以下、添付図面を参照して、本願の開示する剥離装置および剥離システムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
(第1の実施形態)
<1.剥離システム>
まず、第1の実施形態に係る剥離システムの構成について、図1〜3を参照して説明する。図1は、第1の実施形態に係る剥離システムの構成を示す模式平面図である。また、図2および図3は、ダイシングフレームに保持された重合基板の模式側面図および模式平面図である。なお、以下においては、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする。
図1に示す第1の実施形態に係る剥離システム1は、被処理基板Wと支持基板Sとが接着剤Gで接合された重合基板T(図2参照)を、被処理基板Wと支持基板Sとに剥離する。
以下では、図2に示すように、被処理基板Wの板面のうち、接着剤Gを介して支持基板Sと接合される側の板面を「接合面Wj」といい、接合面Wjとは反対側の板面を「非接合面Wn」という。また、支持基板Sの板面のうち、接着剤Gを介して被処理基板Wと接合される側の板面を「接合面Sj」といい、接合面Sjとは反対側の板面を「非接合面Sn」という。
被処理基板Wは、たとえば、シリコンウェハや化合物半導体ウェハなどの半導体基板に複数の電子回路が形成された基板であり、電子回路が形成される側の板面を接合面Wjとしている。また、被処理基板Wは、たとえば非接合面Wnが研磨処理されることによって薄型化されている。具体的には、被処理基板Wの厚さは、約20〜200μmである。
一方、支持基板Sは、被処理基板Wと略同径の基板であり、被処理基板Wを支持する。支持基板Sの厚みは、約650〜750μmである。かかる支持基板Sとしては、シリコンウェハの他、ガラス基板などを用いることができる。また、これら被処理基板Wおよび支持基板Sを接合する接着剤Gの厚みは、約40〜150μmである。
上記のように被処理基板Wは非常に薄く、破損し易いため、ダイシングフレームFによってさらに保護される。ダイシングフレームFは、図3に示すように、重合基板Tよりも大径の開口部Faを中央に有する略矩形状の部材であり、ステンレス鋼等の金属で形成される。
かかるダイシングフレームFの開口部Faに重合基板Tを配置し、開口部Faを裏面から塞ぐように被処理基板Wの非接合面WnおよびダイシングフレームFにダイシングテープPを貼り付ける。これにより、重合基板TはダイシングフレームFに保持された状態となる。なお、重合基板Tは、被処理基板Wが下面に位置し、支持基板Sが上面に位置した状態で、ダイシングフレームFに保持される(図2参照)。
第1の実施形態に係る剥離システム1は、図1に示すように、第1処理ブロック10と第2処理ブロック20とを備える。第1処理ブロック10および第2処理ブロック20は、第2処理ブロック20および第1処理ブロック10の順にX軸方向に並べて配置される。
第1処理ブロック10は、ダイシングフレームFによって保持される基板、具体的には、重合基板Tまたは剥離後の被処理基板Wに対する処理を行うブロックである。かかる第1処理ブロック10は、搬入出ステーション11と、第1搬送領域12と、待機ステーション13と、エッジカットステーション14と、剥離ステーション15と、第1洗浄ステーション16とを備える。
また、第2処理ブロック20は、ダイシングフレームFによって保持されない基板、具体的には、剥離後の支持基板Sに対する処理を行うブロックである。かかる第2処理ブロック20は、受渡ステーション21と、第2洗浄ステーション22と、第2搬送領域23と、搬出ステーション24とを備える。
第1処理ブロック10の第1搬送領域12と、第2処理ブロック20の第2搬送領域23とは、X軸方向に並べて配置される。また、第1搬送領域12のY軸負方向側には、搬入出ステーション11および待機ステーション13が、搬入出ステーション11および待機ステーション13の順でX軸方向に並べて配置され、第2搬送領域23のY軸負方向側には、搬出ステーション24が配置される。
また、第1搬送領域12を挟んで搬入出ステーション11および待機ステーション13の反対側には、剥離ステーション15および第1洗浄ステーション16が、剥離ステーション15および第1洗浄ステーション16の順でX軸方向に並べて配置される。また、第2搬送領域23を挟んで搬出ステーション24の反対側には、受渡ステーション21および第2洗浄ステーション22が、第2洗浄ステーション22および受渡ステーション21の順にX軸方向に並べて配置される。そして、第1搬送領域12のX軸正方向側には、エッジカットステーション14が配置される。
まず、第1処理ブロック10の構成について説明する。搬入出ステーション11では、ダイシングフレームFに保持された重合基板Tが収容されるカセットCtおよび剥離後の被処理基板Wが収容されるカセットCwが外部との間で搬入出される。かかる搬入出ステーション11には、カセット載置台が設けられており、このカセット載置台に、カセットCt,Cwのそれぞれが載置される複数のカセット載置板110a,110bが設けられる。
第1搬送領域12では、重合基板Tまたは剥離後の被処理基板Wの搬送が行われる。第1搬送領域12には、重合基板Tまたは剥離後の被処理基板Wの搬送を行う第1搬送装置30が設置される。
第1搬送装置30は、水平方向への移動、鉛直方向への昇降および鉛直方向を中心とする旋回が可能な搬送アーム部と、この搬送アーム部の先端に取り付けられた基板保持部とを備える基板搬送装置である。かかる第1搬送装置30は、基板保持部を用いて基板を保持するとともに、基板保持部によって保持された基板を搬送アーム部によって所望の場所まで搬送する。
なお、第1搬送装置30が備える基板保持部は、吸着あるいは把持等によりダイシングフレームFを保持することによって、重合基板Tまたは剥離後の被処理基板Wを略水平に保持する。
待機ステーション13には、ダイシングフレームFのID(Identification)の読み取りを行うID読取装置が配置され、かかるID読取装置によって、処理中の重合基板Tを識別することができる。
この待機ステーション13では、上記のID読取り処理に加え、処理待ちの重合基板Tを一時的に待機させておく待機処理が必要に応じて行われる。かかる待機ステーション13には、第1搬送装置30によって搬送された重合基板Tが載置される載置台が設けられており、かかる載置台に、ID読取装置と一時待機部とが載置される。
エッジカットステーション14では、接着剤G(図2参照)の周縁部を溶剤によって溶解させて除去するエッジカット処理が行われる。かかるエッジカット処理によって接着剤Gの周縁部が除去されることで、後述する剥離処理において被処理基板Wと支持基板Sとを剥離させ易くすることができる。かかるエッジカットステーション14には、接着剤Gの溶剤に重合基板Tを浸漬させることによって、接着剤Gの周縁部を溶剤によって溶解させるエッジカット装置が設置される。
剥離ステーション15では、第1搬送装置30によって搬送された重合基板Tを被処理基板Wと支持基板Sとに剥離する剥離処理が行われる。かかる剥離ステーション15には、剥離処理を行う剥離装置が設置される。かかる剥離装置の具体的な構成および動作については、後述する。
第1洗浄ステーション16では、剥離後の被処理基板Wの洗浄処理が行われる。第1洗浄ステーション16には、剥離後の被処理基板WをダイシングフレームFに保持された状態で洗浄する第1洗浄装置が設置される。かかる第1洗浄装置の具体的な構成については、後述する。
かかる第1処理ブロック10では、待機ステーション13においてダイシングフレームFのID読取処理を行い、エッジカットステーション14において重合基板Tのエッジカット処理を行った後で、剥離ステーション15において重合基板Tの剥離処理を行う。また、第1処理ブロック10では、第1洗浄ステーション16において剥離後の被処理基板Wを洗浄した後、洗浄後の被処理基板Wを搬入出ステーション11へ搬送する。その後、洗浄後の被処理基板Wは、搬入出ステーション11から外部へ搬出される。
つづいて、第2処理ブロック20の構成について説明する。受渡ステーション21では、剥離後の支持基板Sを剥離ステーション15から受け取って第2洗浄ステーション22へ渡す受渡処理が行われる。受渡ステーション21には、剥離後の支持基板Sを非接触で保持して搬送する第3搬送装置50が設置され、かかる第3搬送装置50によって上記の受渡処理が行われる。第3搬送装置50の具体的な構成については、後述する。
第2洗浄ステーション22では、剥離後の支持基板Sを洗浄する第2洗浄処理が行われる。かかる第2洗浄ステーション22には、剥離後の支持基板Sを洗浄する第2洗浄装置が設置される。かかる第2洗浄装置の具体的な構成については、後述する。
第2搬送領域23では、第2洗浄装置によって洗浄された支持基板Sの搬送が行われる。第2搬送領域23には、支持基板Sの搬送を行う第2搬送装置40が設置される。
第2搬送装置40は、水平方向への移動、鉛直方向への昇降および鉛直方向を中心とする旋回が可能な搬送アーム部と、この搬送アーム部の先端に取り付けられた基板保持部とを備える基板搬送装置である。かかる第2搬送装置40は、基板保持部を用いて基板を保持するとともに、基板保持部によって保持された基板を搬送アーム部によって搬出ステーション24まで搬送する。なお、第2搬送装置40が備える基板保持部は、たとえば支持基板Sを下方から支持することによって支持基板Sを略水平に保持するフォーク等である。
搬出ステーション24では、支持基板Sが収容されるカセットCsが外部との間で搬入出される。かかる搬出ステーション24には、カセット載置台が設けられており、このカセット載置台に、カセットCsが載置される複数のカセット載置板24a,24bが設けられる。
かかる第2処理ブロック20では、剥離後の支持基板Sが剥離ステーション15から受渡ステーション21を介して第2洗浄ステーション22へ搬送され、第2洗浄ステーション22において洗浄される。その後、第2処理ブロック20では、洗浄後の支持基板Sを搬出ステーション24へ搬送し、洗浄後の支持基板Sは、搬出ステーション24から外部へ搬出される。
また、剥離システム1は、制御装置60を備える。制御装置60は、剥離システム1の動作を制御する装置である。かかる制御装置60は、たとえばコンピュータであり、図示しない制御部と記憶部とを備える。記憶部には、剥離処理等の各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部は記憶部に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって剥離システム1の動作を制御する。
