JP2015123651A - 繊維強化エポキシ樹脂成形体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】強度に優れた成形体が得られる新規な繊維強化エポキシ樹脂成形体の製造方法を提供する。【解決手段】本発明の繊維強化エポキシ樹脂成形体の製造方法は、エポキシ樹脂成分として、ノボラック型エポキシ樹脂とフェノキシ型エポキシ樹脂とを含有するエポキシ樹脂組成物と強化繊維とを含有するプリプレグを用いて予備成形体を作製する工程と、前記予備成形体を3.3℃/分以上の昇温速度で、120℃以上、150℃以下の温度まで昇温して硬化させる工程とを有することを特徴とする。【選択図】なし
Description
本発明は、繊維強化エポキシ樹脂成形体の製造方法に関するものである。
ゴルフクラブシャフトや釣竿には、繊維強化エポキシ樹脂材料製の管状体が使用されている。例えば、特許文献1には、一方向に引き揃えられた強化繊維と、エポキシ樹脂組成物とを含んでなり、前記強化繊維の引張弾性率E(GPa)と、加熱硬化して得られる繊維強化複合材料の6度圧縮強度σ(MPa)が、次式(1)と(2)を満足することを特徴とするプリプレグシートを加熱硬化せしめて得られる繊維強化複合材料層を含んでなることを特徴とする管状体が開示されている。
200GPa≦E≦950GPa・・・(1)
−3.6E+2000≦σ≦−3.6E+2600・・・(2)
200GPa≦E≦950GPa・・・(1)
−3.6E+2000≦σ≦−3.6E+2600・・・(2)
特許文献2には、引張弾性率が200〜800GPaである強化繊維と、硬化剤、並びに次の構成要素[A]及び/又は構成要素[B]を含んでなるエポキシ樹脂組成物を構成要素とする繊維強化複合材料が使用されてなるゴルフクラブ用シャフトであって、該エポキシ樹脂組成物の硬化物の引張弾性率が3.4〜4.4GPaであり、前記繊維強化複合材料の湿式切削加工による切削量が3重量%以下であるゴルフクラブ用シャフトが開示されている。
[A]分子内にエポキシ樹脂又は硬化剤と反応しうる官能基1個と1個以上のアミド結合を有する化合物、
[B]分子内に芳香環を有するポリエステルポリウレタン
[A]分子内にエポキシ樹脂又は硬化剤と反応しうる官能基1個と1個以上のアミド結合を有する化合物、
[B]分子内に芳香環を有するポリエステルポリウレタン
特許文献3には、強化繊維とマトリックス樹脂とからなる繊維強化プラスチック製管状体において、マトリックス樹脂が、次の構成要素[A]、[B]および[C]からなるエポキシ樹脂組成物の硬化物であることを特徴とする繊維強化プラスチック製管状体が開示されている。
[A]エポキシ樹脂100重量部中、2官能エポキシ樹脂を70重量部以上含むエポキシ樹脂、
[B]ゴム相を含みエポキシ樹脂に実質的に不溶な微粒子、
[C]硬化剤
[A]エポキシ樹脂100重量部中、2官能エポキシ樹脂を70重量部以上含むエポキシ樹脂、
[B]ゴム相を含みエポキシ樹脂に実質的に不溶な微粒子、
[C]硬化剤
特許文献4には、少なくとも次の構成要素[A]、[B]および[C]を含有する繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物の硬化物と強化繊維からなる繊維強化複合材料、及び、前記繊維強化複合材料からなるゴルフシャフトが開示されている。
[A]エポキシ樹脂100重量部中、2官能エポキシ樹脂を70重量部以上含むエポキシ樹脂
[B]ポリエステル系またはポリアミド系熱可塑性エラストマー
[C]硬化剤または硬化剤と硬化促進剤の配合物
[A]エポキシ樹脂100重量部中、2官能エポキシ樹脂を70重量部以上含むエポキシ樹脂
[B]ポリエステル系またはポリアミド系熱可塑性エラストマー
[C]硬化剤または硬化剤と硬化促進剤の配合物
ゴルフクラブや釣竿などの高性能化、高品位化に伴って、前記した繊維強化複合材料からなる管状体では、強度が十分ではなくなってきている。特に近年では、管状体の重心位置、しなりの大きさなどを制御するために、管状体に薄肉部分を設けるため、繊維強化複合材料にはより高い強度が求められている。本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、強度に優れた成形体が得られる新規な繊維強化エポキシ樹脂成形体の製造方法を提供すること目的とする。
本発明の繊維強化エポキシ樹脂成形体の製造方法は、エポキシ樹脂成分として、ノボラック型エポキシ樹脂とフェノキシ型エポキシ樹脂とを含有するエポキシ樹脂組成物と強化繊維とを含有するプリプレグを用いて予備成形体を作製する工程と、
前記予備成形体を3.3℃/分以上の昇温速度で、120℃以上、150℃以下の温度まで昇温して硬化させる工程とを有することを特徴とする。
前記予備成形体を3.3℃/分以上の昇温速度で、120℃以上、150℃以下の温度まで昇温して硬化させる工程とを有することを特徴とする。
また、本発明には、エポキシ樹脂成分として、ノボラック型エポキシ樹脂とフェノキシ型エポキシ樹脂とを含有するエポキシ樹脂組成物と強化繊維とを含有し、密度が異なるプリプレグを作製する工程と、
前記プリプレグを積層して、管状の予備成形体を作製する工程と、
前記管状の予備成形体を3.3℃/分以上の昇温速度で、120℃以上、150℃以下の温度まで昇温し、硬化させて管状成形体を作製する工程とを有し、
前記管状の予備成形体を作製する工程において、最外プリプレグの内側に位置するプリプレグの少なくとも1つに、最外プリプレグよりも低密度のプリプレグを用いることを特徴とする繊維強化エポキシ樹脂成形体の製造方法が含まれる。
前記プリプレグを積層して、管状の予備成形体を作製する工程と、
前記管状の予備成形体を3.3℃/分以上の昇温速度で、120℃以上、150℃以下の温度まで昇温し、硬化させて管状成形体を作製する工程とを有し、
前記管状の予備成形体を作製する工程において、最外プリプレグの内側に位置するプリプレグの少なくとも1つに、最外プリプレグよりも低密度のプリプレグを用いることを特徴とする繊維強化エポキシ樹脂成形体の製造方法が含まれる。
本発明の繊維強化エポキシ樹脂成形体の製造方法は、プリプレグからなる予備成形体を3.3℃/分以上の昇温速度で、120℃以上、150℃以下の温度まで、急速に昇温するところに特徴がある。120℃以上、150℃以下の温度まで、急速に昇温することによりエポキシ樹脂組成物の粘度が低下するので、硬化反応効率が高まると考えられる。その結果、本発明の製造方法によれば、機械的物性が向上した繊維強化エポキシ樹脂成形体が得られる。
また、本発明の製造方法には、管状の成形体を製造する方法が含まれる。プリプレグを積層して、管状の予備成形体を作製する工程において、最外プリプレグの内側に位置するプリプレグの少なくとも1つに、最外プリプレグよりも低密度のプリプレグを用いる。管状体の初期破壊は、管状体の最外層から生じる。そのため、最外プリプレグには、相対的に強化繊維の含有率が高く、密度が高いプリプレグを使用し、最外プリプレグの内側に位置するプリプレグの少なくとも1つに、低密度のプリプレグを用いることにより、管状体の強度を低下させることなく、軽量化することができる。
さらに本発明には、n枚(nは、5以上の整数)のプリプレグを積層し、前記プリプレグが含有する樹脂組成物を硬化してなる管状成形体であって、最も外側に位置する最外プリプレグと、前記最外プリプレグに隣接するプリプレグは、エポキシ樹脂組成物と強化繊維とを含有するストレートプリプレグであって、前記エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂成分として、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、及び、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、硬化剤としてジシアンジアミド、硬化促進剤として尿素誘導体を含有し、前記エポキシ樹脂成分中のノボラック型エポキシ樹脂とフェノキシ型エポキシ樹脂との質量比(ノボラック型エポキシ樹脂/フェノキシ型エポキシ樹脂)が、0.4〜7であり、前記エポキシ樹脂成分全体に占めるノボラック型エポキシ樹脂の含有率が、2質量%〜19質量%であることを特徴とする管状成形体が含まれる。
本発明では、エポキシ樹脂成分として、ノボラック型エポキシ樹脂およびフェノキシ型エポキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂組成物を使用する。フェノキシ型エポキシ樹脂の作用によりエポキシ樹脂組成物の硬化物の伸度が向上するとともに、ノボラック型エポキシ樹脂の作用により、架橋密度が高められエポキシ樹脂組成物の硬化物の強度が向上する。そのため、本発明の製造方法により得られる繊維強化エポキシ樹脂成形体は、強化繊維とマトリックス樹脂の界面強度が向上し、強化繊維による複合化の効果が大きくなる。その結果、繊維強化エポキシ樹脂成形体の機械的強度が一段と向上する。
