JP2015142963A - 非粘着性複合樹脂皮膜被覆部材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】非粘着性および耐摩耗性に優れた非粘着性複合樹脂皮膜被覆部材とそれの有利な製造方法を提供する。【解決手段】基材1の表面が、熱硬化性のマトリックス樹脂2a中にフッ素樹脂粒子2bを分散させてなる非粘着性複合樹脂層2にて被覆されている非粘着性複合樹脂皮膜被覆部材、および基材表面に、熱硬化性のマトリックス樹脂とフッ素樹脂粒子とからなる非粘着性樹脂組成物の複合樹脂分散液を被覆する非粘着性複合樹脂皮膜被覆部材の製造方法。【選択図】図1
Description
本発明は、非粘着性複合樹脂皮膜被覆部材およびその製造方法に関し、特に、部材、部品表面に異物等の付着を抑制ないし阻止する非付着特性および耐摩耗性を付与する表面処理技術について提案する。
各種部材や部品表面に対し、環境物質等の異物が付着しにくいという非付着特性を付与する技術としては、従来、それらの外表面にシリコーン樹脂やフッ素樹脂をコーティングしたものが一般的である。しかし、シリコーン樹脂やフッ素樹脂は軟質のためにコーティングが早期に摩耗、剥離し、これらのコーティングを頻繁に補修しなければならないという問題があった。
上記の問題に対し、特許文献1では、部材表面に、非粘着特性を改善する目的でフッ素樹脂などの熱可塑性樹脂粒子を分散させたコート層を形成する技術を提案している。この特許文献1に記載の技術は、「支持材の表面に、粒径10μm以下のポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂粒子を使用目的に併せて3〜50mass%分散させてなるコート層」を形成するものである。
また、特許文献2では、部材を表面に被成するフッ素樹脂層中にフィラーを含有させることによって、耐摩耗性を向上させる技術を提案している。この技術(特許文献2)は、部材の表面に、フッ素樹脂:93〜97mass%中に、平均粒子径:0.15〜5μmの無機粒子(セラミック)を1〜10mass%添加してなるフッ素樹脂を被覆する方法である。
また、特許文献3には、フッ素樹脂塗料および、そのフッ素樹脂塗料を塗布した部材の製造方法が開示されている。この特許文献3に開示の技術は、フッ素樹脂粒子が分散媒中に分散した塗料組成物を被処理部材の表面に塗装するものである。
また、特許文献4では、フッ素樹脂塗料組成物に関し、特に、フッ素樹脂粉末を分散した水溶性有機液体からなる塗料について開示すると共に、厚い塗膜を安定的に形成する方法を提案している。
さらに、特許文献5では、基材に対する密着性や耐食性、環境遮断性に優れた塗料として、ポリマー粒子を含有するフッ素樹脂塗料組成物を提案している。
前記特許文献1に開示されている技術については、実施例での「剥離力」数値に見られるように皮膜の非粘着性が十分でないという問題がある。しかも、この開示技術では該皮膜の耐久性や耐摩耗性については何ら検討されていない。
また、前記特許文献2に開示の技術は、硬質フィラー(セラミック)によって耐摩耗性を確保する場合、相手材の表面粗さや粒子径がフィラーの粒径より大きいと、十分な耐摩耗性を発揮することができないという問題がある。
前記特許文献3では、塗膜の着色性や膜厚の安定性について多く言及されているが、塗膜の耐久性や耐摩耗性については検討していない。
前記特許文献4には、フッ素樹脂分散塗料が開示されているが、具体的な皮膜の機能、たとえば、非粘着性や耐摩耗性については詳しくは言及されていない。
さらに、前記特許文献5の場合もまた、具体的な非粘着性や耐摩耗性についての記載はない。
そこで、本発明の目的は、非粘着性および耐摩耗性に優れた表面特性を有する非粘着性複合樹脂皮膜被覆部材とそれの有利な製造方法を提案することにある。
発明者らは、前記従来技術が抱えている問題点を克服することのできる技術の開発を目指して鋭意研究した。その結果、基材の表面が、熱硬化性のマトリックス樹脂中にフッ素樹脂粒子を分散させてなる非粘着性複合樹脂層にて被覆されていることを特徴とする非粘着性複合樹脂皮膜被覆部材に係る本発明の開発に成功した。
また、本発明は、基材の表面に直接もしくは粗面化処理した基材表面に対し、熱硬化性のマトリックス樹脂とフッ素樹脂粒子とからなる非粘着性樹脂組成物の複合樹脂分散液を被覆することを特徴とする非粘着性複合樹脂皮膜被覆部材の製造方法を提案する。
