以下、本発明の第1の実施の形態について、図1〜図8を参照して詳細に説明する。
図1に示すように圧縮成型品として例えば錠剤を製造する回転式粉末圧縮成型装置(以下成型装置と略称する。)例えば回転式の打錠装置1は、回転式の粉末圧縮成型機例えば回転式の打錠機2と、制御盤4等を備えている。
打錠機2は、図3に示す圧縮成型機フレーム(以下フレームと略称する。)10と、このフレーム10内に配置された回転盤11を備える。図2に示すように回転盤11は臼取付け部11aを有し、この臼取付け部11aの周部に複数の臼12が回転盤11の周方向に一定間隔で取付けられている(図4参照)。これら臼12の上面の高さは臼取付け部11aの上面と同じである。
図1に示すように打錠機2は粉末供給器6を備える。粉末供給器6は、その下面開ロを臼取付け部11a上面に至近距離で対向させて打錠機2の粉末供給位置に配置されている。回転盤11の回転により臼12が粉末供給器6の下面開口に臨んで通過することにより、粉末供給器6内の粉末が臼12の臼孔に供給(充填)される。
打錠機2は、各臼12の夫々に個別に対応して配設された上杵15と下杵16を備える。これら上杵15と下杵16は上下動可能に回転盤11に支持されている。
上杵15の杵先部(下端部)は臼12の臼孔にその上方から挿脱される。この杵先部の先端は例えば球面の一部からなるとともに下向きに開放された凹面(図2参照)で形成されているが、これには制約されない。
下杵16の杵端部(上端部)は、臼12の臼孔に下方から上向きに挿入された状態を保持し、臼孔の底をなす。上杵15と同様に、下杵16の杵先部の先端は、例えば球面の一部からなるとともに上向きに開放された凹面(図2参照)で形成されているが、これには制約されない。これら上杵15と下杵16は、回転盤11の回転に伴って打錠機2が備える図示しない各種の案内軌道等を摺動し、それにより、粉末供給時や成型品取出し時等に軸線方向(上下方向)に所定量動かされる。
打錠機2は、粉末供給位置において下杵16の下端が摺動する質量調節軌道7を備える。質量調節軌道7は、臼取付け部11aの下方に配設され、図1に示す軌道昇降機構8により昇降される。
軌道昇降機構8は、軌道昇降用モータ8aと、昇降軸8bと、歯車8cと、駆動歯車8dを有する。
軌道昇降用モータ8aには、例えばサーボモータを好適に使用できるが、汎用モータを使用することもできる。軌道昇降用モータ8aの駆動は、オペレータの手動操作によっても運転可能であるが、制御盤4が有する後述の制御装置61の圧力制御部61bからの制御出力によっても実行される。
昇降軸8bは、質量調節軌道7を下方から支持し、図示しないガイドに沿って昇降される。歯車8cは内周歯車部及び外周歯車部を有し、その内周歯車部は昇降軸8bの下部に形成された雄ねじ部に噛み合わされている。駆動歯車8dは、歯車8cの外周歯車部に噛み合わされ、軌道昇降用モータ8aにより回転される。
したがって、軌道昇降機構8の軌道昇降用モータ8aの正逆回転に従い、昇降軸8b及び質量調節軌道7が昇降され、粉末供給位置での下杵16の高さが変更される。
軌道昇降用モータ8aにロータリー式のエンコーダ8eが取付けられている。このエンコーダ8eによる軌道昇降用モータ8aの回転量の検出を基に、質量調節軌道7の高さ、つまり、質量調節軌道7が有する水平面7tに接した状態の下杵16の高さを知ることが可能である。
前記図示しない各種の案内軌道の中には、粉末供給器6の下方で、かつ、質量調節軌道7に対し回転盤11の回転方向上流側に隣接された低下軌道が含まれる。この低下軌道に従って下杵16が下降される時に、粉末供給器6内の粉末が、臼孔内に吸込まれることにより充填される。この直後に下杵16が低下軌道から質量調節軌道7の傾斜面7sを摺動して上がることに伴い、余剰粉末が粉末供給器6内に吐き出される。
次いで、下杵16が傾斜面7sの上端に連続した質量調節軌道7の水平面7tを摺動している状態で、粉末供給器6の下流側壁6aの下端で臼12の上面が摺り切られる。それによって、臼12への供給粉末量、言い換えれば、製造しようとする錠剤の質量(重量)が秤量される。したがって、質量調節軌道7の高さが変更されることにより、下杵16の高さが調整されて、製造しようとする錠剤の質量が変更される。質量調節軌道7の高さの変更は、オペレータが手動操作で行うこともできるが、制御盤4が有する後述の圧力制御部61bからの制御出力によっても実行される。
図1に示すように打錠機2は、その圧縮成型位置に配設された上下の圧縮ロール25,26を備える。圧縮成型位置は、粉末供給器6を基準に回転盤11の回転方向下流側に設定される。上側の圧縮ロール25は臼取付け部11aの上方に配置され、下側の圧縮ロール26は臼取付け部11aの下方に配置されている。圧縮ロール25,26は、これらの間を上杵15と下杵16が通過する際に、これら上杵15と下杵16を互に近付く方向に移動させ、臼12内の粉末を圧縮成型するために設けられている。
上側の圧縮ロール25は例えば上下方向に移動することがないように保持されている。下側の圧縮ロール26は、ロール支持体27に回転自在に支持され、成型圧力を調整するためにロール支持体27とともに杵先間隔調整機構28により昇降可能である。
図1に示すように杵先間隔調整機構28は、圧縮ロール25,26間を通過しようとする上杵15と下杵16との間の杵先間隔を変更するために設けられている。この杵先間隔調整機構28は、ロール昇降用モータ28aと、昇降軸28bと、歯車28cと、駆動歯車28dを有する。
ロール昇降用モータ28aには、例えばサーボモータを好適に使用できるが、汎用モータを使用することもできる。ロール昇降用モータ28aの駆動は、制御盤4が有する後述の制御装置61の杵先間隔制御部61aによって制御される。
このロール昇降用モータ28aにロータリー式のエンコーダ28eが取付けられている。このエンコーダ28eによるロール昇降用モータ28aの回転量の検出を基に、圧縮成型位置での下側の圧縮ロール26の高さ、したがって、圧縮成型時の下杵16の高さ、ひいてはこの下杵16と上杵15との間の杵先間隔を知ることが可能である。ロール昇降用モータ28aが有したロータリー式のエンコーダ28eと、これからの出力が供給される図示しない演算部は、間隔検出手段をなしている。演算部は後述する制御装置61が有する。間隔検出手段によって、圧縮ロール25,26間を通過しようとする上杵15と下杵16との間の杵先間隔が検出される。
昇降軸28bは、その上端部に配設された圧力センサ29を介してロール支持体27を下方から支持し、図示しないガイドに沿って昇降される。歯車28cは内周歯車部及び外周歯車部を有し、その内周歯車部は昇降軸28bの下部に形成された雄ねじ部に噛み合わされている。駆動歯車28dは、歯車28cの外周歯車部に噛み合わされ、ロール昇降用モータ28aにより回転される。
したがって、杵先間隔調整機構28のロール昇降用モータ28aの正逆回転に従い、昇降軸28b及びロール支持体27とともに下側の圧縮ロール26が昇降される。これに伴って下杵16の高さが調整される結果、圧縮成型位置での杵先間隔が変更される。
なお、打錠機2は、粉末供給器6に対し回転盤11の回転方向下流側でかつ杵先間隔調整機構28の上流側に設定される予備圧縮位置に、予備圧縮用の上下の予備圧縮ロール、及び下側の予備圧縮ロールを昇降させて上下の下杵16と上杵15との間の杵先間隔設定値を変更する杵先間隔調整機構、及び杵先間隔を検出する予圧(予備圧縮)用の間隔検出手段を備えていてもよい。この予圧用の杵先間隔調整機構は図1に示した杵先間隔調整機構28と同じ構成とできる。なお、この予圧用の杵先間隔調整機構を備える打錠機2では、予圧用杵先間隔調整機構に対し、その下流側に配置された杵先間隔調整機構28は、本圧縮用(又は最終圧縮用とも称する。)の杵先間隔調整機構として区別される。
圧力センサ29は圧縮成型時の成型圧力を検出するために設けられ、例えばロール支持体27と昇降軸28bとで上下から挟設されている。圧力センサ29には、それに加わる成型圧力を電気量に変換するロードセル等を好適に使用できる。圧力センサ29は既述のように昇降軸28bの上端に固定され、その受圧端29aでロール支持体27の下面を受ける。
この圧力センサ29から出力される電気信号(成型圧力データ)は、後述する制御装置61に供給され、この制御装置61の圧力制御部61bで、平均化処理される。この処理で得られた平均成型圧力は圧力制御基準値(上限と下限を有する圧力制御基準値)と比較される。平均成型圧力が圧力制御基準値から外れた場合、制御装置61は、演算により求めた制御出力で軌道昇降機構8を動作させることにより、平均成型圧力が圧力制御基準値となるように質量調節軌道7を昇降させる制御を行う。この制御を、FBC(フィードバック制御)と称する。
このFBCにおいては、軌道昇降機構8を制御する制御出力が制御装置61より出力されてから回転盤11が1乃至3回転する間、FBC動作を一時的に停止し(具体的には制御出力を出力させない。)、この停止期間中に求められた成型圧力のデータを、FBC動作のためのデータの対象外とするとともに、前記停止期間の経過後に求めた前記平均成型圧力にしたがってFBC動作を開始させることが好ましい。これにより、FBCの動作が完了するまでの間の打錠圧力(成型圧力)が変化している段階での成型圧力データに基づくFBC動作は行われないので、正確なFBCを実行できる。
なお、FBCを実行させる制御出力が出力されている間は、粉末供給器6から臼孔への粉末の充填量(充填深さ)が次第に変化するので、それに伴い検出される成型圧力は徐々に変化する。このため、例えば回転盤11が1回転する毎に求められる平均成型圧力を用いて、その都度、FBC動作が行われた場合、徐々に変化している成型圧力データを基に平均成型圧力が求められるので、必要以上に過度な制御が行われる場合がある。しかし、既述のように制御出力をトリガーとしてFBC動作を一時的に停止させる期間を設けることで、徐々に変化している成型圧力データの影響が排除されるとともに、前記停止期間によって粉末供給器6内の粉末の状態が安定することが期待できるので、正確なFBCを実行できる。
更に、FBCのために演算される平均成型圧力には、移動平均値を用いることが好ましい。移動平均値は、検出される成型圧力データを移動平均法により処理して求めた平均値であり、移動平均としては、単純移動平均、加重移動平均、指数移動平均、その他の移動平均を用いることが可能である。
例えば、単純移動平均によって、回転盤11が少なくとも2回転した時の成型圧力データの平均値(移動平均値)を求めることができる。この場合、求めた移動平均値で、回転盤11が2回転する毎にFBCの要否を判断できるが、例えば回転盤11が1回転する毎に、その直前の回転盤11の1回転を含めて回転盤11の2回転分の移動平均値を求め、それをFBCの要否判断に用いれば、FBC動作の応答性が早められるので、望ましい。
このようにFBCのための成型圧力データに、回転盤11が少なくとも2回転以上した時の移動平均値を用いることは、より正確な錠剤の質量制御に貢献できる。これに対して、質量変動が大きい物性の粉末の圧縮成型において、回転盤11が1回転する毎に得た1回転分の成型圧力データの平均値で、この平均値が得られる都度FBCを実行した場合、必要以上に錠剤の質量を増減する制御が繰り返されるハンチング現象を生じ、その結果、錠剤の質量変動が助長される現象を起こすことがある。しかし、このような不具合は、既述の移動平均値を用いてFBCを実行することで、低減ないしは解消することが可能である。
また、後述する圧力制御部61bでの演算により求められるFBCのための制御出力は、FBCの実行を基準とする制御前と制御後での制御圧力と、これらに対応する「充填深さ」に基づいて、下記の演算により求めることが好ましい。ここで「充填深さ」とは、粉末供給位置で臼12の臼孔に充填された粉末の吸い込み深さを指している。
即ち、FBCが実行される前の成型圧力データ、及びこのデータに係る錠剤の粉末が粉末供給位置で臼孔に取り込まれて充填されたときの充填深さと、FBCが実行された後の成型圧力データ、及びこのデータに係る錠剤の粉末が粉末供給位置で臼孔に充填されたときの充填深さとから、成型圧力の変動値と充填深さ(吸い込み深さ)の変化値との相関係数を求める。最後に、この相関係数と、回転盤11が1回転する毎に得られる成型圧力平均値とから、最適な制御出力の値を求める。この場合、前記相関係数は固定値としても差し支えないが、FBCが実行される毎に、相関係数を求め直して、求め直された相関係数で、それ以前の相関係数を更新することが、より好ましい。