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体に記録されていたものであって、その記録媒体から制御装置60の記憶部にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記録媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
次に、上述した剥離システム1の動作について図4および図5A,5Bを参照して説明する。図4は、剥離システム1によって実行される基板処理の処理手順を示すフローチャートである。また、図5Aは、重合基板Tの搬送順路を示す模式図であり、図5Bは、被処理基板Wおよび支持基板Sの搬送順路を示す模式図である。なお、剥離システム1は、制御装置60の制御に基づき、図4に示す各処理手順を実行する。
まず、第1処理ブロック10の第1搬送領域12に配置される第1搬送装置30(図1参照)は、制御装置60の制御に基づき、重合基板Tを待機ステーション13へ搬入する処理を行う(図4のステップS101、図5AのT1参照)。
具体的には、第1搬送装置30は、基板保持部を搬入出ステーション11へ進入させ、カセットCtに収容された重合基板Tを保持してカセットCtから取り出す。このとき、重合基板Tは、被処理基板Wが下面に位置し、支持基板Sが上面に位置した状態で、第1搬送装置30の基板保持部に上方から保持される。そして、第1搬送装置30は、カセットCtから取り出した重合基板Tを待機ステーション13へ搬入する。
つづいて、待機ステーション13では、ID読取装置が、制御装置60の制御に基づき、ダイシングフレームFのIDを読み取るID読取処理を行う(図4のステップS102)。ID読取装置によって読み取られたIDは、制御装置60へ送信される。
つづいて、第1搬送装置30は、制御装置60の制御に基づき、重合基板Tを待機ステーション13から搬出し、エッジカットステーション14へ搬送する(図5AのT2参照)。そして、エッジカットステーション14では、エッジカット装置が、制御装置60の制御に基づき、エッジカット処理を行う(図4のステップS103)。かかるエッジカット処理により接着剤Gの周縁部が除去され、後段の剥離処理において被処理基板Wと支持基板Sとが剥離し易くなる。これにより、剥離処理に要する時間を短縮させることができる。
第1の実施形態にかかる剥離システム1では、エッジカットステーション14が第1処理ブロック10に組み込まれているため、第1処理ブロック10へ搬入された重合基板Tを第1搬送装置30を用いてエッジカットステーション14へ直接搬入することができる。このため、剥離システム1によれば、一連の基板処理のスループットを向上させることができる。また、エッジカット処理から剥離処理までの時間を容易に管理することができ、剥離性能を安定化させることができる。なお、剥離システム1は、必ずしもエッジカットステーション14を備えることを要しない。
また、たとえば装置間の処理時間差等により処理待ちの重合基板Tが生じる場合には、待機ステーション13に設けられた一時待機部を用いて重合基板Tを一時的に待機させておくことができ、一連の工程間でのロス時間を短縮することができる。
つづいて、第1搬送装置30は、制御装置60の制御に基づき、エッジカット処理後の重合基板Tをエッジカットステーション14から搬出して、剥離ステーション15へ搬送する(図5AのT3参照)。そして、剥離ステーション15では、剥離装置が、制御装置60の制御に基づいて剥離処理を行う(図4のステップS104)。
その後、剥離システム1では、剥離後の被処理基板Wについての処理が第1処理ブロック10で行われ、剥離後の支持基板Sについての処理が第2処理ブロック20で行われる。なお、剥離後の被処理基板Wは、ダイシングフレームFによって保持されている。
まず、第1処理ブロック10では、第1搬送装置30が、制御装置60の制御に基づき、剥離後の被処理基板Wを剥離装置から搬出して、第1洗浄ステーション16へ搬送する(図5BのW1参照)。
そして、第1洗浄装置は、制御装置60の制御に基づき、剥離後の被処理基板Wの接合面Wjを洗浄する被処理基板洗浄処理を行う(図4のステップS105)。かかる被処理基板洗浄処理によって、被処理基板Wの接合面Wjに残存する接着剤Gが除去される。
つづいて、第1搬送装置30は、制御装置60の制御に基づき、洗浄後の被処理基板Wを第1洗浄装置から搬出して、搬入出ステーション11へ搬送する被処理基板搬出処理を行う(図4のステップS106、図5BのW2参照)。その後、被処理基板Wは、搬入出ステーション11から外部へ搬出されて回収される。こうして、被処理基板Wについての処理が終了する。
一方、第2処理ブロック20では、ステップS105およびステップS106の処理と並行して、ステップS107〜S109の処理が行われる。
まず、第2処理ブロック20では、受渡ステーション21に設置された第3搬送装置50が、制御装置60の制御に基づいて、剥離後の支持基板Sの受渡処理を行う(図4のステップS107)。
このステップS107において、第3搬送装置50は、剥離後の支持基板Sを剥離装置から受け取り(図5BのS1参照)、受け取った支持基板Sを第2洗浄ステーション22の第2洗浄装置へ載置する(図5BのS2参照)。
ここで、剥離後の支持基板Sは、剥離装置によって上面側すなわち非接合面Sn側が保持された状態となっており、第3搬送装置50は、支持基板Sの接合面Sj側を下方から非接触で保持する。そして、第3搬送装置50は、保持した支持基板Sを第2洗浄ステーション22へ搬入した後、支持基板Sを反転させて、第2洗浄装置へ載置する。これにより、支持基板Sは、接合面Sjが上方を向いた状態で第2洗浄装置に載置される。そして、第2洗浄装置は、制御装置60の制御に基づき、支持基板Sの接合面Sjを洗浄する支持基板洗浄処理を行う(図4のステップS108)。かかる支持基板洗浄処理によって、支持基板Sの接合面Sjに残存する接着剤Gが除去される。
つづいて、第2搬送装置40は、制御装置60の制御に基づき、洗浄後の支持基板Sを第2洗浄装置から搬出して、搬出ステーション24へ搬送する支持基板搬出処理を行う(図4のステップS109、図5BのS3参照)。その後、支持基板Sは、搬出ステーション24から外部へ搬出されて回収される。こうして、支持基板Sについての処理が終了する。
このように、第1の実施形態に係る剥離システム1は、ダイシングフレームFに保持された基板用のフロントエンド(搬入出ステーション11および第1搬送装置30)と、ダイシングフレームFに保持されない基板用のフロントエンド(搬出ステーション24および第2搬送装置40)とを備える構成とした。これにより、洗浄後の被処理基板Wを搬入出ステーション11へ搬送する処理と、洗浄後の支持基板Sを搬出ステーション24へ搬送する処理とを並列に行うことが可能となるため、一連の基板処理を効率的に行うことができる。
また、第1の実施形態に係る剥離システム1は、第1処理ブロック10と第2処理ブロック20とが、受渡ステーション21によって接続される。これにより、剥離後の支持基板Sを剥離ステーション15から直接取り出して第2処理ブロック20へ搬入することが可能となるため、剥離後の支持基板Sを第2洗浄装置へスムーズに搬送することができる。
したがって、第1の実施形態に係る剥離システム1によれば、一連の基板処理のスループットを向上させることができる。
<2.各装置の構成>
<2−1.剥離装置>
次に、剥離システム1が備える各装置の構成について具体的に説明する。まず、剥離ステーション15に設置される剥離装置の構成および剥離装置を用いて行われる重合基板Tの剥離動作について説明する。図6は、第1の実施形態に係る剥離装置の構成を示す模式側面図である。
図6に示すように、剥離装置5は処理部100を備える。処理部100の側面には、搬入出口(図示せず)が形成され、この搬入出口を介して、重合基板Tの処理部100への搬入や、剥離後の被処理基板Wおよび支持基板Sの処理部100からの搬出が行われる。搬入出口には、たとえば開閉シャッタが設けられ、この開閉シャッタによって処理部100と他の領域とが仕切られ、パーティクルの進入が防止される。なお、搬入出口は、第1搬送領域12に隣接する側面と受渡ステーション21に隣接する側面とにそれぞれ設けられる。
剥離装置5は、第1保持部110と、フレーム保持部120と、下側ベース部130と、回転昇降機構140と、第2保持部150と、上側ベース部160と、剥離誘引部170と、位置調整部180とを備える。これらは処理部100の内部に配置される。
第1保持部110は、重合基板Tのうち被処理基板Wを下方から保持し、第2保持部150は、重合基板Tのうち支持基板Sを上方から保持する。そして、第2保持部150は、保持した支持基板Sを被処理基板Wの板面から離す方向へ移動させる。これにより、剥離装置5は、重合基板Tを支持基板Sと被処理基板Wとに剥離する。以下、各構成要素について具体的に説明する。
第1保持部110は、重合基板Tを構成する被処理基板WをダイシングテープPを介して吸着保持する。
第1保持部110は、円盤状の本体部111と、本体部111を支持する支柱部材112とを備える。支柱部材112は、下側ベース部130に支持される。
本体部111は、たとえばアルミニウムなどの金属部材で構成される。かかる本体部111の上面には、吸着パッド111aが設けられる。吸着パッド111aは、重合基板Tと略同径であり、重合基板Tの下面、すなわち、被処理基板Wの非接合面Wnの略全面に接触する。この吸着パッド111aは、たとえば炭化ケイ素等の多孔質体や多孔質セラミックで形成される。
本体部111の内部には、吸着パッド111aを介して外部と連通する吸引空間111bが形成される。吸引空間111bは、吸気管113を介して真空ポンプなどの吸気装置114と接続される。
かかる第1保持部110は、吸気装置114の吸気によって発生する負圧を利用し、被処理基板Wの非接合面WnをダイシングテープPを介して吸着パッド111aに吸着させる。これにより、第1保持部110は被処理基板Wを保持する。なお、ここでは、第1保持部110がポーラスチャックである場合の例を示したが、第1保持部は、たとえば静電チャック等であってもよい。
