以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
[1.現金自動預払機の構成]
図1に外観を示すように、現金自動預払機1は、箱状の筐体2を中心に構成されており、例えば金融機関等に設置され、顧客との間で入金取引や出金取引等の現金に関する取引を行うようになっている。
筐体2は、その前側に顧客が対峙した状態で紙幣の投入やタッチパネルによる操作等をしやすい箇所に接客部3が設けられている。接客部3は、カード入出口4、入出金口5、操作表示部6、テンキー7、及びレシート発行口8が設けられており、顧客との間で現金や通帳等を直接やり取りすると共に、取引に関する情報の通知や操作指示の受付を行うようになっている。
カード入出口4は、キャッシュカード等の各種カードが挿入または排出される部分である。カード入出口4の筐体内側には、各種カードに磁気記録された口座番号等の読み取りを行うカード処理部(図示せず)が設けられている。入出金口5は、顧客により入金する紙幣が投入されると共に、顧客へ出金する紙幣が排出される部分である。また入出金口5は、シャッタを駆動することにより開放又は閉塞するようになっている。
操作表示部6は、取引に際して操作画面を表示するLCD(Liquid Crystal Display)と、取引の種類の選択、暗証番号や取引金額等を入力するタッチパネルとが一体化されている。テンキー7は、「0」〜「9」の数字等の入力を受け付ける物理キーであり、暗証番号や取引金額等の入力操作時に用いられるようになっている。レシート発行口8は、取引処理の終了時に取引内容等を印字したレシートを発行する部分である。因みにレシート発行口8より筐体内側には、レシートに取引内容等を印字するレシート処理部(図示せず)が設けられている。
以下では、現金自動預払機1のうち顧客が対峙する側を前側とし、その反対を後側とし、当該前側に対峙した顧客から見て左及び右をそれぞれ左側及び右側とし、さらに上側及び下側を定義して説明する。
因みに筐体2は、前面を覆う前扉及び後面を覆う後扉(図示せず)がそれぞれ開閉可能に構成されている。すなわち筐体2は、顧客との間で現金に関する取引を行う取引動作時には、前扉等を閉塞することにより、内部に保有している紙幣や硬貨等を保護する。一方筐体2は、金融機関の職員や作業者等が保守作業や紙幣の補充・回収作業等を行う作業時には、必要に応じて前扉等を開放することにより、内部の各部に対する作業を容易に行わせることができる。
筐体2内には、現金自動預払機1全体を統括制御する主制御部9や、紙幣に関する種々の処理を行う紙幣入出金機10等が設けられている。
主制御部9は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、図示しないROMやフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金取引や出金取引等の種々の処理を行う。また主制御部9は、内部にRAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等でなる記憶部9Aを有しており、この記憶部9Aに種々の情報を記憶させる。
[2.紙幣入出金機の構成]
紙幣入出金機10は、図2に模式的な側面図を示すように、紙幣入出金機筐体11の内部に紙幣の入金処理や出金処理に関する種々の機構が設けられている。紙幣入出金機10の各部分は、紙幣制御部12により制御されるようになされている。
紙幣制御部12は、主制御部9と同様、図示しないCPUを中心に構成されており、図示しないROMやフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行し、また主制御部9などの他の制御部と連携することにより、紙幣の入金処理や出金処理等、紙幣に関する種々の処理を制御するようになっている。また紙幣制御部12は、内部にRAM及びフラッシュメモリ等でなる記憶部12A(図1)を有しており、この記憶部12Aに種々の情報を記憶させている。
例えば顧客が現金自動預払機1との間で入金取引を行う場合、紙幣制御部12は、主制御部9等と連携しながら、操作表示部6を介して所定の操作入力を受け付けた後、入出金口5(図1)のシャッタを開いて入出金部13内へ紙幣を投入させる。
入出金部13は、紙幣が投入されると、入出金口5のシャッタを閉じてから紙幣を1枚ずつ取り出し、搬送部14へ受け渡す。搬送部14は、紙幣入出金機10内で紙幣を各部へ搬送し得るようになされており、受け渡された紙幣を短辺方向に沿って進行させ、鑑別部15へ搬送する。鑑別部15は、その内部で紙幣を搬送しながら当該紙幣の金種及び真偽、並びに損傷の程度等を鑑別し、その鑑別結果を紙幣制御部12へ通知する。これに応じて紙幣制御部12は、取得した鑑別結果に基づいて当該紙幣の搬送先を決定する。
このとき搬送部14は、鑑別部15において正常と鑑別された紙幣(いわゆる正券)を一時保留部16へ搬送する等して一時的に保留させる一方、取引すべきでないと鑑別された紙幣(いわゆる損券や偽券等)を入出金部13へ搬送して顧客に返却する。
その後紙幣制御部12は、操作表示部6(図1)を介して顧客に入金金額を確定させ、一時保留部16に保留している紙幣を鑑別部15へ搬送させてその金種及び損傷の程度等を鑑別させ、その鑑別結果を取得する。そして紙幣制御部12は、紙幣の損傷の程度が大きければ、これを再利用すべきでないリジェクト紙幣としてリジェクト庫17へ搬送して収納させ、損傷の程度が小さければ、これを再利用すべき紙幣として下搬送部18へ搬送させる。下搬送部18は、紙幣を前後方向へ搬送すると共に、その金種に応じた収納カセット19に振り分けて受け渡す。収納カセット19は、受け渡された紙幣を内部に集積して収納する。
一方、例えば顧客が現金自動預払機1との間で出金取引を行う場合、紙幣制御部12は、主制御部9等と連携しながら、操作表示部6(図1)を介して所定の操作入力を受け付けた後、出金すべき金額に応じた紙幣を収納カセット19から繰り出させる。続いて紙幣制御部12は、この紙幣を下搬送部18及び搬送部14により鑑別部15へ搬送して鑑別させた上で入出金部13へ搬送し、入出金口5(図1)のシャッタを開いてこの紙幣を顧客に取り出させる。
このように紙幣入出金機10では、顧客から入金された紙幣を下搬送部18により振り分けて収納カセット19に収納し、また収納カセット19から紙幣を繰り出して顧客へ出金するようになっている。
[3.下部ユニットの構成]
ところで下搬送部18及び収納カセット19は、紙幣入出金機10の下側を占める下部ユニット21に組み込まれている。下部ユニット21は、図3に示すように、紙幣入出金機筐体11の下側部分に形成された下部筐体11Aに対し、前後方向に伸縮するスライドレール22を介して、前後方向へ移動可能に取り付けられている。このため下部ユニット21は、下部筐体11A内に収納された状態(図2)から後方へ移動されると当該下部筐体11Aから引き出された状態(図3)となり、またこの状態から前方へ移動されると再び収納された状態(図2)へ戻る。
下部ユニット21は、図4(A)に示すように、全体として前後方向に長い直方体状に形成されており、大きく分けて下側の装填部25と上側の蓋体部26とにより構成されている。
装填部25は、前後両側面、右側面、左側面の下側及び底面が閉塞されると共に、上面及び左側面の上側が開放されることにより、内部に収納カセット19(図2)を装填する空間を形成すると共に、上側面に内部空間と外部とを連通させる開口部を形成している。
この装填部25は、図4(B)に示すように、その内部に前後方向に並ぶ5箇所のスロット28が形成されている。各スロット28は、上下方向に細長い直方体状に形成されており、それぞれ収納カセット19を装填し得るようになっている。
ここで各スロット28に装填し得る収納カセット19としては、比較的大きい大収納カセット19Aと、比較的小さい下段小収納カセット19Bと、同様に比較的小さい上段小収納カセット19Cとの3種類が用意されている。このうち先装填収納カセットとしての下段小収納カセット19B及び後装填収納カセットとしての上段小収納カセット19Cは、大収納カセット19Aと比較して、前後方向及び左右方向の長さがほぼ同等であるものの、上下方向の長さが約半分となっている。このため各スロット28は、1個の大収納カセット19Aを装填でき、或いは下段小収納カセット19Bの上に上段小収納カセット19Cを重ねた状態で、2個の収納カセット19を装填できる。
蓋体部26(図4(A))は、全体として上下に薄い直方体状に構成されており、内部に下搬送部18(図2)が組み込まれている。また蓋体部26は、収納カセット19と対向する下面側(以下この面をカセット対向面とも呼ぶ)に、各収納カセット19との間で紙幣をそれぞれ受け渡す複数の受渡口26Aが形成されている。各受渡口26Aにおける長手方向の両端近傍には、収納カセット19との間で位置を合わせるための短い突起26APがそれぞれ立設されている。
さらに蓋体部26は、装填部25に対し蝶番27を介して回動可能に取り付けられている。すなわち蓋体部26は、蝶番27を中心に回動することにより、図2に示したようにカセット対向面を下方向に向け装填部25の開口部を閉塞する閉塞状態、または図4(A)に示したように閉塞状態から約90度回動し、カセット対向面を左方向に向け当該開口部を開放した開放状態(詳しくは後述する)とに遷移することができる。
[4.装填部の構成]
装填部25は、図5に斜視図を示すように、底部31、右側部32、左側部33、前側板34及び後側板35により囲まれる直方体状の空間を、前後方向に所定の間隔を隔てるように配置された4枚の仕切板36によって仕切ることで、上下方向に細長い5箇所のスロット28を形成している。
