JP2015128740A - 有機排水の処理方法および装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】二酸化炭素と反応して析出物を生成する物質を高濃度に含む有機排水を、グラニュールを用いる高速メタン発酵プロセスによって、メタン発酵処理してバイオガスを生成する有機排水の処理方法であって、二酸化炭素を含有するガスを、有機排水に接触させて、二酸化炭素を含有するガス中の二酸化炭素により析出物を生成する析出工程と、析出工程で析出した固形物を分離する固液分離工程と、固液分離工程で得られた排水をメタン発酵処理するメタン発酵工程とを順に行う。
【選択図】図1
Description
上記目的を達成するための本発明の有機排水の処理方法は、
二酸化炭素と反応して析出物を生成する物質を高濃度に含む有機排水を、グラニュールを用いる高速メタン発酵プロセスによって、メタン発酵処理してバイオガスを生成する有機排水の処理方法であって、
二酸化炭素を含有するガスを、前記有機排水に接触させて、前記二酸化炭素を含有するガス中の二酸化炭素により析出物を生成する析出工程と、
前記析出工程で析出した固形物を分離する固液分離工程と、
前記固液分離工程で得られた排水をメタン発酵処理するメタン発酵工程とを
順に行うことを特徴とする。
上記構成によると、二酸化炭素を含有するガスを、前記有機排水に接触させて、前記二酸化炭素を含有するガス中の二酸化炭素により析出物を生成する析出工程を行うことで、メタン発酵プロセスを行う有機排水中の二酸化炭素と反応して析出物を生成する物質を、析出工程により析出させて、固液分離工程により前記有機排水中から除去できる。
二酸化炭素と反応して析出物を生成する物質を高濃度に含む有機排水としては、製紙工場の排水や乳製品工場の排水等が挙げられる。なお、二酸化炭素と反応して析出物を生成する物質の濃度は、有機排水の総硬度として、500mg/L(Ca濃度200mg/L相当)以上で十分高く、一般には総硬度250mg/L(Ca濃度100mg/L相当)以上であれば、高濃度に含有するものと考えられる。
二酸化炭素は、ガスエンジン等から発生する燃焼排ガスや、メタン発酵により発生するバイオガスとして安価に提供することができ、ガスとして有機排水と気液接触させるだけで効率よく析出させることができるので、炭酸ナトリウムを添加して析出させるのに比べて極めて簡便かつ安価に析出工程を行える。
上記構成において、前記二酸化炭素を含有するガスがバイオガスおよび燃焼排ガスから選ばれる少なくとも一方を含むものとできる。
前記二酸化炭素を含有するガスをバイオガスとすると、前記バイオガスとしてメタン発酵工程において発生したものを用いることができるから、別途ガス供給源を確保することなく簡便に二酸化炭素を含有するガスを調達することができ、メタン発酵工程における効率の良いメタン発酵に寄与できる。また、この場合、二酸化炭素は常温で発生することになり、処理対象の有機排水の加温が不要又は冷却が必要な場合に好都合である。なお、バイオガス中には20%〜40%(体積)の二酸化炭素を含有しており、析出工程において必要となる二酸化炭素を効率よく供給できる。
上記構成において、前記二酸化炭素と反応して析出物を生成する物質がカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンから選ばれる少なくとも一方を主成分とするものとできる。
たとえば、製紙工場の排水や乳製品工場の排水には、高濃度のカルシウムイオンが含まれており、このような排水を処理するような場合に、カルシウムイオンによるメタン発酵効率低下を抑制して効率の良い有機排水処理が行えるようになる。
また、酸性度の調整に水酸化マグネシウムを用いた後の工場排水などにはマグネシウムイオンが高濃度に含まれており、上記のカルシウムイオンと同様の事情がある。
また、前記析出工程の前に、前記有機排水のpHを9〜14の範囲に調整するpH調整工程を行うことが好ましい。
