JP2015118920A - スラリー組成物、電極、非水電解質二次電池および非水電解質二次電極の製造方法 - Google Patents

スラリー組成物、電極、非水電解質二次電池および非水電解質二次電極の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】粘度安定性に優れ、よって電極用の集電体に塗布乾燥後は当該集電体との密着性に優れるスラリー組成物を提供する。
【解決手段】リチウムイオンを含有する電気化学セル用電極の製造に用いられるスラリー組成物であって、高分子バインダー樹脂と、pH調整剤と、活物質と、を含有する。
【選択図】なし

Description

本発明は、スラリー組成物、電極、非水電解質二次電池および非水電解質二次電極の製造方法に関する。詳しくは、粘度安定性に優れるスラリー組成物、そのスラリー組成物を用いた電極、その電極を用いた非水電解質二次電池および非水電解質二次電池の製造方法に関する。
近年、電子部品の小型化、多機能化が進み、携帯型電子機器が多く登場している。これらは小型化、軽量化が望まれており、その電源として用いられる電池においても同様に小型化、軽量化が求められている。また、環境問題や資源問題を背景に、ハイブリッド自動車や電気自動車等が開発され、製造、販売されはじめている。このような、いわゆる電動車両においても、小型かつ軽量で充電および放電ができ、エネルギー密度の高い電源装置の活用が不可欠である。これらの電源装置としてはリチウムイオン電池やニッケル水素電池等の二次電池や電気二重層キャパシタ等が利用される。特にリチウムイオン二次電池をはじめとする非水電解質二次電池は、そのエネルギー密度の高さや、繰り返しの充電、放電に耐え得る耐久性の高さから、電源装置として注目され、開発が鋭意進められている。
リチウムイオン二次電池の正極は、活物質と、活物質を集電体に結着させるバインダー樹脂とを含む組成物、好ましくは更に導電助剤、増粘剤、界面活性剤等を含む組成物が、集電体としての金属箔上に形成されてなる。これらの組成物は、各材料を水又は有機溶媒中で混合することでスラリーを調製して、調製されたスラリー状の組成物(以下、「スラリー組成物」という。)を集電体に塗布し乾燥させて正極が製造される。
スラリー組成物を集電体に塗布する際は、スラリー組成物の粘度が重要であり、塗布時に所定の粘度を有していることが求められる。また、リチウムイオン二次電池の正極を製造する際には、スラリー組成物を調製した後、集電体に塗布するまでに、ある程度の時間を要する場合がある。したがって、スラリー組成物は、保管時に、調製された直後と同等の粘度を維持していること、換言すれば粘度安定性に優れていることが望ましい。しかしながら、従来のスラリー組成物は、調製後に次第に粘度が低下するものもあった。スラリー組成物の粘度が、所定の粘度から低下すると、スラリー組成物を集電体に塗布し乾燥させた後のスラリー組成物層の密着性が劣るおそれがある。特にスラリーを調製する際の溶媒が水である場合には、スラリー組成物の粘度が低下するおそれが強かった。正極材料の密着性は、リチウムイオン二次電池の内部抵抗等に影響を及ぼす。
リチウムイオン含有電気化学セル用の電極の製造用のスラリーに関し、ポリアクリル酸(PAA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)およびポリビニリデンフルオリド(PVDF)のうち少なくとも三つの組み合わせを含むスラリーがある(特許文献1)。ポリアクリル酸は、スラリーのpHを下げるために使用され、腐食を回避又は抑制することに繋がるとされている。これは、アルミニウム製の集電体が、スラリーのアルカリ性によって腐食されるおそれがあるのを、ポリアクリル酸の使用により回避しようとするものと考えられる。また、ポリアクリル酸は、スラリーにおいて増粘剤としての効果も有すると考えられる。
特開2013−38074号公報
しかしながら、特許文献1に記載のスラリーは、ポリアクリル酸の使用により調製時の粘度が増加するとしても、粘度安定性は十分ではなかった。
そこで、本発明の目的は、粘度安定性に優れ、よって電極用の集電体に塗布乾燥後は当該集電体との密着性に優れるスラリー組成物、そのスラリー組成物を用いた電極、その電極を用いた非水電解質二次電池および非水電解質二次電池の製造方法を提供することにある。
本発明者は上記課題を解消するために鋭意検討した結果、pH調整剤を含有させたスラリー組成物は、粘度安定性に優れていること、このスラリー組成物を集電体に塗布、乾燥させて得られた電極は、スラリー組成物層と集電板との密着性に優れていることを見出し、本発明を完成させるに至った。
上記知見に基づく本発明のスラリー組成物は、リチウムイオンを含有する電気化学セル用電極の製造に用いられるスラリー組成物であって、高分子バインダー樹脂と、pH調整剤と、活物質と、を含有することを特徴とするものである。
