(1)全体構成
図1は、本発明の実施形態にかかる車両用シフタ装置1が適用された車両の車室前部の構成を示す図である。本図に示すように、車室前部には、車幅方向に延びるインストルメントパネル2が設けられている。インストルメントパネル2の運転席側(図1では左側)にはメータユニット3が設けられ、このメータユニット3の後方にはステアリングハンドル4が設けられている。インストルメントパネル2の車幅方向中央部から車両後方に向かってセンターコンソール5が設けられ、このセンターコンソール5上にシフタ装置1が設けられている。
本実施形態において、車両は、ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジン等の内燃機関からなるエンジン(図示省略)と、エンジンの出力軸に接続され、当該出力軸の回転を減速しつつ車輪に伝達する自動変速機50(図10)とを備えている。自動変速機50は、遊星歯車機構(図示省略)を含み、当該歯車機構によって実現される複数の減速比の中から車速やエンジン負荷等に応じた適切な減速比を自動的に選択する有段式の変速機(AT)である。この自動変速機50のレンジには、駆動力伝達が切断されるニュートラルレンジ(Nレンジ)と、駆動力伝達が切断された上に出力軸がロックされるパーキングレンジ(Pレンジ)と、車両を前進させる方向に駆動力を伝達するドライブレンジ(Dレンジ:前進走行レンジ)と、車両を後退させる方向に駆動力を伝達するリバースレンジ(Rレンジ:後退走行レンジ)とが存在する。シフタ装置1は、このように複数存在する自動変速機50のレンジの中から所望のレンジを選択するために操作されるものである。
図2は、シフタ装置1を拡大して示す平面図である。この図2および先の図1に示すように、シフタ装置1は、メイン操作部7と、パーキングスイッチ8と、インジケータ9とを備えている。なお、図2において、矢印Fは車両の前方を示し、矢印Lは車両の左方を示している。このことは、図2以降の他の図面でも同様である。
パーキングスイッチ8は、自動変速機50のレンジをパーキングレンジに切り替えるときに操作されるプッシュ式のボタンスイッチである。また、パーキングスイッチ8の上面には、「P」という文字の文字盤が設けられ、パーキングレンジが選択されるとLED等の光源により上記「P」の文字が強調表示されるようになっている。すなわち、パーキングスイッチ8は、パーキングレンジに切り替えるためのスイッチとしての機能だけでなく、パーキングレンジが選択されていることを表示するインジケータとしての機能も兼ね備えている。
メイン操作部7は、自動変速機50のレンジをパーキングレンジ以外のレンジ(つまりニュートラル、ドライブ、リバースのいずれかのレンジ)に切り替えるときに操作されるものである。詳しくは後述するが、本実施形態におけるメイン操作部7は、シフトレバー10を左右方向に傾動(すなわち変位)させる等の操作が可能である。このメイン操作部7に対する操作パターンの違いにより、自動変速機50のレンジがニュートラル、ドライブ、リバースのいずれかのレンジに切り替わるようになっている。
インジケータ9は、現在選択されているレンジを表示するものである。図2に例示されるインジケータ9の場合、ニュートラルレンジを表す「N」の文字と、後述するホーム位置を表す「H」の文字とが左右方向に延びる横棒を間に挟んで左右に並べて表示され、「N」の文字の前方に、リバースレンジを表す「R」の文字盤(三角形状の文字盤)が設けられ、「N」の文字の後方に、ドライブレンジを表す「D」の文字盤(逆三角形状の文字盤)が設けられている。
つまり、このインジケータ9の表示は、左右方向がニュートラルレンジ選択方向であり、前後方向が走行レンジ選択方向であり、ホーム位置(H)にあるシフトレバー10をニュートラルレンジ選択方向である左方(←)に操作すると(ニュートラルレンジの選択操作)ニュートラルレンジ(N)が選択され、その状態から、シフトレバー10を走行レンジ選択方向である後方(↓)に操作すると(ドライブレンジの選択操作)ドライブレンジ(D)が選択され、前方(↑)に操作すると(リバースレンジの選択操作)リバースレンジ(R)が選択されることを示している。そして、メイン操作部7の操作に応じてリバースおよびドライブのいずれかのレンジが選択されたときには、その選択中のレンジに対応した文字(R,Dのいずれか)が強調表示されるようになっている。
さらに、上記のようなインジケータ9によるレンジの表示に加えて、本実施形態では、メータユニット3にもレンジが表示されるようになっている。すなわち、メータユニット3は、その所定箇所(例えばスピードメータとタコメータとの間)に液晶画面等からなる表示部を有しており、その表示部に、選択中のレンジに対応した文字(P,R,N,Dのいずれか)が表示されるようになっている。
次に、シフタ装置1のメイン操作部7の具体的構造について、図2〜図7を用いて説明する。これらの図に示すように、メイン操作部7は、シフトレバー10と、シフトレバー10を左右方向に傾動可能(変位可能)に支持する本体部20とを有している。
シフトレバー10は、請求項にいう「操作部材」に相当するものであり、ドライバーにより把持されるシフトノブ(把持部)11と、シフトノブ11から下方に延びる棒状のレバー部12と、レバー部12の下端に設けられた球体部13と、球体部13から斜め下方に突出するディテント用脚部14およびガイド用脚部(被ガイド部)15とを有している。
ディテント用脚部14は、球体部13の下面から斜め下方に延びる中空状の脚本体14bと、脚本体14bの先端からさらに下方に突出する付勢部14aとを有している。付勢部14aは、脚本体14bの内部に設けられた圧縮スプリング(図示省略)により下方に押圧されている。このような付勢部14aは、圧縮スプリングを押し戻す上向きの力を受けて上昇し、その力が減少すると下降するというように、脚本体14bに対し進退自在に支持されている。
