JP2015141820A - 絶縁電線 - Google Patents
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Abstract
【課題】絶縁体の押出被覆時に導体に施されためっきが溶融し難く、高温油中で導体が腐食し難く、絶縁体の高温耐油性および耐摩耗性が良好な絶縁電線を提供する。【解決手段】絶縁電線1は、導体2と、導体2の外周に押出被覆された絶縁体3とを有している。導体2は、NiめっきまたはNi合金めっきが施されている。絶縁体3は、繰り返し単位内にスルホニル基を有するスルホニル基含有樹脂を少なくとも含有する樹脂組成物より構成されている。スルホニル基含有樹脂は、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、および、ポリフェニルサルホンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。【選択図】図1
Description
本発明は、絶縁電線に関し、さらに詳しくは、高温油中、振動する環境下で好適に使用可能な絶縁電線に関する。
従来、高温油中で使用される絶縁電線としては、導体の外周に、耐熱性および耐油性に優れたフッ素ゴムを用いた絶縁体が押出被覆されてなる絶縁電線が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。また、導体には、一般に、高温油中における腐食を防止するためにSnめっきが施されることが多い。
また、車両などの振動する環境下で使用される絶縁電線は、絶縁電線同士の接触、絶縁電線と保護材との接触、絶縁電線と車体との接触などにより、絶縁体が摩耗しやすい。近年、自動車等に用いられる絶縁電線では、限られたスペースを有効利用するために薄肉化による細径化が望まれている。そのため、耐摩耗性に優れたポリサルホンやポリエーテルサルホンを用いることによって絶縁体を薄肉化し、細径化を図る技術が提案されている(例えば、特許文献3および特許文献4参照)。
しかしながら、従来の絶縁電線は、以下の点で問題がある。すなわち、フッ素ゴムを絶縁体に用いた絶縁電線は、絶縁体の高温耐油性が良好である。さらに、Snめっきが施された導体を用いることにより、高温油中でも導体が腐食し難い。しかし、フッ素ゴムからなる絶縁体は、耐摩耗性が低い。そのため、絶縁体を薄肉化することが難しく、絶縁電線の細径化に限界がある。
一方、ポリサルホンやポリエーテルサルホンを絶縁体に用いた絶縁電線は、絶縁体の高温耐油性および耐摩耗性が良好である。しかし、絶縁体の押出被覆時における成形温度が高いため、高温の成形温度によって導体のSnめっきが溶融する。その結果、押出被覆時にSnめっきが剥がれたり、導体を構成する素線間に溶着が生じたりしやすくなる。さらに、導体に施されたSnめっきが溶融した部分は、高温油に曝されることによって腐食しやすい。そのため、ポリサルホンやポリエーテルサルホンを絶縁体に用いた絶縁電線には、通常、めっきが施されていない導体が使用されている。
本発明は、上記背景に鑑みてなされたものであり、絶縁体の押出被覆時に導体に施されためっきが溶融し難く、高温油中で導体が腐食し難く、絶縁体の高温耐油性および耐摩耗性が良好な絶縁電線を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、導体と、該導体の外周に押出被覆された絶縁体とを有する絶縁電線であって、
上記導体は、NiめっきまたはNi合金めっきが施されており、
上記絶縁体は、繰り返し単位内にスルホニル基を有するスルホニル基含有樹脂を少なくとも含有する樹脂組成物より構成されていることを特徴とする絶縁電線にある。
上記導体は、NiめっきまたはNi合金めっきが施されており、
上記絶縁体は、繰り返し単位内にスルホニル基を有するスルホニル基含有樹脂を少なくとも含有する樹脂組成物より構成されていることを特徴とする絶縁電線にある。