本発明においては、さらに以下のような構成を付与することが、より有効な課題解決手段となり得るものと考えられる。
(1)前記非粘着性複合樹脂組成物からなる複合樹脂の硬化前の粘度が、2〜120Pa・sであること、
(2)前記熱硬化性のマトリックス樹脂は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂およびビニルエステル樹脂のうちから選ばれるいずれか1以上の樹脂であること。
(3)前記フッ素樹脂粒子は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)のうちから選ばれるいずれか1以上の樹脂粒子からなり、かつこの粒子の平均粒径が、1μm以上100μm以下の大きさであること。
(4)前記マトリックス樹脂中に分散されるフッ素樹脂粒子の分散量が10〜80vol%であること。
(5)前記ロール基材は、鉄鋼、アルミニウム合金、繊維強化プラスチック、炭素繊維強化プラスチックのうちから選ばれるいずれか1もしくは2以上の組み合わせからなること。
(6)ロール基材の表面は、ブラスト処理、溶射、機械加工、レーザー照射のうちから選ばれるいずれか1以上の方法で処理され、算術平均粗さがRa:2μm〜50μmの表面粗さを有すること。
(1)前記非粘着性複合樹脂組成物からなる複合樹脂の硬化前の粘度が、2〜120Pa・sであること、
(2)前記熱硬化性のマトリックス樹脂は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂およびビニルエステル樹脂のうちから選ばれるいずれか1以上の樹脂であること。
(3)前記フッ素樹脂粒子は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)のうちから選ばれるいずれか1以上の樹脂粒子からなり、かつこの粒子の平均粒径が、1μm以上100μm以下の大きさであること。
(4)前記マトリックス樹脂中に分散されるフッ素樹脂粒子の分散量が10〜80vol%であること。
(5)前記ロール基材は、鉄鋼、アルミニウム合金、繊維強化プラスチック、炭素繊維強化プラスチックのうちから選ばれるいずれか1もしくは2以上の組み合わせからなること。
(6)ロール基材の表面は、ブラスト処理、溶射、機械加工、レーザー照射のうちから選ばれるいずれか1以上の方法で処理され、算術平均粗さがRa:2μm〜50μmの表面粗さを有すること。
前記のように構成された本発明によれば、非粘着性や耐摩耗性に優れかつ安価な非粘着性複合樹脂皮膜被覆部材を提供することができる。特に、本発明においては、部材の最表面に、非粘着性複合樹脂組成物からなる複合樹脂層を形成するので、該部材の表面に存在(分散)するフッ素樹脂粒子が有する非粘着特性を損ねることなく耐摩耗性をも向上させることができる。その結果、部材表面の初期状態を長期間に渡って安定的に維持することが可能となる。
また、本発明によれば、部材表面に形成される前記非粘着性複合樹脂組成物の層として、マトリックス樹脂として特定の熱硬化性樹脂を用いているので、部材を酸やアルカリといった腐食性の強い物質から確実に遮断することができる部材を容易に製造することができる。即ち、本発明においては、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂などの熱硬化性のマトリックス樹脂を用いているが、この樹脂は、硬化促進剤を用いて室温に維持または120℃以下の温度に加熱すれば架橋硬化させることができる。従って、本発明は、フッ素樹脂をマトリックス樹脂とする従来の一般的なコート材に比べると、溶融温度が低温であることから、施工時に大掛りな設備(加熱炉)を使用することなく製造することができるから、低コストを実現できる。
また、本発明によれば、前記マトリックス樹脂中にフッ素樹脂粒子を分散させてなる非粘着性複合樹脂組成物の粘度、特に硬化前の粘度が、溶剤を使うことなく2〜120Pa・sに調整されたものとすることで、部材表面への塗布などの方法によって、1回の塗布で300μm厚の皮膜を形成することができる。しかも、溶剤を含まないため、部材の表面への被覆形成後の膜厚減少を抑えることにもつながる。このことから、本発明によれば、非粘着層の厚盛り被覆を容易に行なうことができるようになる。しかも、繰り返し塗布によって、非粘着性樹脂皮膜の厚みをさらに厚くすることができるから、非粘着性と耐摩耗性とをより一層向上させることができる。
