JP2015140468A - 容器用鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】鋼板ならびに上記鋼板の表面の少なくとも一部を覆うSn層、Fe−Sn−Ni合金層およびFe−Sn合金層のうちから選ばれた少なくとも1層からなるめっき層を有するめっき鋼板と、上記めっき鋼板の上記めっき層側の表面上に配置された皮膜とを有する容器用鋼板であって、上記皮膜は、上記めっき層側から順に、化成処理層(A)と化成処理層(B)とを有し、上記化成処理層(A)は、P、SnおよびOを有し、かつ、上記めっき鋼板の片面あたりのP換算の付着量が1.0mg/m2以上20.0mg/m2未満であり、上記化成処理層(B)は、Ti、NiおよびOを有し、かつ、上記めっき鋼板の片面あたりのTi換算の付着量が5.0mg/m2以上60.0mg/m2未満であって、上記めっき鋼板の片面あたりのNi換算の付着量が3.0mg/m2超であり、かつ、特定の式(1)で定義されるS値が1.00以下である、容器用鋼板。
【選択図】なし
Description
また、鋼板表面上のめっき層(耐食性皮膜)としてSn層やFe−Sn合金層などのSnを含む層を形成した場合、めっき層上に形成されるTiを含む皮膜(密着性皮膜)に褐色の着色が見られ、外観が劣化し、商品価値を損ねる場合があることが分かった。
本発明は、以上の点を鑑みてなされたものであり、フィルム密着性および塗料密着性に優れ、かつ、外観にも優れる容器用鋼板を提供することを目的とする。
(I)鋼板ならびに上記鋼板の表面の少なくとも一部を覆うSn層、Fe−Sn−Ni合金層およびFe−Sn合金層のうちから選ばれた少なくとも1層からなるめっき層を有するめっき鋼板と、上記めっき鋼板の上記めっき層側の表面上に配置された皮膜とを有する容器用鋼板であって、上記皮膜は、上記めっき層側から順に、化成処理層(A)と化成処理層(B)とを有し、上記化成処理層(A)は、P、SnおよびOを有し、かつ、上記めっき鋼板の片面あたりのP換算の付着量が1.0mg/m2以上20.0mg/m2未満であり、上記化成処理層(B)は、Ti、NiおよびOを有し、かつ、上記めっき鋼板の片面あたりのTi換算の付着量が5.0mg/m2以上60.0mg/m2未満であって、上記めっき鋼板の片面あたりのNi換算の付着量が3.0mg/m2超であり、かつ、下記式(1)で定義されるS値が1.00以下である、容器用鋼板。
S=[Is(Ni)/It(Ti)] ・・・(1)
(式(1)中、Is(Ni)は上記化成処理層(B)表面から10nmの深さまでのNiのグロー放電発光分析から算出した上記めっき鋼板の片面あたりのNi量(単位:mg/m2)を表し、It(Ti)は上記化成処理層(B)全体のTiのグロー放電発光分析から算出した上記めっき鋼板の片面あたりのTi量(単位:mg/m2)を表す。)
(II)上記化成処理層(A)が、リン酸イオンを含有する化成処理液(a)中で、鋼板ならびに上記鋼板の表面の少なくとも一部を覆うSn層、Fe−Sn−Ni合金層およびFe−Sn合金層のうちから選ばれた少なくとも1層からなるめっき層を有するめっき鋼板を陽極電解することにより形成される、上記(I)に記載の容器用鋼板。
(III)上記(I)または(II)に記載の容器用鋼板を得る、容器用鋼板の製造方法であって、リン酸イオンを含有する化成処理液(a)中で、鋼板ならびに上記鋼板の表面の少なくとも一部を覆うSn層、Fe−Sn−Ni合金層およびFe−Sn合金層のうちから選ばれた少なくとも1層からなるめっき層を有するめっき鋼板を陽極電解して上記化成処理層(A)を形成した後、水洗を行い、乾燥させることなく、上記化成処理層(B)を形成する、容器用鋼板の製造方法。
本発明の容器用鋼板は、概略的には、めっき鋼板と、めっき鋼板のめっき層側の表面上に配置されたTi、NiおよびOを有する化成処理層(B)との間に、P、SnおよびOを有する化成処理層(A)を形成させたものである。
