JP2015146709A - 車載用モータ制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】車両の衝突が予測されるスリップ状態を判定することにより前もって制御モードを移行させ、車両の衝突時にフェールセーフ処理を実行するまでの時間短縮ができる車載用モータ制御装置を提供する。【解決手段】制御回路内のCPUは、実行中の制御モードが矩形波駆動(1パルス制御)か否かを判別するS401。矩形波駆動でない場合、次の衝突検知処理S405へ移行する。矩形波駆動であった場合、モータ回転数の固有振動周波数の変動の有無により車両がスリップ状態か否かを判別するS402。スリップ状態と判定された(固有振動周波数変動あり)場合、電圧位相制御から正弦波PWMに基づいた電流ベクトル制御へ制御モードを切り替えS403、スリップ状態でないと判定された(固有振動周波数変動なし)場合、制御モードを電圧位相制御のまま維持するS404。続いて、衝突検知処理S405およびフェールセーフ処理S406を実行する。【選択図】図4

Description

本発明は、車載用モータ制御装置に関し、特に、正弦波PWM制御モードおよび矩形波駆動制御モードを有する車載用モータ制御装置に関するものである。
従来、2次電池やキャパシタなどの蓄電装置を搭載し、この蓄電装置に蓄えられた電力から生じる駆動力を用いて走行用モータの電動モータを駆動することにより走行する、例えば、ハイブリッド車や電気自動車といった電動車両がある。このような電動車両には、指令値に基づいて電動モータの回転状態が適正であるか否かを判別し、電動モータを駆動するモータ制御装置が用いられている。このモータ制御装置は、車両の衝突時にフェールセーフ処理を実行するために、車両衝突を検知する手段として、例えば、電動モータの各相電流または相電圧に基づいて、電動モータに衝突による異常が発生したか否かを判別し、異常が発生したと判別する場合に電動モータの駆動を停止する処理を実行するように構成されている(例えば、特許文献1参照)。また、加速度センサで大きな加速度を検出したことにより車両の衝突が検知されたときに、エンジンコンピュータおよび発電機コントローラへの電力供給を遮断して、エンジンの駆動および発電機への界磁電流の供給を停止させることが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2009−254119号公報 特開平6−245323号公報
上記のようなモータ制御装置を搭載した電動車両において、大容量の蓄電装置である高電圧の走行用バッテリを用いてモータ制御装置に電力を直接供給する場合がある。ところが、車両走行中に衝突が発生した場合に、運転者に通電するような高電圧による感電の危険や、電動モータの発熱による火災などの発生を回避するため、モータ制御装置への電力供給を直ちに遮断して電動モータの駆動を停止し、さらに、エンジンの駆動および発電機への界磁電流の供給を停止する必要がある。
しかしながら、電流センサなどのモータ制御系内の情報に基づいて、高回転速度での駆動領域を拡大するために用いられる矩形波駆動(1パルス制御)による電圧位相制御から低回転速度領域での正弦波PWMに基づいた電流ベクトル制御に制御モードを切り替える場合には、切替時間はモータ定数に依存して長くなる。そして、電流センサの応答や検出電流の判定に時間がかかるため、衝突時に短時間でフェールセーフ処理に移行することができない可能性がある。また、車両に設けた加速度センサにより衝突を検知する場合であっても、さらに短時間でフェールセーフ処理に移行することが要求される。