本発明に係る部材の基本的な構成は、図1に示すように、板状等の非ロール状部材1の表面(最外層部)に、優れた非粘着性と耐摩耗性とを兼ね備えた非粘着性複合樹脂組成物からなる複合樹脂の分散液を被覆してなる層(皮膜)2を形成したことにある。かかる非粘着性複合樹脂組成物の層(皮膜)は、熱硬化性樹脂が用いられるマトリックス樹脂2aとこの樹脂中に分散含有させるフッ素樹脂粒子2bとからなる複合樹脂組成物の層(皮膜)である。
前記熱硬化性のマトリックス樹脂として用いられる前記熱硬化性樹脂は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂およびビニルエステル樹脂のうちから選ばれるいずれか1種以上の樹脂の使用が好ましい。これらの樹脂に着目した理由は、これらの樹脂は、これらの樹脂は、市販の硬化促進剤を使用することにより常温付近の温度で三次元に架橋した高硬度の樹脂層を形成することができるためである。
また、前記熱硬化性のマトリックス樹脂中に分散含有させるフッ素樹脂粒子としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)などから選ばれるいずれか1種以上の樹脂粒子を用いる。これらの樹脂粒子に着目した理由は、これらの樹脂は、フッ素樹脂の中でも特に安定で、非粘着性や耐薬品性、溶剤性などに優れているためである。
マトリックス樹脂中に分散させる前記フッ素樹脂粒子は、平均粒径が、1μm〜100μmのもの、好ましくは30μm〜50μmのものがよい。粒子径をこのような範囲に限定する理由は、この樹脂粒子の平均粒径が1μm以下または29μm以下のときであっても、粒子が凝集しやすくフッ素樹脂粒子を分散させた混合物を調整することが難しいことがあるからである。一方、この樹脂粒子の平均粒径が100μmまたは50μmを超えると、ときとしてフッ素粒子を分散した際に重力により沈降し、分散が不均一になりやすくなるためである。
本発明において、前記熱硬化性樹脂からなるマトリックス樹脂中に分散含有させる前記フッ素樹脂粒子は、その分散含有量は10〜80vol%、好ましくは40〜80vol%程度とする。その理由は、分散含有量が10vol%または40vol%未満だと、程度の差はあるものの十分な非粘着性(非付着特性)を得ることができないからである。一方、80vol%を超えると、粘度が120Pa・sを超えて流動性が著しく低下し、しかも分散が不均一となって塗布に適しないからである。なお、マトリックス樹脂に分散させるフッ素樹脂粒子の分散(含有)量は、任意の断面を顕微鏡で観察し画像処理によって求める。
なお、前記複合樹脂組成物の調整に当たっては、まず、熱硬化性樹脂であるマトリックス樹脂の常温保存もしくは低温(120℃未満)での加熱処理による架橋硬化させる前の粘度を、2〜120Pa・sの範囲内に調整する。そのための樹脂どうしの組み合わせ例やフッ素樹脂粒子の平均粒子径、分散量(vol%)、含有量(質量%)の例は表1〜4に示す。
本発明で被処理対象となる部材は、非ロール状板材、部品などであり、基材質は、鉄鋼材料、アルミニウム合金、FRP(繊維強化プラスチック)、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)などから選ばれるいずれか1つ以上の材料が好適に用いられる。なお、本発明によれば、前記非粘着性複合樹脂組成物は、室温から120℃以下の低温域に保持もしくは低温加熱して硬化させることにより、調整することができるので、FRPやCFRPのような素材をも使用することができる。
なお、前記部材は、前記非粘着性複合樹脂組成物の層(皮膜)の付着特性をより向上させるため、図3に示すように、表面をブラスト処理や溶射、機械加工、レーザー照射などから選ばれるいずれかの方法で、算術平均粗さ(Ra)で2μm〜50μm程度の表面粗さ(突部1aを設ける)にする。このことによって、前記非粘着性複合樹脂層(皮膜)の密着力を高めることができる。その理由は、部材表面部分の算術平均粗さ(Ra)が2μm未満では、マトリックス樹脂に、フッ素樹脂粒子を分散させた混合樹脂の密着性向上に対しては、効果がないからである。一方、部材の算術平均粗さ(Ra)が50μmを超える場合、マトリックスにフッ素樹脂粒子を分散させた混合樹脂を均一に塗布することができず、基材粗さの凸部が露出することがあって好ましくないからである。本発明では、該非粘着性複合樹脂組成物(層)の部分が摩耗しやすいような環境下であっても、その摩耗が部材の粗さの頂点(突部1a)に達した時点で緩和され、粗さの谷の部分に保持された樹脂層によって長期間、非粘着特性を維持させることができるようになる。