析出工程を行う際に、二酸化炭素を含有するガスを有機排水に接触させるが、この際、炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムはpHが低いほど溶解度が高くなるため、これらの物質が十分に析出する条件に維持することが好ましい。そこで、有機排水のpHを9〜14の範囲に調整すると、炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムの溶解度が十分に低いので好ましい。この条件は、少なくともアルカリ条件(pH9以上)であれば、炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムが析出する条件であり、pHが高いほど析出しやすいが、pHを高めるために必要となるアルカリの費用対効果を鑑みてpH9〜14が好ましく、pH9〜10がさらに好ましい。
また、バイオガス中の硫化水素を除去する脱硫工程を行ってもよい。
有機排水の性状は、場合によって硫黄分を高濃度に含んでいる場合があり、このような場合に、発生するバイオガス中に硫化水素等の硫黄含有ガスが含まれる場合がある。このようなガスは、配管を腐食したり悪臭を発したりするが、脱硫工程によってこのような弊害を抑制できる。なお、二酸化炭素を含有するガスとしてバイオガスを用いるような場合には、特に、硫黄分がメタン発酵工程に再循環されてしまうために、メタン発酵に対する悪影響も懸念されるので特に好ましい形態となる。
また、前記有機排水を、前記二酸化炭素と反応して析出物を生成する物質がカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンから選ばれる少なくとも一方を主成分とするものであり、総硬度換算で500mg/L以上含むものとしてあってもよい。
有機排水の総硬度が高い場合、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンから選ばれる少なくとも一方を主成分とする、二酸化炭素と反応して析出物を生成する物質をより多く含んでいるので、特に析出工程により析出物を析出させて、固液分離することにより、総硬度を大きく低下させることができ、これらの物質を総硬度換算で500mg/L以上含むような、従来メタン発酵効率が低く、メタン発酵を適用することができなかった排水であっても、効率よくメタン発酵できるようになり、バイオガス化できる。
また、前記固液分離工程で得られ、メタン発酵工程に供される排水の、前記二酸化炭素と反応して析出物を生成する物質の含有量を、総硬度換算で250mg/L以下まで低下させることが好ましい。
前記固液分離工程で得られた排水は、総硬度を低くするほど二酸化炭素と反応して析出物を生成する物質を、より低減できるので、メタン発酵工程においては、グラニュールに析出物が蓄積されてUASB菌の生育が阻害されるのを抑制できる。そこで、析出工程により固液分離工程で得られた排水の総硬度が250mg/L以下になるまで析出物を生成させれば、メタン発酵工程においてグラニュール内部に析出物が蓄積されてしまうおそれを十分に低減し、良好なメタン発酵を継続できるようになる。
また、前記固液分離工程において、凝集剤を添加してもよい。
固液分離工程を行う際に、析出工程により析出した析出物が、微細粒子であるような場合には、固液分離が困難となっている場合がある。このような場合や、より固液分離を円滑に行いたい場合に、析出物をより固液分離しやすくするために、凝集剤を添加できる。本発明においても、二酸化炭素と反応して生成する析出物は微細粒子になる傾向がみられるものの、凝集剤を添加すると、析出物が凝集して大粒径になるので、固液分離を容易にするとともに、分離困難な析出物まで固液分離除去できるので、固液分離効率が向上し、グラニュールに析出物が蓄積されるおそれをより一層低減できる。
また、前記固液分離工程を加圧浮上分離法により行ってもよい。
また、本発明の有機排水の処理装置の特徴構成は、二酸化炭素と反応して析出物を生成する物質を高濃度に含む有機排水に、二酸化炭素を含有するガスを接触させて析出物を生成する析出部を備え、
前記析出部で析出した析出物を固液分離する固液分離部を備え、
前記固液分離部で得られた有機排水をメタン発酵処理するメタン発酵部を備えた点にある。
