JP2015131922A - 水系樹脂組成物、該組成物を用いた繊維性基材用接着剤、該接着剤を用いた積層体、及び積層体の製造方法 - Google Patents

水系樹脂組成物、該組成物を用いた繊維性基材用接着剤、該接着剤を用いた積層体、及び積層体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高温における貯蔵安定性に優れた水系樹脂組成物、及び繊維性基材への浸透性の抑制や接着性に優れた水系樹脂組成物を含有した繊維性基材用接着剤と接着剤を用いた積層体、及び積層体の製造方法を提供すること。
【解決手段】LCSTが25〜100℃の熱ゲル化剤(A)を水系樹脂(B)に添加することで、高温における貯蔵安定性に優れた水系樹脂組成物が得られ、この水系樹脂組成物を繊維性基材用接着剤に使用することで繊維性基材への浸透性を抑制し、接着性、柔軟性、及び耐屈曲性に優れた積層体を得ることができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、合成皮革などの積層体に使用される水系樹脂組成物を含有する繊維性基材用接着剤、該接着剤を用いた積層体及び積層体の製造方法に関するものである。
従来、接着剤には、作業性や加工性の観点から、溶媒として有機溶剤が多用されていた。しかし、この有機溶剤の使用は、加工中に揮発性有機化合物(VOC)として外部へ飛散することがあり、これが光化学オキシダントの原因となることがあった。この光化学オキシダントは、光化学スモッグの原因となる物質であり、強力な酸化作用を持つことから、粘膜などへの健康被害を引き起こすことや温室効果に伴う地球温暖化などへ影響を及ぼすことが知られている。そのため、VOCの排出量の制限や規制の対策が講じられてきている。
また、衣料や医療材料分野に使用される接着剤においては、直接人体に触れる機会が多く、残存した溶剤が皮膚アレルギー症状などの健康障害を起こすことが危惧されており、無溶剤化が急務となっていた。
特に、衣料などにおける合成皮革は、空隙を多く持つ繊維性基材の素材を使用するため、有機溶剤を用いた接着剤を使用した場合、有機溶剤が基材に浸透し易く、形成後の合成皮革の内部に有機溶剤が残存する恐れがあった。
この有機溶剤の残存量を低減する手法としては、例えば、生産工程において乾燥時間の延長や乾燥温度を上げるなどの対策が行われてきた。しかし、工程時間の延長に伴う作業性の低下や工程設備の大型化に伴う設備投資の増大などの問題を抱えていた。
一方、有機溶剤を用いない対策手法としては、水分散性接着剤などの水系化や樹脂成分のみで構成される無溶剤化が行われている。しかし、水系化された接着剤は、コンテナ輸送などを行う際、高温に曝され、樹脂が経時で凝集するなどの貯蔵安定性の低下が問題となっていた。また、樹脂成分からなる無溶剤化においては、塗工性や加工性を考慮し、モノマーやオリゴマーなどの低分子成分を多量に含むため、空隙を多く持つ繊維性基材に無溶剤化された接着剤を塗布した場合、空隙に樹脂成分が浸透し、十分な接着力を確保することが困難であった。
このような背景の中で、種々の貯蔵安定性の改良検討が数多く試みられており、具体的な方法として、以下に示す(1)〜(5)の手法が提案されている。
(1)加水分解性シリル基を有するビニル系単量体、又はビニル系オリゴマーとアミンイミド基を有するビニル系単量体と炭素数6〜30のアルキル基を有するビニル系重合体とカルボキシル基を有するビニル系単量体とを溶液重合により共重合体としたエマルジョン組成物が提案されている(例えば、特許文献1)。
(2)アクリロイル基又はメタクリロイル基を有し、アルコキシシリル基の中でアルコキシル基−ケイ素原子間結合の加水分解性が高いトリメトキシシリル基を有するアルコキシシランと、アクリロイル基、又はメタクリロイル基を有し、加水分解性が低いジメトキシシリル基、ジエトキシシリル基、又はトリエトキシシリル基を有するアルコキシシランとを組み合わせたアルコキシシリル基含有アクリル系エマルジョンが提案されている(例えば、特許文献2)。
(3)25℃における溶解度が0.1〜40gで引火点が50℃以上のグリコールエーテル(ジプロピレングリコールジメチルエーテル、又はジエチレングリコールジブチルエーテル)をポリウレタン系エマルジョンに混合した樹脂が提案されている(例えば、特許文献3)。
(4)ヒドラジド基と反応可能な官能基を有する重合体、及び複数のヒドラジド基を有する化合物を、反応性ノニオン界面活性剤によって乳化分散させた水性エマルジョン組成物が提案されている(例えば、特許文献4)。
(5)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、又はエポキシ樹脂等の活性水素を有するエマルジョン樹脂に、界面活性剤、及びアニオン性と非イオン性のレオロジー調整剤(C)を含有した水分散スラリー塗料が提案されている(例えば、特許文献5)。
また、空隙を多く持つ繊維性基材の素材に対する浸透性を抑制する技術として、具体的に以下に示す(1)、又は(2)の手法が提案されている。
(1)熱可塑性ポリウレタンフィルムを使用し、繊維性基材との貼り合わせ時に基材との圧力を調整することによって接着剤の染み込みを制御した合成皮革の製造方法が提案されている(例えば、特許文献6)。
(2)ポリオールと、ポリイソシアネートと、比表面積と含有量が規定された親水性ヒュームドシリカからなる繊維性基材用の無溶剤型ポリウレタン樹脂形成性接着剤組成物をポリウレタン樹脂表皮層又は繊維性基材上に塗布し、ポリウレタン樹脂表皮層と繊維性基材を貼り合わせ硬化させた積層体が提案されている(例えば、特許文献7)。
特開平5−025354号公報 特開2005−068442号公報 特開2005−120116号公報 特開2005−247933号公報 特開2006−249391号公報 特開2010−168692号公報 特開2012−144655号公報
しかしながら、従来の水系化された樹脂は、貯蔵安定性を付与するために樹脂を変性処理する必要性が高く、添加剤による改善においても各種水系化された樹脂への適用が困難であった。また、空隙を多く持つ繊維性基材に対する接着剤として用いた場合も接着剤が繊維性基材の空隙に浸透してしまい、本来の接着力を十分に発揮することが困難であった。
また、熱可塑性ポリウレタンの溶融と圧力の調整により浸透性を制御する手法も素材の厚さバラツキの影響により、接着力が低下する恐れがあった。更に、親水性ヒュームドシリカによる無溶剤型ポリウレタン樹脂形成性接着剤組成物の浸透性の抑制は、ポットライフ等の生産性の課題を残していた。
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものである。
本発明は、水系樹脂組成物が高温における貯蔵安定性に優れ、この水系樹脂組成物を繊維性基材用接着剤に用いることで接着性に優れた合成皮革等に有用な積層体、及び積層体の製造方法を提供することである。
本発明者は、検討を重ねた結果、下限臨界共溶温度(LCST:Lower Critical Solution Temperature)が25〜100℃の熱ゲル化剤を水系樹脂に配合することによって、水系樹脂中のエマルジョン粒子の凝集を抑制し高温における貯蔵安定性が付与できることを見出した。また、この水系樹脂組成物を繊維性基材の接着剤に用いることで、基材への接着剤の浸透性を抑制でき、接着性に優れた合成皮革などの積層体が得られることを見出し、本発明に至った。
すなわち本発明は以下の(1)〜(11)に示されるものである。
(1)水系樹脂組成物が、少なくとも下限臨界共溶温度が25〜100℃の熱ゲル化剤(A)と、水系樹脂(B)とからなることを特徴とする。
