JP2015134710A - 環状ハロシラン中性錯体 - Google Patents

環状ハロシラン中性錯体 Download PDF

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Abstract

【課題】溶液状態または高い分散性の懸濁液での均一な反応により環状水素化シランもしくは環状有機シランを得ることができる中間体である環状ハロシラン中性錯体の提供。
【解決手段】一般式[Y]l[Sim2m-aa]で表される環状ハロシラン中性錯体。[Yは(1)XRn:XがP、P=O又はNのときはn=3であり、Rは同一或いは異なって置換/無置換のアルキル基或いはアリール基;XがS、S=O又はOのときはn=2;Rは前記と同じ基;又は(2)環中に非共有電子対を有するN、O、S或いはPを含む置換/無置換の複素環化合物から選択される少なくとも1種の複素環化合物、から選択される少なくとも1種の配位化合物;Zは同一または異なって、Cl、Br、I又はF;lは1又は2;mは3〜8;aは0〜m]
【選択図】なし

Description

本発明は、環状ハロシラン中性錯体に関する。この中性錯体は、シクロヘキサシラン等の環状水素化シランもしくは環状有機シランを合成する際の中間体として有用である。
太陽電池、半導体等の用途に薄膜シリコンが用いられており、この薄膜シリコンは、従来、モノシランを原料とする気相成長製膜法(CVD法)によって作製されている。近年、該CVD法に代わって、環状水素化シランを用いた新たな製法が注目されている。この製法は、水素化ポリシラン溶液を基材に塗布、焼成する塗布製膜法(液体プロセス)であり、前記水素化ポリシラン溶液の調製原料としてシクロペンタシランが使用されている。シクロペンタシランは市販されており、UV照射によって水素化ポリシランとなることが報告されている(非特許文献1)。しかしながら、シクロペンタシランは、その製造に高価な禁水試薬を用いる多段階合成や精製工程が必要であるため、非常に高価である。
そこで本発明者らは、シクロペンタシランの代替材料としてシクロヘキサシランに着目した。シクロヘキサシランの合成方法としては、トリクロロシランとN,N,N’,N”,N”−ペンタエチルジエチレントリアミン(ペデタ(pedeta))等の第三級ポリアミンとからテトラデカクロロシクロヘキサシランジアニオンの塩を調製し、該テトラデカクロロシクロヘキサシランジアニオンの塩に金属水素化物還元剤を接触させて還元する方法で製造できることが知られている(特許文献1)。また、Henggeらは、ジフェニルジクロロシランを出発原料として、シクロヘキサシランが合成できることを報告している(非特許文献1)。
特許第4519955号公報
Edwin Hengge and Dieter Kovar, "Preparation of Cyclohexasilane", Angew. Chem. Int. Ed. Engl.16(1977) No.6, p.403
しかしながら、上記特許文献1に記載された合成法によれば、テトラデカクロロシクロヘキサシランジアニオン錯体がまず生成するのであるが、このジアニオン錯体は溶媒に対する溶解性・親和性が低く、続く還元工程が分散性の低い不均一なスラリー反応となるため、工業的には不向きである。また、ジアニオン錯体のカチオンがケイ素を含む場合、還元工程で自然発火性のある危険なシランガスが副生するため、装置が複雑かつ大型化したり、工程が煩雑になり製造コストが増大してしまうという問題を招くことになる。
また、非特許文献1に記載の方法では、副生成物が多く、シクロヘキサシランの収率が高いとは言えない。
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、環状水素化シランもしくは環状有機シランを得ることができる中間体となり得る環状ハロシラン中性錯体の合成および環状水素化シランもしくは環状有機シランの合成を溶液状態での均一な反応または分散性の高い懸濁液での反応により実施できる、溶媒に対する溶解性に優れた環状ハロシラン中性錯体を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、溶媒への溶解性に優れ、結果として、環化反応や、続く還元工程やアルキル化もしくはアリール化工程を溶液状態での均一な反応または分散性の高い懸濁液での反応で行うことが可能である環状ハロシラン中性錯体を製造することに成功した。この環状ハロシラン中性錯体は、還元に供した際に、シランガスを発生しないか、またはシランガスが発生してもその量を低く抑えつつ、環状水素化シランに変換でき、アルキル化もしくはアリール化に供した際にも同様に、有機モノシランの副生を抑えつつ環状有機シランに変換できる。
すなわち、本発明の環状ハロシラン中性錯体は、一般式[Y]l[Sim2m-aa]で表されることを特徴とし、上記式中、Yは、(1)XRn(XがP、P=O、Nのときはn=3であり、Rは同一または異なって置換または無置換のアルキル基またはアリール基を表し、XがS、S=O、Oのときはn=2であり、Rは同一又は異なって前記と同じ基を意味する。但し、XRn中のアミノ基の数は0または1である。)として表される化合物、および(2)環中に非共有電子対を有するN、O、SまたはPを含む置換または無置換の複素環化合物からなる群より選択される少なくとも1種の複素環化合物(但し、複素環化合物が有する第3級アミノ基の数は0または1である。)、からなる群より選択される少なくとも1種の配位化合物であり、Zは、同一または異なって、Cl、Br、I、Fのいずれかのハロゲン原子を表し、lは1または2、mは3〜8、aは0〜mである。