上記構成によると、二酸化炭素と反応して析出物を生成する物質を高濃度に含む有機排水に、二酸化炭素を含有するガスを接触させて析出物を生成する析出部を備えるから、有機排水に含まれる二酸化炭素と反応して析出物を生成する物質に、二酸化炭素を含有するガスを供給して、析出部で析出物として析出させることができる。また、固液分離部を備えるから析出部で析出した析出物は固液分離部において有機排水から分離除去される。析出物が分離除去された有機排水は、二酸化炭素と反応して析出物を生成する物質の濃度が低減されている。この有機排水をメタン発酵処理すると、メタン発酵処理においては、グラニュールに析出物が蓄積されてUASB菌の生育が阻害されるのを抑制できるから、効率の良いメタン発酵を長期にわたって安定的に行えるようになる。
また、前記二酸化炭素を含有するガスが少なくとも燃焼排ガスを含有するものとし、前記析出部に燃焼排ガスを導入して前記有機排水と気液接触させる気液接触部を設けてあってもよい。
前記析出部として、二酸化炭素を含有するガスとして燃焼排ガスを含有するものを用いた場合に、燃焼排ガスを導入して前記有機排水と気液接触させる気液接触部を設けることによって、二酸化炭素と反応して析出物を生成する物質を高濃度に含む有機排水に、二酸化炭素を含有するガスを接触させることができる。したがって、適正な二酸化炭素を含有するガスの供給量で、効率よく析出物を生成させることができる。
また、前記二酸化炭素を含有するガスが少なくともバイオガスを含有するものとし、前記メタン発酵部で生成したバイオガスを前記析出部に返送する返送路を設け、前記バイオガスを前記有機排水と気液接触させる気液接触部を設けてあってもよい。
前記析出部として、二酸化炭素を含有するガスとして、バイオガスを含有するものを用いる場合、メタン発酵部で生成したバイオガスを前記析出部に返送する返送路を設けることによって、メタン発酵部で生成したバイオガス中に含まれる二酸化炭素を用いて析出を行うことができる。そして、バイオガスを前記有機排水と気液接触させる気液接触部を設けてあれば、二酸化炭素と反応して析出物を生成する物質を高濃度に含む有機排水に、二酸化炭素を含有するガスを接触させることができる。したがって、適正な二酸化炭素を含有するガスの供給量で、効率よく析出物を生成させることができる。
また、前記バイオガスの返送路にバイオガス中の硫化水素を除去する脱硫部を設けてもよい。
前述のように、バイオガス中に硫化水素等の硫黄含有ガスが含まれる場合がある。このような場合、返送路を通じて硫黄分がメタン発酵工程に再循環されてしまうために、メタン発酵に対する悪影響も懸念されるが、脱硫部を設けて硫黄含有ガスを除去すれば、メタン発酵を良好な条件に維持して行えるとともに、配管腐食、悪臭といった問題も抑制できることとなる。
また、前記析出部に供給される有機排水をpH調整するpH調整部を備えてもよい。
前述のように、析出を行う際に、有機排水の液性を炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムの析出しやすい条件に維持することが好ましい。そこで、pH調整部を備えることにより、有機排水のpHを適正な範囲に調整できるようになり、炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムが析出しやすくなるので好ましい。
また、前記固液分離部に凝集剤添加部を設けてもよい。
前述のように、固液分離を行う際に、析出部で析出した析出物が、微細粒子であるために、固液分離が困難となっている場合がある。このような場合、凝集剤を添加すると、二酸化炭素と反応して生成する析出物が凝集して大粒径になるので、固液分離を容易にするとともに、分離困難な析出物まで固液分離除去できる。また、固液分離効率が向上し、グラニュールに析出物が蓄積されるおそれをより一層低減できる。
前記固液分離部にガスが飽和溶解された飽和加圧水を供給する飽和加圧水供給部を設けてもよい。
前記固液分離部にガスが飽和溶解された飽和加圧水を供給する飽和加圧水供給部を設けてあれば、前記固液分離部において加圧浮上分離法による固液分離が行えることになる。加圧浮上分離を行うことにより効率的に析出物の粒子を浮上させ水面付近で気泡とともに凝集させて容易に分離除去できるようになる。
有機排水の処理装置は、図1に示すように、二酸化炭素と反応して析出物を生成する物質を高濃度に含む有機排水aに、二酸化炭素を含有するガスb1、b2を接触させて析出物を生成する析出部1を備え、
前記析出部1で析出した析出物cを固液分離する固液分離部2を備え、
