ところで、この特許文献1に示す水晶振動子では、第1封止部材と第2封止部材と水晶振動板との接合に、金属ペースト封止材を用いている。ここでいう金属ペースト封止材は、電極膜などに比べて厚みがあり、低背化に向いていない。また、金属ペースト封止材を用いた接合の場合、必ず高温で加熱して溶融接合することになり、加熱溶融の際にガスが発生する。このガスがパッケージ内部に存在することにより振動特性が劣化する。さらに、金属ペースト封止材は、幅広い形状で水晶振動板などに形成されるので、金属ペースト封止材を配する領域を確保する必要があり、パッケージの小型化の妨げとなる。
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、ガスの発生を無くし、さらに低背化や小型化が可能なサンドイッチ構造の圧電振動デバイスを提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明にかかる圧電振動デバイスは、基板の一主面に第1励振電極が形成され、前記基板の他主面に前記第1励振電極と対になる第2励振電極が形成された圧電振動板と、前記圧電振動板の前記第1励振電極を覆う第1封止部材と、前記圧電振動板の前記第2励振電極を覆い、外部に電気的に接続する外部電極端子が設けられた第2封止部材と、が設けられ、前記第1封止部材と前記圧電振動板とが接合され、前記第2封止部材と前記圧電振動板とが接合されて、前記第1励振電極と前記第2励振電極とを含む前記圧電振動板の振動部を気密封止した内部空間が形成された圧電振動デバイスにおいて、前記圧電振動板の一主面には、前記第1封止部材に接合するための振動側第1接合パターンが形成され、前記振動側第1接合パターンは、前記一主面上に物理的気相成長させて形成された下地PVD膜と、前記下地PVD膜上に物理的気相成長させて積層形成された電極PVD膜とからなり、前記圧電振動板の他主面には、前記第2封止部材に接合するための振動側第2接合パターンが形成され、前記振動側第2接合パターンは、前記他主面上に物理的気相成長させて形成された下地PVD膜と、前記下地PVD膜上に物理的気相成長させて積層形成された電極PVD膜とからなり、前記第1封止部材には、前記圧電振動板に接合するための封止側第1接合パターンが形成され、前記封止側第1接合パターンは、前記第1封止部材上に物理的気相成長させて形成された下地PVD膜と、前記下地PVD膜上に物理的気相成長させて積層形成された電極PVD膜とからなり、前記第2封止部材には、前記圧電振動板に接合するための封止側第2接合パターンが形成され、前記封止側第2接合パターンは、前記第2封止部材上に物理的気相成長させて形成された下地PVD膜と、前記下地PVD膜上に物理的気相成長させて積層形成された電極PVD膜とからなり、前記封止側第1接合パターンと前記振動側第1接合パターンとが拡散接合され、前記封止側第2接合パターンと前記振動側第2接合パターンとが拡散接合されたことを特徴とする。
本発明にかかる圧電振動デバイスによれば、サンドイッチ構造の圧電振動デバイスにおいて、ガスの発生を無くし、さらに低背化や小型化が可能となる。
従来の技術では、別途、Au−Sn等の金属ペースト封止材を印刷やメッキ等で形成する必要があるが、本発明では、前記封止側第1接合パターンと前記振動側第1接合パターンとが拡散接合され、前記封止側第2接合パターンと前記振動側第2接合パターンとが拡散接合されるので、別途、金属ペースト封止材を用いる必要がなく、コスト低減に寄与することが可能となる。さらに本発明によれば、真空蒸着やスパッタリング、イオンプレーティング、MBE、レーザーアブレーションなどのPVD法(例えば、フォトリソグラフィ等の加工におけるパターンニング用の膜形成法)により下地PVD膜や電極PVD膜を形成するので、従前のメッキを使った複数回の膜形成と異なり、一括して膜形成を行い、製造工数を減らすことが可能となり、コスト低減に寄与することが可能となる。
また、現在、圧電振動デバイスのパッケージの小型化が行われており、そのため、異極となるパターン(電極パターン)や端子(電極パッド)が干渉して短絡するなどの不具合を防止しながらAu−Sn等の金属ペースト封止材を印刷することは難しい。これに対して、本発明では、金属ペースト封止材を用いずに、夫々前記下地PVD膜と前記電極PVD膜との積層構造となった前記封止側第1,2接合パターンと前記振動側第1,2接合パターンとを用いるので、容易に異極となるパターンや端子が干渉して短絡するなどの不具合を防止しながらパターン形成を行うことが可能となる。
また、従来の技術では、上記の通り、別途、Au−Sn等の金属ペースト封止材を用いるが、この金属ペースト封止材を用いた接合の場合、必ず高温で加熱して溶融接合することになり、加熱溶融の際にガスが発生する。このガスを無くす技術は現在開発されておらず、加熱溶融接合の際に内部空間内へのガス侵入は避けられない。これに対して、本発明によれば、前記封止側第1接合パターンと前記振動側第1接合パターンとが拡散接合され、前記封止側第2接合パターンと前記振動側第2接合パターンとが拡散接合されるので、ガスの発生を抑え、ガスが前記内部空間内に存在することによる振動特性の劣化を防止することが可能となる。なお、当該拡散接合の際に、220度などの常温よりも高い温度をかける場合もあるが、金属ペースト封止材を用いた接合のように高温度(例えば、280度以上)をかけることはない。
また、本発明によれば、前記封止側第1,2接合パターンと前記振動側第1,2接合パターンとが、夫々前記下地PVD膜と前記電極PVD膜との積層構造となるので、パターンや端子の幅を細くして細線化することが可能となり、その結果、パターンの引き回しが原因となるパッケージの小型化の妨げを解消すること可能となる。具体的には、本発明によれば、Au−Sn等の金属ペースト封止材による接合を用いた圧電振動デバイスでは実現不可能なパターンや端子の細線化が可能となる。
また、本発明によれば、前記封止側第1接合パターンと前記振動側第1接合パターンとが拡散接合され、前記封止側第2接合パターンと前記振動側第2接合パターンとが拡散接合されるので、高温の加熱溶融接合を行うことはない。そのため、圧電振動デバイスを外部回路などの外部部材に半田などを用いて接合する際に、接合箇所において再溶融することがなく、リフローや製品の使用環境などにおいて接合状態が変化することはない。
前記構成において、前記封止側第1接合パターンと前記振動側第1接合パターンとが常温拡散接合され、前記封止側第2接合パターンと前記振動側第2接合パターンとが常温拡散接合されてもよい。
この場合、前記封止側第1接合パターンと前記振動側第1接合パターンとが常温拡散接合され、前記封止側第2接合パターンと前記振動側第2接合パターンとが常温拡散接合されるので、ガスが発生するのを抑え、ガスが前記内部空間内に存在することによる振動特性の劣化を防止するのに好適である。また、接合箇所において再溶融することがなく、接合状態が変化することはない。
前記構成において、前記封止側第1接合パターンと前記振動側第1接合パターンとが、常温以上230度未満の温度下で拡散接合され、前記封止側第2接合パターンと前記振動側第2接合パターンとが、常温以上230度未満の温度下で拡散接合されてもよい。
この場合、前記封止側第1接合パターンと前記振動側第1接合パターンとが常温以上230度未満の温度下で拡散接合され、前記封止側第2接合パターンと前記振動側第2接合パターンとが常温以上230度未満の温度下で拡散接合されるので、ガスが発生するのを抑えながら、接合を良好にすることが可能となる。
前記構成において、前記圧電振動板の一主面に形成された前記第1励振電極と前記振動側第1接合パターンとは同一厚みを有し、前記第1励振電極と前記振動側第1接合パターンとの表面が同一金属からなり、前記圧電振動板の他主面に形成された前記第2励振電極と前記振動側第2接合パターンとは同一厚みを有し、前記第2励振電極と前記振動側第2接合パターンとの表面が同一金属からなってもよい。
前記圧電振動板の一主面に形成された前記第1励振電極と前記振動側第1接合パターンとは同一厚みを有し、前記第1励振電極と前記振動側第1接合パターンとの表面が同一金属からなり、前記圧電振動板の他主面に形成された前記第2励振電極と前記振動側第2接合パターンとは同一厚みを有し、前記第2励振電極と前記振動側第2接合パターンとの表面が同一金属からなるので、前記第1励振電極と前記振動側第1接合パターンとの金属膜の形成を一度で済ませることが可能となり、また前記第2励振電極と前記振動側第2接合パターンとの金属膜の形成を一度で済ませることが可能となる。その結果、前記第1励振電極と前記振動側第1接合パターンとの金属膜を同一にし、前記第2励振電極と前記振動側第2接合パターンとの金属膜を同一にすることが可能となる。
前記構成において、前記振動側第1接合パターンと前記振動側第2接合パターンとでは、前記下地PVD膜が単一の材料からなり、前記電極PVD膜が単一の材料からなり、前記下地PVD膜よりも前記電極PVD膜の方が厚くてもよい。
この場合、前記下地PVD膜を構成する単一の材料が、前記電極PVD膜に拡散するのを防止することが可能となる。
前記構成において、前記第2封止部材では、前記圧電振動板に面しない外方の主面には、外部と電気的に接続するための外部電極端子が形成され、前記外部電極端子は、前記外方の主面上に物理的気相成長させて形成された下地PVD膜と、下地PVD膜上に物理的気相成長させて積層形成された電極PVD膜とからなり、前記振動側第1接合パターンと前記振動側第2接合パターンと前記封止側第1接合パターンと前記封止側第2接合パターンとの各前記下地PVD膜の厚みに対して、前記外部電極端子の前記下地PVD膜の厚みが厚くてもよい。
