以下、本発明の電子材料用基板について、図面を参照しながら、説明する。図1(A)は、本発明の一実施形態に係る電子材料用基板の断面図である。
本発明の一実施形態に係る電子材料用基板は、図1(A)に示すように、樹脂層10と、配線30とを備える。
樹脂層10は、脂環式オレフィン重合体および硬化剤を含有する硬化性樹脂組成物を用いて形成される。
また、配線30は、図2(A)に示す樹脂層10表面に、エキシマレーザーを照射することにより、図2(B)に示すように、樹脂層10を貫通しない凹部30aを形成し、凹部30a内に、導体を充填することにより形成される。
なお、図1(A)に示す例においては、樹脂層10及び配線30を、基板20上に形成する態様を例示したが、このような態様に特に限定されるものではない。
(硬化性樹脂組成物)
まず、樹脂層10を形成するための硬化性樹脂組成物について説明する。
硬化性樹脂組成物は、樹脂層10を形成するための組成物であり、脂環式オレフィン重合体および硬化剤を含有する、硬化性の樹脂組成物である。
脂環式オレフィン重合体としては、単量体単位の一部または全部に脂環式構造を有する重合体であればよく、特に限定されない。硬化性の樹脂として、脂環式オレフィン重合体を使用することにより、硬化性樹脂組成物から形成される硬化物の電気特性を良好なものとしながら、エキシマレーザーを照射し、これにより凹部30aを形成する際における加工性を良好なものとすることができる。
また、本発明で用いる脂環式オレフィン重合体としては、単量体単位の一部または全部に脂環式構造を有することに加えて、重合体分子中に少なくとも1つの極性基Aを有するものであることが好ましく、このような極性基Aを有することにより、極性基Aが硬化反応時に反応点として作用し、硬化性樹脂組成物から形成される硬化物の機械強度を高めることができる。
本発明で用いる脂環式オレフィン重合体を構成する脂環式構造としては、シクロアルカン構造やシクロアルケン構造などが挙げられるが、脂環式オレフィン重合体を含む硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の機械的強度や耐熱性などの観点からは、シクロアルカン構造が好ましい。また、脂環式構造としては、特に限定されないが、単環、多環、縮合多環、橋架け環、及び、これらを組合せてなる多環などが挙げられる。脂環式構造を構成する炭素原子数は特に限定されないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲であり、環式構造を構成する炭素原子数がこの範囲にある場合に、機械的強度、耐熱性、及び成形性の諸特性が高度にバランスされ好適である。
脂環式オレフィン重合体の脂環式構造は、炭素原子で形成される脂環構造を有するオレフィン単量体単位、すなわち、脂環式オレフィン単量体単位よりなる。脂環式オレフィン重合体は、脂環式オレフィン単量体単位の他、その他の単量体単位を含んでいてもよい。脂環式オレフィン重合体中の脂環式オレフィン単量体単位の割合は、特に限定されないが、通常30〜100質量%、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%である。脂環式オレフィン単量体単位の割合が30質量%以上であることで、得られる硬化物の耐熱性に優れる。脂環式オレフィン単量体単位以外の単量体単位としては、格別な限定はなく、目的に応じて適宜選択される。
極性基Aとしては、特に限定されないが、アルコール性ヒドロキシル基、フェノール性ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシル基、エポキシ基、グリシジル基、オキシカルボニル基、カルボニル基、アミノ基、エステル基、カルボン酸無水物基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。これらの中でも、得られる硬化物の機械的強度、耐熱性を優れたものとする観点から、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、フェノール性ヒドロキシル基、及び、エポキシ基からなる群から選択される基を少なくとも1つ含むことが好ましく、カルボキシル基またはカルボン酸無水物基を含むことがより好ましい。なお、脂環式オレフィン重合体は、極性基を1種含むものであってもよいし、あるいは、2種以上含有するものであってもよい。
また、脂環式オレフィン重合体が含有する極性基Aは、重合体の主鎖を構成する原子に直接結合していてもよいし、メチレン基、オキシ基、オキシカルボニルオキシアルキレン基、フェニレン基などの他の二価の基を介して結合してもよい。脂環式オレフィン重合体中の極性基Aを有する単量体単位の含有率は、特に制限されないが、脂環式オレフィン重合体を構成する全単量体単位100モル%中、4モル%以上が好ましく、8モル%以上がより好ましく、また、60モル%以下が好ましく、50モル%以下が好ましい。
また、本発明で用いる脂環式オレフィン重合体は、脂環式構造及び極性基Aに加え、芳香環を有していてもよい。脂環式オレフィン重合体として、極性基Aを有する芳香環含有脂環式オレフィン重合体を使用することにより、当該重合体の剛直さが増加し、硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の強度をより向上させることができる。
本発明で用いる脂環式オレフィン重合体を、脂環式構造に加えて、極性基Aを有するものとする場合には、本発明で用いる脂環式オレフィン重合体は、たとえば、以下の方法により得ることができる。すなわち、(1)極性基Aを有する脂環式オレフィンを、必要に応じて他の単量体を加えて、重合する方法、(2)極性基Aを有しない脂環式オレフィンを、極性基Aを有する単量体と共重合する方法、(3)極性基Aを有する芳香族オレフィンを、必要に応じて他の単量体を加えて、重合し、これにより得られる重合体の芳香環部分を水素化する方法、(4)極性基Aを有しない芳香族オレフィンを、極性基Aを有する単量体と共重合し、これにより得られる重合体の芳香環部分を水素化する方法、または、(5)極性基Aを有しない脂環式オレフィン重合体に極性基Aを有する化合物を変性反応により導入する方法、もしくは、(6)上述の(1)〜(5)のようにして得られる極性基(たとえばカルボン酸エステル基など)を有する脂環式オレフィン重合体の極性基を、たとえば加水分解することなどにより他の極性基A(たとえばカルボキシル基)に変換する方法、などにより得ることができる。これらのなかでも、脂環式オレフィン重合体に極性基Aを容易な反応条件で効率よく導入できるという観点から、(1)の方法によって得られる重合体が好適である。
また、脂環式オレフィン重合体を得る重合法は開環重合や付加重合が用いられるが、開環重合の場合には得られた開環重合体を水素添加することが好ましい。また、本発明で用いる脂環式オレフィン重合体を、脂環式構造に加えて、極性基A及び芳香環を有するものとする場合には、本発明で用いる脂環式オレフィン重合体は、たとえば(7)上述の(1)の方法の極性基Aを有する脂環式オレフィンとして、極性基Aを有する芳香環含有脂環式オレフィンを用いて重合する方法、(8)上述の(2)の方法の極性基Aを有しない脂環式オレフィンとして、極性基Aを有しない芳香環含有脂環式オレフィンを用いて重合する方法、により得ることができる。