こうして求めた制御出力でFBCを実行することより、錠剤の質量制御の精度を更に向上させることが可能である。これに対して、制御出力の値を、成型圧力平均値と基準圧力値との偏差と予め設定した固定値の係数とから求め、この制御出力でFBCを実行すると、係数が固定値であるため、粉末の物性によって臼孔への充填密度が経時変化する場合、FBC動作の制御精度が低下し、正確に錠剤の質量を制御できないことがある。しかし、既述の相関係数を用いた演算によりFBCの制御出力の値を求め、この制御出力でFBCを実行することにより、粉末の物性によって臼孔への充填密度が経時変化しても、FBC動作による質量制御の精度を向上することが可能となる。
各種の案内軌道の中には、図1に示す突上げ軌道18が含まれている。突上げ軌道18は下側の圧縮ロール26と前記図示されない低下軌道との間で、圧縮ロール26に隣接して回転盤11の回転方向下流側に配置される。この突上げ軌道18で下杵16が上昇されることにより、次に説明する排出装置31が配置される打錠機2の排出位置において、圧縮成型された錠剤が臼12の臼孔から上向きに押し出される。
打錠機2は、これにより製造された錠剤の排出位置に、錠剤を回転盤11外に排出する排出装置31を備える。排出位置は、圧縮成型位置に対し回転盤11の回転方向下流側でかつ粉末供給位置の上流側に設定される。
図2及び図4に示すように排出装置31は、棚板32と、ボディ33と、スクレーパ34と、シュート35とを備える。
棚板32は、フレーム10に固定され、臼取付け部11aの外周面に近接した状態に配置されている。この棚板32は排出口32aを有する。
ボディ33は棚板32上に固定されている。ボディ33の上部は臼取付け部11aの上面より高い。このボディ33は、排出口32aに上方から連続する受入れスペース33aを有する。
スクレーパ34はボディ33と一体に形成することが可能である。図2及び図4に示すようにスクレーパ34は、スクレーパ壁部34a、区画壁部34b、及び上壁部34cを有する。
スクレーパ壁部34aは、ボディ33の上部から臼取付け部11a上にわたっている。このスクレーパ壁部34aは臼取付け部11a上面に対して直角となるように設けられ、その下端は臼取付け部11a上面に至近距離で対向されている。スクレーパ壁部34aは、臼12が有する臼孔の移動軌跡P(図4参照)と斜めに交叉されている。なお、移動軌跡Pは、説明の都合上図4では臼孔の中心を通る線で描いたが、実際には臼孔の直径に相当する幅を有する。スクレーパ壁部34aは、移動軌跡Pとの交差点を基準に、臼取付け部11aの外側に向かうに従い、回転盤11の回転方向下流側に次第にずれて斜めに配置されている。
更に、スクレーパ壁部34aは回転盤の回転方向上流側に曲がった先端壁部34dを有する。先端壁部34dは、移動軌跡Pで囲まれた領域(図4では移動軌跡Pより上側の領域)に設けられている。この先端壁部34dは、スクレーパ壁部34aの内側面に当たって排出される錠剤が飛び跳ねた場合に、この錠剤が移動軌跡Pで囲まれた領域に誤って入り込むことを防止する効果がある。しかし、この先端壁部34dは省略することも可能である。
区画壁部34bは、ボディ33の上部から臼取付け部11a上にわたっている。この区画壁部34bは臼取付け部11a上面に対して直角となるように設けられ、その下端は臼取付け部11a上面に至近距離で対向されている。区画壁部34bは、スクレーパ壁部34aに対して回転盤11の回転方向上流側に配置され、スクレーパ壁部34aと対向している。この区画壁部34bはスクレーパ壁部34aと平行であることが好ましい。
この区画壁部34bとスクレーパ壁部34aは、相互間に排出スペース34eを形成している。排出スペース34eは受入れスペース33aに連続している。なお、区画壁部34bは省略することも可能である。
図4に示すように区画壁部34bの先端は、移動軌跡Pに達することなくこの移動軌跡Pで囲まれた領域の外側に位置されている。それにより、排出装置31の入口34fが区画壁部34bの先端と先端壁部34dとの間に形成されている。入口34fは排出スペース34eに連通し、この入口34fを通って下杵16上の錠剤が、スクレーパ34が有した排出スペース34eに移動可能となっている。
図2に示す上壁部34cは、受入れスペース33a及び排出スペース34eを上方から覆って設けられている。スクレーパ壁部34aは、その内側面に当たって排出される錠剤(粉末圧縮成型品)が、飛び跳ねた場合に、その錠剤が排出スペース34e外に誤って飛び出ることを防止する。この上壁部34cは、後述する成型品センサ51の投受光を妨げないようにするための通孔などの透光部(図示しない)を有する。なお、上壁部34cは省略することも可能である。
シュート35は、排出される錠剤を図示しない受容器に導くもので、図2に示すように斜めに下向きに配設されている。シュート35の上端は棚板32に下側から接続され、このシュート35の上端開ロは排出口32aに連続している。
図3に示すように打錠機2は、そのフレーム10に固定された支持体41を備える。支持体41は、基軸42と、ホルダ43と、支軸44と、第1支持ブロック45と、第2支持ブロック46を有する。
基軸42の一端例えば上端はフレーム10に固定され、それによって、基軸42は例えば垂直状態に片持ち支持されている。基軸42はホルダ43に通されている。ホルダ43は、これにねじ込まれて基軸42に達するねじ47によって基軸42の任意高さに固定される。図2に示すようにホルダ43は、水平な固定孔43aと、ホルダ43の外面から固定孔43aに達するスリット43bを有する。
支軸44は固定孔43aより若干太い。この支軸44は、固定孔43aを貫通し、図3に例示するように水平状態となってホルダ43に支持されている。この場合、支軸44と固定孔43aの径差に応じて、スリット43bを開き気味にして支軸44が固定孔43aに通される。このため、ホルダ43の弾性により、固定孔43aを区画した内面が支軸44の略中央の周面に強く密接された状態にある。したがって、外力が加わらない限り、ホルダ43に支持された支軸44は、その軸周り方向に回転する虞がないとともに、軸方向にも移動する虞がない。また、ホルダ43にねじ込まれて支軸44に達するねじ(図示しない)によって支軸44をホルダ43に固定しても良い。
第1支持ブロック45は支軸44の長手方向一端部外周に嵌合されている。同様に第2支持ブロック46は支軸44の長手方向他端部外周に嵌合されている。これら支持ブロックの取付け構造は、ホルダ43に対する支軸44の取付け構造と同様であり、そのため、両支持ブロックは図示しないスリットを有する。支軸44、第1支持ブロック45、及び第2支持ブロック46は、臼取付け部11aの周面で規定される回転盤11の最外周よりも外側で、かつ、スクレーパ34の上方に配設されている。
なお、支持体41は、基軸42及びホルダ43を省略して、支軸44と、第1支持ブロック45と、第2支持ブロック46で形成することも可能である。この場合、支軸44の軸方向一端がフレーム10に固定され、支軸44は図3中二点鎖線で示すように水平状態に片持ち支持され、この支軸44の長手方向任意箇所に第1支持ブロック45及び第2支持ブロック46が嵌合される。
打錠機2は成型品センサ51と下杵センサ52を備える。成型品センサ51と下杵センサ52の出力(検出信号)の夫々は、後述する制御装置61に供給されて後述するように処理される。この処理結果に基づいて、制御装置61の杵先間隔制御部61aは、圧縮成型位置での下杵16の高さを調整することで杵先間隔を変更する制御をする。
成型品センサ51は、スクレーパ34のスクレーパ壁部34aの下側を通過する前の下杵16上の錠剤の高さを検出する。つまり、圧縮成型位置の下流側でかつスクレーパ34の上流側に設定された成型品高さ検出位置で下杵16上の錠剤の高さ(好ましくは錠剤の上面の高さ)を検出する。
本実施形態では、成型品高さ検出位置で下杵16により臼12の臼孔上に押出された錠剤の高さを、成型品センサ51が検出する。しかし、下杵16上の錠剤の少なくとも一部が臼孔に入っている状態で、この錠剤の高さを成型品センサ51で検出することも可能である。このようにした場合、錠剤がその周囲から臼12で支持され、打錠機2の振動や回転盤11の遠心力などの影響で下杵16上の錠剤が動揺する虞がなく、錠剤の高さ検出の正確性が高められるので、好ましい。
成型品センサ51には例えば反射型のものが使用される。この反射型の成型品センサ51は、図示しないがレーザ光等を出射する投光器とこれに並べられた受光器を有する。成型品センサ51は、その投光器と受光器が、下杵16上の錠剤に例えば斜め上方から対向するように第1支持ブロック45に取付けられている。このため、成型品センサ51は、投光器から斜め下方に錠剤の上端部に向けてレーザ光を出射し、錠剤で反射された斜め上向きの反射光(レーザ光)を受光器で受けて光電変換をする。
錠剤高さの測定箇所は、例えば検出対象の錠剤の上部が半球状である場合、この錠剤の中心線上に位置される上端、つまり、錠剤の最上端を測定箇所とすることに制約されず、錠剤の上面の範囲内であれば前記最上端より低い箇所であっても差し支えない。
下杵センサ52は、スクレーパ34の下流側で、このスクレーパ34のスクレーパ壁部34aの下側を通過した後の下杵16の高さを検出する。下杵センサ52には成型品センサ51と同様に例えば反射型のものが使用される。このため、反射型の下杵センサ52は、図示しないがレーザ光等を出射する投光器とこれに並べられた受光器を有する。下杵センサ52は、その投光器と受光器が、スクレーパ34のスクレーパ壁部34aの下側を通過した後の下杵16の上端部に例えば斜め上方から対向するように第2支持ブロック46に取付けられている。
このため、下杵センサ52は、投光器から斜め下方に下杵16の上端部に向けてレーザ光を出射し、下杵16で反射された斜め上向きの反射光(レーザ光)を受光器で受けて光電変換をする。下杵高さの測定箇所は、例えば検出対象の下杵16の上端部が半球状に凹んでいる場合、下杵16の中心線上に位置される凹みの中心、つまり、下杵上端部の最下端を測定箇所とすることに制約されず、下杵上端部の上面の範囲内であれば、前記最下端より高い箇所であっても差し支えない。
前記打錠機2の運転全般の制御を担う制御盤4は、図示しない制御盤筐体の表面等に露出されたタッチパネル式の入力装置(図示しない)、及びマイクロコンピュータ等を備えて前記制御盤筐体に内蔵された制御装置61を備える。この制御装置61が有するメモリに、各種の制御プログラムや制御用データ等が予め記憶されている。
制御装置61の制御で、図示しない回転盤駆動装置を介して回転盤11が回転駆動されることにより、錠剤が製造される。
簡単に説明すれば、まず、粉末供給位置で臼12内に取込まれた粉末は、質量調節軌道7の高さに応じて所定量に秤量される。次に、圧縮成型位置で、臼12とともに上杵15と下杵16が、上側の圧縮ロール25と下側の圧縮ロール26との間を通過するに伴い、臼12内の粉末が圧縮される。こうして製造される錠剤の厚みは、圧縮成型位置での上杵15の下端と下杵16の上端との間の杵先間隔によって、主として規定される。
この後、上杵15が臼12から抜けて上方へ移動された状態で、排出装置31が配置された排出位置において突上げ軌道18が下杵16を上昇させるに伴い、圧縮成型された錠剤T(図1及び図4参照)が臼12から押出される。なお、このとき、下杵16の上端は臼12の上面と略同じ高さに達する。
この状態で下杵16上の錠剤は、スクレーパ34内にその入口34fを通って移動されて、スクレーパ壁部34aに当たる。それにより、下杵16上から外された錠剤は、スクレーパ壁部34aに導かれて排出スペース34eからボディ33の受入れスペース33aを移動し、更に、排出口32aからシュート35を経由して回転盤11の臼取付け部11a外に排出される。
第1実施形態の場合、圧縮成型された全ての錠剤が、仕分けられることなく、以上のようにして回転盤11外に排出される。錠剤が排出された臼12は再び粉末供給位置に移動されるので、この後、既述した錠剤の製造動作が繰り返される。
