(1)全体構成
図1は、本発明の一実施形態にかかるシフト装置1が適用された車両の車室前部を示す図である。本図に示すように、車室前部には、メータユニット3やステアリングハンドル4等が設けられるインストルメントパネル2と、インストルメントパネル2の車幅方向中央部から運転席と助手席との間を通って車両後方に延びるセンターコンソール5とが設置されている。以下では、図1に示すように、シフト装置1が、ステアリングハンドル4および運転席が車両右側に設けられたいわゆる右ハンドル車に適用された場合について説明する。また、以下では、車幅方向すなわち図1の左右方向を単に左右方向といい、図1の右を単に右、図1の左を単に左として説明する。また、車両前後方向を単に前後方向といい、車両前後方向前を単に前、車両前後方向後を単に後という。また、図面において、矢印Fは車両の前方を示し(言い換えると、矢印Fの反対側が車両後方である)、矢印Lは車両の左側、矢印Rは車両の右側を示している。
本実施形態において、車両は、ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジン等の内燃機関からなるエンジン(図示省略)と、エンジンの駆動力を減速しつつ車輪に伝達する自動変速機110(図12参照)とを備えている。自動変速機110は、遊星歯車機構を含み、当該歯車機構によって実現される複数の減速比の中から車速やエンジン負荷等に応じた適切な減速比を自動的に選択する有段式の変速機(AT)である。この自動変速機110の変速レンジとしては、駆動力の伝達が切断されるニュートラルレンジと、駆動力の伝達が切断された上に出力軸がロックされるパーキングレンジと、車両を前進させる方向に駆動力を伝達するドライブレンジ(前進走行レンジ)と、車両を後退させる方向に駆動力を伝達するリバースレンジ(後退走行レンジ)とが存在する。
シフト装置1は、変速レンジを、これらドライブレンジ、リバースレンジ、ニュートラルレンジ、パーキングレンジの中から所望のレンジに切り替えるためのものであり、センターコンソール5に設けられるレバーユニット7とPスイッチユニット8と、コントローラ(図12参照)101とを備えている。レバーユニット7およびPスイッチユニット8は、変速レンジの切り替え時に操作されるものである。
シフト装置1の操作に基づいて選択された変速レンジすなわち選択中の変速レンジは、メータユニット3に表示されるようになっている。具体的には、メータユニット3は、その所定箇所(例えばスピードメータとタコメータとの間)に液晶画面等からなる表示部を有しており、その表示部に、選択中の変速レンジに対応したP(パーキングレンジ),R(リバースグレンジ),N(ニュートラルレンジ),D(ドライブレンジ)のいずれかの文字が表示されるようになっている。
(2)Pスイッチユニット
Pスイッチユニット8は、自動変速機50の変速レンジをパーキングレンジに切り替えるためのものである。Pスイッチユニット8は、回転操作されてその回転操作量が所定量になると所定の信号を出力し、操作力が解除されると元の位置に復帰するものである。Pスイッチユニット8としては、一般的なモメンタリ式のON/OFF回転スイッチを用いることができ、その詳細な構造の説明は省略し、ここでは、簡単に説明する。
Pスイッチユニット8は、ドライバーにより回転操作されるダイヤル式のP操作部材60と、P操作部材60を支持するP本体部70とを有する。P操作部材60は、請求項にいう「第2操作部材」に相当するものであり、P本体部40は、請求項にいう「第2本体部」に相当するものである。
P本体部70は、上面が開口した箱状の筐体72と、筐体72の上面を覆うように取り付けられるカバー71と、コイルスプリング78と、筐体72内に収容された支持部(不図示)とを有する。また、P本体部70内には、ON/OFF式のスイッチ素子であるPスイッチ素子75(図12参照)が固定されている。P本体部70は、カバー71がセンターコンソール5の上面の一部を構成するようにセンターコンソール5に設けられている。
P操作部材60は、円柱状の把持部61と、把持部61から下方に延びる軸部62とを有する。