極性基Aを有する脂環式オレフィンの例としては、特に限定されないが、5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシメチル−5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、9−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチル−9−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−カルボキシメチル−9−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、5−エキソ−6−エンド−ジヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、9−エキソ−10−エンド−ジヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、などのカルボキシル基を有する脂環式オレフィン;ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン−9,10−ジカルボン酸無水物、ヘキサシクロ[10.2.1.13,10.15,8.02,11.04,9]ヘプタデカ−6−エン−13,14−ジカルボン酸無水物、などのカルボン酸無水物基を有する脂環式オレフィン;9−メチル−9−メトキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、などのカルボン酸エステル基を有する脂環式オレフィン;(5−(4−ヒドロキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、9−(4−ヒドロキシフェニル)テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、N−(4−ヒドロキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミドなどのフェノール性ヒドロキシル基を有する脂環式オレフィン;5−エポキシエチルー2−ノルボルネン、9−エポキシエチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エンなどのエポキシ基を有する脂環式オレフィン、などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
極性基Aを有しない脂環式オレフィンの例としては、特に限定されないが、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−3,8−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、9−メチル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−エチル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−メチリデン−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−エチリデン−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−メトキシカルボニル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−ビニル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−プロペニル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−フェニル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン、シクロペンテン、シクロペンタジエンなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
極性基Aを有しない芳香族オレフィンの例としては、特に限定されないが、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。これらの具体例が前記極性基Aを有する場合、極性基Aを有する芳香族オレフィンの例として挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
極性基Aを有する芳香環含有脂環式オレフィンの例としては、特に限定されないが、フェノール性ヒドロキシル基を有する脂環式オレフィンや、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロジベンゾフラン、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロジベンゾチアジン、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロカルバゾール、1,4−メタノ−9−フェニル−1,4,4a,9a−テトラヒドロカルバゾール、4−カルボキシフェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン、N−(4−カルボキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミドなどが挙げられる。
極性基Aを有しない芳香環含有脂環式オレフィンの例としては、特に限定されないが、9−フェニル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エンや、5−(4−メチルフェニル−2−ノルボルネン、5−(1−ナフチル)−2−ノルボルネン、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン(MTF)、1,4−メタノ−1,4,4a,4b,5,8,8a,9a−オクタヒドロフルオレンなどが挙げられる。
極性基Aを有する単量体としては、特に限定されないが、極性基Aを有するエチレン性不飽和化合物が挙げられる。極性基Aを有するエチレン性不飽和化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸化合物;無水マレイン酸、ブテニル無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水シトラコン酸などの不飽和カルボン酸無水物;などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
極性基Aを有しない単量体としては、極性基Aを有しないエチレン性不飽和化合物が挙げられる。極性基Aを有しないエチレン性不飽和化合物の例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素数2〜20のエチレンまたはα−オレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
脂環式オレフィン重合体の重量平均分子量は、特に限定されないが、硬化して得られる硬化物の機械的強度を良好とするためには、500以上であることが好ましく、1,000以上であることがより好ましく、3,000以上であることが特に好ましく、また、硬化性樹脂組成物からなる樹脂層10を成形する際の作業性を良好とするためには、重量平均分子量は、1,000,000以下であることが好ましく、500,000以下であることがより好ましく、300,000以下であることが特に好ましい。なお、本発明において、重量平均分子量は、テトラヒドロフランを溶媒として使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量を指す。
脂環式オレフィン重合体を、開環重合法により得る場合の重合触媒としては、たとえば国際公開第2012/090980号に記載の従来公知のメタセシス重合触媒を用いることができる。メタセシス重合触媒としては、Mo,W,Nb,Ta,Ruなどの原子を含有してなる遷移金属化合物が例示され、なかでも、Mo,WまたはRuを含有する化合物は重合活性が高くて好ましい。特に好ましいメタセシス重合触媒の具体的な例としては、<1>ハロゲン基、イミド基、アルコキシ基、アリロキシ基またはカルボニル基を配位子として有する、モリブデンあるいはタングステン化合物を主触媒とし、有機金属化合物を第二成分とする触媒や、<2>Ruを中心金属とする金属カルベン錯体触媒を挙げることができる。なお、脂環式オレフィン重合体の重合は、特に限定されることなく、たとえば国際公開第2012/090980号に記載の方法を用いて行うことができる。
脂環式オレフィン重合体の分子量を調整する方法としては、ビニル化合物またはジエン化合物を適当量添加する方法を挙げることができる。分子量調整に用いるビニル化合物は、ビニル基を有する有機化合物であれば特に限定されないがたとえば国際公開第2012/090980号に記載の化合物を挙げることができる。ビニル化合物またはジエン化合物の添加量は、目的とする分子量に応じて、重合に用いる単量体に対して、0.1〜10モル%の間で任意に選択することができる。
脂環式オレフィン重合体を、付加重合法により得る場合の重合触媒としては、たとえば国際公開第2012/090980号に記載の、チタン、ジルコニウムまたはバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒が好適に用いられる。これらの重合触媒は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