次に、本発明に係る前記部材の製造方法について説明する。始めに、前記部材の表面に被覆する非粘着性樹脂組成物の複合樹脂を調整する。その調整の方法としては、前述した熱硬化性の各種マトリックス樹脂の1つとフッ素樹脂粒子の1つとを攪拌装置などを用いて、粘度2〜120Pa・s程度の複合樹脂分散液を調整する。この複合樹脂分散液を、部材の表面に対し、直接もしくは該部材表面を粗面化処理したのち、スプレーガンやスリットノズル、ペイントローラー、刷毛を用いて、分散塗布したり吹き付けることで被覆して形成する。
また、本発明においては、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂などのいずれかのマトリックス樹脂に対し、フッ素樹脂の粒子を分散させてなる混合樹脂組成物には、さらに、粘度2〜120Pa・sとなる範囲内で、セラミックス粒子やセラミックスフレーク、カーボン粒子、レベリング剤、粘度調整剤などを添加して塗布特性を調整してもよい。
実施例1
この実施例は、板状の基材表面に、下記a、bおよびcからなる非粘着性の複合樹脂組成物を下記のようにして被覆した例である。
a.マトリックス樹脂:シリコーン樹脂(信越シリコーンKR216)
b.フッ素樹脂粒子:PTFE(旭化成フルオン)(粒径:10μm)
c.フッ素樹脂含有量:80vol%
この実施例は、板状の基材表面に、下記a、bおよびcからなる非粘着性の複合樹脂組成物を下記のようにして被覆した例である。
a.マトリックス樹脂:シリコーン樹脂(信越シリコーンKR216)
b.フッ素樹脂粒子:PTFE(旭化成フルオン)(粒径:10μm)
c.フッ素樹脂含有量:80vol%
この実施例においては、マトリックス樹脂(2a):100質量部に対して、フッ素樹脂粒子(2b)40質量部を投入し、十分に撹拌して非粘着性の複合樹脂組成物の混合樹脂分散液を調整した。マトリックス樹脂中へのフッ素樹脂粒子の分散の方法としては、遊星式撹拌脱泡装置を用いた。次に、得られたその複合樹脂組成物の分散液をスプレーガンを用いて基材上に塗布した。塗布後、室温で24時間保持したところ、マトリックス樹脂の硬化が確認できた。その硬化完了後、必要に応じて、サンドペーパーを用いて表面の状態(Ra:1.0μm程度)を整えた。図2は、このような処理によって得られた非粘着性複合樹脂組成物層の断面顕微鏡写真(倍率:300倍)である。
実施例2
φ100mmのステンレス鋼製ロール基材の表面に、本発明に適合する例(発明例)、適合しない比較例の非粘着性複合樹脂組成物層を形成し、硬化処理直後に1000番手の耐水研磨紙によって最表面を除去した該非粘着性複合樹脂組成物層の非粘着性を評価した。非粘着性の評価は、JIS Z 1522 に準拠したセロハンテープを90°の角度、つまりロールの法線方向で引き剥がすのに要した力をデジタルフォースゲージで測定することによって評価した。その結果を表1に示す。発明例の各皮膜は、いずれもテープ引き剥がしに要する力が小さく、かつ最表面を耐水研磨紙によって除去しても、テープ引き剥がしに要する力は殆ど変化しない。一方、比較例のNo.13の皮膜は、テープ引き剥がしに要する力はどの発明例よりも大きく非粘着性に劣る。比較例No.15の皮膜は成膜直後こそ引き剥がしに要する力は小さいが、表面が除去されると非粘着性を失い引き剥がしに要する力が大きくなる。比較例No.16については、成膜直後は発明例と同様の非粘着性を、最表面除去後も保つが、この皮膜は380℃、30分という硬化条件を要するため適用が限定される。
