JP2015120286A - 媒体搬送制御方法およびプリンター - Google Patents

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Abstract

【課題】目標位置に対する移動部材の位置偏差をゼロとする不感帯を設けた場合でも、位置偏差に基づいて媒体供給モーターを滑らかに駆動できるプリンターを提供すること。【解決手段】プリンター1は記録紙3を搬送する搬送機構12と、ロール紙2を回転させるための給紙モーター25と、ロール紙2と搬送機構12との間で記録紙3に作用する張力の変動に追従して移動する移動部材27を有する。移動部材27の許容移動領域E0には目標位置27Cを含む不感帯E1が設定されている。給紙モーター駆動制御部36は、記録紙3の搬送中に不感帯E1に対する移動部材27の位置偏差ΔLを周期的に取得し、位置偏差ΔLに基づいて給紙モーター25を駆動制御して移動部材27を目標位置27Cに位置させる。位置偏差ΔLが目標位置27Cに対するものではないので、移動部材27が不感帯E1の境界を越えて移動する際に、給紙モーター25の制御量の変動が少ない。【選択図】図4

Description

本発明は、ロール体から繰り出されて搬送される長尺状の媒体の張力の変動を抑制できる媒体搬送制御方法およびプリンターに関する。
ロール紙から繰り出される長尺状の記録紙に印刷を施す印刷装置は特許文献1に記載されている。特許文献1では、ロール紙から記録紙を繰り出すためのインフィードローラーと記録紙を搬送しながら印刷を行う印刷ユニットの間に、記録紙に張力を付与する可動ローラーが配置されている。可動ローラーは記録紙に作用する張力の変動に追従して移動可能とされており、インフィードローラーを駆動するモーターは可動ローラーを予め設定した目標位置に位置させるように駆動制御されている。すなわち、記録紙の搬送時には目標位置に対する可動ローラーの位置偏差が定期的に取得されており、モーターはこの位置偏差を小さくするようにフィードバック制御されている。特許文献1では、可動ローラーの位置偏差が小さい範囲を不感帯とし、可動ローラーが不感帯に位置している間はモーターの制御を変更しないようにしている。
特開2001−278518号公報
特許文献1のように、目標位置を含む所定の範囲に不感帯を設け、移動部材(可動ローラー)が不感帯に位置している間の移動部材の位置偏差をゼロとしてモーターを駆動制御すれば、振動などの僅かな外乱によって移動部材の位置が変動したときにモーターが過度に敏感に応答することを抑制でき、モーターを滑らかに駆動できる。
しかし、目標位置の含む所定の範囲に位置偏差をゼロとする不感帯を設けた場合には、移動部材が不感帯の境界を越えて移動する時に、位置偏差の値がゼロから本来の値(目標位置に対する移動部材の位置偏差の値)に急激に変化する。このため、移動部材が不感帯の境界を越えて移動すると、モーターは位置偏差の急激な変動を是正するように大きな制御量で制御される。特に、移動部材の変位に迅速に追従できるように媒体供給モーターを駆動する制御ゲインが大きく設定されている場合には、位置偏差の急激な変化によってモーターの制御量が大きく変動することになる。従って、目標位置を含む所定の範囲に不感帯を設けた場合には、移動部材が不感帯の境界を越えて移動するときに、モーターの駆動に起因して記録紙に作用する張力が変動する可能性がある。このような張力の変動は記録紙の搬送精度に影響を与える可能性があり、記録紙の搬送精度が低下すると印刷品質の低下を招くという問題がある。
本発明の課題は、このような点に鑑みて、張力変動に追従する移動部材の位置偏差に基づいて媒体供給モーターを駆動制御して記録紙の張力変動を抑制する際に、位置偏差をゼロとする不感帯を設けた場合でも、媒体供給モーターを滑らかに駆動できる媒体搬送方法およびプリンターを提供することにある。