こうした運転に伴い、前記回転盤駆動装置の発熱や、各部の摩擦に伴う発熱等によって、打錠機2の各部の温度は次第に上昇する。
次に、打錠機2の運転等に伴う温度変化に拘わらずに、錠剤(圧縮成型品)の厚みを目標とする厚みに保持して製造するために、制御装置61が有する杵先間隔制御部61aによる制御の手順を、図5〜図8を参照して説明する。
杵先間隔制御部61aは、例えば3通りの制御パターンのいずれかで杵先間隔調整機構28を制御することで、下杵16の高さを調整して、杵先間隔を変更(制御)できる。このため、杵先間隔制御部61aは、まず、オペレータが制御盤4の入力装置を操作することにより指定する制御パターンを、選択する。
この選択では、図5に示すように、まず、指定する制御パターンが、錠剤の高さ変動値(換言すれば、錠剤の厚み変動値)に基づいて杵先間隔を制御する制御パターン1であるか否かを、ステップS1により判断する。ステップS1の判断がNOの場合(制御パターン1でない場合)、指定する制御パターンが、下杵高さ変動値に基づいて杵先間隔を制御する制御パターン2であるか否かを、ステップS2により判断する。ステップS2の判断がNOの場合(制御パターン2でない場合)、指定する制御パターンが、下杵高さ変動値で補正された錠剤の高さ変動値に基づいて杵先間隔を制御する制御パターン3であるか否かを、ステップS3により判断する。ステップS3の判断がNOの場合(制御パターン3でない場合、つまり、どの制御パターンも選択されない場合)、ステップS1に戻る。これらのステップS1〜ステップS3は制御パターン判断手段をなしている。
ステップS1の判断がYESの場合(指定された制御パターンが制御パターン1である場合)、図5に示すフローチャートに従う杵先間隔の制御が行われる。
まず、錠剤の高さ基準値登録手段(成型品の高さ基準値登録手段)をなすステップS4が実行されて、制御装置61が有するメモリ(図示しない)に、錠剤原点高さ(成型品原点高さ)とも称される錠剤高さ基準値(成型品高さ基準値)UMが登録される。錠剤高さ基準値UMの登録は、打錠機2の運転が開始される前にオペレータの登録操作で人為的に行うことも可能であるが、本実施形態では打錠機2の運転開始に伴い運転開始直後に自動的に行われる。
即ち、ステップS4は、打錠機2のオペレータによる調整確認後の運転開始直後に製造された錠剤が、排出位置で臼12から押出されてスクレーパ壁部34aで排出される前の状態で成型品高さ検出位置に移動されたときに、この錠剤の高さを検出した成型品センサ51の出力から錠剤高さ基準値UMを求め、それをメモリに登録する。この場合、錠剤高さ基準値UMは、予め錠剤に定められた測定箇所の高さを、打錠機2の運転開始後に検出した成型品センサ51の最先の出力から求めてもよいが、複数の出力、例えば回転盤11が回転する間に成型品高さ検出位置を通過した錠剤のうちの任意数の錠剤の高さを検出した成型品センサ51の出力を、平均化処理することで、求めるのが好ましい。
ステップS4が終わると、検出対象の錠剤の高さ検出手段(成型品高さ検出手段)をなすステップS5に進み、検出対象の錠剤が成型品高さ検出位置に移動されたときの成型品センサ51の出力から、検出対象の個々の錠剤の高さ(この高さを「錠剤高さ(圧縮成型品高さ)」と以下称する。)の検出を開始する。
ここで、検出対象の錠剤とは、製造される成型品高さ検出位置に移動されたときの錠剤を指す。これとともに、「錠剤高さ」とは、成型品センサ51の検査野(成型品高さ検出位置)に移動された下杵16上に位置された錠剤の上部に予め定めた測定箇所の高さを指す。この測定箇所は前記錠剤高さ基準値を求めた時の測定箇所と同じ部位であり、検出される値は前記錠剤高さ基準値に対する増減値(相対値)で、錠剤の厚みに相当する錠剤高さ(絶対値)である必要はない。なお、後述する不良品排出動作によって下杵16上に錠剤が位置しない場合の錠剤高さ検出においては、例えば前記成型品センサ51が光反射型であるとすると、投光器から照射される光の中心(光軸)が本来は下杵16上に錠剤がある時の前記測定箇所を直線的に通過し、その先に位置する下杵16の杵先などの物体から反射される位置の検出高さを含む。これとともに、打錠機2が運転される過程で錠剤高さが変動する場合においても、前記同様に投光器から照射される光の光軸上の錠剤の高さが検出される。
ステップS5での錠剤毎の錠剤高さ検出に基づいて、ステップS6で錠剤高さデータの取り込み(読み込み)が開始される。
ステップS6の実行に伴って所定数の錠剤高さデータの取り込みが完了するまでの間に、ステップS7で既述の圧力制御部61bによる圧力制御(FBC)がなされているか否かの判断が併行して行われる。前記錠剤高さデータ取り込み中に前記圧力制御が実行された場合は、錠剤の質量(重量)が変更されることによって錠剤の厚みが変化し、それにより、成型品センサ51による錠剤高さの検出値が変化することになるので、圧力制御によって錠剤厚みが変化している時の錠剤高さデータを読み込んだ場合には、正確な杵先間隔制御ができなくなる虞がある。
そのために、圧力制御中か否かを判断するステップS7の判断がYESの場合は、取り込んだ錠剤高さデータを廃棄してステップS5に戻り、新たな錠剤高さデータの取り込みを再開する。つまり、このように圧力制御中のデータが取り込まれた場合は、当該データを廃棄処理して次のデータを取り込む処理を行う。
なお、圧力制御部61bが設置されずに圧力制御機能が使用されない場合の処理フロー(図示しない)や、後述する杵先間隔制御フラグがONされている間だけ圧力制御部61bでの圧力制御出力が強制的にOFFされるような処理フロー(図示しない)を用いる場合は、圧力制御(FBC)がなされているか否かの判断処理は不要となるので、前記ステップS7の処理フローを割愛(パス)し、ステップS6の次にステップS8に進む。
ステップS7の判断がNOで錠剤高さデータが圧力制御中でないと判断された場合、測定された錠剤毎に異常錠剤が無いか否かをステップS8で判断する。ステップS8の判断がYESとなった場合(異常が無い錠剤であると判断された場合)は、前記ステップS5で検出された測定データ(錠剤高さ)が取り込まれる。これとは逆にステップS8での判断がNOとなった場合(異常がある錠剤であると判断された場合)は、次のステップS17に進んで制御不能としての異常信号が出力され、例えば異常錠剤の系外排出処理や機械停止などの処理が行われる。
なお、前記異常錠剤の有無検出を必要としないことが選択された(図示しない)場合は、異常錠剤が無いか否かの前記判断処理は不要となり、前記ステップS8の処理フローは割愛(パス)され、ステップS7の次にステップS9に進む。
ここで、異常錠剤とは錠剤に何らかの異常状態が発生した錠剤を指しており、こうした錠剤が発生する状態は打錠障害と称されている。異常錠剤の例として、キャッピング錠、上杵杵先付着錠、割れ・欠け錠、及び二重打ち錠を挙げることができる。
キャッピング錠とは、圧縮成型される粉末の結合性が低い等の物性が原因で、圧縮成型後の下杵16の上昇に伴い錠剤が臼孔から押出される過程で、主に錠剤の上部が剥がれることがあり、そのような状態の錠剤を指している。なお、剥がれた塊は、下杵16上に保持された錠剤の上に浮き上がったように重なった状態になるか、臼孔から押出されるときの抵抗(これを放出抵抗と称する。)及び打錠機2の振動や回転盤11の遠心力などの影響を受けて、下杵16上に保持された錠剤の上部から脱落することがある。なお、同様に、下杵16上に保持された錠剤が層状に割れる現象はラミネーションと称されるが、この現象を生じた錠剤も、キャッピング錠に含まれる。
圧縮成型される粉末の物性によって、下杵16上に保持された錠剤が上杵15或いは下杵16の杵先に付着するステッキング現象を生じることがある。このステッキング現象を原因として、圧縮成型後に臼孔から上杵15が上方へ抜き出される際、錠剤の上部の少なくとも一部が剥がれて上杵15の杵先に付着することがある。このような上杵15の杵先への付着により、錠剤の上部の少なくとも一部が剥がされた錠剤は、上杵杵先付着錠と称される。また、前記スクレーパで下杵16の上から錠剤を排出した後の下杵16の杵先に付着した錠剤の下部の少なくとも一部が剥がされた錠剤は、下杵杵先付着錠と称され、付着して剥がれた錠剤の一部が下杵16の杵先に残ることがある。
粉末の物性に起因する錠剤のスプリングバック(再膨張)が異常に大きい場合、臼12の内面に対する錠剤側面の付着作用によって滑り抵抗が異常に大きい場合、及び粉末が圧縮成型される高さに対応して臼12の内面が成型圧力に起因して局部摩耗し、その進行によって臼12の内面に環状の凹部が形成され、それを原因として錠剤の放出抵抗が過大となる場合がある。これらの場合、錠剤が臼孔から上方へ押出される過程で、押出される錠剤に割れ又は欠けを生じて前記ラミネーション現象を伴う場合もある。このような割れ又は欠けを生じた錠剤は、割れ・欠け錠と称される。
粉末の物性によって錠剤の付着性が強いと、下杵16で臼孔から押出された錠剤が、上杵15の杵先に付着したまま上杵15で持ち上げられることがある。又はステッキング現象の発生により、錠剤の上部から剥がれた塊が、上杵15の杵先に付着したまま持ち上げられることがある。これらの場合、次の圧縮成型のときに、臼孔に取込まれた粉末と一緒に、上杵15に付着している錠剤又は塊が圧縮される。それに伴い、異常な成型圧力が臼12内の粉末に掛かかるとともに、適正な厚みより厚い錠剤が成型される。このようにして成型された錠剤は二重打ち錠と称される。
以上のように制御装置61は、ステップS8で異常錠剤の有無を判断し、異常があると判断された場合に、ステップS17で異常信号が出力され、例えば異常錠剤の系外排出処理や打錠機2の運転を停止させるなどの処理が実行される。このような処理によって、異常錠剤の生産を原因とする異常錠剤の生産継続を防止できる。
ステップS8の判断がYESの場合、次のステップS9において錠剤高さデータの取り込みが完了したか否かの判断が実行される。ステップS9での判断がNOである間は錠剤高さデータの取り込みが所定数に達するまで継続して実行される。ステップS9の判断がYESとなった時点で、所定数の錠剤高さデータの取り込みが完了し、ステップS10に進む。
ステップS10では、ステップS6で取り込まれた所定数の錠剤高さ(打錠機2の回転盤11が例えば1回転する間に成型品高さ検出位置を通過した錠剤の高さ)のデータを基に平均化処理する演算を行い、錠剤高さUx(錠剤高さ平均値:成型品高さ平均値)を求める。
ステップS10が終わると、錠剤高さ基準値の変更処理の要否を判断するためのステップS11に進む。
このステップS11は、本制御実行中に錠剤高さ基準値を変更する必要が生じた場合や、本制御と併用される他の制御システムによる杵先間隔制御などによって、錠剤高さ基準値を変更する必要がある場合などに対応するために、錠剤高さ基準値の再登録の要否を判断する。このステップS11の判断がYESの場合は、ステップS4に戻る。そのため、この時点での錠剤の高さを検出した成型品センサ51の出力から錠剤高さ基準値UMが新たに求め直され、メモリに登録されている錠剤高さ基準値が更新(書き換え)される。ステップS11の判断がNOの場合は、既にメモリに登録されている錠剤高さ基準値UMの書き換えを行わずに、次の杵先間隔制御の処理の要否を判断するためのステップS12に進む。
このステップS12は杵先間隔制御フラグがONか否かを判断する。杵先間隔制御フラグがONの場合、ステップS12の判断はYESとなり、次のステップS13が実行される。また、杵先間隔制御フラグがONでない場合、ステップS12の判断はNOとなり、杵先間隔制御が実行されずにステップS5に戻る。
ここで、杵先間隔制御フラグとは、杵先間隔制御が中断または停止されている場合や、図5〜図8のフローチャートに従う制御(以下、本制御と称する。)と併用される他の制御システムからの外部指令によって杵先間隔制御フラグがOFFされることによる相互干渉を防止する場合などの、制御制限条件を確認するためのものである。つまり、このステップS12は他の制御システムからの制御制限条件を含めて、杵先間隔制御を実行しても良い状態であるか否かを判断する。