前記エポキシ樹脂成分中のノボラック型エポキシ樹脂とフェノキシ型エポキシ樹脂との質量比(ノボラック型エポキシ樹脂/フェノキシ型エポキシ樹脂)は、0.4〜7が好ましい。また、前記エポキシ樹脂成分全体に占めるノボラック型エポキシ樹脂の含有率は、2質量%〜19質量%が好ましい。前記エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂成分として、さらにビスフェノールA型エポキシ樹脂と、ビスフェノールF型エポキシ樹脂とを含有することが好ましい。
前記エポキシ樹脂組成物は、硬化剤として、ジシアンジアミドを含有し、硬化促進剤として、尿素誘導体を含有することが好ましい。前記硬化剤としては、エポキシ樹脂成分のエポキシ基1モルに対してジシアンジアミドを13g〜40g含有することが好ましい。前記エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂成分100質量部に対して、さらに、熱可塑性樹脂を2質量部〜12質量部含有することが好ましい。前記熱可塑性樹脂としては、ポリビニルホルマールが好適である。
前記エポキシ樹脂組成物中の強化繊維は、炭素繊維であることが好ましい。前記強化繊維の引張弾性率は、10tf/mm2〜70tf/mm2であることが好ましい。
本発明の製造方法によれば、機械的強度に優れた繊維強化エポキシ樹脂成形体が得られる。
本発明の繊維強化エポキシ樹脂成形体の製造方法は、エポキシ樹脂成分として、ノボラック型エポキシ樹脂とフェノキシ型エポキシ樹脂とを含有するエポキシ樹脂組成物と強化繊維とを含有するプリプレグを用いて予備成形体を作製する工程と、
前記予備成形体を3.3℃/分以上の昇温速度で、120℃以上、150℃以下の温度まで昇温して、硬化させる工程とを有することを特徴とする。
前記予備成形体を3.3℃/分以上の昇温速度で、120℃以上、150℃以下の温度まで昇温して、硬化させる工程とを有することを特徴とする。
本発明には、エポキシ樹脂成分として、ノボラック型エポキシ樹脂とフェノキシ型エポキシ樹脂とを含有するエポキシ樹脂組成物と強化繊維とを含有し、密度が異なるプリプレグを作製する工程と、
前記プリプレグを積層して、管状の予備成形体を作製する工程と、
前記管状の予備成形体を3.3℃/分以上の昇温速度で、120℃以上、150℃以下の温度まで昇温し、硬化させて管状成形体を作製する工程とを有し、
前記管状の予備成形体を作製する工程において、最外プリプレグの内側に位置するプリプレグの少なくとも1つに、最外プリプレグよりも低密度のプリプレグを用いることを特徴とする繊維強化エポキシ樹脂成形体の製造方法が含まれる。
前記プリプレグを積層して、管状の予備成形体を作製する工程と、
前記管状の予備成形体を3.3℃/分以上の昇温速度で、120℃以上、150℃以下の温度まで昇温し、硬化させて管状成形体を作製する工程とを有し、
前記管状の予備成形体を作製する工程において、最外プリプレグの内側に位置するプリプレグの少なくとも1つに、最外プリプレグよりも低密度のプリプレグを用いることを特徴とする繊維強化エポキシ樹脂成形体の製造方法が含まれる。
まず、本発明で使用するエポキシ樹脂組成物について説明する。前記エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂成分として、ノボラック型エポキシ樹脂およびフェノキシ型エポキシ樹脂を含有する。エポキシ樹脂成分として、ノボラック型エポキシ樹脂およびフェノキシ型エポキシ樹脂を配合することにより、フェノキシ型エポキシ樹脂の作用によりエポキシ樹脂組成物の硬化物の伸度が向上するとともに、ノボラック型エポキシ樹脂の作用により、架橋密度が高められエポキシ樹脂組成物の硬化物の強度が向上する。
前記ノボラック型エポキシ樹脂は、分子内に2個超(好ましくは3個以上)のエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂である。ノボラック型エポキシ樹脂を含有することにより、エポキシ樹脂組成物の硬化物の架橋密度を制御することができる。架橋密度を制御して、エポキシ樹脂組成物の硬化物の伸度を適度な範囲とすることにより、強化繊維とエポキシ樹脂との界面強度が向上すると考えられる。前記ノボラック型エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などを挙げることができる。
前記ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ当量(g/eq)は、50以上が好ましく、75以上がより好ましく、100以上がさらに好ましく、500以下が好ましく、400以下がより好ましく、300以下がさらに好ましい。ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ当量が前記範囲内であれば、有効に架橋構造を形成することができる。
フェノールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、jER(登録商標)152、jER154(以上、三菱化学社製)、EPICLON(登録商標)N−740、EPICLON N−770、EPICLON N−775(以上、DIC(株)製)、PY307、EPN1179、EPN1180(以上、ハンツマン・アドバンスト・マテリアル社製)、YDPN638、YDPN638P(以上、東都化成(株)製)、DEN431、DEN438、DEN439(以上、ダウケミカル社製)、EPR600(Bakelite社製)、EPPN−201(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
エポキシ樹脂組成物が含有するエポキシ樹脂成分全体に占めるノボラック型エポキシ樹脂の含有率は、2質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、7質量%以上がさらに好ましく、19質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。ノボラック型エポキシ樹脂の含有率が2質量%以上であれば、架橋密度が高められ樹脂組成物の硬化物の強度が一層向上し、19質量%以下であれば、樹脂組成物の硬化物の伸びが維持され、強化繊維との界面強度が高くなり、繊維強化エポキシ樹脂材料の強度が一層向上する。
前記フェノキシ型エポキシ樹脂は、従来公知のものが使用できる。フェノキシ型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂、ビスフェノールF型フェノキシ樹脂、ビスフェノールA型とビスフェノールF型との共重合フェノキシ樹脂、ビフェニル型フェノキシ樹脂、ビスフェノールS型フェノキシ樹脂、ビフェニル型フェノキシ樹脂とビスフェノールS型フェノキシ樹脂との共重合フェノキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂、ビスフェノールF型フェノキシ樹脂、ビスフェノールA型とビスフェノールF型との共重合フェノキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂がより好ましい。前記フェノキシ型エポキシ樹脂は、単独であるいは2種以上を混合して使用してもよい。フェノキシ型エポキシ樹脂は、分子内に2個のエポキシ基を有することが好ましい。
前記フェノキシ型エポキシ樹脂の重量平均分子量は10000以上が好ましく、より好ましくは20000以上、さらに好ましくは30000以上であり、130000以下が好ましく、より好ましくは110000以下、さらに好ましくは90000以下である。前記重量平均分子量が10000以上であれば、エポキシ樹脂組成物の硬化物の伸度がより良好となり、130000以下であれば、エポキシ樹脂組成物の硬化物の強度がより良好となる。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定すればよい。
前記フェノキシ型エポキシ樹脂のエポキシ当量(g/eq)は、4000以上が好ましく、4500以上がより好ましく、5000以上がさらに好ましく、20000以下が好ましく、18000以下がより好ましく、16000以下がさらに好ましい。フェノキシ型エポキシ樹脂のエポキシ当量が前記範囲内であれば、有効に架橋構造を形成することができる。