各スロット28における下端、すなわち底部31の上面側には、下段スロット側コネクタ37が設けられている。この下段スロット側コネクタ37には、電力を供給し、また各種電気信号を伝達するための複数の接続端子(図示せず)が上方に向けて立設されている。
右側部32は、左右方向に厚みを有する板状に形成されている。この右側部32における上下方向の長さは、比較的長くなっており、大収納カセット19Aにおける上下方向の長さとほぼ同等となっている。また右側部32は、上側の約半分の範囲において内側の一部分が抉られることにより、段差が形成されている。このためスロット28は、図6に示すように、下半分と比較して上半分が右側に突出した形となっている。
また装填部25を左上方から見下ろした様子を表す図7(A)に示すように、右側部32における段差部分の上面には、スロット28ごとに、上段スロット側コネクタ38が設けられている。この上段スロット側コネクタ38には、下段スロット側コネクタ37と同様、電力を供給し、また各種電気信号を伝達するための複数の接続端子(図示せず)が上方に向けて立設されている。
さらに右側部32の内側上段における各スロット28同士の境界部分、すなわち仕切板36の右上方には、右ガイド体39がそれぞれ設けられている。右ガイド体39は、図8(A)に拡大した斜視図を示すと共に図8(B)に3面図を示すように、全体として上下方向に細長い直方体状の部材における前後両面に、上下方向に沿った溝がそれぞれ形成されている。また右ガイド体39は、前後方向に関し対称に形成されている。このため以下では、前側を中心に説明し、後側についての説明を省略する。
具体的に右ガイド体39は、前後方向に薄い板状の基板41を中心に構成されている。右ガイド体39における前側部分には、上下方向に沿った溝部42が形成されている。溝部42の底面は、平面状に形成されており、基板41の表面から続く平面の一部となっている。
溝部42は、右側(すなわち右側部32に取り付けられる側)の右側壁部43が上端まで伸びている一方、左側(すなわちスロット28側)において下側から約1/3ないし1/4の範囲のみに左側壁部44が形成されており、その上側部分において左方向に開放されている。さらに溝部42の下端は、ストッパ45により閉塞されている。
また基板41の左上側部分、すなわち溝部42の底面から続く面の一部であって、左側壁部44よりも上側の部分には、左上端が薄くなり、右方向及び下方向へ進むに連れて厚みを増すように傾斜された傾斜面41Aが形成されている。さらに、基板41の上端左側、右側壁部43の上端左側及び左側壁部44の上端右側は、それぞれ稜部分の近傍が削り落とされており、いわゆる「面取り」がなされた形状となっている。
ところで右側部32の内側上段には、複数の右ガイド体39が各スロット28同士の境界部分に、すなわち前後方向に等間隔に並ぶように配置されている(図5、図7)。このため、例えばある右ガイド体39における後側部分と、当該右ガイド体39の後方に隣接する右ガイド体39における前側部分とを比較すると、前後方向に関し互いに対称となっており、それぞれの溝部42を対向させている。またそれぞれの基板41に着目すると、左側壁部44よりも上側に設けられた傾斜面41Aが、左側へ進むに連れて、及び上側へ進むに連れて、互いの間隔が広がるように形成されている。
一方、左側部33は、左右方向に僅かな厚みを有する板状に形成されている。この左側部33における上下方向の長さは、比較的短くなっており、下段小収納カセット19Bにおける上下方向の長さよりも僅かに長い程度に、すなわち大収納カセット19Aにおける上下方向の長さよりも十分に短くなっている。ただし左側部33の上端は、右側部32に形成された段差部分よりも高く、且つ上段スロット側コネクタ38の上端よりも高くなっている(図5、図6)。
また左側部33は、上側の短い範囲において内側の一部分が抉られることにより、段差が形成されている。左側部33において下端から段差までの高さは、下段小収納カセット19Bにおける上下方向の長さと同程度となっている。さらに段差の上面における左右方向の幅は、右側部32における段差の上面における左右方向の幅よりも十分に狭くなっている(図6)。
また装填部25を右上方から見下ろした様子を表す図7(B)に示すように、左側部33の内側上段における各スロット28の前後方向に関するほぼ中央には、左ガイド体40がそれぞれ設けられている。
左ガイド体40は、図9に3面図を示すように、全体として左右方向に薄い板状に形成された基板51における右側面に、上下方向に沿った溝部52が形成されている。溝部52を前後から挟む前側壁部53及び後側壁部54は、何れも基板51における上端近傍まで延長されている。また溝部52の下端は、ストッパ55により閉塞されている。
また前側壁部53における右前側及び右上側、並びに後側壁部54における右後側及び右上側は、それぞれ稜部分の近傍が削り落とされており、いわゆる「面取り」がなされている。さらに、前側壁部53における右上後側及び後側壁部54における右上前側は、頂点部分の近傍が削り落とされており、同様に「面取り」がなされている。
因みに左ガイド体40における左右方向の厚さは、左側部33における段差部分の左右方向の幅とほぼ同等となっている。このため左ガイド体40は、左側部33の内側上段に取り付けられた際に、図6及び図7(B)に示したように、その右側面を当該左側部33における下側部分の右側面とほぼ揃えることができる。
前側板34、後側板35及び仕切板36は、何れも前後方向に薄く上下方向に長い長方形の薄板状に形成されている。このうち前側板34及び後側板35における上下方向の長さは、右側部32と同程度となっている。また仕切板36における上下方向の長さは、左側部33と同程度であり、下段小収納カセット19Bにおける上下方向の長さよりも僅かに長くなっている。
すなわち装填部25の各スロット28における前後左右の側面の高さは、右側面のみが比較的高く、大収納カセット19Aと同程度になっており、前後及び左側面が比較的低く、下段小収納カセット19Bよりもやや高い程度になっている。
このように装填部25は、各スロット28における中央よりも上側において、右側の前後に右ガイド体39に形成された溝部42を互いに対向させ、また左側に左ガイド体40に形成された溝部52を右方向へ向けるよう、それぞれ配置している。
[5.収納カセットの構成]
次に、収納カセット19の構成について、大収納カセット19A、下段小収納カセット19B及び上段小収納カセット19Cに分けてそれぞれ説明する。なお、何れの収納カセット19も、共通して、内部へ搬入された紙幣を集積して収納すると共に、集積されている紙幣を1枚ずつ分離して繰り出す分離集積機能を有している。
[5−1.大収納カセットの構成]
大収納カセット19Aは、図10(A)に示すように、全体として上下方向に長い直方体状に構成されており、筐体60の内部に紙幣を収納するようになっている。
大収納カセット19Aの天板部60Aには、取手61が設けられている。この取手61は、把持部61A、支持部61B及び回動部61Cにより構成されている。把持部61Aは、左右方向を長手方向とする棒状に構成され、筐体60における左右方向の長さとほぼ同等の長さを有している。
把持部61Aの左右両端には、図10(B)に示すように、後方向に向けて棒状の支持部61Bがそれぞれ延接されている。すなわち取手61は、前上方から見て、略U字状に形成されている。この支持部61Bの後端には、左右方向の内側に向けて、中心軸を左右方向に向けた円柱状の回動部61Cがそれぞれ立設されている。
一方、天板部60Aには、把持部61A及び支持部61Bと対応する部分がその周囲よりも一段低くなった格納部60ACが形成されている。また格納部60ACにおける左右の両側面のうち、それぞれの後寄りの箇所には、左右方向に向けて、回動部61Cよりも僅かに大きな丸孔でなる軸孔60AHがそれぞれ穿設されている。この軸孔60AHには、取手61の回動部61Cがそれぞれ挿通されている。
かかる構成により取手61は、回動部61Cを回動中心として天板部60Aに対し自在に回動することができる。すなわち取手61は、回動することにより、図10(A)に実線で示したように支持部61Bを寝かせて把持部61Aを天板部60Aの格納部60ACに埋め込んだ状態(以下これを格納状態と呼ぶ)、又は図10(A)に破線で示したように、支持部61Bをほぼ直立させて把持部61Aを前後方向のほぼ中心において天板部60Aからやや引き離した状態(以下これを把持状態と呼ぶ)に遷移することができる。
取手61は、この把持状態において、金融機関の職員等によって把持されることにより、大収納カセット19A全体を容易に移動させること、例えばスロット28(図4)へ容易に装填させることや当該スロット28から容易に取り出させることができる。
因みに天板部60Aでは、軸孔60AHの中心同士を仮想的に結ぶ直線VL1(図10(B))が大収納カセット19Aにおける重心の真上を通過するよう、当該軸孔60AHの位置が調整されている。このため大収納カセット19Aは、把持状態にある取手61が把持された際、筐体60の上下方向をほぼ垂直方向に合わせることができる。
筐体60における前後方向及び左右方向の外寸は、それぞれスロット28(図5)における前後方向及び左右方向の内寸よりも僅かに短くなっている。このため大収納カセット19Aは、スロット28に装填されると、所定の装填位置にほぼ位置決めされる。
また天板部60Aには、後端寄りの位置に受渡口62が設けられている。受渡口62は、左右方向に細長い長孔であり、紙幣の短辺方向を進行方向として、すなわち紙面を前後方向に向けた状態で、筐体60の内側又は外側へ向けて挿通させるようになっている。因みに受渡口62は、例えば左右方向の長さが200[mm]、前後方向の長さが5[mm]となっている。また受渡口62の前側における左右の両端近傍には、蓋体部26(図4)の受渡口26Aに対する位置を合わせるための孔部62Qがそれぞれ穿設されている。