φ100mmのステンレス鋼製ロール基材の表面に、本発明に適合する例(発明例)、適合しない比較例の非粘着性複合樹脂組成物層を形成し、硬化処理直後に1000番手の耐水研磨紙によって最表面を除去した該非粘着性複合樹脂組成物層の非粘着性を評価した。非粘着性の評価は、JIS Z 1522 に準拠したセロハンテープを90°の角度、つまりロールの法線方向で引き剥がすのに要した力をデジタルフォースゲージで測定することによって評価した。その結果を表1に示す。発明例の各皮膜は、いずれもテープ引き剥がしに要する力が小さく、かつ最表面を耐水研磨紙によって除去しても、テープ引き剥がしに要する力は殆ど変化しない。一方、比較例のNo.13の皮膜は、テープ引き剥がしに要する力はどの発明例よりも大きく非粘着性に劣る。比較例No.15の皮膜は成膜直後こそ引き剥がしに要する力は小さいが、表面が除去されると非粘着性を失い引き剥がしに要する力が大きくなる。比較例No.16については、成膜直後は発明例と同様の非粘着性を、最表面除去後も保つが、この皮膜は380℃、30分という硬化条件を要するため適用が限定される。
実施例3
ステンレス鋼製基材の表面に、本発明に適合する例(発明例)、適合しない比較例の非粘着性複合樹脂組成物層をスプレー法によって形成して耐摩耗性を評価した。この評価試験は、スガ摩耗試験機(JIS K 5600に記載)を用いて、往復摩耗試験に供することで実施した。摩耗用の研磨紙は1000番手耐水SiCペーパーを用い、試験荷重は1.0kgfとした。その結果を表2に示す。比較例に対して本発明例のものはいずれも摩耗減量が少ないという結果となった。
ステンレス鋼製基材の表面に、本発明に適合する例(発明例)、適合しない比較例の非粘着性複合樹脂組成物層をスプレー法によって形成して耐摩耗性を評価した。この評価試験は、スガ摩耗試験機(JIS K 5600に記載)を用いて、往復摩耗試験に供することで実施した。摩耗用の研磨紙は1000番手耐水SiCペーパーを用い、試験荷重は1.0kgfとした。その結果を表2に示す。比較例に対して本発明例のものはいずれも摩耗減量が少ないという結果となった。
実施例4
非粘着性複合樹脂組成物層を形成するために必要な樹脂液の特定について以下の方法で評価試験を行なった。この試験では、マトリックス樹脂(信越シリコーン KR216)100質量部に対して、フッ素樹脂(PTFE、PFA、ETFE 平均粒子径:0.7〜150μm)を40質量部投入し、十分に撹拌した。この樹脂液を透明な容器内に3時間保持し、分散の状態を目視観察した。その結果を表3に示す。表3に示す結果から、本発明例は、比較例のものに比べるとフッ素樹脂粒子の分散が均一で、平均粒子径が1μm以下か100μm超の比較例のものに比べると分散特性に優れていることが確かめられた。
非粘着性複合樹脂組成物層を形成するために必要な樹脂液の特定について以下の方法で評価試験を行なった。この試験では、マトリックス樹脂(信越シリコーン KR216)100質量部に対して、フッ素樹脂(PTFE、PFA、ETFE 平均粒子径:0.7〜150μm)を40質量部投入し、十分に撹拌した。この樹脂液を透明な容器内に3時間保持し、分散の状態を目視観察した。その結果を表3に示す。表3に示す結果から、本発明例は、比較例のものに比べるとフッ素樹脂粒子の分散が均一で、平均粒子径が1μm以下か100μm超の比較例のものに比べると分散特性に優れていることが確かめられた。
実施例5
実施例4と同様の基材表面に非粘着性複合樹脂組成物層の皮膜をスプレー法によって形成するための複合樹脂分散液(シリコーン樹脂「KR216」中へのフッ素樹脂粒子の分散量(含有量)についての評価試験を行なった。その結果を表4に示すが、表4に示すとおり、本発明の範囲(10〜80vol%)内の例のものは比較例(0vol%、90vol%)のものに比べると、粒子分散の程度(均一性)に優れていることが確かめられた。
実施例4と同様の基材表面に非粘着性複合樹脂組成物層の皮膜をスプレー法によって形成するための複合樹脂分散液(シリコーン樹脂「KR216」中へのフッ素樹脂粒子の分散量(含有量)についての評価試験を行なった。その結果を表4に示すが、表4に示すとおり、本発明の範囲(10〜80vol%)内の例のものは比較例(0vol%、90vol%)のものに比べると、粒子分散の程度(均一性)に優れていることが確かめられた。
実施例6
100mm×50mm×1mmtのSUS304板の表面に本発明に適合する例(発明例)、適合しない比較例の非粘着性複合樹脂被覆層(皮膜)を形成し、その皮膜の密着性を評価した。評価はJIS K5600−5−1塗料一般試験法 第5部:塗膜の機械的性質 第1節:耐屈曲性(円筒マンドレル法)に基づき、試験片をφ20mmのマンドレルに押し当てて折り曲げ、塗膜のはがれの状態を目視で観察した、その結果を表5に示す。