フェノキシ型エポキシ樹脂の市販品としては、jER(登録商標)1256、jER4250、jER4275、jER1255HX30(以上、三菱化学社製)、YP−50、YP−50S(以上、新日鉄住金化学(株)製)、PKHB、PKHC、PKHH、PKHJ(以上、InChem社製)などが挙げられる。
エポキシ樹脂組成物が含有するエポキシ樹脂成分全体に占めるフェノキシ型エポキシ樹脂の含有率は、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましく、18質量%以下が好ましく、17質量%以下がより好ましく、16質量%以下がさらに好ましい。フェノキシ型エポキシ樹脂の含有率が1質量%以上であれば、エポキシ樹脂組成物の硬化物の伸度がより良好となり、18質量%以下であれば、エポキシ樹脂組成物の硬化物の強度がより良好となる。
前記エポキシ樹脂成分中のノボラック型エポキシ樹脂とフェノキシ樹脂との質量比(ノボラック型エポキシ樹脂/フェノキシ樹脂)は、0.4以上が好ましく、より好ましくは0.7以上、さらに好ましくは1.0以上であり、7.0以下が好ましく、より好ましくは6.5以下、さらに好ましくは6.0以下である。前記質量比が0.4以上であれば、架橋密度が高められ強度がより向上する。また、プリプレグ作製時などの成形性が良好となり、ボイドの発生が抑制され作業性が向上する。また、前記質量比が7.0以下であれば、架橋密度が高くなり過ぎず、フェノキシ型エポキシ樹脂を含有する効果がより発揮される。
前記エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂成分として、分子内に2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、すなわち2官能のエポキシ樹脂を含有することも好ましい。前記2官能のエポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂およびその水素添加物、ビスフェノールF型エポキシ樹脂およびその水素添加物、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂が挙げられる。前記ビスフェノール型エポキシ樹脂は、単独であるいは2種以上を混合して使用してもよい。
本発明では、前記ビスフェノール型エポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂とを併用することが好ましい。ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂とを併用することにより、得られる繊維強化エポキシ樹脂材料の曲げ強度が向上する。前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の含有比率は、質量比で、20:80〜80:20が好ましく、30:70〜70:30がより好ましく、40:60〜60:40がさらに好ましい。
前記ビスフェノール型エポキシ樹脂として、常温(25℃)で固体状であるものを使用する場合、そのビスフェノール型エポキシ樹脂の重量平均分子量は650以上が好ましく、より好ましくは700以上、さらに好ましくは750以上であり、10000以下が好ましく、より好ましくは9500以下、さらに好ましくは9000以下である。前記重量平均分子量が前記範囲内であれば、有効に架橋構造を形成することができる。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定すればよい。
前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、jER(登録商標)827、jER828、jER1001、jER1002、jER1003、jER1003F、jER1004、jER1004FS、jER1004F、jER1004AF、jER1055、jER1005F、jER1006FS、jER1007、jER1007FS、jER1008、jER1009(以上、三菱化学社製)、エポトート(登録商標)YD−011、エポトートYD−012、エポトートYD−013、エポトートYD−014、エポトートYD−017、エポトートYD−019、エポトートYD−020N、エポトートYD−020H(以上、東都化成社製)、EPICLON(登録商標)1050、EPICLON3050、EPICLON4050、EPICLON7050(以上、DIC社製)、EP−5100、EP−5400、EP−5700、EP−5900(以上、ADEKA社製)、DER−661、DER−663U、DER−664、DER−667、DER−668、DER−669(以上、ダウケミカル社製)などが挙げられる。
前記ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、jER806、jER807、jER4005P、jER4007P、jER4010P(以上、三菱化学社製)などを挙げることができる。
前記エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂成分全体のエポキシ当量(g/eq)は、200以上が好ましく、250以上がより好ましく、400以下が好ましく、350以下がより好ましい。エポキシ樹脂成分全体のエポキシ当量が、200未満の場合、エポキシ樹脂成分が常温で液状になってしまい、プリプレグの作製や成型が困難になる場合がある。また、エポキシ当量が400より大きくなると、エポキシ樹脂成分が常温で固体になり成型が困難になる場合がある。
本発明で使用するエポキシ樹脂組成物は、硬化剤を含有することが好ましい。前記硬化剤としては、ジシアンジアミド;4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、m−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミンのような活性水素を有する芳香族アミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ビス(アミノメチル)ノルボルナン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ポリエチレンイミンのダイマー酸エステルのような活性水素を有する脂肪族アミン;これらの活性水素を有するアミンにエポキシ化合物、アクリロニトリル、フェノールとホルムアルデヒド、チオ尿素などの化合物を反応させて得られる変性アミン;ジメチルアニリン、トリエチレンジアミン、ジメチルベンジルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールのような活性水素を持たない第三アミン;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類;ポリアミド樹脂;ヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物のようなカルボン酸無水物;アジピン酸ヒドラジドやナフタレンジカルボン酸ヒドラジドのようなポリカルボン酸ヒドラジド;ノボラック樹脂などのポリフェノール化合物;チオグリコール酸とポリオールのエステルのようなポリメルカプタン;および、三フッ化ホウ素エチルアミン錯体のようなルイス酸錯体などを用いることができる。これらの中でも、硬化剤としてジシアンジアミドを使用することが好ましい。
前記ジシアンジアミドの添加量は、エポキシ樹脂成分のエポキシ基1モルに対して、13g以上が好ましく、15g以上がより好ましく、17g以上がさらに好ましく、40g以下が好ましく、38g以下が好ましく、35g以下がさらに好ましい。ジシアンジアミドの添加量が13g以上であれば、硬化反応がより進行し、強度が一層向上し、40g以下であれば、樹脂組成物の硬化物の伸びが維持され、強化繊維との界面強度が高くなり、繊維強化エポキシ樹脂材料の強度が一層向上する。