Yが、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンオキシド、トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン、テトラヒドロチオフェン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランおよびN,N−ジメチル−4−アミノピリジンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。また、環状ハロシラン中性錯体が[Y][Si6Cl12](lは1または2である)を含むことも好ましい。この環状ハロシラン中性錯体は、好ましくは、環状水素化シランまたは環状有機シランの合成のための中間体として用いられる。
本発明の環状ハロシラン中性錯体は、従来の第3級ポリアミンを用いた環状シランジアニオン錯体に比べ、溶媒への溶解性・親和性に優れているため、この環状ハロシラン中性錯体を得るための環化反応や、得られた環状ハロシラン中性錯体を還元やアルキル化もしくはアリール化に供した際に、均一な溶液系または分散性の高い懸濁系で反応を行うことができ、工業的に有用な方法である。さらに、これらの次工程において、シランガスや有機モノシランが発生しないか、発生してもその量を低く抑制することが可能となるため、従来、環状水素化シランや環状有機シランの製造で行われていたシランガス対策や有機モノシラン対策を目的とした燃焼設備や吸着設備が省略可能となり、発生するガスを不活性ガスで希釈するかスクラバー等の簡便な装置で対策するだけで充分となる。このため、簡便な装置で効率よく環状水素化シランや環状有機シランを製造することができる。
実施例1で得られた環状ハロシラン中性錯体の質量分析結果である。 実施例1で得られた環状ハロシラン中性錯体の質量分析におけるカチオン測定モードの結果である。 実施例1で得られた環状ハロシラン中性錯体の31P−NMRの測定結果である。 実施例1で得られた環状ハロシラン中性錯体の29Si−NMRの測定結果である。
本発明の環状ハロシラン中性錯体は、下記一般式で表される。
[Y]l[Sim2m-aa
(上記式中、Yは、(1)XRn(XがP、P=O、Nのときはn=3であり、Rは同一または異なって置換または無置換のアルキル基またはアリール基を表し、XがS,S=O,Oのときはn=2であり、Rは同一又は異なって前記と同じ基を意味する。但し、XRn中のアミノ基の数は0または1である。)として表される化合物、および(2)環中に非共有電子対を有するN、O、SまたはPを含む置換または無置換の複素環化合物からなる群より選択される少なくとも1種の複素環化合物(但し、複素環化合物が有する置換基としての第3級アミノ基の数は0または1である。)、からなる群より選択される少なくとも1種の配位化合物であり、Zは、同一または異なって、Cl、Br、I、Fのいずれかのハロゲン原子を表し、lは1または2、mは3〜8、aは0〜2m−1、好ましくは0〜mである。)。
この環状ハロシラン中性錯体は、原料とするハロシラン化合物のケイ素原子が3〜8個(好ましくは5個または6個、特に6個)連なった環を含む錯体である。よって、mは3〜8であり、好ましくはmは5または6であり、特に好ましくはmは6である。この環状ハロシラン中性錯体は、Siが全てハロゲン化されていなくてもよく、一部または全部のSiにHが結合していてもよい。このHの数をaとすれば、Zの数は2m−aで表される。また、Hの数は、理論上、0から2m−1までであり、好ましくは0からmである。すなわち、aがm以上のときは、全部のSiにHが結合している化合物となりうる。
原料のハロシラン化合物としては、例えば、トリクロロシラン、トリブロモシラン、トリヨードシラン、トリフルオロシラン等のトリハロゲン化シラン;ジクロロシラン、ジブロモシラン、ジヨードシラン、ジフルオロシラン等のジハロゲン化シラン;テトラクロロシラン、テトラブロモシラン、テトラヨードシラン、テトラフルオロシラン等のテトラハロゲン化シラン;等を用いることができる。よって、Zは、同一または異なって、Cl、Br、I、Fのいずれかのハロゲン原子を表すこととなる。これらの中でもトリハロゲン化シランが好ましく、特に好ましくはトリクロロシランである。
本発明の環状ハロシラン中性錯体は、ハロシラン化合物が配位化合物の存在下で環化したものであり、中性錯体であってジアニオン錯体ではない。この環状ハロシラン中性錯体を含む生成物は、還元により環状水素化シランに変換される中間体であり、またグリニャール試薬や有機リチウム試薬により環状有機シランに変換される中間体である。
次に、上記一般式中の配位子Yについて説明する。
Yは、(1)XRn(XがP、P=O、Nのときはn=3であり、Rは同一または異なって置換または無置換のアルキル基またはアリール基を表し、XがS,S=O,Oのときはn=2であり、Rは同一又は異なって置換または無置換のアルキル基またはアリール基を表す。但し、XRn中のアミノ基の数は0または1である。)として表される化合物、および(2)環中に非共有電子対を有するN、O、SまたはPを含む置換または無置換の複素環化合物からなる群より選択される少なくとも1種の複素環化合物(但し、複素環化合物が有する置換基としての第3級アミノ基の数は0または1である。)からなる群より選択される少なくとも1種の配位化合物である。Yは環状ハロシランにl(エル)個配位しており、lは1または2である。