脂環式オレフィン重合体として、開環重合体の水素添加物を用いる場合の、開環重合体に対する水素添加は、通常、水素添加触媒を用いて行われる。水素添加触媒は特に限定されず、オレフィン化合物の水素添加に際して一般的に使用されているものを適宜採用すればよい。水素添加触媒としては、たとえば、国際公開第2012/090980号に記載の公知の触媒を用いることが可能である。
水素添加反応は、通常、有機溶媒中で行う。有機溶媒は生成する水素添加物の溶解性により適宜選択することができ、上述した重合反応に用いる有機溶媒と同様の有機溶媒を使用することができる。したがって、重合反応後、有機溶媒を入れ替えることなく、そのまま水素添加触媒を添加して反応させることもできる。さらに、上述した重合反応に用いる有機溶媒の中でも、水素添加反応に際して反応しないという観点から、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、芳香族エーテル系溶媒が好ましく、芳香族エーテル系溶媒がより好ましい。なお、水素添加反応条件は、使用する水素添加触媒の種類に応じて適宜選択すればよく、たとえば、国際公開第2012/090980号に記載の条件を用いることができる。
脂環式オレフィン重合体は、重合や水素添加反応後の重合体溶液として使用しても、溶媒を除去した後に使用してもどちらでもよいが、硬化性樹脂組成物を調製する際に添加剤の溶解や分散が良好になるとともに、工程が簡素化できるため、重合体溶液として使用するのが好ましい。
硬化性樹脂組成物に含有される硬化剤としては、加熱等により、上述した脂環式オレフィン重合体に架橋構造を形成させることができる化合物であれば特に限定されず、一般の電気絶縁層形成用の樹脂組成物に配合される硬化剤を用いることができるが、たとえば、上述した脂環式オレフィン重合体として、極性基Aを有するものを用いる場合には、極性基Aとの反応性を有する官能基Xを一分子中に好ましくは2個以上有する多価エポキシ化合物を好適に用いることができる。
多価エポキシ化合物としては、たとえば、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、クレゾール型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ポリフェノール型エポキシ化合物、臭素化ビスフェノールA型エポキシ化合物、臭素化ビスフェノールF型エポキシ化合物、水素添加ビスフェノールA型エポキシ化合物等のグリシジルエーテル型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、が挙げられる。また、前記エポキシ化合物の骨格として脂環式オレフィン、芳香環、縮合芳香環やフルオレン構造などを有するものが挙げられる。これらのなかでも、硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の機械物性を良好なものとすることができるという点より、ビスフェノールA型エポキシ化合物や、脂環式オレフィン構造またはフルオレン構造を有するノボラック型エポキシ化合物が好ましい。さらに、硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の電気特性や耐熱性を良好とする点から、脂環式オレフィン構造を有するエポキシ化合物が特に好ましい。なお、これらは1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
脂環式オレフィン構造を有する多価エポキシ化合物としては、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂〔たとえば、商品名「エピクロン(登録商標)HP7200L、エピクロン(登録商標)HP7200、エピクロン(登録商標)HP7200H、エピクロン(登録商標)HP7200HH」(以上、DIC社製);商品名「Tactix(登録商標)558」(ハンツマン・アドバンスト・マテリアル社製);商品名「XD−1000−1L、XD−1000−2L」(以上、日本化薬社製)〕を挙げることができる。
硬化性樹脂組成物中における、硬化剤の配合量は、脂環式オレフィン重合体100重量部に対して、好ましくは、1〜100重量部、より好ましくは5〜80重量部、さらに好ましくは10〜50重量部の範囲である。硬化剤の配合量を上記範囲とすることにより、硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の機械的強度及び電気特性を特に良好なものとすることができる。
硬化性樹脂組成物は、体積平均粒子径が1μm以下の無機充填剤を含有していることが好ましい。かかる無機充填剤としては、たとえば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの水酸化物;酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタンなどの酸化物;塩化ナトリウム、塩化カルシウムなどの塩化物;硫酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウムなどの硫酸塩;硝酸ナトリウム、硝酸カルシウムなどの硝酸塩;リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素ナトリウムなどのリン酸塩;マイカ、カオリン、フライアッシュ、タルク、雲母などのケイ酸塩;チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウムなどのチタン酸塩;炭酸ナトリウム、炭酸カルシウムなどの炭酸塩;炭化ケイ素、炭化硼素などの炭化物;窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素などの窒化物;ガラス粉末;カーボンブラック;アルミニウムやニッケル、マグネシウム、銅、亜鉛、鉄などの金属粒子;Mn−Mg−Zn系、Ni−Zn系、Mn−Zn系等のフェライト;カルボニル鉄、鉄−珪素系合金、鉄−アルミニウム−珪素系合金、鉄−ニッケル系合金等の強磁性金属粉;などが例示される。
これらのなかでも、水酸化物、酸化物、チタン酸塩及び炭酸塩が好ましく、水酸化物では水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウム、酸化物では酸化ケイ素(シリカ)、チタン酸塩ではチタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム及びチタン酸カルシウム、炭酸塩では炭酸カルシウムがより好ましく、酸化ケイ素(シリカ)が耐熱性、電気特性などの観点で特に好ましい。これらの無機充填剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。また、これらの無機充填剤は、公知の、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等で表面処理したものを用いることが、硬化性樹脂組成物中の分散性に優れ、トレンチ形状や表面状態などの形成性に優れるため好ましい。
無機充填剤の体積平均粒子径は、1μm以下であればよいが、好ましくは0.05〜0.5μm、より好ましくは0.1〜0.3μmである。無機充填剤の体積平均粒子径が大きすぎると、配線を形成するためのトレンチ内の樹脂表面の凹凸が大きくなり、微細配線形成性や信頼性が低くなるおそれがある。なお、無機充填剤の体積平均粒子径は、レーザー回折散乱式粒度分布計にて測定される値である。
硬化性樹脂組成物中における、無機充填剤の配合量は、特に限定されるものではないが、固形分換算で、好ましくは10〜50重量%であり、より好ましくは15〜45重量%、さらに好ましくは20〜40重量%である。無機充填剤の配合量を上記範囲とすることにより、トレンチ形成性と耐熱性、機械特性、信頼性などをより向上させることができる。
また、本発明で用いる硬化性樹脂組成物には、上記成分以外に、ヒンダードフェノール化合物やヒンダードアミン化合物を含有することが好ましく、ヒンダードフェノール化合物およびヒンダードアミン化合物の両方を含有することがさらに好ましい。
ヒンダードフェノール化合物とは、ヒドロキシル基を有し、かつ、該ヒドロキシル基のβ位の炭素原子に水素原子を有さないヒンダード構造を分子内に少なくとも1つ有するフェノール化合物である。ヒンダードフェノール化合物の具体例としては、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、n−オクタデシル−3−(4′−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチル・フェニル)プロピオネート、テトラキス−〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタンなどが挙げられる。