筐体60内には、紙幣を収納するための直方体状の収納空間60Sが形成されている。この収納空間60Sと受渡口62との間には、従来の収納カセットと同様、紙幣を案内するガイドや複数の回転可能なローラ等により構成された分離集積部65が設けられている。分離集積部65は、紙幣制御部12(図2)の制御に基づき、収納空間60Sと受渡口62との間で紙幣を搬送する搬送動作に加え、収納空間60S内に放出して上下方向に集積させる集積動作、及び収納空間60S内に集積されている紙幣を1枚ずつに分離して繰り出す操出動作を行う。
因みに筐体60内の所定位置には、分離集積部65の各ローラ等を回転させるための動力を発生させるモータ(図示せず)が設けられている。また筐体60内の所定箇所には、収納されている紙幣の量や有無等を検出するための種々のセンサ(図示せず)も設けられている。
さらに筐体60の底部には、スロット28の底部に設けられた下段スロット側コネクタ37(図5)と対応する位置に、当該下段スロット側コネクタ37と対応するカセット側コネクタ67が設けられている。
このため大収納カセット19Aは、スロット28に装填されると、カセット側コネクタ67を下段スロット側コネクタ37と嵌合させることにより、装填部25側、すなわち紙幣入出金機10の本体側と電気的に接続される。これにより大収納カセット19Aは、モータを駆動するための電力の供給を受けることや、紙幣制御部12からの制御信号を取得すること、或いは内蔵するセンサによる検出結果を表す検出信号を送出することが可能となる。
大収納カセット19Aは、このような構成でなり、スロット28に装填されると、底部に設けられたカセット側コネクタ67が、スロット28の底部に設けられた下段スロット側コネクタ37(図5)と嵌合される。また蓋体部26が回動されて閉塞状態(図2)になると、受渡口26Aが大収納カセット19Aの受渡口62と接続される。
紙幣を集積する場合、大収納カセット19Aは、紙幣制御部12の制御に基づき、下搬送部18(図2)から受渡口62を通って大収納カセット19A内に搬入された紙幣を分離集積部65へ受け渡し、集積動作を行わせて収納空間60S内に紙幣を集積する。また紙幣を繰り出す場合、大収納カセット19Aは、紙幣制御部12の制御に基づき、分離集積部65に分離動作を行わせ、収納空間60S内の紙幣を1枚ずつに分離して受渡口62まで搬送し、当該受渡口62から下搬送部18(図2)へと繰り出す。
このように大収納カセット19Aは、スロット28に装填された状態で、カセット側コネクタ67を介して電力の供給や紙幣制御部12からの制御を受けると共に、受渡口62を介して下搬送部18との間で紙幣を受け渡しながら、紙幣の集積動作及び繰出動作を行うようになっている。
[5−2.下段小収納カセットの構成]
下段小収納カセット19Bは、図10と対応する図11に示すように、全体として上下方向の長さが大収納カセット19A(図10(A))の半分程度であるものの、各部分において当該大収納カセット19Aと同様に構成されている。
具体的に下段小収納カセット19Bの筐体70及びその内部の収納空間70Sは、大収納カセット19Aの筐体60及び収納空間60Sをそれぞれ上下方向に約半分にまで短縮したような形状となっている。その他の点において下段小収納カセット19Bは、大収納カセット19Aと同様に分離集積部65やカセット側コネクタ67等を有している。
筐体70における前後方向及び左右方向の外寸は、大収納カセット19Aの筐体60と同様、それぞれスロット28における前後方向及び左右方向の内寸よりも僅かに短くなっている。このため下段小収納カセット19Bは、スロット28に装填されると、所定の装填位置にほぼ位置決めされる。
因みに下段小収納カセット19Bの受渡口62は、後述するように、スロット28において当該下段小収納カセット19Bの上方に上段小収納カセット19Cが装填された状態で、当該上段小収納カセット19Cの底部に設けられた受渡口との間で紙幣を受け渡すようになっている。
このため下段小収納カセット19Bは、大収納カセット19Aと同様に、スロット28に装填された状態で、カセット側コネクタ67を介して電力の供給や紙幣制御部12からの制御を受け、上段小収納カセット19Cとの間で紙幣を受け渡しながら、紙幣の集積動作及び繰出動作を行うようになっている。
因みに下段小収納カセット19Bは、その下端にカセット側コネクタ67が設けられているため、スロット28に対し、下端において位置決めされる。その一方で下段小収納カセット19Bは、スロット28に装填された状態において、その上端部分が厳密には位置決めされておらず、前後左右方向の位置に関しある程度の自由度を有している。
[5−3.上段小収納カセットの構成]
上段小収納カセット19Cは、図12(A)及び(B)に斜視図を示すと共に図13に各方向の平面図を示すように、全体として上下方向の長さが大収納カセット19A(図10)の半分程度の直方体状に構成されており、筐体80の内部に紙幣を収納するようになっている。
上段小収納カセット19Cの天板部80Aには、大収納カセット19A及び下段小収納カセット19Bと同様の取手61が設けられている。
筐体80は、大収納カセット19Aの筐体60と同様、その前後方向及び左右方向の長さが、スロット28(図5)における前後方向及び左右方向の内寸よりも僅かに短くなっている。これに加えて筐体80の右側面には、比較的広い範囲で右方向に突出した突出基部81が設けられている。
突出基部81は、全体として左右方向に薄い直方体状ないし板状に形成されており、上下方向の長さ及び前後方向の長さが、筐体80における上下方向の長さ及び前後方向の長さよりも10〜15%程度小さくなっている。他の観点から見れば、上段小収納カセット19Cは、直方体状でなる筐体80の右側面に、扁平な直方体でなる突出基部81が貼り付けられたような形状となっている。
ここで上段小収納カセット19Cを下段小収納カセット19B(図11)と比較すると、筐体80の大きさが筐体70の大きさとほぼ同等となっており、突出基部81の分だけ上段小収納カセット19Cの方が大きくなっている。また突出基部81における前後方向の長さは、スロット28(図6)に取り付けられた前後の右ガイド体39同士の間隔よりも僅かに短くなっている。
突出基部81の前面及び後面における下端近傍には、前方及び後方へ向けて右前突起82及び右後突起83がそれぞれ立設されている。右前突起82は、中心軸を前後方向に向けた短い円柱状の突起として形成されている。
右前突起82の前面は、筐体80の前面とほぼ平行な平面状に形成されており、筐体80の前面よりもやや後方に位置している。また右前突起82の直径は、右ガイド体39(図8)における溝部42の溝幅よりもごく僅かに小さくなっている。
右後突起83は、右前突起82と同様、中心軸を前後方向に向けた短い円柱状の突起として形成されている。右後突起83の後面は、筐体80の後面とほぼ平行な平面状に形成されており、筐体80の後面よりもやや前方に位置している。また右後突起83は、円柱の直径が右前突起82と同等であり、且つその中心軸を右前突起82の中心軸の延長線上に位置させている。換言すれば、右前突起82の中心軸を通る直線VL2(図13)を仮定した場合、この直線VL2は右後突起83の中心軸も通ることになる。
突出基部81の前面における右前突起82の上方には、保護突起84が立設されている。保護突起84は、右前突起82と同等の円柱状に形成されている。一方、筐体80の前面には、開閉可能な扉92が設けられている。この扉92は、右端に設けられた回動部92Aを介して、筐体80に対し回動可能に取り付けられている。扉92は、例えば約160度のように大きく回動された場合、右前突起82及び保護突起84の双方に当接し、それ以上の回動が制限される。
すなわち上段小収納カセット19Cでは、保護突起84により、扉92が右前突起82のみに当接した場合に生じ得る、1箇所に過大な力が加わることによる破損の発生を未然に防ぐことができる。
筐体80の左側面には、前後のほぼ中央におけるやや下寄りの位置に、周囲よりも左方向へ突出した左突起85が立設されている。左突起85は、上下方向を長手方向とする細長い直方体状に形成されると共に、その下端部分が一部丸められ左右方向に中心軸を向けた半円柱状に形成されている。
このように上段小収納カセット19Cは、筐体80の右方に突出した突出基部81からさらに前後に突出するように右前突起82及び右後突起83が設けられると共に、筐体80の左方に突出するように左突起85が設けられている。
一方、上段小収納カセット19Cの内部には、図14に示すように、筐体80内を上下方向に貫通するように中継搬送路86が設けられており、当該中継搬送路86を前後方向から挟むように複数の搬送ローラ87が上下方向に離散的に配置されている。この搬送ローラ87は、図示しないモータから伝達される駆動力により回転するようになっている。
中継搬送路86の上端は、筐体80の天板部80Aに設けられた上受渡口88に接続されている。また中継搬送路86の下端は、筐体80の底板部80Bに設けられた下受渡口89に接続されている。
上受渡口88の前側における左右の両端近傍には、大収納カセット19Aの受渡口62(図10)の場合と同様、蓋体部26(図4)の受渡口26Aに対する位置を合わせるための孔部88Qがそれぞれ穿設されている。また下受渡口89の前側における左右の両端近傍には、下段小収納カセット19Bの受渡口62(図11)に対する位置を合わせるための突起89Pがそれぞれ立設されている。