ガイド用脚部15は、球体部13の下面から斜め下方に延びる棒状の部材である。本実施形態では、ディテント用脚部14が左側に傾斜しているのに対し、ガイド用脚部15は右側に傾斜するように設けられている。
本体部20は、上面が開口した箱状の筐体21と、筐体21の上面の開口を覆うように取り付けられるカバー部22とを有している。
カバー部22には、シフトレバー10のレバー部12が挿通される左右に長い矩形状の挿通穴22aが形成されている。
筐体21の内部には、シフトレバー10の球体部13を包み込んで支持するレバー支持部23が、その左右の連結部24を介して架設されている(図5参照)。レバー支持部23は、上面および下面が開口した中空状の部材であり、球体部13の外周面に沿うように形成された部分球面状の内周面を有している。このようなレバー支持部23に支持された球体部13は、レバー支持部23の内部で自在に回転することが可能である。
筐体21は、その下壁部に、協働してV字状をなす左傾斜面部21aおよび右傾斜面部21bを有している。左傾斜面部21aは、シフトレバー10のディテント用脚部14と対向し、ディテント用脚部14の軸心と略直交する面に沿って形成されている。右傾斜面部21bは、シフトレバー10のガイド用脚部15と対向し、ガイド用脚部15の軸心と略直交する面に沿って形成されている。
左傾斜面部21aの上面には、下方に凹んだ部分球面状の球状受け面25aを有する誘導部材25が設けられている。球状受け面25aには、シフトレバー10のディテント用脚部14の先端部、つまり付勢部14aが、圧縮スプリングによる押圧力を受けて常時押し付けられている。
付勢部14aは、球状受け面25aの中心部(凹球面の底部)に当接しているときに脚本体14bから最も進出し、付勢部14aの当接位置が球状受け面25aの中心部から離れるほど、圧縮スプリングの押圧力に反して後退する。後退した付勢部14aは、圧縮スプリングにより球状受け面25aに強く押し付けられ、その押し付け力が、付勢部14aを球状受け面25aの中心部に戻そうとする力に変換される。このため、シフトレバー10に対しドライバーの手による操作力(シフトレバー10を傾動させる力)が加えられていない状態では、シフトレバー10は、付勢部14aが球状受け面25aの中心部に位置する状態に保持される。このように付勢部14aが球状受け面25aの中心部に位置しているとき、シフトレバー10は鉛直方向に起立した姿勢となる。以下、シフトレバー10がこのように鉛直方向に起立した姿勢となるシフトレバー10の位置を「ホーム位置」と称する。
一方で、上記ホーム位置にあるシフトレバー10が操作力を受けて所定の方向に傾動変位すると、付勢部14aが球状受け面25aの中心部から離間し、それに伴い上述したとおり、付勢部14aを球状受け面25aの中心部に戻そうとする力が発生する。このため、上記シフトレバー10に対する操作力が解除されると、シフトレバー10はおのずと上記ホーム位置に復帰することになる。
以上のように、本実施形態では、凹状の部分球面からなる球状受け面25aと、これに常時押し付けられる付勢部14aとにより、変位後のシフトレバー10をホーム位置に自動的に復帰させるディテント機構30が構成されている。言い換えると、このようなディテント機構30を備えた本実施形態のシフタ装置1は、いわゆるモメンタリ式のシフタ装置の部類に属する。
図6に示すように、右傾斜面部21bの上面には、平面視で左右方向に延びる直線状のガイド溝97が形成されたガイド部材96が設けられている。
ガイド溝97には、シフトレバー10のガイド用脚部15の先端部が摺動可能に嵌合されている。シフトレバー10は、このようにガイド用脚部15が直線状のガイド溝97に嵌合された状態で上述したレバー支持部23により支持されることによって、ガイド溝97に沿って左右方向に傾動変位することが可能とされている。
図7(a)は、シフトレバー10が上記ホーム位置にあるときの状態を示している。シフトレバー10がホーム位置にあるとき、つまり、付勢部14aが球状受け面25aの中心部にあってシフトレバー10が鉛直方向に起立しているとき、ガイド用脚部15の先端部は、ガイド溝97の左端部に位置する。この状態では、シフトレバー10は右方に傾動変位しようとしても、ガイド用脚部15の先端部がガイド溝97の左端部に当接するので、シフトレバー10は右方に傾動変位することができない。
代わりに、この状態から、図7(b)のようにシフトレバー10が左方に傾動変位すると、ガイド用脚部15の先端部がガイド溝97に沿って右方に移動する。そして、ガイド用脚部15がガイド溝97の右端部に当接した時点で、シフトレバー10はそれ以上左方に変位することができなくなる。言い換えると、シフトレバー10は、ガイド用脚部15がガイド溝97の左端部に当接する位置から右端部に当接する位置までの範囲に限り、左右方向に自由に傾動変位することができる。そのため、図2に示したように、インジケータ9には、ホーム位置を表す「H」の文字が右に配置され、そこから傾動変位が可能な左方に延びる横棒が表示されている。
なお、本体部20のカバー部22に設けられた挿通穴22aは、ガイド用脚部15がガイド溝97の左端部から右端部まで移動するのに伴うレバー部12の左右方向の移動を許容し得る大きさに設定されている。