前記振動側第1接合パターンと前記振動側第2接合パターンと前記封止側第1接合パターンと前記封止側第2接合パターンとの各前記下地PVD膜の厚みに対して、前記外部電極端子の前記下地PVD膜の厚みが厚いので、前記第1封止部材と前記第2封止部材と前記圧電振動板との接合を安定させながら、前記外部電極端子では外部と電気的に接続するため(例えば、半田実装など)、下地PVD膜を外部と電気的に接続するために有効に利用することが可能となる。なお、前記振動側第1接合パターンと前記振動側第2接合パターンと前記封止側第1接合パターンと前記封止側第2接合パターンと前記外部電極端子との各前記下地PVD膜の厚みを同じとした場合、前記外部電極端子を用いた外部との電気的に接続(例えば、半田実装など)を行うことができない。
前記構成において、前記電極PVD膜には、Auが用いられてもよい。
前記電極PVD膜にAuが用いられるので、前記振動側第1接合パターンと前記振動側第2接合パターンと前記封止側第1接合パターンと前記封止側第2接合パターンとの各表面を酸化させ難くし、前記振動側第1接合パターンと前記振動側第2接合パターンと前記封止側第1接合パターンと前記封止側第2接合パターンとの接合前処理に高度な特殊前処理が不要となる。その結果、製造コストを抑えることが可能となる。ここでいう製造前処理に関して、本構成によれば、雰囲気環境を例えば、超高真空などにしなくてもよい。
前記構成において、前記振動側第1接合パターンと前記振動側第2接合パターンと前記封止側第1接合パターンと前記封止側第2接合パターンは、非Snパターンであってもよい。
前記振動側第1接合パターンと前記振動側第2接合パターンと前記封止側第1接合パターンと前記封止側第2接合パターンは、非Snパターンであるので、接合時に高温加熱を必要としなく、高温加熱接合による不具合(再溶融)がない。
すなわち、本構成によれば、別途、金属ペースト封止材を用いることがなく、コスト低減に寄与することが可能となる。さらに本発明によれば、真空蒸着やスパッタリング、イオンプレーティング、MBE、レーザーアブレーションなどのPVD法(例えば、フォトリソグラフィ等の加工におけるパターンニング用の膜形成法)により下地PVD膜や電極PVD膜を形成するので、コスト低減に寄与することが可能となる。
また、Snを用いない非Snパターンによれば、パターンの細線化が可能となり、異極となるパターンや端子が干渉して短絡するなどの不具合が生じない。
前記構成において、前記振動側第1接合パターンと前記振動側第2接合パターンと前記封止側第1接合パターンと前記封止側第2接合パターンには、Cuが含まれてもよい。
前記振動側第1接合パターンと前記振動側第2接合パターンと前記封止側第1接合パターンと前記封止側第2接合パターンには、Cuが含まれるので、製造時(接合時、加圧などの外力が発生することによる衝撃時など)や使用時(落下などの外力が発生することによる衝撃時、はんだ実装時など)の応力緩和に寄与することが可能となる。つまり、本構成によれば、機械的強度が向上する。
前記下地PVD膜にCrを用いた場合(例えば、Cr+Ag−Cu+Au)、Crが前記電極PVD膜に拡散するのを、Cuを前記下地PVD膜に含むことで抑制することが可能となる。その結果、Crを用いた層を厚くしても、Crが前記電極PVD膜に拡散するのを抑制することが可能となり、Crを用いた層を厚くすることができて製造ばらつきを抑えることが可能となる。実際に、Crの層を0.2μmとしてもCrが前記電極PVD膜に拡散するのを抑制することが可能となる。
また、前記下地PVD膜にCrを用いた場合(例えば、Cr+Ag−Cu+Au)、抵抗加熱蒸着に好適である。
前記構成において、前記封止側第1接合パターンと前記振動側第1接合パターンとが加圧拡散接合され、前記封止側第2接合パターンと前記振動側第2接合パターンとが加圧拡散接合されてもよい。
本構成によれば、前記封止側第1接合パターンと前記振動側第1接合パターンとが加圧拡散接合され、前記封止側第2接合パターンと前記振動側第2接合パターンとが加圧拡散接合されるので、加圧することで接合箇所を確保し易くなり、高温加熱を用いずに拡散接合のみによる接合をさらに良好に行うことが可能となる。
前記構成において、前記第1封止部材と前記第2封止部材には、曲げ剛性(断面二次モーメント×ヤング率)が1000[N・mm2]以下の材料が用いられてもよい。
前記第1封止部材と前記第2封止部材には、曲げ剛性(断面二次モーメント×ヤング率)が1000[N・mm2]以下の絶縁(脆性)材料が用いられているので、接合に必要な変形量を満たすことが可能となる。そのため、例えば、前記第1励振電極や前記第2励振電極などの電極表面を、通常の接合に必要な1nm以下の表面粗さ(Ra)に成形しなくても、上記の範囲内の曲げ剛性とすることで、拡散接合を行うことが可能となる。
前記構成において、別途接着剤などの接合専用材を用いずに、前記封止側第1接合パターンと前記振動側第1接合パターンとが加圧拡散接合され、前記封止側第2接合パターンと前記振動側第2接合パターンとが加圧拡散接合されてもよい。
別途接合専用材を用いずに、前記封止側第1接合パターンと前記振動側第1接合パターンとが加圧拡散接合され、前記封止側第2接合パターンと前記振動側第2接合パターンとが加圧拡散接合されるので、小型化、特に低背化に寄与することが可能となり、接合専用材を用いた場合は、低背化の限界があるが、この限界を超えた低背化を可能とする。
前記構成において、前記第2封止部材において、前記圧電振動板に面しない外方の主面には、外部と電気的に接続するための外部電極端子が形成され、前記外部電極端子は、前記外方の主面上に物理的気相成長させて形成された下地PVD膜と、下地PVD膜上に物理的気相成長させて積層形成された電極PVD膜とからなり、前記封止側第1接合パターンと前記振動側第1接合パターンとが拡散接合された接合パターンの厚みは、前記封止側第2接合パターンと前記振動側第2接合パターンとが拡散接合された接合パターンの厚みと同じで、外部と電気的に接続した前記外部電極端子の厚みと異なってもよい。
本構成によれば、拡散接合時に前記下地PVD膜の拡散を確実に防ぐことが可能となり、さらに前記第1封止部材、前記第2封止部材、及び前記圧電振動板への各前記下地PVD膜の接合強度を高めることが可能となる。その上で、前記外部電極端子では外部と電気的に接続するため(例えば、半田実装など)、前記下地PVD膜を外部と電気的に接続するために有効に利用することが可能となる。
前記構成において、前記第2封止部材に、前記内部空間の外方に配された貫通孔が形成され、前記内部空間の内方には前記貫通孔が形成されなくてもよい。
前記第2封止部材において前記内部空間の外方に配された前記貫通孔が形成されるので、前記貫通孔の影響が前記内部空間に及ぶことなく、前記貫通孔が前記内部空間の内方に配された構成に比べて、前記貫通孔が原因となる気密不良を避けることが可能となる。
また、本構成と異なり、貫通孔を内部空間内に配置した場合、内部空間の気密を確保する必要があり、内部空間内の貫通孔を金属等により埋める工程が必要となる。これに対して、本構成によれば、貫通孔が前記内部空間の外方に形成されるので、前記振動側第1接合パターンと前記振動側第2接合パターンと前記封止側第1接合パターンと前記封止側第2接合パターンとのパターン形成と同じ工程で配線パターンの引き回しが可能となり、製造コストを抑えることが可能となる。
前記構成において、前記第1封止部材に形成された前記封止側第1接合パターンと、前記第2封止部材に形成された前記封止側第2接合パターンとは、平面視において重畳しなくてもよい。
前記封止側第1接合パターンと前記封止側第2接合パターンとが平面視において重畳しないので、封止側第1接合パターンと前記封止側第2接合パターンとによって浮遊容量が発生するのを防止することが可能となる。
前記構成において、前記圧電振動板の一主面及び他主面には、前記第1封止部材及び第2封止部材に封止接合するための振動側第1接合パターン及び振動側第2接合パターンが夫々形成され、前記圧電振動板に形成された前記振動側第1接合パターン及び前記振動側第2接合パターンに比べて、前記第1封止部材に形成された前記封止側第1接合パターン、及び前記第2封止部材に形成された前記封止側第2接合パターンでは、幅が広くてもよい。
パッケージの小型化により、前記振動側第1接合パターンと前記振動側第2接合パターンとの接合用パターンの幅は狭くなる。特に、振動領域を可能な限り広く確保することによって、不要振動モードとのカップリングを防ぐことが可能となるので、接合用パターンの幅を狭くする必要がある。一方、前記第1封止部材や前記第2封止部材は、振動部よりも寸法制約が緩いため、前記封止側第1接合パターンと前記封止側第2接合パターンとの接合用パターンの幅を広くすることが可能となり、その結果、接合時の位置合わせ精度の自由度を高めることが可能となる。
前記構成において、前記第1封止部材では、一主面に発振回路素子が設けられ、他主面が前記圧電振動板の前記一主面に接合されてもよい。
本構成によれば、前記発振回路素子を設けるためのスペースを前記圧電振動板に設けなくてもよく、パッケージの低背化を行うことが可能となる。
また、前記第1封止部材の一主面に形成する前記発振回路素子用のパターンを変えるだけで任意の発振条件に対応させることが可能となる。