上記の課題を解決するために、本発明は、ロール体から繰り出される長尺状の媒体を搬送する搬送機構と、前記ロール体を回転させるための媒体供給モーターとを有する媒体搬送装置の媒体搬送制御方法において、前記ロール体と前記搬送機構との間に前記媒体に作用する張力の変動に追従して移動可能な移動部材を配置し、前記移動部材の可動領域内に目標位置および当該目標位置を含む不感帯を設定し、前記搬送機構による前記媒体の搬送中に、前記不感帯に対する前記移動部材の位置偏差を連続的あるいは間欠的に取得して当該位置偏差に基づいて前記媒体供給モーターを駆動制御して前記移動部材を前記目標位置に位置させることを特徴とする。
本発明では、媒体搬送モーターを駆動制御するための移動部材の位置偏差を、目標位置を含む範囲に設定した不感帯に対するものとしている。従って、移動部材が不感帯に位置する間は、位置偏差はゼロとなる。また、移動部材が不感帯から外れたときには、位置偏差は不感帯における移動部材に近い側の境界位置に対するものとなり、目標位置に対する位置偏差と比較して小さな値となる。この結果、移動部材が不感帯の境界を越えて移動する際の位置偏差の変化量が抑制される。従って、移動部材が不感帯の境界を越えて移動した場合でも、媒体供給モーターが位置偏差の急激な変動を是正するように大きな制御量で駆動されることがなく、滑らかに駆動される。よって、媒体供給モーターの駆動に起因して記録紙に作用する張力が変動して、記録紙の搬送精度に影響を与えてしまうことを防止できる。
本発明において、前記不感帯を、前記目標位置を中心として前記移動部材の移動方向で対称に設定することが望ましい。このようにすれば、記録紙に作用する張力が高くなるように変化した場合でも、記録紙に作用する張力が低くなるように変化した場合でも、媒体供給モーターを同様に制御できる。
本発明において、移動部材の移動に媒体供給モーターの駆動を迅速に追従させて記録紙に作用する張力の変動を抑制するためには、前記位置偏差を一定周期で取得し、前記位置偏差に基づくPID制御によって前記媒体供給モーターを駆動するものとすることができる。
次に、本発明は、ロール体から繰り出される長尺状の媒体を搬送する搬送機構と、前記ロール体を回転させるための媒体供給モーターと、を有するプリンターにおいて、前記ロール体と前記搬送機構との間に配置され、前記媒体に作用する張力の変動に追従して移動可能な移動部材と、前記移動部材の可動領域内に設定された目標位置および当該目標位置を含む不感帯と、前記移動部材の移動位置を検出する検出器と、前記搬送機構による前記媒体の搬送中に、前記不感帯に対する前記移動位置の位置偏差を連続的あるいは間欠的に取得し、前記位置偏差に基づいて前記媒体供給モーターを駆動して前記移動部材を前記目標位置に位置させる制御部と、を備えることを特徴とする。
本発明では、媒体搬送モーターを駆動制御するための移動部材の位置偏差を、目標位置を含む範囲に設定した不感帯に対するものとしている。従って、移動部材が不感帯に位置する間は、制御部において取得される位置偏差はゼロとなる。一方、移動部材が不感帯から外れたときには、制御部において取得される位置偏差は不感帯における移動部材に近い側の境界位置に対するものとなり、目標位置に対する位置偏差と比較して小さな値となる。この結果、移動部材が不感帯の境界を越えて移動する際の位置偏差の変化量が抑制される。従って、移動部材が不感帯の境界を越えて移動した場合でも、制御部は、位置偏差の急激な変動を是正するように大きな制御量で媒体供給モーターを駆動することがなく、滑らかに駆動する。よって、媒体供給モーターの駆動に起因して記録紙に作用する張力が変動して、記録紙の搬送精度に影響を与えてしまうことを防止できる。
本発明において、前記不感帯は、前記目標位置を中心として前記移動部材の移動方向で対称に設定されていることが望ましい。このようにすれば、記録紙に作用する張力が高くなるように変化した場合でも、記録紙に作用する張力が低くなるように変化した場合でも、媒体供給モーターを同様に制御できる。
本発明において、移動部材の移動に媒体供給モーターの駆動を迅速に追従させて記録紙に作用する張力の変動を抑制するためには、前記制御部は、前記位置偏差に基づくPID制御によって前記媒体供給モーターを駆動するものとすることができる。