把持部61は、ドライバーにより直接操作される部分であり、P操作部材60は、この把持部61がP本体部70のカバー71すなわちセンターコンソール5の上面から上方に露出するようにP本体部70の支持部に支持されている。また、P操作部材60は、P本体部70によって上下に延びる中心軸を中心に回転可能に支持されている。本実施形態では、図3に示すように、P操作部材60は、その前端が左側に移動するよう、すなわち、反時計回りに回転するように支持されている。また、本実施形態では、把持部61の大きさは、ドライバーが主として指先で操作可能な大きさに設定されている。
軸部62には、Pスイッチ素子75を押圧操作するための押圧操作部(不図示)が設けられている。把持部61が所定量(以下、P操作量という場合がある)反時計回りに回転操作されると、この押圧操作部はPスイッチ素子75を押圧する。これに伴って、Pスイッチ素子75は、所定の信号を出力する。
コイルスプリング78は、軸部62すなわちP操作部材60を時計回りに付勢している。そのため、P操作部材60は、コイルスプリング78の付勢力に抗する力が加えられることで回転し、その操作力が解除されるとコイルスプリング78の付勢力によって元の位置(回転前の位置)に戻される。以下では、操作力が加えられていない状態におけるP操作部材60の位置を「ホーム位置」という。
上記のようにしてP操作部材60が所定量回転し、これに伴ってPスイッチ素子75から所定の信号が出力されると、後述するようにコントローラ101は、パーキングレンジが選択されたと判定して変速レンジをパーキングレンジに切り替えるべく自動変速機110を制御する。
なお、把持部61の上面には、パーキングレンジを表す「P」の文字盤が設けられており、パーキングレンジが選択されるとLED等の光源により「P」の文字が強調表示されるようになっている。
(3)レバーユニット7
図4〜図10を用いて、レバーユニット7の具体的構造について説明する。
レバーユニット7は、シフトレバー10と、本体部40と、DRレバー回転センサ52と、Nレバー回転センサ54とを備えている。
シフトレバー10は、請求項にいう「第1操作部材」に相当するものである。具体的に、本実施形態のシフトレバー10は、ドライバーにより把持される球状のシフトノブ12と、シフトノブ12から下方に延びる棒状のレバー部14と、レバー部14の下端に設けられたブロック状の基部16と、基部16の上方に設けられたレバー側カバー部15と、基部16から右斜め下方に突出する棒状の規制軸24と、基部16から左斜め下方に突出する棒状のディテント用脚部26と、基部16の下部から前方に突出する棒状のNスイッチ操作部22とを有している。
ディテント用脚部26の本体部分(先端(下端部)26bよりも上側の部分)26aの内部には、圧縮スプリング(不図示)が設けられており、この圧縮スプリングによって先端26bは下方に押圧されている。これにより、ディテント用脚部26の先端26bは、圧縮スプリングを押し戻す上向きの力を受けると上昇し、その力が減少すると下降するというように、本体部分26aに対して進退自在となっている。
本体部40は、請求項にいう「第1本体部」に相当するものであり、シフトレバー10を支持する機能を有する。本体部40は、上面が開口した箱状の筐体42と、筐体42の上面を覆うように取り付けられるカバー41と、筐体42内に収容された支持ブロック44と、筐体42の底面上に固定された規制部46と、同じく筐体42の底面上に固定されたディテント用誘導部材48とを有している。なお、筐体42は前後左右にそれぞれ壁を有するが、各図においてこれら壁の一部は省略している。
図5に示すように、筐体42の底面は、前後方向からみて略V字状を有し、左右中央から右斜め上方に傾斜する右底面41bと、左右中央から左斜め上方に傾斜する左底面41cとからなり、規制部46は、右底面41b上に設けられ、ディテント用誘導部材48は、左底面41c上に設けられている。
上記DRレバー回転センサ52は、筐体42の左側面の外側に固定されており、Nレバー回転センサ54は、筐体42の前側面の内側に固定されている。
シフトレバー10は、カバー41に形成された円形のゲート孔41a内にレバー部14が挿通された状態で、本体部40の支持ブロック44に支持されている。なお、この支持状態では、図2に示すように、シフトレバー10のレバー側カバー部15がゲート孔41aを塞ぎ、良好な見栄えが確保されている。