(2)前記(1)の水系樹脂組成物の熱ゲル化剤(A)が、セルロースエーテルであり、セルロースの水酸基をメトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、及びヒドロキシプロポキシ基の少なくとも1種類より選ばれる置換基で置換していることを特徴とする。
(3)前記(2)のセルロースエーテルの置換率が、グルコース環単位当たり50〜75%であることを特徴とする。
(4)前記(1)〜(3)の水系樹脂組成物の樹脂固形分換算の熱ゲル化剤(A)の含有量が5〜50質量%であることを特徴とする。
(5)前記(1)〜(4)の水系樹脂組成物の水系樹脂(B)が、少なくとも有機ポリイソシアネート(b1)と、高分子ポリオール(b2)と、カルボキシル基を有するアニオン性低分子グリコール(b3)と、中和剤(b4)と、鎖延長剤(b5)とを反応させて得られた水分散性ポリウレタン樹脂であることを特徴とする。
(6)繊維性基材用接着剤が、前記(1)〜(5)の水系樹脂組成物を含有することを特徴とする。
(7)積層体が、繊維性基材と接着剤層と樹脂表皮層の三層から構成され、接着剤層が前記(6)に記載の繊維性基材用接着剤からなることを特徴とする。
(8)前記(7)の積層体の繊維性基材が、厚さ0.1〜10mmであり、JIS K7222に規定された見かけ密度が0.05〜0.5g/cmであることを特徴とする。
(9)前記(7)、又は(8)の積層体の繊維性基材が、有機繊維により構成されていることを特徴とする。
(10)前記(7)〜(9)の積層体の製造方法が、繊維性基材用接着剤を樹脂表皮層上に、樹脂固形分換算で少なくとも10g/m塗布し、繊維性基材を貼り合わせ、硬化させることを特徴とする。
(11)前記(7)〜(9)の積層体の製造方法が、繊維性基材用接着剤を繊維性基材上に、樹脂固形分換算で少なくとも10g/m塗布し、樹脂表皮層を貼り合わせ、硬化させることを特徴とする。
本発明の水系樹脂組成物によれば、LCSTが25〜100℃の熱ゲル化剤(A)を水系樹脂(B)に配合することで、水系樹脂中のエマルジョン粒子の凝集を抑制し高温における貯蔵安定性を付与することができる。また、この水系樹脂組成物を含有した繊維性基材用接着剤を積層体の製造に使用することによって、繊維性基材への接着剤の浸透性を抑制でき、これにより接着性に優れた積層体を提供できる。この積層体は、主に衣料や医療材料分野などにおける合成皮革に適用することが可能である。
繊維性基材用接着剤を使用した積層体の構成図
本発明の実施の形態について、以下に説明する。
本発明の水系樹脂組成物は、少なくともLCSTが25〜100℃の熱ゲル化剤(A)と、水系樹脂(B)とから構成される水系樹脂組成物である。ここで熱ゲル化剤のLCSTとは、臨界温度よりも低温側の場合、熱ゲル化剤が親水性を呈するため、水溶性の挙動を示す。一方、臨界温度よりも高温側の場合、疎水性を呈するため、熱ゲル化剤が収縮し見かけ上、水系樹脂組成物がゲル化した挙動を示す。
このゲル化は、水系樹脂のエマルジョン粒子同士の凝集を抑制できるため、高温における貯蔵安定性の付与を可能とする。また、この挙動は、可逆性であるため、ゲル化した水系樹脂組成物を臨界温度よりも低温側にすることで、溶液状態で安定的に貯蔵することができる。
<熱ゲル化剤(A)>
熱ゲル化剤(A)としては、具体的にポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−1−メチル−2−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−モルホリノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロポキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロポキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリロイルピペリジン、N−(メタ)アクリロイルピロリジン、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−(2,2−ジメトキシエチル)−N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−1−メトキシメチルプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ジ(2−メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−2−メトキシエチル−N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−2−メトキシエチル−N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−2−メトキシエチル−N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエトキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−(1,3−ジオキソラン−2−イル)メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−(1,3−ジオキソラン−2−イル)メチル(メタ)アクリルアミド、N−ピロリジノメチル(メタ)アクリルアミド、N−ピペリジノメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート((メタ)アクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル)、N−メチル−N−エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N−メチル−N−エチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N−2−モルホリノエチル(メタ)アクリレート、N−2−モルホリノエトキシエチル(メタ)アクリレート、及び、8−(メタ)アクリロイル−1,4−ジオキサ−8−アザスピロ[4,5]デカン、セルロースエーテル等を単独、又は二種以上で適宜併用することができる。
この中でも貯蔵安定性の観点から、セルロースエーテルが好ましく、セルロースの水酸基をメトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、及びヒドロキシプロポキシ基の少なくとも1種類により置換され、この置換率がグルコース環単位当たり50〜75%であることが好ましい。置換率が下限値未満である場合は、水に対する溶解性を得ることが困難であり、上限値を超える場合には、加熱によるゲル化を発現しない恐れがあるため好ましくない。
また、熱ゲル化剤(A)の最適な含有量としては、水系樹脂組成物の樹脂固形分換算で5〜50質量%であることが好ましい。含有量が下限値未満である場合は、加熱によるゲル化を発現しない恐れがあり、上限値を超える場合には、耐水性や接着性の低下を招く恐れがあり好ましくない。また、熱ゲル化剤(A)の添加方法としては、水系樹脂(B)を水に溶解した熱ゲル化剤(A)の中に撹拌しながら添加することが好ましい。水系樹脂(B)に水に溶解した熱ゲル化剤(A)を添加した場合、分離や加熱時に十分なゲル化が生じない恐れがある。
次に、本発明に使用される水系樹脂(B)について詳細に説明する。
<水系樹脂(B)>
本発明に使用される水系樹脂(B)としては、水溶性、及び/又は水分散性の水系化されたアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、天然ゴム、オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ビニル樹脂、及びフッ素樹脂が好適に用いられ、これらは単独、又は二種類以上の混合物として使用できる。この水系樹脂(B)は、特に、合成皮革等の積層体に使用する観点から、柔軟性、屈曲性、及び接着性の効果を奏する水分散性ポリウレタン樹脂が最も好ましい。