ここで、式(1)で定義されるS値は、後述するように、化成処理層(B)の表面側に存在するNi量を示す指標となるが、本発明者らは、化成処理層(B)(以下、本段落において「皮膜」という)中にNiは一定量必要であるが、皮膜の表面側にNiが過剰に存在すると、フィルム密着性および塗料密着性が低下することを見出した。このメカニズム(理由)は明らかではないが、Tiを含む皮膜中にある程度のNiが存在しないと皮膜形成や皮膜と鋼板との接着などが不十分となるが、その一方で、皮膜表面側に過剰のNiが存在すると、Niが粒子状に析出して、皮膜とフィルムまたは塗料との密着を妨げるためと考えられる。
まず、TiおよびOを含む化成処理層(B)は、すなわち、量論組成TiO2に代表されるTi酸化物であり、約3.3〜3.4eVの大きさのバンドギャップを有する半導体と考えられる。通常、バンドギャップが約3.3〜3.4eVあれば、可視域(波長400〜760nm)のエネルギーを吸収しないため、可視光吸収による着色は起こらないが、SnがTi酸化物中に取り込まれると、不純物準位が形成され、バンドギャップが狭められ、可視光の短波長域(波長400nm近傍の紫色光)が吸収されるようになる。その結果、紫の補色たる黄色が強調され、化成処理層(B)は褐色を呈するようになると考えられる。
このとき、錫めっき層と化成処理層(B)との間に、特定量のP、SnおよびOを含む化成処理層(A)を形成することで、化成処理層(B)の中へのSn混入を防止でき、化成処理層(B)の着色を抑制して外観を良好にしつつ、化成処理層(B)が有する優れた密着性の効果も得られると考えられる。
めっき鋼板は、鋼板と、鋼板の表面の少なくとも一部を覆うSn層、Fe−Sn−Ni合金層およびFe−Sn合金層のうちから選ばれた少なくとも1層からなるめっき層とを有する。
素材の鋼板としては、一般的な缶用の鋼板を使用できる。めっき層は、連続層であってもよいし、不連続の島状であってもよい。また、めっき層は、鋼板の少なくとも片面に設けられていればよく、両面に設けられていてもよい。めっき層の形成は、含有される金属元素に応じた公知の方法で行える。
以下に、鋼板およびめっき層の好適態様について詳述する。
鋼板の種類は特に限定されるものではなく、通常、容器材料として使用される鋼板(例えば、低炭素鋼板、極低炭素鋼板)を用いることができる。この鋼板の製造方法、材質なども特に限定されるものではなく、通常の鋼片製造工程から熱間圧延、酸洗、冷間圧延、焼鈍、調質圧延等の工程を経て製造される。
Ni含有層としてはニッケルが含まれていればよく、例えば、Niめっき層(Ni層)、Ni−Fe合金層などが挙げられる。
鋼板にNi含有層を付与する方法は特に限定されず、例えば、公知の電気めっきなどの方法が挙げられる。また、Ni含有層としてNi−Fe合金層を付与する場合、電気めっきなどにより鋼板表面上にNi付与後、焼鈍することにより、Ni拡散層を配位させ、Ni−Fe合金層を形成できる。
Ni含有層中のNi量は特に限定されず、片面当たりのNi換算量として50〜2000mg/m2が好ましい。
めっき鋼板は、鋼板表面上にSnを含有するめっき層を有する。このめっき層は鋼板の少なくとも片面に設けられていればよく、両面に設けられていてもよい。
めっき層の鋼板片面当たりのSn付着量は、容器用鋼板の外観がより優れ、耐食性にも優れるという理由から、0.1〜15.0g/m2が好ましく、0.2〜15.0g/m2がより好ましく、加工性が優れる点で、1.0〜15.0g/m2がさらに好ましい。
また、めっき層としては、Ni含有層を表面に有する鋼板に対して錫めっきを行い、さらに通電加熱などにより錫を加熱溶融させて得られる、Sn層の最下層(Sn層/地鉄界面)にFe−Sn−Ni合金層、Fe−Sn合金層などが一部形成しためっき層、または、Sn層の全Snが合金化しFe−Sn合金層を形成しためっき層も含む。