本発明のスラリー組成物は、導電助剤を含有すること、さらに、増粘剤及び界面活性剤の少なくとも何れか1種を含有することが好ましい。更に、本発明のスラリー組成物は溶媒を含むものであり、特に、溶媒として水を含むことが好ましい。
本発明の電極は、上記のスラリー組成物が集電体に塗布されてなることを特徴とするものである。
本発明の非水電解質二次電極は、上記の電極を用いたことを特徴とするものである。
本発明の非水電解質二次電極の製造方法は、活物質と、pH調整剤とを混合し、その後に高分子バインダー樹脂を加え更に混合してスラリー組成物を調整し、集電体に前記スラリー組成物を塗布することを特徴とするものである。
本発明によれば、スラリー組成物がpH調整剤を含むことから、粘度安定性に優れたスラリー組成物が得られ、ひいてはスラリー組成物層と集電体との密着性に優れている電極、その電極を用いた非水電解質二次電極が得られる。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
<スラリー組成物>
本発明のスラリー組成物は、リチウムイオンを含有する電気化学セル用電極の製造に用いられるスラリー組成物であって、高分子バインダー樹脂と、pH調整剤と、活物質と、を少なくとも含有する。スラリー組成物にpH調整剤を添加することで、スラリー組成物のpHを調整して粘度の低下を抑制することができる。また、本発明のスラリー組成物を用いた電極は、スラリー組成物を塗布、乾燥させて得られたスラリー組成物層と集電体との密着性に優れている。さらに、得られた電極を用いた非水電解質二次電池は、内部抵抗が十分に低く、充電および放電の繰り返しや、発熱による高温環境下にあっても充電放電サイクルにおける放電容量の低下を抑制でき、長寿命の二次電池を得ることができる。以下、本発明のスラリー組成物の各成分、およびその製造方法について詳細に説明する。
<活物質>
本発明のスラリー組成物においては、電極用の活物質として、例えば、遷移金属酸化物、遷移金属硫化物、およびリチウム含有複合金属酸化物等を用いることができる。遷移金属としては、例えば、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo等を挙げることができ、遷移金属酸化物としては、例えば、MnO、MnO、V、V13、TiO、Cu、非晶質VO−P、MoO、V、V13、LiTi12等を好適に用いることができる。特に、サイクル安定性と容量の観点からMnO、V、V13、TiO2、LiTi12が好適である。遷移金属硫化物としては、TiS、TiS、非晶質MoS、FeS等を好適に用いることができる。また、リチウム含有複合金属酸化物の構造については、特に制限はないが、層状構造、スピネル構造、またはオリビン型構造等のものを好適に用いることができる。
層状構造を有するリチウム含有複合金属酸化物としては、リチウム含有コバルト酸化物(LiCoO)、リチウム含有ニッケル酸化物(LiNiO)、Co−Ni−Mnの複合酸化物を主構造とするリチウム含有複合金属酸化物、Ni−Mn−Alの複合酸化物を主構造とするリチウム含有複合金属酸化物、Ni−Co−Alの複合酸化物を主構造とするリチウム含有複合金属酸化物を挙げることができる。
スピネル構造を有するリチウム含有複合金属酸化物としてはマンガン酸リチウム(LiMn)やMnの一部を他の遷移金属で置換したLi[Mn3/21/2]O(ここでMは、Cr、Fe、Co、Ni、Cu等)等を挙げることができる。
オリビン型構造を有するリチウム含有複合金属酸化物としてはLiMPO(式中、Mは、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mg、Zn、V、Ca、Sr、Ba、Ti、Al、Si、BおよびMoから選ばれる少なくとも1種、0≦X≦2)であらわされるオリビン型リン酸リチウム化合物を挙げることができる。リチウム含有複合金属酸化物の中でも、LiFePO、LiCoPOは導電性が低いために微粒化させて用いることが多く、これらは多くの細孔を有するため表面積が大きくバインダーとなる樹脂との相溶性が悪い。しかしながら、本発明のスラリー組成物は後述するように界面活性剤を含有し得るため、LiFePO、LiCoPOであっても好適に用いることができる。
本発明のスラリー組成物においては、電極用の活物質としては、平均粒子径が0.01μm以上50μm未満のものを好適に用いることができ、より好適には0.1μm〜30μmである。粒子径が上記範囲内であれば、高分子バインダー樹脂の配合量を少なくすることができ、電池の容量の低下を抑制できると共に、電極用の活物質の凝集を防ぎ、スラリー組成物の分散性を良好にして均一な電極を得ることができる。ここで、粒子径とは、粒子の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lであり、平均粒子径の値とは、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)等の観察手段を用い、数〜数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値である。