本発明によれば、媒体搬送モーターを駆動制御するための移動部材の位置偏差を、目標位置を含む範囲に設けた不感帯に対するものとしているので、移動部材が不感帯の境界を越えて移動する場合でも媒体供給モーターを滑らかに駆動できる。従って、モーターの駆動に起因して記録紙に作用する張力が変動し、記録紙の搬送精度に影響を与えることを防止できる。
本発明を適用したプリンターの概略構成図である。 移動部材が移動する許容移動領域に設定された不感帯の説明図である。 図1のプリンターの制御系を示す概略ブロック図である。 移動部材の位置偏差と給紙モーターの制御量の関係を示す説明図である。
以下に、図面を参照して、本発明を適用したプリンターの実施の形態を説明する。
図1は本発明を適用したプリンターの概略構成図である。図2は移動部材の許容移動領域に設けられた不感帯の説明図である。本例のプリンター1はロール紙(ロール体)2から繰り出される長尺状の記録紙(媒体)3に印刷を施すロール紙プリンターである。また、本例のプリンター1は印刷ヘッド5としてライン型のインクジェットヘッドを備えるラインプリンターである。図1に示すように、プリンター1は、想像線で示すプリンター筐体6の内部に、ロール紙2を収納するロール紙収納部7と、ロール紙2から引き出された記録紙3を搬送するための紙搬送路8を備えている。紙搬送路8は、ロール紙収納部7から印刷ヘッド5による印刷位置Aを経由してプリンター筐体6の前面6aの上側部分に設けられた排紙口9に達している。印刷ヘッド5はロール紙収納部7よりも上方に配置されている。
印刷ヘッド5の下方にはプラテンユニット11が配置されている。プラテンユニット11は印刷ヘッド5と所定のギャップを開けて対向するプラテン面11aを備えている。印刷位置Aはプラテン面11aによって規定されている。プラテンユニット11には、記録紙3を紙搬送路8に沿って搬送するための搬送機構12が搭載されている。
搬送機構12は、無端の搬送ベルト15と、この搬送ベルト15が架け渡されているベルト駆動ローラー16および複数のガイドローラー17〜20を備えている。また、搬送機構12は駆動源として搬送モーター21を備えている。搬送モーター21の駆動力はベルト駆動ローラー16に伝達され、ベルト駆動ローラー16が回転駆動させることによって搬送ベルト15が回転する。
搬送ベルト15は、プラテンユニット11の上面に沿って水平に延びる水平ベルト部分15aを備えている。水平ベルト部分15aはプラテン面11aを規定している。水平ベルト部分15aにおける搬送方向Dの上流端および下流端には、ピンチローラー22が配置されている。ピンチローラー22は水平ベルト部分15aに押圧されており、記録紙3はピンチローラー22と水平ベルト部分15aの間に挟まれた状態で搬送される。
ロール紙収納部7には媒体供給機構23が配置されている。媒体供給機構23は、ロール紙2の紙芯2aを保持するロール紙装着軸24と、ロール紙装着軸24を回転させるための給紙モーター(媒体供給モーター)25を備えている。給紙モーター25はPWM駆動され、その駆動力は輪列26を介してロール紙装着軸24に伝達される。給紙モーター25が駆動されてロール紙装着軸24が回転すると、ロール紙装着軸24に装着されたロール紙2はロール紙装着軸24と一体に回転する。
紙搬送路8におけるロール紙収納部7と搬送機構12の間には、記録紙3に作用する張力の変動に追従して移動可能な移動部材27が配置されている。移動部材27は、下端部分を記録紙3の紙幅方向と平行に延びる回転中心軸L回りを回転可能に支持された弛みレバー28と、弛みレバー28の上端部分に回転可能に取り付けられた弛みローラー29を備えている。弛みレバー28はコイルバネ30によって所定の付勢力で後方に付勢されている。すなわち、移動部材27はコイルバネ30によって記録紙3に張力を付与する方向に付勢された状態とされている。ここで、ロール紙収納部7に収納されたロール紙2から上方に向かって引き出された記録紙3は、弛みローラー29に架け渡され、当該弛みローラー29に沿って前方に湾曲させられた後に前方に延びている。なお、コイルバネ30の替わりに弛みレバー28に回転中心軸Lの近傍の部位に弦巻バネを配置し、この弦巻バネによって弛みレバー28を弛みローラー29が後方に移動する方向に付勢することもできる。