例えば、フェノールスルフォン酸錫めっき浴、メタンスルフォン酸錫めっき浴、またはハロゲン系錫めっき浴を用い、片面あたりの付着量が所定量(例えば、2.8g/m2)となるように鋼板表面にSnを電気めっきした後、Snの融点(231.9℃)以上の温度でリフロー処理を行って、錫単体のめっき層(Sn層)の最下層またはSn層の全Snを合金化しFe−Sn合金層を形成した錫めっき層を製造できる。リフロー処理は省略した場合、錫単体のめっき層を製造できる。
次に、上述しためっき鋼板のめっき層側の表面上に配置される皮膜について説明する。皮膜は、めっき層側から順に、化成処理層(A)と化成処理層(B)とを有する。もっとも、化成処理層(A)と化成処理層(B)とは、完全な2層に分離していなくてもよい。以下では、化成処理層(A)と化成処理層(B)とをまとめて「皮膜」と称することがある。
まず、めっき層の表面上に配置される化成処理層(A)について説明する。
化成処理層(A)は、概略的には、その成分として、P(リン元素)、Sn(錫元素)およびO(酸素元素)を含む皮膜であり、後述するリン酸イオンを含む化成処理液(a)を用いて形成される。
なお、化成処理層(A)中のPは、化成処理液(a)中のリン酸イオンに由来し、化成処理層(A)中のOは、化成処理液(a)中のリン酸イオンおよび化成処理層(A)中のSnが形成する酸化物に由来し、化成処理層(A)中のSnは、化成処理層(A)を形成する際に、めっき層から化成処理液(a)中に溶出するSnに由来する。
P付着量が1.0mg/m2未満の場合、下層のめっき層からのSn混入を防止できず、上層に形成される化成処理層(B)の着色を防止できない。一方、P付着量が20.0mg/m2以上の場合、化成処理層(A)がもろくなり、凝集破壊しやすくなるため、皮膜のフィルム密着性や塗料密着性を維持できなくなる。
これに対して、P付着量が1.0mg/m2以上20.0mg/m2未満であれば、着色が抑制されて外観が優れるとともに、フィルム密着性や塗料密着性も優れる。
P付着量は、着色(変色)をより抑制する観点からは、3mg/m2以上が好ましい。
なお、P付着量は、蛍光X線による表面分析により測定できる。
化成処理層(A)中のO(酸素元素)も定量は困難であるが、同様に抽出したサンプルを、TEM−EDX法により分析することで、その存在を確認できる。
次に、化成処理層(A)の表面上に配置される化成処理層(B)について説明する。化成処理層(B)は、概略的には、その成分として、Ti(チタニウム元素)、Ni(ニッケル元素)、および、O(酸素元素)を含有する皮膜であり、後述する化成処理液(b)を用いて形成される。
なお、化成処理層(B)中のTiおよびNiは、それぞれ、化成処理液(b)中のTi成分およびNi成分に由来する。また、化成処理層(B)中のOは、皮膜主成分となるTi酸化物に由来する。
S=[Is(Ni)/It(Ti)]/C2 ・・・(1)
式(1)中、Is(Ni)は、化成処理層(B)表面(めっき層側とは反対側の面)から10nmの深さまでのNiのグロー放電発光分析から算出しためっき鋼板の片面あたりのNi量(単位:mg/m2)(以下、単に「Ni量」ともいう)を表す。
It(Ti)は、化成処理層(B)全体のTiのグロー放電発光分析から算出しためっき鋼板の片面あたりのTi量(単位:mg/m2)(以下、単に「Ti量」ともいう)を表す。
・装置:リガク社製GDA750
・陽極内径:4mm
・分析モード:高周波低電圧モード
・放電電力:40W
・制御圧力:2.9hPa
・検出器:フォトマル
・検出波長:Ni=341.4nm、Ti=365.4nm
また、化成処理層(B)全体のTiのグロー放電発光分析からTi量を求めるには、化成処理層(B)中のTiによるグロー放電発光分析のカウントが検出されなくなるスパッタリング時間までのカウント積算値を求め、付着量既知のサンプルを測定し、検量線を作成すればよい。
・装置:リガク社製蛍光X線分析装置System3270
・測定径:30mm