なお、ステップS12での杵先間隔制御フラグをONするタイミングは、常時ONでも良いが、予め設定された時間間隔毎にONしても良く、オペレータの手動操作や、本制御と併用される他の制御システムからの外部指令による任意のタイミングでONしても良い。
ステップS12の判断がYESの場合、杵先間隔変動演算手段をなす次のステップS13が実行される。
ステップS13は、錠剤高さUxと錠剤高さ基準値UMとの差(これを、錠剤高さ変動値「成型品高さ変動値」と称する)を求める演算処理を行うもので、後述するステップS16での杵先間隔制御出力の基準となる。
なお、このステップS13で錠剤高さ変動値を求めた上で、更に杵先間隔算定値LMaを求める演算(図示しない)を行い、この杵先間隔算定値LMaに基づいて杵先間隔を制御しても良い。このような制御を実行する場合、杵先間隔算定値LMaの演算は、以下の式(1)に従う。
LMa=LM−a3(Ux−UM)…式(1)
ここで、LMaは杵先間隔算定値、LMは杵先間隔設定値、a3はL/T相関係数、Uxは錠剤高さ(演算値)、UMは錠剤高さ基準値である。
なお、L/T相関係数a3は、錠剤厚みの変動値に対する杵先間隔の変化量を表す係数であり、打錠機2で錠剤を製造する前に予め求めてメモリに登録しておく必要がある。
ここで、錠剤の高さ変動値(Ux−UM)は錠剤の厚み変動値と相関関係にあることから、式(1)に示すようにL/T相関係数a3を用いて錠剤高さ変動値で杵先間隔算定値LMaを求めることができ、杵先間隔設定値LMが求められた杵先間隔算定値LMaとなるように、杵先間隔制御部61aからの制御出力で杵先間隔調整機構28を制御する。
また、錠剤高さ基準値に対する制御不要範囲の上下限値と、制御可能範囲の上下限値を予め設定しておくことにより、それぞれの上下限値とステップS10で求めた錠剤高さ変動値(又は前記杵先間隔算定値LMaでも良い。以下この注釈を省略する。)の演算結果に基づいて以下の判断と処理を実行してもよい。つまり、錠剤高さ変動値が設定された前記制御不要範囲の範囲内である場合(例えば±0.01mm以内の場合)は、ステップS13での錠剤高さ変動値の演算に基づく制御を不要と判断して、ステップS5に戻る処理を行い、これとは逆に錠剤高さ変動値が前記制御不要範囲の範囲外で、設定された前記制御可能範囲の範囲外(例えば±0.1mmの範囲外)である場合は制御不能で異常状態と判断し、次のステップS17で異常信号を出力し、例えば機械停止をするなどの処理を行う。
即ち、ステップS13の次のステップS14及びステップS15は、杵先間隔制御判断手段をなし、ステップS13において(Ux−UM)で演算された錠剤高さ変動値(成型品高さ変動値)が制御不要範囲内であるか否か、及び制御可能範囲であるか否かを判断する。ここで、「錠剤高さ変動値」とは、錠剤高さ基準値UMに対する錠剤高さUxの変化(増加または減少)量を指している。なお、ステップS14およびステップS15を処理する順番は入れ替わっても良く、この二つの処理ステップで錠剤高さ変動値の値が制御不要範囲内であるか否か、かつ制御可能範囲内であるか否かが判断されれば良い。
錠剤高さ変動値が制御不要範囲内であるか否かを判断するステップS14の判断がYESの場合、つまり、前記錠剤高さ変動値が制御不要範囲内である場合、制御不要と判断してステップS5に戻り、新たな杵先間隔制御処理を始める。
また、ステップS14の判断がNOとなると、杵先間隔算定値LMaが制御可能範囲であるか否かを判断する次のステップS15に進む。このステップS15の判断がNOの場合、つまり、錠剤高さ変動値が制御可能範囲外である場合、制御不能と判断されるので、次のステップS17で異常信号を出力し、例えば前記同様の機械停止などの処理を実行する。
ステップS15の判断がYESの場合、つまり、前記錠剤高さ変動値が制御可能範囲内であった場合、杵先間隔制御手段をなすステップS16が実行される。即ち、ステップS16は、杵先間隔を目標値に保持するために、ステップS13で演算された錠剤高さ変動値に応じた杵先間隔制御部61aからの制御出力で、杵先間隔調整機構28を制御する。このステップS16により、杵先間隔が目標値となるように錠剤高さ変動値に見合って杵先間隔調整機構28により下杵16の高さが変えられ、制御不要範囲内となるまでこの制御が繰り返される。
この杵先間隔制御において、上下杵などの熱膨張によって杵先間隔実際値が狭まることにより、前記錠剤高さ変動値がマイナス値である(つまり錠剤の厚みが薄くなっている)ときは、杵先間隔制御部61aからの錠剤高さ変動値に応じた制御出力で、杵先間隔が広く(例えば下杵16の高さが低く)なるように杵先間隔調整機構28のロール昇降用モータ28aが駆動され、錠剤の厚みを厚くする制御が行われる。なお、打錠機2が運転中または一時停止などにより冷却される場合などにおいては上下杵などの収縮が生じて杵先間隔実際値が広くなるため、以上の説明とは逆に、前記錠剤高さ変動値がプラス値になる(つまり錠剤の厚みが厚くなる)ことがある。この場合は、杵先間隔制御部61aからの錠剤高さ変動値に応じた制御出力で、杵先間隔が狭く(例えば下杵16の高さが高く)なるように杵先間隔調整機構28のロール昇降用モータ28aが駆動され、錠剤の厚みを薄くする制御が行われる。
また、既述のように、錠剤高さ変動値(Ux−UM)に基づき前記L/T相関係数a3を用いて杵先間隔を制御する場合には、例えば、杵先間隔変動値が錠剤高さ変動値(錠剤厚み変動値と同値)の1.2倍だとした場合、L/T相関係数a3は1.2である。この例では、錠剤高さ変動値(Ux−UM)に数値が1.2である前記L/T相関係数a3を乗じた値によって、杵先間隔調整機構28で杵先間隔が制御される。
こうしてステップS16が実行され、製造される錠剤の厚みを規定する杵先間隔が制御されることによって、杵先間隔実際値が初期の杵先間隔設定値(目標値)に保持される。したがって、製造される錠剤の厚みを、打錠機2の温度変化に拘わらずに目標値に保持することが可能である。
しかも、圧力制御機能が使用される場合においては、以上のように杵先間隔実際値が初期の杵先間隔設定値に保持されることで、温度上昇に起因した杵先間隔実際値の減少に伴う成型圧力の上昇現象によって圧力制御部61bが成型圧力を下げるFBC動作、つまり、粉末供給部で下杵16の高さを上げて錠剤の質量を減らす制御をすることがない。このため、製造される錠剤の厚みが、圧力制御部61bによるFBC動作に起因して更に薄くなることがない。
また、ステップS16が終わると、ステップS5に戻る。
指定された制御パターンが制御パターン2であると前記制御パターン判断手段で判断された場合(ステップS1の判断がNOで、ステップS2の判断がYESの場合)、図6に示すフローチャートに従う杵先間隔の制御が行われる。
即ち、まず、下杵16の高さ基準値登録手段をなすステップS21が実行されて、制御装置61が有するメモリ(図示しない)に、下杵原点高さとも称される下杵高さ基準値VMが登録される。下杵高さ基準値VMの登録は、打錠機2の運転が開始される前にオペレータの登録操作で人為的に行うことも可能であるが、本実施形態では打錠機2の運転開始に伴い運転開始直後に自動的に行われる。
即ち、ステップS21は、打錠機2の運転開始直後に、スクレーパ壁部34aの下側を通過した下杵16が下杵高さ検出位置に移動されたときに、この下杵16を検出した下杵センサ52の出力から下杵高さ基準値VMを求め、それをメモリに登録する。下杵高さ検出位置はスクレーパ34の下流側でかつ粉末供給器6の上流側の位置に設定されている。
ステップS21で登録される下杵高さ基準値VMは、打錠機2の運転開始後に下杵16が下杵16の上部に予め定めた測定箇所の高さを検出した下杵センサ52の最先の出力信号から求めてもよいが、複数の出力、例えば回転盤11が回転する間に下杵高さ検出位置を通過した下杵のうちの任意数の下杵の高さを検出した下杵センサ52の出力を、平均化処理することで、求めてもよい。
ステップS21が終わると、検出対象の下杵の高さ検出手段をなすステップS22に進み、検出対象の下杵が下杵高さ検出位置に移動されたときの下杵センサ52の出力から、下杵高さの検出を開始する。
ここで、検出対象の下杵とは、下杵高さ検出位置に移動されたときの下杵を指す。これとともに、「下杵高さ」とは、下杵センサ52の検査野(下杵高さ検出位置)に移動された下杵16の上部に予め定めた測定箇所の高さを指す。この測定箇所は、前記下杵高さ基準値を求めた時の測定箇所と同じ部位であり、検出される値は前記下杵高さ基準値に対する増減値(相対値)で、下杵16の全長でもある下杵全体の長さ(絶対値)である必要はない。
ステップS22での下杵毎の下杵高さ検出に基づいて、次のステップS23で下杵高さデータの取り込みが開始される。このステップS23は、検出対象の下杵16が下杵センサ52の検査野(下杵高さ検出位置)に移動されたときの下杵センサ52の出力から、所定数の下杵高さデータを収集する。
ステップS23の実行に伴って所定数の下杵高さデータ取り込みが完了するまでの間に、測定された下杵毎に下杵異常が無いか否かをステップS24で判断する。ステップS24の判断がYESとなった場合(下杵異常が無いと判断された場合)は、前記ステップS22で検出された測定データが次のステップS25に送られる。これとは逆にステップS24の判断がNOとなった場合(下杵異常ありと判断された場合)は、次のステップS33に進んで、制御不能としての異常信号が出力され、例えば機械停止などの処理が行われる。
ここで、下杵16の杵先異常として、杵先の曲がり・座屈と、杵先破損と、杵先粉末付着を挙げることができる。
成型圧力が下杵16の杵先強度の許容値を超えた状態で圧縮成型が行われた場合、下杵16の最も細い丸棒状の杵先部が曲げられ、或いは座屈を起こすことがある。このような現象が生じた場合、錠剤の厚みや質量等に直接的な影響が及ぼされて、規格外の不良錠剤の生産が多発することになる。
成型圧力が異常に高過ぎる場合、下杵16の杵先先端部の凹部形状が適正でない場合、或いは、前記二重打ちを生じた場合等に、杵先部の先端が破損し欠けることがある。このような現象が発生すると、破損に伴って千切れた金属片が錠剤に混入する虞があるとともに、杵先部先端の欠損した跡を原因として、錠剤の形状及び厚み不良を招くことがある。
上杵15の杵先への粉末の付着現象と同様に、スクレーパ壁部34aにより錠剤Tが下杵16から外される際に、錠剤の下部の少なくとも一部が下杵16の杵先に付着したまま残ることがある。このような現象においては、排出される錠剤に割れ、或いは欠けを生じる場合があり、それを原因として錠剤の外観不良及び厚みの不良を招くことがある。
以上のように制御装置61は、ステップS24で下杵異常の有無を判断し、異常があると判断された場合にステップS33で異常信号が出力され、例えば打錠機2の運転を停止させる。このため、下杵異常を原因とする異常錠剤の生産が継続することを防止できる。
ステップS24の次にステップS25において下杵高さデータの取り込みが完了したか否かを判断する。ステップS25での判断がNOである間は下杵高さデータの取り込みが継続される。ステップS25の判断がYESとなった時点で所定数の下杵高さデータの取り込みが完了し、ステップS26に進む。
ステップS26では、ステップS23で取り込まれた所定数の下杵高さ(例えば打錠機2の回転盤11が1回転する間に下杵高さ検出位置を通過した下杵の高さ)のデータを基に平均化処理する演算を行い、下杵高さVx(下杵高さ平均値)を求める。
ステップS26の次に、下杵高さ基準値の変更処理の要否を判断するためのステップS27が実行される。ステップS27は、本制御実行中に錠剤高さ基準値を変更する必要が生じた場合や、本制御と併用される他の制御システムによる杵先間隔制御などによって、錠剤高さ基準値を変更する必要がある場合などに対応するために、下杵高さ基準値の再登録の要否を判断する。
このステップS27の判断がYESの場合は、ステップS21に戻る。そのため、この時点での下杵の高さを検出した下杵センサ52の出力から下杵高さ基準値VMを新たに求め直し、メモリに登録されている下杵高さ基準値が更新(書き換え)される。ステップS27の判断がNOの場合は、既にメモリに登録されている下杵高さ基準値VMの書き換えを行わずに、次のステップS28に進む。