第1保持部110の外方には、ダイシングフレームFを下方から保持するフレーム保持部120が配置される。かかるフレーム保持部120は、ダイシングフレームFを吸着保持する複数の吸着パッド121と、吸着パッド121を支持する支持部材122と、下側ベース部130に固定され、支持部材122を鉛直方向に沿って移動させる移動機構123とを備える。
吸着パッド121は、ゴムなどの弾性部材によって形成され、たとえば図3に示すダイシングフレームFの前後左右の4箇所に対応する位置にそれぞれ設けられる。この吸着パッド121には、吸気口(図示せず)が形成され、真空ポンプなどの吸気装置125が支持部材122および吸気管124を介して上記の吸気口に接続される。
フレーム保持部120は、吸気装置125の吸気によって発生する負圧を利用し、ダイシングフレームFを吸着する。これにより、フレーム保持部120は、ダイシングフレームFを保持する。また、フレーム保持部120は、ダイシングフレームFを保持した状態で、移動機構123によって支持部材122および吸着パッド121を鉛直方向に沿って移動させる。これにより、フレーム保持部120は、ダイシングフレームFを鉛直方向に沿って移動させる。
下側ベース部130は、第1保持部110およびフレーム保持部120の下方に配置され、第1保持部110およびフレーム保持部120を支持する。下側ベース部130は、処理部100の床面に固定された回転昇降機構140によって支持される。
回転昇降機構140は、下側ベース部130を鉛直軸回りに回転させる。これにより、下側ベース部130に支持された第1保持部110およびフレーム保持部120が一体的に回転する。また、回転昇降機構140は、下側ベース部130を鉛直方向に移動させる。これにより、下側ベース部130に支持された第1保持部110およびフレーム保持部120が一体的に昇降する。
第1保持部110の上方には、第2保持部150が対向配置される。第2保持部150は、第1吸着移動部190と、第2吸着移動部200とを備える。第1吸着移動部190および第2吸着移動部200は、上側ベース部160に支持される。上側ベース部160は、処理部100の天井部に取り付けられた固定部材101に支柱102を介して支持される。
第1吸着移動部190は、支持基板Sの周縁部を吸着保持する。また、第2吸着移動部200は、支持基板Sの周縁部よりも支持基板Sの中央部寄りの領域を吸着保持する。そして、第1吸着移動部190および第2吸着移動部200は、吸着保持した領域をそれぞれ独立に被処理基板Wの板面から離す方向へ移動させる。
第1吸着移動部190は、第1吸着パッド191と、支柱部材192と、移動機構193とを備える。また、第2吸着移動部200は、第2吸着パッド201と、支柱部材202と、移動機構203とを備える。
第1吸着パッド191および第2吸着パッド201には、吸気口(図示せず)が形成されており、それぞれの吸気口には、吸気管194,204を介して真空ポンプなどの吸気装置195,205が接続される。
支柱部材192,202は、先端部において第1吸着パッド191および第2吸着パッド201を支持する。支柱部材192,202の基端部は、移動機構193,203によって支持される。移動機構193,203は、上側ベース部160の上部に固定されており、支柱部材192,202を鉛直方向に移動させる。
第1吸着移動部190および第2吸着移動部200は、吸気装置195,205の吸気によって発生する負圧を利用して支持基板Sを吸着する。これにより、第1吸着移動部190および第2吸着移動部200は、支持基板Sを保持する。
また、第1吸着移動部190および第2吸着移動部200は、支持基板Sを保持した状態で、それぞれ移動機構193,203によって支柱部材192,202ならびに第1吸着パッド191および第2吸着パッド201を鉛直方向に沿って移動させる。これにより、支持基板Sを鉛直方向に沿って移動させる。
剥離装置5は、移動機構193を移動機構203よりも先に動作させることにより、すなわち、支持基板Sを周縁部から先に引っ張ることにより、支持基板Sを、その周縁部から中央部へ向けて被処理基板Wから連続的に剥離させる。このように、移動機構193,203は、支持基板Sが被処理基板Wの板面から離れる方向に第2保持部150の第1吸着パッド191および第2吸着パッド201を移動させる第1移動機構の一例に相当する。
第1吸着パッド191および第2吸着パッド201は、支持基板Sを被処理基板Wから剥離させる力に「粘り」を加えて、支持基板Sを被処理基板Wから効率良く剥離させるために、柔軟性を有する材料で形成されることが好ましい。
また、第1吸着パッド191および第2吸着パッド201は、支持基板Sに接触する部材であるため、金属の含有量が少ない材料で形成されることが好ましい。金属の含有量が少ない材料を用いることで、第1吸着パッド191および第2吸着パッド201に接触する支持基板Sの金属汚染を抑制することができる。また、転写などによる被処理基板Wの金属汚染も抑制することができる。
このように、第1吸着パッド191および第2吸着パッド201は、柔軟性を有し、かつ、不純物金属の含有量が少ない材料で形成されることが好ましい。このような材料として、第1の実施形態に係る剥離装置5では、パーフロロエラストマーが用いられる。パーフロロエラストマーとしては、たとえばカルレッツ(登録商標)、デュプラ(登録商標)、ダイエル(登録商標)G902等が挙げられる。
ここで、従来の吸着パッドに用いられるゴム材料には、製造工程において、弾性や強度を確保するために金属が加えられるため、金属含有量が多い。この点について図7を参照して説明する。図7は、従来の吸着パッドに用いられるゴム材料の金属含有量の測定結果を示す図である。
図7には、表面洗浄を行わなかった場合(処置なし)と、IPA(イソプロピルアルコール)による表面洗浄を行った場合(IPA洗浄後)の測定結果をそれぞれ示している。また、図7には、比較例としてPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)材の金属含有量の測定結果も示している。
図7に示すように、従来の吸着パッドに用いられるゴム材料からは、Ni,Cr,Fe,Zn,Ti,KおよびCaといった金属が検出された(図7における右下がりハッチング参照)。また、IPA洗浄を施しても、FeおよびZnは依然として検出されることがわかる(図7における右上がりハッチング参照)。このように、従来の吸着パッドに用いられるゴム材料には金属が含有されている。
これに対し、パーフロロエラストマーは、従来の吸着パッドに用いられるゴム材料と比べて金属含有量が大幅に少なく、かつ、柔軟性を有するため、第1吸着パッド191および第2吸着パッド201の材料に適している。
このように、第1の実施形態に係る剥離装置5では、第1吸着パッド191および第2吸着パッド201の材料としてパーフロロエラストマーを用いることとしたため、被処理基板Wおよび支持基板Sの汚染を抑制することができる。また、パーフロロエラストマーは、柔軟性も有するため、支持基板Sを被処理基板Wから剥離させる力に「粘り」を加えることができ、支持基板Sを被処理基板Wから効率良く剥離させることができる。
なお、PEEK材は、従来の吸着パッドに用いられるゴム材料と比較して、金属含有量が少ない(図7における格子状のハッチング参照)。しかしながら、PEEK材は、柔軟性を有しないため、第1吸着パッド191および第2吸着パッド201に用いる材料としては好ましくない。
第1吸着パッド191および第2吸着パッド201は、切削または3Dプリンタにより形成されることが好ましい。これは、第1吸着パッド191および第2吸着パッド201を金型で形成した場合に、金型からの転写により第1吸着パッド191および第2吸着パッド201が金属汚染を受けるおそれがあるためである。なお、第1吸着パッド191および第2吸着パッド201は、転写の可能性がより低い3Dプリンタで形成されることがより好ましい。また、金型からの転写のおそれがない場合、第1吸着パッド191および第2吸着パッド201は、金型で形成されてもよい。
第2保持部150の外方には、剥離誘引部170が配置される。剥離誘引部170は、支持基板Sが被処理基板Wから剥がれるきっかけとなる部位を重合基板Tの側面に形成する。
剥離誘引部170は、鋭利部材171と、移動機構172とを備える。鋭利部材171は、たとえば刃物であり、先端が重合基板Tへ向けて突出するように移動機構172に支持される。ここで、鋭利部材171の形状について図8を参照して説明する。図8は、鋭利部材171の模式側面図である。
図8に示すように、鋭利部材171は、胴体部171aと、胴体部171aの先端に形成された刃先部171bとを有する。また、胴体部171aは、刃先部171bに連接し、一定の厚みt1を有する第1平坦部171a1と、第1平坦部171a1の基端側に位置し、第1平坦部171a1よりも厚い一定の厚みt2を有する第2平坦部171a3と、第1平坦部171a1と第2平坦部171a3とを連接する傾斜部171a2とを有する。第1平坦部171a1の厚みt1は、たとえば50μmであり、第2平坦部171a3の厚みt2は、たとえば400μmである。
このように、鋭利部材171の胴体部171aは、第1平坦部171a1を有する。これにより、第1平坦部171a1を有さない通常の刃物を用いた場合と比較して、支持基板Sと接着剤Gとの間に鋭利部材171を進入させた際に被処理基板Wに掛かる負荷を小さくすることができる。また、鋭利部材171の胴体部171aは、第1平坦部171a1よりも厚い第2平坦部171a3を有する。これにより、鋭利部材171の強度を確保することができ、後述するように鋭利部材171を支点として支持基板Sに力を加えた際に、鋭利部材171が曲がったり欠けたりすることを防止することができる。
また、鋭利部材171は、超硬合金で形成される。これによっても、鋭利部材171を支点として支持基板Sに力を加える際の鋭利部材171の強度を確保することができる。
なお、鋭利部材171として、セラミック樹脂系の刃物あるいはフッ素コーティングされた刃物を用いることにより、重合基板Tに対して鋭利部材171を挿入した際のパーティクルの発生を抑えることができる。なお、鋭利部材171としては、たとえばカミソリ刃やローラ刃あるいは超音波カッター等を用いることができる。
移動機構172は、Y軸方向に延在するレールに沿って鋭利部材171を移動させる。剥離装置5は、移動機構172を用いて鋭利部材171を移動させることにより、支持基板Sの接着剤G寄りの側面に鋭利部材171を当接させる。これにより、剥離装置5は、支持基板Sが被処理基板Wから剥がれるきっかけとなる部位(以下、「剥離開始部位」と記載する)を重合基板Tの側面に形成する。