前記硬化剤には、硬化活性を高めるために適当な硬化促進剤を組合せることができる。硬化促進剤としては、尿素に結合する水素の少なくとも1つが、炭化水素基で置換された尿素誘導体が好ましい。前記炭化水素基は、例えば、さらに、ハロゲン原子、ニトロ基、アルコキシ基などで置換されていてもよい。前記尿素誘導体としては、例えば、3−フェニル−1,1−ジメチル尿素、3−(パラクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素、3−(オルソメチルフェニル)−1,1−ジメチル尿素、3−(パラメチルフェニル)−1,1−ジメチル尿素、3−(メトキシフェニル)−1,1−ジメチル尿素、3−(ニトロフェニル)−1,1−ジメチル尿素等のモノ尿素化合物の誘導体;および、N,N−フェニレン−ビス(N’,N’−ジメチルウレア)、N,N−(4−メチル−1,3−フェニレン)−ビス(N’,N’−ジメチルウレア)などのビス尿素化合物の誘導体を挙げることができる。好ましい組合せの例としては、ジシアンジアミドに、3−フェニル−1,1−ジメチル尿素、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素(DCMU)、3−(3−クロロ−4−メチルフェニル)−1,1−ジメチル尿素、2,4−ビス(3,3−ジメチルウレイド)トルエンのような尿素誘導体を硬化促進剤として組合せる例が挙げられる。これらのなかでも、ジシアンジアミドに、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素(DCMU)を硬化促進剤として組み合わせることがより好ましい。
本発明では特に、硬化剤としてジシアンジアミド(DICY)を、硬化促進剤として尿素誘導体を使用することが好ましい。この場合、ジシアンジアミド(DICY)と尿素誘導体の比率は、質量比(DICY/尿素誘導体)で、1.0以上が好ましく、1.2以上がより好ましく、1.5以上がより好ましく、3.0以下が好ましく、2.8以下がより好ましく、2.5以下がさらに好ましい。また、前記質量比(DICY/尿素誘導体)は、2が最も好ましい。DICY/尿素誘導体の質量比が前記範囲内であれば、硬化速度が速く、硬化物が、良好な物性を有する。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、さらに、オリゴマー、高分子化合物、有機または無機の粒子などの他成分を含んでもよい。
本発明で使用するエポキシ樹脂組成物に配合できるオリゴマーとしては、ポリエステル骨格およびポリウレタン骨格を有するポリエステルポリウレタン、ポリエステル骨格およびポリウレタン骨格を有し、さらに分子鎖末端に(メタ)アクリレート基を有するウレタン(メタ)アクリレート、インデン系オリゴマーなどが挙げられる。
本発明で使用するエポキシ樹脂組成物に配合できる高分子化合物としては、熱可塑性樹脂が好適に用いられる。熱可塑性樹脂を配合することにより、樹脂の粘度制御やプリプレグシートの取扱い性制御、あるいは接着性改善の効果が増進するので好ましい。
前記熱可塑性樹脂の例としては、ポリビニルホルマールやポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール、アミド結合を有する熱可塑性樹脂としては、ポリアミド、ポリイミド、スルホニル基を有する熱可塑性樹脂としては、ポリスルホンなどが挙げられる。ポリアミド、ポリイミド及びポリスルホンは主鎖にエーテル結合、カルボニル基などの官能基を有してもよい。ポリアミドは、アミド基の窒素原子上に置換基を有してもよい。本発明で使用するエポキシ樹脂組成物は、熱可塑性樹脂として、ポリビニルホルマールを含有することが好ましい。ポリビニルホルマールを含有すれば、硬化物の靱性、伸度がより向上する。
前記熱可塑性樹脂の含有量としては、エポキシ樹脂成分100質量部に対して、2質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、4質量部以上がさらに好ましく、12質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましい。熱可塑性樹脂の含有量が2質量部以上であれば、エポキシ樹脂組成物の伸びがよくなり、タックを付与できる。一方、熱可塑性樹脂の含有量が12質量部超になると、エポキシ樹脂組成物が常温で固化してしまうおそれがある。そのため、強化繊維への含浸性が低下し、プリプレグ作製時にボイドを引き起こす場合がある。
本発明で使用するエポキシ樹脂組成物に配合し得る有機粒子としては、ゴム粒子及び熱可塑性樹脂粒子が用いられる。これらの粒子は樹脂の靭性向上、繊維強化複合材料の耐衝撃性向上の効果を有する。さらに、ゴム粒子としては、架橋ゴム粒子、及び架橋ゴム粒子の表面に異種ポリマーをグラフト重合したコアシェルゴム粒子が好ましく用いられる。
市販の架橋ゴム粒子としては、カルボキシル変性のブタジエン−アクリロニトリル共重合体の架橋物からなるXER−91(日本合成ゴム工業社製)、アクリルゴム微粒子からなるCX−MNシリーズ(日本触媒社製)、YR−500シリーズ(東都化成社製)等を使用することができる。市販のコアシェルゴム粒子としては、ブタジエン・メタクリル酸アルキル・スチレン共重合体からなるパラロイドEXL−2655(呉羽化学工業社製)、アクリル酸エステル・メタクリル酸エステル共重合体からなるスタフィロイドAC−3355、TR−2122(武田薬品工業社製)、アクリル酸ブチル・メタクリル酸メチル共重合体からなるPARALOIDEXL−2611、EXL−3387(登録商標、商品名、Rohm & Haas社製)等を使用することができる。
また、熱可塑性樹脂粒子としては、ポリアミドあるいはポリイミドの粒子が好ましく用いられる。市販のポリアミド粒子としては、東レ社製、商品名:SP−500、ATOCHEM社製、オルガソール(登録商標)等を使用することができる。
前記エポキシ樹脂組成物に配合し得る無機粒子としては、シリカ、アルミナ、スメクタイト、合成マイカ等を配合することができる。これらの無機粒子は、主としてレオロジー制御、即ち増粘や揺変性付与のために、エポキシ樹脂組成物に配合される。
前記エポキシ樹脂組成物の硬化物の引張特性(=最大応力×その時の伸び÷2)は、100MPa・%以上が好ましく、150MPa・%以上がより好ましく、200MPa・%以上がさらに好ましく、6000MPa・%以下が好ましく、5500MPa・%以下がより好ましく、5000MPa・%以下がさらに好ましい。
前記エポキシ樹脂組成物の硬化物の引張強度(最大応力)は、20MPa以上が好ましく、30MPa以上がより好ましく、50MPa以上がさらに好ましく、500MPa以下が好ましく、450MPa以下がより好ましく、400MPa以下がさらに好ましい。また、前記エポキシ樹脂組成物の硬化物の伸度(破断伸度)は、2%以上が好ましく、3%以上がより好ましく、300%以下が好ましく、200%以下がより好ましい。引張強度および伸度の測定方法は、後述する。
前記エポキシ樹脂組成物の硬化物は、メチルエチルケトンでの膨潤率が、20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、44質量%以下が好ましく、38質量%以下がより好ましい。前記メチルエチルケトンでの膨潤率は、エポキシ樹脂組成物の硬化物の架橋度を指標するものである。前記膨潤率が20質量%未満では、架橋密度が高すぎて、エポキシ樹脂組成物の硬化物の伸びが低下し、44質量%を超えると架橋密度が小さすぎ、エポキシ樹脂組成物の硬化物の強度が低下する。
本発明において、繊維強化エポキシ樹脂成形体の樹脂成分は、前記エポキシ樹脂組成物のみによって構成されることが好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲で、市販のエポキシ樹脂組成物を併用してもよい。市販のエポキシ樹脂組成物を併用する場合、繊維強化エポキシ樹脂成形体の樹脂成分中の市販のエポキシ樹脂組成物の含有率は、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることがさらに好ましい。
本発明で使用する強化繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維などを挙げることができる。また、これらの繊維を2種以上混在させることもできる。これらのなかでも炭素繊維を使用することが好ましい。
前記炭素繊維としては、アクリル系、ピッチ系、レーヨン系などの炭素繊維が挙げられるが、中でも、引張強度の高いアクリル系の炭素繊維が好ましい。炭素繊維の形態としては、前駆体繊維に撚りをかけて焼成して得られる炭素繊維、いわゆる有撚糸、その有撚糸の撚りを解いた炭素繊維、いわゆる解撚糸、前駆体繊維に実質的に撚りをかけずに熱処理を行う無撚糸などが使用できる。無撚糸又は解撚糸が、繊維強化複合材料の成形性と強度特性のバランスを考慮すると好ましく、さらに、プリプレグシート同士の接着性などの取扱性の面からは無撚糸が好ましい。また、本発明における炭素繊維は、黒鉛繊維も含むことができる。
前記強化繊維の引張弾性率は、10tf/mm2(98GPa)以上が好ましく、24tf/mm2(235GPa)以上がより好ましく、70tf/mm2(686GPa)以下が好ましく、50tf/mm2(490GPa)以下がより好ましい。前記引張弾性率は、JIS−R7601(1986)「炭素繊維試験方法」に準拠して測定する。強化繊維の引張弾性率が、前記範囲内であれば、曲げ強度の高い管状体が得られる。