上記絶縁電線は、導体の外周に押出被覆された絶縁体が、繰り返し単位内にスルホニル基を有するスルホニル基含有樹脂を少なくとも含有する樹脂組成物より構成されている。上記スルホニル基含有樹脂は、良好な高温耐油性、耐摩耗性を有している。そのため、上記絶縁電線は、絶縁体の高温耐油性および耐摩耗性が良好なものとなる。また、上記絶縁電線は、NiめっきまたはNi合金めっきが施された導体を用いている。そのため、上記樹脂組成物で構成される絶縁体の押出被覆時における成形温度が比較的高くても、その際の高温の成形温度によって導体に施されためっきが溶融し難い。したがって、上記絶縁電線は、絶縁体の押出被覆時に導体に施されためっきが剥がれたり、導体を構成する素線間に溶着が生じたりし難い。また、上記絶縁電線は、導体に施されためっきが溶融し難いため、高温油に曝されても導体が腐食し難い。
よって、本発明によれば、絶縁体の押出被覆時に導体に施されためっきが溶融し難く、高温油中で導体が腐食し難く、絶縁体の高温耐油性および耐摩耗性が良好な絶縁電線を提供することができる。
上記絶縁電線において、導体は、例えば、素線(単線)、複数の素線が撚り合された撚り線などから構成することができる。撚り線は、複数の素線が撚り合わされた後、導体断面が円形状となるように圧縮されていてもよい。この場合は、絶縁電線の細径化に有利である。また、撚り線は、同径または同等径を有する複数の素線が撚り合わされていてもよいし、異なる径を有する複数の素線が撚り合わされていてもよい。また、撚り線は、同一または同等あるいは相似形の断面形状を有する複数の素線が撚り合わされていてもよいし、異なる断面形状を有する複数の素線が撚り合わされていてもよい。
導体を構成しうる金属(合金含む、以下省略)としては、具体的には、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、鉄、鉄合金などを例示することができる。導通性の観点から、上記金属として、銅、銅合金を好適に用いることができる。なお、銅合金に含有させることが可能な添加元素としては、具体的には、Fe、Ni、Mg、Siなどを例示することができる。また、導通性、軽量化の観点から、アルミニウム、アルミニウム合金を好適に用いることができる。なお、導体が撚り線からなる場合、撚り線を構成する各素線は、同じ金属から構成されていてもよいし、異なる金属から構成されていてもよい。
導体には、NiめっきまたはNi合金めっきが施されている。Niめっきは、具体的には、電気Niめっき、無電解Niめっきのいずれであってもよく、同様に、Ni合金めっきは、電気Ni合金めっき、無電解Ni合金めっきのいずれであってもよい。Niめっき、Ni合金めっきは、いずれも1層から構成されていてもよいし、2層以上から構成されていてもよい。また、Niめっき、Ni合金めっきには、リフロー処理が施されていてもよい。
なお、導体が撚り線からなる場合、撚り線は、NiめっきまたはNi合金めっきが施された複数の素線が撚り合わされて構成されていてもよいし、複数の素線が撚り合わされた後に、NiめっきまたはNi合金めっきが施されて構成されていてもよい。前者の場合には、各素線の表面にNiめっきまたはNi合金めっきが施されているので、導体内部の各素線が高温油中で腐食し難い利点がある。
上記絶縁電線において、絶縁体は、繰り返し単位内にスルホニル基を有するスルホニル基含有樹脂を少なくとも含有する樹脂組成物より構成されている。樹脂組成物は、1種または2種以上のスルホニル基含有樹脂を含有することができる。
スルホニル基含有樹脂としては、具体的には、ポリサルホン(PSU)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリフェニルサルホン(PPSU)などを例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。スルホニル基含有樹脂が、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、および、ポリフェニルサルホンからなる群より選択される少なくとも1種である場合には、絶縁体の高温耐油性および耐摩耗性が良好な絶縁電線を確実に得ることができる。スルホニル基含有樹脂は、特に、ポリフェニルサルホンを含んでいることが好ましい。この場合には、絶縁体の高温耐油性をさらに向上させることができる。