ここで、水分散性ポリウレタン樹脂としては、少なくとも有機ポリイソシアネート(b1)と、高分子ポリオール(b2)と、カルボキシル基を有するアニオン性低分子グリコール(b3)と、中和剤(b4)と、鎖延長剤(b5)とを反応させて得られた水分散性のポリウレタン樹脂であることが好ましい。
<有機ポリイソシアネート(b1)>
水分散性ポリウレタン樹脂に使用される有機ポリイソシアネート(b1)としては、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、及びこれらのアロファネート変性ポリイソシアネート、イソシアヌレート変性ポリイソシアネート、ウレトジオン変性ポリイソシアネート、ウレタン変性ポリイソシアネート、ビュレット変性ポリイソシアネート、ウレトイミン変性ポリイソシアネート、アシルウレア変性ポリイソシアネート等を単独、又は二種以上で適宜併用することができる。
また、耐候性等を考慮する場合には、脂肪族ジイソシアネート、及び/又は脂環族ジイソシアネートが好ましい。
<芳香族ジイソシアネート>
芳香族ジイソシアネートの具体例としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート/2,6−トリレンジイソシアネート混合物、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート/4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート混合物、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジフェニルプロパン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルプロパンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、3,3′−ジメトキシジフェニル−4,4′−ジイソシアネート等を挙げることができる。
<芳香脂肪族ジイソシアネート>
芳香脂肪族ジイソシアネートの具体例としては、1,3−または1,4−キシリレンジイソシアネート若しくはその混合物、1,3−または1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン若しくはその混合物、ω,ω′−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼン等を挙げることができる。
<脂肪族ジイソシアネート>
脂肪族ジイソシアネートの具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、2−メチル−ペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチル−ペンタン−1,5−ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
<脂環族ジイソシアネート>
脂環族ジイソシアネートの具体例としては、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート等を挙げることができる。
<高分子ポリオール(b2)>
また、水分散性ポリウレタン樹脂に使用される高分子ポリオール(b2)としては、平均官能基数が1.8〜2.5であり、且つ数平均分子量が500〜10000、好ましくは数平均分子量500〜5000のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール、動植物系ポリオールなどを挙げることができる。これらの高分子ポリオール(b2)は、単独、又は二種以上併用して用いることができる。本発明で好ましい高分子ポリオール(b2)としては、耐水性、柔軟性、屈曲性などの耐久性を重視した場合には、ポリカーボネートポリオールが好ましい。
<ポリエステルポリオール>
高分子ポリオール(b2)に使用されるポリエステルポリオールとしては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、クルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸、α−ハイドロムコン酸、β−ハイドロムコン酸、α−ブチル−α−エチルグルタル酸、α,β−ジエチルサクシン酸、マレイン酸、フマル酸等のジカルボン酸またはこれらの無水物等の1種類以上と、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β−ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオール類の1種類以上との縮重合反応から得られるものを挙げることができる。また、ε−カプロラクトン、アルキル置換ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、アルキル置換δ−バレロラクトン等の環状エステル(いわゆるラクトン)モノマーの開環重合から得られるラクトン系ポリエステルポリオール等を挙げることができる。更に、低分子ポリオールの一部をヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、モノエタノールアミン等の低分子ポリアミンや低分子アミノアルコールに代えて得られるポリエステル−アミドポリオールを使用することもできる。
<ポリエーテルポリオール>
高分子ポリオール(b2)に使用されるポリエーテルポリオールとしては、ポリエステルポリオールに使用される低分子ポリオール類、又はエチレンジアミン、プロピレンジアミン、トルエンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、キシリレンジアミン等の低分子ポリアミン類等のような活性水素基を2個以上、好ましくは2〜3個有する化合物を開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のようなアルキレンオキサイド類、メチルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル類、フェニルグリシジルエーテル等のアリールグリシジルエーテル類、テトラヒドロフラン等の環状エーテルモノマーを付加重合することで得られるものを挙げることができる。
<ポリエーテルエステルポリオール>
高分子ポリオール(b2)に使用されるポリエーテルエステルポリオールとしては、ポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールに使用されるジカルボン酸等から得られるコポリオールがある。また、前述のポリエステルやポリカーボネートと、エポキサイドや環状エーテルとの反応で得られるものがある。
<ポリカーボネートポリオール>
高分子ポリオール(b2)に使用されるポリカーボネートポリオールとしては、ポリエステルポリオールに使用される低分子ポリオール類の1種類以上と、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネートとの脱アルコール反応や脱フェノール反応から得られるものを挙げることができる。なお、前述のポリカーボネートポリオールとポリエステルポリオールとのエステル交換品を使用することもできる。
<アクリルポリオール>