硬化性樹脂組成物中にヒンダードフェノール化合物を配合する場合における、ヒンダードフェノール化合物の配合量は、特に限定されないが、脂環式オレフィン重合体100重量部に対して、好ましくは0.04〜10重量部、より好ましくは0.3〜5重量部、さらに好ましくは0.5〜3重量部の範囲である。ヒンダードフェノール化合物の配合量を上記範囲とすることにより、硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の機械的強度を良好とすることができる。
また、ヒンダードアミン化合物とは、4−位に2級アミンまたは3級アミンを有する2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン基を分子中に少なくとも一個有する化合物である。アルキルの炭素数としては、通常、1〜50である。ヒンダードアミン化合物としては、4−位に2級アミンまたは3級アミンを有する2,2,6,6−テトラメチルピペリジル基を分子中に少なくとも一個有する化合物が好ましい。
硬化性樹脂組成物中にヒンダードアミン化合物を配合する場合における、ヒンダードアミン化合物の配合量は、特に限定されないが、脂環式オレフィン重合体100重量部に対して、好ましくは0.02〜10重量部、より好ましくは0.2〜5重量部、さらに好ましくは0.25〜3重量部の範囲である。ヒンダードアミン化合物の配合量を上記範囲とすることにより、硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の機械的強度を良好とすることができる。
さらに、本発明で用いる硬化性樹脂組成物には、上記成分以外に、硬化促進剤を含有していてもよい。硬化促進剤としては、一般の電気絶縁膜形成用の樹脂組成物に配合される硬化促進剤を用いればよいが、たとえば、第2級アミン、第3級アミン、酸無水物、イミダゾール誘導体、有機酸ヒドラジド、ジシアンジアミド及びその誘導体、尿素誘導体などが挙げられる。硬化促進剤としては、硬化性樹脂組成物の保存安定性を高めるという観点から、イミダゾール誘導体が好ましい。
イミダゾール誘導体としては、イミダゾール骨格を有する化合物であればよく、特に限定されないが、たとえば、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、ビス−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−メチル−2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾールなどのアルキル置換イミダゾール化合物;2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−エチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、2−エチル−4−メチル−1−(2’−シアノエチル)イミダゾールなどのアリール基やアラルキル基などの環構造を含有する炭化水素基で置換されたイミダゾール化合物;などが挙げられる。これらは1種を単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
硬化性樹脂組成物中に硬化促進剤を配合する場合における、硬化促進剤の配合量は、使用目的に応じて適宜選択すればよいが、脂環式オレフィン重合体100重量部に対して、好ましくは0.001〜30重量部、より好ましくは0.01〜10重量部、さらに好ましくは0.03〜5重量部である。
また、本発明で用いる硬化性樹脂組成物は、上記成分以外に、難燃剤、難燃助剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、老化防止剤、紫外線吸収剤(レーザー加工性向上剤)、レベリング剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、天然油、合成油、ワックス、乳剤、磁性体、誘電特性調整剤、靭性剤などの公知の成分を適宜配合してもよい。これらの任意成分の配合割合は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択すればよい。
硬化性樹脂組成物の製造方法としては、特に限定されるものではなく、上記各成分を、そのまま混合してもよいし、有機溶剤に溶解若しくは分散させた状態で混合してもよいし、上記各成分の一部を有機溶剤に溶解若しくは分散させた状態の組成物を調製し、当該組成物に残りの成分を混合してもよい。
(電子材料用基板の製造方法)
次いで、本発明の電子材料用基板の製造方法について説明する。
まず、図2(A)に示すように、基板20の上に、上述した硬化性樹脂組成物からなる樹脂層10を形成する。
基板20としては、特に限定されないが、たとえば、電気絶縁層を有し、該電気絶縁層の一方の面あるいは両方の面に導体回路層が形成されてなるものが挙げられる。このような基板20の具体例としては、プリント配線基板、シリコンウェハー基板およびガラス基板などが挙げられる。基板20の厚みは、通常10μm〜2mm、好ましくは30μm〜1.6mm、より好ましくは50μm〜1mmである。
基板20としては、基板20を構成する電気絶縁層が、電気絶縁性を有する熱硬化性樹脂を主成分とするものが好ましく、このような熱硬化性樹脂としては、たとえば、脂環式オレフィン重合体、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、トリアジン樹脂、芳香族ポリエーテル重合体、シアネートエステル重合体、及びポリイミドなどが挙げられる。通常、これらの熱硬化性樹脂と硬化剤とを含有する硬化性組成物を硬化して電気絶縁層を得ることができる。また、基板20は、強度向上の観点から、ガラス繊維や樹脂繊維などを電気絶縁層に含有させたものであってもよい。基板20を構成する導電体回路層の材料は、通常、導電性金属が用いられる。
基板20上に、硬化性樹脂組成物を硬化してなる樹脂層10を形成する方法としては、特に限定されないが、たとえば、基板20上に、樹脂層10形成用の硬化性樹脂組成物を塗布・乾燥し、硬化させる方法や、別の支持体上に樹脂層10形成用の硬化性樹脂組成物を塗布・乾燥し、次いで、これを基板20上に積層した後に、硬化させる方法などが挙げられ、後者が基板上の硬化性樹脂の厚さを制御する観点で好ましい。
なお、硬化性樹脂組成物を塗布する際には、所望により有機溶剤を添加してもよく、さらには、硬化性樹脂組成物を塗布する方法に代えて、散布または流延する方法を採用してもよい。
上記方法において用いる支持体としては、樹脂フィルムや金属箔などが挙げられる。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリアリレートフィルム、ナイロンフィルムなどが挙げられる。これらのフィルムのうち、耐熱性、耐薬品性、剥離性などの観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリエチレンナフタレートフィルムが好ましい。金属箔としては、銅箔、アルミ箔、ニッケル箔、クロム箔、金箔、銀箔などが挙げられる。なお、支持体の表面平均粗さRaは、通常、300nm以下、好ましくは150nm以下、より好ましくは100nm以下である。
硬化性樹脂組成物を塗布する方法としては、ディップコート、ロールコート、カーテンコート、ダイコート、スリットコート、グラビアコートなどが挙げられる。
硬化性樹脂組成物を塗布した後、乾燥する際の乾燥温度は、硬化性樹脂組成物が硬化しない程度の温度とすることが好ましく、通常、20〜300℃、好ましくは30〜200℃である。また、乾燥時間は、通常、30秒間〜1時間、好ましくは1分間〜30分間である。
硬化性樹脂組成物の硬化は、硬化性樹脂組成物を加熱することにより行うことができる。硬化温度は、通常30〜400℃、好ましくは70〜300℃、より好ましくは100〜200℃である。また、硬化時間は、0.1〜5時間、好ましくは0.5〜3時間である。加熱の方法は特に制限されず、たとえば電気オーブンや熱プレスなどを用いて行えばよい。硬化は、複数回に分けて行ってもよい。
本発明においては、樹脂層10の厚みは、特に限定されないが、好ましくは1〜50μm、より好ましくは2.5〜30μm、さらに好ましくは4〜20μmである。