(1)のXRnでは、Xが環状シランに配位して中性錯体を形成する。XがP、P=Oである場合、Xは3価であり、Rの数を示すnは3である。Rは同一または異なって置換または無置換のアルキル基またはアリール基を表す。Rは置換または無置換のアリール基がより好ましい。Rがアルキル基の場合は、直鎖、分岐状または環状のアルキル基が挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロへキシル基等の炭素数1〜16のアルキル基が好ましく挙げられる。また、Rがアリール基の場合は、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜18程度のアリール基が好ましく挙げられる。
(1)のXRnにおいて、XがNのときも、Xが環状シランに配位して中性錯体を形成し得る。XがNである場合、Xは3価であり、Rの数を示すnは3である。Rは同一または異なって置換または無置換のアルキル基またはアリール基を表す。Rは置換または無置換のアルキル基がより好ましい。Rがアルキル基の場合は、直鎖、分岐状または環状のアルキル基が挙げられ、炭素数1〜16のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜3のアルキル基がさらに好ましいものとして挙げられる。また、Rがアリール基の場合は、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜18程度のアリール基が好ましく挙げられる。
上記のXがP、P=Oのときや、XがNのときのXRnにおいて、上記アルキル基が有していてもよい置換基としては、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基等が挙げられ、アリール基が有していてもよい置換基としては、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基等が挙げられる。アミノ基としては、ジメチルアミノ基やジエチルアミノ基が挙げられるが、アミノ基はXR3中、1つ以下である。第3級ポリアミンを除く趣旨である。なお、3個のRは、同一であっても、異なっていてもよい。
XがS、S=O、Oのとき、Xは2価であり、Rの数を示すnは2である。Rは、XがP、P=Oである場合のRと同じ意味であり、置換または無置換のアルキル基またはアリール基である。Rは、置換または無置換のアリール基であることがより好ましい。
(1)の化合物の具体例としては、トリフェニルホスフィン(PPh3)、トリフェニルホスフィンオキシド(Ph3P=O)、トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン(P(MeOPh)3)、トリフェニルアミン等のXがP、P=O、Nの化合物;ジメチルスルホキシド等のXがS=Oの化合物等が挙げられる。
(2)の複素環化合物においては、環中に非共有電子対を有していることが必要であり、この非共有電子対が環状シランに配位して環状ハロシラン中性錯体を形成する。このような複素環化合物としては、環中に非共有電子対を有するN,O,SまたはPを含む置換または無置換の複素環化合物1種以上が挙げられる。複素環化合物が有していてもよい置換基は、上記したXがP、P=Oである場合のRがアルキル基またはアリール基の場合に有していてもよい置換基と同じである。複素環化合物としては、ピリジン類、イミダゾール類、ピラゾール類、オキサゾール類、チアゾール類、イミダゾリン類、ピラジン類、チオフェン類、フラン類等が挙げられ、具体例としては、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
これらの配位化合物のうち、反応温度において液体である化合物は溶媒の役目もかねることができる。
次に本発明の環状ハロシラン中性錯体の製造方法について説明する。本発明の環状ハロシランは、前記したハロシラン化合物を、前記配位子Yを構成する配位化合物の存在下で環化反応することにより得られる。例えばハロシラン化合物としてトリクロロシランを、トリフェニルホスフィン(PPh3)を配位化合物として、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を第3級アミンとして用いたスキーム例を下記に示す。6員環のドデカクロロシクロヘキサシランを含む錯体(ドデカクロロシクロヘキサシランにトリフェニルホスフィンが配位した中性錯体([PPh32[Si6Cl12]))となる。
Figure 2015134710
得られる環状ハロシラン中性錯体は、環構造を形成するシラン原子以外にシラン原子を含まないため、次工程で還元やアルキル化もしくはアリール化した際にシランガスや有機モノシランが発生しないか、発生量を低く抑制することができる。