図8(a),(b)に示すように、ガイド部材96に左右方向に直線状に形成されたガイド溝97に3つのセンサ29,31,32が設けられている。1つは、表面に外部から物が接触したことを検出するタッチセンサ29であり、他の2つは、外部から加わる圧力を検出する感圧センサ31,32である。各センサ29,31,32はガイド溝97の右端部においてガイド溝97の凹部の縦面に配設されている。つまり、シフトレバー10が図7(a)に示すホーム位置から図7(b)に示す左方に傾動変位したときにガイド用脚部15の先端部が位置する部分に集中して配設されている。
図8(a),(b)において、ガイド溝97の左端部に表示された実線の円の中のHは、シフトレバー10がホーム位置にあるときのガイド用脚部15の位置を示し、ガイド溝97の右端部に表示された仮想線の円の中のNは、シフトレバー10がニュートラル位置(ニュートラルレンジが選択される位置)にあるときのガイド用脚部15の位置を示している。すなわち、シフトレバー10がホーム位置から左方に傾動変位した位置(ガイド用脚部15がガイド溝97の左端部から右端部に移動した位置)はニュートラル位置である。そのため、図2に示したように、インジケータ9には、ニュートラルレンジ選択方向である左右方向に延びる横棒を間に挟んで、ホーム位置を表す「H」の文字が右に配置され、ニュートラルレンジを表す「N」の文字が左に配置されている。つまり、シフトレバー10は、本体部20に、ホーム位置と、そこから左方に離れたニュートラル位置との間でのみ変位可能に支持されており、図1から明らかなように、運転席に着座しているドライバーは、ホーム位置にあるシフトレバー10を左方に傾動操作(変位操作)するときは、シフトレバー10を自己の身体側に引く動作をすることになる。
タッチセンサ29は、ガイド溝97の右端部(すなわちニュートラル位置側の端部)における凹部の右縦面に配設され、前側の感圧センサ31は、ガイド溝97の右端部における凹部の前縦面に配設され、後側の感圧センサ32は、ガイド溝97の右端部における凹部の後縦面に配設されている。
タッチセンサ29は、シフトレバー10がニュートラル位置にあることを検出するものであり、請求項にいう「ニュートラル位置検出手段」に相当する。前側の感圧センサ31は、後述するように、ホーム位置からニュートラル位置に向かって所定距離以上移動したシフトレバー10に対し後方(第1方向)に加わる操作力を検出するものであり、請求項にいう「操作力検出手段」に相当する。特に、本実施形態では、前側の感圧センサ31は、ドライブレンジを選択するための感圧センサ(ドライブ用感圧センサ)31である。後側の感圧センサ32は、後述するように、ホーム位置からニュートラル位置に向かって所定距離以上移動したシフトレバー10に対し前方(第2方向)に加わる操作力を検出するものであり、請求項にいう「操作力検出手段」に相当する。特に、本実施形態では、後側の感圧センサ32は、リバースレンジを選択するための感圧センサ(リバース用感圧センサ)32である。
ここで、シフトレバー10は、ガイド用脚部15がガイド溝97に沿って左右方向に移動することによりホーム位置とニュートラル位置との間で左右方向に案内される。シフトレバー10は、本体部20に左右方向に傾動可能に支持されているため、ドライバーはシフトレバー10を左右方向(本実施形態では左右方向はニュートラルレンジ選択方向である)に傾動操作することができる。例えば、ドライバーは、ガイド用脚部15の先端部がガイド溝97の右端部の右縦面に当接し、タッチセンサ29に所定の圧力で接触するまで、つまりタッチセンサ29がガイド用脚部15の接触を検出するまで、シフトレバー10をホーム位置から左方に傾動操作することが可能である。
一方、上述したように、シフトレバー10の球体部13は、レバー支持部23の内部で自在に回転することができる(図5参照)。また、シフトレバー10のガイド用脚部15の先端部の径は、ガイド溝97の幅よりも小さく設定されている(図8参照)。さらに、球状受け面25aと付勢部14aとにより構成されるディテント機構30は、球状受け面25aが平面視で円形であるため、シフトレバー10が左右方向に傾動操作されるときだけでなく、前後方向に操作されたときにも働く(図5、図7参照)。
そのため、ドライバーはシフトレバー10を左右方向に操作(傾動操作)するだけでなく前後方向(本実施形態では前後方向は走行レンジ選択方向である)に操作(傾動操作ではなく押圧操作)することもできる。例えば、ドライバーは、ニュートラル位置において、ガイド用脚部15の先端部がガイド溝97の右端部の前縦面に当接し、ドライブ用感圧センサ31を前方に所定の圧力で押圧するまで、つまりドライブ用感圧センサ31がガイド用脚部15の前方への押圧力を検出するまで、シフトレバー10を後方(第1方向)に押圧操作することが可能である。また、ドライバーは、ニュートラル位置において、ガイド用脚部15の先端部がガイド溝97の右端部の後縦面に当接し、リバース用感圧センサ32を後方に所定の圧力で押圧するまで、つまりリバース用感圧センサ32がガイド用脚部15の後方への押圧力を検出するまで、シフトレバー10を前方(第2方向)に押圧操作することが可能である。シフトレバー10は、前後方向の押圧力(操作力)が解除されると、ディテント機構30により、おのずとホーム位置に復帰する。
ここで、図8(a)に示すように、タッチセンサ29はガイド溝97の右端部の右縦面に配設されている。そのため、シフトレバー10がニュートラル位置側の端部まで左方に移動しないと、ガイド用脚部15はタッチセンサ29に接触できない。つまり、タッチセンサ29は、シフトレバー10が確かにニュートラル位置にあることを裏付けることができる。これに対し、図8(b)に例示するように、感圧センサ31,32はガイド溝97の右端部の前後の縦面に左右方向にある程度の幅を持って配設されている。この幅は、押圧力による感圧センサ31,32の歪を大きく拾って感圧センサ31,32の精度を高めるために必要なものであり、なるべく大きい幅に設定される。そのため、シフトレバー10がニュートラル位置側の端部まで移動しなくても、シフトレバー10がニュートラル位置の近傍まで移動すれば、ガイド用脚部15は感圧センサ31,32に接触できる。つまり、感圧センサ31,32は、ホーム位置からニュートラル位置に向かって所定距離以上移動したシフトレバー10に対し前後方向に加わる操作力(押圧力)を検出するものであり、シフトレバー10が確かにニュートラル位置にあることを裏付けることができない。