さらに中継搬送路86の上端近傍には、紙幣の搬送経路を切り替える切替器90が設けられている。この切替器90は、紙幣制御部12(図2)からの制御に基づいて紙幣の搬送方向を変更することにより、上方と下方との間で紙幣を搬送する第1切替状態と、上方と前下方との間で紙幣を搬送する第2切替状態とに切り替えることができる。
切替器90と収納空間80Sとの間には、後上方と前下方とを結ぶように傾斜した分離集積搬送路91が形成されている。分離集積搬送路91の周囲には、大収納カセット19A(図10)と同様の構成でなる分離集積部65が配置されている。
さらに突出基部81(図12、図13)の下面には、スロット28の右側面における中程に設けられた上段スロット側コネクタ38(図5)と対応する位置に、当該上段スロット側コネクタ38と接続するカセット側コネクタ93が設けられている。
このため上段小収納カセット19Cは、スロット28に装填されると、カセット側コネクタ93を上段スロット側コネクタ38と接続させることにより、装填部25側、すなわち紙幣入出金機10の本体側と電気的に接続される。これにより上段小収納カセット19Cは、大収納カセット19Aの場合と同様、モータを駆動するための電力の供給を受けることや、紙幣制御部12からの制御信号を取得すること、或いは内蔵するセンサによる検出結果を表す検出信号を送出することが可能となる。
上段小収納カセット19Cは、やはり大収納カセット19Aと同様、紙幣入出金機10の本体側から供給される電力及び制御信号に基づき、モータを駆動させて、搬送ローラ87及び分離集積部65の各ローラ等を回転させる。
上段小収納カセット19Cは、紙幣制御部12(図2)の制御に基づき切替器90を第2切替状態に切り替えた場合、分離集積部65により紙幣の集積動作及び分離動作を行いながら、上受渡口88と収納空間80Sとの間で紙幣を双方向に搬送することができる。以下、このような上段小収納カセット19Cにおける動作モードを分離集積動作モードと呼ぶ。
一方、上段小収納カセット19Cは、紙幣制御部12(図2)の制御に基づき切替器90を第1切替状態に切り替えた場合、各搬送ローラ87がそれぞれ回転されることにより、上受渡口88及び下受渡口89の間で中継搬送路86に沿って紙幣を上下方向へ搬送することができる。以下、このような上段小収納カセット19Cにおける動作モードを中継動作モードと呼ぶ。
このように上段小収納カセット19Cは、紙幣制御部12の制御に基づいて切替器90を第1切替状態又は第2切替状態に切り替えることにより、中継動作モード又は分離集積動作モードに切り替えるようになっている。
[5−4.小収納カセットにおける紙幣の収納及び繰出]
次に、下段小収納カセット19B及び上段小収納カセット19Cの間における紙幣の収納及び繰出について説明する。ここでは、装填部25(図4)のスロット28において下段小収納カセット19Bが装填され、さらにその上方に上段小収納カセット19Cが積み重ねるように装填された場合を想定する(図2)。
このとき下段小収納カセット19B及び上段小収納カセット19Cは、図11(A)及び図14と対応する図15に示すように、突起89Pを孔部62Qに陥入させることにより、下段小収納カセット19Bの受渡口62のほぼ真上に上段小収納カセット19Cの下受渡口89を位置させると共に互いを近接させ、互いに紙幣を受け渡し得る状態となる。
また上段小収納カセット19Cは、蓋体部26(図4(A))が閉塞状態となっていれば、突起26APを孔部88Qに陥入させることにより、上受渡口88を受渡口26Aのほぼ真下に位置させると共に互いを近接させ、下搬送部18との間で互いに紙幣を受け渡し得る状態となる。
例えば、下搬送部18に搬送されてきた紙幣を下段小収納カセット19Bに収納する場合、両者の間に位置する上段小収納カセット19Cは、紙幣制御部12(図2)の制御により中継動作モードで動作する。すなわち下搬送部18が受渡口26Aから紙幣を排出すると、上段小収納カセット19Cは、この紙幣を上受渡口88によって受け取り、中継搬送路86により下方向へ搬送し、下受渡口89から排出する。
これに応じて下段小収納カセット19Bは、この紙幣を受渡口62によって受け取り、分離集積部65を集積モードで動作させることにより、この紙幣を収納空間70S内に収納することができる。
また、下段小収納カセット19Bに収納されている紙幣を繰り出して下搬送部18へ受け渡す場合、やはり上段小収納カセット19Cは中継動作モードで動作する。すなわち下段小収納カセット19Bは、分離集積部65を分離モードで動作させることにより、収納空間70S内に収納されている紙幣を1枚ずつに分離し、受渡口62から排出する。
これに応じて上段小収納カセット19Cは、この紙幣を下受渡口89によって受け取り、中継搬送路86により上方向へ搬送し、上受渡口88から排出する。下搬送部18は、この紙幣を受渡口26Aによって受け取り、所定の搬送先へ搬送する。
一方、下搬送部18に搬送されてきた紙幣を上段小収納カセット19Cに収納する場合、当該上段小収納カセット19Cは、紙幣制御部12(図2)の制御により分離集積動作モードで動作する。すなわち下搬送部18が受渡口26Aから紙幣を排出すると、上段小収納カセット19Cは、この紙幣を上受渡口88によって受け取り、この紙幣を分離集積搬送路91に沿って前下方へ搬送して、分離集積部65を集積モードで動作させることにより、この紙幣を収納空間80S内に収納することができる。
また、上段小収納カセット19Cに収納されている紙幣を下搬送部18へ搬送する場合、当該上段小収納カセット19Cはやはり分離集積動作モードで動作する。すなわち上段小収納カセット19Cは、分離集積部65を分離モードで動作させることにより、収納空間80S内に収納されている紙幣を1枚ずつに分離し、分離集積搬送路91に沿って後上方へ搬送し、上受渡口88から排出する。下搬送部18は、この紙幣を受渡口26Aによって受け取り、所定の搬送先へ搬送する。
このように上段小収納カセット19Cは、下段小収納カセット19Bにおいて紙幣を収納し又は繰り出す場合、中継動作モードで動作すると共に、蓋体部26の受渡口26A及び上受渡口88の間、並びに下受渡口89及び下段小収納カセット19Bの受渡口62の間でそれぞれ紙幣を受け渡すようになっている。
[6.上段小収納カセットの装填動作及び効果]
以上の構成において、現金自動預払機1の紙幣入出金機10は、装填部25の各スロット28に、比較的長い大収納カセット19Aを1本のみ装填し、或いは比較的短い下段小収納カセット19Bの上に重ねて比較的短い上段小収納カセット19Cを装填するようにした(図4)。
装填部25は、右側部32を大収納カセット19Aと同等程度に高く構成する一方、左側部33や仕切板36等を下段小収納カセット19Bよりもやや高い程度に低く構成した。また装填部25の各スロット28における上側部分には、右側部32の境界部分に右ガイド体39を設けると共に、左側部33に左ガイド体40を設けた(図6)。
一方、上段小収納カセット19Cは、筐体80の右側に設けた突出基部81の前後に円柱状の右前突起82及び右後突起83を設け、さらに筐体80の左側に上下方向に細長い直方体状の左突起85を設けた(図12、図13)。
以下では、説明の便宜上、図12(A)に示したように、上段小収納カセット19Cにおける前方向、上方向及び左方向をそれぞれx方向、y方向及びz方向と呼び、それぞれの方向軸をx軸、y軸及びz軸と呼ぶ。
紙幣入出金機10において上段小収納カセット19Cがスロット28に装填される場合、図16に示すように、作業者等により上段小収納カセット19Cの取手61(図12等)が把持されて持ち上げられ、スロット28における上側部分に対し左上方に位置される(以下これを第1状態と呼ぶ)。因みに図16及び以降の図では、スロット28の上側部分及び上段小収納カセット19Cを前方から見た様子を、一部を簡略化ないし省略することにより模式的に表している。
ここでスロット28は、上述したように前後左右の各側面のうち右側面のみが比較的高く、すなわち左側面が比較的低くなっている。このため紙幣入出金機10では、この第1状態において上段小収納カセット19Cをスロット28の左上方に位置させることにより、当該上段小収納カセット19Cを持ち上げる高さを比較的小さく抑えることができる。
ところで上段小収納カセット19Cは、スロット28に対し適正に装填される場合、当該上段小収納カセット19Cの前後左右の各側面及び下面を当該スロット28の前後左右の各内側面及び下内側面とそれぞれほぼ平行とした状態で真下へ下降することにより、カセット側コネクタ67を上段スロット側コネクタ38(図5)と嵌合させるように設計されている。以下では、スロット28の各内側面に対し上段小収納カセット19Cの各側面がほぼ平行となる角度を適正角度と呼び、またスロット28に対し上段小収納カセット19Cが適正に装填される位置を適正位置と呼ぶ。
しかしながら、実際に第1状態にある上段小収納カセット19Cは、適正角度に対しx軸周り、y軸周り及びz軸周りにそれぞれ傾きを有している(回転している)可能性や、適正位置に対し前後方向(x方向)、上下方向(y方向)及び左右方向(z方向)にそれぞれずれを有している(移動している)可能性が高い。このため上段小収納カセット19Cは、仮にこの状態で下降されたとしても、カセット側コネクタ67を上段スロット側コネクタ38(図5)に対し正しく嵌合させることができず、接触不良や破損を引き起こす可能性がある。
この第1状態にある上段小収納カセット19Cは、まず作業者等により右方向へ押し付けようとする力が加えられ、右方向へ移動される。ここでスロット28における前後それぞれの右ガイド体39には、基板41の右上側に傾斜面41Aが形成されている。このため右ガイド体39は、この傾斜面41Aにより、上段小収納カセット19Cの右前突起82及び右後突起83における前後方向(すなわちx方向)の位置を、右方向への移動に伴って適正位置に近づけていくことができる。