なお、電極用の活物質として、電気伝導性に乏しい鉄系酸化物を用いる場合は、還元焼成時に炭素源物質を存在させることで、炭素材料で覆われた電極用の活物質として用いることができる。これら炭素源物質は、部分的に元素置換したものであってもよい。また、非水電解質二次電池用電極用の活物質は、上記の無機化合物と、例えば、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン等の導電性高分子である有機化合物との混合物であってもよい。
<高分子バインダー樹脂>
本発明のスラリー組成物においては、高分子バインダー樹脂は、後述する水系溶媒に分散することができる高分子バインダー樹脂(水分散性高分子バインダー樹脂)であることが好ましい。高分子バインダー樹脂としては、ビニル系重合体、アクリル系重合体、ニトリル系重合体、ポリウレタン系重合体、ジエン系重合体等の非フッ素系重合体や、PVDFやPTFE等のフッ素系重合体を挙げることができる。特に、集電体やスラリー組成物との接着性の観点から非フッ素系重合体が好ましく、より好ましくは、アクリル樹脂である。
高分子バインダー樹脂としてアクリル樹脂を用いる場合、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステルと、その他の官能性モノマーの共重合体からなるものを用いてもよい。上記アクリル樹脂としては特に制限はなく、既知のものを用いることができる。さらに、上記アクリル樹脂の合成に用いられるアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルおよびその他のモノマーについても特に制限はなく、既知のものを用いることができる。なお、本発明のスラリー組成物においては、アクリル樹脂は、水性エマルションや水性ディスパージョンの形態で用いてもよい。
水性エマルションの調製方法としては、公知の手法を採用することができ、例えば、セッケン等の界面活性剤を用いる界面活性剤法、ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマーを保護コロイドとして用いるコロイド法等の乳化重合により製造し、一括重合法、プレエマルジョン滴下法、モノマー滴下法等を用いればよい。また、モノマー濃度、反応温度、攪拌速度等の制御により、水性エマルションにおける各種重合体の平均粒径を変化させることができる。乳化重合により、重合体の粒度分布をシャープにすることができ、このような水性エマルションを用いることにより、電極における各種成分を均質にすることができる。
水性ディスパージョンとしては、ポリテトラフルオロエチレン系水性ディスパージョンを好適に用いることができる。なお、水性ディスパージョンの調製方法においても、公知の手法を採用することができ、ポリテトラフルオロエチレン系水性ディスパージョンは、ポリテトラフルオロエチレンを水に分散して得ることができる。
本発明のスラリー組成物に係るアクリル樹脂の合成に用いられるアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、メタクリル酸−n−プロピル、アクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−t−ブチル、メタクリル酸−t−ブチル、アクリル酸−n−ヘキシル、メタクリル酸−n−ヘキシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸クロロメチル、メタクリル酸クロロメチル、アクリル酸−2−クロロエチル、メタクリル酸−2−クロロエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、メタクリル酸−2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、アクリル酸−2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、メタクリル酸−2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチルおよびメタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル等が挙げられる。これらは単独ないし2種以上を用いることができる。