ステップS27の次に、杵先間隔制御の処理の要否を判断するためのステップS28が実行される。このステップS28は杵先間隔制御フラグがONか否かを判断する。杵先間隔制御フラグがONの場合、ステップS28の判断はYESとなり、次のステップS29が実行される。また、杵先間隔制御フラグがONでない場合、ステップS28の判断はNOとなり、杵先制御を行わずにステップS22に戻る。
ここで、杵先間隔制御フラグとは、杵先間隔制御が中断または停止されている場合や、本制御と併用される他の制御システムからの外部指令によって杵先間隔制御フラグがOFFされることによる相互干渉を防止する場合などの、制御制限条件を確認するためのものである。つまり、このステップS28は他の制御システムからの制御制限条件を含めて、杵先間隔制御を実行しても良い状態であるか否かを判断する。
なお、ステップS28での杵先間隔制御フラグをONするタイミングは、常時ONでも良いが、予め設定された時間間隔毎にONしても良く、オペレータの手動操作や、本制御と併用される他の制御システムからの外部指令による任意のタイミングでONしても良い。
ステップS28の判断がYESの場合、杵先間隔変動演算手段をなすステップS29で下杵高さVxと下杵高さ基準値VMとの差(これを、下杵高さ変動値と称する)を求める演算処理を行う。ここで求めた下杵高さ変動値は後述する杵先間隔制御出力の基準となる。
なお、このステップS29で下杵高さ変動値を求めた上で、更に杵先間隔算定値LMaを求める演算(図示しない)を行い、この杵先間隔算定値LMaに基づいて杵先間隔を制御しても良い。このような制御する場合、杵先間隔算定値LMaの演算は、以下の式(2)に従う。
LMa=LM−a6(Vx−VM)…式(2)
ここで、LMaは杵先間隔算定値、LMは杵先間隔設定値、a6はL/V相関係数、Vxは下杵高さ(演算値)、VMは下杵高さ基準値である。なお、L/V相関係数a6は、下杵高さの変動値に対する杵先間隔の変化量を表す係数で、負の値を示す。このL/V相関係数a6は、打錠機2で錠剤を製造する前に求めて予めメモリに登録しておく必要がある。
また、下杵高さ基準値に対する制御不要範囲の上下限値と、制御可能範囲の上下限値を予め設定しておくことにより、それぞれの上下限値とステップS29で求めた下杵高さ変動値(又は前記杵先間隔算定値LMaでもよい。以下この注釈を省略する)の演算結果に基づいて以下の判断と処理を実行してもよい。つまり、ステップS29で求めた下杵高さ変動値の演算結果に基づいて、下杵高さ変動値が設定された前記制御不要範囲の範囲内(例えば±0.01mm以内)である場合は、ステップS29での下杵高さ変動値の演算に基づく制御を不要と判断して、ステップS22に戻る処理を行い、これとは逆に下杵高さ変動値が前記制御不要範囲の範囲外で、設定された前記制御可能範囲の範囲外(例えば±0.1mmの範囲外)である場合は制御不能で異常状態と判断し、次のステップS33で異常信号を出力し、例えば機械停止をするなどの処理を行う。
即ち、ステップS29の次のステップS30およびステップS31は、杵先間隔制御判断手段をなし、ステップS29において(Vx−VM)で演算された下杵高さ変動値が制御不要範囲内であるか否か、及び制御可能範囲であるか否かを判断する。ここで、「下杵高さ変動値」とは、下杵高さ基準値VMに対する下杵高さVxの変化(増加または減少)量を指している。なお、ステップS30およびステップS31を処理する順番は入れ替わっても良く、この二つの処理ステップで下杵高さ変動値が制御可能範囲内であるか否か、及び制御不要範囲内であるか否かが判断されれば良い。
下杵高さ変動値が制御不要範囲内であるか否かを判断するステップS30の判断がYESの場合、つまり、前記下杵高さ変動値が制御不要範囲内である場合、制御不要となってステップS22に戻り、新たな杵先間隔制御処理を始める。
またステップS30の判断がNOとなると、下杵高さ変動値が制御可能範囲内であるか否かを判断する次のステップS31に進む。このステップS31の判断がNOの場合、つまり、下杵高さ変動値が制御可能範囲外である場合、制御不能と判断されるので、次のステップS33で異常信号を出力し、例えば機械停止などの処理を実行する。
前記ステップS31の判断がYESの場合、つまり、下杵高さ変動値が制御可能範囲内であった場合は、杵先間隔制御手段をなすステップS32が実行される。即ちステップS32は、杵先間隔を目標値に保持するために、ステップS29で演算された下杵高さ変動値に応じた杵先間隔制御部61aからの制御出力で、杵先間隔調整機構28を制御する。このステップS32により、杵先間隔が目標値となるように下杵高さ変動値に見合って杵先間隔調整機構28により下杵16の高さが変えられ、制御不要範囲内となるまでこの制御が繰り返される。
この杵先間隔の制御において、下杵の熱膨張によって下杵高さ変動値がプラス値であるときは錠剤の厚みが薄くなっていることになるので、杵先間隔制御部61aからの下杵高さ変動値に応じた制御出力で、杵先間隔が広く(例えば下杵16の高さが低く)なるように杵先間隔調整機構28のロール昇降用モータ28aが駆動され、錠剤の厚みを厚くする制御が行われる。なお、打錠機2が運転中または一時停止などにより冷却される場合などにおいては下杵の収縮が生じて杵先間隔が広くなるため、以上の説明とは逆に、前記下杵高さ変動値がマイナス値になることがあり、錠剤の厚みが厚くなることになる。この場合は、杵先間隔制御部61aからの下杵高さ変動値に応じた制御出力で、杵先間隔が狭く(例えば下杵16の高さが高く)なるように杵先間隔調整機構28のロール昇降用モータ28aが駆動され、錠剤の厚みを薄くする制御が行われる。
また、既述の実施例のように、下杵高さ変動値(Vx−VM)に基づき前記L/V相関係数a6を用いて杵先間隔を制御する場合には、例えば、前記上杵15と下杵16の全長の合計値が下杵16の全長の2倍だとすると、下杵高さ変動値を2倍した値が杵先間隔の変動値と見なすことができ、L/V相関係数a6を2とすることができる。この例では、下杵高さ変動値(Vx−VM)の数値が2である前記L/V相関係数a6を乗じた値で、杵先間隔調整機構28で杵先間隔が制御される。
こうしてステップS32が実行され、製造される錠剤の厚みを規定する杵先間隔が制御されることによって、杵先間隔実際値が初期の杵先間隔設定値(目標値)に保持される。したがって、製造される錠剤の厚みを、打錠機2の温度変化に拘わらずに目標値に保持することが可能である。
しかも、圧力制御機能が使用される場合では、以上のように杵先間隔実際値が初期の杵先間隔設定値に保持されることで、温度上昇に起因した杵先間隔実際値の減少に伴う成型圧力の上昇現象によって圧力制御部61bが成型圧力を下げるFBC動作、つまり、粉末供給部で下杵16の高さを上げて錠剤の質量を減らす制御をすることがない。このため、製造される錠剤の厚みが、圧力制御部61bによるFBC動作に起因して更に薄くなることがない。
また、ステップS32が終わると、ステップS22に戻る。
前記制御パターン判断手段で、指定された制御パターンが制御パターン3であると判断された場合(ステップS1とステップS2の判断が共にNOで、ステップS3の判断がYESの場合)、図7及び図8に示すフローチャートに従う杵先間隔の制御が行われる。
まず、前記ステップS4と同じ処理をするステップS41が実行される。即ち、錠剤の基準高さ登録手段(成型品の基準高さ登録手段)をなすステップS41により、制御装置61が有するメモリ(図示しない)に錠剤原点高さとも称される錠剤高さ基準値(成型品高さ基準値)UMが登録される。錠剤高さ基準値UMの登録は、打錠機2の運転が開始される前にオペレータの登録操作で人為的に行うことも可能であるが、本実施形態では打錠機2の運転開始に伴い運転開始直後に自動的に行われる。
即ち、錠剤の基準高さ登録手段をなすステップS41は、打錠機2の運転開始直後に錠剤が、排出位置で臼12から押出されてスクレーパ壁部34aで排出される前の状態で成型品高さ検出位置に移動されたときに、これを検出した成型品センサ51の出力から錠剤高さ基準値UMを求め、それをメモリに登録する。この場合、錠剤高さ基準値UMは、打錠機2の運転開始後に錠剤の上部に予め定められた測定箇所の高さを検出した成型品センサ51の最先の出力から求めてもよいが、複数の出力、例えば回転盤11が回転する間に成型品高さ検出位置を通過した錠剤のうちの任意数の錠剤の測定箇所の高さを検出した成型品センサ51の出力信号を、平均化処理して、求めてもよい。
ステップS41が終わると、前記ステップS21と同じ処理をするステップS42が実行される。即ち、下杵16の高さ基準値登録手段をなすステップS42は、打錠機2の運転開始直後に、スクレーパ壁部34aの下側を通過した下杵16が下杵高さ検出位置に移動されたときに、この下杵16の上部に予め定められた測定箇所の高さを検出した下杵センサ52の出力から下杵高さ基準値VMを求め、それをメモリに登録する。この場合、下杵高さ基準値VMは、打錠機2の運転開始後に下杵16の測定箇所の高さを検出した下杵センサ52の最先の出力から求めてもよいが、複数の出力信号、例えば回転盤11が回転する間に下杵高さ検出位置を通過した下杵のうちの任意数の下杵の測定箇所の高さを検出した下杵センサ52の出力を、平均化処理して、求めてもよい。
ステップS42が終わると、検出対象の錠剤の高さ検出手段(成型品高さ検出手段)、及び下杵16の高さ検出手段をなすステップS43に進み、検出対象の錠剤が成型品高さ検出位置に移動されたときの成型品センサ51の出力から、錠剤高さの検出を開始するとともに、検出対象の下杵16が下杵高さ検出位置に移動されたときの下杵センサ52の出力から、下杵高さの検出を開始する。
この各高さ検出(錠剤高さ及び下杵高さ検出)が開始されると、次のステップS44で検出対象の前記各高さデータ(錠剤高さデータ及び下杵高さデータ)の取り込み開始を実行する。
ステップS44の実行に伴って所定数の前記各高さデータの取り込み(読み込み)が完了するまでの間に、次のステップS45で既述の圧力制御部による圧力制御(FBC)がなされているか否かの判断が併行して行われる。前記各高さデータの取り込み中に前記圧力制御が実行された場合は、錠剤の質量(重量)が変更されることによって錠剤の厚みが変化し、それにより、成型品センサ51による錠剤高さの検出値が変化することになるので、圧力制御によって錠剤厚みが変化している時の錠剤高さデータを読み込んだ場合には、正確な杵先間隔制御ができなくなる虞がある。そのために、圧力制御中か否かを判断するステップS45の判断がYESの場合は、取り込んだ錠剤高さデータを廃棄するとともに、下杵高さデータも同時に廃棄してステップS43に戻り、新たな錠剤および下杵高さデータの取り込みを再開する。
このように、錠剤高さデータと下杵高さデータの取り込みのタイミング(同期)を取ることによって、双方のデータの整合性を確保し杵先間隔制御の精度を高めることを目的として、圧力制御中のデータが取り込まれた場合は、錠剤高さデータの廃棄処理に合わせて下杵高さデータも同時に廃棄処理するのが好ましい。但し、本発明はこのような処理に制約されない。圧力制御中のデータが取り込まれた場合に、錠剤高さデータのみを廃棄処理し、下杵高さデータは廃棄せずそのまま採用してもよい。
なお、圧力制御機能が使用されない場合の処理フロー(図示しない)や、後述する杵先間隔制御フラグがONされている間だけ圧力制御部61bでの圧力制御出力が強制的にOFFされるような処理フロー(図示しない)を用いる場合は、圧力制御(FBC)がなされているか否かの判断処理は不要となり、前記ステップS45の処理フローを割愛(パス)し、ステップS44の次にステップS46を処理することができる。
なお、ここで、「検出対象の錠剤」と「錠剤高さ」の定義、及び「検出対象の下杵」と「下杵高さ」の定義は、既述した通りである。
ステップS45の判断がNOの場合は、次のステップS46の処理が実行される。
ステップS46では測定された錠剤毎に異常錠剤が無いか否か、または下杵16毎に下杵異常が無いか否かを判断する。ステップS46の判断がYESである場合(錠剤および下杵16に異常が無いと判断された場合)は、前記ステップS43で検出された錠剤高さと下杵高さのそれぞれの測定データが次のステップS47に送られ取り込まれる。これとは逆にステップS46の判断がNOである場合(錠剤または下杵16に異常ありと判断された場合)は、次のステップS58で制御不能としての異常信号が出力され、例えば機械停止などの処理が行われる。