また、移動機構172は、位置調整部180によって上方から支持される。位置調整部180は、たとえば上側ベース部160の下部に固定され、移動機構172を鉛直方向に沿って移動させる。これにより、鋭利部材171の高さ位置、すなわち、重合基板Tの側面への当接位置を調整することができる。
ここで、剥離誘引部170を用いて行われる剥離誘引処理の内容について図9A〜図9Cを参照して具体的に説明する。図9A〜図9Cは、剥離誘引処理の動作説明図である。
なお、図9A〜図9Cに示す剥離誘引処理は、重合基板Tのうちの被処理基板Wが第1保持部110(図6参照)によって保持された後、かつ、支持基板Sが第2保持部150によって保持される前に行われる。すなわち、剥離誘引処理は、支持基板Sがフリーな状態で行われる。また、剥離装置5は、制御装置60の制御に基づき、図9A〜図9Cに示す剥離誘引処理を行う。
剥離装置5は、位置調整部180を用いて鋭利部材171の高さ位置を調整した後、移動機構172(図6参照)を用いて鋭利部材171を重合基板Tの側面へ向けて移動させる。具体的には、図9Aに示すように、重合基板Tの側面のうち、支持基板Sの接着剤G寄りの側面に向けて鋭利部材171を略水平に移動させる。
「支持基板Sの接着剤G寄りの側面」とは、支持基板Sの側面のうち、支持基板Sの厚みの半分の位置h1よりも接合面Sj寄りの側面である。すなわち、支持基板Sの側面は略円弧状に形成されており、「支持基板Sの接着剤G寄りの側面」は、鋭利部材171と接合面Sjとのなす角度を0度とした場合における鋭利部材171とのなす角度θが0度以上90度未満の側面である。
剥離装置5は、まず、鋭利部材171を予め決められた位置まで前進させる(予備前進)。その後、剥離装置5は、鋭利部材171をさらに前進させて鋭利部材171を支持基板Sの接着剤G寄りの側面に当接させる。なお、剥離誘引部170には、たとえばロードセル(図示せず)が設けられており、剥離装置5は、かかるロードセルを用いて鋭利部材171にかかる負荷を検出することによって、鋭利部材171が支持基板Sに当接したことを検出する。
上述したように支持基板Sの側面は略円弧状に形成されている。したがって、鋭利部材171が支持基板Sの接着剤G寄りの側面に当接することにより、支持基板Sには、上方向きの力が加わることとなる。
つづいて、図9Bに示すように、剥離装置5は、鋭利部材171をさらに前進させる。これにより、支持基板Sは、側面の湾曲に沿って上方へ押し上げられる。この結果、支持基板Sの一部が接着剤Gから剥離して剥離開始部位Mが形成される。
なお、支持基板Sは第2保持部150によって保持されておらずフリーな状態であるため、支持基板Sの上方への移動が阻害されることがない。本処理において、鋭利部材171を前進させる距離d1は、たとえば2mm程度である。
つづいて、図9Cに示すように、剥離装置5は、回転昇降機構140(図6参照)を用いて第1保持部110を降下させつつ、鋭利部材171をさらに前進させる。これにより、被処理基板Wおよび接着剤Gには下方向きの力が加わり、鋭利部材171によって支持された支持基板Sには上方向きの力が加わる。このように、回転昇降機構140によって第1保持部110を降下させながら、移動機構172によって鋭利部材171をさらに前進させることにより、剥離開始部位Mを拡大させることができる。なお、回転昇降機構140は、被処理基板Wが支持基板Sから離れる方向に第1保持部110を移動させる第3移動機構の一例である。
また、鋭利部材171を図8に示す形状としたため、支持基板Sと接着剤Gとの間に鋭利部材171を進入させた際に被処理基板Wに掛かる負荷を小さくすることができる。本処理において、鋭利部材171を前進させる距離d2は、たとえば1mm程度である。
このように、剥離装置5は、支持基板Sの接着剤G寄りの側面に鋭利部材171を突き当てることにより、支持基板Sが被処理基板Wから剥がれるきっかけとなる剥離開始部位Mを重合基板Tの側面に形成することができる。
支持基板Sは、接着剤Gの約5〜15倍程度の厚みを有する。したがって、鋭利部材171を接着剤Gに当接させて剥離開始部位を形成する場合と比較して、鋭利部材171の鉛直方向の位置制御が容易である。
また、支持基板Sの接着剤G寄りの側面に鋭利部材171を当接させることによって、支持基板Sを被処理基板Wから引き剥がす方向の力(すなわち、上向きの力)を支持基板Sに加えることができる。しかも、支持基板Sの最外縁部に近い部位を持ち上げるため、支持基板Sを被処理基板Wから引き剥がす方向の力を支持基板Sに対して効率的に加えることができる。
また、鋭利部材171を接着剤Gに突き当てる場合と比較して、鋭利部材171が被処理基板Wに接触する可能性を低下させることができる。
なお、「支持基板Sの接着剤G寄りの側面」は、より好ましくは、図9Aに示すように、支持基板Sの接合面Sjから支持基板Sの厚みの1/4の位置h2までの側面、すなわち、鋭利部材171とのなす角度θが0度以上45度以下の側面であるのが好ましい。鋭利部材171とのなす角度θが小さいほど、支持基板Sを持ち上げる力を大きくすることができるためである。
また、支持基板Sと接着剤Gとの接着力が比較的弱い場合には、図9Aに示すように、鋭利部材171を支持基板Sの接着剤G寄りの側面に当接させるだけで剥離開始部位Mを形成することができる。このような場合、剥離装置5は、図9Bおよび図9Cに示す動作を省略することができる。
次に、第1吸着移動部190および第2吸着移動部200の配置等について図10Aおよび図10Bを参照して説明する。図10Aは、第1吸着移動部190が備える第1吸着パッド191および第2吸着移動部200が備える第2吸着パッド201の模式平面図である。また、図10Bは、第1吸着移動部190が備える第1吸着パッド191の模式拡大図である。
図10Aに示すように、第1吸着移動部190が備える第1吸着パッド191は、剥離開始部位Mに対応する支持基板Sの周縁部を吸着する。また、第2吸着移動部200が備える第2吸着パッド201は、支持基板Sの中央部を吸着する。
第1吸着パッド191は、第2吸着パッド201よりも吸着面積が小さく形成される。これは、第1吸着パッド191を小さく形成することで、剥離開始部位Mが形成された部分に対応する支持基板Sの周縁部のみを吸着して引き上げることができるためである。これにより、剥離開始部位Mが形成されていない周縁部まで吸着して引き上げることで剥離力が低下することを防止することができる。このように、第2保持部150の第1吸着パッド191および第2吸着パッド201は、支持基板Sの一部に接触する。
図10Bに示すように、第1吸着パッド191は、鋭利部材171の刃幅w1よりも小さく形成されることが好ましい。これにより、剥離開始部位Mが形成されていない支持基板Sの周縁部を第1吸着パッド191が吸着してしまうことを確実に防止することができる。言い換えれば、剥離開始部位Mが形成された支持基板Sの周縁部のみを正確に吸着することができる。なお、第2吸着パッド201は、刃幅w1よりも大きく形成される。
また、図10Bに示すように、第1吸着パッド191は、支持基板Sの外縁に対応する部分191aが支持基板Sの外縁に沿って弧状に形成される。これにより、支持基板Sの最外縁部により近い領域に第1吸着パッド191を配置することができる。したがって、支持基板Sを被処理基板Wから引き剥がす方向の力を支持基板Sに対して効率的に加えることができる。なお、第1吸着パッド191の形状は、必ずしも図10Bに示した形状であることを要しない。たとえば、第1吸着パッド191は、第2吸着パッド201と同様に、平面視円形状であってもよい。
図10Aに示すように、第1吸着パッド191および第2吸着パッド201は、鋭利部材171の移動方向に沿って配置される。剥離装置5は、第1吸着パッド191を第2吸着パッド201よりも先に引き上げることにより、すなわち、支持基板Sを周縁部から先に引っ張ることにより、支持基板Sを、その周縁部から中央部へ向けて被処理基板Wから連続的に剥離させる。
かかる剥離動作の具体的な内容について図11および図12A〜図12Eを参照して説明する。図11は、剥離処理の処理手順を示すフローチャートである。また、図12A〜図12Eは、剥離装置5による剥離動作の説明図である。なお、剥離装置5は、制御装置60の制御に基づき、図11に示す各処理手順を実行する。
まず、剥離装置5は、第1搬送装置30によって剥離ステーション15へ搬入された重合基板TのダイシングフレームFをフレーム保持部120を用いて下方から吸着保持する(ステップS201)。このとき、重合基板Tは、フレーム保持部120によってのみ保持された状態である(図12A参照)。
つづいて、剥離装置5は、移動機構123(図6参照)を用いてフレーム保持部120を降下させる(ステップS202)。これにより、重合基板Tのうちの被処理基板Wが、ダイシングテープPを介して第1保持部110に当接する(図12B参照)。その後、剥離装置5は、第1保持部110を用い、被処理基板WをダイシングテープPを介して吸着保持する(ステップS203)。これにより、重合基板Tは、第1保持部110によって被処理基板Wが保持され、フレーム保持部120によってダイシングフレームFが保持された状態となる。
その後、剥離装置5は、図9A〜図9Cを参照して説明した剥離誘引処理を行う(ステップS204)。これにより、重合基板Tの側面に剥離開始部位M(図9B参照)が形成される。
つづいて、剥離装置5は、第1吸着移動部190の第1吸着パッド191および第2吸着移動部200の第2吸着パッド201を降下させる(ステップS205)。これにより、第1吸着パッド191および第2吸着パッド201が支持基板Sの非接合面Sn(図2参照)に当接する(図12C参照)。その後、剥離装置5は、第1吸着移動部190および第2吸着移動部200を用いて支持基板Sの非接合面Snを吸着保持する(ステップS206)。上述したように、第1吸着移動部190は、剥離開始部位Mに対応する支持基板Sの周縁部を吸着保持し、第2吸着移動部200は、支持基板Sの中央部を吸着保持する。
つづいて、剥離装置5は、第1吸着移動部190の第1吸着パッド191を上昇させる(ステップS207)。すなわち、剥離装置5は、剥離開始部位Mに対応する支持基板Sの周縁部を引っ張る。これにより、支持基板Sが、その周縁部から中心部へ向けて被処理基板Wから連続的に剥離し始める(図12D参照)。