本発明のスラリー組成物に係るアクリル樹脂においては、上記アクリル酸エステルおよび上記メタクリル酸エステル以外に、官能性モノマーを加えることができる。例えば、単官能性モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、ハロゲン化スチレン等の芳香族ビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系モノマー;ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、2−メチル−3−エチルブタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2−メチル−1,3−ヘキサジエン、3,4−ジメチル−1,3−ヘキサジエン、1,3−ヘプタジエン、3−メチル−1,3−ヘプタジエン、1,3−オクタジエン、シクロペンタジエン、クロロプレン、ミルセン等の共役ジエン系モノマーが挙げられる。また、多官能性モノマーとしては、例えば、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジビニルアジペート、ジビニルベンゼンエチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼンエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレートおよびジプロピレングリコールジアクリレート等が挙げられ、これらは2種以上を併用してもよい。
本発明に係るアクリル樹脂の製造方法については特に制限はなく、既知の製造方法を用いることができる。
なお、本発明のスラリー組成物においては、高分子バインダー樹脂に、必要に応じて他の重合体粒子を添加してもよい。重合体粒子としては、例えば、ビニル系重合体、アクリル系重合体、ニトリル系重合体、ポリウレタン系重合体、ジエン系重合体等の非フッ素系重合体;PVDFやPTFE等のフッ素系ポリマー;を挙げることができ、特に、接着性の点から非フッ素系重合体が好ましい。なお、本発明のスラリー組成物においては、これら重合体粒子は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明におけるスラリー組成物においては、高分子バインダー樹脂(重合体粒子)の含有割合は、電極用の活物質100質量部に対して、固形分で好ましくは0.1〜10質量部であり、より好ましくは0.5〜5質量部である。重合体粒子の含有割合を上記範囲にすることで、本発明のスラリー組成物を集電体に塗布・乾燥して得られるスラリー組成物層の集電板に対するは密着性および柔軟性を向上させることができる。
なお、本発明のスラリー組成物においては、高分子バインダー樹脂の平均粒子径は0.05〜5μmが好ましく、0.1〜1μmがより好ましい。粒子径が大きすぎると結着性が低下するおそれがあり、粒子径が小さすぎると電極用の活物質の表面が覆われてしまい、内部抵抗を増加させてしまうおそれがある。
<pH調整剤>
本発明のスラリー組成物においては、pH調整剤を含有させる。スラリー組成物の粘度低下の原因は、必ずしも明らかではないが、スラリー組成物を調製する際に、溶媒としての水を含むスラリーに活物質が添加されることにより、スラリーがアルカリ性になり、これによりスラリー中に含まれる高分子バインダー樹脂やその他の成分が加水分解等の作用を受けるためではないかと本発明者は推測している。そして実際に、スラリー組成物にpH調整剤を添加することで、スラリー組成物のpHを調整して粘度の低下を抑制することができた。
pH調整剤としては硝酸、硫酸、塩酸、ホウ酸、無機リン酸、フッ酸等の各種無機酸;ポリアクリル酸、ギ酸、酢酸、アセト酢酸、クエン酸、ステアリン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、スルファミン酸、有機リン酸等の各種有機酸等が挙げられる。
その中でも、無機酸が好ましい。有機酸は、高分子バインダー樹脂、増粘剤、界面活性剤その他のスラリー成分に影響を及ぼすおそれがあり、スラリー組成物、ひいては集電体に塗布形成された後のスラリー組成物層の特性に影響を及ぼすおそれがある。例えばポリアクリル酸は、スラリー組成物の粘度を上昇させることから、ポリアクリル酸を含むスラリー組成物を集電体に塗布する際に、適切に塗布するための調整が難しい。これに対し、無機酸は、高分子バインダー樹脂その他のスラリー成分に影響を及ぼすことなくスラリー組成物のpHを調整することができる。無機酸は、具体的には、六フッ化リン酸である。六フッ化リン酸を用いることにより、効果的にpHを調整することができる。
pH調整剤の配合量は、電極用の活物質100質量部に対して、好ましくは0.001〜10質量部、より好ましくは0.01〜1質量部、さらに好ましくは0.01〜0.1質量部である。0.001質量部以上10質量部以下の範囲であると、より優れた粘度安定性が得られる。
pH調整剤を含む本発明のスラリー組成物は、スラリー組成物のpHが2.0〜9.0の範囲にある。pHが2.0以上9.0以下の範囲であると、優れた粘度安定性が得られる。スラリー組成物のpHは5.0〜8.0の範囲にあることが好ましい。pHの測定方法としては、JIS Z8802の8.に準拠して行ったものをいう。
<導電助剤>