次いで、 図2(A)に示す樹脂層10及び基板20からなる積層体について、樹脂層10の表面に、エキシマレーザーを照射することにより、図2(B)に示すように、配線30を形成するための凹部30aを所定パターンにて形成する。なお、本発明においては、凹部30aは、図2(B)に示すように、樹脂層10を貫通しない態様、すなわち、凹部30aの底部が、樹脂層10内に位置するような態様にて形成する。
凹部30aを形成する方法としては、たとえば、形成する配線30のパターンに応じたマスクを使用し、樹脂層10の表面をマスクした状態にて、エキシマレーザーを照射する方法が挙げられる。本発明においては、凹部30aを形成する際に、エキシマレーザーを使用することにより、配線30を形成するための凹部30aを微細なパターンにて形成することができ、これにより微細配線化が可能となる。特に、本発明においては、樹脂層10を、脂環式オレフィン重合体および硬化剤を含有する硬化性樹脂組成物を用いて形成するものであり、これにより、樹脂層10を、エキシマレーザーによる加工性に優れたものとすることができるため、微細なパターンを形成した場合でも、凹部30aを良好に形成することができるものである。そして、これにより、後述するように、凹部30a内に導体を充填することにより、微細なパターンを有する配線30を形成した場合でも、優れた電気特性を有し、しかも、耐水性などの信頼性に優れた電子材料用基板を得ることができるものである。特に、本発明においては、微細配線化により、隣り合う配線30間の距離を小さくした場合でも、これら配線30間の絶縁信頼性を良好なものとすることができるものである。そして、これにより、微細配線化及び高密度化を可能とするものである。
エキシマレーザーのレーザー波長は、特に限定されないが、193nm、248nm、または308nmであることが好ましく、凹部40aをより高精度に形成できるという点から、308nm(XeCl)であることが特に好ましい。また、エキシマレーザーの照射条件としては、特に限定されず、形成する凹部40aに応じて使用するマスクパターン、レーザーエネルギー、レーザーパワー、フルエンス、ショット数などを適宜選択すればよい。
また、本発明においては、凹部30aを形成した後、あるいは、凹部30aを形成する前に、必要に応じて、図2(C)に示すようにビアホール40aを形成してもよい。ここで、図2(C)は、ビアホール40aの形成部分における断面を示す図である。ビアホール40aの形成方法としては、特に限定されないが、たとえば、エキシマレーザー、CO2レーザー、YAGレーザーなどのレーザーを用いた方法などが挙げられ、微細穴を形成する観点でエキシマレーザーやYAGレーザーが好ましい。また、この際におけるレーザーの照射条件も特に限定されず、適宜設定すればよい。
次いで、凹部30a、及び、必要に応じて形成したビアホール40aの側壁面に残留した炭化物を除去するデスミア処理を行う。このような炭化物の除去は、たとえば、プラズマを用いる方法、あるいは、薬液を用いる方法などが挙げられる。
プラズマを用いる方法においては、たとえば、窒素プラズマ、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ、四フッ化メタンプラズマ、もしくはこれらの混合ガスのプラズマを使用することができる。また、薬液を用いる方法においては、薬液として、たとえば、無機酸化性化合物や有機酸化性化合物などの酸化能を有する化合物を用いることができる。無機酸化性化合物としては、過マンガン酸塩、無水クロム酸、重クロム酸塩、クロム酸塩、過硫酸塩、活性二酸化マンガン、四酸化オスミウム、過酸化水素、過よう素酸塩などが挙げられる。有機酸化性化合物としてはジクミルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、m−クロロ過安息香酸、過酢酸、オゾンなどが挙げられる。
次いで、デスミア処理を行った後に、凹部30a、及び、必要に応じて形成したビアホール40aの内部に、図1(A)、図1(B)に示すように、配線30及び貫通導体40を形成する。配線30及び貫通導体40の形成方法は、特に限定されず、スパッタや導電性物質の充填などによる乾式手法や、無電解めっきおよび電解めっきなどの湿式手法などが挙げられるが、樹脂層10との密着性に優れるものとすることができるという点より、無電解めっき法により行なうことが好ましい。なお、図1(B)は、本発明の一実施形態に係る電子材料用基板の断面を示す図であり、具体的には、貫通導体40が形成された部分を示す図である。
たとえば、無電解めっき法により配線30及び貫通導体40を形成する際においては、まず、金属薄膜を樹脂層10の表面に形成させる前に、樹脂層10上に、銀、パラジウム、亜鉛、コバルトなどの触媒核を付着させるのが一般的である。触媒核を樹脂層10に付着させる方法は特に制限されず、たとえば、銀、パラジウム、亜鉛、コバルトなどの金属化合物やこれらの塩や錯体を、水またはアルコールもしくはクロロホルムなどの有機溶剤に0.001〜10質量%の濃度で溶解した液(必要に応じて酸、アルカリ、錯化剤、還元剤などを含有していてもよい。)に浸漬した後、金属を還元する方法などが挙げられる。
無電解めっき法に用いる無電解めっき液としては、公知の自己触媒型の無電解めっき液を用いればよく、めっき液中に含まれる金属種、還元剤種、錯化剤種、水素イオン濃度、溶存酸素濃度などは特に限定されない。
金属薄膜を形成した後、基板表面を防錆剤と接触させて防錆処理を施すことができる。また、金属薄膜を形成した後、密着性向上などのため、金属薄膜を加熱することもできる。加熱温度は、通常、50〜350℃、好ましくは80〜250℃である。なお、この際において、加熱は加圧条件下で実施してもよい。このときの加圧方法としては、たとえば、熱プレス機、加圧加熱ロール機などの物理的加圧手段を用いる方法が挙げられる。加える圧力は、通常、0.1〜20MPa、好ましくは0.5〜10MPaである。この範囲であれば、金属薄膜と樹脂層10との高い密着性が確保できる。
このようにして形成された金属薄膜上にめっき用レジストパターンを形成し、さらに電解めっきなどの湿式めっきによりめっきを成長させ(厚付けめっき)、次いで、レジストを除去し、さらにエッチングにより金属薄膜をエッチングして配線30及び貫通導体40を形成する。従って、この方法により形成される配線30及び貫通導体40は、通常、パターン状の金属薄膜と、その上に成長させためっきとからなる。
なお、本発明においては、このようにして得られた樹脂層10、基板20、配線30及び貫通導体40を備える電子材料用基板上に、さらに、上記と同様にして、樹脂層10、基板20、配線30及び貫通導体40を形成することで、多層基板とすることもできる。あるいは、上記説明においては、基板20の一方の面にのみ、樹脂層10、基板20、配線30及び貫通導体40を形成する態様を例示したが、基板20の他方の面にも同様に形成してもよい。また、上記説明においては、本発明を、図1に示す一実施形態に係る電子材料用基板を例示して説明したが、本発明は、このような態様に特に限定されるものではない。
たとえば、図3(A)、図3(B)に示すように、電子材料用基板を構成する電気絶縁層を、上述した樹脂層10と、追加樹脂層50との2層で形成するような構成としてもよい。ここで、図3(A)は、本発明の他の実施形態に係る電子材料用基板を示す断面図であり、また、図3(B)は、このような電子材料用基板のうち、貫通電極40が形成されている部分を示す断面図である。
追加樹脂層50は、たとえば、追加樹脂層用硬化性樹脂組成物を用いて形成することができる。追加樹脂層用硬化性樹脂組成物としては、特に限定されないが、樹脂層10とは異なる熱硬化性樹脂を含有する硬化性の樹脂組成物であることが好まし。
追加樹脂層用硬化性樹脂組成物を構成する熱硬化性樹脂としては、樹脂層10を構成する樹脂と異なる樹脂であればよく特に限定されないが、たとえば、エポキシ樹脂、マレイミドトリアジン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、脂環式オレフィン重合体、芳香族ポリエーテル重合体、ベンゾシクロブテン重合体、シアネ−トエステル樹脂、及びポリイミドなどを挙げることができる。これらの熱硬化性樹脂は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ基を含有するもの(すなわち、エポキシ樹脂)が好ましく、架橋密度を増加させて樹脂強度を向上させる観点から、少なくとも2つのエポキシ基を有するもの(多価エポキシ化合物)がより好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とはメタクリルまたはアクリルを意味する。