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、車両の衝突が予測されるスリップ状態を判定することにより前もって制御モードを移行させ、車両の衝突時にフェールセーフ処理を実行するまでの時間短縮ができる車載用モータ制御装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、車載用モータ制御装置において、複数のスイッチング素子を含み、指令値に基づいて車両を駆動する電動モータに駆動電流を供給するモータ駆動回路と、前記電動モータを駆動する高電圧の直流電源に接続され前記モータ駆動回路に電力を供給する電源回路と、前記モータ駆動回路を制御する制御回路と、を備え、前記制御回路は、前記電動モータを駆動制御する複数の制御モードを有するとともに、前記電動モータのモータ回転数に現われる特定周波数の変動により前記車両のスリップ状態を判別するスリップ状態判別手段と、前記制御モードを切り替える制御モード切替手段と、を備え、前記制御モード切替手段は、前記スリップ状態判別手段により前記車両が前記スリップ状態と判定されたとき、直ちに前記制御モードを切り替えることを要旨とする。
上記構成によれば、高電圧の直流電源を用いて電動モータを駆動源として走行駆動する電動車両において、電動モータのモータ回転数に現われる特定周波数(固有振動周波数)の変動により車両がスリップ状態と判定したときに車載用モータ制御装置の制御モードを直ちに切り替えるようにしたので、車両の衝突が発生したときに電流センサの応答に依存せず短時間で過電流検出時のフェールセーフ処理を実行することが可能になる。これにより、車両の衝突検知から電動モータの停止までの制御時間を短縮することができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車載用モータ制御装置において、前記制御回路は、前記スリップ状態と判定したときに前記制御モードを電圧位相制御から電流ベクトル制御に切り替えることを要旨とする。
上記構成によれば、高回転速度領域での電動モータ駆動時において、制御回路は、車両の衝突を検知する前に、矩形波駆動(1パルス制御)による電圧位相制御を正弦波PWMに基づいた電流ベクトル制御に切り替えるようにしたので、車両の衝突検知から電動モータの停止までの制御時間を短縮することが可能になる。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車載用モータ制御装置において、前記制御回路は、前記制御モードを前記電流ベクトル制御に移行させた後に、前記車両に設けられた加速度センサの値により前記車両の衝突を検知し、前記電動モータの各相電流および前記電源回路の電源電流の過電流を検出したとき、前記モータ駆動回路の前記スイッチング素子の動作を停止させた後、前記直流電源と前記モータ駆動回路との間の接続をオン・オフする電源リレーを遮断し電力供給を停止させることを要旨とする。
上記構成によれば、前もって制御モードを切り替えて、加速度センサによる車両衝突の検知および車載用モータ制御装置での過電流検出に即座に対応して電動モータの駆動を停止できるようにしたので、車両の衝突検知から電動モータの停止までの制御時間を短縮することが可能になる。
本発明によれば、車両の衝突が予測されるスリップ状態を判定することにより前もって制御モードを移行させ、車両の衝突時にフェールセーフ処理を実行するまでの時間短縮ができる車載用モータ制御装置を提供できる。
本発明の一実施形態に係る車載用モータ制御装置を搭載した車両の主要部分のブロック構成を示す図。 図1の車載用モータ制御装置の回路構成を示す図。 図2の制御回路の構成を示すブロック図。 制御回路で実行される制御モード切替時の処理手順を示す制御フローチャート。 図4の制御回路で実行される車両衝突時の処理手順を示す制御フローチャート。
以下に、本発明の実施形態に係る車両に搭載される車載用モータ制御装置について、図に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る車載用モータ制御装置を搭載した車両の主要部分のブロック構成を示す図である。図1に示す車載用モータ制御装置(ECU、以下、モータ制御装置という)1は、インバータ(モータ駆動回路)13、電源回路17、および制御回路15を備えた装置である。この車両は、走行用駆動源としてガソリンエンジン(以下、エンジンという)5と電動モータ10とを有し、これらと発電機であるモータジェネレータ3とを動力分割機構16により接続し、この動力分割機構16の出力軸は、減速機2を介して駆動輪4へと接続されている。これにより、エンジン5と電動モータ10とによる駆動輪4へと伝達する駆動力の比率を可変としたシリーズ・パラレルハイブリッド方式を採用している。