本実施形態では、図9に示すように、タッチセンサ29の検出感度よりもドライブ用感圧センサ31の検出感度が低く設定され、ドライブ用感圧センサ31の検出感度よりもリバース用感圧センサ32の検出感度が低く設定されている。つまり、ドライバーは、ドライブ用感圧センサ31にガイド用脚部15の前方への押圧力を検出させようとするときは、タッチセンサ29にガイド用脚部15の接触を検出させようとするときよりも大きい操作力でシフトレバー10を操作する必要がある。また、ドライバーは、リバース用感圧センサ32にガイド用脚部15の後方への押圧力を検出させようとするときは、ドライブ用感圧センサ31にガイド用脚部15の前方への押圧力を検出させようとするときよりも大きい操作力でシフトレバー10を操作する必要がある。
本実施形態では、図5に示すように、ドライバーにより把持されるシフトノブ11と、ガイド部材96に形成されたガイド溝97に先端部が嵌合するガイド用脚部15とが、シフトレバー10の傾動支点(すなわちレバー支持部23で回転自在に支持される球体部13の中心)Oに対して相互に反対側に位置している。そして、球体のシフトノブ11の中心と上記傾動支点Oとの間の長さをL1とし、ガイド用脚部15におけるガイド溝97との嵌合部位であるガイド用脚部15の先端部と上記傾動支点Oとの間の長さをL2とすると、L1はL2よりも長く設定されている(L1>L2)。そのため、てこの原理により、シフトノブ11に加えられたドライバーの操作力が(L1/L2)倍に増幅されてガイド用脚部15の先端部に作用する。そして、この増幅された操作力でガイド用脚部15の先端部はタッチセンサ29に接触し、または感圧センサ31,32を押圧する。
(2)制御系統
図10は、本実施形態のシフタ装置1に関する制御系統を示すブロック図である。本図に示されるコントローラ60は、周知のCPU、RAM、ROM等を含むマイクロコンピュータからなるもので、請求項にいう「制御手段」に相当するものである。すなわち、コントローラ60は、シフタ装置1の操作状態に応じて自動変速機50のレンジを制御する等の機能を有している。なお、図10ではコントローラ60が一体のブロックとして表されているが、コントローラ60は、例えば車体側と自動変速機50側とにそれぞれ分割して設けられた複数のマイクロコンピュータから構成されるものであってもよい。
コントローラ60は、上述したパーキングスイッチ8、タッチセンサ29、ドライブ用感圧センサ31、リバース用感圧センサ32、自動変速機50(より詳しくはその変速アクチュエータ50a)、インジケータ9、およびメータユニット3と電気的に接続されている。なお、自動変速機50の変速アクチュエータ50aとは、例えば、自動変速機50に内蔵されるクラッチやブレーキ等の摩擦締結要素の締結および解放を切り替えるソレノイドバルブ等のことである。
また、車両には、ブレーキペダルが踏み込み操作されているか否かを検出するためのブレーキセンサ(ブレーキスイッチ)42が設けられており、このブレーキセンサ42もコントローラ60と電気的に接続されている。
コントローラ60は、パーキングスイッチ8に内蔵された接点からの信号に応じてパーキングスイッチ8が押圧操作されたか否かを判定する。また、タッチセンサ29からの信号に応じてシフトレバー10がニュートラル位置に傾動操作されたか否かを判定する。また、前後一対の感圧センサ31,32からの信号に応じてシフトレバー10がニュートラル位置において前後方向のいずれに押圧操作されたか否かを判定する。
そして、このようにして判定されるシフタ装置1の操作状態に基づいて、自動変速機50のレンジの切り替え制御(または選択制御ともいう)や、インジケータ9およびメータユニット3の表示制御(現在のレンジを表示する制御)等を実行する。
また、コントローラ60は、いわゆるシフトロック機能を有する。すなわち、コントローラ60は、ブレーキセンサ42からの信号に基づいてブレーキペダルがオフ状態である(ブレーキペダルが踏み込まれていない)ことが確認された場合に、パーキングレンジから他のレンジへの切り替えを禁止する機能を有している。
(3)シフトパターン
以上のようなコントローラ60の制御の下、本実施形態では、シフタ装置1のシフトパターンが、図11(a)〜(d)および図12のように設定されている。以下、各図の内容について詳しく説明する。
(3−1)パーキングレンジからのシフトパターン
図11(a)は、現在のレンジがパーキングレンジである状態からシフトレバー10の操作を開始した場合のシフトパターンを示している。本図において、右方に表記された「P」は、シフトレバー10がホーム位置に保持されているデフォルト状態でパーキングレンジが選択されていることを示している。
この「P」の左方に表記された「N」は、シフトレバー10がホーム位置から左方にニュートラル位置まで傾動操作されるとタッチセンサ29がオフからオンとなってニュートラルレンジに切り替わることを示している。また、「N」の後方に逆三角形を挟んで表記された「D」は、シフトレバー10がニュートラル位置において後方に押圧操作されるとドライブ用感圧センサ31がオフからオンとなってドライブレンジに切り替わることを示している。同様に、「N」の前方に三角形を挟んで表記された「R」は、シフトレバー10がニュートラル位置において前方に押圧操作されるとリバース用感圧センサ32がオフからオンとなってリバースレンジに切り替わることを示している。