ハロシラン化合物の環化反応には、第3級アミンを添加して行うことが好ましい。生成する塩酸を中和することができる。環化反応において用いられる第3級アミンとしては、例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、トリイソブチルアミン、トリイソペンチルアミン、ジエチルメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、ジメチルブチルアミン、ジメチル−2−エチルヘキシルアミン、ジイソプロピル−2−エチルヘキシルアミン、メチルジオクチルアミン等が好ましく挙げられる。なお、本発明では、炭素原子を2個以上有し、アミノ基を3個以上有する第3級ポリアミンは用いないことが好ましい。炭素原子を2個以上有し、アミノ基を3個以上有する第3級ポリアミンを用いると、環状シランのジアニオン性錯体が生成し、これは溶媒に対する溶解性または親和性が低いため、後の還元工程が分散性の低い不均一なスラリーでの反応となるからである。第3級アミンは、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、第3級アミンには、環状シランに配位するものも含まれ、例えば、ジエチルメチルアミン、トリエチルアミン等の、比較的嵩高くなく、対称性の高いアミン等は比較的効率的に配位すると考えられる。しかし、上記(1)のXRnで表される第3級アミンだけでは、環状シラン中性錯体の収率が低くなる傾向にあるため、上記した配位化合物であって、上記(1)のXRnで表される第3級アミン以外の配位化合物を併用することが好ましい。
環化反応に用いる配位化合物、ハロシラン化合物、第3級アミンの使用量は、適宜決定すればよく、例えば、上記スキームのようにドデカクロロシクロヘキサシランを合成する際は、トリクロロシラン6モルに対し、配位化合物を2モル用いる。配位化合物は、2モル以上であればよく50モル程度までの範囲で使用することができる。また、第3級アミンは、トリクロロシラン1モルに対して0.5〜4モル用いることが好ましく、同モルとすることが特に好ましい。他のハロシラン化合物を用いる場合も同様である。
環化反応は、必要に応じて有機溶媒中で実施できる。この有機溶媒としては、環化反応を妨げない溶媒が好ましく、例えば、ハロゲン化炭化水素系溶媒(例えばクロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン等)、エーテル系溶媒(例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルターシャリーブチルエーテル等)、アセトニトリル等の非プロトン性極性溶媒が好ましく挙げられる。これらの中でも、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン等の塩素化炭化水素系溶媒が好ましく、特に1,2−ジクロロエタンが好ましい。なおこれら有機溶媒は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
有機溶媒の使用量は、特に制限されないが、通常、トリクロロシランの濃度が0.5〜10mol/Lとなるように調整することが好ましく、より好ましい濃度は0.8〜8mol/L、さらに好ましい濃度は1〜5mol/Lである。
環化反応工程における反応温度は、反応性に応じて適宜設定でき、例えば0〜120℃程度、好ましくは15〜70℃程度である。また環化反応は、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うことが推奨される。
環化反応が終われば、環状ハロシラン中性錯体溶液が生成しているので、これを濃縮し、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンやアセトニトリル等で洗浄することで、精製するとよい。この環状ハロシラン中性錯体は、原料とするハロシラン化合物のケイ素原子が3〜8個(好ましくは5個または6個、特に6個)連なって形成された環を含む錯体であり、例えばトリクロロシランを出発原料とすると、通常、上記スキームのように6員環のドデカクロロシクロヘキサシランを含む錯体(ドデカクロロシクロヘキサシランにトリフェニルホスフィンが配位した中性錯体([PPh32[Si6Cl12]))となる。この環状ハロシラン中性錯体は環構造を形成するケイ素原子以外にケイ素原子を含まないため、還元やアルキル化もしくはアリール化した際にシランガスや有機モノシランが発生しないか、発生してもその量を低く抑えることができる。
この環化反応で生じた環状ハロシラン中性錯体の収量・収率は、錯体が定量的に反応する下記スキームで表されるメチル化反応を利用して算出することができる。
Figure 2015134710
本発明の環状シラン中性錯体は、上記の通り、精製により、高純度な固体として得ることが可能である。しかし、所望により、不純物を含む環状シラン中性錯体組成物として得ることも可能である。環状シラン中性錯体組成物は、環状シラン中性錯体を90質量%以上含むことが好ましく、95質量%以上がより好ましい。上限は例えば99.99質量%であるが、100質量%でもよい。上記不純物としては、溶剤や配位化合物の残渣、環状シラン中性錯体の分解物等である。環状シラン中性錯体組成物における上記不純物の含有量は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、下限は例えば0.01質量%であるが、0質量%でもよい。