走行用の電動モータ10として、例えば、3相のブラシレスモータが使用されている。この電動モータ10は、ロータコアに永久磁石を埋め込み固着させた埋込磁石型のロータを備えるIPMモータや、ロータコアの表面に永久磁石を固着させた表面磁石型のロータを備えるSPMモータなどの永久磁石式同期モータが使用される。IPMモータは、特に高トルクが求められる車両用の主機モータとして用いられる。
モータジェネレータ3と電動モータ10とは、インバータ13および電源回路17を介して主バッテリとして設けられた高電圧(例えば、250Vなど)の高圧バッテリ(直流電源)6に電気的に接続されている。ここで、高圧バッテリ6は、ハイブリッド車や電気自動車の走行用モータとしての電動モータ10に電力を供給する高電圧の走行用バッテリとして接続されている。また、モータ制御装置1には、補機バッテリとして低電圧(例えば、12V)の低圧バッテリ7が同じく電気的に接続されている。この低圧バッテリ7には、電動パワーステアリング装置のアクチュエータをはじめとする各種の補機類(各種ライトや電子機器類など)が電気的に接続され、それらの電力供給源として用いられている。モータ制御装置1は、高圧バッテリ6から受ける直流電圧をモータ駆動回路であるインバータ13の仕様に応じて、電源回路17内のDC/DCコンバータ18(図2参照)でさらに高電圧(例えば、600Vなど)に昇圧し(あるいは、非昇圧のままで)、インバータ13に供給する。
エンジン5の作動は、エンジン制御装置(エンジンECU)9によって制御され、インバータ13の状態をモータ制御装置1(制御回路15)によって制御することで、モータジェネレータ3と電動モータ10との発電量、消費電力を調整する。モータ制御装置1には、モータ制御装置1の外部の車両(例えば、車体など)に設けられ車両にかかる横方向の加速度Gを検出する加速度センサ(例えば、静電型、圧電型、抵抗型など)8が接続されている。そして、制御回路15は、加速度センサ8の出力信号に基づいて、短時間(例えば、数msec程度)で加速度Gを検出する。
また、モータ制御装置1は、高圧バッテリ6から電力の供給を受け電動モータ10を駆動制御する。制御回路15は、低圧バッテリ7から電力の供給を受け検出されたモータ回転角度(θ、図2参照)およびモータ相電流に基づき電流指令値を算出し、生成した各制御信号をインバータ13へ出力する。電動モータ10は、モータ制御装置1によって回転駆動されると、モータトルクを発生させる。
図2は、図1のモータ制御装置1の回路構成を示す図である。図2に示すモータ制御回路は、電源回路17、制御回路15、およびインバータ13を備え、このモータ制御回路は、モータ制御装置1の内部に設けられ、高電圧の直流電圧を出力する高圧バッテリ6および電動モータ10に接続されている。なお、制御回路15の電源となる制御電圧(例えば、12V)は、低圧電源である低圧バッテリ(例えば、12V)7より供給される。低圧バッテリ7として、補助バッテリを搭載している。あるいは、高圧バッテリ6から降圧コンバータ(例えば、DC/DCコンバータなど)を介して充電されていてもよい。
図2において、電動モータ10は、図示しない3相の巻線(U相巻線、V相巻線、およびW相巻線)を有する3相ブラシレスモータである。電動モータ10には回転角センサ19が設置され、モータ回転角度θが制御回路15に入力される。
電源回路17は、電源リレー11、DC/DCコンバータ18、および平滑コンデンサ12から構成される。電源リレー11は、モータ制御装置1の入力部に配置され、平滑コンデンサ12およびインバータ13を高圧バッテリ6に接続するか否かを切り替える電源スイッチである。電源リレー11は、電動モータ10の動作時にはオン状態(導通状態)、停止時にはオフ状態(非導通状態)となる。