支持ブロック44は、上下に延びる角筒状の本体ブロック44dと、本体ブロック44dの左右両側面から左右外側に突出する円柱状の第1支持軸44b、44cとを有している。支持ブロック44は、一方の第1支持軸44bが、筐体42の左側面に形成された円形の貫通孔42a内にその中心軸を中心として回転可能に挿通され、他方の第1支持軸44cが筐体42の右側面に設けられた支持部材(不図示)にその中心軸を中心として回転可能に支持されることで、筐体42内に、これら第1支持軸44b、44cの中心軸を中心として回転可能に収容されている。
本体ブロック44dは、シフトレバー10の基部16を内側に収容可能な大きさを有しており、シフトレバー10は、基部16がこの本体ブロック44d内に収容されることで本体ブロック44dに支持されている。
具体的には、支持ブロック44には、その前側面と後側面に形成された貫通孔44e,44eに挿通されてこれら側面間にわたって前後に延びる円柱状の第2支持軸44aが設けられている。シフトレバー10は、その基部16に形成された貫通孔16a内にこの第2支持軸44aが挿通されることで、本体ブロック44dに支持されている。
第2支持軸44aの外径と、貫通孔16aの内径とはほぼ同じに設定されている。そのため、貫通孔16a内に第2支持軸44aが挿通されることで、シフトレバー10は、図7に示すように、第2支持軸44aの中心軸すなわち貫通孔16aの中心軸を中心として左右に回転可能すなわち左右に傾動可能に支持される。
ここで、上述のように、支持ブロック44は、第1支持軸44b,44cの中心軸を中心として回転可能である。そのため、支持ブロック44に支持されることで、シフトレバー10は、図8に示すように、支持ブロック44と一体に、第1支持軸44b,44cの中心軸を中心として前後に回転可能すなわち前後に傾動可能に支持される。このように、シフトレバー10は、支持ブロック44によって前後左右に傾動可能に支持される。
本体部40のディテント用誘導部材48は、傾動変位後のシフトレバー10を自動的に元の位置(後述するホーム位置)に戻すためのものである。ディテント用誘導部材48は、下方(詳細には左斜め下方)に凹んだ部分凹球面状、すなわち、断面視で下方に凹む円弧状を有する凹面48aを有している。
シフトレバー10が本体部40に支持された状態において、シフトレバー10のディテント用脚部26の先端26bは、このディテント用誘導部材48の凹面48aと対接している。そして、ディテント用脚部26の先端26bは、この凹面48aに上記圧縮スプリングによる押圧力を受けて常時押し付けられている。
図9等に示すように、ディテント用脚部26の先端26bは、凹面48aの中心部(凹球面の底部)に対接しているとき、ディテント用脚部26の本体部分26aから最も進出する。このとき圧縮スプリングは最も伸びて付勢力は最小となる。一方、ディテント用脚部26の先端26bは、凹面48aの中心部から離れると、ディテント用脚部26の本体部分26aの内部に後退する。このとき、圧縮スプリングは縮みディテント用脚部26の先端26bに加えられる付勢力は増大する。ディテント用脚部26の先端26bの後退量および圧縮スプリングからこの先端26bに加えられる付勢力は、先端26bの凹面48aの中心部からの離間量が大きくなるほど大きくなる。圧縮スプリングから加えられる付勢力が増大すると、ディテント用脚部26の先端26bは凹面48aに強く押し付けられる。そして、この押し付け力は、ディテント用脚部26の先端26bを凹面48aの中心部に戻す力に変換される。
従って、シフトレバー10に対して操作力(シフトレバー10を傾動させる力)が加えられていないときは、シフトレバー10はディテント用脚部26の先端26bが凹面48aの中心部に配置される位置に支持される。以下では、この位置をホーム位置という。このホーム位置ではシフトレバー10は、図4等に示すように、カバー41に直交して延びる姿勢となる。そして、ホーム位置にあるシフトレバー10が操作力を受けて傾動してディテント用脚部26の先端26bが凹面48aの中心部から離間すると、それに伴いこの先端26bには、凹面48aの中心部に戻そうとする力が発生する。そのため、シフトレバー10に対する操作力が解除されると、シフトレバー10は自ずとホーム位置に復帰する。このように、本実施形態のシフトレバー10は、ホーム位置から傾動可能であるとともに傾動後にホーム位置に自動的に復帰するモメンタリ式の装置である。