本発明の繊維強化エポキシ樹脂成形体中の強化繊維の含有率は、60質量%以上が好ましく、65質量%以上がより好ましく、85質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、75質量%以下がさらに好ましい。強化繊維の含有率が、前記範囲内であれば、樹脂の高強度が十分に生かせる良好な繊維強化エポキシ樹脂材料となるからである。
本発明の繊維強化エポキシ樹脂成形体の製造方法は、エポキシ樹脂成分として、ノボラック型エポキシ樹脂とフェノキシ型エポキシ樹脂とを含有するエポキシ樹脂組成物と強化繊維とを含有するプリプレグを用いて予備成形体を作製する工程と、前記予備成形体を3.3℃/分以上の昇温速度で、120℃以上、150℃以下の温度まで昇温して硬化させる工程とを有することを特徴とする。
本発明の繊維強化エポキシ樹脂成形体の製造方法は、エポキシ樹脂成分として、ノボラック型エポキシ樹脂とフェノキシ型エポキシ樹脂とを含有するエポキシ樹脂組成物と強化繊維とを含有し、密度が異なるプリプレグを作製する工程と、前記プリプレグを積層して、管状の予備成形体を作製する工程と、前記管状の予備成形体を3.3℃/分以上の昇温速度で、120℃以上、150℃以下の温度まで昇温し、硬化させて管状成形体を作製する工程とを有し、前記管状の予備成形体を作製する工程において、最外プリプレグの内側に位置するプリプレグの少なくとも1つに、最外プリプレグよりも低密度のプリプレグを用いることを特徴とする。
本発明の繊維強化エポキシ樹脂成形体の製造方法は、プリプレグからなる予備成形体を3.3℃/分以上の昇温速度で、120℃以上、150℃以下の温度まで昇温する。3.3℃/分以上の昇温速度で、急速に昇温することにより、エポキシ樹脂組成物の粘度が低下し、硬化反応効率が高まると考えられる。その結果、本発明の製造方法によれば、機械的物性が向上した繊維強化エポキシ樹脂成形体が得られる。このような観点から、昇温速度は、3.3℃/分以上が好ましく、5℃/分以上がより好ましく、10℃/分以上がさらに好ましい。また、昇温速度は、30℃/分以下が好ましく、25℃/分以下がより好ましく、20℃/分以下がさらに好ましい。昇温速度が速すぎると、表面の硬化が早く、内部のエアが抜けにくくなるからである。なお、昇温時の温度は、予備成形体の材料温度を計測する。
また、プリプレグからなる予備成形体を、120℃以上、150℃以下の温度まで昇温することが好ましく、125℃以上、140℃以下の温度まで昇温することがより好ましく、130℃以上、135℃以下の温度まで昇温することがさらに好ましい。前記温度範囲まで昇温することにより、予備成形体の硬化反応を効率的に行うことができる。予備成形体の昇温工程では、一定温度で保持する時間を設けることなく、120℃以上、150℃以下の温度まで連続的に昇温することが好ましい。一定温度(特に、100℃以下の温度)で保持する時間を設けると、低温での架橋反応が進むために、所望の強度が得られない場合がある。
本発明の製造方法によれば、前記予備成形体を所定温度まで昇温した後、さらに硬化反応を行うことが好ましい。硬化反応温度は、125℃以上が好ましく、130℃以上がより好ましく、140℃以下が好ましく、135℃以下がより好ましい。硬化時間は、20分間以上が好ましく、40分間以上がより好ましく、360分間以下が好ましく、300分間以下がより好ましい。なお、硬化反応の温度は、予備成形体の材料温度を計測する。
前記プリプレグは、エポキシ樹脂組成物をメチルエチルケトン、メタノールなどの溶媒に溶解させて低粘度化し、強化繊維に含浸させるウエット法と、加熱によりエポキシ樹脂組成物を低粘度化し、強化繊維に含浸させるホットメルト法などの方法により製造することができる。ウエット法は、強化繊維をエポキシ樹脂組成物からなる溶液に浸漬した後に引き上げ、オーブンなどを用いて加熱しながら溶媒を蒸発させてプリプレグを得る方法である。ホットメルト法には、加熱により低粘度化したエポキシ樹脂組成物を直接強化繊維に含浸させる方法、あるいは一旦エポキシ樹脂組成物を離型紙などの上にコーティングしたフィルムを作製しておき、次いで強化繊維の両側あるいは片側から、かかるフィルムを重ね、加熱することによりエポキシ樹脂組成物を含浸させてプリプレグとする方法がある。ホットメルト法は、溶媒がプリプレグ中に実質的に残留しないことから好ましい。
前記プリプレグの樹脂成分の含有率は、15質量%以上が好ましく、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上であり、40質量%以下が好ましく、より好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。樹脂成分の含有率が、前記範囲内であれば、樹脂の高強度が十分に生かせる良好な繊維強化エポキシ樹脂成形体となるからである。
前記プリプレグ中の強化繊維の含有率は、60質量%以上が好ましく、より好ましくは65質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であり、85質量%以下が好ましく、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは75質量%以下である。強化繊維の含有率が、前記範囲内であれば、樹脂の高強度が十分に生かせる良好な繊維強化エポキシ樹脂成形体となるからである。
プリプレグにおける強化繊維の形態としては、例えば、一方向に引き揃えられた長繊維、二方向織物、多軸織物、不織布、マット、ニット、組み紐などを挙げることができる。ここで、長繊維とは、実質的に10mm以上連続な単繊維または繊維束を意味する。一方向に引き揃えられた長繊維を用いた所謂一方向プリプレグは、繊維の方向が揃っており、繊維の曲がりが少ないため繊維方向の強度利用率が高い。また、一方向プリプレグは、複数のプリプレグを、強化繊維の配列方向が異なるように適切に積層した後成型すると、成形物の各方向の弾性率と強度の設計が容易になる。
本発明の好ましい態様では、前記プリプレグを積層して、管状の予備成形体を作製する。例えば、マンドレルなどの軸部材にプリプレグを複数巻き付けて、管状の予備成形体を作製する。管状体を構成するプリプレグの積層枚数、強化繊維の含有率、および、1枚のプリプレグの厚みなどは、所望の特性に応じて、適宜変更することが好ましい。特に、管状体の軸線に対して、強化繊維の配列が傾斜して配されるバイアスプリプレグと、管状体の軸線に対して、強化繊維の配列が平行に配されるストレートプリプレグと、管状体の軸線に対して、強化繊維の配列が直角に配されるフーププリプレグとを適宜配置して、管状体に必要な剛性や強度を付与することが好ましい。なお、本発明において、単に「管状体」というときは、「管状予備成形体」もしくは「管状成形体」のいずれか、または、「管状予備成形体」および「管状成形体」の両方を意味する。
本発明の好ましい態様では、密度の異なるプリプレグを作製する。例えば、成形体の一部に低密度プリプレグを用いることにより、得られる成形体を軽量化することができる。低密度のプリプレグは、例えば、高引張弾性率の強化繊維を用いるとともに、強化繊維の含有率を低下させることにより得られる。
本発明の好ましい態様では、管状体の最外プリプレグの内側に位置するプリプレグの少なくとも1つに、最外プリプレグよりも低密度のプリプレグを用いることが好ましい。このような構成とすることにより、管状体の強度を低下させることなく、軽量化することができる。管状体の初期破壊は、管状体の最外層から生じる。そのため、最外層には、相対的に強化繊維の含有率が高く、密度が高いプリプレグを使用しておくことにより、管状体の強度の低下を防止できる。一方、最外層の内側に位置するプリプレグの少なくとも1つに、低密度のプリプレグを用いることにより、管状体を軽量化することができる。
低密度プリプレグは、使用枚数が多い程、管状体の質量を低減できる。低密度プリプレグの位置は特に限定されないが、できるだけ内側に配置することが好ましい。よって、最も内側に位置する最内プリプレグを低密度プリプレグとすることが好ましい。また、低密度プリプレグは2枚以上用いてもよい。この場合、プリプレグの順序は、低密度プリプレグが連続するように配置することが好ましい。すなわち、低密度プリプレグは、最内プリプレグから所望の枚数まで連続して配置することがより好ましい。
例えば、n枚(nは、5以上の整数、好ましくは6以上の整数)のプリプレグを積層する場合、最内プリプレグから3枚目までを、低密度プリプレグを使用することが好ましく、最内プリプレグからn−3枚目までを低密度プリプレグとすることがより好ましい。最外プリプレグおよび最外プリプレグに隣接するプリプレグとしては、低密度プリプレグよりも密度の高い高密度プリプレグを用いることが好ましい。例えば、管状体が8枚のプリプレグで構成されている場合、最外プリプレグ(8枚目)および最外プリプレグに隣接するプリプレグ(7枚目)に高密度プリプレグを使用し、最内プリプレグ(1枚目)〜5枚目のプリプレグとして低密度プリプレグを用いる態様がより好ましい。