また、前記発振回路素子の裏面にマーキングが可能となり、前記第1封止部材に透明部材料を用いた場合であっても特殊マーキングが不要となる。
また、従来の技術では、前記第1封止部材や前記圧電振動板などに凹部を設けて、前記発振回路素子を必ず前記凹部に実装していたため、圧電振動デバイスの外形は必ず前記発振回路素子よりも大きくなっていた。しかしながら、本構成によれば、本構成では、前記第1封止部材では、前記一主面に前記発振回路素子が設けられ、前記他主面が前記圧電振動板の前記一主面に接合されるので、前記発振回路素子のサイズと当該圧電振動デバイスのサイズとを同じにすることが可能とあり、小型化及び低背化に有利である。
前記構成において、前記第1封止部材と前記圧電振動板とは、1.00μm以下のギャップを有し、前記第2封止部材と前記圧電振動板とは、1.00μm以下のギャップを有してもよい。
本構成によれば、当該圧電振動デバイスのパッケージの高さにバラつきが生じない。例えば、本構成と異なり、ギャップが1μmより大きくなるSn接合材のような金属ペースト封止材を用いた場合、金属ペースト封止材をパターン(前記振動側第1接合パターン、前記振動側第2接合パターン、前記封止側第1接合パターン、前記封止側第2接合パターン)上に形成する際の高さにバラつきが生じる。また、接合後においても、形成されたパターン(前記振動側第1接合パターン、前記振動側第2接合パターン、前記封止側第1接合パターン、前記封止側第2接合パターン)の熱容量分布により均一なギャップにならない。そのため、従来の技術では、第1封止部材、第2封止部材、圧電振動板の3枚の部材が積層された構造の場合、これら3枚の部材でのギャップ差が生じる。その結果、積層された3枚の部材は、平行を保たない状態で接合されてしまう。特に、この問題は低背化に伴い顕著になる。これに対して、本構成では、上限が1.00μmに設定されているため、前記第1封止部材、前記第2封止部材、前記圧電振動板の3枚の部材を、平行を保った状態で積層させて接合することが可能となり、本構成は低背化に対応可能である。
本発明にかかる圧電振動デバイスによれば、サンドイッチ構造の圧電振動デバイスにおいて、ガスの発生を無くし、低背化や小型化が可能となる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施の形態では、圧電振動を行う圧電振動デバイスとして水晶振動子に本発明を適用した場合を示す。
−水晶振動子−
本実施の形態にかかる水晶振動子101では、図1に示すように、水晶振動板2(本発明でいう圧電振動板)と、水晶振動板2の第1励振電極221(図4参照)を覆い、水晶振動板2の一主面211に形成された第1励振電極221を気密封止する第1封止部材3と、この水晶振動板2の他主面212に、水晶振動板2の第2励振電極222(図5参照)を覆い、第1励振電極221と対になって形成された第2励振電極222を気密封止する第2封止部材4が設けられている。
この水晶振動子101では、水晶振動板2と第1封止部材3とが接合され、水晶振動板2と第2封止部材4とが接合されてサンドイッチ構造のパッケージ12が構成される。
そして、水晶振動板2を介して第1封止部材3と第2封止部材4とが接合されることで、パッケージ12の内部空間13が形成され、このパッケージ12の内部空間13に、水晶振動板2の両主面211,212に形成された第1励振電極221及び第2励振電極222を含む振動部23が気密封止されている。なお、内部空間13は、図1に示すようにパッケージ12の平面視一端側(平面視左側)に偏って位置する。
本実施の形態にかかる水晶振動子101は、1.0×0.8mmのパッケージサイズであり、小型化と低背化とを図ったものである。また、小型化に伴い、本パッケージ12では、キャスタレーションを形成せずに、貫通孔(第1貫通孔261,第2貫通孔441,第3貫通孔442参照)を用いて電極の導通を図っている。
次に、上記した水晶振動子101の各構成について図1〜7を用いて説明する。なお、ここでは、水晶振動板2と第1封止部材3と第2封止部材4が接合されていないそれぞれ単体として構成されている各部材について説明を行う。
水晶振動板2は、図4,5に示すように、圧電材料である水晶からなり、その両主面(一主面211,他主面212)が平坦平滑面(鏡面加工)として成形されている。
また、水晶振動板2の両主面211,212(一主面211,他主面212)に一対の(対となる)励振電極(第1励振電極221,第2励振電極222)が形成されている。そして、両主面211,212には、一対の第1励振電極221,第2励振電極222を平面視(図4,5参照)で囲うように2つの切り欠き部24(貫通形状)が形成されて振動部23が構成されている。切り欠き部24は、平面視凹形状体241(1つの平面視長方形の両端から2つの長方形がそれぞれ直角方向に延出して成形された3つの平面視長方形からなる平面視体)と、平面視長方形状体242となり、平面視凹形状体241と平面視長方形状体242との間が、第1励振電極221及び第2励振電極222を外部電極端子(一外部電極端子431,他外部電極端子432;下記参照)に引き出すための引出電極(第1引出電極223,第2引出電極224)を配する導通路213となっている。電極パターンに関して、一対の第1励振電極221,第2励振電極222夫々から引き出された第1引出電極223,第2引出電極224は、振動側第1接合パターン251及び振動側第2接合パターン252を介して、第2封止部材4に形成された外部電極端子(一外部電極端子431,他外部電極端子432)に電気的に接続されている。
この水晶振動板2では、両主面211,212の振動部23に沿った外方に、振動部23を囲むように第1封止部材3と第2封止部材4とを接合するための振動側封止部25がそれぞれ設けられている。振動側封止部25は、図4,5に示すように両主面211,212の平面視左側に偏って位置する。
この水晶振動板2の一主面211の振動側封止部25に、第1封止部材3に接合するための振動側第1接合パターン251が形成され、第1励振電極221は振動側第1接合パターン251に繋がる。また、水晶振動板2の他主面212の振動側封止部25に、第2封止部材4に接合するための振動側第2接合パターン252が形成され、第2励振電極222は振動側第2接合パターン252に繋がる。内部空間13は、振動側第1接合パターン251および振動側第2接合パターン252の内方(内側)に形成されることになる。
水晶振動板2の一主面211には、第1封止部材3に接合するための振動側第1接合パターン251が形成され、振動側第1接合パターン251は、一主面211上に物理的気相成長させて形成された下地PVD膜2511と、下地PVD膜2511上に物理的気相成長させて積層形成された電極PVD膜2512とからなる。また、水晶振動板2の他主面212には、第2封止部材4に接合するための振動側第2接合パターン252が形成され、振動側第2接合パターン252は、他主面212上に物理的気相成長させて形成された下地PVD膜2521と、下地PVD膜2521上に物理的気相成長させて積層形成された電極PVD膜2522とからなる。つまり、振動側第1接合パターン251と振動側第2接合パターン252とは、同一構成からなり、複数の層が両主面211,212の振動側封止部25上に積層して構成され、その最下層側からTi層(もしくはCr層)とAu層とが蒸着形成されている。このように、振動側第1接合パターン251と振動側第2接合パターン252とでは、下地PVD膜2511,2521が単一の材料(Ti(もしくはCr))からなり、電極PVD膜2512,2522が単一の材料(Au)からなり、下地PVD膜2511,2521よりも電極PVD膜2512,2522の方が厚い。また、水晶振動板2の一主面211に形成された第1励振電極221と振動側第1接合パターン251とは同一厚みを有し、第1励振電極221と振動側第1接合パターン251との表面(主面)が同一金属からなり、水晶振動板2の他主面212に形成された第2励振電極222と振動側第2接合パターン252とは同一厚みを有し、第2励振電極222と振動側第2接合パターン252との表面(主面)が同一金属からなる。また、振動側第1接合パターン251と振動側第2接合パターン252は、非Snパターンである。なお、同一主面上において同一金属で同一厚みの構成であって、振動側第1,2接合パターン251,252と振動側(第1励振電極221,第2励振電極222)とを比較した場合、 最上層(少なくとも露出している面)の金属(電極PVD膜2512,2522等)が同一であれば、その下地金属(下地PVD膜2511,2521)の種類や厚みが異なっても接合を行うことは可能である。また、振動側第1接合パターン251及び封止側第2接合パターン421では、それぞれ電極PVD膜2512,2522が平面視うろこ状体の表面となる。ここでいううろこ状体とは、活性化されて微視的に個片状体となった金属が畳敷のように重ね合わされて、平面視において隙間が無い(もしくは殆どない)形態のことをいう。
また、水晶振動板2には、図4,5に示すように、第1貫通孔261が形成され、第1貫通孔261を介して、第1励振電極221に繋がった振動側第1接合パターン251が他主面212側に引き出されている。第1貫通孔261は、内部空間13の外方に配され、図4に示すように両主面211,212の平面視他端側(平面視右側)に偏って位置し、第1貫通孔261は内部空間13の内方に形成されない。ここでいう内部空間13の内方とは、接合材11上を含まずに厳密に接合材11の内周面の内側のことをいう。