高分子ポリオール(b2)に使用されるアクリルポリオールとしては、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルと、少なくとも分子内に1個以上の水酸基を有するアクリル酸ヒドロキシ化合物及び/又はメタクリル酸ヒドロキシ化合物と、重合開始剤とを熱エネルギーや紫外線や電子線などの光エネルギー等を使用し、アクリルモノマーを共重合することにより得られる。
<(メタ)アクリル酸エステル>
アクリルポリオールに使用する(メタ)アクリル酸エステルとしては、炭素数1〜20のアルキルエステルを用いることができる。このような(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステル、シクロヘキシル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸の脂環属アルコールとのエステル;(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジルのような(メタ)アクリル酸アリールエステルを挙げることができる。このような(メタ)アクリル酸エステルは、単独、又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
<(メタ)アクリル酸ヒドロキシ化合物>
アクリルポリオールに使用する(メタ)アクリル酸ヒドロキシ化合物としては、有機ポリイソシアネート(b1)との反応点となりうる少なくとも分子内に1個以上の水酸基を有しており、具体的には、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピルアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどのアクリル酸ヒドロキシ化合物が挙げられる。また、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピルメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレートなどのメタクリル酸ヒドロキシ化合物が挙げられる。これらアクリル酸ヒドロキシ化合物及び/又はメタクリル酸ヒドロキシ化合物は、単独、又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
また、上記の(メタ)アクリル酸エステル成分単位のほかに、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な単量体から誘導される繰り返し単位を有していてもよい。このような単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシプロピルのような(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル、(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩などの塩、エチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、ジエチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、トリエチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、ポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、プロピレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、ジプロピレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、トリプロピレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステルのような(ポリ)アルキレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリル酸エステルのような多価(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、(メタ)アクリル酸−2−クロロエチルのようなハロゲン化ビニル化合物、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンのようなオキサゾリン基含有重合性化合物、(メタ)アクリロイルアジリジン、(メタ)アクリル酸−2−アジリジニルエチルのようなアジリジン基含有重合性化合物、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸−2−エチルグリシジルエーテルのようなエポキシ基含有ビニル単量体、フッ素置換メタクリル酸アルキルエステル、フッ素置換アクリル酸アルキルエステル等の含フッ素ビニル単量体、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸のような不飽和カルボン酸(ただし(メタ)アクリル酸を除く)、これらの塩並びにこれらの(部分)エステル化合物および酸無水物、2−クロルエチルビニルエーテル、モノクロロ酢酸ビニルのような反応性ハロゲン含有ビニル単量体、メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−-メトキシエチルメタクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミドのようなアミド基含有ビニル単量体、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルプロピルアリルアミン、2−メトキシエトキシトリメトキシシランのような有機ケイ素基含有ビニル化合物単量体、その他ビニル基を重合したモノマー末端にラジカル重合性ビニル基を有するマクロモノマー類等(例えば、フッ素系モノマー、シリコーン含有モノマー、マクロモノマー、スチレン、シリコーン等)を挙げることができる。このような単量体は、単独、又は二種類以上を組み合わせて、上記(メタ)アクリル酸エステルと共重合させることができる。
<重合開始剤>
アクリルポリオールに使用する重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤を挙げることができ、重合方法によって適宜に選ばれる。熱重合開始剤の具体例としては、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネート等のペルオキシジカーボネート類、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、t−ヘキシルペルオキシイソプロピルカーボネート等のペルオキシエステル類、ジ(t−ブチルペルオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、ジ(t−ブチルペルオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン等のペルオキシケタール類等が挙げられる。また、主に水溶液中における重合で使用する熱重合開始剤の具体例としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩類、t−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシドなどの有機過酸化物類、過酸化水素と酒石酸などのレドックス類、V−50(和光純薬工業社製)などの水溶性アゾ系開始剤等が挙げられる。また、光重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、α−ヒドロキシ−α,α′−ジメチルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モンフォリノプロパノン−1等のアセトフェノン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルブチルエーテル等のベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p′−ジクロロベンゾフェノン、N,N′−テトラメチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン等のケトン類、チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン等のチオキサンソン類、ビスアシルホスフィンオキサイド、ベンゾイルホスフィンオキサイド等のホスフィン酸化物、ベンジルジメチルケタール等のケタール類、カンファン−2,3−ジオン、フェナントレンキノン等のキノン類などを挙げることができる。