・測定雰囲気:真空
・スペクトル:Ti−Kα
・スリット:COARSE
・分光結晶:TAP
上記条件により測定した皮膜の蛍光X線分析のTi−Kαのピークカウント数を用いた。
上述した本発明の容器用鋼板を製造する方法としては、特に限定されないが、例えば、後述する化成処理液(a)中でめっき鋼板を処理して化成処理層(A)を形成した後、水洗を行い、乾燥させることなく、化成処理層(B)を形成する方法が好ましい。途中、水洗後に乾燥させてしまうと、化成処理層(B)を形成する工程での皮膜の均一性が損なわれ、フィルム密着性等が劣る場合があるが、水洗後に乾燥させることなく化成処理層(B)を形成することで、均一性が損なわれにくく、フィルム密着性等がより優れる。
以下、本発明の製造方法について説明を行い、この説明の中で、併せて、化成処理液(a)および化成処理液(b)についても説明する。
化成処理層(A)の形成工程は、めっき鋼板のめっき層側の表面上に、上述した化成処理層(A)を形成する工程であって、リン酸イオンを含む化成処理液(a)中にめっき鋼板を浸漬する(浸漬処理)、または、化成処理液(a)中でめっき鋼板に陰極電解もしくは陽極電解を施す工程である。
このうち、浸漬処理によって化成処理層(A)を形成する場合、めっき層から化成処理液(a)中に溶出したSnイオンとリン酸イオンとの反応により、不溶性のリン酸錫塩が沈殿析出する。この反応では錫の溶出が律速となるため、浸漬処理では化成処理層(A)の形成速度が遅くなる。
陽極電解を行うと、めっき層からのSnの溶出が促進されるため、化成処理層(A)の形成速度が速くなり好ましい。
陰極電解を行うと、固液界面近傍のpHが上昇するため、不溶性リン酸錫塩の析出には有利であるが、反面、めっき層からのSnの溶出は促進されないため、化成処理層(A)の形成速度の促進は、陽極電解よりも緩やかである。十分な皮膜量が容易に得られる点において、陽極処理は、浸漬処理または陰極電解よりも好ましい。
また、不溶性リン酸塩の析出を促進するために、化成処理液(a)中に、Al、Mn、Fe、Ca、Mg、Zr、Ti、Znなどのカチオンを適宜添加することができる。特にSn、Al、Ca、Mgの添加は、めっき層に対する耐酸化性に有利に働く特徴があり、好ましい。これら、アニオン、カチオンの添加によって化成処理液(a)の機能が本質的に失われるものではない。
上述したアニオン、カチオンの添加量も特に限定されないが、添加によって浴中沈殿物を形成し、不安定化しない範囲で適宜添加するのがよい。
化成処理液(a)の液温は、化成処理層(A)の析出容易性の観点から、20〜80℃が好ましく、40〜60℃がより好ましい。
このとき、陽極電解処理の通電時間は、0.1〜5秒が好ましく、0.3〜2秒がより好ましい。
また、陰極電解処理を行う場合、電解時の電流密度は1.0〜20.0A/dm2が好ましく、3.0〜15.0A/dm2がより好ましい。
このとき、陰極電解処理の通電時間は、0.1〜5秒が好ましく、0.3〜2秒がより好ましい。
なお、電解処理の際の電気量密度は、電流密度と通電時間との積であり、適宜設定される。
化成処理層(B)の形成工程は、化成処理層(A)の表面上に、上述した化成処理層(B)を形成する工程であって、後述する化成処理液(b)中で、化成処理層(A)を形成しためっき鋼板に陰極電解処理を施す工程である。
以下に、使用される化成処理液(b)や陰極電解処理の条件などについて詳述する。
Ti成分の含有量は、特に限定されないが、チタンフッ化水素酸および/またはその塩を使用する場合、六フッ化チタン酸イオン(TiF6 2-)に換算した量が、0.004〜0.4mol/Lであるのが好ましく、0.02〜0.2mol/Lがより好ましい。
Ni成分の含有量は、特に限定されないが、Niイオン(Ni2+)に換算した量が、0.002〜0.04mol/Lであるのが好ましく、0.004〜0.02mol/Lがより好ましい。