追加樹脂層用硬化性樹脂組成物を構成する熱硬化性樹脂として好適に用いることができる多価エポキシ化合物としては、たとえば、フェノールノボラック型エポキシ化合物やクレゾールノボラック型エポキシ化合物が挙げられ、その骨格としては脂環式オレフィン構造を有する化合物を挙げることができる。少なくとも2つのエポキシ基を含有する脂環式オレフィン構造を有する化合物としては、たとえば、商品名「EPICLON(登録商標) HP7200L」、「EPICLON HP7200」、「EPICLON HP7200H」、「EPICLON HP7200HH」(以上、DIC社製);商品名「Tactix(登録商標)558」(ハンツマン・アドバンスト・マテリアル社製);商品名「XD−1000−1L」、「XD−1000−2L」(以上、日本化薬社製)などのジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂が挙げられる。
また、追加樹脂層用硬化性樹脂組成物は、上述した熱硬化性樹脂に加えて、必要に応じて硬化剤を含有していてもよい。硬化剤は、使用する熱硬化性樹脂の種類に応じて適宜公知のものを選択して使用すればよく、すなわち、熱硬化性樹脂と反応性を有する基を含有するものを使用すればよい。以下、熱硬化性樹脂として、多価エポキシ化合物を用いる場合を例示して、好適な硬化剤について説明する。ここで多価エポキシ化合物とは、少なくとも2つのエポキシ基を有するものであればよく特に限定されない。
多価エポキシ化合物に対して用いる硬化剤としては、多価エポキシ化合物を硬化させることができれば特に限定されず、たとえば、エポキシ基と反応する基を有する脂環式オレフィン重合体、ジシアンジアミド、アミン化合物、アミン化合物から合成される化合物、ヒドラジド化合物、メラミン化合物、酸無水物、フェノール化合物(フェノール硬化剤)、活性エステル化合物、ベンゾオキサジン化合物、マレイミド化合物、熱潜在性カチオン重合触媒、光潜在性カチオン重合開始剤またはシアネート樹脂等が挙げられる。これらの硬化剤の誘導体を用いてもよい。硬化剤は、1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。また、硬化剤とともに、アセチルアセトン鉄等の硬化触媒を用いてもよい。上述のアミン化合物、アミン化合物から合成される化合物、ヒドラジド化合物、メラミン化合物、酸無水物としては、たとえば、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、フェノール化合物としては、たとえば国際公開第2010/035451号に記載のものを用いることができる。
これら多価エポキシ化合物に対して用いる硬化剤のなかでも、フェノール樹脂や活性エステル化合物が好ましく、電気特性や耐水性の観点から、活性エステル化合物がより好ましい。
また、上記活性エステル化合物は、活性エステル基を有するものであれば特に限定されないが、分子内に少なくとも2つの活性エステル基を有する化合物が好ましい。活性エステル化合物としては、耐熱性等の観点から、カルボン酸化合物及び/またはチオカルボン酸化合物と、ヒドロキシ化合物及び/またはチオール化合物とを反応させて得られる活性エステル化合物が好ましく、カルボン酸化合物と、フェノール化合物、ナフトール化合物及びチオール化合物からなる群から選択される1種または2種以上とを反応させて得られる活性エステル化合物がより好ましく、カルボン酸化合物とフェノール性ヒドロキシル基を有する芳香族化合物とを反応させて得られ、かつ、分子内に少なくとも2つの活性エステル基を有する芳香族化合物が特に好ましい。活性エステル化合物は、直鎖状であっても多分岐状であってもよい。活性エステル化合物が、少なくとも2つのカルボン酸を分子内に有する化合物に由来する場合を例示すると、このような少なくとも2つのカルボン酸を分子内に有する化合物が、脂肪族鎖を含む場合には、エポキシ樹脂との相溶性を高くすることができ、また、芳香族環を有する場合には、得られる硬化物の耐熱性を高くすることができる。
活性エステル化合物を形成するためのカルボン酸化合物、フェノール化合物、ナフトール化合物、チオール化合物としては、特開2012−153885号公報に記載のものを用いることができる。
ここで、活性エステル化合物としては、たとえば、特開2002−12650号公報に記載されている活性エステル基を持つ芳香族化合物及び特開2004−277460号公報に記載されている多官能性ポリエステル、あるいは、市販のものを用いることができる。市販されている活性エステル化合物としては、たとえば、商品名「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「EPICLON HPC−8000−65T」(以上、DIC社製)、商品名「DC808」(三菱化学社製)、商品名「YLH1026」(三菱化学社製)などが挙げられる。
活性エステル化合物の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造ができるが、たとえば、カルボン酸化合物及び/またはチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/またはチオール化合物との縮合反応によって得ることができる。
追加樹脂層用硬化性樹脂組成物中に硬化剤を配合する場合における、硬化剤の配合量は、特に限定されないが、多価エポキシ化合物100重量部に対して、好ましくは20〜120重量部、より好ましくは40〜100重量部、さらに好ましくは50〜90重量部の範囲である。また、硬化剤として活性エステル化合物を使用する場合を例示すると、多価エポキシ化合物及び活性エステル化合物等を含む追加樹脂層用硬化性樹脂組成物中、多価エポキシ化合物由来のエポキシ基と、活性エステル化合物由来の活性エステル基との比率は、「エポキシ基/活性エステル基」の当量比で、好ましくは0.5〜1.25、より好ましくは0.7〜1.1、さらに好ましくは0.8〜1.05である。活性エステル化合物の配合量を上記範囲とすることにより、硬化物としての電気特性、及び耐熱性を向上させ、熱膨張率を小さく抑えることができる。
また、本発明で用いる追加樹脂層用樹脂組成物には、これらの特性のバランスを損なわない範囲で、フェノールノボラック樹脂などのほかのエポキシ硬化剤を併用することができる。
また、本発明で用いる追加樹脂層用樹脂組成物には、必要に応じて無機充填剤を含有させてもよい。無機充填剤としては、前述した樹脂層10を形成するための硬化性樹脂組成物に用いられる無機充填剤と同様のものを用いることができる。
追加樹脂層用硬化性樹脂組成物中に含有させる無機充填剤の体積平均粒子径は、好ましくは0.1〜1.0μm、より好ましくは0.2〜0.6μmである。無機充填剤の体積平均粒子径を上記範囲とすることにより、機械強度、耐熱性(熱膨張)や貫通穴形成の場合のレーザー穴開け性などのバランスをより向上させることができる。なお、無機充填剤の体積平均粒子径は、レーザー回折散乱式粒度分布計にて測定される値である。
追加樹脂層用硬化性樹脂組成物中における、無機充填剤の配合量は、特に限定されるものではないが、固形分換算で、好ましくは50〜90重量%であり、より好ましくは60〜80重量%、さらに好ましくは65〜75重量%である。無機充填剤の配合量を上記範囲とすることにより、耐熱性や信頼性をより向上させることができる。
また、本発明で用いる追加樹脂層用硬化性樹脂組成物には、上記成分以外に、上述した樹脂層10を形成するための硬化性樹脂組成物と同様に、硬化促進剤、難燃剤、難燃助剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、老化防止剤、紫外線吸収剤(レーザー加工性向上剤)、レベリング剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、天然油、合成油、ワックス、乳剤、磁性体、誘電特性調整剤、靭性剤などの任意成分を適宜配合してもよい。
本発明で用いる追加樹脂層用硬化性樹脂組成物の製造方法としては、特に限定されるものではなく、上記各成分を、そのまま混合してもよいし、有機溶剤に溶解もしくは分散させた状態で混合してもよいし、上記各成分の一部を有機溶剤に溶解もしくは分散させた状態の組成物を調製し、当該組成物に残りの成分を混合してもよい。