<ポリオレフィンポリオール>
高分子ポリオール(b2)に使用されるポリオレフィンポリオールとしては、水酸基を2個以上有するポリブタジエン、水素添加ポリブタジエン、ポリイソプレン、水素添加ポリイソプレン等を挙げることができる。
<動植物系ポリオール>
高分子ポリオール(b2)に使用される動植物系ポリオールとしては、ヒマシ油系ポリオールや絹フィブロイン等を挙げることができる。
<カルボキシル基を有するアニオン性低分子グリコール(b3)>
水分散性ポリウレタン樹脂に使用されるカルボキシル基を有するアニオン性低分子グリコール(b3)としては、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ポリアミンと酸無水物との反応物、ジメチロールプロピオン酸やジメチロールブタン酸を開始剤としたラクトン付加物等を単独、又は二種以上を併用して用い、後述する中和剤(b4)との反応によりアニオン性の低分子グリコールを得ることができる。
また、カルボキシル基を有するアニオン性低分子グリコール(b3)の含有量は、水分散性ポリウレタン樹脂の固形分あたり、0.05〜1.5mmol/gであり、好ましくは0.1〜1.3mmol/gである。下限値未満である場合には、水分散性が低下し、貯蔵安定性や塗膜外観を悪化させる恐れがあり、上限値を超える場合には、耐水性が低下する恐れがある。
また、水分散性ポリウレタン樹脂の性能を低下させない範囲で、水分散性や貯蔵安定性を向上させるために、アニオン性基、及びカチオン性基含有化合物を併用することも可能である。
<アニオン性基含有化合物>
アニオン性基含有化合物としては、活性水素基を1個以上有する有機酸と中和剤からなる。また、有機酸としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、チオスルホン酸塩等が挙げられ、これらの基は、独立で導入されても良く、又はキレート構造のように配位により導入しても良い。
<カチオン性基含有化合物>
カチオン性基含有化合物としては、活性水素基を1個以上有する3級アミンと、無機酸及び有機酸の中和剤、4級化剤のいずれから選択されるものからなる。活性水素基を1個以上有する3級アミンの具体例としては、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジプロピルエタノールアミン、N,N−ジフェニルエタノールアミン、N−メチル−N−エチルエタノールアミン、N−メチル−N−フェニルエタノールアミン、N,N−ジメチルプロパノールアミン、N−メチル−N−エチルプロパノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−メチルジプロパノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、N−フェニルジプロパノールアミン、N−ヒドロキシエチル−N−ヒドロキシプロピル−メチルアミン、N,N′−ジヒドロキシエチルピペラジン、トリエタノールアミン、トリスイソプロパノールアミン、N−メチル−ビス−(3−アミノプロピル)−アミン、N−メチル−ビス−(2−アミノプロピル)−アミン等が挙げられる。また、アンモニア、メチルアミンのような第1アミン、ジメチルアミンのような第2アミンにアルキレンオキサイドを付加させたものも使用できる。
また、無機及び有機酸としては、塩酸、酢酸、乳酸、シアノ酢酸、燐酸及び硫酸等が挙げられる。4級化剤の具体例としては、硫酸ジメチル、塩化ベンジル、ブロモアセトアミド、クロロアセトアミド、または、臭化エチル、臭化プロピル、臭化ブチル等のハロゲン化アルキルが挙げられる。また、その他のカチオン性極性基含有化合物として、第1級アミン塩、第2級アミン塩、第3級アミン塩、ピリジニウム塩等のカチオン性化合物が挙げられる。
<中和剤(b4)>
水分散性ポリウレタン樹脂に使用される中和剤(b4)としては、アンモニア、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−アミノ−2−エチル−1−プロパノール、高級アルキル変性モルホリン等の有機アミン類、リチウム、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの無機アルカリ類等が挙げられる。また、硬化後の塗膜の耐久性、耐湿熱性、及び耐水性を向上させるためには、加熱によって容易に解離する揮発性の高いものが好ましく、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、2−アミノ−2−エチル−1−プロパノールが好ましい。これら中和剤は、単独、又は二種以上を併用することができる。
<鎖延長剤(b5)>
水分散性ポリウレタン樹脂に使用される鎖延長剤(b5)としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、N−アミノエチル−N−エタノールアミン等のアミン化合物が挙げられる。これらの鎖延長剤(b5)は、単独、又は二種以上を併用することができる。
次に、水分散性ポリウレタン樹脂の製造方法について説明する。水分散性ポリウレタン樹脂は、以下に示す第1工程〜第5工程を経て製造されるが、製造方法はこれのみでなくてもよい。
<水分散性ポリウレタン樹脂の製造方法>
第1工程:有機ポリイソシアネート(b1)と、高分子ポリオール(b2)と、カルボキシル基を有するアニオン性低分子グリコール(b3)とをウレタン化反応し、イソシアネート基末端プレポリマーIを製造する。
第2工程:第1工程で得られたイソシアネート基末端プレポリマーIに含有するカルボキシル基と、中和剤(b4)とを反応させイソシアネート基末端プレポリマーIIを製造する。
第3工程:第2工程で得られたイソシアネート基末端プレポリマーIIに水を添加し、乳化させた後、鎖延長剤(b5)により鎖延長反応させ、水分散性ポリウレタン樹脂を製造する。
また、第1工程、及び第2工程の製造工程においては、窒素ガス、若しくは、乾燥空気気流下で反応を進行させることが好ましい。
<第1工程:イソシアネート基末端プレポリマーIを製造する工程>
有機ポリイソシアネート(b1)と、高分子ポリオール(b2)と、カルボキシル基を有するアニオン性低分子グリコール(b3)との原料仕込みの配合比は、イソシアネート基と水酸基とのモル比が、R=イソシアネート基/水酸基で1.5〜3.0になるように仕込むことが好ましく、更に好ましくは、R=1.8〜2.5になるように仕込むことが好ましい。Rが下限未満の場合には、イソシアネート基含有量が低下するため、耐久性の低下を招く恐れがある。また、Rが上限を超える場合には、合成皮革としての柔軟性を損なう恐れがあるため好ましくない。