前記低密度プリプレグに使用する強化繊維の引張弾性率は、30tf/mm2(294GPa)以上が好ましく、40tf/mm2(392GPa)以上がより好ましく、70tf/mm2(686GPa)以下が好ましく、60tf/mm2(588GPa)以下がより好ましい。
前記低密度プリプレグの強化繊維の含有率は、35質量%以上が好ましく、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは45%以上であり、84質量%以下が好ましく、より好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは65質量%以下である。強化繊維の含有率が、前記範囲内であれば、プリプレグの密度が相対的に低くなりやすいからである。
前記低密度プリプレグの密度は、1.35g/cm3以上が好ましく、1.40g/cm3以上がより好ましく、1.55g/cm3以下が好ましく、1.50g/cm3以下がより好ましい。
前記低密度プリプレグよりも密度が高い高密度プリプレグに使用する強化繊維の引張弾性率は、10tf/mm2(98GPa)以上が好ましく、15tf/mm2(147GPa)以上がより好ましく、38tf/mm2(372GPa)以下が好ましく、30tf/mm2(294GPa)以下がより好ましい。
前記高密度プリプレグの強化繊維の含有率は、60質量%以上が好ましく、より好ましくは65質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であり、84質量%以下が好ましく、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは76質量%以下である。強化繊維の含有率が、前記範囲内であれば、プリプレグの密度が相対的に高くなりやすいからである。
前記高密度プリプレグの密度は、1.55g/cm3以上が好ましく、1.60g/cm3以上がより好ましく、1.70g/cm3以下が好ましく、1.65g/cm3以下がより好ましい。
前記高密度プリプレグと低密度プリプレグとの密度の差(高密度プリプレグ−低密度プリプレグ)は、0.08g/cm3以上が好ましく、より好ましくは0.10g/cm3以上、さらに好ましくは0.12g/cm3以上であり、0.28g/cm3以下が好ましく、より好ましくは0.26g/cm3以下、さらに好ましくは0.24g/cm3以下である。密度の差が上記範囲内であれば強度を維持しつつ、軽量化できる。
プリプレグの積層体(予備成形体)を加熱しながら圧力を付与する方法には、ラッピングテープ法、内圧成型法などがある。ラッピングテープ法は、マンドレルなどの芯金にプリプレグを巻いて、成型体を得る方法である。具体的には、マンドレルにプリプレグを巻き付け、プリプレグの固定及び圧力付与のために、プリプレグの外側に熱可塑性樹脂フィルムからなるラッピングテープを巻き付け、オーブン中で樹脂を加熱し硬化させた後、芯金を抜き去って管状成型体を得る方法である。管状成型体の表面を切削し、塗装などを施してもよい。
内圧成型法は、熱可塑性樹脂製のチューブなどの内圧付与体にプリプレグを巻きつけプリフォームとし、次にこれを金型中に設置し、次いで内圧付与体に高圧の気体を導入して圧力をかけると共に金型を加熱して成型する方法である。
プリプレグの積層体にかける圧力としては、1000gf以上、20000gf以下が好ましい。
前記管状体の長さは、40インチ(101.6cm)以上が好ましく、より好ましくは41インチ(104.1cm)以上であり、49インチ(124.5cm)以下が好ましく、より好ましくは48インチ(121.9cm)以下である。また、管状体の重さは、30g以上が好ましく、より好ましくは35g以上であり、80g以下が好ましく、より好ましくは75g以下である。管状体の長さ、重さが上記範囲内であれば、この管状体からなるゴルフクラブシャフトを用いたゴルフクラブの操作性が良好となる。
前記管状体の肉厚は、0.5mm以上が好ましく、より好ましくは0.6mm以上であり、4mm以下が好ましく、より好ましくは3.5mm以下である。管状体の肉厚が上記範囲内であれば、良好なしなりが得られる。また、管状体の肉厚は、薄肉部の位置を調整することにより、管状体の重心や、しなりの位置を制御できる。
本発明の繊維強化エポキシ樹脂材料を用いて形成された管状体は、例えば、ゴルフクラブシャフト、釣竿、テニスラケット、バトミントンラケットなどに好適に使用することができる。
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
[評価方法]
(1)試験片の作製
[樹脂引張試験片、及びメチルエチルケトン膨潤試験用試験片の作製]
表6,7に示したエポキシ樹脂組成物の配合と同様となるように、エポキシ樹脂成分をメチルエチルケトン(MEK)に溶解して、エポキシ樹脂のMEK溶液を作製した(MEK含有率30%)。得られたエポキシ樹脂のMEK溶液を乾燥し、加熱して融解し、硬化剤および硬化促進剤を加えて撹拌した。得られたエポキシ樹脂組成物を厚み2mmの注型金型に注ぎ、所定条件(130℃×2時間)で加熱して硬化させた。硬化した樹脂板より引張試験用試験片をJIS−K7162(1994)試験片1BAに従い成型した。また、2cm×2cmの正方形状の試験片を切り出し、メチルエチルケトン膨潤試験用試験片とした。
(1)試験片の作製
[樹脂引張試験片、及びメチルエチルケトン膨潤試験用試験片の作製]
表6,7に示したエポキシ樹脂組成物の配合と同様となるように、エポキシ樹脂成分をメチルエチルケトン(MEK)に溶解して、エポキシ樹脂のMEK溶液を作製した(MEK含有率30%)。得られたエポキシ樹脂のMEK溶液を乾燥し、加熱して融解し、硬化剤および硬化促進剤を加えて撹拌した。得られたエポキシ樹脂組成物を厚み2mmの注型金型に注ぎ、所定条件(130℃×2時間)で加熱して硬化させた。硬化した樹脂板より引張試験用試験片をJIS−K7162(1994)試験片1BAに従い成型した。また、2cm×2cmの正方形状の試験片を切り出し、メチルエチルケトン膨潤試験用試験片とした。
[繊維強化エポキシ樹脂材料の引張試験用試験片]
表6,7に示した組成になるように、エポキシ樹脂をMEKに溶解して、エポキシ樹脂のMEK溶液を作製した(MEK含有率30%)。得られたエポキシ樹脂のMEK溶液に、硬化剤および硬化促進剤を加えて撹拌し、エポキシ樹脂組成物溶液を調製した。前記エポキシ樹脂組成物溶液を、離型紙に塗布して80〜90℃で3分間乾燥させて、エポキシ樹脂組成物シートを作製した。繊維目付100g/m2の炭素繊維シートに得られたエポキシ樹脂組成物シートをホットメルト法により含浸させ、炭素繊維含有率が70質量%のプリプレグを作製した。得られたプリプレグを裁断し、繊維方向が一定となるように10枚積層した。0.1mmの離型シートで挟み、1mmのスペーサを用いて、所定条件(80℃×30分+130℃×2時間)でプレスして、エポキシ樹脂を硬化させて、繊維強化エポキシ樹脂材料シートを得た。得られた繊維強化エポキシ樹脂材料シートを、長さ:繊維垂直方向に100mm、幅:繊維方向に10mmになるように裁断して、引張試験用の試験片を作製した。
表6,7に示した組成になるように、エポキシ樹脂をMEKに溶解して、エポキシ樹脂のMEK溶液を作製した(MEK含有率30%)。得られたエポキシ樹脂のMEK溶液に、硬化剤および硬化促進剤を加えて撹拌し、エポキシ樹脂組成物溶液を調製した。前記エポキシ樹脂組成物溶液を、離型紙に塗布して80〜90℃で3分間乾燥させて、エポキシ樹脂組成物シートを作製した。繊維目付100g/m2の炭素繊維シートに得られたエポキシ樹脂組成物シートをホットメルト法により含浸させ、炭素繊維含有率が70質量%のプリプレグを作製した。得られたプリプレグを裁断し、繊維方向が一定となるように10枚積層した。0.1mmの離型シートで挟み、1mmのスペーサを用いて、所定条件(80℃×30分+130℃×2時間)でプレスして、エポキシ樹脂を硬化させて、繊維強化エポキシ樹脂材料シートを得た。得られた繊維強化エポキシ樹脂材料シートを、長さ:繊維垂直方向に100mm、幅:繊維方向に10mmになるように裁断して、引張試験用の試験片を作製した。
(2)メチルエチルケトン膨潤試験
前記で得られたメチルエチルケトン膨潤試験用試験片(2cm角、厚み2mm)をメチルエチルケトン100mLに浸漬させ、40℃で48時保持した。浸漬前後の試験片の質量を測定し、メチルエチルケトン膨潤率は、下記のようにして算出した。