以上をまとめると、現在のレンジがパーキングレンジであるときのシフトパターンは、図12において「現レンジ」=「P」の列にも示されるとおり、
・左方への傾動操作 → ニュートラルレンジ
・左方への傾動操作&前方への押圧操作 → リバースレンジ
・左方への傾動操作&後方への押圧操作 → ドライブレンジ
のようになる。
なお、このようなシフトパターンにおいて、ドライブレンジを選択するためにシフトレバー10を押圧操作する後方は、請求項にいう「第1方向」に相当し、リバースレンジを選択するためにシフトレバー10を押圧操作する前方は、請求項にいう「第2方向」に相当する。
(3−2)リバースレンジからのシフトパターン
図11(b)は、現在のレンジがリバースレンジである状態からシフトレバー10の操作を開始した場合のシフトパターンを示している。本図において、右方に表記された「R」は、シフトレバー10がホーム位置に保持されているデフォルト状態でリバースレンジが選択されていることを示している。
この「R」の左方に表記された「N」は、シフトレバー10がホーム位置から左方にニュートラル位置まで傾動操作されるとタッチセンサ29がオフからオンとなってニュートラルレンジに切り替わることを示している。また、「N」の後方に逆三角形を挟んで表記された「D」は、シフトレバー10がニュートラル位置において後方に押圧操作されるとドライブ用感圧センサ31がオフからオンとなってドライブレンジに切り替わることを示している。また、「N」の前方に三角形を挟んで表記された「空」は、シフトレバー10がニュートラル位置において前方に押圧操作されても、その操作は無効であることを示している。操作が無効である場合、現在のレンジ(ここではリバースレンジ)が維持された上で、例えばメータユニット3内の所定の表示部に、操作が無効である旨を報知するメッセージが表記される。
以上をまとめると、現在のレンジがリバースレンジであるときのシフトパターンは、図12において「現レンジ」=「R」の列にも示されるとおり、
・左方への傾動操作 → ニュートラルレンジ
・左方への傾動操作&前方への押圧操作 → 無効(リバースレンジ維持)
・左方への傾動操作&後方への押圧操作 → ドライブレンジ
のようになる。
(3−3)ニュートラルレンジからのシフトパターン
図11(c)は、現在のレンジがニュートラルレンジである状態からシフトレバー10の操作を開始した場合のシフトパターンを示している。本図において、右方に表記された「N」は、シフトレバー10がホーム位置に保持されているデフォルト状態でニュートラルレンジが選択されていることを示している。
この「N」の左方に表記された「N」は、シフトレバー10がホーム位置から左方にニュートラル位置まで傾動操作されるとタッチセンサ29がオフからオンとなってニュートラルレンジに切り替わる(ニュートラルレンジが維持される)ことを示している。また、「N」の後方に逆三角形を挟んで表記された「D」は、シフトレバー10がニュートラル位置において後方に押圧操作されるとドライブ用感圧センサ31がオフからオンとなってドライブレンジに切り替わることを示している。同様に、「N」の前方に三角形を挟んで表記された「R」は、シフトレバー10がニュートラル位置において前方に押圧操作されるとリバース用感圧センサ32がオフからオンとなってリバースレンジに切り替わることを示している。
以上をまとめると、現在のレンジがニュートラルレンジであるときのシフトパターンは、図12において「現レンジ」=「N」の列にも示されるとおり、
・左方への傾動操作 → ニュートラルレンジ
・左方への傾動操作&前方への押圧操作 → リバースレンジ
・左方への傾動操作&後方への押圧操作 → ドライブレンジ
のようになる。
(3−4)ドライブレンジからのシフトパターン
図11(d)は、現在のレンジがドライブレンジである状態からシフトレバー10の操作を開始した場合のシフトパターンを示している。本図において、右方に表記された「D」は、シフトレバー10がホーム位置に保持されているデフォルト状態でドライブレンジが選択されていることを示している。
この「D」の左方に表記された「N」は、シフトレバー10がホーム位置から左方にニュートラル位置まで傾動操作されるとタッチセンサ29がオフからオンとなってニュートラルレンジに切り替わることを示している。また、「N」の後方に逆三角形を挟んで表記された「空」は、シフトレバー10がニュートラル位置において後方に押圧操作されても、その操作は無効であることを示している。操作が無効である場合、現在のレンジ(ここではドライブレンジ)が維持された上で、例えばメータユニット3内の所定の表示部に、操作が無効である旨を報知するメッセージが表記される。また、「N」の前方に三角形を挟んで表記された「R」は、シフトレバー10がニュートラル位置において前方に押圧操作されるとリバース用感圧センサ32がオフからオンとなってリバースレンジに切り替わることを示している。
以上をまとめると、現在のレンジがドライブレンジであるときのシフトパターンは、図12において「現レンジ」=「D」の列にも示されるとおり、
・左方への傾動操作 → ニュートラルレンジ
・左方への傾動操作&前方への押圧操作 → リバースレンジ
・左方への傾動操作&後方への押圧操作 → 無効(ドライブレンジ維持)
のようになる。