樹脂組成物は、スルホニル基含有樹脂以外にも他の樹脂成分を含有することができる。具体的には、樹脂組成物は、芳香族ポリエステルをさらに含有することができる。この場合には、絶縁体の高温耐油性、耐摩耗性をさらに向上させやすくなる。
芳香族ポリエステルとしては、具体的には、スルホニル基含有樹脂との相溶性に優れる、高温耐油性の向上などの観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)などを例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。これらのうち、特に好ましくは、高温耐油性、相溶性の向上効果が大きい観点から、繰り返し単位内にナフチル基を有する、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、これらの組み合わせなどであるとよい。
樹脂組成物は、芳香族ポリエステルとポリエステル系エラストマーとの双方をさらに含有することもできる。樹脂組成物にポリエステル系エラストマーが単独で配合された場合、ポリエステル系エラストマー自体はスルホニル基含有樹脂との相溶性が低いため、絶縁体の物性低下を引き起こすおそれがある。しかし、上述のように、芳香族ポリエステルとともにポリエステル系エラストマーが配合される場合には、スルホニル基含有樹脂との相溶性が改善されるため、絶縁体の物性低下を抑制しつつ、絶縁体の伸びを向上させることが可能となる。
ポリエステル系エラストマーとしては、具体的には、分子内にハードセグメントとソフトセグメントとを有するブロック重合体などを例示することができる。ハードセグメントとしては、具体的には、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレートなどの芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステルなどを例示することができる。ソフトセグメントとしては、具体的には、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステルなどを例示することができる。
上記絶縁電線において、スルホニル基含有樹脂は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量部中に、好ましくは、30質量部〜100質量部の範囲内で含有されているとよい。この場合には、絶縁体の高温耐油性および耐摩耗性が良好な絶縁電線を確実に得ることができる。スルホニル基含有樹脂は、絶縁体の高温耐油性、耐摩耗性を向上させやすくなるなどの観点から、樹脂組成物中の樹脂成分100質量部中に、より好ましくは40質量部以上、さらに好ましくは50質量部以上、さらにより好ましくは55質量部以上、さらにより一層好ましくは60質量部以上含有されているとよい。また、スルホニル基含有樹脂は、他の樹脂成分を含有させ、電線特性を向上させやすくする観点から、樹脂組成物中の樹脂成分100質量部中に、より好ましくは95質量部以下、さらに好ましくは90質量部以下、さらにより好ましくは85質量部以下含有させることができる。
上記絶縁電線において、絶縁体を構成する樹脂組成物が芳香族ポリエステルをさらに含有する場合、樹脂組成物中の樹脂成分100質量部中におけるスルホニル基含有樹脂と芳香族ポリエステルとの質量比は、99:1〜60:40の範囲内とすることができる。この場合には、絶縁体の優れた高温耐油性、耐摩耗性が確保されやすい。上記質量比は、上記効果を得やすくなる観点から、好ましくは、95:5〜70:30の範囲内、より好ましくは、90:10〜75:25の範囲内、さらに好ましくは、85:15〜80:20の範囲内とすることができる。