平滑コンデンサ12は、電源ライン20とアースライン21との間に設けられている。平滑コンデンサ12は電荷を蓄積し、高圧バッテリ6からインバータ13に流れる電流が不足するときには蓄積した電荷を放電する。このように、平滑コンデンサ12は、電流リップルを吸収し電動モータ10を駆動するための電源電圧を平滑するコンデンサとして機能している。また、本実施形態のモータ制御装置1では、電源リレー11がオフ状態となった後、平滑コンデンサ12に蓄積された電荷は、図示しないスイッチ(例えば、MOSFETなど)をオンさせることにより放電抵抗を通って放電される。
また、図示しないMOSFETと制限抵抗とからなる突入防止回路が設けられており、電源リレー11がオンした直後に突入電流が流れることを防止し、MOSFETがオフ状態のときに制限抵抗を介して平滑コンデンサ12を充電する。さらに、電源回路17には、電流センサとして、インバータ13に供給される電源電流を検出する電源電流検出器14bおよび平滑コンデンサ電流検出器14cが設けられており、部品の劣化や装置の異常を検知する手段として用いられる。
インバータ13は、6個のスイッチング素子(例えば、IGBT、またはMOSFETなど)Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6を含み、制御回路15から出力される指令値に基づき電動モータ10に駆動電流を供給する。これら6個のスイッチング素子Q1〜Q6を2個ずつ直列に接続して形成された3つの回路は、電源ライン20とアースライン21との間に並列に設けられている。2個のIGBTのそれぞれの接続点U,V,Wは、U相巻線、V相巻線、およびW相巻線の一端に直接接続されている。そして、電動モータ10の3相の巻線の他端は、共通の接続点(中性点、図示せず)に接続されている。
制御回路15は、インバータ13に含まれる6個のスイッチング素子Q1〜Q6を制御する。より具体的には、制御回路15には、モータ相電流およびモータ回転角度θが入力され、制御回路15はこれらのデータに基づき、電動モータ10に供給すべき3相の駆動電流(U相電流、V相電流、およびW相電流)の目標値(目標電流)を決定し、相電流検出器14aにより検出した電流(各相電流)値を目標電流に一致させるためのPWM信号を出力する。制御回路15から出力された各相のPWM信号は、インバータ13に含まれる6個のスイッチング素子Q1〜Q6のゲート端子にそれぞれ供給されている。
また、制御回路15には、車両に設置された加速度センサ8により検出された加速度G信号が入力され、この加速度Gの値から車両の衝突が検知される。高圧バッテリ6は、ハイブリッド車や電気自動車の走行用モータを駆動するための高電圧(例えば、250Vなど)の走行用バッテリ(例えば、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池など)が接続されている。
以上の構成において、平常時は、高圧バッテリ6から高電圧がインバータ13に接続されているが、車両の衝突が発生した場合、加速度センサ8から出力される加速度Gの値により制御回路15が衝突と認識すると、インバータ13のスイッチングを停止し、電源リレー11の遮断により電力供給が停止され、電動モータ10の回転を停止する。なお、衝突時の加速度Gは、通常の急発進、急加速に比べはるかに大きいため、加速度センサ8からの信号により容易に区別が可能となっている。
図3は、図2の制御回路15の構成を示すブロック図である。図3に示すように、制御回路15は、回転角センサ19から入力されるモータ回転角度θから求めたモータ回転数に現われる特定周波数、すなわち固有振動周波数の変動に基づいて、車両のスリップ状態を判別するスリップ状態判別部(スリップ状態判別手段)22と、矩形波駆動(1パルス制御)を用いる電圧位相制御部23、および正弦波PWMに基づいた電流ベクトル制御部24の2つの制御モードを切り替える制御モード切替部(制御モード切替手段)25と、加速度Gを判別する加速度判別部26、および過電流を検出する過電流検出部27により車両衝突を検知する衝突検知処理部28と、インバータ13のスイッチングを停止し、高圧バッテリ6の接続を切断し電力供給を停止するフェールセーフ処理部29とにより構成されている。