第1封止部材3には、曲げ剛性(断面二次モーメント×ヤング率)が1000[N・mm2]以下の材料が用いられている。具体的には、第1封止部材3は、図2,3に示すように、1枚のガラスウエハから形成された直方体の基板であり、この第1封止部材3の他主面312(水晶振動板2に接合する面)は平坦平滑面(鏡面加工)として成形されている。
この第1封止部材3の他主面312には、水晶振動板2に接合するための封止側第1封止部32が設けられている。封止側第1封止部32は、図3に示すように第1封止部材3の他主面312の平面視左側に偏って位置する。
第1封止部材3の封止側第1封止部32に、水晶振動板2に接合するための封止側第1接合パターン321が形成されている。封止側第1接合パターン321は、第1封止部材3の封止側第1封止部32上の全ての位置において同一幅とされる。
この封止側第1接合パターン321は、第1封止部材3上に物理的気相成長させて形成された下地PVD膜3211と、下地PVD膜3211上に物理的気相成長させて積層形成された電極PVD膜3212とからなる。なお、本実施の形態では、下地PVD膜3211には、Ti(もしくはCr)が用いられ、電極PVD膜3212にはAuが用いられている。また、封止側第1接合パターン321は、非Snパターンである。具体的には、封止側第1接合パターン321は、複数の層が他主面312の封止側第1封止部32上に積層して構成され、その最下層側からTi層(もしくはCr層)とAu層とが蒸着形成されている。また、封止側第1接合パターン321では、電極PVD膜3212が平面視うろこ状体の表面となる。
第2封止部材4には、曲げ剛性(断面二次モーメント×ヤング率)が1000[N・mm2]以下の材料が用いられている。具体的には、第2封止部材4は、図6に示すように、1枚のガラスウエハから形成された直方体の基板であり、この第2封止部材4の一主面411(水晶振動板2に接合する面)は平坦平滑面(鏡面加工)として成形されている。
この第2封止部材4の一主面411には、水晶振動板2に接合するための封止側第2封止部42が設けられている。封止側第2封止部42は、図6に示すように第2封止部材4の一主面411の平面視左側に偏って位置する。
また、第2封止部材4の他主面412(水晶振動板2に面しない外方の主面)には、外部に電気的に接続する一対の外部電極端子(一外部電極端子431,他外部電極端子432)が形成されている。一外部電極端子431は、振動側第1接合パターン251を介して第1励振電極221に電気的に直接接続され、他外部電極端子432は、振動側第2接合パターン252を介して第2励振電極222に電気的に直接接続される。一外部電極端子431,他外部電極端子432は、図7に示すように第2封止部材4の他主面412の平面視長手方向両端にそれぞれ位置する。これら一対の外部電極端子(一外部電極端子431,他外部電極端子432)は、他主面412上に物理的気相成長させて形成された下地PVD膜4311,4321と、下地PVD膜4311,4321上に物理的気相成長させて積層形成された電極PVD膜4312,4322とからなる。また、上記の振動側第1接合パターン251と振動側第2接合パターン252と封止側第1接合パターン321と封止側第2接合パターン421との各下地PVD膜2511,2521,3211,4211の厚みに対して、外部電極端子(一外部電極端子431,他外部電極端子432)の下地PVD膜4311,4321の厚みが厚い。また、一外部電極端子431及び他外部電極端子432は、第2封止部材4の他主面412のうち1/3以上の領域をそれぞれ占めている。
また、第2封止部材4の封止側第2封止部42に、水晶振動板2に接合するための封止側第2接合パターン421が形成されている。封止側第2接合パターン421は、第2封止部材4の封止側第2封止部42上の全ての位置において同一幅とされる。
この封止側第2接合パターン421は、第2封止部材4上に物理的気相成長させて形成された下地PVD膜4211と、下地PVD膜4211上に物理的気相成長させて積層形成された電極PVD膜4212とからなる。なお、本実施の形態では、下地PVD膜4211には、Ti(もしくはCr)が用いられ、電極PVD膜4212にはAuが用いられている。また、封止側第2接合パターン421は、非Snパターンである。具体的には、封止側第2接合パターン421は、複数の層が他主面412の封止側第2封止部42上に積層して構成され、その最下層側からTi層(もしくはCr層)とAu層とが蒸着形成されている。また、封止側第2接合パターン421では、電極PVD膜4212が平面視うろこ状体の表面となる。
また、第2封止部材4には、図1,6,7に示すように、2つの貫通孔(第2貫通孔441と第3貫通孔442)が形成されている。第2貫通孔441及び第3貫通孔442は、内部空間13の外方に配され、図6,7に示すように第2貫通孔441は両主面(一主面411,他主面412)の平面視右側に偏って位置し、第3貫通孔442は、平面視左上側に位置し、第2貫通孔441及び第3貫通孔442は、内部空間13の内方に形成されない。ここでいう内部空間13の内方とは、接合材11上を含まずに厳密に接合材11の内周面の内側のことをいう。そして、水晶振動板2の第1貫通孔261と第2貫通孔441を介して、水晶振動板2の第1励振電極221に繋がった振動側第1接合パターン251と他外部電極端子432とが導通される。第2貫通孔441および封止側第2接合パターン421を介して、水晶振動板2の第2励振電極222に繋がった振動側第2接合パターン252が、他外部電極端子432に導通される。
上記構成からなる水晶振動子101では、従来の技術のように別途接着剤などの接合専用材を用いずに、水晶振動板2と第1封止部材3とが振動側第1接合パターン251及び封止側第1接合パターン321を重ね合わせた状態で拡散接合され、水晶振動板2と第2封止部材4とが振動側第2接合パターン252及び封止側第2接合パターン421を重ね合わせた状態で拡散接合されて、図1に示すサンドイッチ構造のパッケージ12が製造される。なお、振動側第1接合パターン251及び封止側第1接合パターン321自身が拡散接合後に生成される接合材11となり、振動側第2接合パターン252及び封止側第2接合パターン421自身が拡散接合後に生成される接合材11となる。本実施の形態では、拡散接合を常温で行っている。ここでいう常温は、5度〜35度のことをいう。この常温拡散接合により下記効果(ガスの発生抑制と接合良好)を有するが、これは共晶半田の融点である183度よりも低い値であって好適な例である。しかしながら、常温拡散接合だけが下記効果を有するものではなく、常温以上230度未満の温度下で拡散接合されていればよい。特に、200度以上230度未満の温度下において拡散接合することで、Pbフリー半田の融点である230度未満であり、さらにAuの再結晶温度(200度)以上となるので、接合部分の不安定領域を安定化できる。また本実施の形態ではAu−Snといった接合専用材を使用していないため、メッキガス、バインダーガス、金属ガス等のガスの発生がない。よってAuの再結晶温度以上にすることができる。
また、ここで製造されたパッケージ12では、上記の通り、拡散接合により封止側第1接合パターン321と振動側第1接合パターン251とが接合され、封止側第2接合パターン421と振動側第2接合パターン252とが接合されているが、この接合以外に、封止側第1接合パターン321と振動側第1接合パターン251とが加圧拡散接合され、封止側第2接合パターン421と振動側第2接合パターン252とが加圧拡散接合されてもよい。この場合、加圧することで接合箇所を確保し易くなり(接合面積を実質的に増やすことができ)、高温加熱を用いずに拡散接合のみによる接合をさらに良好に行うことができる。
また、ここで製造されたパッケージ12では、第1封止部材3と水晶振動板2とは、1.00μm以下のギャップを有し、第2封止部材4と水晶振動板2とは、1.00μm以下のギャップを有する。つまり、第1封止部材3と水晶振動板2との間の接合材11の厚みが、1.00μm以下であり、第2封止部材4と水晶振動板2との間の接合材11の厚みが、1.00μm以下(具体的には、本実施の形態のAu−Au接合では0.15μm〜1.00μm)である。なお、比較として、Snを用いた従来の金属ペースト封止材では、5μm〜20μmとなる。
また、封止側第1接合パターン321と振動側第1接合パターン251とが拡散接合された接合パターンの厚みは、封止側第2接合パターン421と振動側第2接合パターン252とが拡散接合された接合パターンの厚みと同じで、外部と電気的に接続した外部電極端子(一外部電極端子431,他外部電極端子432)の厚みと異なる。
また、ここで製造されたパッケージ12では、図1〜7に示すように、内部空間13が平面視左側に偏って位置する。また、第1封止部材3に形成された封止側第1接合パターン321と、第2封止部材4に形成された封止側第2接合パターン421とは、平面視において重畳しない。具体的には、封止側第1接合パターン321内における平面視領域が、封止側第2接合パターン421内における平面視領域より広い。なお、本実施の形態では、封止側第1接合パターン321内における平面視領域が、封止側第2接合パターン421内における平面視領域より広いが、これに限定されるものでなく、封止側第2接合パターン421内における平面視領域が、封止側第1接合パターン321内における平面視領域より広くてもよい。しかしながら、第2封止部材に、一外部電極端子431,他外部電極端子432を形成しているため、封止側第1接合パターン321内における平面視領域が、封止側第2接合パターン421内における平面視領域より広く、配線パターンの引き回し(導通経路の確保)が容易になり、さらに配線パターンの引き回し領域(導通確保領域)を多くとることが可能となる。