その後、剥離装置5は、第2吸着移動部200の第2吸着パッド201を上昇させる(ステップS208)。すなわち、剥離装置5は、剥離開始部位Mに対応する支持基板Sの周縁部を引っ張りつつ、支持基板Sの中央部をさらに引っ張る。これにより、支持基板Sが被処理基板Wから剥離する(図12E参照)。
その後、剥離装置5は、第2吸着移動部200のみを上昇させ、あるいは、第1吸着移動部190のみを降下させることによって支持基板Sを水平にし、鋭利部材171を後退させて、剥離処理を終了する。
このように、第1の実施形態に係る剥離装置5では、第1吸着移動部190が支持基板Sの周縁部を被処理基板Wの板面から離す方向へ移動させた後で、第2吸着移動部200が支持基板Sの中央部を被処理基板Wの板面から離す方向へ移動させることとした。
これにより、支持基板Sに対して大きな負荷をかけることなく、重合基板Tを支持基板Sと被処理基板Wとに剥離することができる。
すなわち、たとえば特表2007−526628号公報に記載の技術のように、重合基板の一方の周縁部を支点とし他方の周縁部に引張力を加えることによって重合基板を剥離する場合、剥離が進むに連れて支持基板が大きく反ってしまうという問題がある。これに対し、剥離装置5によれば、支持基板Sの周縁部を吸着保持する第1吸着移動部190と、支持基板Sの中央部を吸着保持する第2吸着移動部200とを用いて剥離動作を行うことで、支持基板Sの変形を抑えつつ剥離を進めることができる。
また、剥離装置5によれば、第1吸着移動部190のみを用いる場合と比較して、重合基板Tを短時間で剥離することができる。
なお、剥離装置5は、被処理基板Wと支持基板Sとが剥離した後、回転昇降機構140を用いて第1保持部110およびフレーム保持部120を回転させてもよい。これにより、仮に、支持基板Sと被処理基板Wとに跨って貼り付いた接着剤Gが存在する場合に、かかる接着剤Gをねじ切ることができる。
剥離装置5が剥離処理を終えると、第3搬送装置50(図1参照)は、剥離後の支持基板Sを剥離装置5から受け取り、受け取った支持基板Sを第2洗浄ステーション22(図1参照)の第2洗浄装置へ載置する。
ここで、剥離後の支持基板Sは、第1吸着移動部190および第2吸着移動部200によって非接合面Sn側が保持された状態となっており、第3搬送装置50は、支持基板Sの接合面Sj側を下方から非接触で保持する。このように、第2保持部150は、剥離後の支持基板Sを第3搬送装置50へ受け渡す受渡部としても機能する。第1の実施形態では、第2吸着移動部200が支持基板Sの中央部を吸着することとしたため、剥離後の支持基板Sを安定して保持しておくことができる。
また、第1搬送装置30(図1参照)は、剥離後の被処理基板Wを剥離装置5から搬出して、第1洗浄ステーション16へ搬送する。このとき、剥離後の被処理基板Wは、図12Eに示すように、洗浄すべき接合面Wjが上面に位置した状態で、第1保持部110に保持されている。このため、第1搬送装置30は、剥離後の被処理基板Wを剥離装置5から搬出した後、かかる被処理基板Wを反転させることなくそのまま第1洗浄ステーション16へ搬送することができる。
このように、剥離装置5では、第1保持部110が被処理基板Wを下方から保持し、第2保持部150が重合基板Tのうち支持基板Sを上方から保持するため、剥離後の被処理基板Wを反転させる必要がなく、剥離処理を効率化させることができる。
<2−2.第1洗浄装置の構成>
次に、第1洗浄装置の構成について図13A〜図13Cを参照して説明する。図13Aおよび図13Bは、第1洗浄装置の構成を示す模式側面図である。また、図13Cは、洗浄治具の構成を示す模式平面図である。
図13Aに示すように、第1洗浄装置70は、処理容器71を有する。処理容器71の側面には、被処理基板Wの搬入出口(図示せず)が形成され、かかる搬入出口には開閉シャッタ(図示せず)が設けられる。なお、処理容器71内には内部の雰囲気を清浄化するためのフィルタ(図示せず)が設けられる。
処理容器71内の中央部には、基板保持部72が配置される。基板保持部72は、ダイシングフレームFおよび被処理基板Wを保持して回転させるスピンチャック721を有する。
スピンチャック721は水平な上面を有し、かかる上面には例えばダイシングテープPを吸引する吸引口(図示せず)が設けられている。そして吸引口からの吸引により、ダイシングテープPを介して被処理基板Wをスピンチャック721上に吸着保持する。このとき、被処理基板Wは、その接合面Wjが上方を向くようにスピンチャック721に吸着保持される。
スピンチャック721の下方には、たとえばモータなどを備えたチャック駆動部722が配置される。スピンチャック721は、チャック駆動部722により所定の速度で回転する。また、チャック駆動部722は、たとえばシリンダなどの昇降駆動源を備えており、かかる昇降駆動源によってスピンチャック721を昇降させる。
基板保持部72の周囲には、被処理基板Wから飛散又は落下する液体を受け止め、回収するカップ723が配置される。かかるカップ723の下面には、回収した液体を排出する排出管724と、カップ723内の雰囲気を排気する排気管725が接続される。
基板保持部72の上方には、被処理基板Wの接合面Wjを洗浄するための洗浄治具73が配置される。洗浄治具73は、基板保持部72に保持された被処理基板Wに対向して配置されている。ここで、洗浄治具73の構成について図13Bおよび図13Cを参照して説明する。
図13Bおよび図13Cに示すように、洗浄治具73は、略円板形状を有している。洗浄治具73の下面には、少なくとも被処理基板Wの接合面Wjを覆うように供給面731が形成されている。なお、本実施形態において、供給面731は、被処理基板Wの接合面Wjとほぼ同じ大きさに形成される。
洗浄治具73の中央部には、供給面731および接合面Wj間に接着剤Gの溶剤、たとえばシンナーを供給する溶剤供給部74と、溶剤のリンス液を供給するリンス液供給部75と、不活性ガス、たとえば窒素ガスを供給する不活性ガス供給部76とが設けられている。溶剤供給部74、リンス液供給部75、不活性ガス供給部76は、洗浄治具73の内部において合流し、洗浄治具73の供給面731に形成された供給口732に連通している。すなわち、溶剤供給部74から供給口732までの溶剤の流路、リンス液供給部75から供給口732までのリンス液の流路、不活性ガス供給部76から供給口732までの不活性ガスの流路は、それぞれ洗浄治具73の厚み方向に貫通している。なお、リンス液には接着剤Gの主溶媒の成分に応じて種々の液が用いられ、たとえば純水やIPA(イソプロピルアルコール)が用いられる。また、リンス液の乾燥を促進させるため、リンス液には揮発性の高い液を用いるのが好ましい。
溶剤供給部74には、内部に溶剤を貯留する溶剤供給源741に連通する供給管742が接続されている。供給管742には、溶剤の流れを制御するバルブや流量調節部等を含む供給機器群743が設けられている。リンス液供給部75には、内部にリンス液を貯留するリンス液供給源751に連通する供給管752が接続されている。供給管752には、リンス液の流れを制御するバルブや流量調節部等を含む供給機器群753が設けられている。不活性ガス供給部76には、内部に不活性ガスを貯留する不活性ガス供給源761に連通する供給管762が接続されている。供給管762には、溶剤の流れを制御するバルブや流量調節部等を含む供給機器群763が設けられている。
洗浄治具73の外周部には、供給面731と接合面Wjとの間の隙間の溶剤やリンス液を吸引するための吸引部77が設けられている。吸引部77は、洗浄治具73の厚み方向に貫通して設けられている。また吸引部77は、洗浄治具73と同一円周上に等間隔に複数、例えば8箇所に配置されている(図13C参照)。各吸引部77には、例えば真空ポンプなどの負圧発生装置771に連通する吸気管772が接続されている。
図13Aに示すように、処理容器71の天井面であって、洗浄治具73の上方には、洗浄治具73を鉛直方向及び水平方向に移動させる移動機構78が設けられている。移動機構78は、洗浄治具73を支持する支持部材781と、支持部材781を支持し、洗浄治具73を鉛直方向及び水平方向に移動させるための治具駆動部782とを有している。
第1搬送装置30は、剥離装置5のフレーム保持部120(図6参照)によって下方から保持されたダイシングフレームFを上方から保持することにより、剥離後の被処理基板Wを保持する。そして、第1搬送装置30は、保持した被処理基板Wを第1洗浄装置70のスピンチャック721上に載置する。これにより、剥離後の被処理基板Wは、接合面Wjが上面に位置した状態でスピンチャック721上に載置される。
そして、第1洗浄装置70は、制御装置60の制御に基づき、基板保持部72上に載置された被処理基板Wの洗浄処理(第1洗浄処理)を行う。
第1洗浄装置70は、まず、スピンチャック721を用い、ダイシングテープPを介して被処理基板WおよびダイシングフレームFを吸着保持する。つづいて、第1洗浄装置70は、移動機構78によって洗浄治具73の水平方向の位置を調整した後、洗浄治具73を所定の位置まで下降させる。このとき、洗浄治具73の供給面731と被処理基板Wの接合面Wjとの間の距離は、後述するように供給面731および接合面Wj間において、接着剤Gの溶剤が表面張力によって拡散することができる距離に設定される。
その後、第1洗浄装置70は、スピンチャック721によって被処理基板Wを回転させながら、溶剤供給源741から溶剤供給部74に溶剤を供給する。かかる溶剤は、供給口732から供給面731および接合面Wj間の空間に供給され、この空間において溶剤の表面張力と被処理基板Wの回転による遠心力により、被処理基板Wの接合面Wj上を拡散する。このとき、第1洗浄装置70は、吸引部77によって溶剤を適宜吸引することにより、溶剤がダイシングテープP上に流入しないようにする。これにより、ダイシングテープPの強度が溶剤によって弱まることを防ぐことができる。このようにして、被処理基板Wの接合面Wjの全面に溶剤が供給される。
その後、第1洗浄装置70は、被処理基板Wの接合面Wjを溶剤に浸した状態を所定の時間、たとえば数分間維持する。そうすると、接合面Wjに残存していた接着剤G等の不純物が溶剤によって除去される。
その後、第1洗浄装置70は、スピンチャック721による被処理基板Wの回転と、吸引部77による溶剤の吸引を引き続き行った状態で、洗浄治具73を所定の位置まで上昇させる。つづいて、第1洗浄装置70は、リンス液供給源751からリンス液供給部75にリンス液を供給する。リンス液は、溶剤と混合されつつ、表面張力と遠心力によって被処理基板Wの接合面Wj上を拡散する。これにより、溶剤とリンス液との混合液が、被処理基板Wの接合面Wjの全面に供給される。