図1に示す電動車両においては、駆動輪4を駆動する電動モータ10の出力トルクを検出するとともに、車輪速(駆動輪4の回転速度)を検出し、駆動輪4に加えられる制駆動力を制御する。車両のスリップ状態は、車両の固有振動の変化により検出され、この車両の固有振動は駆動輪4を駆動するモータ回転数に現われる固有振動周波数の変動を検出することにより判定することができる。モータ回転数は回転角センサ19により検出されるモータ回転角度θから常時演算される。また、駆動輪4は走行中に路面からの外乱などを受けて様々な微小振動を発生しており、特定周波数(固有振動周波数)の車輪速の振動が変化して、その変動成分がフィードバックされたモータ回転数に現われる。この固有振動周波数は路面状態の変化によって変動するため、モータ回転数の変動成分を抽出して、固有振動周波数が変動すれば車両がスリップ状態(すなわち、車体速度と車輪速との差が大きい)にあると判定できる。これにより、車両衝突の可能性があると判断し、車両衝突を検知した場合に速やかにフェールセーフ処理ができるように前もって電流ベクトル制御に移行しておくことができる。
また、制御回路15には、図2に示す加速度Gと、相電流検出器14a、電源電流検出器14b、および平滑コンデンサ電流検出器14cからの各検出電流値とが入力され、電源リレー11のオン・オフ信号が出力される。加速度Gは、モータ制御装置1の外部の車両に設置された加速度センサ8から入力される
以上のように、制御回路15は、回転角センサ19からのモータ回転数の固有振動周波数の変動の有無に対応して電圧位相制御、あるいは電流ベクトル制御の制御モードを設定し、算出した電流指令値に基づいてインバータ13へ各制御信号を出力する。ここで、低回転速度領域(起動時を含む)から中回転速度・大トルク領域までは正弦波PWMを、高回転速度・小トルク領域では矩形波駆動を用いることで、駆動領域を拡大している。矩形波駆動では電圧が一定であるため、その位相を制御することでトルクを制御する。そして、モータ出力トルクは、低、中回転速度領域側においてほぼ一定に推移し、高回転速度領域側において矩形波駆動することにより高回転速度まで漸減させ出力することができる。矩形波駆動と正弦波PWMとの領域の境界は、要求するモータ出力トルクが大きいほど低回転速度側となる。
次に、図4は、制御回路15で実行される制御モード切替時の処理手順を示すフローチャート、図5は、図4の制御回路15で実行される車両衝突時の処理手順を示すフローチャートである。本実施形態おいて、制御回路15は、図4のフローチャートに示すステップS401〜S406および図5のフローチャートに示すステップS501〜S505の各処理を実行する。なお、以下に示すフローチャートにおける処理は、所定の時間間隔毎に実行される。
図4に示すように、モータ制御装置1の制御回路15内のCPU(図示せず)は、まず、実行中の制御モードが矩形波駆動(1パルス制御)か否か(ステップS401)を判別し、矩形波駆動であった(ステップS401:YES)場合に、ステップS402へ移行する。矩形波駆動でない(ステップS401:NO)場合、ステップS405へ移行する。
そして、モータ回転数の固有振動周波数の変動の有無により車両がスリップ状態か否か(ステップS402)を判別し、スリップ状態と判定された(ステップS402:YES、固有振動周波数変動あり)場合、制御モードを電圧位相制御から正弦波PWMに基づいた電流ベクトル制御へ切り替え(ステップS403)、ステップS405へ移行する。
スリップ状態でないと判定された(ステップS402:NO、固有振動周波数変動なし)場合、CPUは、制御モードを電圧位相制御のままに維持し(ステップS404)、続いて、衝突検知処理(ステップS405)、およびフェールセーフ処理(ステップS406)を実行しフローを抜ける。
次に、図5に示すように、まず、衝突検知処理において、モータ制御装置1の制御回路15内のCPU(図示せず)は、加速度センサ8により検出された加速度Gを読み込む(ステップS501)。