膨潤率(%)=100×[膨潤試験後の試験片の質量−膨潤試験前の試験片の質量]/膨潤試験前の試験片の質量
前記で得られたメチルエチルケトン膨潤試験用試験片(2cm角、厚み2mm)をメチルエチルケトン100mLに浸漬させ、40℃で48時保持した。浸漬前後の試験片の質量を測定し、メチルエチルケトン膨潤率は、下記のようにして算出した。
膨潤率(%)=100×[膨潤試験後の試験片の質量−膨潤試験前の試験片の質量]/膨潤試験前の試験片の質量
(3)引張試験(最大応力)
図1に示すように、引張試験は、島津オートグラフ(島津製作所社製)を用いて、引張速度1mm/minで行った。図1(a)は、エポキシ樹脂組成物の硬化物からなる試験片12についての引張試験方法を模式的に説明する説明図である。図1(b)は、図1(a)の試験片12を掴むチャック10を側面から見た側面図である。なお、図1(b)において、チャック10の内側には、滑り止めのための凹凸が設けられているが、図示していない。図1(c)は、繊維強化エポキシ樹脂材料についての引張試験方法を模式的に説明する説明図である。図1(a),(c)において、矢印方向が引張試験の方向である。図1(c)に示したように、繊維強化エポキシ樹脂材料からなる試験片15には、長さ4mm×幅1.5mm×厚み0.5mmのアルミタグ14をシアノアクリレート系接着剤で貼り付け、強化繊維16の方向に対して垂直(90度)の方向に引張試験を行った。また、エポキシ樹脂組成物の硬化物については、引張特性を最大応力×その時の伸び÷2(MPa・%)で示した。
図1に示すように、引張試験は、島津オートグラフ(島津製作所社製)を用いて、引張速度1mm/minで行った。図1(a)は、エポキシ樹脂組成物の硬化物からなる試験片12についての引張試験方法を模式的に説明する説明図である。図1(b)は、図1(a)の試験片12を掴むチャック10を側面から見た側面図である。なお、図1(b)において、チャック10の内側には、滑り止めのための凹凸が設けられているが、図示していない。図1(c)は、繊維強化エポキシ樹脂材料についての引張試験方法を模式的に説明する説明図である。図1(a),(c)において、矢印方向が引張試験の方向である。図1(c)に示したように、繊維強化エポキシ樹脂材料からなる試験片15には、長さ4mm×幅1.5mm×厚み0.5mmのアルミタグ14をシアノアクリレート系接着剤で貼り付け、強化繊維16の方向に対して垂直(90度)の方向に引張試験を行った。また、エポキシ樹脂組成物の硬化物については、引張特性を最大応力×その時の伸び÷2(MPa・%)で示した。
(4)3点曲げ試験
図2に示すように、支点20、20間距離が300mmになるように、管状体18を下方から2点で支えて、支点間の中点22において、管状体18の上方から荷重Fを加えて、管状体が破断したときの荷重値(ピーク値)を測定した。なお、管状体18に荷重Fをかける中点22は、管状体の中心部に位置させるようにした。測定は以下の条件で行った。
試験装置:島津社製オートグラフ
荷重速度:20mm/min
図2に示すように、支点20、20間距離が300mmになるように、管状体18を下方から2点で支えて、支点間の中点22において、管状体18の上方から荷重Fを加えて、管状体が破断したときの荷重値(ピーク値)を測定した。なお、管状体18に荷重Fをかける中点22は、管状体の中心部に位置させるようにした。測定は以下の条件で行った。
試験装置:島津社製オートグラフ
荷重速度:20mm/min
[プリプレグの作製]
表1に示した組成になるように、エポキシ樹脂をメチルエチルケトンに溶解して、エポキシ樹脂のMEK溶液を作製した(MEK含有率:30質量%)。得られたエポキシ樹脂のMEK溶液に、硬化剤および硬化促進剤を加えて撹拌し、エポキシ樹脂組成物溶液を調製した。前記エポキシ樹脂組成物溶液を、離型紙に塗布して乾燥させてエポキシ樹脂組成物シートを作製した。繊維目付100g/m2の炭素繊維シートに得られたエポキシ樹脂組成物シートをホットメルト法により含浸させ、炭素繊維含有率が35質量%〜70質量%のプリプレグを作製した。
表1に示した組成になるように、エポキシ樹脂をメチルエチルケトンに溶解して、エポキシ樹脂のMEK溶液を作製した(MEK含有率:30質量%)。得られたエポキシ樹脂のMEK溶液に、硬化剤および硬化促進剤を加えて撹拌し、エポキシ樹脂組成物溶液を調製した。前記エポキシ樹脂組成物溶液を、離型紙に塗布して乾燥させてエポキシ樹脂組成物シートを作製した。繊維目付100g/m2の炭素繊維シートに得られたエポキシ樹脂組成物シートをホットメルト法により含浸させ、炭素繊維含有率が35質量%〜70質量%のプリプレグを作製した。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量:190g/eq):三菱化学社製、jER828EL(重量平均分子量:400)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ当量:165g/eq):三菱化学社製、jER806(重量平均分子量:340)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ当量:1070g/eq):三菱化学社製、jER4005P(重量平均分子量:7200)
フェノールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量:180g/eq):三菱化学社製、jER154(一分子あたりのエポキシ基数:3個以上)
フェノキシ型エポキシ樹脂(エポキシ当量:8000g/eq):三菱化学社製、jER1256(重量平均分子量:50000)
ポリビニルホルマール:JNC社製、ビニレック(登録商標)E
ジシアンジアミド:三菱化学社製、DICY7
尿素誘導体:保土ヶ谷化学工業社製、DCMU−99(3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素)
T800SC:東レ社製炭素繊維トレカ(登録商標)、引張弾性率30tf/mm2(294GPa)
M40JB:東レ社製炭素繊維トレカ(登録商標)、引張弾性率40tf/mm2(392GPa)
XN−15:日本グラファイトファイバー社製炭素繊維:GARNOC、XN−15,引張弾性率15tf/mm2(147GPa)
YSH−60A:日本グラファイトファイバー社製炭素繊維:GARNOC、YSH−60A,引張弾性率63tf/mm2(618GPa)
YS−80A:日本グラファイトファイバー社製炭素繊維:GARNOC、YS−80A,引張弾性率80tf/mm2(785GPa)
[繊維強化エポキシ樹脂材料製の管状体の作製]
繊維強化エポキシ樹脂材料製の管状体は、シートワインディング法により作製した。すなわち、図3に示したように、プリプレグ1〜8を順番に芯金(マンドレル)に巻回した。プリプレグ1が、最内層を構成し、プリプレグ8が最外層を構成する。プリプレグ1、4、5,7、8は、強化繊維の配列方向が、管状体の軸線に対して平行に配されるストレートプリプレグである。プリプレグ2,3は、強化繊維の配列方向が、管状体の軸線に対して傾斜して配されるバイアスプリプレグである。プリプレグ6は、強化繊維の配列方向が、管状体の軸線に対して直角に配されるフーププリプレグである。図4に示したように、プリプレグ2とプリプレグ3、および、プリプレグ5とプリプレグ6とを貼り合わせて、強化繊維の傾斜方向が交差するようにした。なお、プリプレグ6としては、市販のプリプレグ(東レ社製、トレカプリプレグP805S−3、密度1.47g/cm3)を用いた。得られた巻回体の外周面にテープを巻き付けて、加熱して硬化反応を行った。巻回条件を以下に示した。図3、4中、寸法は、mm単位で表示されている。また、管状体を構成するプリプレグの種類および硬化条件は、表2〜表5に示した。
繊維強化エポキシ樹脂材料製の管状体は、シートワインディング法により作製した。すなわち、図3に示したように、プリプレグ1〜8を順番に芯金(マンドレル)に巻回した。プリプレグ1が、最内層を構成し、プリプレグ8が最外層を構成する。プリプレグ1、4、5,7、8は、強化繊維の配列方向が、管状体の軸線に対して平行に配されるストレートプリプレグである。プリプレグ2,3は、強化繊維の配列方向が、管状体の軸線に対して傾斜して配されるバイアスプリプレグである。プリプレグ6は、強化繊維の配列方向が、管状体の軸線に対して直角に配されるフーププリプレグである。図4に示したように、プリプレグ2とプリプレグ3、および、プリプレグ5とプリプレグ6とを貼り合わせて、強化繊維の傾斜方向が交差するようにした。なお、プリプレグ6としては、市販のプリプレグ(東レ社製、トレカプリプレグP805S−3、密度1.47g/cm3)を用いた。得られた巻回体の外周面にテープを巻き付けて、加熱して硬化反応を行った。巻回条件を以下に示した。図3、4中、寸法は、mm単位で表示されている。また、管状体を構成するプリプレグの種類および硬化条件は、表2〜表5に示した。