上記絶縁電線において、絶縁体を構成する樹脂組成物が芳香族ポリエステルおよびポリエステル系エラストマーの双方をさらに含有する場合、樹脂組成物中の樹脂成分100質量部中におけるポリエステル系エラストマーの含有量は、50質量部以下とすることができる。この場合には、絶縁体の高温耐油性、耐摩耗性が確保されやすい上、絶縁体の伸びの向上も確保されやすい。上記効果を得やすくなる観点から、ポリエステル系エラストマーの含有量は、好ましくは40質量部以下、より好ましくは35質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下、さらにより好ましくは25質量部以下とすることができる。また、ポリエステル系エラストマーの含有量は、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上とすることができる。
上記絶縁電線において、絶縁体を構成する樹脂組成物は、上記樹脂成分以外にも、必要に応じて、一般的に電線に利用される各種の添加剤を1種または2種以上含有することができる。上記添加剤としては、具体的には、充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、滑剤、銅害防止剤、鎖延長剤、造核剤、顔料などを例示することができる。
上記絶縁電線において、絶縁体の厚みは、高温耐油性、耐摩耗性の確保などの観点から、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.15mm以上、さらに好ましくは0.18mm以上とすることができる。また、絶縁体の厚みは、絶縁電線の細径化、絶縁電線の軽量化などの観点から、好ましくは0.3mm以下、より好ましくは0.25mm以下、さらに好ましくは0.22mm以下とすることができる。
上記絶縁電線において、絶縁体は、単層より構成されていてもよいし、複数層から構成されていてもよい。絶縁体が複数層から構成される場合、複数層のうちの少なくとも1層が上記樹脂組成物より構成されておればよい。また、上記絶縁電線は、導体と絶縁体との間に、必要に応じて、介在物層やシールド層などが存在していてもよい。
上記絶縁電線は、絶縁体の押出被覆時に導体に施されためっきが溶融し難く、高温油中で導体が腐食し難く、絶縁体の高温耐油性および耐摩耗性が良好である。そのため、例えば、自動車における高温の油に接する環境下、振動環境下、これらの組み合わせによる環境下等にて好適に使用することができる。また、上記絶縁電線は、良好な耐摩耗性を有するため、絶縁体の薄肉化による細径化を図りやすい利点がある。また、上記絶縁電線は、導体に施されためっきがNiめっきまたはNi合金めっきであるため、電線の柔軟性を比較的確保しやすい利点もある。
上記絶縁電線は、例えば、押出機(単軸、二軸)、バンバリミキサー、加圧ニーダー、ロールなどの通常用いられる混練機を用いて絶縁体を構成する樹脂組成物を混練し、通常の押出成形機などを用いて導体の外周に絶縁体を押出被覆することにより製造することが可能である。
なお、上述した各構成は、上述した各作用効果等を得るなどのために必要に応じて任意に組み合わせることができる。
(実施例1)
実施例1の絶縁電線について、図1を用いて説明する。図1に示すように、本例の絶縁電線1は、導体2と、導体2の外周に押出被覆された電気絶縁性の絶縁体3とを有している。導体2は、NiめっきまたはNi合金めっきが施されている。
実施例1の絶縁電線について、図1を用いて説明する。図1に示すように、本例の絶縁電線1は、導体2と、導体2の外周に押出被覆された電気絶縁性の絶縁体3とを有している。導体2は、NiめっきまたはNi合金めっきが施されている。
本例では、具体的には、導体2は、Niめっきが施された複数の素線20が撚り合わされてなる撚り線から構成されている。素線20は、軟銅線である。なお、撚り線は、複数の素線20が撚り合わされた後、導体断面が円形状となるように圧縮されたものを示している。
絶縁電線1において、絶縁体3は、繰り返し単位内にスルホニル基を有するスルホニル基含有樹脂を少なくとも含有する樹脂組成物より構成されている。本例では、スルホニル基含有樹脂は、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、および、ポリフェニルサルホンからなる群より選択される少なくとも1種である。
以下、構成の異なる絶縁電線の試料を複数作製し、各種評価を行った。その実験例について説明する。