やがて上段小収納カセット19Cは、図17及び図18に示すように、右前突起82及び右後突起83を前後それぞれの右ガイド体39における右側壁部43の少なくとも一方に当接させた段階で静止し、突出基部81が当該右側壁部43同士の間に入り込む(以下これを第2状態と呼ぶ)。
上段小収納カセット19Cは、この第2状態において、突出基部81が前後それぞれにおける右ガイド体39の右側壁部43により緩く挟まれているため、すなわち僅かに隙間を空けて挟まれているため、x方向(前後方向)に関し、その位置が概ね適正位置に合わせられると共に移動が規制される。
また上段小収納カセット19Cは、右前突起82及び右後突起83が右ガイド体39の右側壁部43に当接しているため、右方向に関し、その位置がほぼ適正位置に合わせられると共に移動が規制され、且つ作業者による引き続き右方向へ押し付けようとする力により、左方向への移動も規制される。
すなわち紙幣入出金機10では、この第2状態において、上段小収納カセット19Cを前後方向(x方向)に関して概ね適正位置に合わせることができると共に、左右方向(z方向)への移動を規制することができる。
ただし上段小収納カセット19Cは、この第2状態では、適正角度に対し少なくともy軸周りに回転している可能性があるため、右前突起82及び右後突起83のいずれか一方のみが右側壁部43に当接するものの他方が浮き上がっている(僅かに離れている)可能性がある。また上段小収納カセット19Cは、この第2状態において、左方向及び上下方向(y方向)へは自由に移動でき、且つx軸周り、y軸周りおよびz軸周りについてもそれぞれ自由に回転できる。
これを換言すれば、上段小収納カセット19Cは、第2状態において、これらの方向及び軸周りに関して装填姿勢の自由度を有しており、必ずしも適正位置若しくは適正角度となっている必要が無い。
ここでスロット28の前後に設けられた右ガイド体39同士の間隔は、上段小収納カセット19Cにおける筐体80の前後長、すなわち下段小収納カセット19Bにおける筐体70や大収納カセット19Aにおける筐体60の前後長よりも十分に狭くなっている。このため紙幣入出金機10では、図19に示すように、右ガイド体39同士の間隔が広い場合に生じ得る、大収納カセット19A及び下段小収納カセット19Bが正しい装填位置よりも右寄りに下降されて上段スロット側コネクタ38を破損することを、未然に防止できる。
次に上段小収納カセット19Cは、徐々に下方向へ移動され、図20及び図21に示すように、右前突起82及び右後突起83が前後それぞれにおける右ガイド体39の溝部42内に陥入させていく(以下これを第3状態と呼ぶ)。
このとき上段小収納カセット19Cは、突出基部81が右ガイド体39の右側壁部43により前後からわずかに隙間を空けて挟まれることに加え、右前突起82及び右後突起83が右ガイド体39の溝部42にそれぞれ入り込み、右側壁部43及び左側壁部44により左右方向からほぼ隙間なく挟まれる。
ここで、仮想的に、右ガイド体39(図8)において左側壁部44が右側壁部43と同様に上端にまで設けられ、溝部42が上端まで形成されていた場合を想定する。この場合、右前突起82及び右後突起83をこの溝部42に陥入させるには、作業者等により、まず上段小収納カセット19Cの前後方向及び左右方向に関する位置をほぼ適正位置に合わせると共にy軸周りの回転についても適正角度に合わせることにより、右前突起82及び右後突起83を溝部42の真上に位置させる必要がある。
さらにこの場合、上段小収納カセット19Cについては、前後方向及び左右方向の位置及びy軸周りの角度を保ったまま、真下に下降させる必要がある。すなわちこの場合、作業者等に対し、上段小収納カセット19Cの位置及び角度について極めて繊細な作業を求めることになり、作業性を大幅に低下させてしまう。
これに対し実際の右ガイド体39(図8)は、右側壁部43が上端まで形成されている一方、左側壁部44が下側部分のみに形成されている。このため上段小収納カセット19Cは、第1状態(図16)において前後方向の位置のみが概ね適正位置にある状態で右方向へ移動され、右前突起82及び右後突起83のいずれか一方を右ガイド体39の右側壁部43に当接させることで、左右方向の位置を概ね適正位置に合わせることができる。
さらに上段小収納カセット19Cは、引き続き右方向へ押し付けられながらy軸周りに僅かに回転されることで、右前突起82及び右後突起83の双方が右ガイド体39の右側壁部43に当接した状態となり、左右方向の位置を適正位置に合わせると共にy軸周りの回転を適正角度に合わせることができる。
このため作業者等は、上段小収納カセット19Cに対し右方向にやや力を加えながら下降させることにより、右前突起82及び右後突起83の少なくとも一方を右ガイド体39の右側壁部43に摺動させながら、当該右前突起82及び右後突起83を溝部42内へ陥入させていくことができる。
また、このときスロット28における前後の右ガイド体39は、左側壁部44における上端左側にいわゆる面取り加工が施されているため、仮に右前突起82及び右後突起83が右側壁部43から浮き上がった状態であったとしても、その下降に伴って溝部42内へ徐々に誘導していくことができる。
さらに紙幣入出金機10では、この第3状態において、スロット28側の左ガイド体40に設けた溝部52に対し、上段小収納カセット19Cの左突起85が陥入されない。すなわち紙幣入出金機10は、この第3状態では、左側部分を適正位置に合わせる必要が無く、作業者等に対し、右側部分のみに注意を向けさせ、右前突起82及び右後突起83を各溝部42内へそれぞれ陥入させれば良い。
ここで右前突起82及び右後突起83は、その直径が溝部42の溝幅よりもごく僅かに短くなっているため、当該溝部42に陥入されることにより、上段小収納カセット19C全体として左右方向(z方向)に関する位置が適正位置に合わせられ、且つ左右方向への移動が規制される。
ところで上段小収納カセット19Cでは、図22(A)に模式図を示すように、右前突起82の前面と右後突起83の後面との前後方向の距離L1に対し、右前突起82の前面における上端と右後突起83の後面における下端とのように対角線方向の距離L2の方が長くなる。
このため、図22(B)に示すように、スロット28に取り付けられた前後の右ガイド体39における基板41同士の間隔である距離L3が、上段小収納カセット19Cにおける前後方向の距離L1よりも僅かに長い程度であった場合、この距離L3が対角方向の距離L2よりも短くなる可能性がある。
このような場合、上段小収納カセット19Cは、図22(C)に示すように、適正角度に対してz軸周りに回転した際に、右前突起82及び右後突起83が基板41にそれぞれ食い込むように当接した状態、いわゆるつかえた状態となってしまうため、上段小収納カセット19Cを下降させ得なくなる恐れがある。すなわちこの場合、作業員等が上段小収納カセット19Cを適正角度からz軸周りに極力回転させないように注意しながら下降させる必要があり、その作業性が極めて低下してしまう。
この点を踏まえ、実際の紙幣入出金機10では、基板41同士の間隔である距離L3に対し右前突起82及び右後突起83の前後方向の距離L1を十分に短くし、当該距離L3よりも対角線方向の距離L2の方が短くなるようにした。
これを換言すれば、紙幣入出金機10では、スロット28に対する上段小収納カセット19Cの前後方向(x方向)に関する位置を、右前突起82及び右後突起83と溝部42との関係ではなく、突出基部81の前面及び後面と右ガイド体39の右側壁部43との関係により規制するようにした。
このため紙幣入出金機10では、上段小収納カセット19Cを適正角度からz軸周りに回転した際にも右前突起82の前面及び右後突起83の後面が基板41から離れた状態を維持でき、z軸周りに多少回転したとしても、つかえること無く下降させることができる。
すなわち上段小収納カセット19Cは、この第3状態において、前後方向(x方向)の位置が概ね適正位置に合わせられて移動がほぼ規制されると共に、左右方向(z方向)の位置が適正位置に合わせられて移動が規制され、これに伴ってy軸周りの回転も規制される。
その一方で上段小収納カセット19Cは、右前突起82及び右後突起83が右ガイド体39の溝部42内を上下方向にそれぞれ移動できるため、上下方向(y方向)に関し自由に移動することができ、またz軸周りにも自由に回転することができる。さらに上段小収納カセット19Cは、右前突起82及び右後突起83を何れも円柱状に形成し、且つ互いの中心軸を揃えているため、これらを中心軸としてx軸周りに自由に回転することもできる。
すなわち上段小収納カセット19Cは、上下方向(y方向)の位置並びにz軸周り及びx軸周りの角度に関して、適正位置及び適正角度から外れた状態にある可能性がある。換言すれば、上段小収納カセット19Cは、この第3状態において、上下方向(y方向)の位置並びにz軸周り及びx軸周りの角度に関して、未だに装填姿勢の自由度を有しており、必ずしも適正位置若しくは適正角度となっている必要が無い。
続いて上段小収納カセット19Cは、図23及び図24に示すように、さらに下方向へ移動され、左突起85が左ガイド体40の溝部52内に入っていく(以下これを第4状態と呼ぶ)。
ここで、左突起85は上下方向に細長く形成されると共に下端近傍に丸め処理が施されている。また左ガイド体40は、一部の稜部に面取り処理が施されている。このため上段小収納カセット19Cは、左突起85が溝部52の真上からやや外れた位置にあったとしても、また適正角度に対しz軸周りに多少回転していたとしても、その下降に伴って左突起85を溝部52内へ徐々に誘導していくことができる。