その後、スピンチャック721による被処理基板Wの回転と、吸引部77による吸引を引き続き行った状態で、洗浄治具73を所定の位置まで下降させる。そして、不活性ガス供給源761から不活性ガス供給部76および供給口732を介して不活性ガスが供給される。不活性ガスは、溶剤とリンス液の混合液を被処理基板Wの外方へ押し流す。これにより、溶剤とリンス液の混合液は、吸引部77から吸引され、被処理基板Wの接合面Wjから混合液が除去される。
その後、第1洗浄装置70は、スピンチャック721による被処理基板Wの回転と、不活性ガスの供給を引き続き行うことにより、被処理基板Wを乾燥させる。これにより、被処理基板Wの洗浄処理(第1洗浄処理)が完了する。洗浄後の被処理基板Wは、第1搬送装置30によって第1洗浄装置70から搬出され、搬入出ステーション11のカセットCwへ搬送される。
<2−3.第3搬送装置の構成>
次に、受渡ステーション21に設置される第3搬送装置50の構成について図14を参照して説明する。図14は、第3搬送装置50の構成を示す模式側面図である。
図14に示すように、第3搬送装置50は、被処理基板Wを保持するベルヌーイチャック51を備える。ベルヌーイチャック51は、吸着面に設けられた噴射口から被処理基板Wの板面へ向けて気体を噴射させ、吸着面と被処理基板Wの板面との間隔に応じて気体の流速が変化することに伴う負圧の変化を利用して被処理基板Wを非接触状態で保持する。
また、第3搬送装置50は、第1アーム52と第2アーム53と基部54とを備える。第1アーム52は、水平方向に延在し、先端部においてベルヌーイチャック51を支持する。第2アーム53は、鉛直方向に延在し、先端部において第1アーム52の基端部を支持する。かかる第2アーム53の先端部には、第1アーム52を水平軸回りに回転させる駆動機構が設けられており、かかる駆動機構を用いて第1アーム52を水平軸回りに回転させることにより、ベルヌーイチャック51を反転させることができる。
第2アーム53の基端部は、基部54によって支持される。基部54には、第2アーム53を回転および昇降させる駆動機構が設けられている。かかる駆動機構を用いて第2アーム53を回転または昇降させることにより、ベルヌーイチャック51を鉛直軸回りに旋回または昇降させることができる。
第3搬送装置50は、上記のように構成されており、制御装置60の制御に基づき、剥離後の支持基板Sを剥離装置5から受け取って第2洗浄装置80へ渡す受渡処理を行う。
具体的には、第3搬送装置50は、ベルヌーイチャック51を用い、剥離装置5の第1保持部110によって上方から保持された支持基板Sを下方から保持する。これにより、支持基板Sは、非接合面Snが上方を向いた状態で、ベルヌーイチャック51に保持される。つづいて、第3搬送装置50は、第2アーム53を鉛直軸回りに回転させることによってベルヌーイチャック51を旋回させる。これにより、ベルヌーイチャック51に保持された支持基板Sが剥離ステーション15から受渡ステーション21を経由して第2洗浄ステーション22へ移動する。
つづいて、第3搬送装置50は、第1アーム52を水平軸回りに回転させることによって、ベルヌーイチャック51を反転させる。これにより、支持基板Sは、非接合面Snが下方を向いた状態となる。そして、第3搬送装置50は、第2アーム53を降下させることによりベルヌーイチャック51を降下させて、ベルヌーイチャック51に保持された支持基板Sを第2洗浄装置へ載置する。これにより、支持基板Sは、接合面Sjが上方を向いた状態で第2洗浄装置へ載置され、第2洗浄装置によって接合面Sjが洗浄される。
<2−4.第2洗浄装置の構成>
次に、第2洗浄ステーション22に設置される第2洗浄装置の構成について図15Aおよび図15Bを参照して説明する。図15Aは、第2洗浄装置の構成を示す模式側面図であり、図15Bは、第2洗浄装置の構成を示す模式平面図である。
図15Aに示すように、第2洗浄装置80は、処理容器81を有している。処理容器81の側面には、支持基板Sの搬入出口(図示せず)が形成され、当該搬入出口には開閉シャッタ(図示せず)が設けられている。
処理容器81内の中央部には、支持基板Sを保持して回転させるスピンチャック82が配置される。スピンチャック82は、水平な上面を有しており、かかる上面には支持基板Sを吸引する吸引口(図示せず)が設けられている。この吸引口からの吸引により、支持基板Sは、スピンチャック82上で吸着保持される。
スピンチャック82の下方には、たとえばモータなどを備えたチャック駆動部83が配置される。チャック駆動部83は、スピンチャック82を所定の速度で回転させる。また、チャック駆動部83には、たとえばシリンダなどの昇降駆動源が設けられており、スピンチャック82は昇降自在になっている。
スピンチャック82の周囲には、支持基板Sから飛散又は落下する液体を受け止め、回収するカップ84が配置される。カップ84の下面には、回収した液体を排出する排出管841と、カップ84内の雰囲気を真空引きして排気する排気管842とが接続される。
図15Bに示すように、処理容器81にはレール85が設けられており、かかるレール85には、アーム86の基端部が取り付けられる。また、アーム86の先端部には、支持基板Sに洗浄液、たとえば有機溶剤を供給する洗浄液ノズル87が支持される。
アーム86は、ノズル駆動部861により、レール85上を移動自在である。これにより、洗浄液ノズル87は、カップ84の側方に設置された待機部88からカップ84内の支持基板Sの中心部上方まで移動することができ、さらに支持基板S上を支持基板Sの径方向に移動することができる。また、アーム86は、ノズル駆動部861によって昇降自在であり、これにより、洗浄液ノズル87の高さを調節することができる。
洗浄液ノズル87には、図15Aに示すように、洗浄液ノズル87に洗浄液を供給する供給管891が接続される。供給管891は、内部に洗浄液を貯留する洗浄液供給源892に連通している。供給管891には、洗浄液の流れを制御するバルブや流量調節部等を含む供給機器群893が設けられている。
第2洗浄装置80は、上記のように構成されており、制御装置60の制御に基づき、第3搬送装置50によって搬送された支持基板Sの洗浄処理(第2洗浄処理)を行う。
具体的には、剥離後の支持基板Sは、第3搬送装置50によって接合面Sjを上方に向けた状態で第2洗浄装置80のスピンチャック82に載置される。第2洗浄装置80は、スピンチャック82を用いて支持基板Sを吸着保持した後、スピンチャック82を所定の位置まで下降させる。つづいて、アーム86によって待機部88の洗浄液ノズル87を支持基板Sの中心部の上方まで移動させる。その後、スピンチャック82によって支持基板Sを回転させながら、洗浄液ノズル87から支持基板Sの接合面Sjに洗浄液を供給する。供給された洗浄液は遠心力により支持基板Sの接合面Sjの全面に拡散されて、接合面Sjが洗浄される。
洗浄後の支持基板Sは、第2搬送装置40によって第2洗浄装置80から搬出され、搬出ステーション24のカセットCsに収容される。
なお、スピンチャック82の下方には、支持基板Sを下方から支持し昇降させるための昇降ピン(図示せず)が設けられていてもよい。かかる場合、昇降ピンはスピンチャック82に形成された貫通孔(図示せず)を挿通し、スピンチャック82の上面から突出可能になっている。そして、スピンチャック82を昇降させる代わりに昇降ピンを昇降させて、スピンチャック82との間で支持基板Sの受け渡しが行われる。
また、第2洗浄装置80において、スピンチャック82の下方には、支持基板Sの裏面、すなわち非接合面Sn(図2参照)に向けて洗浄液を噴射するバックリンスノズル(図示せず)が設けられていてもよい。このバックリンスノズルから噴射される洗浄液によって、支持基板Sの非接合面Snと支持基板Sの外周部が洗浄される。
上述してきたように、第1の実施形態に係る剥離装置5は、第1保持部110と、第2保持部150とを備える。第1保持部110は、重合基板Tのうち被処理基板W(第1基板の一例)を吸着保持する。第2保持部150は、重合基板Tのうち支持基板S(第2基板の一例)を吸着保持する。また、第2保持部150は、支持基板Sの板面に接触する第1吸着パッド191および第2吸着パッド201を備える。そして、第1吸着パッド191および第2吸着パッド201は、パーフロロエラストマーで形成される。
したがって、第1の実施形態に係る剥離装置5によれば、被処理基板Wおよび支持基板Sの汚染を抑制することができる。
また、第1の実施形態に係る剥離装置5は、剥離誘引部170を備える。剥離誘引部170は、支持基板Sが被処理基板Wから剥がれるきっかけとなる剥離開始部位Mを重合基板Tの側面に形成する。そして、第1の実施形態に係る剥離装置5では、剥離誘引部170が、鋭利部材171と、重合基板Tの側面のうち、支持基板Sにおける被処理基板Wと支持基板Sとの接合部分である接着剤G寄りの側面に向けて鋭利部材171を移動させる移動機構172とを備える。したがって、第1の実施形態に係る剥離装置5によれば、剥離処理の効率化を図ることができる。また、鋭利部材171が被処理基板Wに接触して被処理基板Wが傷つく可能性も低下させることができる。
また、第1の実施形態に係る剥離装置5では、第2保持部150が、第1吸着移動部190と、第2吸着移動部200とを備える。第1吸着移動部190は、剥離開始部位Mに対応する支持基板Sの周縁部を吸着し、この周縁部を被処理基板Wの板面から離す方向へ移動させる。また、第2吸着移動部200は、支持基板Sの中央部を吸着し、この中央部を被処理基板Wの板面から離す方向へ移動させる。したがって、第1の実施形態に係る剥離装置5によれば、支持基板Sに大きな負荷をかけることなく、重合基板Tを支持基板Sと被処理基板Wとに剥離することができる。また、重合基板Tを短時間で剥離することができる。
ところで、第2保持部の構成は、第1の実施形態において示した構成に限定されない。そこで、以下では、第2保持部の変形例について図16Aおよび図16Bを参照して説明する。図16Aおよび図16Bは、第2保持部の変形例を示す模式平面図である。
上述した第1の実施形態では、第2吸着移動部200が支持基板Sの中央部を吸着保持する場合の例を示したが、第2吸着移動部200が吸着保持する領域は、支持基板Sの中央部よりもわずかに第1吸着移動部190の第1吸着パッド191寄りの領域であってもよい。
たとえば、図16Aに示すように、第2吸着パッド201Aは、その中心c1が支持基板Sの中心c2よりも第1吸着パッド191寄りに位置し、かつ、その吸着領域内に支持基板Sの中心c2が含まれる領域を吸着することとしてもよい。