前記固液分離部2で得られた有機排水aをメタン発酵処理するメタン発酵部3を備える。
また、前記析出部1に供給される有機排水aをpH調整するpH調整部4を備える。
有機排水aとしては、たとえば、総硬度が750〜2500mg/L程度で、二酸化炭素と反応して析出物を生成する物質としてのカルシウムイオンを含有する製紙工場排水が対象であり、以下この排水を処理する場合を例に具体的に説明する。
有機排水aは、有機排水貯留部5に一旦貯留され、定量的にpH調整部4に供給される。
pH調整部4は、前記有機排水aを受け入れる受入部41を備えた反応槽40に、pH調整剤dとしての水酸化ナトリウムを投入するアルカリ投入部42を備えてなり、投入されたpH調整剤dによりpH調整工程が行われ、たとえばpH9.3に調整された有機排水aは、排水部43より排出される構成となっている。なお、排水される有機排水aのpHは、pHメータにより監視され、pH値に応じた量のpH調整剤dがアルカリ投入部42より投入されるように制御される。
pH調整剤dとしては、一般的に水酸化ナトリウムが安価な強アルカリとして好適に用いられるが、その他アルカリで、たとえば水酸化カリウム、等、二酸化炭素と反応して析出物を生成する物質を含まないものであれば、同様に用いることができる。
前記pH調整部4から排水されたpH調整された有機排水aは、析出部1に流入する。析出部1は、pH調整された有機排水aを受け入れて散布する散布部11を備えた気液接触槽10に、二酸化炭素を含有するガス(CO2)としてのガスエンジン等の燃焼機関から供給される燃焼排ガスb1を流通させる排ガス供給部12および後述のバイオガス返送路36から供給されるバイオガスb2を流通させるバイオガス供給部13を設けてなる気液接触部14を設けて析出工程を行う構成するとともに、気液接触して燃焼排ガス中の二酸化炭素と接触した有機排水aを排水する排水部15および反応済みの燃焼排ガスb1およびバイオガスb2を排気する排気部16を備える。これにより、析出部1では有機排水aと燃焼排ガスb1、バイオガスb2に含まれる二酸化炭素との効率的な接触が図られ、有機排水a中に含まれるカルシウムイオンが二酸化炭素と反応して、析出物cである不溶性の炭酸カルシウムとして析出させられる構成となっている。
前記析出部1から排水された析出物cを含む有機排水aは、固液分離部2に流入する。固液分離部2は、析出物cを含む有機排水aを受け入れる受入部21を備える固液分離槽20に、加圧条件下でガスが飽和溶解された飽和加圧水fを供給する飽和加圧水供給部22を設け、有機排水aに凝集剤eとしてたとえばPACを添加する凝集剤添加部23を設け、固液分離部2より受け入れた有機排水aに含まれる析出物cを、凝集剤eにより凝集させるとともに、析出物cの凝集した有機排水aに飽和加圧水fを供給して、前記析出物cを加圧浮上分離する固液分離工程を行う構成としてある。また、加圧浮上分離された析出物cを排出する排出部24を備えるとともに、析出物cの分離除去された有機排水aを排水する排水部25を備える。これにより固液分離部2では、前記飽和加圧水fが常圧下に放出されて発生した気泡が析出物cに付着して浮上分離が行われ、浮上分離された析出物cが排出部24より除去されるとともに、析出物cの分離除去された有機排水aが排水部25より排水される構成としてある。
前記メタン発酵部3は、析出物cの分離除去された有機排水aを受け入れるUASB反応装置からなる。UASB反応装置は、下部に嫌気性菌(UASB菌)hを主体とする汚泥のグラニュールを充填されるスラッジベッド31を備えるとともに、前記固液分離部2からの有機排水aを供給する供給部32を備える反応容器30を備える。これにより、導入される有機排水aの上向流が形成されるとともに、内部の有機排水aの循環を促し、流動するグラニュールにより有機物をメタン発酵するメタン発酵工程が行われる。スラッジベッド31の上部には、グラニュールの流失を防止するとともに処理済みの上澄である処理水および生成したバイオガスb2を上方に移流させる分離板33を設けてある。分離板上方に移流した処理済みの処理水は、オーバーフロー部34よりUASB反応槽外へ取出されるとともに、生成したメタンガスを含むバイオガスb2は、ガス回収部35よりUASB反応装置外へ取出される構成となっている。ガス回収部35より回収されるバイオガスb2は、バイオガス返送路36を介して析出部1に供給される。