弛みレバー28の回転中心軸Lの近傍の部位には、移動部材27(弛みレバー28)の移動位置を検出するロータリーエンコーダー(検出器)31が配置されている。ロータリーエンコーダー31は、回転中心軸L回りを弛みレバー28と一体に回動するエンコード盤32と、エンコード盤32の外周縁部分に対峙する固定位置に配置した検出部33を備えている。検出部33からは移動部材27の移動位置を示すA相およびB相のエンコーダー信号が出力される。
ここで、移動部材27は、弛みレバー28が垂直に近い状態まで起立する緊張側限界位置27Aと、弛みレバー28が後方に傾斜した姿勢となる弛み側限界位置27Bの間を移動する。すなわち、緊張側限界位置27Aと弛み側限界位置27Bの間が移動部材27の許容移動領域(可動領域)E0とされている。緊張側限界位置27Aは弛み側限界位置27Bよりも前方に位置している。許容移動領域E0における移動部材27の移動方向の中央には目標位置27Cが設けられている。目標位置27Cは記録紙3の搬送中に移動部材27を配置する目標である。
また、許容移動領域E0には、目標位置27Cを含む所定の角度範囲に不感帯E1が設定されている。不感帯E1は目標位置27Cを中心として移動部材27の移動方向で対称に設定されている。不感帯E1は、移動部材27が目標位置27Cの近傍に位置しているときに給紙モーター25の制御量を抑制するために設けられた領域である。
(制御系)
次に、図3、図4を参照して、プリンター1の制御系を説明する。図3はプリンター1の制御系の主要部分を示す概略ブロック図である。図4は移動部材の移動位置、位置偏差および給紙モーター25の制御量の関係の説明図である。図4(a)は検出部33から出力されるA相およびB相のエンコーダー信号を示し、図4(b)は不感帯E1に対する移動部材27の位置偏差を示し、図4(c)は位置偏差に基づく給紙モーター25の制御量を模式的に示している。なお、図4(d)は、目標位置27Cに対する移動部材27の位置偏差を示し、図4(e)は不感帯E1を備える場合に、目標位置27Cに対する移動部材27の位置偏差に基づいて給紙モーター25を駆動制御する場合の制御量を模式的に示したものである。
図3に示すように、プリンター1の制御系はCPUやメモリーを備えるプリンター制御部34を中心に構成されている。プリンター制御部34には外部の機器との間を通信可能に接続する通信部35とロータリーエンコーダー31の検出部33が接続されている。プリンター制御部34の出力側には印刷ヘッド5、搬送モーター21、給紙モーター25が不図示のドライバーを介して接続されている。
プリンター制御部34は、通信部35を介して外部の機器から印刷データが供給されると搬送モーター21および印刷ヘッド5を駆動制御して印刷を行う。すなわち、プリンター制御部34は、搬送モーター21を駆動制御して搬送機構12によって記録紙3を一定速度で搬送するとともに、印刷ヘッド5を駆動制御して印刷位置Aを通過する記録紙3に印刷データを印刷する。
また、プリンター制御部34は、給紙モーター25を駆動制御する給紙モーター駆動制御部36を備えている。給紙モーター駆動制御部36は、偏差取得部37とPID制御部38を備えている。
偏差取得部37には、検出部33から移動部材27の移動位置を示すA相およびB相のエンコーダー信号が入力されている。偏差取得部37は、これらA相、B相のエンコーダー信号に基づいて、不感帯E1に対する移動部材27の位置偏差ΔLを一定周期で取得する。より具体的には、偏差取得部37は不感帯E1の位置を示す値から移動部材27の現在の移動位置を示す値を減算して移動部材27の位置偏差ΔLを取得する。従って、移動部材27が不感帯E1に位置する間に偏差取得部37が取得する移動部材27の位置偏差ΔLは、図4(b)に示すように、ゼロとなる。また、移動部材27が不感帯E1から外れたときの移動部材27の位置偏差ΔLは、図4(b)に示すように、不感帯E1における移動部材27に近い側の境界位置に対するものとなる。不感帯E1の境界位置を示す値は予めメモリーなどに記憶保持されている。本例において位置偏差ΔLを取得する周期は1ミリ秒である。