なお、パーキングレンジ以外のレンジからパーキングレンジに切り替えたい場合には、シフトレバー10を用いずに、パーキングスイッチ8を押圧操作する。すなわち、現在のレンジがリバース、ニュートラル、ドライブのいずれかのレンジであるときにパーキングスイッチ8を押圧操作すると、それだけでレンジがパーキングレンジに切り替わる。
(3−5)走行レンジ選択ロジック
[A]上述のように、本実施形態では、パーキングレンジまたはニュートラルレンジにおいては、シフトレバー10がホーム位置から左方にニュートラル位置まで傾動操作され、その後、ニュートラル位置においてシフトレバー10が後方に押圧操作されるとドライブ用感圧センサ31がオフからオンとなってドライブレンジが選択され、前方に押圧操作されるとリバース用感圧センサ32がオフからオンとなってリバースレンジが選択される。
また、リバースレンジにおいては、シフトレバー10がホーム位置から左方にニュートラル位置まで傾動操作され、その後、ニュートラル位置においてシフトレバー10が後方に押圧操作されるとドライブ用感圧センサ31がオフからオンとなってドライブレンジが選択される。
また、ドライブレンジにおいては、シフトレバー10がホーム位置から左方にニュートラル位置まで傾動操作され、その後、ニュートラル位置においてシフトレバー10が前方に押圧操作されるとリバース用感圧センサ32がオフからオンとなってリバースレンジが選択される。
ここで、図8(a),(b)を参照して説明したように、タッチセンサ29はガイド溝97の右端部の右縦面に配設されているため、シフトレバー10が確かにニュートラル位置にあることを裏付けることができるのに対し、感圧センサ31,32はガイド溝97の右端部の前後の縦面に左右方向にある程度の幅を持って配設されているため、シフトレバー10が確かにニュートラル位置にあることを裏付けることができない。
すなわち、感圧センサ31,32だけでは、ニュートラル位置近傍まで移動したシフトレバー10に加わる前後方向の押圧力が検出されるだけなので、その押圧力がドライバーの走行レンジを選択しようとする意思によるものなのか、またはシフトレバー10の偶然の斜め当たりによるものなのかの区別がつかないのである。
例えば、ドライバーが走行レンジを選択しようとする場合は、そのシフトレバー10の操作に伴って、図8(a)に示すように、ガイド用脚部15は、ガイド溝97の左端部のホーム位置から、真っ直ぐ右方に変位して、ガイド溝97の右端部のニュートラル位置に移動し、ここから、前方または後方に移動して、ドライブ用感圧センサ31またはリバース用感圧センサ32を押圧する。そして、その結果として、各感圧センサ31,32がオフからオンとなる。
一方、シフトレバー10が偶然斜め当たりした場合、つまり、ホーム位置にあるシフトレバー10にドライバーや乗員の腕あるいは鞄等の持ち物が当たって偶然シフトレバー10に左方への力が斜めに加わった場合は、図8(b)に例示するように、ガイド用脚部15は、ガイド溝97の左端部のホーム位置から、斜め(図例は斜め前方)に右方に変位して、そのまま直接、感圧センサ(図例は前側のドライブ用感圧センサ31)に当たり、その感圧センサを押圧する。そして、この場合も、結果としては、ドライバーがシフトレバー10を操作した場合と同様、感圧センサ31,32がオフからオンとなる。
その結果、シフトレバー10の偶然の斜め当たりに起因して発生した押圧力を、ドライバーの走行レンジを選択しようとする操作によるものと誤って認識してしまうと、ドライバーに走行レンジを選択する意思がないにも拘らず、走行レンジが誤って選択されてしまうのである。
[B]そこで、本実施形態では、感圧センサ31,32とは異なる別のタッチセンサ29を備え、このタッチセンサ29によってシフトレバー10がニュートラル位置にあることを別途検出するようにしたのである。そして、このタッチセンサ29が上記検出をしたときは、シフトレバー10が確かにニュートラル位置にあることが裏付けられるため、このタッチセンサ29が上記検出をしている状態(ON状態)で、さらに感圧センサ31,32が上記押圧力を検出したとき(ONとなったとき)に限り、走行レンジが選択されるようにしたのである。このように、タッチセンサ29による上記検出を走行レンジ選択の条件に加えることによって、シフトレバー10の偶然の斜め当たりに起因して発生した押圧力がドライバーの操作によるものと誤認識される不具合が極力回避される。そのため、走行レンジの誤選択が効率よく抑制される。
すなわち、コントローラ60は、図13(a)に示すように、タッチセンサ29が、シフトレバー10がニュートラル位置にあることを検出してONとなると、ドライバーが走行レンジを選択しようとしてシフトレバー10を操作したと判定する。そして、この状態で、さらに感圧センサ31,32が、シフトレバー10に対し前後方向に加わる押圧力を検出してONとなったときに、走行レンジを選択する。つまり、図8(a)に示すように、ガイド用脚部15がタッチセンサ29に接触した状態で、さらにガイド用脚部15が感圧センサ31,32を押圧したときに、はじめて走行レンジを選択するのである。これにより、ドライバーが走行レンジを選択しようとする場合に、レンジが間違いなく走行レンジに切り替えられる。
これに対し、コントローラ60は、図13(b)に示すように、タッチセンサ29がOFFの状態では、たとえ感圧センサ31,32がONとなっても、シフトレバー10が偶然斜め当たりしたと判定し、走行レンジを選択しない。つまり、図8(b)に例示するように、ガイド用脚部15がタッチセンサ29に接触していない状態では、いくらガイド用脚部15が感圧センサ31,32を押圧しても、走行レンジを選択しないのである。これにより、シフトレバー10が偶然斜め当たりした場合に、レンジが誤って走行レンジに切り替えられることが抑制される。なお、この場合、ニュートラルレンジも選択されない。