また左突起85は、上下方向に細長く形成されているため、左ガイド体40の溝部52内において、前側壁部53及び後側壁部54に対し、上下方向に離れた2箇所以上において当接若しくは極めて近接する。すなわち左ガイド体40は、上段小収納カセット19Cの左突起85が溝部52内に入り込むことにより、z軸周りに関し、当該上段小収納カセット19Cの回転を規制してほぼ適正角度に合わせることができる。
さらに上段小収納カセット19Cは、この第4状態において、筐体80の左側面を左ガイド体40の右側面に極めて近接させ、若しくは一部当接させる。これにより上段小収納カセット19Cは、x軸周りの回転が大きく規制され、自由に回転できる範囲が極めて狭くなる。またこのとき上段小収納カセット19Cは、筐体80の前面及び後面の下端近傍を、仕切板36(図6、図7)の上端近傍に近接若しくは当接させる。
すなわち紙幣入出金機10では、上段小収納カセット19Cが第3状態から第4状態になることにより、z軸周りの回転角度が新たに適正角度に合わせられた状態に規制され、またx軸周りの回転角度が適正角度に近い状態に規制される。
これを換言すれが上段小収納カセット19Cは、この第4状態において、前後方向(x方向)及び左右方向(z方向)に関してほぼ適正位置に合わせられ、且つy軸周り及びz軸周りの回転が何れも規制されてほぼ適正角度となる。その一方で上段小収納カセット19Cは、第3状態から引き続き上下方向(y方向)については自由に移動することができ、またx軸周りにも僅かながら回転することができる。
このとき上段小収納カセット19Cのカセット側コネクタ93は、スロット28の上段スロット側コネクタ38(図5)に対し、ほぼ真上の位置にあり、且つy軸周り及びz軸周りに関し適正角度にあり、さらにx軸周りに関し適正角度に比較的近い状態にある。
最後に上段小収納カセット19Cは、作業者等によりさらに下方向へ移動されると、右前突起82及び右後突起83を右ガイド体39の溝部42に沿って摺動させると共に、左突起85を左ガイド体40の溝部52に沿って摺動させることにより、回転角度を殆ど変化させることなく、ほぼ真下へ進行する。
これにより上段小収納カセット19Cは、図25に示すように、右前突起82及び右後突起83を右ガイド体39のストッパ45にそれぞれ当接させると共に、左突起85を左ガイド体40のストッパ55に当接させる(以下これを第5状態と呼ぶ)。
ここで上段小収納カセット19Cは、第4状態において、カセット側コネクタ93を上段スロット側コネクタ38のほぼ真上に位置させ、且つy軸周り及びz軸周りに関し適正角度にあり、さらにx軸周りに関し適正角度に比較的近くなっている。
このため上段小収納カセット19Cは、右ガイド体39及び左ガイド体40により案内されながら真下へ下降するだけで、当該カセット側コネクタ93が上段スロット側コネクタ38と摺動することによりx軸周りに適正角度に近づくよう回転しながら、正しい角度で嵌合させることができる。
すなわち紙幣入出金機10は、図26(A)〜(D)に示すように、上段小収納カセット19Cが適正角度に対し各軸周りに回転していた場合に生じ得る、カセット側コネクタ93と上段スロット側コネクタ38がずれた状態で無理に嵌合されて破損することを未然に防止できる。
このように紙幣入出金機10では、第1状態(図16)から上段小収納カセット19Cが右方向へ移動された後、徐々に下降されることにより、まず右前突起82及び右後突起83を右ガイド体39の溝部42にそれぞれ陥入させ、次に左突起85を左ガイド体40の溝部52へ陥入させる。
このとき紙幣入出金機10では、上段小収納カセット19Cの回転に関する装填姿勢の自由度に着目すると、当該上段小収納カセット19Cがスロット28内で下降されるに連れて、まずy軸周りの回転を規制した後、次にz軸周りの回転を規制し、最後にx軸周りの回転を規制することになる。
またこのとき紙幣入出金機10では、上段小収納カセット19Cの移動に関する装填姿勢の自由度に着目すると、当該上段小収納カセット19Cがスロット28内で下降されるに連れて、まず前後方向(x方向)への移動を規制し、次に左右方向(z方向)への移動を規制し、最後に上下方向(y方向)への移動を規制することになる。
すなわち紙幣入出金機10は、上段小収納カセット19Cの右方向への移動及び下方向への移動に伴い、移動及び回転に関する装填姿勢の自由度を徐々に制限していくことができるので、複数の自由度を突然制限する場合に必要となる緻密な位置調整のような困難な作業の発生を回避し、作業性を低下させること無く円滑に装填させることができる。
また、スロット28(図6)は、前後左右の各側面のうち、右ガイド体39を設けた右側部32のみを比較的高くしておけば良く、左ガイド体40を設けた左側部33や仕切板36等のような他の各側面を比較的低く抑えることができる。
これにより紙幣入出金機10では、スロット28内部に対する斜め上方からの視認性を大幅に高めることができると共に、大収納カセット19A及び下段小収納カセット19Bを装填する際又は取り出す際にその下端を持ち上げるべき高さを、右側部32の上端以上では無く、左側部33及び仕切板36等の上端以上とすれば良いため、作業性を高めることができる。
また上段小収納カセット19Cは、右前突起82及び右後突起83を突出基部81の上下方向に関し中央よりも下方、特に下端寄りの位置であって、カセット側コネクタ93の近傍であり、且つ当該カセット側コネクタ93を前後から、すなわち長手方向の両側から挟むような位置に配置した。
これにより紙幣入出金機10は、スロット28に当該上段小収納カセット19Cが装填された際に、当該カセット側コネクタ93の近傍で上段スロット側コネクタ38に対し精度良く位置を合わせながら近づけることができ、各コネクタの破損を未然に防止できる。
さらに紙幣入出金機10は、スロット28に対する上段小収納カセット19Cの装填位置を定める右前突起82及び右後突起83並びに左突起85を、筐体80の下寄りにおける左右両側であって、下受渡口89を左右から挟むような位置にそれぞれ配置した。これにより上段小収納カセット19Cは、当該下受渡口89の左右両端の近傍でそれぞれ位置合わせできるので、下段小収納カセット19Bの受渡口62(図11、図15)に対する前後方向の位置精度を高めることができる。
特に紙幣入出金機10では、内部の各搬送路において紙幣の紙面を前後からローラ等により挟んで短辺方向に沿って搬送しており、且つ下受渡口89及び受渡口62等の各受渡口において紙幣の紙面を前後に向けているため、左右方向に関する位置ずれについては比較的余裕があるものの、前後方向についての位置ずれを極力抑える必要がある。
この点において上段小収納カセット19Cは、長手方向である左右両端においてスロット28に対し位置決めをすることができるので、左突起85を省略して右側のみにおいて位置決めする場合と比較しても、下段小収納カセット19Bの受渡口62に対する下受渡口89の位置を適切に合わせることができ、紙幣の受け渡しの精度を高めることができる。
また紙幣入出金機10では、上段小収納カセット19Cを、下段小収納カセット19Bでは無く、スロット28に対し位置決めするようにした。一方、下段小収納カセット19Bは、上述したように、スロット28に装填された状態において、その上端にある受渡口62の位置を厳密には位置決めしておらず、前後左右の位置に関し自由度を有している。
このため紙幣入出金機10は、上段小収納カセット19Cを適正位置に装填する際に、下受渡口89の近傍に設けた突起89Pを下段小収納カセット19Bにおける受渡口62の近傍に設けた孔部62Qと嵌合させることで、下受渡口89に対し受渡口62を正しく対向させるように、下段小収納カセット19Bにおける上端の位置を微調整できる。
他の観点から見れば、紙幣入出金機10は、仮にスロット28に対する下段小収納カセット19Bの装填状態が悪く、受渡口62が正しい位置に対し多少の位置ずれを有していたとしても、上段小収納カセット19Cを当該スロット28に対し適正位置に装填させることができるので、上下方向への積み重ねによる位置ずれの累積を発生させることが無い。これにより紙幣入出金機10は、上受渡口88(図12、図15)の位置を、蓋体部26(図4)の受渡口26Aに精度良く合わせることができる。
さらに上段小収納カセット19Cは、比較的下端寄りに設けた右前突起82及び右後突起83並びに左突起85によりスロット28に対する位置を定めているため、その上端近傍において位置の自由度が比較的大きくなり、装填後もある程度の自由度を確保できる。
このため紙幣入出金機10では、蓋体部26(図4)を閉塞した際に、突起26APと上段小収納カセット19Cの孔部88Qとを嵌合させることにより、当該上段小収納カセット19Cにおける上受渡口88の位置を、蓋体部26の受渡口26Aに合わせて微調整することができ、両者の間で紙幣を精度良く受け渡すことが可能となる。
さらに紙幣入出金機10は、スロット28の右ガイド体39及び左ガイド体40において、溝部42及び52の下端にストッパ45及び55を形成した。これにより紙幣入出金機10は、上段小収納カセット19Cがスロット28に装填され、重力の作用も加わって右前突起82及び右後突起83をストッパ45に当接させると共に左突起85をストッパ55に当接させた段階で、当該上段小収納カセット19Cの下方向への移動を規制し、その位置を固定することができる。
このため紙幣入出金機10は、例えば図27(A)に示すようにスロット28に下段小収納カセット19Bが装填されている場合のみに限らず、図27(B)に示すように当該下段小収納カセット19Bが装填されていない場合であっても、上段小収納カセット19Cを適正位置に且つ適正角度で保持することができる。