また、水晶振動板2に形成された振動側第1接合パターン251及び振動側第2接合パターン252に比べて、第1封止部材3に形成された封止側第1接合パターン321、及び第2封止部材4に形成された封止側第2接合パターン421は、幅が広い。
上記したように、本実施の形態にかかる水晶振動子101によれば、サンドイッチ構造の水晶振動子101において、ガスの発生を無くし、さらに低背化や小型化ができる。
従来の技術では、別途、Au−Sn等の金属ペースト封止材を印刷やメッキ等で形成する必要があるが、本実施の形態では、封止側第1接合パターン321と振動側第1接合パターン251とが拡散接合され、封止側第2接合パターン421と振動側第2接合パターン252とが拡散接合されるので、別途、金属ペースト封止材を用いる必要がなく、コスト低減に寄与することができる。さらに本実施の形態によれば、真空蒸着やスパッタリング、イオンプレーティング、MBE、レーザーアブレーションなどのPVD法(例えば、フォトリソグラフィ等の加工におけるパターンニング用の膜形成法)により下地PVD膜2511,2521,3211,4211,4311,4321や電極PVD膜2512,2522,3212,4212,4312,4322を形成するので、従前のメッキを使った複数回の膜形成と異なり、一括して膜形成を行い、製造工数を減らすことができ、コスト低減に寄与することができる。
また、現在、圧電振動デバイスのパッケージの小型化が行われており、そのため、異極となるパターン(電極パターン)や端子(電極パッド)が干渉して短絡するなどの不具合を防止しながらAu−Sn等の金属ペースト封止材を印刷することは難しい。これに対して、本実施の形態によれば、金属ペースト封止材を用いずに、夫々下地PVD膜2511,2521,3211,4211と電極PVD膜2512,2522,3212,4212との積層構造となった封止側第1,2接合パターン321,421と振動側第1,2接合パターン251,252とを用いるので、容易に異極となるパターンや端子が干渉して短絡するなどの不具合を防止しながらパターン形成を行うことができる。
また、従来の技術では、上記の通り、別途、Au−Sn等の金属ペースト封止材を用いるが、この金属ペースト封止材を用いた接合の場合、必ず高温で加熱して溶融接合することになり、加熱溶融の際にガスが発生する。このガスを無くす技術は現在開発されておらず、加熱溶融接合の際に内部空間内へのガス侵入は避けられない。これに対して、本実施の形態によれば、封止側第1接合パターン321と振動側第1接合パターン251とが拡散接合され、封止側第2接合パターン421と振動側第2接合パターン252とが拡散接合されるので、ガスの発生を抑え、ガスが内部空間13内に存在することによる振動特性の劣化を防止することができる。なお、当該拡散接合の際に、220度などの常温よりも高い温度をかける場合もあるが、金属ペースト封止材を用いた接合のように高温度(例えば、280度以上)をかけることはない。
また、本実施の形態によれば、封止側第1,2接合パターン321,421と振動側第1,2接合パターン251,252とが、夫々下地PVD膜2511,2521,3211,4211と電極PVD膜2512,2522,3212,4212との積層構造となるので、パターンや端子の幅を細くして細線化することが可能となり、その結果、パターンの引き回しが原因となるパッケージの小型化の妨げを解消することできる。具体的には、本実施の形態によれば、Au−Sn等の金属ペースト封止材による接合を用いた圧電振動デバイスでは実現不可能なパターンや端子の細線化ができる。
また、本実施の形態によれば、封止側第1接合パターン321と振動側第1接合パターン251とが拡散接合され、封止側第2接合パターン421と振動側第2接合パターン252とが拡散接合されるので、高温の加熱溶融接合を行うことはない。そのため、水晶振動子101を外部回路などの外部部材に半田などを用いて接合する際に、接合箇所において再溶融することがなく、リフローや製品の使用環境などにおいて接合状態が変化することはない。
また、封止側第1接合パターン321と振動側第1接合パターン251とが常温拡散接合され、封止側第2接合パターン421と振動側第2接合パターン252とが常温拡散接合されるので、ガスが発生するのを抑え、ガスが内部空間13内に存在することによる振動特性の劣化を防止するのに好適である。また、接合箇所において再溶融することがなく、接合状態が変化することはない。
また、封止側第1接合パターン321と振動側第1接合パターン251とが常温以上230度未満の温度下で拡散接合され、封止側第2接合パターン421と振動側第2接合パターン252とが常温以上230度未満の温度下で拡散接合されるので、ガスが発生するのを抑えながら、接合を良好にすることができる。
また、水晶振動板2の一主面211に形成された第1励振電極221と振動側第1接合パターン251とは同一厚みを有し、第1励振電極221と振動側第1接合パターン251との表面(主面)が同一金属からなり、水晶振動板2の他主面212に形成された第2励振電極222と振動側第2接合パターン252とは同一厚みを有し、第2励振電極222と振動側第2接合パターン252との表面(主面)が同一金属からなるので、第1励振電極221と振動側第1接合パターン251との金属膜の形成を一度で済ませることが可能となり、また第2励振電極222と振動側第2接合パターン252との金属膜の形成を一度で済ませることが可能となる。その結果、第1励振電極221と振動側第1接合パターン251との金属膜を同一にし、第2励振電極222と振動側第2接合パターン252との金属膜を同一にすることが可能となる。
振動側第1接合パターン251と振動側第2接合パターン252とでは、下地PVD膜2511,2521が単一の材料からなり、電極PVD膜2512,2522が単一の材料からなり、下地PVD膜2511,2521よりも電極PVD膜2512,2522の方が厚いので、下地PVD膜2511,2521を構成する単一の材料が、電極PVD膜2512,2522に拡散するのを防止することが可能となる。
振動側第1接合パターン251と振動側第2接合パターン252と封止側第1接合パターン321と封止側第2接合パターン421との各下地PVD膜2511,2521,3211,4211の厚みに対して、外部電極端子(一外部電極端子431,他外部電極端子432)の下地PVD膜4311,4321の厚みが厚いので、第1封止部材3と第2封止部材4と水晶振動板2との接合を安定させながら、外部電極端子(一外部電極端子431,他外部電極端子432)では外部と電気的に接続するため(例えば、半田実装など)、下地金属((一外部電極端子431,他外部電極端子432)の下地PVD膜4311,4321)を外部と電気的に接続するために有効に利用することが可能となる。なお、 振動側第1接合パターン251と振動側第2接合パターン252と封止側第1接合パターン321と封止側第2接合パターン421と外部電極端子(一外部電極端子431,他外部電極端子432)との各下地PVD膜2511,2521,3211,4211,4311,4321の厚みを同じとした場合、外部電極端子(一外部電極端子431,他外部電極端子432)を用いた外部との電気的に接続(例えば、半田実装など)を行うことができない。
電極PVD膜2512,2522,3212,4212にAuが用いられるので、振動側第1接合パターン251と振動側第2接合パターン252と封止側第1接合パターン321と封止側第2接合パターン421との各表面を酸化させ難くし、振動側第1接合パターン251と振動側第2接合パターン252と封止側第1接合パターン321と封止側第2接合パターン421との接合前処理に高度な特殊前処理が不要となる。その結果、製造コストを抑えることができる。ここでいう製造前処理に関して、本構成によれば、雰囲気環境を例えば、超高真空などにしなくてもよい。
振動側第1接合パターン251と振動側第2接合パターン252と封止側第1接合パターン321と封止側第2接合パターン421は、非Snパターンであるので、接合時に高温加熱を必要としなく、高温加熱接合による不具合(再溶融)がない。
すなわち、本実施の形態によれば、別途、金属ペースト封止材を用いることがなく、コスト低減に寄与することができる。さらに本実施の形態によれば、真空蒸着やスパッタリング、イオンプレーティング、MBE、レーザーアブレーションなどのPVD法(例えば、フォトリソグラフィ等の加工におけるパターンニング用の膜形成法)により下地PVD膜2511,2521,3211,4211や電極PVD膜2512,2522,3212,4212を形成するので、コスト低減に寄与することができる。
また、Snを用いない非Snパターンによれば、パターンの細線化が可能となり、異極となるパターンや端子が干渉して短絡するなどの不具合が生じない。
また、下地PVD膜2511,2521,3211,4211にCrを用いた場合、抵抗加熱蒸着に好適である。
また、第1封止部材3と第2封止部材4には、曲げ剛性(断面二次モーメント×ヤング率)が1000[N・mm2]以下の絶縁(脆性)材料が用いられているので、接合に必要な変形量を満たすことが可能となる。そのため、例えば、第1励振電極221や第2励振電極222などの電極表面を、通常の接合に必要な1nm以下の表面粗さ(Ra)に成形しなくても、上記の範囲内の曲げ剛性とすることで、拡散接合を行うことが可能となる。