本発明の環状ハロシラン中性錯体は、環状水素化シランや環状有機シランを合成するための中間体として有用である。環状水素化シランは、本発明の環状ハロシラン中性錯体を還元することで得ることができ、環状有機シランは、当該中性錯体をアルキル化もしくはアリール化することで得ることができる。本発明の環状ハロシラン中性錯体は、中性であるために溶媒に対する溶解性が高く、環状ハロシラン中性錯体自体を合成するための環化反応や、続く還元反応、アルキル化もしくはアリール化反応を均一な溶液状態または分散性の高い懸濁液で行うことができるというメリットがある。また、これらの反応中に、シランガスを副生しないか、副生したとしてもその量を低く抑制することが可能となるため、従来、環状水素化シランや環状有機シランの製造で行われていたシランガス対策や有機モノシラン対策を目的とした燃焼設備や吸着設備が省略可能となり、または簡素化が可能になり、発生するガスを不活性ガスで希釈するかスクラバー等の簡便な装置で対策するだけで充分となるというメリットもある。
前記還元工程において用いることのできる還元剤としては、特に制限されないが、アルミニウム系還元剤、ホウ素系還元剤からなる群より選ばれる1種以上を用いることが好ましい。アルミニウム系還元剤としては、水素化リチウムアルミニウム(LiAlH4;LAH)、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム(「Red−Al」(シグマアルドリッチ社の登録商標である))等の金属水素化物等が挙げられる。ホウ素系還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリエチルホウ素リチウム等の金属水素化物や、ジボラン等が挙げられる。例えばシクロヘキサシランのような水素化シラン化合物を得ようとする場合には、還元剤として金属水素化物を用いればよい。なお還元剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、還元助剤としてルイス酸触媒を上記還元剤と併用してもよい。ルイス酸触媒としては、塩化アルミニウム、塩化チタン、塩化亜鉛、塩化スズ、塩化鉄等の塩化物;臭化アルミニウム、臭化チタン、臭化亜鉛、臭化スズ、臭化鉄等の臭化物;ヨウ化アルミニウム、ヨウ化チタン、ヨウ化亜鉛、ヨウ化スズ、ヨウ化鉄等のヨウ化物;フッ化アルミニウム、フッ化チタン、フッ化亜鉛、フッ化スズ、フッ化鉄等のフッ化物;等のハロゲン化金属化合物が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の環状有機シランの製造方法は、本発明の製造方法で得られた環状ハロシラン中性錯体をアルキル化またはアリール化する工程を含む。このようなケイ素上への有機基導入工程において、例えば環状ハロシラン中性錯体をアルキル化またはアリール化すると、有機モノシランの発生を抑制しつつ、ドデカメチルシクロヘキサシランのような環状有機シランを得ることができる。ドデカメチルシクロヘキサシランは、環状ハロシラン中性錯体の収量・収率を測定するときの上記メチル化反応と同じ反応により生成する。
アルキル化またはアリール化する工程において用いることのできるアルキル化剤もしくはアリール化剤としては、特に制限されないが、グリニャール試薬、有機リチウム試薬からなる群より選ばれる1種以上を用いることが好ましい。グリニャール試薬としては、臭化メチルマグネシウムといったハロゲン化アルキルマグネシウムや臭化フェニルマグネシウムといったハロゲン化アリールマグネシウム等が挙げられる。有機リチウム試薬としては、メチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム等のアルキルリチウム化合物やフェニルリチウム等のアリールリチウム化合物が挙げられる。なおアルキル化剤もしくはアリール化剤は1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
以下、本発明の環状ハロシラン中性錯体を用いて、環状水素化シランを製造する方法について主に説明するが、環状有機シランの製造方法においては「還元剤」を「アルキル化剤もしくはアリール化剤」と読み替え、「環状水素化シラン」を「環状有機シラン」と読み替えて、適宜適用すればよい。
環状ハロシラン中性錯体(例えば、[PPh32[Si6Cl12])を還元して環状水素化シラン(例えば、シクロヘキサシラン)を得る方法は、例えば還元剤としてLiAlH4を用いた場合は、以下のスキームで表される。
Figure 2015134710
還元工程における還元剤の使用量は、適宜設定すればよく、例えば環状ハロシラン中性錯体のケイ素−ハロゲン結合1個に対する還元剤中のヒドリドの当量を、少なくとも0.9当量以上とすることが好ましい。より好ましくは0.9〜50当量、さらに好ましくは0.9〜30当量、特に好ましくは0.9〜15当量であり、最も好ましくは0.9〜2.0当量である。還元剤の使用量が多すぎると、後処理に時間を要し生産性が低下する傾向があり、一方、少なすぎると、収率が低下する傾向がある。