また、コントローラは、図13(b)に鎖線で示すように、タッチセンサ29がOFFの状態で感圧センサ31,32がONとなったときは、その後、タッチセンサ29がONとなっても、走行レンジを選択しない。これにより、例えば、ガイド用脚部15が感圧センサ31,32のいずれか一方を押圧しながら、ニュートラル位置まで移動してきたような場合でも、確実にドライバーが意図しない走行レンジの誤選択が防止できる。
[C]特に、本実施形態では、タッチセンサ29は、図8(a),(b)に示すように、ガイド溝97の右端部の右縦面に配設されている。すなわち、シフトレバー10の左右方向の変位可能範囲のニュートラル位置側の端部に配設されている。そのため、タッチセンサ29は、ガイド用脚部15の先端部がガイド溝97の左端部からガイド溝97の右端部の右縦面まで移動してきてはじめてオンとなる。言い換えると、シフトレバー10がホーム位置から左方にそれ以上変位できなくなるまで傾動操作されたときにオンとなる。
このようなシーンは、基本的に、図8(a)に示すように、ドライバーに走行レンジを選択しようとする意思のあるときに起こるものであり、図8(b)に示すように、偶然の斜め当たりでは起こり難いものである。したがって、このようなガイド溝97の右端部の右縦面に配設されているタッチセンサ29によって、ドライバーが走行レンジを選択しようとしてシフトレバー10を操作した場合と、シフトレバー10が偶然斜め当たりした場合とを明確に区別することができる。そのため、偶然の斜め当たりに起因して感圧センサ31,32に押圧力が発生した場合をドライバーの意思によるものと誤認識して走行レンジを誤選択する不具合を高い確率で排除することが可能となる。
(4)作用
以上説明したように、本実施形態にかかる車両用シフタ装置1は、ドライバーにより操作されるシフトレバー10と、上記シフトレバー10を変位可能(傾動可能)に支持するとともに変位後のシフトレバー10を所定のホーム位置に自動的に復帰させる本体部20と、上記シフトレバー10の操作に基づいて車両に搭載された自動変速機50のレンジを制御するコントローラ60とを備えている。
その上で、上記本体部20は、上記ホーム位置と、そこから左方に離れたニュートラル位置との間でのみ上記シフトレバー10を変位可能に支持している。また、上記シフトレバー10が上記ニュートラル位置にあることを検出するタッチセンサ29が備えられている。また、上記ホーム位置から上記ニュートラル位置に向かって所定距離以上移動したシフトレバー10に対し前後方向に加わる操作力(押圧力)を検出するドライブ用感圧センサ31およびリバース用感圧センサ32が備えられている。そして、上記コントローラ60は、上記タッチセンサ29によりシフトレバー10がホーム位置からニュートラル位置まで変位したことが検出されたときにニュートラルレンジを選択する。また、上記コントローラ60は、上記タッチセンサ29によりシフトレバー10がニュートラル位置にあることが検出された状態でさらに上記感圧センサ31,32により上記操作力(押圧力)が検出されたときに走行レンジ(すなわちドライブレンジまたはリバースレンジ)を選択する。
この構成によれば、シフトレバー10をホーム位置から左方に変位操作してニュートラル位置まで移動させるとニュートラルレンジが選択され、その後、ニュートラル位置においてシフトレバー10を前後方向に押圧操作するとドライブレンジまたはリバースレンジが選択される。このように、シフトレバー10を一旦ニュートラル位置まで変位させれば、その後は、シフトレバー10を押圧操作するだけで(変位操作しなくても)走行レンジを選択できるので、走行レンジ選択のために必要な操作ストロークが短くて済み、素早く簡便に走行レンジを選択できる。また、当該シフタ装置1の機構を簡素化でき、シフタ装置1をコンパクト化できる、等の利点が得られる。その結果、例えば、図1に示すセンターコンソール5上に、情報表示装置の操作スイッチ(コマンダー等)のような他の操作機構を配設したり、カップホルダー等を配設することが可能となる。
その際、ホーム位置からニュートラル位置に向かって所定距離以上移動したシフトレバー10、つまりニュートラル位置近傍まで移動したシフトレバー10に加わる前後方向の操作力(押圧力)を検出する感圧センサ31,32に加えて、シフトレバー10がニュートラル位置にあることを検出するタッチセンサ29が備えられ、このタッチセンサ29でシフトレバー10がニュートラル位置にあることが検出された状態でさらに感圧センサ31,32により上記操作力(押圧力)が検出されたときにのみ走行レンジが選択されるので、図8(a),(b)および図13(a),(b)を参照して説明したように、走行レンジの誤選択が効率よく抑制される。
以上により、本実施形態によれば、走行レンジ選択のために必要な操作ストロークが短くて済み、かつ走行レンジの誤選択が抑制される車両用シフタ装置1が提供される。
本実施形態においては、上記タッチセンサ29は、シフトレバー10の左右方向の変位可能範囲のニュートラル位置側の端部まで変位されたシフトレバー10のガイド用脚部15の先端部が接触することにより、シフトレバー10がニュートラル位置にあることを検出するものである(図8参照)。
この構成によれば、シフトレバー10がニュートラル位置側の端部まで変位されたときにシフトレバー10がニュートラル位置にあることが検出されるので、ドライバーに走行レンジを選択しようとする強い意思のあることが明確に確認できる。これに対し、シフトレバー10の偶然の斜め当たりでは、図8(b)を参照して説明したように、シフトレバー10がニュートラル位置側の端部まで移動することが起こり難いので、偶然の斜め当たりに起因して発生した押圧力がドライバーの操作によるものと誤認識される不具合が高い確率で排除され、結果として、走行レンジの誤選択が精度よく抑制される。