本体部40の規制部46は、シフトレバー10の前後および左右の傾動を規制するためのものである。規制部46には、規制溝46aが形成されている。規制溝46aは、T字状を有しており、図5および図10に示すように、前後に延びるDR規制溝46a_1と、DR規制溝46a_1の前後中央(図10にHで示す位置)から右側に延びるN規制溝46a_2とで構成されている。
シフトレバー10の規制軸24の先端(下端部)はこの規制溝46a内に配置されており、規制軸24はこの規制溝46a内のみでしか移動できないようになっている。
すなわち、シフトレバー10は、規制軸24がDR規制溝46a_1の前端と当接する位置と、後端と当接する位置との間でのみ前後に傾動可能となっている。また、シフトレバー10は、規制軸24がDR規制溝46a_1の前後中央にある位置から、規制軸24が右側に向かう向きすなわちシフトノブ12を含むシフトレバー10の上部が左に向かう向きにしか傾動できないように、かつ、規制軸24がN規制溝46a_2の右端と当接する位置までしか傾動できないようになっている。ここで、規制軸24は、シフトレバー10がホーム位置にある状態でDR規制溝46a_1の前後中央に配置される。
以下では、適宜、シフトノブ12を含むシフトレバー10の上部の傾動方向を、シフトレバー10の傾動方向として説明する。すなわち、シフトノブ12を含むシフトレバー10の前方への傾動を、単に前方への傾動といい、シフトノブ12を含むシフトレバー10の上部の後方への傾動を、単に後方への傾動という。また、シフトノブ12を含むシフトレバー10の右側への傾動を、単に右側への傾動といい、シフトノブ12を含むシフトレバー10の上部の左側への傾動を、単に左側への傾動という。また、適宜、規制軸24がDR規制溝46a_1の後端と当接する位置を前方の変位限界位置といい、規制軸24がDR規制溝46a_1の前端と当接する位置を後方の変位限界位置といい、規制軸24がN規制溝46a_2の右端と当接する位置を左側の変位限界位置という。また、シフトレバー10がホーム位置から前方の変位限界位置まで変位する量を前方変位可能量といい、シフトレバー10がホーム位置から後方の変位限界位置まで変位する量を後方変位可能量といい、シフトレバー10がホーム位置から左側の変位限界位置まで変位する量を左側変位可能量という。
ここで、図10に示すように、DR規制溝46a_1の前後中央からN規制溝46a_2の右端まで規制軸24が移動する距離L2は、DR規制溝46a_1の前後中央からDR規制溝46a_1の前端および後端まで規制軸24が移動する各距離L1,L1よりも小さく設定されている。従って、シフトレバー10がホーム位置から左側の変位限界位置まで変位する量である左側変位可能量は、シフトレバー10がホーム位置から前方および後方の変位限界位置まで変位する量である前方変位可能量および後方変位可能量よりも短くなっている。
このように、本実施形態では、左側変位可能量すなわちシフトレバー10が左右方向に変位する量が比較的小さく抑えられており、シフトレバー10のうち少なくともセンターコンソール5から上方に露出する部分の可動範囲の左右方向の寸法が小さく抑えられている。
DRレバー回転センサ52は、シフトレバー10の前後の傾動変位量を検出するためのセンサである。DRレバー回転センサ52には一方の第1支持軸44bが係合しており、DRレバー回転センサ52はこの第1支持軸44bの回転角度を検出する。すなわち、シフトレバー10が前後に傾動変位すると、その変位量に比例した角度だけ第1支持軸44bが回転するため、DRレバー回転センサ52は、シフトレバー10の前後の傾動変位量としてこの第1支持軸44bの回転角度を検出する。
Nレバー回転センサ54は、シフトレバー10の左右の傾動変位量を検出するためのセンサである。Nレバー回転センサ54は、シフトレバー10の左右の傾動変位量として筐体42の前側面に枢着された揺動部材54aの揺動量を検出する。具体的には、図7に示すように、揺動部材54aは上下に長尺な板状部材からなり、その下部が揺動軸54bを介して筐体42の前側面に枢着されることにより、揺動軸54bを中心にして左右に揺動可能に支持されている。揺動部材54aの上下方向の中間部には、上下方向に長尺な長穴が形成されており、この長穴にはシフトレバー10のNスイッチ操作部22の先端(前端)が挿入されている。このように長穴に挿入されたNスイッチ操作部22は、シフトレバー10が左右に傾動するのに伴い揺動部材54aをこの傾動方向と逆方向に押動し、これに伴い揺動部材54aの上端部は揺動する。Nレバー回転センサ54は、この揺動部材54aの上端部の揺動量を検出することで、シフトレバー10の揺動量すなわち左右の傾動変位量を検出する。