なお、前記錠剤および下杵16に異常が無いか否かの判断処理の何れか、または双方を必要としないことが選択された(図示しない)場合は、選択された項目のみの判断を行って次のステップS47に進むか、もしくは前記ステップS46の処理フローが割愛(パス)され、前記ステップS45の処理の次にステップS47が処理される。
次のステップS47において錠剤高さデータの取り込みが完了したか否かの判断が実行される。ステップS47での判断がNOである間は各高さデータ(錠剤高さデータ及び下杵高さデータ)の取り込みがそれぞれ継続して実行される。このステップS47の判断がYESとなった時点で各高さデータの所定数の取り込みが完了し、前記ステップS10と同じ処理をするステップS48、および前記ステップS26と同じ処理をするステップS49の双方の処理に進む。
なお、ステップS43〜ステップS47での各高さデータの取り込み処理は以上の図7に示したフローチャートに制約されない。例えば、前記錠剤と下杵の各高さデータの取り込み処理は個別に併行して行っても良く、先に錠剤高さデータの取り込みを実行し、その後に下杵高さデータの取り込みを行うようにしても良く、またその逆の順番で処理しても良い。更に、夫々のデータの取り込みに設定される所定数は必ずしも同数である必要はない。これとともに、前記各高さ検出に基づくステップS46での異常錠剤の有無の判断と、下杵異常の有無の判断とは、それぞれ個別に行っても良い。
次のステップS48では、ステップS44で取り込まれた所定数の錠剤高さデータを基に平均化処理を行い、錠剤高さUx(錠剤高さ平均値)を求める。
またステップS49では、前記同様にステップS44で取り込まれた所定数の下杵高さデータを基に平均化処理を行い、下杵高さVx(下杵高さ平均値)を求める。
なお、ステップS48とステップS49での各高さ(平均値)を求める処理は以上の図7に示したフローチャートに制約されない。例えば、先に錠剤高さ(平均値)を求める処理を実行し、その後に下杵高さ(平均値)を求める処理を行うようにしても良く、またその逆の順番で処理しても良い。
ステップS48とステップS49の双方の処理が終了し、前記錠剤高さUx(錠剤高さ平均値)と下杵高さVx(下杵高さ平均値)が求められた段階で、次の処理を行うステップS50に進む。
次に、各高さ基準値(錠剤高さ基準値および下杵高さ基準値)の変更処理の要否を判断するためのステップS50が実行される。ステップS50は、本制御実行中に前記各高さ基準値を変更する必要が生じた場合や、本制御と併用される他の制御システムによる杵先間隔制御などによって、前記各高さ基準値を変更する必要がある場合などに対応するために、錠剤高さ基準値および下杵高さ基準値の各高さ基準値の再登録の要否を判断する。
このステップS50の判断がYESとなった場合は、ステップS41に戻る。それにより、ステップS41で、この時点での錠剤の高さを検出した成型品センサ51の出力から錠剤高さ基準値UMを新たに求め直すとともに、次のステップS42で、前記ステップS41の処理開始と同時点での下杵16の高さを検出した下杵センサ52の出力から下杵高さ基準値VMを新たに求め直すことにより、メモリに登録されている錠剤高さ基準値および下杵高さ基準値のそれぞれを更新(書き換え)する。ステップS50の判断がNOの場合は、既にメモリに登録されている錠剤高さ基準値UMおよび下杵高さ基準値VMの書き換えを行わずに、次のステップS51に進む。
ステップS50の次に、前記ステップS12(または前記ステップS28)と同じ処理をする、つまり、杵先間隔制御の処理の要否を判断するためのステップS51が実行される。
このステップS51では杵先間隔制御フラグがONか否かを判断する。杵先間隔制御フラグがONの場合、ステップS51の判断はYESとなり、次のステップS52が実行される。また、杵先間隔制御フラグがONでない場合、ステップS51の判断はNOとなり、杵先間隔制御が実行されずにステップS43に戻る。
ここで、杵先間隔制御フラグとは、杵先間隔制御が中断または停止されている場合や、本制御と併用される他の制御システムからの外部指令によって杵先間隔制御フラグがOFFされることによる相互干渉を防止する場合などの、制御制限条件を確認するためのものである。つまり、このステップS51は他の制御システムからの制御制限条件を含めて、杵先間隔制御を実行しても良い状態であるか否かを判断する。
なお、ステップS51での杵先間隔制御フラグをONするタイミングは、常時ONでも良いが、予め設定された時間間隔毎にONしても良く、オペレータの手動操作や、本制御と併用される他の制御システムからの外部指令による任意のタイミングでONしても良い。
ステップS51の判断がYESの場合、前記ステップS13と同じ処理をするステップS52での演算により、錠剤高さUxと錠剤高さ基準値UMとの差である錠剤高さ変動値が求められ、引き続き、前記ステップS29と同じ処理をするステップS53で下杵高さVxと下杵高さ基準値VMとの差である下杵高さ変動値を求める演算を行い、この後、錠剤高さ変動値の補正処理をするステップS54に進む。
ステップS54の処理は、前記ステップS52での錠剤高さUxと錠剤高さ基準値UMとの差である錠剤高さ変動値を求める処理と、ステップS53での下杵高さVxと下杵高さ基準値VMとの差である下杵高さ変動値を求める処理との双方が、完了した後に実行される。
ステップS52及びステップS53の処理(つまり、錠剤高さ変動値と、下杵高さ変動値の双方を求める演算処理)が終わると、錠剤高さ変動値を補正するためのステップS54の演算処理が実行される。この補正された錠剤高さ変動値(錠剤高さ変動値の補正値とも称する。)は、以下の式(3)に従う演算で求められる。
(Ux−UM)−(Vx−VM)…式(3)
また、求められた錠剤高さ変動値の補正値は、後述するステップS57での杵先間隔制御出力の基準となる。
なお、錠剤高さ変動値の補正値を求めた上で、更に杵先間隔算定値LMaを求める演算(図示しない)を行い、この杵先間隔算定値LMaに基づいて杵先間隔を制御しても良い。このような制御を実行する場合、杵先間隔算定値LMaの演算は、以下の式(4)に従う。
LMa=LM−a3〔(Ux−UM)−(Vx−VM)〕…式(4)
ここで、LMaは杵先間隔算定値、LMは杵先間隔設定値、a3は前記L/T相関係数、Uxは錠剤高さ(平均値)、UMは錠剤高さ基準値、Vxは下杵高さ(平均値)、VMは下杵高さ基準値である。また式(4)の〔(Ux−UM)−(Vx−VM)〕で求められる値は前記錠剤高さ変動値の補正値である。
なお、L/T相関係数a3は既述の通りであり、打錠機2で錠剤を製造する前に予め求めてメモリに登録しておく必要がある。
このようにして求めた錠剤高さ変動値の補正値に基づく杵先間隔算定値LMaを用いて、杵先間隔設定値LMが前記杵先間隔算定値LMaとなるように、杵先間隔制御部61aからの制御出力で杵先間隔調整機構28を制御する。
また、錠剤高さ基準値に対する制御不要範囲の上下限値と、制御可能範囲の上下限値を予め設定しておくことにより、それぞれの上下限値とステップS54で補正された錠剤高さ変動値(又はこの変動値に基づいて更に求められた杵先間隔算定値LMa)の演算結果に基づいて以下の判断と処理を実行しても良い。つまり、前記補正された錠剤高さ変動値(又はこの変動値に基づいて更に求められた杵先間隔算定値LMa)が設定された前記制御不要範囲の範囲内(例えば±0.01mm以内)である場合は、杵先間隔制御不要と判断して、ステップS43に戻る処理を行い、これとは逆に補正された錠剤高さ変動値(又はこの変動値に基づいて更に求められた杵先間隔算定値LMa)が制御不要範囲外で、設定された制御可能範囲の範囲外(例えば±0.1mmの範囲外)である場合は制御不能な異常状態と判断し、異常信号を出力し、例えば機械停止をするなどの処理を行う。
ここで、「下杵高さ」及び「検出対象の下杵」、「錠剤高さ」及び「検出対象の錠剤」、また「下杵高さ変動値」及び「錠剤高さ変動値」の各定義は、既述した通りである。
次のステップS55及びステップS56は、杵先間隔制御判断手段をなし、ステップS54において求められた錠剤高さ変動値の補正値(成型品高さ変動値の補正値)が制御不要範囲内であるか否か、及び制御可能範囲であるか否かを判断する。なお、ステップS55およびステップS56を処理する順番は入れ替えても良く、この二つの処理ステップで錠剤高さ変動値の補正値が制御可能範囲内であるか否か、及び制御不要範囲内であるか否かが判断されれば良い。
錠剤高さ変動値の補正値が制御不要範囲内であるか否かを判断するステップS55の判断がYESの場合、つまり、前記錠剤高さ変動値の補正値が制御不要範囲内である場合、制御不要と判断されてステップS43に戻り、新たな杵先間隔制御処理を始める。
また、ステップS55の判断がNOの場合、錠剤高さ変動値の補正値が制御可能範囲内であるか否かを判断するステップS56に進む。このステップS56の判断がNOの場合、つまり、錠剤高さ変動値の補正値が制御可能範囲外である場合、制御不能と判断されて、次のステップS58で異常信号を出力し、例えば機械停止などの処理を実行する。
ステップS55の判断がNOで、ステップS56の判断がYESの場合、つまり、前記錠剤高さ変動値の補正値が制御不要範囲内でなく、かつ制御可能範囲内であった場合、前記ステップS16又はステップS32と同様な処理をする杵先間隔制御手段をなすステップS57が実行される。
それにより、杵先間隔制御手段をなすステップS57は、ステップS54で補正された錠剤高さ変動値に応じた杵先間隔制御部61aからの制御出力で、杵先間隔調整機構28を制御して杵先間隔調整機構部の下杵16の高さが変えられ、制御不要範囲内となるまでこの制御が繰り返される。
この場合、上下杵などの熱膨張によって杵先間隔実際値が狭まることにより、前記錠剤高さ変動値の補正値がマイナス値である(つまり錠剤の厚みが薄くなっている)ときは、杵先間隔が広く(例えば下杵16の高さが低く)なるように杵先間隔調整機構28のロール昇降用モータ28aが駆動され、錠剤の厚みを厚くする制御が行われる。この逆に、前記錠剤高さ変動値の補正値がプラス値であるときには、杵先間隔が狭く(例えば下杵16の高さが高く)なるように杵先間隔調整機構28のロール昇降用モータ28aが駆動され、錠剤の厚みを薄くする制御が行われる。
こうしてステップS57が実行され、錠剤の厚みを規定する杵先間隔が制御されることによって、杵先間隔実際値が初期の杵先間隔設定値(目標値)に保持される。したがって、製造される錠剤の厚みを、打錠機2の温度上昇に拘わらずに目標値に保持することが可能である。
その上、制御パターン3では、既述のように下杵高さ変動値により錠剤高さ変動値を補正することで、下杵16の熱膨張の影響が排除され、熱膨張の影響を受けた下杵16の上に載っている錠剤の高さを検出することによる検出高さの誤差が相殺されるので、錠剤の高さ変動値(厚み変動値)を正確に把握できる。それにより杵先間隔調整機構28を制御するので、より正確に錠剤の厚みを制御することが可能である。
しかも、圧力制御機能が使用される場合においては、既述のように杵先間隔実際値が初期の杵先間隔設定値に保持されることで、温度上昇に起因した杵先間隔実際値の減少に伴う成型圧力の上昇現象によって圧力制御部61bが成型圧力を下げるFBC動作、つまり、粉末供給部での下杵の高さを上げて錠剤の質量を減らす制御をすることがない。このため、製造される錠剤の厚みが、圧力制御部61bのFBC動作に起因して、更に薄くなることがない。
また、ステップS57が終わると、ステップS43に戻る。
以上のように錠剤高さ変動値の補正要素として下杵高さ変動値を求めることによって杵先間隔を制御する方法に代えて、下杵高さ変動値によって錠剤(成型品)高さ基準値を補正することによって杵先間隔を制御してもよい。