そして、検出された加速度Gが所定値以上か否か(ステップS502)を判定する。加速度Gが所定値以上(ステップS502:YES)の場合、車両の衝突が発生したと判断し、ステップS503へ移行し車両衝突時の処理を実行する。加速度Gが所定値より小さい(ステップS502:NO)場合、処理を終了しフローを抜ける。
続いて、CPUは、相電流検出器14a、電源電流検出器14b、および平滑コンデンサ電流検出器14cから各電流値を読み込み、過電流が検出されたか否か(ステップS503)を判定する。
過電流が検出された(ステップS503:YES)場合、CPUは、異常と判断しフェールセーフ処理に移行し、IGBTソフトターンオフ(ステップS504)を実行する。ここで、インバータ13のスイッチング素子Q1〜Q6をターンオフする。
過電流が検出されない(ステップS503:NO)場合、処理を終了しフローを抜ける。このときには、フェールセーフ処理が実行されないので、衝突検知後の電動モータ10の駆動による車両の退避走行が可能になる。
続いて、CPUは、電源リレー11をオフし(ステップS505)、インバータ13への電力供給を停止し、この処理を終了する。これにより、電動モータ10の回転を停止させる。
次に、上記のように構成された本実施形態に係るモータ制御装置1の作用および効果について説明する。
上記構成によれば、高電圧の高圧バッテリ(直流電源)6を用いて電動モータ10を駆動源として走行駆動する電動車両において、電動モータ10のモータ回転数の固有振動周波数の変動により車両のスリップ状態を判定したときに、車両の衝突を予測してモータ制御装置1の制御モードが切り替えられる。このとき、実行中の制御モードが高回転速度(小トルク)領域での矩形波駆動(1パルス制御)による電圧位相制御であった場合に、モータ制御装置1の制御回路15は、前もって低、中回転速度(大トルク)領域での正弦波PWMに基づいた電流ベクトル制御に切り替え、算出した電流指令値に基づいて生成された各制御信号をインバータ13へ出力する。
また、正弦波PWMに切り替えた後に車両に設置された加速度センサ8の値(加速度G)により車両の衝突を検知したときに、各相電流検出器14a、電源電流検出器14b、および平滑コンデンサ電流検出器14cのいずれかにおいて過電流が検出された場合、インバータ13内のスイッチング素子Q1〜Q6の動作を直ちに停止させ(IGBTソフトターンオフ)、さらに、高圧バッテリ6とインバータ13との間の接続をオン・オフする電源リレー11を遮断し電力供給を停止させて、電動モータ10の回転を停止させる。
これにより、車両のスリップ状態を判定したときに前もって電流ベクトル制御に移行できるとともに、加速度センサ8の加速度Gにより衝突を検知して、車両の衝突時にモータ制御系内の情報(例えば、モータ時定数に起因する電流センサの応答など)に依存せず、衝突検知後の過電流検出時においても即座に対応してフェールセーフ処理(IGBTソフトターンオフ)を実行開始するまでの時間を短縮することが可能になる。その結果、車両の衝突検知から電動モータ10の停止までの制御時間を短縮することができる。なお、過電流が検出されなかった場合には衝突検知後の電動モータ10による車両の退避走行が可能になる。
以上のように、本発明の実施形態によれば、車両の衝突が予測されるスリップ状態を判定することにより前もって制御モードを移行させ、車両の衝突時にフェールセーフ処理を実行するまでの時間短縮ができる車載用モータ制御装置を提供できる。
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明はさらに他の形態で実施することも可能である。
上記実施形態では、車両に設置された加速度センサ8により衝突を検知するようにしたが、これに限らず、エアバッグの作動などにより衝突を検知してもよいし、他の衝突検出信号による方法を用いてもよい。また、衝突検知と並行して、高圧バッテリ6の電源電圧の供給停止を検知したことにより、フェールセーフ処理に切り替えるようにしてもよい。