また、ウレタン化反応の反応温度は、20〜120℃であり、好ましくは50〜100℃である。尚、このウレタン化反応は、無触媒でも反応が進行するが、公知のウレタン化反応触媒を使用し、反応を促進することもできる。
<ウレタン化反応触媒>
ウレタン化反応に使用できる触媒の具体例としては、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート等の有機金属化合物や、トリエチレンジアミンやトリエチルアミン等の有機アミンやその塩を適宜選択して用いることができる。
ウレタン化反応の反応時間は、触媒の有無、種類、及び温度により異なるが、一般には10時間以内、好ましくは1〜5時間で十分である。尚、反応時間が長くなるに従い着色等の不具合を生じる場合がある。
<第2工程:イソシアネート基末端プレポリマーIIを製造する工程>
第2工程では、第1工程で得られたイソシアネート基末端プレポリマーIに含有するアニオン性低分子グリコール(b3)由来のカルボキシル基と、中和剤(b4)とを20〜50℃で中和反応させ、イソシアネート基末端プレポリマーIIを得ることが好ましい。また、中和量は、カルボキシル基に対し、10〜70モル%であることが好ましい。下限値未満の場合には、水分散性が低下し、貯蔵安定性を悪化させる恐れがある。また、上限値を超えた場合には、耐水性の低下を招く恐れがある。
また、第2工程では、イソシアネート基とブロック剤とを反応させ、ブロック化水分散性ポリウレタン樹脂とすることも可能である。ブロック化することによって、加熱時にブロック剤が解離し、再びイソシアネート基が活性化することができ、活性水素基と反応する潜在性の硬化性を付与できる。特に、本発明の繊維性基材用接着剤として用いる場合、接着性向上に寄与することができる。
<ブロック剤>
ブロック剤としては、フェノール系、ラクタム系、活性メチレン系、アルコール系、メルカプタン系、酸アミド系、イミド系、アミン系、イミダゾール系、尿素系、カルバミン酸塩系、イミン系、オキシム系、亜硫酸塩系等が挙げられる。特に、フェノール系、オキシム系、ラクタム系、イミン系が有利に使用される。
ここで、ブロック剤の具体例としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、クロロフェノール、エチルフェノール、p−ヒドロキシジフェニル、t−ブチルフェノール、o−イソプロピルフェノール、o−sec−ブチルフェノール、p−ノニルフェノール、p−t−オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシ安息香酸エステル等のフェノール系ブロック剤、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタム等のラクタム系ブロック剤、マロン酸ジエチル、マロン酸ジメチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系ブロック剤、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、2−エチルヘキサノール、n−アミルアルコール、t−アミルアルコール、ラウリルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルアルコール、メトキシメタノール、グリコール酸、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチル等のグリコール酸エステル、乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等の乳酸エステル、メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、エチレンクロルヒドリン、エチレンブロムヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノール、ω−ハイドロパーフルオロアルコール、アセトシアンヒドリン等のアルコール系ブロック剤、ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系ブロック剤、アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系ブロック剤、コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミド等のイミド系ブロック剤、ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N−フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミン等のアミン系ブロック剤、イミダゾール、2−エチルイミダゾール等のイミダゾール系ブロック剤、尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、1,3−ジフェニル尿素等の尿素系ブロック剤、N−フェニルカルバミン酸フェニル、2−オキサゾリドン等のカルバミン酸塩系ブロック剤、エチレンイミン、プロピレンイミン等のイミン系ブロック剤、ホルムアミドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム系ブロック剤、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム等の亜硫酸塩系ブロック剤等が挙げられる。
<第3工程:水分散性ポリウレタン樹脂の製造する工程>
第3工程では、第2工程で得られたイソシアネート基末端プレポリマーIIに水を添加し、乳化させた後、鎖延長剤(b5)とを0〜40℃で鎖延長反応させ、水分散性ポリウレタン樹脂を得ることが好ましい。上限値を超えた温度で鎖延長反応を行った場合、水とのウレア化反応が進むため、凝集物の生成など貯蔵安定性の低下を生じる恐れがある。
また、一連の水分散性ポリウレタン樹脂を製造する際に使用できる有機溶剤としては、有機溶剤の存在下で反応に影響を与えない溶剤が適宜選択される。また、ここで使用された有機溶剤は、第3工程後に脱溶剤工程を経ることによって溶剤を取り除く事ができる。
<製造に使用する有機溶剤>
有機溶剤の具体例としては、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル類、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のグリコールエーテルエステル類、ジオキサン等のエーテル類、ヨウ化メチレン、モノクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミド等の極性非プロトン溶媒などが挙げられる。これらの有機溶剤の中でも取り分け溶解性や脱溶剤性の観点からアセトンが最も好ましい。また、これらの有機溶剤は、単独、又は二種以上を組み合わせて用いることもできる。
このようにして得られた水分散性ポリウレタン樹脂は、平均粒径が50〜150nmであり、数平均分子量が10000〜150000の範囲である水分散性のポリウレタン樹脂である。また、水分散性ポリウレタン樹脂は、特に限定されるものではないが、25℃で10〜2000mPa・sであることが好ましい。
本発明によって得られた水系樹脂組成物は、必要に応じて、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等の酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、溶剤、難燃剤、加水分解抑制剤、潤滑剤、可塑剤、充填材、帯電防止剤、分散剤、触媒、貯蔵安定剤、界面活性剤、レベリング剤等の添加剤を適宜配合し、後述の繊維性基材用接着剤とすることができる。