100mm×50mm×1mmtのSUS304板の表面に本発明に適合する例(発明例)、適合しない比較例の非粘着性複合樹脂被覆層(皮膜)を形成し、その皮膜の密着性を評価した。評価はJIS K5600−5−1塗料一般試験法 第5部:塗膜の機械的性質 第1節:耐屈曲性(円筒マンドレル法)に基づき、試験片をφ20mmのマンドレルに押し当てて折り曲げ、塗膜のはがれの状態を目視で観察した、その結果を表5に示す。
本発明に係る技術は、各種産業分野で使用される部材、部品の表面処理技術であり、例えば、化学工業、機械工業、電気工業の他、食品や医療、容器包装機械工業などの分野においても有用である。
1 基材
1a 突部
2 非粘着性複合樹脂組成物の被覆層(皮膜)
2a マトリックス樹脂
2b フッ素樹脂粒子
1a 突部
2 非粘着性複合樹脂組成物の被覆層(皮膜)
2a マトリックス樹脂
2b フッ素樹脂粒子
Claims (10)
- 基材の表面が、熱硬化性のマトリックス樹脂中にフッ素樹脂粒子を分散させてなる非粘着性複合樹脂層にて被覆されていることを特徴とする非粘着性複合樹脂皮膜被覆部材。
- 前記非粘着性複合樹脂組成物からなる複合樹脂の硬化前の粘度が、2〜120Pa・sであることを特徴とする請求項1に記載の非粘着性複合樹脂皮膜被覆部材。
- 前記熱硬化性のマトリックス樹脂は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂およびビニルエステル樹脂のうちから選ばれるいずれか1以上の樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の非粘着性複合樹脂皮膜被覆部材。
- 前記フッ素樹脂粒子は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)のうちから選ばれるいずれか1以上の樹脂粒子からなり、かつこの粒子の平均粒径が、1μm以上100μm以下の大きさであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の非粘着性複合樹脂皮膜被覆部材。
- 前記マトリックス樹脂中に分散されるフッ素樹脂粒子の分散量が10〜80vol%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1に記載の非粘着性複合樹脂皮膜被覆部材。
- 前記ロール基材は、鉄鋼、アルミニウム合金、繊維強化プラスチック、炭素繊維強化プラスチックのうちから選ばれるいずれか1もしくは2以上の組み合わせからなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の非粘着性複合樹脂皮膜被覆部材。
- 前記基材の表面は、ブラスト処理、溶射、機械加工、レーザー照射のうちから選ばれるいずれか1以上の方法で処理され、算術平均粗さがRa:2μm〜50μmの表面粗さを有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の非粘着性複合樹脂皮膜被覆部材。
- 基材の表面に直接もしくは粗面化処理した基材表面に対し、熱硬化性のマトリックス樹脂とフッ素樹脂粒子とからなる非粘着性樹脂組成物の複合樹脂分散液を被覆することを特徴とする非粘着性複合樹脂皮膜被覆部材の製造方法。
- 前記非粘着性複合樹脂組成物からなる複合樹脂は、硬化させる前の粘度が、2〜120Pa・sであることを特徴とする請求項8に記載の非粘着性複合樹脂皮膜被覆部材の製造方法。
- 前記熱硬化性のマトリックス樹脂は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂およびビニルエステル樹脂のうちから選ばれるいずれか1以上の樹脂であり、前記フッ素樹脂粒子は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)のうちから選ばれるいずれか1以上の樹脂粒子であって、この粒子の平均粒径が1μm以上100μm以下の大きさであり、そして、前記マトリックス樹脂中に分散されるフッ素樹脂粒子の分散量は10〜80vol%であることを特徴とする請求項8または9に記載の非粘着性複合樹脂皮膜被覆部材の製造方法。
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