前記バイオガス返送路36には、メタン発酵部3において発生したバイオガス中に含まれる硫黄成分を脱硫触媒61により除去可能にする脱硫部6が設けられ脱硫工程を行う構成としてある。脱硫部6は、たとえば、酸化鉄系の脱硫触媒61を充填してなる脱硫器60にバイオガスb2を流通自在に構成できる。このバイオガス返送路36は、析出部1のバイオガス供給部13に接続される。
一般的な有機排水を模擬した有機排水として、CODcr濃度2600mg/L、二酸化炭素と反応して析出物を生成する物質としてのCa濃度48mg/L(換算される総硬度120mg/L相当)の排水を、直接UASB反応装置で処理したところ、1か月にわたってCODcr分解率80%以上を継続し、1か月後のグラニュールの灰分濃度は85%であった。すなわち、二酸化炭素と反応して析出物を生成する物質をあまり高濃度に含まない一般的な有機排水では、UASB反応装置により長期にわたって安定した運転が可能であることがわかる
二酸化炭素と反応して析出物を生成する物質を高濃度に含む有機排水を模擬した有機排水として、CODcr濃度2600mg/L、二酸化炭素と反応して析出物を生成する物質としてのCa濃度330mg/L(総硬度825mg/L相当)の排水を直接UASB反応装置で処理したところ、2週間後にグラニュール表面の色が白っぽく変わっているのが認められた。グラニュールの灰分濃度を測定したところ、86%であり、グラニュールの大部分が無機物におき代わっていることが判明した。すなわち、二酸化炭素と反応して析出物を生成する物質を高濃度に含む有機排水をUASB反応装置で処理する場合、二酸化炭素と反応して析出物を生成する物質がグラニュールに析出物が蓄積されてUASB菌の生育が阻害されることがわかる。したがって、二酸化炭素と反応して析出物を生成する物質を高濃度に含む有機排水を直接UASB反応装置で処理した場合、継続的なメタン発酵処理は困難であることが明らかとなった。
二酸化炭素と反応して析出物を生成する物質を高濃度に含む有機排水を模擬した有機排水として、二酸化炭素と反応して析出物を生成する物質としてのCa濃度254mg/L(総硬度635mg/L相当)の排水に炭酸ナトリウムを1000mg/LとPACを400mg/L添加し、pHを9.0にした後ろ過したところ、ろ液中のCa濃度は46mg/Lとなった。すなわち、二酸化炭素と反応して析出物を生成する物質を高濃度に含む有機排水をUASB反応装置で処理する場合、UASB反応装置におけるメタン発酵工程を行うに先立って、二酸化炭素と反応して析出物を生成する物質を析出除去することによて継続的なメタン発酵処理が可能となることがわかり、UASB反応装置におけるメタン発酵工程を行うに先立って、析出工程および固液分離工程を行い、有機排水の硬度を下げれば、継続的なメタン発酵処理が可能となり、さらに好ましくはpH調整工程を行うことにより、参考例1と同様に継続的な運転が可能になることが分かった。
Ca濃度332mg/L(総硬度830mg/L程度相当)の排水のpHを9.2に維持しながら、排水中にCO2を20%含むバイオガスを15L通気させた。その後、析出物をろ過し、ろ液中のCa濃度を測定したところ5.6mg/L(総硬度14mg/L相当)であった。すなわち、二酸化炭素を含有するガスを、前記有機排水に接触させて、前記二酸化炭素を含有するガス中の二酸化炭素により析出物を生成する析出工程を行うことにより、有機排水の硬度を下げ、継続的な運転が可能であることが示された。
(1)有機排水としては、製紙工場の排水や乳製品工場の排水等、二酸化炭素と反応して析出物を生成する物質を高濃度に含むものを好適に取り扱うことができるが、二酸化炭素と反応して析出物を生成する物質としては、カルシウムイオンの他マグネシウムイオンでも同様に処理できることは明らかである。
10 :気液接触槽
11 :散布部
12 :排ガス供給部
13 :バイオガス供給部
14 :気液接触部
15 :排水部
16 :排気部
2 :固液分離部
20 :固液分離槽
21 :受入部
22 :飽和加圧水供給部
23 :凝集剤添加部
24 :排出部
25 :排水部
3 :メタン発酵部
30 :反応容器
31 :スラッジベッド
32 :供給部