PID制御部38は、給紙モーター25を駆動するPWM信号のデューティ値を制御することにより給紙モーター25を駆動制御する。PID制御部38は、偏差取得部37によって逐次に取得される位置偏差ΔLに基づいて、位置偏差ΔLを小さくするように給紙モーター25をフィードバック制御して移動部材27を目標位置27Cに位置させる。すなわち、給紙モーター駆動制御部36は、搬送機構12による記録紙3の搬送中にPID制御によって給紙モーター25を駆動してロール紙2を回転させ、これによりロール紙2からの記録紙3の繰り出しまたはロール紙2への記録紙3の巻き取りを行って移動部材27を目標位置27Cに位置させて、記録紙3に作用する張力の変動を抑制する。
より詳細には、PID制御部38は、逐次に取得される位置偏差ΔLに基づいてP項、I項およびD項を算出する。P項は比例要素のゲインGpと位置偏差ΔLに基づいて算出される。I項は積分要素のゲインGiと逐次に取得される位置偏差ΔLの積分値に基づいて算出される。D項は微分要素のゲインGdと逐次に取得される位置偏差ΔLの微分値に基づいて算出される。比例要素のゲインGp、積分要素のゲインGi、および、微分要素のゲインGdは予め設定されている値である。また、PID制御部38は、算出したP項、I項およびD項を合計した制御値を算出し、この制御量を、給紙モーター25を駆動するPWM信号のデューティ値に換算し、当該デューティ値の駆動電流を給紙モーター25に供給する。ここで、図4(c)に示すように、PID制御部38が算出する制御量は、位置偏差ΔLの増減に対応して増減する値である。
(印刷動作)
印刷に際して、記録紙3は、ロール紙装着軸24に装着されたロール紙2から上方に引き出された後に、移動部材27の弛みローラー29に架け渡されて前方に湾曲させられ、その後に印刷位置Aを経由するようにして紙搬送路8に沿ってセットされる。記録紙3が紙搬送路8にセットされた状態で外部の機器から印刷データが供給されると、プリンター制御部34は搬送モーター21および印刷ヘッド5を駆動して搬送機構12によって記録紙3を一定速度で搬送しながら印刷位置Aを通過する記録紙3に印刷データを印刷する。
記録紙3の搬送中は、給紙モーター駆動制御部36は移動部材27の位置偏差ΔLを一定周期で取得し、逐次に取得される位置偏差ΔLに基づいてP項、I項およびD項を算出してPID制御により給紙モーター25を駆動する。これにより、記録紙3に作用する張力の変動を抑制し、張力の変動に起因して記録紙3の搬送速度が変動することを抑制している。
ここで、搬送開始直後において記録紙3の搬送速度が加速する加速期間では、ロール紙2のイナーシャ等に起因して、搬送される記録紙3が搬送方向Dとは逆方向に引っ張られ、記録紙3の張力が一時的に増加する。この場合には、移動部材27は目標位置27Cから緊張側限界位置27Aに向けて回動するので、図2、図4(b)に示すように、位置偏差ΔLが+方向(張力が増加する方向)に増加する。従って、給紙モーター25は、この位置偏差ΔLを小さくするためにロール紙2から記録紙3を繰り出すように駆動される。これにより、移動部材27が目標位置27Cに配置され、記録紙3に作用する張力の変動が抑制される。
また、記録紙3の搬送を停止する際の減速期間では、ロール紙2のイナーシャ等に起因して、記録紙3が搬送速度よりも速く搬送方向Dに繰り出され、記録紙3の張力が一時的に減少する。この場合には、移動部材27は目標位置27Cから弛み側限界位置27Bに向けて回動するので、図2、図4(b)に示すように、位置偏差ΔLが−方向(張力が減少する方向)に増加する、従って、給紙モーター25は、この位置偏差ΔLを小さくするために記録紙3がロール紙に巻き取られるように駆動される。これにより、移動部材27が目標位置27Cに配置され、記録紙3に作用する張力の変動が抑制される。
一方、加速期間および減速期間を除いた速度安定期間では、搬送機構12による記録紙3の搬送速度の安定によって移動部材27の移動量が小さくなり、目標位置27Cの近傍で変動する。