この場合、錠剤高さ基準値を下杵高さ変動値で補正し、補正された錠剤高さ基準値(ここでは記号をUMaと称する)と錠剤高さUxとを用いて式(3)の(UM−Ux)に準じて(UMa−Ux)で錠剤高さ変動値を求め、その錠剤高さ変動値(または、その錠剤高さ変動値に基づいて前記同様に式(4)を代用し錠剤高さ基準値UMを補正された錠剤高さ基準値UMaに置き換えて求められる杵先間隔算定値LMa)が制御不要範囲内であるか否か、及び制御可能範囲であるか否かを判断し、杵先間隔制御が必要と判断された時、この錠剤高さ変動値(または杵先間隔算定値LMa)に基づく制御出力で、杵先間隔調整機構28を制御する。これにより、杵先間隔実際値が初期の杵先間隔設定値(目標値)となるように実際の錠剤高さ変動値に応じた制御出力で下杵16の高さが調整されるに伴い、製造される錠剤の厚みを規定する杵先間隔が制御されることによって、製造される錠剤の厚みを、打錠機2の温度上昇に拘わらずに目標値に保持することが可能である。
なお、以上の方法に従う制御を実行する場合において、下杵高さ変動値で錠剤高さ基準値を補正した時には、その時点での下杵高さVxの値で下杵高さ基準値を同時に更新する(書き替える)必要がある。つまり、この更新処理を行うことで、以降の下杵高さ変動値が前記更新された新たな下杵高さ基準値に基づいて求められ、同じタイミングで錠剤高さ基準値と下杵高さ基準値が更新されるので、それ以降の錠剤高さ基準値の補正に誤差が生じる虞が無く適正に行われる。
前記構成の打錠装置1では、その成型品センサ51及び下杵センサ52が、回転盤11が収容されたフレーム10に固定された支持体41に支持されている。これにより、打錠機2の運転に伴い打錠機2の各部が温度上昇して熱膨張するにも拘らず、これら各部と同様に支持体41の基軸42も熱膨張される。
このため、打錠機2の温度上昇に拘らず、成型品センサ51と下杵センサ52との相対位置は変わらない。これとともに、錠剤高さとこれを検出する成型品センサ51の高さが相対的に上下方向に変動する懸念がなく、下杵16の杵先高さとこれを検出する下杵センサ52の高さが相対的に上下方向に変動する懸念がない。なお、図2中二点鎖線で示したように基軸42に代えて支軸44を水平にしてフレーム10に固定した場合、支軸44は軸方向(つまり、水平方向)に熱膨張する。しかし、この膨張は、成型品センサ51及び下杵センサ52の高さ方向へは影響しないため、これらの相対位置が上下方向に変動する懸念がない。
したがって、成型品センサ51及び下杵センサ52の高さが、打錠機2の温度上昇による影響で変動することがないので、これらセンサによる検出精度を維持することができる。
なお、フレーム10に固定された中継部材(図示しない)に支持体41を固定し、この支持体41に成型品センサ51と下杵センサ52を支持しても、前記の理由によって、打錠機2の温度上昇に拘らず、成型品センサ51と下杵センサ52との相対位置が上下方向に変わらないようにできる。
また、支持体41を常温(打錠機2が運転開始される時の温度)に保持するために、例えば空冷可能な構造(図示しない)とすることによっても、前記熱膨張の影響を回避することができる。
前記第1実施形態は、打錠機2で製造される全ての錠剤を対象として、スクレーパ34の上流側で、下杵16に載置された錠剤の高さ等を検出することに基づき杵先間隔を制御するように構成されている。しかし、これに制約されず、本発明は、制御装置61が不良錠剤と良錠剤とを判別する良否判定部を備え、この判定部により不良品と判定された錠剤を、良品と判定された錠剤を回転盤11外に排出する良品排出用スクレーパの下流側に配置された不良品排出用のスクレーパで排出する打錠装置、又はすべての錠剤を排出するスクレーパに、このスクレーパで導かれる錠剤のうちから不良品をスクレーパ外に取出す機構が組み込まれた打錠装置においても、適用することが可能である。
図9〜図11を参照して本発明の第2の実施の形態を説明する。第2実施形態で、以下説明する構成以外は第1実施形態と同じであるので、第1実施形態と同一の構成又は同様の機能を奏する構成については、第1実施形態の対応構成と同じ符号を付してその説明を省略する。なお、以下の説明では必要により図2等の第1実施形態の説明で用いた図面も参照する。
第2実施形態において制御装置61は良否判定部61c(図11参照)を更に備える。良否判定部61cは、回転盤11が回転する間に圧力センサ29が検出した成型圧力を、予め設定された成型圧力の規格範囲(上限値と下限値を有する)と比較して、圧縮成型された錠剤の良否を判定する。ここで、検出された成型圧力が規格範囲内である場合の錠剤は良品と判定され、検出された成型圧力が規格範囲外である場合の錠剤は不良品と判定される。
第2実施形態において排出装置31は、良品排出部と不良品排出部を有する。
まず、良品排出部を説明する。この排出部は、図2を用いて第1実施形態で既に説明した棚板32、ボディ33、スクレーパ34、及びシュート35の他に、以下説明する仕分け手段71を有する。
仕分け手段71は、不良品排出位置において後述する不良品排除手段81による不良錠剤の排除が何らかの原因でできなくなった場合に、不良品排出位置に対し回転盤11の回転方向下流側に配置されたスクレーパ壁部34aで排出される不良品に係る錠剤(不良錠剤)を、良品排出用のシュート35から除去して廃棄するために設けられている。この仕分け手段71は、廃棄シュート72と、シャッタ73と、シャッタ駆動器74を有する。
廃棄シュート72は斜めのシュート35から下向きに分岐されている。シャッタ73は、廃棄シュート72の上端開ロからなる入口を開閉し、通常は図11中実線で示すように入口を閉じる閉じ位置に配置されている。それにより、良品に係る錠剤(良錠剤)をシュート35の開放された下端がなした出ロに向けて排出できる。
図11中二点鎖線で示すようにシャッタ73が廃棄シュート72の入口を開く開き位置に配置されることにより、シュート35に導かれた不良錠剤等が廃棄シュート72を通って下方へ取出される。シャッタ駆動器74は、例えばロータリーソレノイド等のアクチュエータからなり、シャッタ73を通常は閉じ位置に保持し、廃棄信号の入力によって所定時間の間、シャッタ73を開き位置に移動させる。廃棄信号は、成型品センサ51の出力に基づき不良錠剤の排除不良が制御装置61で判定された場合、制御装置61からシャッタ駆動器74に供給される。
棚板32(図2参照)は、図9に示すように良品用の排出口32aの他に不良品用の排出口32bを有する。ボディ33は、良品用の受入れスペース33aの他に排出口32bに上方から連続する不良品用の受入れスペース33bを有する。この受入れスペース33bは、排出口32aに対して回転盤11の回転方向上流側に並べられている。
図9に示すように不良品排出部は良品排出部に対し回転盤11の回転方向上流側に隣リ合って設けられている。即ち、不良品排出部は、区画壁部34bにその上流側から対向された上流側壁部34g、不良品受入れスペース33b、及び不良品排出用のシュート36等を有する。
上流側壁部34gは例えばボディ33と一体に形成可能である。上流側壁部34gはボディ33の上部から臼取付け部11a上にわたる部位を有する。この部位は臼取付け部11a上面に対して直立するように設けられ、その下端は臼取付け部11a上面に至近距離で対向されている。上流側壁部34gの先端は、移動軌跡Pを通過する錠剤(成型品)に達することなくこの移動軌跡Pで囲まれた領域の外側(図9では移動軌跡Pの下側)に位置されている。上流側壁部34gは区画壁部34bと平行であることが好ましい。この上流側壁部34gと区画壁部34bは相互間に不良品排出スペース34hを形成している。不良品排出スペース34hは不良品受入れスペース33bに連続している。
上壁部34cは、良品用の受入れスペース33a及び良品用の排出スペース34eだけではなく、不良品用の受入れスペース33b及び不良品排出スペース34hを上方から覆っている。この上壁部34cは省略することも可能である。
シュート36は、排出される錠剤を図示しない不良品受容器に導くもので、図10に示すように回転盤11の外側でかつ斜め下方に向けて延びて配設されている。シュート36の上端は棚板32に下側から接続され、このシュート36の上端開ロは排出口32bに連続している。
第2実施形態の打錠装置1は図9及び図10に示す不良品排除手段81を更に備える。不良品排除手段81による不良錠剤の排出位置は良品排出部を基準に回転盤11の回転方向上流側に設定されている。不良品排除手段81は、以下の構成に限定されるものではないが、例えば噴気ノズル82及び通気管83を有する。
噴気ノズル82は、臼12の移動軌跡Pで囲まれる領域内から前記不良品排出部に向けて、圧縮空気を前記噴出するように配設されている。なお、噴気ノズル82の下端は回転盤11の臼取付け部11a上面に接しないように近接している。
通気管83の一端は噴気ノズル82に接続され、通気管83の他端は図示しない圧縮空気源に接続されている。通気管83の中間部に開閉用の電磁弁84が設けられている。電磁弁84は常時は閉じた状態を維持する。錠剤の成型圧力が規格圧力範囲外であると良否判定部61cが判断した場合(つまり、不良品が製造されたと判断した場合)、それに基づき制御装置61から出力される排除信号に従い、不良品と判断された錠剤(又はこの不良錠剤を含む排出対象錠剤)が不良品排出位置に移動される毎にタイミングを合わせて、電磁弁84が所定の短時間だけ開かれる。
電磁弁84が開かれると、噴気ノズル82から圧縮空気が噴出されて、この圧縮空気が下杵16によって臼12上に押出された不良錠剤(又はこの不良錠剤を含む排出対象錠剤)に噴き付けられる。それにより、前記排出対象錠剤は、下杵16から外されると同時に不良品排出スペース34hに向けて吹き飛ばされ、不良品排出部を通って回転盤11外に排除される。
更に、不良品排除手段81を備える第2実施形態において、杵先間隔制御部61aは、成型品センサ51の出力から錠剤高さを求める場合、異常データを排除する。
即ち、不良品排出位置で不良錠剤が正常に排除されると、この後に、成型品センサ51の検査野(成型品高さ検出位置)に移動された下杵16上に錠剤は存在しない。この場合、成型品センサ51で検出される錠剤高さは、錠剤がある場合とは大きく異なる何らかの高さデータが検出される。この検出データを、本明細書では前記異常データと称する。
このため、制御装置61は異常データ判定部61d(図11参照)を有する。この異常データ判定部61dは、例えばアンド回路からなり、これに入力される前記排除信号と、良否判定部61cが不良品と判定したときに良否判定部61cから供給される良品判定信号とのアンドが成立した場合、そのときの成型品センサ51の出力が異常データである、と判定する。こうして排除不良が判定された場合、制御装置61は仕分け手段71のシャッタ駆動器74の駆動を制御する。
第2実施形態では、打錠機2の排出位置において、良品排出部に対し回転盤11の回転方向上流側に不良品排出部及び不良品排除手段81を配置している。これにより、良否判定部61cで不良品と判断された不良錠剤が不良品排除手段81により正常に排除されている限り、良錠剤のみが下杵16上に載った状態で排出装置31の良品排出部に移動される。それに伴い、下杵16上の良錠剤はスクレーパ壁部34aで下杵16の上端から外され、良品排出部を通って回転盤11外に排出される。
このため、前記制御パターン1,3のいずれかが指定されると、良錠剤が排出される以前に不良錠剤が排除されることにしたがって、良錠剤についてのみの錠剤高さを検出することに基づいて、図5、又は図7及び図8に示したフローチャートに従って杵先間隔制御のために杵先間隔調整機構28により下杵16の高さが調整される。これらの制御内容の説明は、第1実施形態で既にしたので、重複説明を避けるために、ここでは説明を省略する。従って、この第2実施形態においても、温度変化に拘わらずに、圧縮成型される錠剤を目標とする厚みに保持して製造することが可能である。
第2実施形態の打錠装置1が備える不良品排除手段81は、その電磁弁84の動作不良、噴気ノズル82及び通気管83での通気抵抗の増加、空気供給源から送られる空気量の変動等を原因として、不良錠剤を正常に排除できなくなる虞が考えられる。このような事態になると、不良錠剤が、スクレーパ壁部34aにより下杵16から外されて、良錠剤とともに排出装置31の良品排出部を通って排出さるようになる。しかし、下記のように良錠剤から不良錠剤を仕分けできるので、良品用のシュート35の出口から排出される良錠剤中に不良錠剤が混じらないようにできる。