この結果、紙幣入出金機10は、スロット28から下段小収納カセット19Bを取り外した状態においても、カセット側コネクタ93や上段スロット側コネクタ38等に過大な力が加わることによる破損を発生させること無く、上段小収納カセット19Cを正しく稼働させることができる。これにより現金自動預払機1は、正常に運用でき顧客との間で入金取引や出金取引を行い得る可能性、いわゆる可用性を高めることができる。
またスロット28は、大収納カセット19A及び下段小収納カセット19Bが装填時に通過する軌跡の範囲外に、右ガイド体39、左ガイド体40及び上段スロット側コネクタ38を設けた(図5、図6、図7)。これに応じて上段小収納カセット19Cは、突出基部81、右前突起82、右後突起83、左突起85及びカセット側コネクタ93を、筐体80の外方に設けた(図12、図13)。
このため紙幣入出金機10では、スロット28に大収納カセット19A又は下段小収納カセット19Bを装填する際に、右ガイド体39及び左ガイド体40、或いは上段スロット側コネクタ38の各部品と干渉せずに装填させることができ、これらの部品の格納や引き出しのような作業を行わせる必要が無く、また保守作業員のケアレスミス等による各部品の破損が発生することも無い。
さらに紙幣入出金機10では、スロット28の周側部分を形成する左側部33及び仕切板36の高さを、上段スロット側コネクタ38の上端よりも高くした(図5)。これにより紙幣入出金機10では、例えば図28(A)及び(B)に示すように、上段小収納カセット19C等が適正角度に対してy軸周りに大きく回転している状態で下降されたとしても、筐体80の底板部80B等を左側部33及び仕切板36の上端に当接させることができる。すなわち紙幣入出金機10では、保守作業員のケアレスミス等による上段スロット側コネクタ38に対する底板部80B等の衝突及びこれに伴う破損を未然に防止できる。
さらに上段小収納カセット19Cは、取手61(図11)が回動部61Cにおいて筐体80に対しz軸周りに回動するようにした。このため上段小収納カセット19Cは、作業者により取手61が把持されている場合、左右方向(z方向)へは容易に位置調整させ得るものの、前後方向(x方向)には取手61に対し筐体80が意に反して回動してしまう場合があるため、その位置調整が必ずしも容易ではなく、他方の手により当該筐体80を支持させる必要が生じる可能性がある。
この点を踏まえて紙幣入出金機10では、スロット28に上段小収納カセット19Cを装填させる際に、最初に当該上段小収納カセット19Cを右方向へ移動させるようにしたため(図16、図17)、片手で取手61が把持されている状態であっても、筐体80を他方の手で支持させること無く、容易にその位置を合わせさせることができる。
以上の構成によれば、現金自動預払機1の紙幣入出金機10は、スロット28に上段小収納カセット19Cを装填する際、当該スロット28の上方左寄りに位置させてから、右方向へ移動させ突出基部81を前後の右ガイド体39同士の間に嵌め込んで前後方向及び右方向の位置を規制する。続いて紙幣入出金機10は、上段小収納カセット19Cを下降させることにより、まず右前突起82及び右後突起83を右ガイド体39の溝部42にそれぞれ陥入させて左右方向の位置及びy軸周りの回転を規制し、次に左突起85を左ガイド体40の溝部52に陥入させてz軸周りの回転を規制すると共にx軸周りの回転も大幅に制限して、最後にカセット側コネクタ93を上段スロット側コネクタ38に対し正しく嵌合させる。これにより紙幣入出金機10は、装填時の作業性と位置精度とを両立させることができる。
[7.他の実施の形態]
なお上述した実施の形態においては、スロット28に上段小収納カセット19Cを装填する際、第2状態において突出基部81を前後の右ガイド体39の間に位置させ、第3状態において右前突起82及び右後突起83を右ガイド体39の溝部42に陥入させてから、第4状態において左突起85を左ガイド体40の溝部42に陥入させるようにした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば第2状態とした後、先に左突起85を左ガイド体40の溝部42に陥入させてから、右前突起82及び右後突起83を右ガイド体39の溝部42に陥入させるようにしても良い。要は、スロット28に上段小収納カセット19Cを装填して行くに伴い、移動及び回転に関する装填姿勢の自由度を順次規制していくことができれば良い。
また上述した実施の形態においては、上段小収納カセット19C側に突起(右前突起82、右後突起83及び左突起85)を設け(図12、図13)、スロット28側に溝部(右ガイド体39の溝部42及び左ガイド体40の溝部52)をそれぞれ設けた(図6〜図9)場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば上段小収納カセット19C側に溝部を設け、スロット28側に突起を設ける等しても良い。また上段小収納カセット19C及びスロット28に設ける形状としては、突起及び溝の組み合わせに限らず、少なくとも装填時に上段小収納カセット19Cを上下方向に移動でき、且つ適正位置に到達した際に各方向への移動及び回転を規制できるような種々の形状を採用することができる。
さらに上述した実施の形態においては、右前突起82を円柱状に形成した場合について述べた(図12、図13)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば図29(A)、(B)及び(C)に示すように、楕円柱状、三角柱状及び六角柱状のような種々の柱状としても良い。この場合、溝部42に陥入された際に、当該溝部42内で回動することができれば良い。右後突起83についても同様である。
さらには、例えば図30(A)及び(B)に示すように、右前突起82及び右後突起83を柱状では無く半球状としても良い。この場合、図22(A)に示したような対角方向の距離L2を観念できず、前後方向の距離L1が最も長くなるため、図22(C)に示したようなつかえた状態を発生させることが無い。そこで、右前突起82及び右後突起83を前後それぞれの右ガイド体39における基板41に当接させ、前後方向の位置を適正位置に合わせるようにしても良い。この場合、突出基部81と右ガイド体39とにより上段小収納カセット19Cの前後方向に関する位置を規制する必要がなくなるため、例えば両者の隙間を大きく広げ、摩擦の発生を防止して円滑に装填できるようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、上段小収納カセット19Cの右前突起82を円柱状に形成することにより、当該右前突起82が右ガイド体39の溝部42に陥入された後も当該溝部42内で回動し得るようにした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば右前突起82を角柱状に形成することにより、溝部42内で回動し得ないようにしても良い。この場合、右前突起82が溝部42内に陥入された段階で、上段小収納カセット19Cのx軸周りの回動を大幅に規制することができる。
さらに上述した実施の形態においては、右前突起82及び右後突起83を突出基部81の前面及び後面にそれぞれ立設させた場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば筐体80の前面及び後面に各突起をそれぞれ立設させるようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、右後突起83の外径を右前突起82の外径と同等とする場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば右後突起83の外径を右前突起82の外径と相違させても良い。この場合、右ガイド体39における溝部42の溝幅を各突起の外径に合わせることが望ましい。
さらに上述した実施の形態においては、上段小収納カセット19Cにおいて、右後突起83の中心軸を右前突起82の中心軸の延長線上に位置させた場合について述べた(図13)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば右後突起83の中心軸を右前突起82の中心軸の延長線上から外すように位置させても良い。この場合、右後突起83の中心軸と右前突起82の中心軸の延長線との距離が大きくなるに連れて、右前突起82及び右後突起83が溝部42内に陥入された状態における上段小収納カセット19Cのx軸周りの回転が困難となる。
さらに上述した実施の形態においては、上段小収納カセット19Cの右側における前後双方に右前突起82及び右後突起83をそれぞれ設け、スロット28の右側における前後双方に右ガイド体39の溝部42をそれぞれ設けた場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば右後突起83及び後側の右ガイド体39における溝部42をそれぞれ省略し、右前突起82及び前側の右ガイド体39における溝部42を残すようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、上段小収納カセット19Cにおける下寄りの位置に右前突起82、右後突起83及び左突起85を設ける場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、これらの突起の一部若しくは全部を、上段小収納カセット19Cにおける中寄り又は上寄りに設けるようにしても良い。またカセット側コネクタ93(図13)についても、上段小収納カセット19Cにおける下寄りの位置に限らず、中寄り又は上寄りに設けても良い。