ここで、本例では、目標位置27Cを含む範囲が不感帯E1とされている。従って、図4(b)に示すように、移動部材27が不感帯E1に位置する間は位置偏差ΔLがゼロとなり、図4(c)に示すように、移動部材27が目標位置27Cから移動しても給紙モーター25を駆動する制御量の変動が抑制される。よって、速度安定期間中に供給モーターは滑らかに制御される。また、例えば、速度安定期間中にプリンター1の振動などの僅かな外乱によって移動部材27の位置が不感帯E1の範囲で変動した場合などに、給紙モーター25が過度に敏感に応答することが抑制される。
また、移動部材27が不感帯E1から外れたときには、移動部材27の位置偏差ΔLは、図4(b)に示すように不感帯E1における移動部材27に近い側の境界位置に対するものとなる。従って、移動部材27が不感帯E1の境界を越えて移動した場合でも、図4(c)に示すように給紙モーター25は大きな制御量で駆動されることがない。この結果、給紙モーター25が滑らかに駆動されるので、給紙モーター25の駆動に起因して記録紙3に作用する張力が変動して、記録紙3の搬送精度に影響を与えてしまうことがない。
なお、移動部材27が不感帯E1から外れたときに、偏差取得部37が目標位置27Cに対する移動部材27の位置偏差ΔLを取得しているとすれば、図4(d)に示すように、移動部材27が不感帯E1の境界を越えて移動したときに、取得される位置偏差ΔLの値はゼロから目標位置27Cに対する移動部材27の位置偏差ΔLの値に急激に変化する。従って、移動部材27が不感帯E1の境界を越えて移動した場合には、図4(e)に示すように、給紙モーター25は位置偏差ΔLの急激な変動を是正するように大きな制御量で駆動される。この結果、給紙モーター25の滑らかな駆動が阻害されるので、給紙モーター25の駆動に起因して記録紙3に作用する張力を変動させてしまい、記録紙3の搬送精度に影響が出る可能性がある。
ここで、本例のように位置偏差ΔLに基づいて給紙モーター25をフィードバック制御する場合には、移動部材27の移動に追従させて給紙モーター25を迅速に駆動するために、P項、I項およびD項の算出に用いる各ゲインGp、Gi、Gdを大きな値とすることが望まれている。しかし、各ゲインGp、Gi、Gdを大きな値とすると、速度安定期間中に移動部材27の移動量が小さい場合でも給紙モーター25の制御量が大きくなり、給紙モーター25の駆動に起因して移動部材27が振動し易くなるという弊害がある。これに対して、本例では不感帯E1を設けているので、このような弊害を回避でき、各ゲインGp、Gi、Gdを大きな値に設定することができる。
この一方で、各ゲインGp、Gi、Gdを大きな値として不感帯E1を設けると、移動部材27が不感帯E1から外れたときの給紙モーター25の制御量がより大きなものとなり、給紙モーター25の滑らかな駆動が阻害されるという問題が発生する。これに対して、本例では、偏差取得部37が不感帯E1に対する移動部材27の位置偏差ΔLを取得しているので、上記のとおり、給紙モーター25が滑らかに駆動される。
また、本例では、各ゲインGp、Gi、Gdを大きな値とすることができるので、移動部材27の許容移動領域E0が小さくても、移動部材27の移動に追従させて給紙モーター25を迅速に駆動して移動部材27を目標位置27Cに配置することができる。ここで、本例では、移動部材27の許容移動領域E0が小さいので、プリンター1を小型化することができる。また、本例では、移動部材27の許容移動領域E0が小さいので、部品公差による移動部材27の重量のばらつきやコイルバネ30の付勢力のバラツキによる搬送精度への影響を低減できる。
さらに、本例では、不感帯E1を、目標位置27Cを中心として移動部材27の移動方向で対称に設定している。従って、記録紙3に作用する張力が高くなるように変化した場合でも、記録紙3に作用する張力が低くなるように変化した場合でも、給紙モーター25を同様に制御できる。
(その他の実施の形態)
上記の例では、移動部材27は回転中心軸Lを中心として回動しているが、記録紙3に作用する張力の変動に追従して直動するものとしてもよい。