(実験例)
<材料準備>
絶縁体を構成する樹脂組成物の材料として、以下のものを準備した。
−スルホニル基含有樹脂−
・ポリサルホン(PSU)(ソルベイスペシャルティポリマーズジャパン社製、「ユーデルP−1700NT」)
・ポリエーテルサルホン(PES)(住友化学社製、「スミカエクセル4100G」)
・ポリフェニルサルホン(PPSU)(BASF社製、「ウルトラゾーンP3010」)
−芳香族ポリエステル−
・ポリブチレンテレフタレート(PBT)(ポリプラスチックス社製、「ジュラネックス800FP」)
・ポリブチレンナフタレート(PBN)(帝人化成社製、「TQB−OT」)
・ポリエチレンナフタレート(PEN)(帝人化成社製、「テオネックスTN−8065S」)
−ポリエステル系エラストマー−
・ポリエステル系エラストマー(1)(東レ・デュポン社製、「ハイトレル5557」)
・ポリエステル系エラストマー(2)(東レ・デュポン社製、「ハイトレル7277」)
・ポリエステル系エラストマー(3)(東洋紡社製、「ペルプレンEN−2034」)
<材料準備>
絶縁体を構成する樹脂組成物の材料として、以下のものを準備した。
−スルホニル基含有樹脂−
・ポリサルホン(PSU)(ソルベイスペシャルティポリマーズジャパン社製、「ユーデルP−1700NT」)
・ポリエーテルサルホン(PES)(住友化学社製、「スミカエクセル4100G」)
・ポリフェニルサルホン(PPSU)(BASF社製、「ウルトラゾーンP3010」)
−芳香族ポリエステル−
・ポリブチレンテレフタレート(PBT)(ポリプラスチックス社製、「ジュラネックス800FP」)
・ポリブチレンナフタレート(PBN)(帝人化成社製、「TQB−OT」)
・ポリエチレンナフタレート(PEN)(帝人化成社製、「テオネックスTN−8065S」)
−ポリエステル系エラストマー−
・ポリエステル系エラストマー(1)(東レ・デュポン社製、「ハイトレル5557」)
・ポリエステル系エラストマー(2)(東レ・デュポン社製、「ハイトレル7277」)
・ポリエステル系エラストマー(3)(東洋紡社製、「ペルプレンEN−2034」)
<絶縁電線の作製>
後述の各表に示される所定の配合割合にて、上記準備した各材料を二軸混練機により混練し、各樹脂組成物を調製した。この際、ヘッド付近の樹脂組成物の温度が、押出成形に最適な温度となるように混練を行った。なお、本例では、押出成形時の温度は約270℃〜320℃程度である。次いで、混練した各樹脂組成物を、押出成形機を用いて導体の外周に押出被覆し、各絶縁体を形成した。押出成形では、直径が、それぞれ1.1mmのダイス、0.75mmのニップルを使用した。導体には、各表に示される所定のめっきが施された7本の軟銅線が撚り合されてなる撚り線、あるいは、めっきが施されていない7本の軟銅線が撚り合されてなる撚り線を用いた。導体断面積は0.35mm2である。また、絶縁体の厚みは0.2mmである。これにより、試料1〜32の絶縁電線を作製した。
後述の各表に示される所定の配合割合にて、上記準備した各材料を二軸混練機により混練し、各樹脂組成物を調製した。この際、ヘッド付近の樹脂組成物の温度が、押出成形に最適な温度となるように混練を行った。なお、本例では、押出成形時の温度は約270℃〜320℃程度である。次いで、混練した各樹脂組成物を、押出成形機を用いて導体の外周に押出被覆し、各絶縁体を形成した。押出成形では、直径が、それぞれ1.1mmのダイス、0.75mmのニップルを使用した。導体には、各表に示される所定のめっきが施された7本の軟銅線が撚り合されてなる撚り線、あるいは、めっきが施されていない7本の軟銅線が撚り合されてなる撚り線を用いた。導体断面積は0.35mm2である。また、絶縁体の厚みは0.2mmである。これにより、試料1〜32の絶縁電線を作製した。
<押出被覆後の導体観察>
得られた絶縁電線の絶縁体から導体を抜き取り、押出被覆後の導体の外観を観察した。絶縁体の押出被覆時における高温の成形温度により導体のめっきが溶融したことによるめっきの剥がれや素線間の溶着が観察された場合を不合格として「C」とした。これらの現象が観察されなかった場合を合格として「A」とした。