さらに上述した実施の形態においては、右ガイド体39の基板41に平面状の傾斜面41Aを形成する場合について述べた(図8)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば傾斜面41Aを曲面状としても良く、或いは当該傾斜面41Aを省略して基板41を一様な平面状としても良い。
さらに上述した実施の形態においては、右ガイド体39(図8)の左側壁部44を右側壁部43よりも上下方向に短く形成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば左側壁部44における上下方向の長さを右側壁部43と同等としても良い。
さらに上述した実施の形態においては、溝部42における左右方向の幅(すなわち溝幅)を上下方向に一様とする場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば下方へ進むに連れて溝幅を狭くするように形成しても良い。また溝の深さ(すなわち右側壁部43及び左側壁部44の前面から基板41の表面までの長さ)についても、一様とする場合に限らず、例えば下方へ進むに連れて浅くなるようにしても良い。さらには、溝部42が下方へ進むに連れて左へ進行するよう全体を傾斜させ、或いは一部のみを湾曲又は屈曲させるよう、右側壁部43及び左側壁部44を形成しても良い。
さらに上述した実施の形態においては、右ガイド体39を前後対称に形成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば左側壁部44における上下方向の長さを前後で相違させ、或いは溝部42における左右方向の幅(すなわち溝幅)を前後で相違させる等、右ガイド体39を前後非対称に形成しても良い。これにより、例えば右前突起82が溝部42に陥入するタイミングと右後突起83が溝部42に陥入するタイミングとを相違させ、両者を同時では無く順に陥入させることができる。
さらに上述した実施の形態においては、左突起85を上下方向に長い角柱状とする場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば左突起85に代えて、右前突起82と同様の円柱状でなる突起を上下方向に複数並べて立設する等、種々の形状の突起を立設するようにしても良い。この場合、左突起は、左ガイド体40の溝部52内に陥入された際に、上下方向に離れた2箇所以上において前側壁部53及び後側壁部54に近接又は当接することにより、上段小収納カセット19Cのz軸周りの回転を規制して適正角度に合わせることができれば良い。
さらに上述した実施の形態においては、左ガイド体40における溝部52の溝幅、すなわち前側壁部53及び後側壁部54の間隔を、上下の位置に拘わらず一定とするようにした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば下方へ進むに連れて溝幅を狭くするように形成しても良い。また溝の深さについても、一様とする場合に限らず、例えば下方へ進むに連れて浅くなるようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、上段小収納カセット19Cの左側に左突起85を設け、左ガイド体40の溝部52に陥入させるようにした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば上段小収納カセット19Cから左突起85を省略すると共にスロット28から左ガイド体40を省略し、右前突起82及び右後突起83と右ガイド体39の溝部42とにより、上段小収納カセット19Cの右側においてのみスロット28に対して位置決めするようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、右ガイド体39における溝部42の下端にストッパ45を設けると共に左ガイド体40における溝部52の下端にストッパ55を設けることにより、重力の作用による上段小収納カセット19Cの下方への移動を規制して適正位置に止めるようにした場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばストッパ45を省略し、スロット28の右側部32に形成した段差の上面と上段小収納カセット19Cの突出基部81の下面との当接により下方向への移動を規制しても良い。また、例えば左ガイド体40からストッパ55を省略すると共に上段小収納カセット19Cの左側面に左突起85とは別体の突起を立設し、当該突起を左側部33の上端と当接させることにより適正位置に止めるようにしても良い。さらには、スロット28に対し上段小収納カセット19Cの下方向への移動を規制しないようにし、当該スロット28に下段小収納カセット19Bが装填されている場合にのみ上段小収納カセット19Cを適正位置に止め得るようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、スロット28の右側部32に右ガイド体39を設けると共に左側部33に左ガイド体40を設け、且つ上段小収納カセット19Cの右側に右前突起82及び右後突起83を設けると共に左側に左突起85を設けた場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば上段小収納カセット19Cの前側や後側に突起を設けると共にスロット28においてこれと対応する箇所に溝部を設ける等、上段小収納カセット19Cにおける各側面に突起を設けると共に、スロット28におけるこれと対応する箇所に溝部を形成するようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、スロット28に対し各収納カセットを上方向から装填する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばスロット28に対し各収納カセットを水平方向に装填するようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、1箇所のスロット28に1個の収納カセットを装填し、又は2個の収納カセットを上下に重ねて装填する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、1箇所のスロットに3個以上の収納カセットを上下に重ねて装填するようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、下部ユニット21(図4)を装填部25及び蓋体部26により構成し、当該蓋体部26内に下搬送部18(図2)を組み込んだ場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば下部ユニット21から蓋体部26を省略し、下搬送部18を下部筐体11A(図2)側に設けるようにしても良い。またこの場合、例えば前側板34及び後側板35の左上側を大きく削り落とし、或いは仕切板36と同等の高さとすることにより、各収納カセット19の装填に伴う操作性や視認性を高めるようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、顧客との間で入金取引や出金取引を行う現金自動預払機1に本発明を適用する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば金融機関の窓口に設置され当該金融機関の職員が使用する紙幣処理装置(いわゆるテラーマシン)等、紙幣を収納する収納カセットをスロットに装填して使用する種々の装置に適用しても良い。
さらに上述した実施の形態においては、媒体としての紙幣を収納した収納カセットをスロットに装填する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば各種証券や金券、或いは入場券や葉書等、種々の紙葉状の媒体を収納した収納カセットをスロットに装填する場合に適用するようにしても良い。
さらに本発明は、上述した実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
さらに上述した実施の形態においては、スロットとしてのスロット28と、後装填収納カセットとしての上段小収納カセット19Cとによって媒体処理装置としての紙幣入出金機10を構成し、当該スロットを、スロット側ガイドとしての右ガイド体39、溝部42及び溝部52と、スロット側コネクタとしての上段スロット側コネクタ38とにより構成し、当該後装填収納カセットを、カセット側ガイドとしての突出基部81、右前突起82、右後突起83及び左突起85と、カセット側コネクタとしてのカセット側コネクタ93とによって構成する場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなるスロットと、後装填収納カセットとにより媒体処理装置を構成し、当該スロットを、その他種々の構成でなるスロット側ガイドと、スロット側コネクタとにより構成し、当該後装填収納カセットを、その他種々の構成でなるカセット側ガイドと、カセット側コネクタとにより構成するようにしても良い。
さらに上述した実施の形態においては、カセット側ガイドとしての突出基部81、右前突起82、右後突起83及び左突起85と、カセット側コネクタとしてのカセット側コネクタ93とによって媒体収納カセットとしての上段小収納カセット19Cを構成する場合について述べた。
しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなるカセット側ガイドと、カセット側コネクタとによって媒体収納カセットを構成するようにしても良い。