(4)P操作部材とシフトレバーの配置
以上のように構成されたP操作部材60とシフトレバー10とは、図3に示すように、P操作部材60が、シフトレバー10の可動領域の前端から後端までの前後方向範囲(図3に示すW1で示す範囲)に含まれるように配置されている。本実施形態では、P操作部材60の後端が、ホーム位置にあるシフトノブ12の前端位置と中心位置Wcとの略中間に位置し、P操作部材60の前端が、前方に前方変位可能量操作されたときのシフトノブ12の前端の位置(図3に示すWfの位置)とほぼ一致するようになっており、P操作部材60全体がシフトレバー10の可動領域に含まれるように配置されている。
また、P操作部材60は、シフトレバー10の右側すなわち運転席側の位置にこれと近接するように配置されている。これに伴って、P操作部材60の回転操作方向は、その後端がシフトレバー10から遠ざかる方向になっている。
(5)制御
図12は、本実施形態のシフト装置1に関する制御系統を示すブロック図である。本図に示されるコントローラ101は、周知のCPU、RAM、ROM等を含むマイクロコンピュータからなるもので、自動変速機110の変速動作を制御する等の機能を有している。なお、図12ではコントローラ101が一体のブロックとして表されているが、コントローラ101は、例えば車体側と自動変速機110側とにそれぞれ分割して設けられた複数のマイクロコンピュータから構成されるものであってもよい。このコントローラ101は、請求項にいう「制御手段」に相当するものである。
コントローラ101は、上述したPスイッチ素子75、DRレバー回転センサ52、Nレバー回転センサ54、メータユニット3、および自動変速機110(より詳しくは変速アクチュエータ111)と電気的に接続されている。なお、自動変速機110の変速アクチュエータ111とは、例えば、自動変速機110に内蔵されるクラッチやブレーキ等の摩擦締結要素の締結・解放を切り替えるソレノイドバルブ等のことである。
また、車両には、車速を検出する車速センサ103が設けられており、コントローラ101は、車速センサ103とも電気的に接続されている。
コントローラ101は、P操作部材60およびシフトレバー10の操作状態に応じてそれぞれ所定の信号を出力するPスイッチ素子75、DRレバー回転センサ52、Nレバー回転センサ54からの信号に基づいて、自動変速機50の変速レンジの切り替え制御や、メータユニット3の表示制御(現在の変速レンジを表示する制御)等を実行する。
変速レンジの切り替え制御について具体的に説明する。
コントローラ101は、Pスイッチ素子75から所定の信号が出力されるとP操作部材60がP操作量反時計回りに回転操作されたと判定して、変速アクチュエータ111に対して変速レンジをパーキングレンジに切り替えるよう指令を出す。
コントローラ101は、DRレバー回転センサ52から入力されるシフトレバー10の傾動変位量を表す信号に基づいて、シフトレバー10が前方の変位限界位置まで傾動したこと、すなわち、シフトレバー10がホーム位置から前方に前方変位可能量(第1操作量)傾動操作されたことが確認されると、変速アクチュエータ111に対して変速レンジをリバースレンジに切り替えるよう指令を出す。
また、コントローラ101は、DRレバー回転センサ52から入力されるシフトレバー10の傾動変位量を表す信号に基づいて、シフトレバー10が後方の変位限界位置まで傾動したこと、すなわち、シフトレバー10がホーム位置から後方に後方変位可能量(第2操作量)傾動操作されたことが確認されると、変速アクチュエータ111に対して変速レンジをドライブレンジに切り替えるよう指令を出す。
また、コントローラ101は、Nレバー回転センサ54から入力されるシフトレバー10の左右の傾動量を表す信号に基づいて、シフトレバー10が左側の変位限界位置まで傾動した、すなわち、シフトレバー10がホーム位置から左側変位可能量(第3操作量)左側に傾動操作されたと判定して、変速アクチュエータ111に対して変速レンジをニュートラルレンジに切り替えるよう指令を出す。