還元工程における反応は、必要に応じて、有機溶媒の存在下で行うことができる。ここで用いることのできる有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、トルエン等の炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルターシャリーブチルエーテル等のエーテル系溶媒;等が挙げられる。これら有機溶媒は1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。また、環状ハロシラン中性錯体を製造するときに得られた有機溶媒溶液を、そのまま還元工程における有機溶媒溶液として用いてもよいし、環状ハロシラン中性錯体を含む有機溶媒溶液から、有機溶媒を留去して、新たな有機溶媒を添加して還元工程を行ってもよい。なお、還元工程における反応に使用する有機溶媒は、その中に含まれる水や溶存酸素を取り除くため、反応前に蒸留や脱水等の精製を行っておくことが好ましい。
還元反応に用いる有機溶媒の使用量としては、環状ハロシラン中性錯体の濃度が0.01〜1mol/Lとなるように調整することが好ましく、より好ましくは0.02〜0.7mol/L、さらに好ましくは0.03〜0.5mol/Lである。環状ハロシラン中性錯体の濃度が1mol/Lより高い場合、すなわち有機溶媒の使用量が少なすぎると、還元反応により生じた熱が充分に除熱されず、また反応物が溶解しにくいために反応速度が低下する等の問題が生じるおそれがある。一方、環状ハロシラン中性錯体の濃度が0.01mol/Lより低い場合、すなわち有機溶媒の使用量が多すぎると、還元反応後に有機溶媒と目的生成物とを分離する際に留去すべき溶媒量が多くなるため生産性が低下する傾向がある。
還元は、環状ハロシラン中性錯体と還元剤とを接触させることにより行うことができる。環状ハロシラン中性錯体と還元剤との接触に際しては、溶媒の存在下で接触させることが好ましい。溶媒の存在下で環状ハロシラン中性錯体と還元剤とを接触させるには、例えば、(1)環状ハロシラン中性錯体の溶液または分散液に、還元剤をそのまま加える、(2)環状ハロシラン中性錯体の溶液または分散液に、還元剤を溶媒に溶解または分散させた溶液または分散液を加える、(3)溶媒中に環状ハロシラン中性錯体と還元剤を同時にもしくは順次加える、などの混合手順を採用すればよい。これらの中で特に好ましいのは上記(2)の態様である。
また環状ハロシラン中性錯体と還元剤との接触に際しては、還元を行う反応系内に、環状ハロシラン中性錯体の溶液または分散液と、還元剤の溶液または分散液との少なくともいずれか一方を滴下することが好ましい。このように環状ハロシラン中性錯体および還元剤の一方または両方を滴下することにより、還元反応で生じる発熱を滴下速度等でコントロールすることができるので、例えばコンデンサ等の小型化が可能になるなど、生産性の向上に繋がる効果が得られる。
環状ハロシラン中性錯体と還元剤の一方または両方を滴下する場合の好ましい態様としては、以下の3つの態様がある。すなわち、A)反応器内に環状ハロシラン中性錯体の溶液または分散液を仕込んでおき、これに還元剤の溶液または分散液を滴下する態様、B)反応器内に還元剤の溶液または分散液を仕込んでおき、これに環状ハロシラン中性錯体の溶液または分散液を滴下する態様、C)反応器内に、環状ハロシラン中性錯体の溶液または分散液と還元剤の溶液または分散液とを同時または順次滴下する態様である。これらの中でもA)の態様が好ましい。
環状ハロシラン中性錯体と還元剤の一方または両方を前記A)〜C)の態様で滴下する場合、環状ハロシラン中性錯体の溶液または分散液の濃度は、0.01mol/L以上が好ましく、より好ましくは0.02mol/L以上、さらに好ましくは0.04mol/L以上、特に好ましくは0.05mol/L以上である。中性錯体の濃度が低すぎると、目的生成物を単離する際に留去しなければいけない溶媒量が増えるので、生産性が低下する傾向がある。一方、環状ハロシラン中性錯体の溶液または分散液の濃度は1mol/L以下が好ましく、より好ましくは0.8mol/L以下、さらに好ましくは0.5mol/L以下である。
滴下時の温度(詳しくは、滴下用の溶液または分散液の温度)の下限は、−198℃とすることが好ましく、−160℃がより好ましく、−100℃がさらに好ましい。また、滴下時の温度の上限は、+150℃であるのが好ましく、より好ましくは+80℃、さらに好ましくは−10℃、特に好ましくは−60℃である。なお、反応容器(反応溶液)の温度(反応温度)は、環状シラン中性錯体や還元剤の種類に応じて適宜設定すればよく、通常、下限を−198℃とすることが好ましく、−160℃がより好ましく、−100℃がさらに好ましい。反応容器(反応溶液)の温度の上限は、+150℃であるのが好ましく、より好ましくは+80℃、さらに好ましくは−10℃、特に好ましくは−60℃である。反応温度が低いと、中間生成物や目的物の分解や重合を抑制できるので、収量が向上する。反応時間は、反応の進行の程度に応じて適宜決定すればよいが、通常10分以上72時間以下、好ましくは1時間以上48時間以下、より好ましくは2時間以上24時間以下である。
還元反応は、通常、例えば窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。この還元工程における反応ではシランガスの発生は抑制されているので、かかる工程においてシランガス対策を目的とした燃焼設備や吸着設備が不要になり、発生するガスを不活性ガスで希釈するかスクラバー等の簡単な設備で対策でき、簡便な装置で効率よく環状水素化シランを生成させることができる。