図3(A)、図3(B)に示すように、電子材料用基板を構成する電気絶縁層を、上述した樹脂層10と、追加樹脂層50との2層で形成するような構成とする場合における、電子材料用基板の製造方法としては、特に限定されないが、基板20の上に、追加樹脂層用硬化性樹脂組成物からなる追加樹脂層50及び硬化性樹脂組成物からなる樹脂層10をこの順に形成し、積層体を得た後、得られた積層体について、上記と同様にして、凹部30a(及び必要に応じてビアホール40a)の形成、及び配線30(及び必要に応じて貫通導体40)の形成を行う方法が挙げられる。
基板20上に、追加樹脂層用硬化性樹脂組成物からなる追加樹脂層50及び硬化性樹脂組成物からなる樹脂層10を形成する方法としては、特に限定されないが、たとえば以下の方法が挙げられる。すなわち、(A)基板20上に、追加樹脂層50形成用の追加樹脂層用硬化性樹脂組成物を塗布・乾燥し、次いで、この上に、樹脂層10形成用の硬化性樹脂組成物を塗布・乾燥し、硬化させる方法;(B)基板20上に、追加樹脂層50形成用の追加樹脂層用硬化性樹脂組成物を塗布・乾燥し、次いで、この上に、別の支持体上に樹脂層10形成用の硬化性樹脂組成物を塗布・乾燥したものを積層し、硬化させる方法;(C)別の支持体上に追加樹脂層50形成用の追加樹脂層用硬化性樹脂組成物を塗布・乾燥し、これを基板20上に積層し、次いで、この上に、樹脂層10形成用の硬化性樹脂組成物を塗布・乾燥し、硬化させる方法;(D)別の支持体上に追加樹脂層50形成用の追加樹脂層用硬化性樹脂組成物を塗布・乾燥し、これを基板20上に積層し、次いで、この上に、さらに別の支持体上に樹脂層10形成用の硬化性樹脂組成物を塗布・乾燥したものを積層し、硬化させる方法;(E)別の支持体上に樹脂層10形成用の硬化性樹脂組成物を塗布・乾燥し、次いで、この上に、追加樹脂層50形成用の追加樹脂層用硬化性樹脂組成物を塗布・乾燥することで積層体を得て、これを基板20上に積層した後に、硬化させる方法;(F)別の支持体上に樹脂層10形成用の硬化性樹脂組成物を塗布・乾燥し、次いで、この上に、さらに別の支持体上に追加樹脂層50形成用の追加樹脂層用硬化性樹脂組成物を塗布・乾燥したものを積層することで積層体を得て、これを基板20上に積層した後に、硬化させる方法;などが挙げられる。なかでも作業工程が煩雑でなく、厚さ制御が容易であるとの観点で、(E)の方法が好ましい。
このようにして得られる本発明の電子材料用基板は、上述したように、脂環式オレフィン重合体および硬化剤を含有する硬化性樹脂組成物を用いて形成される樹脂層10を備えるものとし、このような樹脂層10表面にエキシマレーザーを照射することにより、樹脂層10を貫通しない凹部30aを形成し、該凹部30a内に導体を充填することにより配線30を形成してなるものである。特に、本発明によれば、樹脂層10を、脂環式オレフィン重合体および硬化剤を含有する硬化性樹脂組成物を用いて形成するものであるため、配線を形成するための凹部30aをエキシマレーザーにより、微細パターンにて形成する際における、エキシマレーザーによる加工性に優れるものであるため、このような凹部30aを良好に形成することでき、ひいては凹部30a内に形成する配線30も良好に形成することができるものである。そのため、本発明によれば、エキシマレーザーを用いることにより、微細な配線パターンを形成可能であり、これにより、薄膜化、及び微細配線化が可能であり、しかも微細配線化した場合でも、優れた電気特性を有し、かつ、耐水性などの信頼性に優れた電子材料用基板を得ることができる。
そして、このようにして得られる本発明の電子材料用基板は、その特性を活かし、携帯電話機、PHS、ノート型パソコン、PDA(携帯情報端末)、携帯テレビ電話機、パーソナルコンピューター、スーパーコンピューター、サーバー、ルーター、液晶プロジェクタ、エンジニアリング・ワークステーション(EWS)、ページャ、ワードプロセッサ、テレビ、ビューファインダ型またはモニタ直視型のビデオテープレコーダ、電子手帳、電子卓上計算機、カーナビゲーション装置、POS端末、タッチパネルを備えた装置などの各種電子機器に好適に用いることができる。
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
(極性基含有脂環式オレフィン重合体の合成例1)
重合1段目として5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(EdNB)35モル部、1−ヘキセン0.9モル部、アニソール340モル部及び4−アセトキシベンジリデン(ジクロロ)(4,5−ジブロモ−1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(C1063、和光純薬社製)0.005モル部を、窒素置換した耐圧ガラス反応器に仕込み、攪拌下に80℃で30分間の重合反応を行ってノルボルネン系開環重合体の溶液を得た。
次いで、重合2段目として重合1段目に得た溶液中にテトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン(MTF)35モル部、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物(NDCA)30モル部、アニソール250モル部及びC1063 0.01モル部を追加し、攪拌下に80℃で1.5時間の重合反応を行ってノルボルネン系開環重合体の溶液を得た。この溶液について、ガスクロマトグラフィーを測定したところ、実質的に単量体が残留していないことが確認され、重合転化率は99%以上であった。
次いで、窒素置換した攪拌機付きオートクレーブに、得られた開環重合体の溶液を仕込み、C1063 0.03モル部を追加し、150℃、水素圧7MPaで、5時間攪拌させて水素添加反応を行って、ノルボルネン系開環重合体の水素添加物である脂環式オレフィン重合体(P−1)の溶液を得た。得られた重合体(P−1)の重量平均分子量は60,000、数平均分子量は30,000、分子量分布は2であった。また、水素添加率は95%であり、カルボン酸無水物基を有する単量体単位の含有率は30モル%であった。重合体(P−1)の溶液の固形分濃度は20質量%であった。
(硬化性樹脂組成物の調製)
合成例1で得られた脂環式オレフィン重合体(P−1)の溶液500重量部(重合体(P−1)固形分として100重量部)、及び硬化剤としてのジシクロペンタジエン骨格エポキシ樹脂(EPICLON HP−7200L、DIC社製、エポキシ当量250g/eq)32重量部(エポキシ化合物固形分として32重量部)、無機充填剤としての球状シリカ(アドマファイン(登録商標)SO−C1のアミノシランカップリング剤処理品、アドマテックス社製、体積平均粒径0.25μm)40重量部、レーザー加工性向上剤として2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール1重量部、老化防止剤としてトリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート(IRGANOX(登録商標)3114、BASF社製)1重量部、老化防止剤としてテトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート(アデカスタブ(登録商標)LA52、ADEKA社製)0.5重量部を混合し高圧ホモジナイザーで分散処理した。さらに、これに、硬化促進剤として1−べンジル−2−フェニルイミダゾールをアニソールに50%溶解した溶液1重量部を混合、攪拌機で5分間攪拌して樹脂層10形成用(図3(A)参照)の硬化性樹脂組成物のワニスを得た。
(追加樹脂層用硬化性樹脂組成物の調製)
熱硬化性樹脂としてのジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(EPICLON HP7200HH、DIC社製、エポキシ基当量280g/eq)100重量部、硬化剤としての活性エステル化合物(EPICLON HPC−8000−65T、不揮発分65質量%のトルエン溶液、DIC社製、活性エステル基当量223g/eq)121重量部(活性エステル化合物79重量部)、無機充填剤としてのシリカ(SC2500−SXJ、平均粒径0.5μm、アミノシランカップリング剤表面処理、アドマテックス社製)352重量部、老化防止剤としてのヒンダードフェノール系酸化防止剤(IRGANOX3114、BASF社製)1重量部、及びアニソール110重量部を混合し、高圧ホモジナイザーで分散処理した。さらにこれに、硬化促進剤として1−べンジル−2−フェニルイミダゾールをアニソールに50質量%溶解した溶液を5.4重量部(硬化促進剤2.7重量部)混合し、攪拌機で5分間攪拌して追加樹脂層50形成用(図3(A)参照)の追加樹脂層用硬化性樹脂組成物のワニスを得た。