このように、本実施形態では、シフトレバー10がホーム位置から前方へ前方変位可能量傾動操作されることによりリバースレンジに切り替えられ、シフトレバー10が後方へ後方変位可能量操作されることによりドライブレンジに切り替えられ、シフトレバー10が左側へ左側変位可能量傾動操作されることによりニュートラルレンジに切り替えられる。
ここで、本実施形態では、シフトレバー10とP操作部材60とが上記のように配置されていることで、シフトレバー10とP操作部材60の一方の操作時に誤って他方に触れてしまい、これらが予期せず同時に操作されることが起こり得る。具体的には、P操作部材60がドライバー寄りの位置に配置されていることから、車両停止時に停車させるべく(車両停止状態を継続するべく)ドライバーがP操作部材60を操作したときに、誤ってシフトレバー10が左側(ニュートラルレンジへの切り替え方向)に操作されることが起こりうる。
そこで、本実施形態では、車両停止中において、パーキングレンジに切り替えるためのP操作部材60の操作とニュートラルレンジに切り替えるためのシフトレバー10の操作とが同時に行われた場合には、ドライバーが意図して実施した可能性の高い操作であるP操作部材60の操作を優先して変速レンジをニュートラルレンジではなくパーキングレンジに切り替える。
具体的には、コントローラ101は、車速センサ103により検出された車速が所定値よりも大きいか否かによって車両が停止中か否かを判定する。この所定値は、変速レンジをパーキングレンジに切り替えても問題ない程度に小さい車速であって車両が実質的に停止しているような車速に設定されている。具体的には、この所定値は、0あるいは0よりもわずかに大きい速度に設定されている。そして、コントローラ101は、車速が所定値未満であって車両が停止中である場合に、シフトレバー10が左側に左側変位可能量傾動操作され、かつ、Pスイッチ素子80から所定の信号が出力されたことを確認すると、変速アクチュエータ111に対して変速レンジをパーキングレンジに切り替えるよう指令を出す。なお、車両走行中(車速が所定値より大きい場合)は、パーキングレンジへの切り替えは禁止される。
上記の変速レンジの切り替え制御の流れを図12に示す。なお、図12は、車両停止時(車速が上記所定値以下)における変速レンジの切り替え手順を示したものである。
まず、ステップS1にて、コントローラ101は、シフトレバー10がホーム位置から後方に後方変位可能量傾動操作されたか否かを判定する。この判定がYESの場合は、ステップS10に進み、コントローラ101は、ドライブレンジに切り替える。
ステップS1の判定がNOの場合は、ステップS2に進み、コントローラ101は、シフトレバー10がホーム位置から前方に前方変位可能量傾動操作されたか否かを判定する。この判定がYESの場合は、ステップS9に進み、コントローラ101は、リバースレンジに切り替える。
ステップS2の判定がNOの場合は、ステップS3に進み、コントローラ101は、シフトレバー10がホーム位置から左側に左側変位可能量傾動操作されたか否かを判定する。この判定がNOの場合は、コントローラ101はステップS4に進む。一方、この判定がYESの場合、コントローラ101は、ステップS5に進み、Pスイッチ素子80から所定の信号が出力されたか否かを判定する。
ステップS5の判定がYESの場合、すなわち、車速が所定値以下の場合において、シフトレバー10が左側に左側変位可能量傾動操作され、かつ、P操作部材60がP操作量回転操作された場合は、コントローラ101は、ステップS6に進み、変速レンジをパーキングレンジに切り替える。
一方、ステップS5の判定がNOの場合、すなわち、車速が所定値以下の場合において、Pスイッチ素子75から所定の信号が出力されていない状態で、シフトレバー10が左側に左側変位可能量傾動操作された場合は、コントローラ101は、ステップS7に進み、変速レンジをニュートラルレンジに切り替える。
また、ステップS3の判定がNOの場合に進むステップS4では、コントローラ101は、Pスイッチ素子75から所定の信号が出力されているか否かを判定する。この判定がYESの場合は、ステップS8に進み、コントローラ101は、変速レンジをパーキングレンジに切り替える。