前記還元反応で生成した環状水素化シランは、例えば、還元後に得られた反応液から固体(副生した塩等の不純物)を固液分離した後、溶媒を減圧留去させるなどして、単離できる。固液分離の手法としては、ろ過が簡便である点で好ましく採用されるが、これに限定されるものではなく、例えば遠心分離やデカンテーションなど公知の固液分離の手法を適宜採用することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
なお、実施例における全ての反応は、不活性ガス(窒素またはアルゴン)雰囲気下において実施した。また実施例における反応で用いた溶媒は、水および酸素を取り除いてから使用した。
(実施例1)
温度計、コンデンサー、滴下ロートおよび攪拌装置を備えた300mL四つ口フラスコ内を窒素ガスで置換した後、配位化合物としてトリフェニルホスフィン5.81g(0.022mol)と、第3級アミンとしてジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)17.2g(0.133mol)と、溶媒として1,2−ジクロロエタン100mLとを入れた。続いて、フラスコ内の溶液を攪拌しながら、25℃条件下において、滴下ロートから、ハロシラン化合物としてトリクロロシラン18.0g(0.133mol)をゆっくりと滴下した。滴下終了後、そのまま2時間攪拌し、続いて60℃で8時間加熱攪拌することにより反応を行い、均一な反応液を得た。得られた反応液を濃縮・洗浄して、中性のトリフェニルホスフィンが配位したドデカクロロシクロヘキサシラン([PPh32[Si6Cl12])を含有する反応生成物を白色固体として得た。収率は36%であった。
環化反応で得られた錯体は、溶媒に対して高い溶解度を示すことが明らかとなった。
下記スキームで環化反応が行われ、トリフェニルホスフィンが配位したドデカクロロシクロヘキサシラン中性錯体が生成した。
Figure 2015134710
精製品の質量分析(MS)をEIイオン化法で行った結果を図1に示す。図1には0.55分のところに1つのピークしか現れなかった。このピークをカチオン測定モードで測定した結果を図2に示す。262.09m/zのピークがトリフェニルホスフィンのピークであり、ジイソプロピルエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン塩酸塩、4級ホスホニウム塩のピークは観察されなかった。なお、質量分析は、ガスクロマトグラフ質量分析計(PolarisQ;サーモエクスト社製)を用いて行った。
31P−NMRの測定結果を図3に示す。得られたピークはトリフェニルホスフィン配位子のものであり、他にピークがないことから、トリフェニルホスフィン以外のリン化合物が存在しないことが確認できた。なお、31P−NMRは、Varian社製のNMRを用い、600MHzで、重ジメチルホルムアミド(DMF−d7)中で測定した。
29Si−NMRの測定結果を図4に示す。−22.733ppmのシグナルが、Si6Cl12のシグナルであり、残りの4本のシグナルの存在によって、Si6HCl11も混在していることが確認できた。Si6HCl11も次工程の還元工程でSi612となるので、特に分離は必要ない。
29Si−NMR(600MHz、DMF−d7)の測定結果;
Si6Cl12:−22.73ppm
Si6HCl11:δ−18.89,−22.94,−24.05,−38.56ppm
1H−NMR(600MHz、DMF−d7)でも測定を行った。測定結果;δ7.56,7.46ppm。
これらの結果を総合すると、実施例1で得られた化合物は、ドデカクロロシクロヘキサシランにトリフェニルホスフィンが配位した中性錯体([PPh32[Si6Cl12])と、[PPh32[Si6HCl11]を含む混合物であった。
ドデカクロロシクロヘキサシランの構造上、環構造を形成するシラン原子以外にシラン原子が含まれないため、還元の際にシランガス等の発生が抑制されることが明らかとなった。
(実施例2)
滴下ロートおよび攪拌装置を備えた100mL二口フラスコに、実施例1で得られた白色固体2.44g(ドデカクロロシクロヘキサシラン含有反応生成物、2.18mmol)を入れ減圧乾燥させた。次いでフラスコ内をアルゴンガスで置換した後、溶媒としてシクロペンチルメチルエーテル(CPME)30mLを加えた。続いて、フラスコ内の懸濁液を攪拌しながら、−20℃条件下において滴下ロートから、還元剤として、水素化リチウムアルミニウム(LiAlH4)のジエチルエーテル溶液(濃度:約1.0mol/L)10mLを徐々に滴下し、次いで−20℃で5時間攪拌することにより反応させた。
反応後、反応液を、窒素雰囲気下で濾過し、生成した塩を取り除いた。得られた濾液から減圧下で溶媒を留去して、無色透明液体の粗シクロヘキサシラン収率62%で得た。下記スキームで還元反応が進行したと考えられる。この粗シクロヘキサシランを蒸留精製して得られた精製シクロヘキサシランは、ガスクロマトグラフィー分析から、シクロヘキサシランが99面積%であった。また、1H−NMR(400MHz;C66)、29Si−NMR(400MHz;C66)から判断して、純度99%であった。
1H−NMR(400MHz;C66)δ3.35ppm、29Si−NMR(400MHz;C66)δ−106.9ppm
Figure 2015134710
(実施例3)