巻回条件:
ローリングスピード:34Hz
テープ:信越化学社製PT−30H、テンション6000±100gf
ピッチ:2.0mm
主軸回転数:1870〜1890Hz
ローリングスピード:34Hz
テープ:信越化学社製PT−30H、テンション6000±100gf
ピッチ:2.0mm
主軸回転数:1870〜1890Hz
管状体No.1〜No.16の最外プリプレグを構成するエポキシ樹脂組成物の硬化物の特性を表6,7に示した。
表2は、プリプレグからなる予備成形体の昇温速度を変化させて硬化させた場合の管状体の強度の結果を示している。この結果から、昇温速度が、3.3℃/分以上であれば、得られる管状体の3点曲げ強度が向上していることが分かる。なお、管状体No.1、2は、昇温速度が3.3℃/分以上であるが、エポキシ樹脂組成物が、フェノキシ樹脂を含有していないため、強度物性が低くなったと考えられる。
表3は、硬化温度を変化させた場合の管状体の強度の結果を示している。この結果から、硬化温度が120℃〜140℃の範囲であれば、管状体の曲げ強度が一層向上することが分かる。
表4は、引張弾性率が40tf/mm2の炭素繊維を用いた場合の管状体の強度を示している。この結果から、引張弾性率が40tf/mm2の炭素繊維を用いた繊維強化エポキシ樹脂管状体においても、昇温速度が、3.3℃/分以上であれば、3点曲げ強度が向上していることが分かる
表5は、管状の予備成形体を作製する工程において、最外プリプレグの内側に位置するプリプレグの少なくとも1つに、最外プリプレグよりも低密度のプリプレグを用いた管状体の3点曲げ強度を示している。本発明の製造方法によれば、3点曲げ強度をそれほど低下させることなく、管状体を軽量化させることができている。
本発明の製造方法は、例えば、ゴルフクラブシャフト、釣竿、テニスラケット、バトミントンラケットなどの繊維強化エポキシ樹脂成形体の製造方法として、好適に使用することができる。
1〜8:プリプレグ、10:チャック、12:エポキシ樹脂組成物の硬化物からなる試験片、14:アルミタグ、16:強化繊維、18:管状体、20:支点、22:支点間の中点
Claims (17)
- エポキシ樹脂成分として、ノボラック型エポキシ樹脂とフェノキシ型エポキシ樹脂とを含有するエポキシ樹脂組成物と強化繊維とを含有するプリプレグを用いて予備成形体を作製する工程と、
前記予備成形体を3.3℃/分以上の昇温速度で、120℃以上、150℃以下の温度まで昇温して硬化させる工程とを有することを特徴とする繊維強化エポキシ樹脂成形体の製造方法。 - エポキシ樹脂成分として、ノボラック型エポキシ樹脂とフェノキシ型エポキシ樹脂とを含有するエポキシ樹脂組成物と強化繊維とを含有し、密度が異なるプリプレグを作製する工程と、
前記プリプレグを積層して、管状の予備成形体を作製する工程と、
前記管状の予備成形体を3.3℃/分以上の昇温速度で、120℃以上、150℃以下の温度まで昇温し、硬化させて管状成形体を作製する工程とを有し、
前記管状の予備成形体を作製する工程において、最外プリプレグの内側に位置するプリプレグの少なくとも1つに、最外プリプレグよりも低密度のプリプレグを用いることを特徴とする繊維強化エポキシ樹脂成形体の製造方法。 - 前記低密度プリプレグとして、最外プリプレグが含有する強化繊維の引張弾性率よりも、高引張弾性率の強化繊維を含有するものを用いる請求項2の繊維強化エポキシ樹脂成形体の製造方法。
- 前記管状成形体は、ゴルフクラブシャフトである請求項2または3に記載の繊維強化エポキシ樹脂成形体の製造方法。
- 昇温後、予備成形体をさらに、120℃以上、150℃以下の温度で、20分間〜360分間処理する請求項1〜4のいずれか一項に記載の繊維強化エポキシ樹脂成形体の製造方法。
- 前記エポキシ樹脂成分中のノボラック型エポキシ樹脂とフェノキシ型エポキシ樹脂との質量比(ノボラック型エポキシ樹脂/フェノキシ型エポキシ樹脂)が、0.4〜7である請求項1〜5のいずれか一項に記載の繊維強化エポキシ樹脂成形体の製造方法。
- 前記エポキシ樹脂成分全体に占めるノボラック型エポキシ樹脂の含有率が、2質量%〜19質量%である請求項1〜6のいずれか一項に記載の繊維強化エポキシ樹脂成形体の製造方法。
- 前記エポキシ樹脂組成物が、エポキシ樹脂成分として、さらにビスフェノールA型エポキシ樹脂と、ビスフェノールF型エポキシ樹脂とを含有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の繊維強化エポキシ樹脂成形体の製造方法。
- 前記エポキシ樹脂組成物は、硬化剤として、ジシアンジアミドを含有し、硬化促進剤として、尿素誘導体を含有するものである請求項1〜8のいずれか一項に記載の繊維強化エポキシ樹脂成形体の製造方法。
- 前記エポキシ樹脂組成物が、エポキシ樹脂成分100質量部に対して、さらに、熱可塑性樹脂を2質量部〜12質量部含有する請求項1〜9のいずれか一項に記載の繊維強化エポキシ樹脂成形体の製造方法。
- 前記エポキシ樹脂組成物が、硬化剤として、エポキシ樹脂成分のエポキシ基1モルに対してジシアンジアミドを13g〜40g含有する請求項1〜10のいずれか一項に記載の繊維強化エポキシ樹脂成形体の製造方法。
- 前記熱可塑性樹脂として、ポリビニルホルマールを含有する請求項10または11に記載の繊維強化エポキシ樹脂成形体の製造方法。
- 前記強化繊維は、炭素繊維である請求項1〜12のいずれか一項に記載の繊維強化エポキシ樹脂成形体の製造方法。
- 前記強化繊維の引張弾性率は、10tf/mm2〜70tf/mm2である請求項1〜13のいずれか一項に記載の繊維強化エポキシ樹脂成形体の製造方法。
- n枚(nは、5以上の整数)のプリプレグを積層し、前記プリプレグが含有する樹脂組成物を硬化してなる管状成形体であって、最も外側に位置する最外プリプレグと、前記最外プリプレグに隣接するプリプレグは、エポキシ樹脂組成物と強化繊維とを含有するストレートプリプレグであって、前記エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂成分として、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、及び、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、硬化剤としてジシアンジアミド、硬化促進剤として尿素誘導体を含有し、前記エポキシ樹脂成分中のノボラック型エポキシ樹脂とフェノキシ型エポキシ樹脂との質量比(ノボラック型エポキシ樹脂/フェノキシ型エポキシ樹脂)が、0.4〜7であり、前記エポキシ樹脂成分全体に占めるノボラック型エポキシ樹脂の含有率が、2質量%〜19質量%であることを特徴とする管状成形体。
- 前記最外プリプレグおよび前記最外プリプレグに隣接するプリプレグは、密度が1.55g/cm3〜1.70g/cm3の高密度プリプレグであり、前記管状成形体の内側1枚目から3枚目までのプリプレグは、密度が1.35g/cm3〜1.55g/cm3の低密度プリプレグであり、前記高密度プリプレグの密度は、低密度プリプレグの密度より高く、前記低密度プリプレグが、エポキシ樹脂組成物と強化繊維とを含有し、前記エポキシ樹脂組成物が、エポキシ樹脂成分として、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、及び、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、硬化剤として、ジシアンジアミド、硬化促進剤として、尿素誘導体を含有し、前記エポキシ樹脂成分中のノボラック型エポキシ樹脂とフェノキシ型エポキシ樹脂との質量比(ノボラック型エポキシ樹脂/フェノキシ型エポキシ樹脂)が、0.4〜7であり、前記エポキシ樹脂成分全体に占めるノボラック型エポキシ樹脂の含有率が、2質量%〜19質量%である請求項15に記載の管状成形体。
- 請求項15または16に記載の管状成形体からなるゴルフクラブシャフト。
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JP2013269194A JP2015123651A (ja) | 2013-12-26 | 2013-12-26 | 繊維強化エポキシ樹脂成形体の製造方法 |
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