一方、ステップS4の判定がNOの場合、コントローラ101は、変速レンジを切り替えることなく、すなわち、現状の変速レンジを維持して処理を終了する。
(6)作用等
以上説明したように、本実施形態では、ドライブレンジ、リバースレンジおよびニュートラルレンジに切り替えるための操作部材(シフトレバー10)と、パーキングレンジに切り替えるための操作部材(P操作部材60)とが個別に設けられている。そのため、ドライバーがパーキングレンジの切り替え操作と他のレンジの切り替え操作とを誤って実施してしまうのを回避して予期せぬ変速レンジの切り替えを回避することができる。
しかも、本実施形態では、このように操作部材を個別に設けつつ、これら操作部材すなわちシフトレバー10とP操作部材60との可動範囲が小さく抑えられているため、上記誤操作を回避しながらシフト装置1のレイアウト性を高めることができる。
具体的には、本実施形態では、上記のように、シフトレバー10とP操作部材60とが左右に近接して配置されている。また、P操作部材60がシフトレバー10の可動領域の前端から後端までの前後方向範囲に含まれるように配置されている。また、P操作部材60が回転操作されるものであって操作に伴って前後左右にその位置が変化しないもので構成されている。そのため、シフトレバー10とP操作部材60との可動範囲全体すなわちこれらが占有する左右および前後範囲を小さく抑えることができる。
また、本実施形態では、左側変位可能量すなわちシフトレバー10の左側への必要操作量が小さく抑えられてシフトレバー10の左右の可動範囲が小さく抑えられており、これによってもシフト装置1のレイアウト性が高められている。特に、センターコンソール5は運転席と助手席との間に位置しており、その左右方向の寸法には上限がある。そのため、上記のように、シフトレバー10およびP操作部材60がセンターコンソール5上に露出するよう配置されている場合においてシフトレバー10とP操作部材60の可動範囲(占有領域)の左右の寸法が小さく抑えられれば、センターコンソール5上のレイアウト性を効果的に高めることができる。
さらに、本実施形態では、P操作装置60の操作方向が、その後端がシフトレバー10から遠ざかる方向であってその前端がドライバーから遠ざかる方向に設定されているため、安全性と操作性とをともに高めることができる。
具体的には、図11の実線および図14の実線に示すように、P操作部材60を操作するときは、ドライバーは、その指先が前を向く状態でP操作部材60を把持して回転させると考えられる。そのため、図14に示すように、仮に、P操作部材60の回転操作方向が、その後端がシフトレバー10に近づく方向(図14に示すようにP操作部材60がシフトレバー10の右側にある場合は時計回り)に設定されている場合には、図14に破線に示すように、ドライバーの手首はシフトレバー10に近づく方向に移動する。特に、指先を体に近づける方向の手首の回動可能範囲は小さくこの方向へ指先を移動させる場合には手首および腕が指先と逆側に移動しやすい。そのため、この場合には、P操作部材60の回転操作時にドライバーの手首や腕がシフトレバー10に当たり、シフトレバー10が変位して予期せぬ変速レンジの切り替えが行われるおそれがある。特に、図14の破線で示すように、シフトレバー10が左側に変位して予期せぬニュートラルレンジへの切り替えが行われるおそれがある。
これに対して、本実施形態では、P操作部材60の回転操作方向が上記のようにこの図14の方向と逆の方向に設定されているため、図11の破線で示すように、P操作部材60の回転操作時に手首および腕をシフトレバー10から遠ざけることができ、これらがシフトレバー10に当たるのを抑止することができる。従って、上記予期せぬ変速レンジの切り替えを抑制して安全性を高めることができる。
そして、上記のように、指先を体に近づける方向の手首の回動可能範囲は小さく、その逆方向の手首の回動可能範囲は大きい。そのため、一般的に、指先が体から遠ざかる方向に回動させる方が容易である。これに対して、本実施形態では、P操作部材60の回転操作方向が、その前端がドライバーから遠ざかる方向、すなわち、P操作部材60を把持した指先が体から遠ざかる方向に設定されている。そのため、P操作部材60の操作性も高めることができる。