化成処理液(b)のpHは、特に限定されないが、pH2.0〜5.0が好ましい。この範囲内であれば、処理時間を短くでき、かつ、処理液の安定性に優れる。pHの調整には公知の酸成分(例えば、リン酸、硫酸)・アルカリ成分(例えば、水酸化ナトリウム、アンモニア水)を使用できる。
また、化成処理液(b)には、必要に応じて、ラウリル硫酸ナトリウム、アセチレングリコールなどの界面活性剤が含まれていてもよい。また、付着挙動の経時的な安定性の観点から、処理液には、ピロリン酸塩などの縮合リン酸塩が含まれていてもよい。
化成処理液(b)の液温は、20〜80℃が好ましく、40〜60℃がより好ましい。
このとき、陰極電解処理の通電時間は、同様の理由から、0.1〜5秒が好ましく、0.3〜2秒がより好ましい。
なお、陰極電解処理の際の電気量密度は、電流密度と通電時間との積であり、適宜設定される。
以下の方法によって、めっき鋼板を製造した。
まず、板厚0.22mmの鋼板(T4原板)を電解脱脂し、ワット浴を用いて第3表に示す片面当たりのNi付着量でニッケルめっき層を両面に形成した。その後、10vol.%H2+90vol.%N2雰囲気中にて700℃で焼鈍してニッケルめっきを拡散浸透させることによりFe−Ni合金層(Ni含有層)(第3表にNi付着量を示す)を両面に形成した。
引き続き、上記表層にNi含有層を有する鋼板を、錫めっき浴を用い、第3表中に示す片面当たりのSn付着量でSn層を両面に形成した。その後、Snの融点以上でリフロー処理を施し、錫めっき層をT4原板の両面に形成した。このようにして、下層側から順に、Ni−Fe合金層/Fe−Sn−Ni合金層/Sn層からなる錫めっき層が形成された。
《化成処理層(A)の形成》
上記めっき鋼板に対して、第1表に示す化成処理液(a)中で、第2表に示す条件にて電解処理を行い、その後、室温にて水洗を行った。
《化成処理層(B)の形成》
次いで、化成処理層(A)が形成されためっき鋼板に対して、その表面を乾燥させることなく、または、乾燥させて、第1表に示す化成処理液(b)中で、第2表に示す条件にて電解処理を施した。その後、得られた鋼板を水洗処理(85℃の水槽に、2秒間だけ浸漬)して、ブロアを用いて室温で乾燥を行い、化成処理層(B)を形成した。
皮膜のP付着量、Ti付着量およびNi付着量、Is(Ni)、Is(Ti)およびS値、ならびに、皮膜の厚さは、上述した方法により測定ないし計算した。
なお、いずれの発明例においても、上述した方法により、化成処理層(A)中にSnおよびOの存在が確認され、かつ、化成処理層(B)中にOの存在が確認された。
作製した容器用鋼板の皮膜表面について、未経時(製造後60分以内)の状態で色差計(SQ2000:日本電色工業社製)を用いて、色調(L値)を測定した。L値が65以上であれば、容器用鋼板の外観が優れるものとして評価できる。
作製した容器用鋼板の表面に、市販のPETフィルム(Melinex850、デュポン社製)を、ロール加圧4kg/cm2、板送り速度40mpm、ロール通過後の板の表面温度が160℃となる条件で熱融着させ、次いで、バッチ炉中で後加熱(到達板温210℃で120秒保持)を行ない、ラミネート鋼板を作製した。
作製したラミネート鋼板に対し、先端径3/16インチRのポンチを用い、1kgの錘を25cmの高さから落下させ、フィルムを貼った面の側が凸になるようデュポン衝撃加工を行った。このような加工試験片を4つ作成し、レトルト装置内に、凸面が上になるように置き、130℃のレトルト環境で30分間保持後、取り出し、加工部のフィルム剥離の程度を目視で、下記5段階で評価し、4つの試験片の平均値(小数点以下1桁)を用いて、フィルム密着性を評価した。実用上、結果が3.0以上であれば、フィルム密着性に優れるものとして評価できる。
5:剥離なし
4:加工部の面積の5%未満で剥離発生
3:加工部の面積の5%以上20%未満で剥離発生
2:加工部の面積の20%以上50%未満で剥離発生