上記実施形態では、事前に電流ベクトル制御に切り替え、衝突検知時に直ちに過電流検出のフェールセーフ処理を実行する場合について説明したが、これに限らず、過電流検出以外のフェール時(例えば、制御回路の故障など)にも事前に制御モードを移行しておくことで衝突検知からフェールセーフ処理を実行するまでの時間を短縮することができる。
上記実施形態では、電源リレー11に通常の機械式リレーを用いてオン・オフ制御するようにしたが、これに限らず、双方向遮断可能な半導体スイッチ(例えば、MOSFETの複数使用など)を用いてオン・オフ動作させるようにしてもよい。
上記実施形態では、モータ回転数に現われる固有振動周波数の変動を車両衝突時の処理時間短縮に用いるようにしたが、これに限らず、例えば、タイヤ接地面の摩擦力が限界に達する前にスリップ状態を検知し走行が不安定になるのを防止する車両安定制御などに適用することができる。
上記実施形態では、ハイブリッド車や電気自動車などの電動車両に用いられる走行用の電動モータ10を駆動するモータ制御装置1において、車両衝突時に制御モードを前もって矩形波駆動の電圧位相制御(1パルス制御)から正弦波PWMの電流ベクトル制御へ切り替え、衝突検知からフェールセーフ処理までの時間を短縮する場合について示したが、これに限らず、電動モータを使用する他の装置(例えば、車両用後輪駆動装置や電動オイルポンプ装置など)に適用してもよい。
1:モータ制御装置(ECU)、2:減速機、3:モータジェネレータ(発電機)、
4:駆動輪、5:エンジン、6:高圧バッテリ(直流電源)、7:低圧バッテリ、
8:加速度センサ、9:エンジンECU、10:電動モータ、11:電源リレー、
12:平滑コンデンサ、13:インバータ(モータ駆動回路)、14a:相電流検出器、14b:電源電流検出器、14c:平滑コンデンサ電流検出器、15:制御回路、
16:動力分割機構、17:電源回路、18:DC/DCコンバータ、
19:回転角センサ、20:電源ライン、21:アースライン、
22:スリップ状態判別部(スリップ状態判別手段)、23:電圧位相制御部、
24:電流ベクトル制御部、25:制御モード切替部(制御モード切替手段)、
26:加速度判別部、27:過電流検出部、28:衝突検知部、
29:フェールセーフ処理部、
Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6:スイッチング素子(IGBT)、G:加速度、θ:モータ回転角度

Claims (3)

  1. 複数のスイッチング素子を含み、指令値に基づいて車両を駆動する電動モータに駆動電流を供給するモータ駆動回路と、
    前記電動モータを駆動する高電圧の直流電源に接続され前記モータ駆動回路に電力を供給する電源回路と、
    前記モータ駆動回路を制御する制御回路と、を備え、
    前記制御回路は、前記電動モータを駆動制御する複数の制御モードを有するとともに、
    前記電動モータのモータ回転数に現われる特定周波数の変動により前記車両のスリップ状態を判別するスリップ状態判別手段と、
    前記制御モードを切り替える制御モード切替手段と、を備え、
    前記制御モード切替手段は、前記スリップ状態判別手段により前記車両が前記スリップ状態と判定されたとき、直ちに前記制御モードを切り替えることを特徴とする車載用モータ制御装置。
  2. 請求項1に記載の車載用モータ制御装置において、
    前記制御回路は、前記スリップ状態と判定したときに前記制御モードを電圧位相制御から電流ベクトル制御に切り替えることを特徴とする車載用モータ制御装置。
  3. 請求項2に記載の車載用モータ制御装置において、
    前記制御回路は、前記制御モードを前記電流ベクトル制御に移行させた後に、前記車両に設けられた加速度センサの値により前記車両の衝突を検知し、前記電動モータの各相電流および前記電源回路の電源電流の過電流を検出したとき、前記モータ駆動回路の前記スイッチング素子の動作を停止させた後、前記直流電源と前記モータ駆動回路との間の接続をオン・オフする電源リレーを遮断し電力供給を停止させることを特徴とする車載用モータ制御装置。
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