このように、支持基板Sの中央部よりもわずかに第1吸着パッド191寄りの領域、すなわち、剥離の進行方向手前の領域を吸着して引っ張ることで、大きな引張力を必要とする支持基板Sの中央部を効率的に剥離することができる。
また、第2保持部は、第2吸着移動部を複数備える構成であってもよい。たとえば、図16Bに示すように、第2保持部は、第3吸着パッド211をさらに備える。第3吸着パッド211は、第1吸着パッド191と第2吸着パッド201との間に配置され、第1吸着パッド191および第2吸着パッド201と同様、支柱部材を介して移動機構に接続される。
このように、第2吸着移動部を複数備えることにより、第2吸着移動部が1つである場合と比較して重合基板Tをより短時間で剥離することができる。
なお、第3吸着パッド211の吸着面積は、剥離の進行方向の基端側に設けられる第1吸着パッド191よりも大きく、剥離の進行方向の先端側に設けられる第2吸着パッド201よりも小さい。すなわち、第1吸着パッド191、第2吸着パッド201および第3吸着パッド211は、剥離の進行方向の先端側に設けられるものほど吸着面積が大きく形成される。
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、剥離装置の他の構成について説明する。図17は、第2の実施形態に係る剥離装置の構成を示す模式側面図である。なお、以下の説明では、既に説明した部分と同様の部分については、既に説明した部分と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図17に示すように、第2の実施形態に係る剥離装置5Aは、第1の実施形態に係る剥離装置5が備える固定部材101、支柱102、第2保持部150、上側ベース部160に代えて、上側ベース部230と、第2保持部240と、局所移動部250と、移動機構260とを備える。
第2保持部240は、上側ベース部230によって上方から支持される。上側ベース部230は移動機構260に支持されており、移動機構260が上側ベース部230を鉛直方向に移動させることによって、第2保持部240は鉛直方向に昇降する。
第2保持部240は、後述する局所移動部250によって引っ張られた際に、その形状を柔軟に変化させることができるように、柔軟性を有する部材で形成される。ここで、第2保持部240の具体的な構成について図18Aおよび図18Bを参照して説明する。図18Aは、第2の実施形態に係る第2保持部240の構成を示す模式斜視図であり、図18Bは、吸着パッドの構成を示す模式平面図である。
図18Aに示すように、第2保持部240は、薄板状の本体部241と、本体部241の表面に貼り付けられた吸着パッド242とを備える。本体部241は、たとえば板バネなどの弾性部材で形成され、吸着パッド242は、樹脂部材で形成される。
本体部241は、重合基板Tと略同径の円盤部241aを有し、かかる円盤部241aの下面に吸着パッド242が貼り付けられる。
円盤部241aの外周部には、引張部241bが設けられており、かかる引張部241bの先端に、後述する局所移動部250のシリンダ252を取り付けるための取付部241b1が形成される。
吸着パッド242は、重合基板Tの吸着領域が形成された円盤状の樹脂部材である。具体的には、かかる吸着パッド242も、第1の実施形態に係る第1吸着パッド191および第2吸着パッド201と同様に、パーフロロエラストマーで形成される。したがって、第2の実施形態に係る剥離装置5Aも、被処理基板Wおよび支持基板Sの汚染を抑制することができる。吸着パッド242の吸着領域は、図18Bに示すように、中心から径方向に伸びる複数の直線L1,L2と複数の円弧a1〜a3とによって、複数の個別領域R1〜R4に分割される。
各個別領域R1〜R4には、吸気口243a〜243dがそれぞれ形成されており、各吸気口243a〜243dは、図17に示す吸気管243を介して真空ポンプなどの吸気装置244と接続される。第2保持部240は、吸気装置244の吸気によって各吸気口243a〜243dから重合基板Tを構成する支持基板Sを吸引することによって、支持基板Sを個別領域R1〜R4ごとに吸着保持する。
このように、吸着パッド242の吸着領域を複数の個別領域R1〜R4に分割し、個別領域R1〜R4ごとに支持基板Sを吸着保持することにより、たとえば一部の個別領域で空気漏れ等が生じた場合であっても、他の個別領域によって支持基板Sを適切に保持しておくことができる。
また、各個別領域R1〜R4は、剥離の進行方向の基端側に設けられる個別領域よりも進行方向の先端側に設けられる個別領域が大きく形成される。たとえば、個別領域R1〜R3は、剥離の進行方向に沿って個別領域R1、個別領域R2、個別領域R3の順に配置されており、個別領域R1よりも個別領域R2が大きく、個別領域R2よりも個別領域R3が大きく形成される。
吸着領域が小さくなるほど、その吸着領域における吸着力は大きくなるため、上記のように構成することにより、剥離の進行方向の基端側に配置される個別領域R1の吸着力を他の個別領域R2〜R4と比較して大きくすることができる。また、剥離の進行方向の基端側の領域は、被処理基板Wと支持基板Sとを剥離する際に最も大きな力が必要となる領域である。したがって、かかる領域の吸着力を高めることにより、被処理基板Wと支持基板Sとを確実に剥離させることができる。
また、各個別領域R1〜R4の吸気口243a〜243dを、剥離の進行方向に沿って並べて形成することで、剥離動作中に支持基板Sをより確実に保持しておくことができる。
図17に戻り、剥離装置5Aの構成についての説明を続ける。第2保持部240の上方には、上側ベース部230が第2保持部240と空隙を介して対向配置される。上側ベース部230の下面には複数の支持部材221が第2保持部240へ向けて突設される。かかる支持部材221と第2保持部240とが固定されることによって、第2保持部240は、上側ベース部230に支持された状態となる。
局所移動部250は、第2保持部240の周縁部の一部を第1保持部110から離す方向へ移動させる。具体的には、局所移動部250は、上側ベース部230に固定された本体部251と、基端部が本体部251に固定され、本体部251によって鉛直方向に沿って昇降するシリンダ252とを備える。シリンダ252の先端部は、第2保持部240の本体部241に設けられた引張部241bの取付部241b1(図18A参照)に固定される。
かかる局所移動部250は、本体部251を用いてシリンダ252を鉛直上方に移動させることにより、シリンダ252に固定された引張部241bを鉛直上方へ移動させる。これにより、第2保持部240に保持された支持基板Sの周縁部の一部が鉛直上方へ移動し、第2保持部240に保持された被処理基板Wから剥離される。
また、局所移動部250には、ロードセル253が設けられており、局所移動部250は、シリンダ252にかかる負荷をロードセル253によって検出することができる。局所移動部250は、ロードセル253による検出結果に基づいて、支持基板Sにかかる鉛直上向きの力を制御しながら、第2保持部240を引っ張ることができる。
上側ベース部230の上方には、移動機構260が配置される。移動機構260は、処理部100の天井部に固定された本体部261と、基端部が本体部261に固定されて鉛直方向に沿って昇降する駆動手段262とを備える。駆動手段262としては、たとえばモータやシリンダ等を用いることができる。駆動手段262の先端部は、上側ベース部230に固定される。
かかる移動機構260は、本体部261を用いて駆動手段262を鉛直上方に移動させることにより、駆動手段262に固定された上側ベース部230を鉛直方向に沿って移動させる。これにより、上側ベース部230に支持された第2保持部240および局所移動部250が昇降する。
上記のように構成された剥離装置5Aは、図11に示すステップS201〜S204までの処理を行った後、移動機構260を用いて第2保持部240を降下させる。これにより、第2保持部240が支持基板Sに当接する。その後、剥離装置5Aは、第2保持部240を用いて支持基板Sを吸着保持する。
つづいて、剥離装置5Aは、局所移動部250を用いて第2保持部240の周縁部の一部を引っ張る。具体的には、局所移動部250は、第2保持部240の本体部241に設けられた引張部241bをシリンダ252の動作によって鉛直上向きに移動させる。これにより、重合基板Tの周縁部が鉛直上向きに引っ張られて、支持基板Sが、その周縁部から中心部へ向けて被処理基板Wから連続的に剥離し始める。
ここで、上述したように、第2保持部240は、柔軟性を有する部材で形成されるため、局所移動部250が第2保持部240の引張部241bを鉛直上向きに引っ張った際に、かかる引っ張りに伴って柔軟に変形する。これにより、剥離装置5Aは、被処理基板Wに対して大きな負荷をかけることなく、支持基板Sを被処理基板Wから剥離させることができる。
そして、剥離装置5Aは、移動機構260を用いて第2保持部240を上昇させる。これにより、支持基板Sが被処理基板Wから剥離する。その後、剥離装置5Aは、剥離処理を終了する。
このように、第2の実施形態に係る剥離装置5Aは、第2保持部240が柔軟性を有する部材で形成される。したがって、被処理基板Wに対して大きな負荷をかけることなく、支持基板Sを被処理基板Wから剥離させることができる。
(第3の実施形態)
剥離装置は、鋭利部材171の高さ位置を計測する計測部をさらに備えていてもよい。以下では、かかる場合の例について説明する。図19は、計測部による計測処理の動作例を示す図である。
図19に示すように、第3の実施形態に係る剥離装置5Bは、第1の実施形態に係る剥離装置5が備える各構成要素に加え、計測部310をさらに備える。
計測部310は、たとえばレーザ変位計であり、たとえば上側ベース部230に設けられる。かかる計測部310は、所定の測定基準位置から第1保持部110の保持面までの距離または測定基準位置と第1保持部110の保持面との間に介在する物体までの距離を計測する。
計測部310による計測結果は、制御装置60(図1参照)へ送信される。制御装置60は、図示しない記憶部に、外部装置によって予め取得された重合基板Tの厚みに関する情報(以下、「事前厚み情報」と記載する)を記憶する。かかる事前厚み情報には、重合基板Tの厚み、被処理基板Wの厚み、支持基板Sの厚み、接着剤Gの厚みおよびダイシングテープPの厚みが含まれる。