実施例1で得られた環状ハロシラン中性錯体の精製品を用いて、還元工程を行った。まず、窒素雰囲気下でフラスコに、LiAlH4を204mgとシクロペンチルメチルエーテル(CPME)10gを入れ、室温で1時間撹拌してLiAlH4のスラリーを調製した。アルゴン雰囲気下、別の100mLのフラスコに、実施例1で得られた精製品2.0gとCPME70gを入れ、−60℃で撹拌した。この中に、LiAlH4のスラリーを滴下ロートから10分かけて滴下した。滴下終了後、−60℃で6時間撹拌を行った。
反応後、反応液を、窒素雰囲気下で細孔径20〜30μmのガラスフィルターを用いて濾過し、得られた濾液から減圧下で溶媒を留去して、粗シクロヘキサシランの無色透明液体を得た(収率80%)。この粗シクロヘキサシランを蒸留精製して得られた精製シクロヘキサンは、ガスクロマトグラフィー分析からシクロヘキサシラン99面積%であった。また、得られたシクロヘキサシランは、1H−NMR(400MHz;C66)、29Si−NMR(400MHz;C66)から判断して、純度99%であった。
1H−NMR(400MHz;C66)δ3.35ppm、29Si−NMR(400MHz;C66)δ−106.9ppm
(実施例4)
配位化合物を下記のように変更した以外は、実施例1と同様にして、環状ハロシラン中性錯体の合成を行った。トリフェニルホスフィンオキシド(Ph3P=O)では収率が20%、トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン(P(MeOPh)3)では収率が42%、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)では収率が29%であった。
(実施例5)
滴下ロートおよび攪拌装置を備えた500mLセパラブルフラスコに、実施例1で得られた白色固体32.9g(ドデカクロロシクロヘキサシラン含有反応生成物、29.8mmol)を入れ減圧乾燥させた。次いでフラスコ内をアルゴンガスで置換した後、溶媒としてジエチルエーテル235mLを加えた。続いて、フラスコ内の懸濁液を攪拌しながら、−60℃条件下において滴下ロートから、還元剤として、水素化リチウムアルミニウム(LiAlH4)のジエチルエーテル溶液(濃度:約1.0mol/L)90mLを徐々に滴下し、次いで−60℃で3時間攪拌することにより反応させた。反応中に副生したモノシランガスを、ドレーゲルセイフティー社製のシランガスセンサーイグザム7000でモニタリングした。反応中のモノシランの総排出量は、0.09mmolであった。反応後、反応液を窒素雰囲気下で加圧濾過し、生成した塩を取り除いた。濾液をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、粗シクロヘキサシランの収率は70%であった。本反応では、錯体中のSi−Cl(29.8mmol×12=357.6mmol)に対するヒドリド(90mmol×4=360mmol)は、1.0当量であった。
本発明の環状ハロシラン中性錯体は、シクロヘキサシランのような環状水素化シラン、もしくはドデカメチルシクロヘキサシランのような環状有機シランを合成するための中間体として有用である。環状ハロシラン中性錯体は、溶解性に優れるため、環状ハロシラン中性錯体を合成するための環化反応や、環状水素化シランもしくは環状有機シランの合成反応を、均一溶液または分散性の高い懸濁液の状態で行うことができる。そして、環状水素化シランは、例えば太陽電池や半導体等に用いられるシリコン原料として有用である。また半導体分野では、Ge化合物と混合もしくは反応させることにより、SiGe化合物の製造や、SiGe膜の製造にも利用できる。

Claims (4)

  1. 一般式[Y]l[Sim2m-aa]で表されることを特徴とする環状ハロシラン中性錯体。
    (上記式中、Yは、(1)XRn(XがP、P=O、Nのときはn=3であり、Rは同一または異なって置換または無置換のアルキル基またはアリール基を表し、XがS、S=O、Oのときはn=2であり、Rは同一又は異なって前記と同じ基を意味する。但し、XRn中のアミノ基の数は0または1である。)として表される化合物、および(2)環中に非共有電子対を有するN、O、SまたはPを含む置換または無置換の複素環化合物からなる群より選択される少なくとも1種の複素環化合物(但し、複素環化合物が有する第3級アミノ基の数は0または1である。)、からなる群より選択される少なくとも1種の配位化合物であり、Zは、同一または異なって、Cl、Br、I、Fのいずれかのハロゲン原子を表し、lは1または2、mは3〜8、aは0〜mである。)
  2. 上記一般式中のYが、PR3および環中に非共有電子対を有するNを含む置換または無置換の複素環化合物からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1に記載の環状ハロシラン中性錯体。
  3. 上記環状ハロシラン中性錯体が[Y][Si6Cl12](lは1または2である)を含む請求項1または2に記載の環状ハロシラン中性錯体。
  4. 環状水素化シランまたは環状有機シランの合成のための中間体として用いられるものである請求項1〜3のいずれかに記載の環状ハロシラン中性錯体。
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