1:加工部の面積の50%以上で剥離発生
作製した容器用鋼板(幅100mm×長さ150mm)の表面に、エポキシフェノール系塗料を塗布し、210℃で10分間の焼付を行い、付着量50mg/dm2の塗装を施した。次いで、上記塗装を施した同一の条件で作製した2枚の容器用鋼板を、ナイロン接着フィルムを挟んで塗装面が向かい合わせになるように積層した後、圧力2.94×105Pa、温度190℃、圧着時間30秒の圧着条件下で貼り合わせた。その後、これを5mm幅の試験片に分割した。分割した試験片の2枚の容器用鋼板を引張試験機で引き剥がし、引き剥がしたときの引張強度を測定した。各条件について2つの分割試験片の平均値を下記基準で評価した。実用上、結果が○または△であれば、塗料密着性に優れるものとして評価できる。
○:2.0kgf以上(クロメート処理材同等)
△:1.0kgf以上2.0kgf未満
×:1.0kgf未満
これに対して、化成処理層(A)を有さない比較例(試験材No.44および45)、および、化成処理層(A)のP付着量が1.0mg/m2に満たない比較例(試験材No.7および15)は、いずれも外観が劣っていた。
また、化成処理層(A)のP付着量が20.0mg/m2を超えている比較例(試験材No.22,30および32)は、フィルム密着性および塗料密着性が劣っていた。
また、化成処理層(B)のTi付着量が5.0mg/m2以上60.0mg/m2未満でない比較例(試験材No.33〜37)、および、S値が1.00より大きい比較例(試験材No.1,2,8,9,16,17,23,24および36〜38)は、フィルム密着性または塗料密着性が劣っていた。
Claims (3)
- 鋼板ならびに前記鋼板の表面の少なくとも一部を覆うSn層、Fe−Sn−Ni合金層およびFe−Sn合金層のうちから選ばれた少なくとも1層からなるめっき層を有するめっき鋼板と、前記めっき鋼板の前記めっき層側の表面上に配置された皮膜とを有する容器用鋼板であって、
前記皮膜は、前記めっき層側から順に、化成処理層(A)と化成処理層(B)とを有し、
前記化成処理層(A)は、P、SnおよびOを有し、かつ、前記めっき鋼板の片面あたりのP換算の付着量が1.0mg/m2以上20.0mg/m2未満であり、
前記化成処理層(B)は、Ti、NiおよびOを有し、かつ、前記めっき鋼板の片面あたりのTi換算の付着量が5.0mg/m2以上60.0mg/m2未満であって、前記めっき鋼板の片面あたりのNi換算の付着量が3.0mg/m2超であり、かつ、下記式(1)で定義されるS値が1.00以下である、容器用鋼板。
S=[Is(Ni)/It(Ti)] ・・・(1)
(式(1)中、Is(Ni)は前記化成処理層(B)表面から10nmの深さまでのNiのグロー放電発光分析から算出した前記めっき鋼板の片面あたりのNi量(単位:mg/m2)を表し、It(Ti)は前記化成処理層(B)全体のTiのグロー放電発光分析から算出した前記めっき鋼板の片面あたりのTi量(単位:mg/m2)を表す。) - 前記化成処理層(A)が、リン酸イオンを含有する化成処理液(a)中で、鋼板ならびに前記鋼板の表面の少なくとも一部を覆うSn層、Fe−Sn−Ni合金層およびFe−Sn合金層のうちから選ばれた少なくとも1層からなるめっき層を有するめっき鋼板を陽極電解することにより形成される、請求項1に記載の容器用鋼板。
- 請求項1または2に記載の容器用鋼板を得る、容器用鋼板の製造方法であって、リン酸イオンを含有する化成処理液(a)中で、鋼板ならびに前記鋼板の表面の少なくとも一部を覆うSn層、Fe−Sn−Ni合金層およびFe−Sn合金層のうちから選ばれた少なくとも1層からなるめっき層を有するめっき鋼板を陽極電解して前記化成処理層(A)を形成した後、水洗を行い、乾燥させることなく、前記化成処理層(B)を形成する、容器用鋼板の製造方法。
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