詳しくは、制御装置61は排除不良判定部61e(図11参照)を更に有する。この排除不良判定部61eは、例えばアンド回路からなり、これに入力される不良品排除手段81を動作させる前記排除信号と、成型品センサ51の出力のうちで下杵16上に不良錠剤が載っている場合に検出される錠剤高さの検出信号とのアンドが成立した場合に、不良品が排除できなかった、と判定する。
排除不良が判定された場合、制御装置61は仕分け手段71のシャッタ駆動器74を駆動するので、シャッタ73が、図11中二点鎖線で示す位置に一定時間の間、配置される。それにより、良品排出用のシュート35を通る不良錠剤が、適当数の良錠剤とともにシャッタ73により下方へ導かれ、廃棄シュート72を通って排除される。
そして、シャッタ駆動器74の駆動開始から一定時間後にシャッタ73が実線で示した元の位置に戻されるので、この後、良錠剤はシュート35の出ロを通って取出される。従って、既述のように不良錠剤の排除不良があっても、それがシュート35を通って取出される良錠剤中に混じることがない。なお、以上のように不良錠剤の排除不良が判定された場合、必要に応じて打錠機2の運転を止める処理を制御装置61で実行させるようにすることもできる。
以上説明した以外の第2実施形態の構成は、図8〜図11に示されない構成を含めて第1実施形態の構成と同じであるとともに、作用効果も第1実施形態と同じである。
図12〜図14を参照して本発明の第3の実施の形態を説明する。第3実施形態で、以下説明する構成以外は第2実施形態と同じであるので、第2実施形態と同一の構成又は同様な機能を奏する構成については、第2実施形態の対応構成と同じ符号を付してその説明を省略する。なお、以下の説明においては、必要により第1、第2の実施形態の説明で用いた図面も参照する。
第3実施形態では、第2実施形態とは逆に、回転盤11の回転方向下流側に排出装置31が有する不良品排出部を設け、回転方向上流側に排出装置31が有する良品排出部を設けている。
不良品排出部は、棚板32の下流側部位、排出口32aを囲んだボディ33の下流側部位33i、スクレーパ34のスクレーパ壁部34a、区画壁部34b、及び先端壁部34d、シュート35、上壁部34cの下流側部位を有して形成される。下杵16により臼12上に押出された不良錠剤は、不良品排出部にその入口34fを通って搬入され、スクレーパ壁部34aに当って下杵16から分離され、最終的に不良品排出用のシュート35を通って排出される。
良品排出部は、棚板32の上流側部位33j、排出口32bを囲んだボディ33の上流側部位、スクレーパ34の区画壁部34b及び上流側壁部34g、シュート36、上壁部34cの上流側部位を有して形成される。
この良品排出部に対応して良品排出手段91が配設されている。良品排出手段91は、例えばエアシリンダからなる駆動器92と、この駆動器92により軸方向に往復移動されるロッド92aの先端部に固定されたヘッド93を有する。ヘッド93は、先端壁93aと斜めのスクレーパ壁部93bを有する。これら先端壁93aとスクレーパ壁部93bの下端は、回転盤11の臼取付け部11aの上面に至近距離で対向している。
ヘッド93は、駆動器92が停止状態にある通常時には使用位置に保持され、駆動器92が駆動されたときに退避位置に移動される。使用位置に配置されたヘッド93のスクレーパ壁部93bは、図12中実線で示すように臼12の臼孔の移動軌跡Pと交叉する。退避位置に配置されたヘッド93は、その全体が図12中二点鎖線で示すように移動軌跡Pで囲まれる領域に配置される。
ヘッド93が使用位置に配置された状態で、スクレーパ壁部93bは、入口34fに回転盤11の回転方向上流側から対向し、かつ、区画壁部34bの先端に連続するように配置される。ヘッド93が使用位置に配置された状態で、下杵16で臼12上に押出された錠剤(良錠剤)は、ヘッド93のスクレーパ壁部93bに当って、下杵16の上端から外され、良品排出部を通って排出される。
ヘッド93が退避位置に配置された状態で、下杵16で臼12上に押出された錠剤(不良錠剤)は、ヘッド93に当ることなく通過して、不良品排出部の入口34fを通って不良品排出部内に移動される。この後、不良錠剤は、不良品排出部のスクレーパ壁部34aに当って、下杵16の上端から外されて不良品排出部を通って排除される。
第3実施形態で錠剤の高さを検出する成型品センサ51には、反射型のセンサに代えて透過型のセンサが使用されている。この成型品センサ51は、図13に示すように臼取付け部11aの上面に近接して配置される投光器51aと受光器51bを有する。
投光器51aは図示しない発光素子を有する。投光器51aは図12に示すように臼孔の移動軌跡Pで囲まれる領域の外で移動軌跡Pを通過する錠剤(成型品)と接触しない位置に配置されている。この投光器51aから出射される光は移動軌跡Pと交叉して受光器51bに向けて照射される。受光器51bは、フォトランジスタ等の光電変換素子を有する。受光器51bは移動軌跡Pで囲まれる領域で移動軌跡Pを通過する錠剤(成型品)と接触しない位置に投光器51aの出射光を受けるように配置されている。なお、投光器51aと受光器51bの前記説明とは逆に配置することも可能である。
成型品センサ51は、排出装置31を基準に回転盤11の回転方向上流側に配設されている。下杵16で臼12から押出された錠剤Tは、図13に示すように投光器51aと受光器51bにわたる光路を横切り、そのときに下杵16上の錠剤で遮られた光は受光器51bに入射されず、錠剤の上面より上の空間を通過した光のみが入射されることで、錠剤の高さに応じた入射量を検出できる。このため、下杵16上の錠剤(ここでは製造される全ての錠剤)の高さデータが成型品センサ51で検出される。
第3実施形態で不良錠剤を排出するためのスクレーパ壁部34aの下側を通過した下杵16の高さ検出する下杵センサ52には、ミラー反射型のセンサが使用されている。この下杵センサ52は、図14に示すようにセンサ本体95と、ミラーホルダ96と、反射鏡97を有する。
センサ本体95は投光器とこれに並んだ受光器を有する。ミラーホルダ96は、筒状であり、センサ本体95の本体ケースに支持されている。このミラーホルダ96の先端部下壁に例えば開ロからなる窓96aが開けられているとともに、ミラーホルダ96の根元部上壁に通孔96bが開けられている。反射鏡97は、ミラーホルダ96の先端部に、センサ本体95及び窓96aに夫々対向して斜めに収容されている。
下杵センサ52は、その窓96aが下杵高さ検出位置に移動された下杵16の上端に対して上側から対向するように配設されている。この下杵センサ52は、センサ本体95の投光器から出射された光を、反射鏡97で下方に反射させ、窓96aを通して下杵16の先端面に照射する。この照射に伴い下杵先端面からの反射光は、窓96aを通って反射鏡97に入射され、この反射鏡97でセンサ本体95に向けて反射されて、センサ本体95の受光器に入射する。従って、下杵センサ52は、スクレーパ壁部34aで不良品が除去された直後の下杵16の上面部高さを検出できる。なお、反射鏡97を経由して下杵16の上端に照射される光軸は、下杵16の縦軸の中心線と平行(つまり臼12の上面と直角)であることが望ましいが、光軸が下杵16の上面を外れない範囲で傾いていてもよい。
更に、通孔96bには打錠機2の運転中常に図示しない空気供給手段により空気が供給される。この空気はミラーホルダ96の内部を反射鏡97に向けて流動した後、窓96aを通ってミラーホルダ96外に流出する。こうした空気の流れで、ミラーホルダ96の内部空間を含む投受光の光路中の粉塵がパージされるとともに反射鏡97への粉塵の付着が防止されるので、粉塵の影響による下杵センサ52の誤作動が防止されることにより、下杵高さの検出精度を向上させることが可能である。なお、空気による前記粉塵のパージは省略してもよい。この場合、窓96aに光学ガラスを装着し、通孔96bは閉じればよい。
なお、図12中符号53は前記支持体41(図2,3参照)に支持された通過センサを示している。通過センサ53は、良錠剤の排出不良を判断するデータを得るために、排出装置31の入口34fを通って不良品排出部に移動された錠剤の有無を検出する。つまり、不良錠剤が検出された場合は、良品排出手段91が駆動されてヘッド93が退避位置に移動することにより、不良錠剤が下杵上に載ったままの状態で前記排出装置31の入口34fを通過するが、前記排出不良が生じた場合は、通過するべき不良錠剤が通過センサ53での検出位置で検出されないことになる。良錠剤の排出不良の判断は、良品排出手段91を駆動させるための駆動信号及び通過センサ53の出力信号が入力される制御装置61の良錠剤排出不良判定部(図示しない)によって行なう。
なお、以上説明した以外の第3実施形態の構成は、図12〜図14に示されない構成を含めて第2実施形態の構成と同じであるとともに、作用効果も第2実施形態と同じである。
更に、第3実施形態では、打錠機2の排出位置において、排出装置31の上流側に成型品センサ51を配置したので、製造される全ての錠剤についてその高さが検出される。この錠剤高さの検出に基づき、良否判定部61c(図11参照)で良品と判断された良錠剤は、良品排出手段91が正常に排除されている限り、この良品排出手段91で下杵16上から外されて排出装置31の良品排出部を通って排出される。
又、成型品センサ51による錠剤高さの検出に基づき、良否判定部61cで不良品と判断された不良錠剤は、下杵16上に載ったまま良品排出手段91を通過して不良品排出部に移動される。このため、不良錠剤は、スクレーパ壁部34aで下杵16上から外され、不良品排出部を通って回転盤11外に排除される。
このため、前記制御パターン1,3が指定された場合は、良否判定部61cで良品と判断された良錠剤に係わる錠剤高さデータに基づいて杵先間隔制御のために杵先間隔調整機構28により例えば下杵16の高さが調整される。これらの制御は、第1実施形態で既に説明した内容と同じであるので、重複説明を避けるために、ここでは説明を省略する。従って、この第3実施形態においても、温度変化に拘わらずに、圧縮成型される錠剤を目標とする厚みに保持して製造することが可能である。
なお、ここでは良否判定部61cで良品と判断された良錠剤に係わる錠剤高さデータに基づく杵先間隔制御の説明をしたが、これには制約されない。例えば、成型品センサ51による錠剤高さの検出を、製造される全ての錠剤を検出対象錠剤としてデータ収集することに基づいて、杵先間隔制御を行っても良い。この場合でも、温度変化に拘わらずに、圧縮成型される錠剤を目標とする厚みに保持して製造することが可能である。
なお、前記各実施形態の杵先間隔制御部61aは、例えば下杵16の高さを調整して杵先間隔を変更すると説明したが、これに本発明は制約されず、上杵15と下杵16とのうちの少なくとも一方の高さを調整することで、杵先間隔を変えることができる。
即ち、下側の圧縮ロール26を上下動ができないように配置するとともに、上側の圧縮ロール25を上下動できるように設けて、杵先間隔制御部61aで上側の圧縮ロール25とともに上杵15の高さを調整して、杵先間隔を変更するようしてもよい。或いは、上側の圧縮ロール25と下側の圧縮ロール26とを、共に上下動できるように設けて、杵先間隔制御部61aで、上側の圧縮ロール25とともに上杵15の高さと、下側の圧縮ロール26とともに下杵16の高さを共に調整して、杵先間隔を変更するようにしてもよい。
前記の課題を解決するために、本発明は、粉末が圧縮成型される圧縮成型位置での杵先間隔を、上杵と下杵とのうちの少なくとも一方の高さを調整する杵先間隔調整機構で変更可能である回転式粉末圧縮成型装置であって、成型品センサと、制御装置を備える。成型品センサは、前記圧縮成型位置の下流側でかつスクレーパの上流側に設定された成型品高さ検出位置に移動された下杵上の圧縮成型品高さを検出する。制御装置は、前記圧縮成型品の成型圧力が圧力制御基準値に保持されるように前記下杵の高さを制御する圧力制御部、及び、この圧力制御部による制御が行われていないときに成型品センサで検出される圧縮成型品高さとこの高さの検出前に登録された成型品高さ基準値とから圧縮成型品高さ変動値を求め、この圧縮成型品高さ変動値に応じた制御出力で杵先間隔調整機構を制御する杵先間隔制御部を有する。杵先間隔制御部による杵先間隔調整機構の制御で、圧縮成型品の厚みが目標値となるように杵先間隔が変更されることを特徴としている。