(支持体付きフィルム成形体の作製)
上記にて得られた樹脂層10形成用の硬化性樹脂組成物のワニスを、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)上にワイヤーバーを用いて塗布し、次いで、窒素雰囲気下、85℃で5分間乾燥させて、未硬化の硬化性樹脂組成物からなる、樹脂層10形成用成形体(厚み15μm)が形成された支持体付きフィルム成形体の中間体を得た。
次いで、得られた支持体付きフィルム成形体の中間体における樹脂層10形成用成形体の表面に、上記にて得られた追加樹脂層50用の追加樹脂層用硬化性樹脂組成物のワニスを、ドクターブレード(テスター産業社製)とオートフィルムアプリケーター(テスター産業社製)を用いて塗布し、次いで、窒素雰囲気下、80℃で10分間乾燥させて、総厚みが30μmである積層体(樹脂層10形成用成形体と、追加樹脂層50形成用成形体との積層体)が形成された支持体付きフィルム成形体を得た。当該支持体付きフィルム成形体は、支持体、樹脂層10形成用成形体、及び追加樹脂層50形成用成形体の順で形成されている。
(積層体の形成)
次いで、両面導体層付きコア基板(樹脂層:ハロゲンフリー樹脂基板、厚さ0.4mm、導体層:銅箔、厚み18μm、メック社製フラットボンドで表面処理)の両面に、上記にて得られた支持体付きフィルム成形体を125mm角に切断したものを、追加樹脂層50形成用成形体側の面がコア基板側となるようにして貼り合わせた後、一次プレスを行った。一次プレスは、耐熱ゴム製プレス板を上下に備えた真空ラミネータにて、200Paの減圧下、温度110℃、圧力0.1MPaで90秒間の加熱圧着である。さらに、金属製プレス板を上下に備えた油圧プレス装置を用いて、圧着温度110℃、圧力1MPaで90秒間、加熱圧着した。次いで支持体を剥がすことにより、コア基板と積層体からなる複合体を得た。次いで、得られた複合体を空気雰囲気下、180℃で60分間放置して、前記積層体における各硬化性樹脂組成物からなる層をそれぞれ硬化させて、コア基板上に積層体の硬化物を有する硬化複合体を得た。すなわち、硬化性樹脂組成物からなる樹脂層10、及び追加樹脂層用硬化性樹脂組成物からなる追加樹脂層50が、コア基板の両面に形成された硬化複合体を得た。
(エキシマレーザーによる加工)
そして、上記にて得られた硬化複合体の樹脂層10の表面に、マスクを介して、308nm(XeCl)の波長を有するエキシマレーザーを照射することにより、樹脂層10を貫通しない深さ(深さ10μm)にて、幅10μmのトレンチを形成した。なお、エキシマレーザーによる加工は、エキシマレーザーの照射条件を、周波数:200Hz、パワー:133Wとし、フルエンス800mJ/cm2、15ショットで行なった。
(膨潤処理工程)
そして、上記にて作製したトレンチを形成した硬化複合体を、膨潤液(「スウェリング ディップ セキュリガント P」、アトテック社製、「セキュリガント」は登録商標)500mL/L、水酸化ナトリウム3g/Lになるように調製した60℃の水溶液に15分間揺動浸漬した後、水洗した。
(酸化処理工程)
次いで、過マンガン酸塩の水溶液(「コンセントレート コンパクト CP」、アトテック社製)640mL/L、水酸化ナトリウム濃度40g/Lになるように調製した80℃の水溶液に、膨潤処理を行なった複合体を15分間揺動浸漬をした後、水洗した。
(中和還元処理工程)
続いて、硫酸ヒドロキシアミン水溶液(「リダクション セキュリガント P500」、アトテック社製、「セキュリガント」は登録商標)100mL/L、硫酸35mL/Lになるように調製した40℃の水溶液に、酸化処理を行なった複合体を5分間揺動浸漬し、中和還元処理をした後、水洗した。
(クリーナー・コンディショナー工程)
次いで、クリーナー・コンディショナー水溶液(「アルカップ MCC−6−A」、上村工業社製、「アルカップ」は登録商標)を濃度50ml/Lとなるよう調製した50℃の水溶液に、中和還元処理を行なった複合体を5分間揺動浸漬し、クリーナー・コンディショナー処理を行った。次いで40℃の水洗水に複合体を1分間揺動浸漬した後、水洗した。
(ソフトエッチング処理工程)
次いで、硫酸濃度20g/L、過硫酸ナトリウム100g/Lとなるように調製した水溶液に、クリーナー・コンディショナー処理を行った複合体を、室温にて2分間揺動浸漬しソフトエッチング処理を行った後、水洗した。
(酸洗処理工程)
次いで、硫酸濃度100g/Lなるよう調製した水溶液に、ソフトエッチング処理を行なった複合体を、室温にて1分間揺動浸漬し酸洗処理を行った後、水洗した。
(触媒付与工程)
次いで、アルカップ アクチベータ MAT−1−A(商品名、上村工業社製、「アルカップ」は登録商標)が200mL/L、アルカップ アクチベータ MAT−1−B(上商品名、村工業社製、「アルカップ」は登録商標)が30mL/L、水酸化ナトリウムが0.35g/Lになるように調製した60℃のPd塩含有めっき触媒水溶液に、酸洗処理を行なった複合体を5分間揺動浸漬した後、水洗した。
(活性化工程)
続いて、アルカップ レデューサ− MAB−4−A(商品名、上村工業社製、「アルカップ」は登録商標)が20mL/L、アルカップ レデューサ− MAB−4−B(商品名、上村工業社製、「アルカップ」は登録商標)が200mL/Lになるように調製した水溶液に、触媒付与処理を行なった積層体を35℃で、3分間揺動浸漬し、めっき触媒を還元処理した後、水洗した。
(アクセレレータ処理工程)
次いで、アルカップ アクセレレーター MEL−3−A(商品名、上村工業社製、「アルカップ」は登録商標)が50mL/Lになるように調製した水溶液に、活性化処理を行なった複合体を室温で、1分間浸漬した。
(無電解めっき工程)
このようにして得られた複合体を、スルカップ PEA−6−A(商品名、上村工業社製、「スルカップ」は登録商標)100mL/L、スルカップ PEA−6−B−2X(商品名、上村工業社製)50mL/L、スルカップ PEA−6−C(商品名、上村工業社製)14mL/L、スルカップ PEA−6−D(商品名、上村工業社製)15mL/L、スルカップ PEA−6−E(商品名、上村工業社製)50mL/L、37%ホルマリン水溶液5mL/Lとなるように調製した無電解銅めっき液に空気を吹き込みながら、温度36℃で、20分間浸漬して無電解銅めっき処理して積層体表面(樹脂層10の表面)に無電解めっき膜を形成した。次いで、空気雰囲気下において150℃で30分間アニール処理を行った。
得られた積層体表面にドライフィルムレジストを積層し、凹部配線形成部分を除く無電解めっき膜表面にめっき用レジストを形成した。
(電解めっき工程)
次いで、硫酸銅200g/L、硫酸50g/L、38%の濃塩酸0.05mL/L、FVF−1A(商品名、上村工業社製)1mL/L、FVF−B(商品名、上村工業社製)10mL/L、FVF−R(商品名、上村工業社製)2mL/Lとなるように調製した水溶液(電解液)に空気を吹き込みながら、室温で、脱脂・酸洗処理を行った積層体を陰極側、含リン銅板を陽極側に浸漬・設置し、直流電源装置で通電し、電解銅めっきを施し、無電解めっき処理により形成された金属層上に電解銅めっき膜を形成した。なお、エキシマレーザーによる加工により形成されたトレンチ内に無電解銅めっきが十分に充填された際(無電解銅めっきのフィリング時)に、当該トレンチ部分以外の部分に形成された無電解銅めっき層の厚みは1μmであった。
(エッチング工程)
前記トレンチ部分以外の部分に形成された無電解銅めっき層(前述の厚み1μmの部分)をハイパーエッチ「HE−500」(商品名、エバラユージライト社製)を用いて、スプレー処理にてエッチングをし、酸洗処理を行った後、水洗した。次いで、AT−21(商品名、上村工業社製)1mL/Lとなるように調製した水溶液に、室温にて1分間浸漬し防錆処理を行った後、空気中にて、180℃で60分間アニール処理をすることで、図3(A)に示すような樹脂層10、追加樹脂層50、配線30及び基板20からなる電子材料用基板を得た。
そして、このようにして得られた電子材料用基板は、樹脂層10中に形成された配線30が、L/S=10μm/10μm、高さ10μmの平行ラインパターンで良好に形成されたものであり、この結果より、本発明によれば、薄膜化及び微細配線化が可能であり、さらには、電気特性(特に、電気絶縁性)、及び耐水性に優れた電子材料用基板を得ることが可能であることが確認できた。