また、別途接合専用材を用いずに、封止側第1接合パターン321と振動側第1接合パターン251とが加圧拡散接合され、封止側第2接合パターン421と振動側第2接合パターン252とが加圧拡散接合されるので、小型化、特に低背化に寄与することが可能となり、接合専用材を用いた場合は、低背化の限界があるが、この限界を超えた低背化を可能とする。
また、封止側第1接合パターン321と振動側第1接合パターン251とが拡散接合された接合パターンの厚みは、封止側第2接合パターン421と振動側第2接合パターン252とが拡散接合された接合パターンの厚みと同じで、外部と電気的に接続した外部電極端子(一外部電極端子431,他外部電極端子432)の厚みと異なるので、拡散接合時に下地PVD膜2511,2521,3211,4211の拡散を確実に防ぐことができ、さらに第1封止部材3、第2封止部材4、及び水晶振動板2への各下地PVD膜2511,2521,3211,4211の接合強度を高めることが可能となる。その上で、外部電極端子(一外部電極端子431,他外部電極端子432)では外部と電気的に接続するため(例えば、半田実装など)、下地PVD膜4311,4321を外部と電気的に接続するために有効に利用することが可能となる。
また、第2封止部材4において内部空間13の外方に配された貫通孔(第2貫通孔441,第3貫通孔442)が形成されるので、貫通孔(第2貫通孔441,第3貫通孔442)の影響が内部空間13に及ぶことなく、貫通孔(第2貫通孔441,第3貫通孔442)が内部空間13の内方に配された構成に比べて、貫通孔(第2貫通孔441,第3貫通孔442)が原因となる気密不良を避けることができる。
また、本実施の形態と異なり、貫通孔を内部空間内に配置した場合、内部空間の気密を確保する必要があり、内部空間内の貫通孔を金属等により埋める工程が必要となる。これに対して、本実施の形態によれば、貫通孔(第2貫通孔441,第3貫通孔442)が内部空間13の外方に形成されるので、振動側第1接合パターン251と振動側第2接合パターン252と封止側第1接合パターン321と封止側第2接合パターン421とのパターン形成と同じ工程で配線パターンの引き回しができ、製造コストを抑えることができる。
また、封止側第1接合パターン321と封止側第2接合パターン421とが平面視において重畳しないので、封止側第1接合パターンと封止側第2接合パターン421とによって浮遊容量が発生するのを防止することができる。
また、パッケージの小型化により、振動側第1接合パターン251と振動側第2接合パターン252との接合用パターンの幅は狭くなる。特に、振動領域を可能な限り広く確保することによって、不要振動モードとのカップリングを防ぐことが可能となるので、接合用パターンの幅を狭くすることが望まれる。一方、第1封止部材3や第2封止部材4は、振動部よりも寸法制約が緩いため、封止側第1接合パターン321と封止側第2接合パターン421との接合用パターンの幅を広くすることができ、その結果、接合時の位置合わせ精度の自由度を高めることができる。
また、本実施の形態によれば、水晶振動子101のパッケージの高さにバラつきが生じない。例えば、本実施の形態と異なり、封止部材(本実施の形態でいう第1封止部材3,第2封止部材4)と水晶振動板2とのギャップが1μmより大きくなるSn接合材のような金属ペースト封止材を用いた場合、金属ペースト封止材をパターン(振動側第1接合パターン251、振動側第2接合パターン252、封止側第1接合パターン321、封止側第2接合パターン421)上に形成する際の高さにバラつきが生じる。また、接合後においても、形成されたパターン(振動側第1接合パターン251、振動側第2接合パターン252、封止側第1接合パターン321、封止側第2接合パターン421)の熱容量分布により均一なギャップ(本実施の形態でいう第1封止部材3と水晶振動板2とのギャップや、本実施の形態でいう第2封止部材4と水晶振動板2とのギャップ)にならない。そのため、従来の技術では、第1封止部材、第2封止部材、圧電振動板の3枚の部材が積層された構造の場合、これら3枚の部材間での各々ギャップに差が生じる。その結果、積層された3枚の部材は、平行を保てない状態で接合されてしまう。特に、この問題は低背化に伴い顕著になる。そこで、本実施の形態では、ギャップの上限が1.00μmに設定されているため、第1封止部材3、第2封止部材4、水晶振動板2の3枚の部材を平行を保った状態で積層して接合することができ、本実施の形態は低背化に対応できる。
なお、本実施の形態では、第1封止部材3及び第2封止部材4にガラスを用いているが、これに限定されるものではなく、水晶を用いてもよい。
また、本実施の形態では、圧電振動板に水晶を用いているが、これに限定されるものではなく、圧電材料であれば他の材料であってもよく、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム等であってもよい。
また、本実施の形態では、接合材11として、Ti(もしくはCr)とAuを用いているが、これに限定されるものではなく、接合材11を例えばNiとAuとから構成してもよい。
また、本実施の形態では、振動側第1接合パターン251と振動側第2接合パターン252と封止側第1接合パターン321と封止側第2接合パターン421に、Ti(もしくはCr)とAuが含まれているが、これに限定されるものではなく、Cu(Cu単体かCu合金)が含まれてもよい。この場合、製造時(接合時、加圧などの外力が発生することによる衝撃時など)や使用時(落下などの外力が発生することによる衝撃時、はんだ実装時など)の応力緩和に寄与することができる。つまり、振動側第1接合パターン251と振動側第2接合パターン252と封止側第1接合パターン321と封止側第2接合パターン421にCuが含まれることにより機械的強度が向上する。
また、下地PVD膜2511,2521,3211,4211にCrを用いた場合、Crが電極PVD膜2512,2522,3212,4212に拡散するのを、Cuを下地PVD膜2511,2521,3211,4211に含むことで抑制することができる。その結果、Crを用いた層を厚くしても、Crが電極PVD膜2512,2522,3212,4212に拡散するのを抑制することができ、Crを用いた層を厚くすることができて製造ばらつきを抑えることができる。実際に、Crの層を0.2μmとしてもCrが電極PVD膜2512,2522,3212,4212に拡散するのを抑制することができる。
また、本実施の形態では、第2封止部材4が1枚のガラスウエハから成形された直方体の基板であるが、これに限定されるものではなく、ガラスウエハから成形された2つの直方体であってもよい。この場合、1つの直方体の基板に、封止側第2接合パターン421と第3貫通孔442と他外部電極端子432とを形成し、この基板により気密封止を行い、もう一方の直方体の基板に、第2貫通孔441と一外部電極端子431を形成する構成となる。本構成によれば、一対の外部電極端子(一外部電極端子431,他外部電極端子432)を完全に分離させることができ、短絡を防ぐことができる。また、ガラスウエハではなく、金属材料により2つの直方体の第2封止部材4を成形した場合、さらに第3貫通孔442を形成する必要もなく、貫通孔の数を少なくして小型化に寄与できる。
また、本実施の形態では、図1〜7に示すような第1引出電極223,第2引出電極224を形成しているが、これに限定されるものではなく、第1引出電極223,第2引出電極224の任意の位置の最上層にCrを用い、さらに第1引出電極223,第2引出電極224と振動側第1接合パターン251,振動側第2接合パターン252との間に隙間があってもよい。特に、隙間は、振動側封止部25上に設けられることが好ましい。このような構成とすることで、製造工程において加熱溶融接合を行う前までは、第1引出電極223,第2引出電極224と、振動側第1接合パターン251,振動側第2接合パターン252とが電気接続されないことになる。その結果、振動検査を行う検査工程において励振電極(第1励振電極221、第2励振電極222)のみを対象とした様々な検査を行うことができ、振動検査の自由度が増す。
また、本実施の形態では、圧電振動デバイスとして水晶振動子を用いているが、これに限定されるものではなく、下記のように水晶発振器(図8参照)であってもよい。以下、圧電振動を行う圧電振動デバイスとして水晶発振器に本発明を適用した場合を示す。なお、便宜上、上記の水晶振動子101と共通の構成について同一符号を付す。また、共通の構成によって生じる作用効果も図1に示す水晶振動子101と同様であり、以下の説明では省略する。
−水晶発振器−
本実施の形態にかかる水晶発振器102では、図8に示すように、水晶振動板2(本発明でいう圧電振動板)と、水晶振動板2の第1励振電極221(図11参照)を覆い、水晶振動板2の一主面211に形成された第1励振電極221を気密封止する第1封止部材3と、この水晶振動板2の他主面212に、水晶振動板2の第2励振電極222(図12参照)を覆い、第1励振電極221と対になって形成された第2励振電極222を気密封止する第2封止部材4と、第1封止部材に搭載された圧電振動素子以外の電子部品素子(本実施の形態ではIC5)とが設けられている。
この水晶発振器102では、水晶振動板2と第1封止部材3とが接合され、水晶振動板2と第2封止部材4とが接合されてサンドイッチ構造のパッケージ12が構成される。