次に、本発明の繊維性基材用接着剤を使用した積層体の構成について、詳細を説明する。
本発明の積層体は、天然皮革に近い風合いが得られるため、靴、鞄、ベルト、手袋、ソファーなどの衣料用途や家具用途、ハンドルやシートなどの自動車内装材の高級感を求められる分野に好適に使用することができる。
積層体の構成は、図1に示すように、繊維基材(1)、接着剤層(2)、樹脂表皮層(3)で積層された三層で構成された積層体である。
<繊維性基材>
ここで、本発明の積層体に使用される繊維性基材としては、少なくとも有機繊維、無機繊維、有機−無機複合繊維の何れかにより構成されていれば特に限定されるものではない。有機繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン6、ナイロン66、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、セルロース、ポリ乳酸、綿、ウールから選ばれる少なくとも1種類を主成分とする有機繊維を挙げることができる。
また、無機繊維としては、ガラスウールなどの無機繊維や炭素繊維を挙げることができ、これにより、積層体の強度や不燃性の効果を付与することを可能とする。更に、層状鉱物などと、前記の有機繊維とナノコンポジットを行った有機−無機複合繊維も用途によって使用することができる。
これらの繊維性基材は、接着剤層との接着性を上げるために、繊維性基材表面をコロナ放電処理、フレーム処理、紫外線照射処理、及びオゾン処理等の処理をすることも可能である。
また、繊維性基材の性状としては、厚さが0.1〜10mmであり、JIS K7222に規定された見かけ密度が0.05〜0.5g/cmであることが好ましい。下限値未満の場合には、均一な接着層を形成し難くなり接着強度の低下を招く恐れがある。また、上限値を超える場合には耐屈曲性の低下を招く恐れがある。
本発明の繊維性基材用接着剤としては、前記の水系樹脂組成物を含有した接着剤である。この繊維性基材用接着剤は、性能が低下しない範囲で、前記の芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、これらのポリイソシアネートを原料として得られるイソシアヌレート基含有ポリイソシアネート、ウレトジオン基含有ポリイソシアネート、ウレトジオン基及びイソシアヌレート基含有ポリイソシアネート、ウレタン基含有ポリイソシアネート、アロファネート基含有ポリイソシアネート、ビュレット基含有ポリイソシアネート、ウレトイミン基含有ポリイソシアネート等から誘導された水溶性、又は水分散性の機能を有する架橋剤を併用することができる。
また、積層体の製造方法としては、(1)剥離紙、又は剥離フィルムなどの離型性支持体に樹脂表皮層を形成し、更に樹脂表皮層上に本発明の繊維性基材用接着剤を塗布して接着剤層を形成後、繊維性基材と貼り合わせ、加熱硬化し、剥離紙又は剥離フィルムを剥離して積層体を得る方法や、(2)繊維性基材上に本発明の繊維性基材用接着剤を塗布した後、接着剤層上に予め剥離紙又は剥離フィルムなどの離型性支持体に形成していた樹脂表皮層を貼り合わせ、加熱硬化し、剥離紙又は剥離フィルムを剥離して積層体を得る方法があり、適宜選択される。
ここで、本発明の繊維性基材用接着剤の塗布量としては、樹脂固形分換算で少なくとも10g/mになるように塗布することが好ましい。下限値未満である場合には、接着性が十分でない恐れがある。また、塗布する方法としては、ナイフ塗布、ワイヤーバー塗布、ドクターブレード塗布、リバースロール塗布、カレンダー塗布等の公知技術の方法により行うことができる。
本発明の繊維性基材用接着剤を塗布後、層形成のために乾燥させる温度としては50〜150℃であることが好ましい。下限値未満の場合には、加熱によるゲル化性が不十分であり、接着剤の浸透性を抑制できない恐れがある。また、上限値を超える場合は、剥離紙、又は剥離フィルムなどの離型性支持体の熱劣化により、剥離が困難になる恐れがある。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<水系樹脂(B)の合成>
<合成例1>
撹拌機、温度計、冷却管、滴下ロートを備えた容量2000ミリリットルの四つ口フラスコに、ポリカーボネートジオールを143.2gと、ジプロピレングリコールジメチルエーテルを50gと、ジメチロールブタン酸を21.3gとを仕込み、100℃で10分間、加熱溶解させた。70℃に冷却後、C−2770(NCO含有量:19.4質量%、HDI系アロファネート変性ポリイソシアネート、日本ポリウレタン工業社製)を129.6g仕込み、80℃で3時間反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを得た。次いで、トリエチルアミンを14.5g添加してカルボキシル基の中和反応を行った。その後、撹拌しながら水を602.1g仕込み、水分散後、水が33.4gと、ジエチレントリアミンが5.9gからなるアミン混合水溶液を39.3g添加し、鎖延長反応を30℃にて12時間行った。FT−IRによりイソシアネート基の存在が確認されなくなったところで充填し、水系樹脂1を得た。水系樹脂1の固形分は30.0質量%、pHは9.1、平均粒径は19nm、25℃の粘度は50mPa・sであった。
<合成例2>
撹拌機、温度計、冷却管、滴下ロートを備えた容量2000ミリリットルの四つ口フラスコに、イオン交換水137.4gを仕込み、脱気、窒素ガスのバブリングを数回繰り返し溶存酸素濃度が2mg/L以下になるまで脱酸素した。次に、メタクリル酸メチルを41.0gと、メタクリル酸ブチルを54.0gと、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルを5.0gからなる混合物を100gと、アデカリアソーブSR−1025(反応性乳化剤、25%水溶液、アデカ社製)を8.0gと、イオン交換水を39.7g混合し、乳化機にかけ10000回転で10分間乳化し、プレエマルジョンを製造した。四つ口フラスコ内の温度が75℃になった時点で、プレエマルジョンを14.8g添加した。次に、重合開始剤である過硫酸アンモニウムを0.2g添加し、75℃で1時間乳化重合を行った。プレエマルジョンの132.9gを3時間で四つ口フラスコ内に滴下し、滴下終了後、75℃でさらに1時間重合を行った。反応終了後、40℃以下になるまで冷却し、アデカネートB−1016(消泡剤、アデカ社製)を0.05g添加し、さらに30分間撹拌、混合し、25%アンモニア水0.47g、希釈用イオン交換水393.5gを添加して水系樹脂2を得た。水系樹脂2の固形分は15.0質量%、pHは8.2、平均粒径は135nm、25℃の粘度は1.6mPa・sであった。
<繊維性基材用接着剤の配合>
本発明の水系樹脂組成物は、表1、及び表2に示す配合量で熱ゲル化剤(A)と、水系樹脂(B)とを調整し、更にアクアレンSB−630(消泡剤、変性シリコーン系、共栄社化学社製)を配合することで繊維性基材用接着剤とした。
<表皮層用樹脂の配合>
表皮層用樹脂の配合は、水系樹脂(B)として合成した水系樹脂1と、ルチル型酸化チタン(製品名:CR−90、石原産業社製)を樹脂全量に対して2質量%配合し、スリーワンモータで撹拌速度300rpm×10min行うことで表皮層用樹脂の主剤を調整し、
更に、水系硬化剤としてAQ−210(日本ポリウレタン工業社製)をR(イソシアネート基/水酸基のモル比)=1になるように配合し、表皮層用樹脂液を得た。
<積層体の作製>
以下の二種類の製造方法で積層体を作製した。
<製造方法1>
第1工程:表皮層用樹脂液をポリエチレンラミネートされた剥離紙上に流し、バーコーターにて厚さ100μmになるように塗布。その後、120℃×10minで硬化させ表皮層を形成。