また、この指先をシフトレバー10に近づけるという操作は、主として車両発進時(前進、後進時)に操作されるシフトレバー10をロックしてその操作を禁止するというイメージと合致するものとなり、これによってもP操作部材60の操作性を高めることができる。また、P操作部材60がシフトレバー10よりも運転席よりに設けられており、上方に突出するシフトレバー10に邪魔されることなく操作することができるという点においても、P操作部材60の操作性は高められている。
ここで、上記のように、本実施形態では、P操作部材60の回転操作方向が、その前端がシフトレバー10から離れる方向とされていることで、P操作部材60の操作時にシフトレバー10に誤って触れてしまうというのを抑制することができる。
しかしながら、上記のように、本実施形態では、P操作部材60とシフトレバー10とが近接して配置されているため、P操作部材60の操作時にシフトレバー10に誤って触れてしまう可能性はある。
これに対して、本実施形態では、上記のように、車両停止中において、P操作部材60の操作とシフトレバー10のニュートラルレンジに切り替えるためのシフトレバー10の操作とが同時に行われた場合には、ドライバーが意図して実施した可能性の高い操作であるP操作部材60の操作を優先して変速レンジをニュートラルレンジではなくパーキングレンジに切り替える制御を実施する。そのため、操作性を良好にすることができる。また、坂等で停止している場合に、誤ってニュートラルレンジに切り替わると、予期せず車両が前進または後退するおそれがあるが、上記制御が実施されることで、この予期せぬ前進等を回避することができ、安全性を高めることもできる。
また、本実施形態では、シフトレバー10の左右方向の操作の向きがドライバーから遠ざかる方向であってドライバーが操作しやすい方向に設定されていることで、シフトレバー10の操作性も高められている。
(7)変形例
上記実施形態では、シフト装置1が右ハンドル車に適用された場合について説明したが、シフト装置1は左ハンドル車に適用されてもよい。この場合には、P操作部材60をシフトレバー10の左側に配置し、ニュートラルレンジへ切り替えるためのシフトレバー10の操作の向きを右向きとし、P操作部材60の回転操作方向を時計回り(その前端が右側に移動し、その後端が左側に移動する向き)とすればよい。
また、P操作部材60は、シフトレバー10の可動領域の前端から後端までの前後方向範囲(図3に示すW1で示す範囲)に含まれるように配置されていればよく、その具体的な配置は上記に限らない。
ただし、P操作部材60がホーム位置にあるシフトレバー10の前後中央よりも前方に設けられていれば、P操作部材60の後方にスペース(図3に示す領域S)を確保して、他の装置を配置することが可能となるため、シフト装置1周囲のレイアウト性を高めることができる。
また、上記実施形態では、DRレバー回転センサ52およびNレバー回転センサ54によってシフトレバー10の傾動変位量が所定値(前方変位可能量、後方変位可能量、左側変位可能量)以上になったか否かに応じて変速レンジをドライブレンジ等に切り替える場合について説明したが、シフトレバー10の傾動変位量が所定値以上になることで所定の信号を出力する感圧センサやスイッチを用い、この感圧センサあるいはスイッチからの信号に基づいて変速レンジを切り替えるようにしてもよい。
また、上記実施形態では、シフトレバー10がホーム位置から各変位限界位置(規制軸24がDR規制溝の各端部と当接する位置)まで移動する量、すなわち、シフトレバー10がホーム位置から移動可能な量の最大値を、変速レンジを切り替えるために必要な操作量(コントローラ101によって変速レンジの切り替えが実施される量、第1操作量、第2操作量、第3操作量)とした場合について説明したが、この必要操作量は、上記最大量よりも小さくてもよい。
また、上記実施形態のシフト装置1は、エンジン(内燃機関)と車輪との間に介設された有段式の自動変速機50の変速レンジを切り替え操作するものであったが、本発明が適用可能な変速機は、有段式の自動変速機に限られず、例えば無段式の自動変速機(CVT)であってもよい。さらには、電気自動車に用いられる変速機のように、前進/後退を電気的に切り替えるものにも本発明を適用することができる。