そして、水晶振動板2を介して第1封止部材3と第2封止部材4とが接合されることで、パッケージ12の内部空間13が形成され、このパッケージ12の内部空間13に、水晶振動板2の両主面211,212に形成された第1励振電極221及び第2励振電極222を含む振動部23が気密封止されている。なお、内部空間13は、図8に示すようにパッケージ12の平面視一端側(平面視左側)に偏って位置する。
本実施の形態にかかる水晶発振器102は、1.2×1.0mmのパッケージサイズであり、小型の低背化を図ったものである。また、小型化に伴い、本パッケージ12では、キャスタレーションを形成せずに、貫通孔(第4貫通孔262〜第18貫通孔446)を用いて電極の導通を図っている。
次に、上記した水晶発振器102の各構成について図8〜14を用いて説明する。なお、ここでは、水晶振動板2と第1封止部材3と第2封止部材4が接合されていないそれぞれ単体として構成されている各部材について説明を行う。
水晶振動板2は、図11,12に示すように、圧電材料である水晶からなり、その両主面(一主面211,他主面212)が平坦平滑面(鏡面加工)として成形されている。
また、水晶振動板2の両主面211,212(一主面211,他主面212)に一対の(対となる)励振電極(第1励振電極221,第2励振電極222)が形成されている。そして、両主面211,212には、一対の第1励振電極221,第2励振電極222を囲うように2つの切り欠き部24(貫通形状)が形成されて振動部23が構成されている。切り欠き部24は、平面視凹形状体241(1つの平面視長方形の両端から2つの長方形夫々が、長方形の長手方向に対して直角方向に延出して成形された3つの平面視長方形からなる平面視体)と、平面視長方形状体242となり、平面視凹形状体241と平面視長方形状体242との間が、第1励振電極221及び第2励振電極222を外部電極端子(下記参照)に引き出すための引出電極(第1引出電極223,第2引出電極224)を配する導通路213となっている。電極パターンに関して、一対の第1励振電極221,第2励振電極222夫々から引き出された第1引出電極223,第2引出電極224は、振動側第1接合パターン251及び振動側第2接合パターン252を介して、第1封止部材3に形成された電極パターン33に電気的に接続されている。
この水晶振動板2では、両主面211,212の振動部23に沿った外方に、振動部23を囲むように第1封止部材3と第2封止部材4とを接合するための振動側封止部25がそれぞれ設けられている。振動側封止部25は、図11,12に示すように両主面211,212の平面視左側に偏って位置する。
この水晶振動板2の一主面211の振動側封止部25に、第1封止部材3に接合するための振動側第1接合パターン251が形成され、第1励振電極221は振動側第1接合パターン251に繋がる。振動側第1接合パターン251は、一主面211上に物理的気相成長させて形成された下地PVD膜2511と、下地PVD膜2511上に物理的気相成長させて積層形成された電極PVD膜2512とからなる。また、水晶振動板2の他主面212の振動側封止部25に、第2封止部材4に接合するための振動側第2接合パターン252が形成され、第2励振電極222は振動側第2接合パターン252に繋がる。振動側第2接合パターン252は、他主面212上に物理的気相成長させて形成された下地PVD膜2521と、下地PVD膜2521上に物理的気相成長させて積層形成された電極PVD膜2522とからなる。内部空間13は、振動側第1接合パターン251および振動側第2接合パターン252の内方(内側)に形成されることになる。
振動側第1接合パターン251と振動側第2接合パターン252とは、同一構成からなり、複数の層が両主面211,212の振動側封止部25上に積層して構成され、その最下層側からTi層(もしくはCr層)とAu層とが蒸着形成されている。このように、振動側第1接合パターン251と振動側第2接合パターン252とでは、下地PVD膜2511,2521が単一の材料(Ti(もしくはCr))からなり、電極PVD膜2512,2522が単一の材料(Au)からなり、下地PVD膜2511,2521よりも電極PVD膜2512,2522の方が厚い。また、水晶振動板2の一主面211に形成された第1励振電極221と振動側第1接合パターン251とは同一厚みを有し、第1励振電極221と振動側第1接合パターン251との表面(主面)が同一金属からなり、水晶振動板2の他主面212に形成された第2励振電極222と振動側第2接合パターン252とは同一厚みを有し、第2励振電極222と振動側第2接合パターン252との表面(主面)が同一金属からなる。また、振動側第1接合パターン251と振動側第2接合パターン252は、非Snパターンである。なお、同一主面上において同一金属で同一厚みの構成であって、振動側第1,2接合パターン251,252と振動側(第1励振電極221,第2励振電極222)とを比較した場合、最上層(少なくとも露出している面)の金属(電極PVD膜2512,2522等)が同一であれば、その下地金属(下地PVD膜2511,2521)の種類や厚みが異なっても接合を行うことは可能である。また、振動側第1接合パターン251及び封止側第2接合パターン421では、それぞれ電極PVD膜2512,2522が平面視うろこ状体の表面となる。ここでいううろこ状体とは、活性化されて微視的に個片状体となった金属が畳敷のように重ね合わされて、平面視において隙間が無い(もしくは殆どない)形態のことをいう。
また、水晶振動板2には、図11,12に示すように、貫通孔(第4貫通孔262,第5貫通孔263,第6貫通孔264,第7貫通孔265,第8貫通孔266)が形成され、第4貫通孔262を介して、第2励振電極222に繋がった振動側第2接合パターン252が一主面211側に引き出されている。また、第5貫通孔263は、第1封止部材3の第10貫通孔342及び第2封止部材4の第15貫通孔443に繋がるものであり、IC5を第1外部電極端子433に導通するための導通路である。また、第6貫通孔264は、第1封止部材3の第11貫通孔343及び第2封止部材の第16貫通孔444に繋がるものであり、IC5を第2外部電極端子434に導通するための導通路である。また、第7貫通孔265は、第1封止部材3の第12貫通孔344及び第2封止部材の第17貫通孔445に繋がるものであり、IC5を第3外部電極端子435に導通するための導通路である。また、第8貫通孔266は、第1封止部材3の第13貫通孔345及び第2封止部材の第18貫通孔446に繋がるものであり、IC5を第4外部電極端子436に導通するための導通路である。これら第4貫通孔262,第5貫通孔263,第6貫通孔264,第7貫通孔265,第8貫通孔266は、内部空間13の外方に形成されている。また、第4貫通孔262,第5貫通孔263,第6貫通孔264,第7貫通孔265,第8貫通孔266は、内部空間13の内方に形成されない。ここでいう内部空間13の内方とは、接合材11上を含まずに厳密に接合材11の内周面の内側のことをいう。
第1封止部材3には、曲げ剛性(断面二次モーメント×ヤング率)が1000[N・mm2]以下の材料が用いられている。具体的には、第1封止部材3は、図9,10に示すように、1枚のガラスウエハから形成された直方体の基板であり、この第1封止部材3の他主面312(水晶振動板2に接合する面)と一主面311(IC5を搭載する面)は平坦平滑面(鏡面加工)として成形されている。
この第1封止部材3の他主面312には、水晶振動板2に接合するための封止側第1封止部32が設けられている。封止側第1封止部32は、図10に示すように第1封止部材3の他主面312の平面視左側に偏って位置する。
第1封止部材3の封止側第1封止部32に、水晶振動板2に接合するための封止側第1接合パターン321が形成されている。封止側第1接合パターン321は、第1封止部材3の封止側第1封止部32上の全ての位置において同一幅とされる。
この封止側第1接合パターン321は、第1封止部材3上に物理的気相成長させて形成された下地PVD膜3211と、下地PVD膜3211上に物理的気相成長させて積層形成された電極PVD膜3212とからなる。なお、本実施の形態では、下地PVD膜3211には、Ti(もしくはCr)が用いられ、電極PVD膜3212にはAuが用いられている。また、封止側第1接合パターン321は、非Snパターンである。具体的には、封止側第1接合パターン321は、複数の層が他主面312の封止側第1封止部32上に積層して構成され、その最下層側からTi層(もしくはCr層)とAu層とが蒸着形成されている。また、封止側第1接合パターン321では、電極PVD膜3212が平面視うろこ状体の表面となる。
また、第1封止部材3の一主面311には、発振回路素子であるIC5を搭載する搭載パッドを含む6つの電極パターン33が形成されている。これら6つの電極パターン33は、それぞれ個別に第9貫通孔341,第10貫通孔342,第11貫通孔343,第12貫通孔344,第13貫通孔345,第14貫通孔346に導かれている。なお、第10貫通孔342,第11貫通孔343,第12貫通孔344,第13貫通孔345は、発振器用導通を図るための貫通孔であり、第9貫通孔341(第2励振電極222の導通を図るための貫通孔),第14貫通孔346(第1励振電極221の導通を図るための貫通孔)は、水晶振動板2用導通を図るための貫通孔である。