得られた絶縁電線の絶縁体から導体を抜き取り、押出被覆後の導体の外観を観察した。絶縁体の押出被覆時における高温の成形温度により導体のめっきが溶融したことによるめっきの剥がれや素線間の溶着が観察された場合を不合格として「C」とした。これらの現象が観察されなかった場合を合格として「A」とした。
<高温油中に浸漬後の導体観察>
得られた絶縁電線の絶縁体から導体を抜き取った。次いで、抜き取った導体を、120℃で1000時間、ATF(日産純正 ATF:NS−3)に浸漬させた後、導体表面を観察した。導体表面が腐食により著しく変色した場合を不合格として「C」とした。導体表面が変色せず、腐食しなかった場合を合格として「A」とした。
得られた絶縁電線の絶縁体から導体を抜き取った。次いで、抜き取った導体を、120℃で1000時間、ATF(日産純正 ATF:NS−3)に浸漬させた後、導体表面を観察した。導体表面が腐食により著しく変色した場合を不合格として「C」とした。導体表面が変色せず、腐食しなかった場合を合格として「A」とした。
<高温耐油性>
得られた絶縁電線を、120℃で所定時間、ATF(日産純正 ATF:NS−3)に浸漬させた。次いで、電線径と同じ径を有するマンドレルに上記絶縁電線を巻き付け、その状態にて絶縁電線に1kVを1分間印加するという耐電圧試験を行った。1000時間以上2000時間未満の浸漬条件で絶縁破壊せず、耐電圧試験に耐えることができた場合を合格として「A」とした。2000時間以上の浸漬条件で絶縁破壊せず、耐電圧試験に耐えることができた場合を合格として「A+」とした。1000時間未満の浸漬条件で絶縁破壊し、耐電圧試験に耐えることができなかった場合を不合格として「C」とした。
得られた絶縁電線を、120℃で所定時間、ATF(日産純正 ATF:NS−3)に浸漬させた。次いで、電線径と同じ径を有するマンドレルに上記絶縁電線を巻き付け、その状態にて絶縁電線に1kVを1分間印加するという耐電圧試験を行った。1000時間以上2000時間未満の浸漬条件で絶縁破壊せず、耐電圧試験に耐えることができた場合を合格として「A」とした。2000時間以上の浸漬条件で絶縁破壊せず、耐電圧試験に耐えることができた場合を合格として「A+」とした。1000時間未満の浸漬条件で絶縁破壊し、耐電圧試験に耐えることができなかった場合を不合格として「C」とした。
<耐摩耗性>
ISO6722に準拠し、ブレード往復法により、得られた絶縁電線の耐摩耗性を評価した。すなわち、各試料の絶縁電線から長さ600mmの試験片を採取した。次いで、23℃の環境下、軸方向に15mm以上の長さ、毎分60回の速さにて、試験片の絶縁体表面上でブレードを往復させた。この際、ブレードにかかる荷重は7Nとした。そして、ブレードが導体に接するまでの往復回数を測定した。各試験片あたりの試験回数は4回である。試験回数4回で測定されたブレードの往復回数の最小値が200回以上500回未満であった場合を合格として「A」とした。上記最小値が500回以上であった場合を合格として「A+」とした。上記最小値が200回未満であった場合を不合格として「C」とした。
ISO6722に準拠し、ブレード往復法により、得られた絶縁電線の耐摩耗性を評価した。すなわち、各試料の絶縁電線から長さ600mmの試験片を採取した。次いで、23℃の環境下、軸方向に15mm以上の長さ、毎分60回の速さにて、試験片の絶縁体表面上でブレードを往復させた。この際、ブレードにかかる荷重は7Nとした。そして、ブレードが導体に接するまでの往復回数を測定した。各試験片あたりの試験回数は4回である。試験回数4回で測定されたブレードの往復回数の最小値が200回以上500回未満であった場合を合格として「A」とした。上記最小値が500回以上であった場合を合格として「A+」とした。上記最小値が200回未満であった場合を不合格として「C」とした。
表1〜表4に、各絶縁電線の絶縁体に用いた樹脂組成物の配合(質量部)、導体に施されためっきの種類、各評価結果をまとめて示す。