33 :分離板
34 :オーバーフロー部
35 :ガス回収部
36 :バイオガス返送路
4 :pH調整部
40 :反応槽
41 :受入部
42 :アルカリ投入部
43 :排水部
5 :有機排水貯留部
6 :脱硫部
60 :脱硫器
61 :脱硫触媒
a :有機排水
b1 :燃焼排ガス
b2 :バイオガス
c :析出物
d :pH調整剤
e :凝集剤
f :飽和加圧水
Claims (16)
- 二酸化炭素と反応して析出物を生成する物質を高濃度に含む有機排水を、グラニュールを用いる高速メタン発酵プロセスによって、メタン発酵処理してバイオガスを生成する有機排水の処理方法であって、
二酸化炭素を含有するガスを、前記有機排水に接触させて、前記二酸化炭素を含有するガス中の二酸化炭素により析出物を生成する析出工程と、
前記析出工程で析出した固形物を分離する固液分離工程と、
前記固液分離工程で得られた排水をメタン発酵処理するメタン発酵工程とを
順に行う有機排水の処理方法。 - 前記二酸化炭素を含有するガスがバイオガスおよび燃焼排ガスから選ばれる少なくとも一方を含むものである請求項1に記載の有機排水の処理方法。
- 前記二酸化炭素と反応して析出物を生成する物質がカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンから選ばれる少なくとも一方を主成分とするものである請求項1または2に記載の有機排水の処理方法。
- 前記析出工程の前に、前記有機排水のpHを9〜14の範囲に調整するpH調整工程を行う請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機排水の処理方法。
- バイオガス中の硫化水素を除去する脱硫工程を行う請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機排水の処理方法。
- 前記二酸化炭素と反応して析出物を生成する物質がカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンから選ばれる少なくとも一方を主成分とするものであり、総硬度換算で500mg/L以上含む有機排水である請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機排水の処理方法。
- 前記固液分離工程で得られ、メタン発酵工程に供される排水の総硬度が250mg/L以下である請求項1〜6のいずれか一項に記載の有機排水の処理方法。
- 前記固液分離工程において、凝集剤を添加する請求項1〜7のいずれか一項に記載の有機排水の処理方法。
- 前記固液分離工程を加圧浮上分離法により行う請求項1〜8のいずれか一項に記載の有機排水の処理方法。
- 二酸化炭素と反応して析出物を生成する物質を高濃度に含む有機排水に、二酸化炭素を含有するガスを接触させて析出物を生成する析出部を備え、
前記析出部で析出した析出物を固液分離する固液分離部を備え、
前記固液分離部で得られた有機排水をメタン発酵処理するメタン発酵部を備えた有機排水の処理装置。 - 前記二酸化炭素を含有するガスが少なくとも燃焼排ガスを含有するものであり、前記析出部に燃焼排ガスを導入して前記有機排水と気液接触させる気液接触部を設けてある請求項10に記載の有機排水の処理装置。
- 前記二酸化炭素を含有するガスが少なくともバイオガスを含有するものであり、前記メタン発酵部で生成したバイオガスを前記析出部に返送する返送路を設け、前記バイオガスを前記有機排水と気液接触させる気液接触部を設けてある請求項10に記載の有機排水の処理装置。
- 前記バイオガス返送路にバイオガス中の硫化水素を除去する脱硫部を設けた請求項12に記載の有機排水の処理装置。
- 前記析出部に供給される有機排水をpH調整するpH調整部を備えた請求項10〜13のいずれか一項に記載の有機排水の処理装置。
- 前記固液分離部に凝集剤添加部を設けた請求項10〜14のいずれか一項に記載の有機排水の処理装置。
- 前記固液分離部に加圧条件下でガスが飽和溶解された飽和加圧水を供給する飽和加圧水供給部を設けた請求項10〜15のいずれか一項に記載の有機排水の処理装置。
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