第2工程:第1工程で得られた表皮層の上に繊維性基材用接着剤をバーコーターにて任意の厚さになるように塗布。その後、繊維性基材を貼り合わせ、2kgの圧着ローラーで圧着し、120℃×10minで乾燥及び硬化させ積層体を作製。
<製造方法2>
第1工程:表皮層用樹脂液をポリエチレンラミネートされた剥離紙上に流し、バーコーターにて厚さ100μmになるように塗布。その後、120℃×10minで硬化させ表皮層を形成。
第2工程:繊維性基材上に繊維性基材用接着剤をバーコーターにて任意の厚さになるように塗布。その後、第1工程で得られた表皮層を貼り合わせ、2kgの圧着ローラーで圧着し、120℃×10minで乾燥及び硬化させ積層体を作製。
表1、及び表2に繊維性基材用接着剤を使用した積層体の諸特性を示す。表1、及び表2に示すように、実施例1〜実施例13に係る繊維性基材用接着剤を使用した積層体は、繊維性基材に対する接着性や耐屈曲性に優れていることが分かった。また、繊維性基材用接着剤に使用した水系樹脂組成物は、高温における貯蔵安定性に優れていることが分かった。

Figure 2015131922

Figure 2015131922
表1、及び表2に用いられる原料の略記号は以下の通り。
(1)メトローズSM:メチルセルロース(置換基:メトキシ基、置換率:60%、信越化学工業社製)の3質量%の水溶液
(2)メトローズ60SH:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(置換基:メトキシ基及びヒドロキシプロポキシ基、置換率:72%、信越化学工業社製)の3質量%の水溶液
(3)メトローズ90SH:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(置換基:メトキシ基及びヒドロキシプロポキシ基、置換率:53%、信越化学工業社製)の3質量%の水溶液
(4)メトローズSEB:ヒドロキシエチルメチルセルロース(置換基:メトキシ基及びヒドロキシエトキシ基、置換率:57%、信越化学工業社製)の3質量%の水溶液
(5)アエロジル300:ヒュームドシリカ(日本アエロジル社製)の3質量%の水溶液
(6)水系樹脂1:水系ウレタン樹脂
(7)水系樹脂2:水系アクリル樹脂
(8)アクアレンSB−630:変性シリコーン系消泡剤(共栄社化学社製)
(9)繊維性基材1:ナイロン6繊維、厚さ:1.0mm、見かけ密度:0.320g/cm
(10)繊維性基材2:ポリエステル繊維、厚さ:1.0mm、見かけ密度:0.112g/cm
(11)繊維性基材3:ポリエステル繊維、厚さ:1.4mm、見かけ密度:0.072g/cm
(1)評価試験1:
<貯蔵安定性試験>
水系樹脂組成物を60℃×一ヶ月間放置後、常温で目視により状態を確認した。
<評価基準>
・凝集物や沈降物がある:不合格(評価:×)
・凝集物や沈降物がない:合格(評価:○)
(2)評価試験2:
<耐摩耗性>
JIS L1096に準じ、テーバー摩耗試験機(安田精機製作所社製)により、荷重1kg、円板回転速度60rpm×500回転、磨耗輪H−22を使用し、摩耗性を測定した。
<評価基準>
・等級1:貫通孔を生じたもの(不合格、評価:×)
・等級2:表皮層を越えて繊維性基材の一部が破壊されたもの(不合格、評価:×)
・等級3:表皮層の大部分が消滅したもの(不合格、評価:×)
・等級4:表皮層の一部が消滅したもの(合格、評価:△)
・等級5:外観の変化が認められないもの(合格、評価:○)
(3)評価試験3:
<接着力・剥離状態>
日本ケミカルシューズ工業組合作成「ケミカルシューズ試験方法」に準じ、繊維性基材と表皮層の接着力、及び剥離状態を測定した。
<試験片の作製及び評価方法>
作製した積層体から幅25mm、長さ150mmの短冊状片を2本切り出し、一本の短冊状片を長さ方向の一端から100mmまでウレタン系接着剤を表皮層上に塗布し、残りの短冊状片の表皮層側と貼り合わせた。2kgのハンドローラーで気泡が入らないように圧着し、40℃×24時間放置して試験片とした。
試験片を予め20mm剥離し、テンシロンUTA−500(オリエンテック社製)引張試験機のつかみ具に両片をはさみ、剥離速度50mm/minで接着力と剥離状態を評価した。
<評価基準>
・繊維性基材と表皮層間で界面剥離する:不合格(評価:×)
・繊維性基材と表皮層間での界面剥離と繊維性基材の破壊とが混在している:合格(評価:△)
・繊維性基材の破壊を生じる:合格(評価:○)
(4)評価試験4:
<耐屈曲性>
JIS K6505に準じ、フレキシオメーター(安田精機製作所社製)により、温度25℃、屈曲回数30000回行い耐屈曲性を測定した。
<評価基準>
・等級1:部分的に切断を生じたもの(不合格、評価:×)
・等級2:表皮層を越えて繊維性基材の一部に亀裂を生じたもの(不合格、評価:×)
・等級3:表皮層を越えて繊維性基材との界面に達する亀裂及び表皮層の大部分の浮きを生じたもの(不合格、評価:×)
・等級4:僅かに表皮層の浮きを生じたもの(合格、評価:△)
・等級5:変化が認められないもの(合格、評価:○)

Claims (11)

  1. 少なくとも下限臨界共溶温度が25〜100℃の熱ゲル化剤(A)と、水系樹脂(B)とからなることを特徴とする水系樹脂組成物。
  2. 熱ゲル化剤(A)が、セルロースエーテルであり、セルロースの水酸基をメトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、及びヒドロキシプロポキシ基の少なくとも1種類より選ばれる置換基で置換していることを特徴とする請求項1に記載の水系樹脂組成物。
  3. セルロースエーテルの置換率が、グルコース環単位当たり50〜75%であることを特徴とする請求項2に記載の水系樹脂組成物。
  4. 水系樹脂組成物の樹脂固形分換算の熱ゲル化剤(A)の含有量が5〜50質量%であることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の水系樹脂組成物。
  5. 水系樹脂(B)が、少なくとも有機ポリイソシアネート(b1)と、高分子ポリオール(b2)と、カルボキシル基を有するアニオン性低分子グリコール(b3)と、中和剤(b4)と、鎖延長剤(b5)とを反応させて得られた水分散性ポリウレタン樹脂であることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の水系樹脂組成物。
  6. 請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の水系樹脂組成物を含有することを特徴とする繊維性基材用接着剤。
  7. 繊維性基材と接着剤層と樹脂表皮層の三層から構成される積層体において、接着剤層が請求項6に記載の繊維性基材用接着剤からなることを特徴とする積層体。
  8. 繊維性基材が、厚さ0.1〜10mmであり、JIS K7222に規定された見かけ密度が0.05〜0.5g/cmであることを特徴とする請求項7に記載の積層体。
  9. 繊維性基材が、有機繊維により構成されていることを特徴とする請求項7、又は請求項8に記載の積層体。
  10. 繊維性基材用接着剤を樹脂表皮層上に、樹脂固形分換算で少なくとも10g/m塗布し、繊維性基材を貼り合わせ、硬化させることを特徴とする請求項7〜請求項9の何れか一項に記載の積層体の製造方法。
  11. 繊維性基材用接着剤を繊維性基材上に、樹脂固形分換算で少なくとも10g/m塗布し、樹脂表皮層を貼り合わせ、硬化させることを特徴とする請求項7〜請求項9の何れか一項に記載の積層体の製造方法。
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