制御装置60は、計測部310から取得した計測結果と、記憶部に記憶された事前厚み情報とに基づき、支持基板Sの接着剤G寄りの側面に鋭利部材171が当接するように鋭利部材171の高さ位置を決定する。そして、制御装置60は、決定した高さ位置に鋭利部材171の先端が位置するように位置調整部180を制御して剥離誘引部170を移動させる。
ここで、剥離誘引部170の位置調整処理の内容について具体的に説明する。まず、剥離装置5Bは、計測部310を用いて第1保持部110の保持面までの距離D1を計測する。このとき、剥離装置5Bには、重合基板Tが未だ搬入されていない状態である。
なお、図19に示す重合基板Tの厚みD4、被処理基板Wの厚みD4w、接着剤Gの厚みD4g、支持基板Sの厚みD4sおよびダイシングテープPの厚みD4pは、事前厚み情報として制御装置60の記憶部に記憶された情報である。
つづいて、剥離装置5Bは、重合基板TおよびダイシングフレームFを第1保持部110およびフレーム保持部120を用いて吸着保持した後、第1保持部110によって吸着保持された重合基板Tの上面すなわち支持基板Sの非接合面Snまでの距離D2を計測する。かかる計測結果は、制御装置60へ送信される。制御装置60は、計測部310の計測結果より算出される重合基板Tの厚み(D1−D2)と、事前厚み情報に含まれる重合基板Tの厚み(D4)との差が所定範囲内であるか否かを判定する。
ここで、計測部310の計測結果より算出される重合基板Tの厚み(D1−D2)と、事前厚み情報が示す厚み(D4)との誤差が所定範囲を超える場合には、たとえば本来搬入されるべき重合基板Tとは異なる重合基板Tが誤って搬入された可能性がある。このような場合には、支持基板Sの接着剤G寄りの側面に鋭利部材171を適切に当接させることができず、場合によっては、鋭利部材171が被処理基板Wに接触して被処理基板Wが損傷するおそれがある。
このため、計測部310の計測結果を用いて算出される重合基板Tの厚みと、事前厚み情報に含まれる重合基板Tの厚みとの誤差が所定範囲を超える場合には、剥離装置5Bは、その後の処理を中止する。
一方、事前厚み情報との誤差が所定範囲内である場合、制御装置60は、支持基板Sの接着剤G寄りの側面の範囲、すなわち、支持基板Sの厚みの半分の位置から接合面Sjまでの高さ範囲を事前厚み情報に基づいて算出する。具体的には、支持基板Sの接着剤G寄りの側面の範囲は、D2+D4s/2〜D2+D4sとなる。そして、制御装置60は、かかる高さ範囲内に鋭利部材171の高さ位置を決定する。
制御装置60によって剥離誘引部170の切り込み位置が決定されると、剥離装置5Bは、制御装置60の制御に基づき、位置調整部180を用いて剥離誘引部170を移動させることによって鋭利部材171の高さ位置を調整する。
このように、第3の実施形態に係る剥離装置5Bは、計測部310と、位置調整部180とを備える。計測部310は、所定の測定基準位置から第1保持部110の保持面までの距離または測定基準位置と第1保持部110の保持面との間に介在する物体までの距離を計測する。位置調整部180は、計測部310の計測結果と、予め取得された重合基板Tの厚みに関する情報とに基づいて、鋭利部材171の支持基板Sへの当接位置を調整する。これにより、支持基板Sの接着剤G寄りの側面に対して鋭利部材171を精度よく当接させることができる。
なお、剥離装置5Bは、計測部310を用いて鋭利部材171の損傷の有無を診断することとしてもよい。かかる場合、剥離装置5Bは、移動機構172を用いて鋭利部材171を水平方向へ移動させながら、計測部310を用いて鋭利部材171の上面までの距離を計測し、計測結果を制御装置60へ送信する。制御装置60は、たとえば鋭利部材171の上面までの距離の変化率が所定の範囲を超える場合、あるいは、新品の鋭利部材171を用いて予め計測しておいた基準距離との誤差が所定の範囲を超える場合に、鋭利部材171が損傷していると判定する。
鋭利部材171が損傷していると判定された場合、剥離装置5Bは、その後の処理を中止する。これにより、損傷した鋭利部材171を用いて剥離誘引処理を行うことで、支持基板Sの損傷や刃こぼれによるパーティクルの発生を未然に防ぐことができる。
ここでは、第1の実施形態に係る剥離装置5に対して計測部310を設けた場合の例を示したが、計測部310は、第2の実施形態に係る剥離装置5Aに設けることも可能である。
(第4の実施形態)
上述してきた各実施形態では、剥離対象となる重合基板が、被処理基板Wと支持基板Sとが接着剤Gによって接合された重合基板Tである場合の例について説明した。しかし、剥離装置の剥離対象となる重合基板は、この重合基板Tに限定されない。たとえば、上述してきた各実施形態の剥離装置では、SOI基板を生成するために、絶縁膜が形成されたドナー基板と被処理基板とが張り合わされた重合基板を剥離対象とすることも可能である。
ここで、SOI基板の製造方法について図20Aおよび図20Bを参照して説明する。図20Aおよび図20Bは、SOI基板の製造工程を示す模式図である。図20Aに示すように、SOI基板を形成するための重合基板Taは、ドナー基板Kとハンドル基板Hとを接合することによって形成される。
ドナー基板Kは、表面に絶縁膜6が形成されるとともに、ハンドル基板Hと接合する方の表面近傍の所定深さに水素イオン注入層7が形成された基板である。また、ハンドル基板Hとしては、たとえばシリコンウェハ、ガラス基板、サファイア基板等を用いることができる。
次に、SOI基板の剥離装置の構成について図21を参照して説明する。図21は、第4の実施形態に係る剥離装置の構成を示す模式側面図である。
図21に示すように、第4の実施形態に係る剥離装置5Cは、処理部400を備えており、処理部400の内部には、第1保持部410と、昇降機構420と、第2保持部430と、剥離誘引部170と、位置調整部180とが配置される。
第1保持部410は、重合基板Taのうちハンドル基板Hを下方から保持し、第2保持部430はドナー基板Kを保持する。そして、剥離誘引部170は、ドナー基板Kに形成された水素イオン注入層7に対して切り込みを入れる。
これにより、図20Bに示すように、水素イオン注入層7内のシリコン−シリコン結合が切断され、ドナー基板Kからシリコン層8が剥離する。その結果、ハンドル基板Hの上面に絶縁膜6とシリコン層8とが転写され、SOI基板Waが形成される。なお、第1保持部410でドナー基板Kを保持し、第2保持部430でハンドル基板Hを保持してもよい。
第1保持部410は、第1の実施形態に係る第1保持部110と同様、円盤状の本体部411と、本体部411を支持する支柱部材412とを備える。支柱部材412は、昇降機構420によって支持される。
本体部411の上面には、ハンドル基板Hに接触する吸着パッド411aが設けられる。この吸着パッド411aは、たとえば炭化ケイ素等の多孔質体や多孔質セラミックで形成される。
本体部411の内部には、吸着パッド411aを介して外部と連通する吸引空間411bが形成される。吸引空間411bは、吸気管413を介して真空ポンプなどの吸気装置414と接続される。
第1保持部410の上方には、第2保持部430が対向配置される。第2保持部430は、第1吸着部440と、第2吸着部450とを備える。第1吸着部440および第2吸着部450は、上側ベース部403に支持されており、上側ベース部403は、処理部400の天井部に取り付けられた固定部材401に支柱402を介して支持される。なお、剥離誘引部170および位置調整部180も上側ベース部403に支持される。
第1吸着部440は、ドナー基板Kの周縁部を吸着保持する。また、第2吸着部450は、ドナー基板Kの周縁部よりもドナー基板Kの中央部寄りの領域を吸着保持する。第1吸着部440および第2吸着部450は、それぞれ吸着パッド441,451と、吸着パッド441,451を支持する支柱部材442,452とを備える。
吸着パッド441,451には、吸気口(図示せず)が形成されており、それぞれの吸気口には、吸気管443,453を介して真空ポンプなどの吸気装置444,454が接続される。
これら吸着パッド441,451も、第1の実施形態に係る第1吸着パッド191および第2吸着パッド201と同様に、パーフロロエラストマーで形成される。したがって、第4の実施形態に係る剥離装置5Cによれば、ハンドル基板Hおよびドナー基板Kの汚染を抑制することができる。
このように、SOI基板Waの製造に用いられる剥離装置5Cにおいても、吸着パッド441,451をパーフロロエラストマーで形成してもよい。
(その他の実施形態)
上述してきた各実施形態では、第2保持部150,240,430の吸着パッド191,201,242,441,451の全てがパーフロロエラストマーで形成される場合の例について説明したが、吸着パッド191,201,242,441,451は、少なくとも表面がパーフロロエラストマーで形成されていればよい。たとえば、吸着パッド191,201,242,441,451は、従来の吸着パッドに用いられるゴム材料の表面をパーフロロエラストマーでコーティングしたものであってもよい。なお、長時間の使用によりコーティングが剥げるおそれがあるため、吸着パッド191,201,242,441,451は、全てがパーフロロエラストマーで形成されることが好ましい。
また、上述してきた各実施形態では、第1保持部110,410の吸着パッド111a,411aが、炭化ケイ素等の多孔質体や多孔質セラミックで形成される場合の例について説明したが、第1保持部110,410の吸着パッド111a,411aもパーフロロエラストマーで形成されてもよい。これにより、基板の汚染をより確実に抑制することができる。
また、第1保持部110,410や第2保持部150,240,430以外にも、たとえばフレーム保持部120が備える吸着パッド121(図6参照)をパーフロロエラストマーで形成してもよい。
また、上述した実施形態では、被処理基板Wと支持基板Sとを接着剤Gを用いて接合する場合の例について説明したが、接合面Wj,Sjを複数の領域に分け、領域ごとに異なる接着力の接着剤を塗布してもよい。
また、上述した実施形態では、第2保持部が、重合基板Tを上方から保持する場合の例を示したが、第2保持部は、重合基板Tを下方から保持してもよい。
また、上述した実施形態では、重合基板Tが、ダイシングフレームFに保持される場合の例について説明したが、重合基板Tは、必ずしもダイシングフレームFに保持されることを要しない。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。