また、上記の例では、移動部材27を配置する目標位置27Cを移動部材27の許容移動領域E0の中央に設定しているが、例えば、目標位置27Cを許容移動領域E0における移動部材27の移動方向の一方側の端に設定することもできる。この場合には、不感帯E1を許容移動領域E0一方側の端を含むように設定することができる。
さらに、上記の例では、搬送機構12は搬送モーター21によって搬送ベルト15を駆動して記録紙3を搬送するものであるが、搬送機構として、搬送モーターによって搬送ローラーを駆動して記録紙3を搬送するものを採用してもよい。また、PID制御部38はPID制御によって給紙モーター25を駆動しているが、PD制御やPI制御によって給紙モーター25を駆動するものとしてもよい。
1・・プリンター、2・・ロール紙(ロール体)、2a・・紙芯、3・・記録紙(媒体)、5・・印刷ヘッド、6・・プリンター筐体、6a・・前面、7・・ロール紙収納部、8・・紙搬送路、9・・排紙口、11・・プラテンユニット、11a・・プラテン面、12・・搬送機構、15・・搬送ベルト、15a・・水平ベルト部分、16・・ベルト駆動ローラー、17〜20・・ガイドローラー、21・・搬送モーター、22・・ピンチローラー、23・・媒体供給機構、24・・ロール紙装着軸、25・・給紙モーター(媒体供給モーター)、26・・輪列、27・・移動部材、27A・・緊張側限界位置、27B・・弛み側限界位置、27C・・目標位置、28・・弛みレバー、29・・弛みローラー、30・・コイルバネ、31・・ロータリーエンコーダー(検出器)、32・・エンコード盤、33・・検出部、34・・プリンター制御部、35・・通信部、36・・給紙モーター駆動制御部(制御部)、37・・偏差取得部、38・・PID制御部、A・・印刷位置、D・・搬送方向、E0・・許容移動領域、E1・・不感帯、L・・弛みレバーの回転中心軸、ΔL・・位置偏差

Claims (6)

  1. ロール体から繰り出される長尺状の媒体を搬送する搬送機構と、前記ロール体を回転させるための媒体供給モーターとを有する媒体搬送装置の媒体搬送制御方法において、
    前記ロール体と前記搬送機構との間に前記媒体に作用する張力の変動に追従して移動可能な移動部材を配置し、
    前記移動部材の可動領域内に目標位置および当該目標位置を含む不感帯を設定し、
    前記搬送機構による前記媒体の搬送中に、前記不感帯に対する前記移動部材の位置偏差を連続的あるいは間欠的に取得して当該位置偏差に基づいて前記媒体供給モーターを駆動制御して前記移動部材を前記目標位置に位置させることを特徴とする媒体搬送制御方法。
  2. 請求項1において、
    前記不感帯を、前記目標位置を中心として前記移動部材の移動方向で対称に設定することを特徴とする媒体搬送制御方法。
  3. 請求項1または2において
    前記位置偏差を一定周期で取得し、前記位置偏差に基づくPID制御によって前記媒体供給モーターを駆動することを特徴とする媒体搬送制御方法。
  4. ロール体から繰り出される長尺状の媒体を搬送する搬送機構と、前記ロール体を回転させるための媒体供給モーターと、を有するプリンターにおいて、
    前記ロール体と前記搬送機構との間に配置され、前記媒体に作用する張力の変動に追従して移動可能な移動部材と、
    前記移動部材の可動領域内に設定された目標位置および当該目標位置を含む不感帯と、
    前記移動部材の移動位置を検出する検出器と、
    前記搬送機構による前記媒体の搬送中に、前記不感帯に対する前記移動位置の位置偏差を連続的あるいは間欠的に取得し、前記位置偏差に基づいて前記媒体供給モーターを駆動して前記移動部材を前記目標位置に位置させる制御部と、
    を備えることを特徴とするプリンター。
  5. 請求項4において、
    前記不感帯は、前記目標位置を中心として前記移動部材の移動方向で対称に設定されていることを特徴とするプリンター。
  6. 請求項4または5において、
    前記制御部は、前記位置偏差に基づくPID制御によって前記媒体供給モーターを駆動することを特徴とするプリンター。
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