本実施形態においては、上記感圧センサ31,32の検出感度は、上記タッチセンサ29の検出感度よりも低く設定されている(図9参照)。
この構成によれば、ホーム位置からニュートラル位置へのシフトレバー10の変位操作(ニュートラルレンジの選択操作)よりもニュートラル位置におけるシフトレバー10の押圧操作(走行レンジの選択操作)のほうが検出され難くなる。そのため、ドライバーは、車両に駆動力が伝達される走行レンジを選択する際は、より大きい操作力でシフトレバー10を操作する必要があり、走行レンジを選択するときの注意力が高められて、安全性が向上する。
本実施形態においては、上記感圧センサ31,32は、上記ホーム位置から上記ニュートラル位置に向かって所定距離以上移動したシフトレバー10に対し前後方向に加わる操作力(押圧力)を検出する。また、上記コントローラ60は、タッチセンサ29によりシフトレバー10がニュートラル位置にあることが検出された状態でさらにドライブ用感圧センサ31により後方の操作力が検出されたときに前進方向の走行レンジであるドライブレンジを選択し、リバース用感圧センサ32により前方の操作力が検出されたときに後退方向の走行レンジであるリバースレンジを選択する。そして、リバース用感圧センサ32の検出感度は、ドライブ用感圧センサ31の検出感度よりも低く設定されている(図9参照)。
この構成によれば、ニュートラル位置におけるシフトレバー10の後方への押圧操作(ドライブレンジの選択操作)よりもニュートラル位置におけるシフトレバー10の前方への押圧操作(リバースレンジの選択操作)のほうが検出され難くなる。そのため、ドライバーは、車両に後退方向の駆動力が伝達されるリバースレンジを選択する際は、より大きい操作力でシフトレバー10を操作する必要があり、車両が後退するリバースレンジを選択するときの注意力が高められて、安全性が向上する。
本実施形態においては、シフトレバー10のホーム位置とニュートラル位置との間の移動を案内するガイド溝97が形成されたガイド部材96が備えられ、タッチセンサ29および感圧センサ31,32は、上記ガイド部材96(より詳しくはガイド溝97)に設けられている(図8参照)。
この構成によれば、ガイド部材96と、タッチセンサ29および感圧センサ31,32とが相互に重なり合って配置されるので、個々別々に占有スペースを取って配置される場合に比べて、当該シフタ装置1のコンパクト化が促進される。
本実施形態においては、上記本体部20は、シフトレバー10を傾動可能に支持する。また、上記シフトレバー10は、ドライバーにより把持されるシフトノブ11と、上記ガイド部材96のガイド溝97に先端部が嵌合するガイド用脚部15とを傾動支点Oに対して相互に反対側に有する。そして、上記シフトノブ11と傾動支点Oとの間の長さL1が、上記ガイド用脚部15におけるガイド部材96のガイド溝97との嵌合部位(すなわちガイド用脚部15の先端部)と傾動支点Oとの間の長さL2よりも長く設定されている(図5参照)。
この構成によれば、てこの原理により、シフトノブ11に加えられた操作力が(L1/L2)倍に増幅されてガイド用脚部15の先端部に作用するので、ガイド部材96に設けられた各センサ29,31,32の検出感度を高めることなく、ドライバーによるシフトレバー10の操作を精度よく検出することができる。
(5)変形例
上記実施形態では、左右方向をニュートラルレンジ選択方向、前後方向を走行レンジ選択方向としたが、これに限らず、シフトレバー10の操作方向をいずれの方向(前後、左右、斜め)に向けるかは、適宜変更することができる。
ガイド用脚部15におけるガイド溝97との嵌合部位を、ガイド用脚部15の先端部に代えて、ガイド用脚部15の途中部としてもよい。
ガイド溝97に代えてレール部材をガイド部材96に配設し、ガイド用脚部15の先端部を二つに分岐させて上記レール部材に摺動可能に外嵌させてもよい。
上記実施形態とは逆に、ニュートラル位置においてシフトレバー10を前方に押圧操作するとドライブレンジが選択され、後方に押圧操作するとリバースレンジが選択されるようにしてもよい。
上記実施形態とは逆に、上記感圧センサ31,32の検出感度を、上記タッチセンサ29の検出感度よりも高く設定してもよい。この場合、ホーム位置からニュートラル位置へのシフトレバー10の変位操作(ニュートラルレンジの選択操作)よりもニュートラル位置におけるシフトレバー10の押圧操作(走行レンジの選択操作)のほうが検出され易くなる。そのため、ドライバーは、走行レンジを選択する際は、より小さい操作力でシフトレバー10を操作すれば済むので、走行レンジの選択を軽快感を持って行うことができる。
上記実施形態のシフタ装置1は、エンジン(内燃機関)と車輪との間に介設された有段式の自動変速機50のレンジを切り替え操作するものであったが、本発明が適用可能な変速機は、有段式の自動変速機に限られず、例えば無段変速機(CVT)であってもよい。
上記実施形態は、いわゆる左ハンドル車についてのものであったが(図1参照)、右ハンドル車に本発明を適用することももちろん可能である。その場合、例えば、図2に示したインジケータ9の表示や、パーキングスイッチ8およびインジケータ9とシフトレバー10との配置や、図11(a)〜(d)に示したシフトパターン等は、左右反転させることが好ましい。
上記実施形態は、本発明を内燃機関からなるエンジンを備えた車両に適用したものであったが、これに限られないことはいうまでもなく、例えば、動力源として走行用モータを備え、この走行用モータで走行することが可能な電気自動車やハイブリッド自動車等にも本発明を適用することができる。