間的変化を示す説明図である。なお、図3(a)、図5(a)、及び図5(b)に示す実線はそれぞれ対応しており、液圧系統にリークがない正常状態での変化を表している。一点鎖線(リークあり:早踏み)、二点鎖線(リークあり:緩やかな踏込み)についても同様である。
なお、図5(b)の斜線で示す範囲(PAL以上かつPAH以下)は、図5(a)のストロークLAに対応する液圧の許容範囲である。
しかしながらこの場合には、図5(a)の時刻t0〜t1においてブレーキペダルBのストロークは保持されていない(S103→No)。つまり、図3(a)の一点鎖線で示すように、ストローク及び液圧で特定される点が、正常領域Kaで留まることなく点X1に向かって移動する。したがってこの場合、上流側正常判定部93によって「リークなし」と誤判定されることはない。
その結果、時刻t3から所定時間Δtが経過するまでに、液圧が、正常領域Kaに基づく液圧の許容範囲(PAL以上かつPAH以下)を下回る(図5(b)参照)。したがって、上流側正常判定部93によって「リークなし」と誤判定されることはない(S107→No、S109)。換言すると、このような誤判定を防止できるように閾値L1及び所定時間Δtが設定されている。
このように、本実施形態によれば、ブレーキペダルBのストロークが急速に増加した場合でも、緩やかに増加した場合でも、液圧系統のリークに関する誤判定を防止できる。したがって、作業員にブレーキペダルBの踏込速度等を厳密に要求する必要がなく、液圧系統の検査を簡単化できる。
なお、マスタカットバルブ60a,60bよりも下流側の液圧系統についても、下流側正常判定部94が実行する処理によって、上流側と同様の作用・効果が奏される。
以上、本発明に係る車両用ブレーキシステムAについて前記実施形態により説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、前記実施形態では、ブレーキペダルBのストロークが閾値L1以上かつ閾値L2以下の条件下で(S101→Yes、S102→Yes)、そのストロークが保持されているか否かを判定する場合について説明したが(S103)、これに限らない。すなわち、正常領域Ka(図3(a)参照)に関して、ストロークの上限値である閾値L2を設けないようにし、上流側正常判定部93によるステップS102の処理を省略してもよい。
マスタシリンダ10の構成等によっては、リークが発生している状態でブレーキペダルBを目一杯踏込んでも、ストローク及び液圧で特定される点が所定時間Δt以内に正常領域Ka(図3(a)参照)から外れることもあるからである。同様に、下流側正常判定部94の処理に関してもステップS102の処理を省略してもよい。
10 マスタシリンダ(液圧発生手段)
11 シリンダ本体
13a,13b ピストン
30 スレーブシリンダ(液圧発生手段)
31 電動モータ
32 ギヤ機構
33 ボールねじ構造体
33b ボールねじ軸(押圧部材)
34 シリンダ本体
35a,35b ピストン
41 ストロークセンサ(ストローク検出手段)
42 角度センサ(ストローク検出手段)
43,44 液圧センサ(液圧検出手段)
60a,60b マスタカットバルブ
71FR,71FL,71RL,71RR ホイールシリンダ
90 制御装置
93 上流側正常判定部(正常判定手段)
94 下流側正常判定部(正常判定手段)
B ブレーキペダル(押圧部材)
Ka,Kb 正常領域
Claims (3)
- シリンダ本体と、前記シリンダ本体内で摺動可能に設置されるピストンと、を有し、前記ピストンの摺動によって液圧を発生させる液圧発生手段と、
前記ピストンを押圧する押圧部材のストロークを直接又は間接に検出するストローク検出手段と、
前記液圧発生手段によって発生する液圧を検出する液圧検出手段と、を備える車両用ブレーキシステムであって、
液圧系統にリークが生じていない正常状態に対応する正常領域が、前記ストローク及び前記液圧に基づいて予め設定され、
前記ストローク検出手段によって検出されるストロークが所定閾値以上に保持された状態で、当該ストロークと、前記液圧検出手段によって検出される液圧と、が前記正常領域に所定時間以上留まった場合、前記液圧系統は前記正常状態であると判定する正常判定手段を備えること
を特徴とする車両用ブレーキシステム。 - 前記液圧発生手段は、
運転者のブレーキ操作が入力されるマスタシリンダと、
マスタカットバルブを介して前記マスタシリンダに接続され、前記ブレーキ操作に応じてホイールシリンダに液圧を作用させるスレーブシリンダと、を備え、
前記マスタカットバルブよりも前記マスタシリンダ側の液圧系統に対応する前記所定閾値として、第1閾値が設定されるとともに、
前記マスタカットバルブよりも前記スレーブシリンダ側の液圧系統に対応する前記所定閾値として、前記第1閾値よりも小さい第2閾値が設定され、
前記正常判定手段は、前記マスタシリンダと前記スレーブシリンダとが前記マスタカットバルブによって遮断された状態で、前記マスタシリンダ側の液圧系統、及び、前記スレーブシリンダ側の液圧系統について、前記正常状態であるか否かをそれぞれ判定すること
を特徴とする請求項1に記載の車両用ブレーキシステム。 - シリンダ本体と、前記シリンダ本体内で摺動可能に設置されるピストンと、を有し、前記ピストンの摺動によって液圧を発生させる液圧発生手段と、
前記ピストンを押圧する押圧部材のストロークを直接又は間接に検出するストローク検出手段と、
前記液圧発生手段によって発生する液圧を検出する液圧検出手段と、を備える車両用ブレーキシステムが実行する液圧系統の正常判定方法であって、
液圧系統にリークが生じていない正常状態に対応する正常領域が、前記ストローク及び前記液圧に基づいて予め設定され、
前記ストローク検出手段によって検出されるストロークが所定閾値以上に保持された状態で、当該ストロークと、前記液圧検出手段によって検出される液圧と、が前記正常領域に所定時間以上留まった場合、前記液圧系統は前記正常状態であると判定する正常判定処理を実行すること
を特徴とする液圧系統の正常判定方法。
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