表1〜表4によれば、次のことがわかる。すなわち、試料30の絶縁電線は、導体のめっき種が電気Snめっきである。そのため、絶縁体の押出被覆時における高温の成形温度によって導体のSnめっきが溶融し、その結果、めっきの剥がれや素線間の溶着が生じた。
試料31の絶縁電線は、導体のめっき種が無電解Snめっきである。そのため、試料30と同様の結果であった。
試料32の絶縁電線は、導体にめっきが施されていない。そのため、導体の耐腐食性が低下し、高温油中で導体表面が変色し、腐食が発生した。
これらに対し、試料1〜試料29の絶縁電線は、導体の外周に押出被覆された絶縁体が、繰り返し単位内にスルホニル基を有するスルホニル基含有樹脂を少なくとも含有する樹脂組成物より構成されている。スルホニル基含有樹脂は、良好な高温耐油性、耐摩耗性を有している。そのため、試料1〜試料29の絶縁電線は、絶縁体の高温耐油性および耐摩耗性が良好であった。
特に、スルホニル基含有樹脂がポリフェニルサルホンを含んでいる場合には、絶縁体の高温耐油性をさらに向上可能なことがわかる。また、樹脂組成物が芳香族ポリエステルをさらに含有する場合には、絶縁体の高温耐油性、耐摩耗性をさらに向上させやすくなることがわかる。また、樹脂組成物中に、芳香族ポリエステルとともにポリエステル系エラストマーが配合されている場合には、絶縁体の物性低下を抑制しつつ、絶縁体の伸びを向上させることができた。これは、スルホニル基含有樹脂とポリエステル系エラストマーとの相溶性が改善されたためである。
また、試料1〜試料29の絶縁電線のうち、樹脂組成物中の樹脂成分100質量部中におけるスルホニル基含有樹脂と芳香族ポリエステルとの質量比が99:1〜60:40の範囲内であるものは、絶縁体の優れた高温耐油性、耐摩耗性が確保されやすいことが確認された。
また、試料1〜試料29の絶縁電線のうち、樹脂組成物が芳香族ポリエステルおよびポリエステル系エラストマーの双方をさらに含有し、かつ、樹脂組成物中の樹脂成分100質量部中におけるポリエステル系エラストマーの含有量が50質量部以下のものは、絶縁体の高温耐油性、耐摩耗性が確保されやすいことが確認された。また、絶縁体の伸びも向上させることが可能であった。
また、試料1〜試料29の絶縁電線は、Niめっきが施された導体を用いている。そのため、絶縁体の押出被覆時における成形温度が比較的高くても、その際の高温の成形温度によって導体に施されためっきが溶融し難く、めっきの剥がれや素線間の溶着が生じ難かった。また、試料1〜試料29の絶縁電線は、導体に施されたNiめっきが溶融し難いため、高温油に曝されても導体が腐食し難かった。
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲内で種々の変更が可能である。
1 絶縁電線
2 導体
3 絶縁体
2 導体
3 絶縁体
Claims (5)
- 導体と、該導体の外周に押出被覆された絶縁体とを有する絶縁電線であって、
上記導体は、NiめっきまたはNi合金めっきが施されており、
上記絶縁体は、繰り返し単位内にスルホニル基を有するスルホニル基含有樹脂を少なくとも含有する樹脂組成物より構成されていることを特徴とする絶縁電線。 - 上記スルホニル基含有樹脂は、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、および、ポリフェニルサルホンからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の絶縁電線。
- 上記樹脂組成物は、芳香族ポリエステルおよびポリエステル系エラストマー、または、芳香族ポリエステルをさらに含有することを特徴とする請求項1または2に記載の絶縁電線。
- 上記樹脂組成物中の樹脂成分100質量部中における上記スルホニル基含有樹脂と上記芳香族ポリエステルとの質量比は、99:1〜60:40の範囲内とされていることを特徴とする請求項3に記載の絶縁電線。
- 上記樹脂組成物中の樹脂成分100質量部中における上記ポリエステル系エラストマーの含有量は、50質量部以下とされていることを特徴とする請求項3または4に記載の絶縁電線。
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