第2封止部材4には、曲げ剛性(断面二次モーメント×ヤング率)が1000[N・mm2]以下の材料が用いられている。具体的には、第2封止部材4は、図13,14に示すように、1枚のガラスウエハから形成された直方体の基板であり、この第2封止部材4の一主面411(水晶振動板2に接合する面)は平坦平滑面(鏡面加工)として成形されている。
この第2封止部材4の一主面411には、水晶振動板2に接合するための封止側第2封止部42が設けられている。封止側第2封止部42は、図13に示すように第2封止部材4の一主面411の平面視左側に偏って位置する。
また、第2封止部材4の他主面412(水晶振動板2に面しない外方の主面)には、外部に電気的に接続する4つの外部電極端子(第1外部電極端子433,第2外部電極端子434,第3外部電極端子435,第4外部電極端子436)が設けられている。第1外部電極端子433,第2外部電極端子434,第3外部電極端子435,第4外部電極端子436は、4つの角部にそれぞれ位置する。これら外部電極端子(第1外部電極端子433,第2外部電極端子434,第3外部電極端子435,第4外部電極端子436)は、他主面412上に物理的気相成長させて形成された下地PVD膜4331,4341,4351,4361と、下地PVD膜4331,4341,4351,4361上に物理的気相成長させて積層形成された電極PVD膜4332,4342,4352,4362とからなる。また、上記の振動側第1接合パターン251と振動側第2接合パターン252と封止側第1接合パターン321と封止側第2接合パターン421との各下地PVD膜2511,2521,3211,4211の厚みに対して、外部電極端子(第1外部電極端子433,第2外部電極端子434,第3外部電極端子435,第4外部電極端子436)の下地PVD膜4331,4341,4351,4361の厚みが厚い。
また、第2封止部材4の封止側第2封止部42に、水晶振動板2に接合するための封止側第2接合パターン421が形成されている。封止側第2接合パターン421は、第2封止部材4の封止側第2封止部42上の全ての位置において同一幅とされる。
この封止側第2接合パターン421は、第2封止部材4上に物理的気相成長させて形成された下地PVD膜4211と、下地PVD膜4211上に物理的気相成長させて積層形成された電極PVD膜4212とからなる。なお、本実施の形態では、下地PVD膜4211には、Ti(もしくはCr)が用いられ、電極PVD膜4212にはAuが用いられている。また、封止側第2接合パターン421は、非Snパターンである。具体的には、封止側第2接合パターン421は、複数の層が一主面411の封止側第2封止部42上に積層して構成され、その最下層側からTi層(もしくはCr層)とAu層とが蒸着形成されている。また、封止側第2接合パターン421では、電極PVD膜4212が平面視うろこ状体の表面となる。
また、第2封止部材4には、図8,13,14に示すように、4つの貫通孔(第15貫通孔443,第16貫通孔444,第17貫通孔445,第18貫通孔446)が形成されている。これら第15貫通孔443,第16貫通孔444,第17貫通孔445,第18貫通孔446は、内部空間13の外方に配され、第15貫通孔443,第16貫通孔444,第17貫通孔445,第18貫通孔446は、内部空間13の内方に形成されない。
上記構成からなる水晶発振器102では、従来の技術のように別途接合専用材を用いずに、水晶振動板2と第1封止部材3とが振動側第1接合パターン251及び封止側第1接合パターン321を重ね合わせた状態で拡散接合され、水晶振動板2と第2封止部材4とが振動側第2接合パターン252及び封止側第2接合パターン421を重ね合わせた状態で拡散接合されて、図8に示すサンドイッチ構造のパッケージ12が製造される。なお、振動側第1接合パターン251及び封止側第1接合パターン321自身が拡散接合後に生成される接合材11となり、振動側第2接合パターン252及び封止側第2接合パターン421自身が拡散接合後に生成される接合材11となる。本実施の形態では、拡散接合を常温(5度〜35度)で行っている。しかしながら、常温拡散接合だけに限定されるものではなく、常温以上230度未満の温度下で拡散接合されていればよい。特に、200度以上230度未満の温度下において拡散接合することで、Pbフリー半田の融点である230度未満であり、さらにAuの再結晶温度(200度)以上となるので、接合部分の不安定領域を安定化できる。また本実施の形態ではAu−Snといった接合専用材を使用していないため、メッキガス、バインダーガス、金属ガス等の発生がない。よってAuの再結晶温度以上にすることができる。
また、ここで製造されたパッケージ12では、上記の通り、拡散接合により封止側第1接合パターン321と振動側第1接合パターン251とが接合され、封止側第2接合パターン421と振動側第2接合パターン252とが接合されているが、この接合以外に、封止側第1接合パターン321と振動側第1接合パターン251とが加圧拡散接合され、封止側第2接合パターン421と振動側第2接合パターン252とが加圧拡散接合されてもよい。この場合、加圧することで接合箇所を確保し易くなり(接合面積を実質的に増やすことができ)、高温加熱を用いずに拡散接合のみによる接合をさらに良好に行うことができる。
また、ここで製造されたパッケージ12では、第1封止部材3と水晶振動板2とは、1.00μm以下のギャップを有し、第2封止部材4と水晶振動板2とは、1.00μm以下のギャップを有する。つまり、第1封止部材3と水晶振動板2との間の接合材11の厚みが、1.00μm以下であり、第2封止部材4と水晶振動板2との間の接合材11の厚みが、1.00μm以下(具体的には、本実施の形態のAu−Au接合では0.15μm〜1.00μm)である。なお、比較として、Snを用いた従来の金属ペースト封止材では、5μm〜20μmとなる。
また、封止側第1接合パターン321と振動側第1接合パターン251とが拡散接合された接合パターンの厚みは、封止側第2接合パターン421と振動側第2接合パターン252とが拡散接合された接合パターンの厚みと同じで、外部と電気的に接続した外部電極端子(第1外部電極端子433,第2外部電極端子434,第3外部電極端子435,第4外部電極端子436)の厚みと異なる。
また、ここで製造されたパッケージ12では、図8に示すように、内部空間13が平面視左側に偏って位置する。また、第1封止部材3に形成された封止側第1接合パターン321と、第2封止部材4に形成された封止側第2接合パターン421とは、平面視において重畳しない。具体的には、封止側第1接合パターン321内における平面視領域が、封止側第2接合パターン421内における平面視領域より広い。なお、本実施の形態では、封止側第1接合パターン321内における平面視領域が、封止側第2接合パターン421内における平面視領域より広いが、これに限定されるものでなく、封止側第2接合パターン421内における平面視領域が、封止側第1接合パターン321内における平面視領域より広くてもよい。しかしながら、第2封止部材に、外部電極端子(第1外部電極端子433,第2外部電極端子434,第3外部電極端子435,第4外部電極端子436)を形成しているため、封止側第1接合パターン321内における平面視領域が、封止側第2接合パターン421内における平面視領域より広くなる。したがって、配線パターンの引き回し(導通経路の確保)が容易になり、さらに配線パターンの引き回し領域(導通確保領域)を多くとることができる。
また、水晶振動板2に形成された振動側第1接合パターン251及び振動側第2接合パターン252に比べて、第1封止部材3に形成された封止側第1接合パターン321、及び第2封止部材4に形成された封止側第2接合パターン421の幅が広い。
また、本実施の形態では、IC5を設けるためのスペースを水晶振動板2に設けなくてもよく、パッケージの低背化を行うことができる。また、第1封止部材3の一主面に形成するIC5用のパターンを変えるだけで任意の発振条件に対応させることができる。また、IC5の裏面にマーキングが可能となり、第1封止部材3に透明部材料を用いた場合であっても特殊マーキングが不要となる。また、従来の技術では、第1封止部材3や水晶振動板2などに凹部を設けて、前記発振回路素子を必ず前記凹部に実装していたため、圧電振動デバイスの外形は必ず発振回路素子よりも大きくなっていた。しかしながら、本実施の形態によれば、第1封止部材3では、一主面311にIC5が設けられ、他主面312が水晶振動板2の一主面211に接合されるので、IC5のサイズと水晶発振器102のサイズとを同じにすることができ、小型化及び低背化に有利である。
また、水晶振動板2に形成された振動側第1接合パターン251及び振動側第2接合パターン252に比べて、第1封止部材3に形成された封止側第1接合パターン321、及び第2封止部材4に形成された封止側第2接合パターン421は、幅が広い。
上記の通り、本実施の形態にかかる水晶発振器102によれば、上記のサンドイッチ構造の水晶振動子101と同様に、ガスの発生を無くし、さらに低背化や小型化ができる。さらに、上記のサンドイッチ構造の水晶振動子101と同様の構成については同様の作用効果を有する。
なお、本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
例えば、上記の本実施の形態にかかる水晶発振器102では、外部端子を第1外部電極端子433、第2外部電極端子434、第3外部電極端子435、第4外部電極端子436の4端子としているが、これに限定されるものではなく、外部端子を6端子や8端子といった任意の端子のものについても本発明を適用することができる。