本発明のスラリー組成物においては、導電助剤を含有させることができる。導電助剤としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンブラック、グラファイト、気相成長カーボン繊維、およびカーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレン等の導電性カーボンを用いることができる。導電助剤を用いることにより、電極用の活物質同士の電気的接触を向上させることができ、非水電解質二次電池に用いる場合に、放電レート特性を改善することができる。導電助剤の配合量は、電極用の活物質100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.1〜10質量部である。
<界面活性剤>
本発明のスラリー組成物においては、界面活性剤を含有させることができる。界面活性剤としては、電解質への分散性が高く、リチウムイオン等との反応性が低く、かつ、電解質中のイオン伝導を妨げない限り、特に制限されるものではない。例えば、界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤を挙げることができるが、特に非イオン性界面活性剤を用いることが好ましい。非イオン性界面活性剤は、周囲のイオン(リチウムイオン等)との反応性が低く、電解質中および活物質表面のイオン伝導を妨げないためである。本発明のスラリー組成物においては、界面活性剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、モノ長鎖アルキル型の第4級アンモニウム塩、ジ長鎖アルキル型の第4級アンモニウム塩、アルキルアミン塩等を挙げることができる。また、アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸またはそのエステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和脂肪酸塩、不飽和脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキルリン酸エステルまたはその塩、アルケニルリン酸エステルまたはその塩、アルキルスルホコハク酸塩等を挙げることができる。両性界面活性剤としては、カルボキシル型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤等を挙げることができる。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルキルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ショ糖脂肪酸エステル;テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエート等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンアルキルアミン;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのブロックコポリマー;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノミリスチレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンジステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル;グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレエート、ジグリセロールモノオレエート、自己乳化型グリセロールモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル;アルキルアルカノールアミド等を好適に用いることができる。
本発明のスラリー組成物においては、界面活性剤として非イオン界面活性剤を用いる場合、非イオン界面活性剤は高分子材料であることが好ましく、非イオン界面活性剤の重量平均分子量は、500以上であることが好ましい。非イオン性界面活性剤の重量平均分子量を500以上とすることにより、界面活性剤による電極用の活物質の分散効果が良好に発揮される。これは、高分子の界面活性剤により、溶媒と界面活性剤の親和性が高くなり、粒子の近傍に溶媒を保持しやすくなるため、粒子間の凝集が抑制されるからであると考えられる。一方、重量平均分子量の上限については特に制限はないが、100,000以下であることが好ましい。本発明のスラリー組成物における非イオン界面活性剤のより好適な重量平均分子量は1,000〜50,000である。重量平均分子量をこの範囲にすることで、電極用の活物質の分散性がより良好となるとともに、イオンの移動がスムーズに行われるようになる。
非イオン性界面活性剤の中でも、イオン伝導性が高く、リチウムイオン電池の電解質にも用いられ得るポリエチレングリコール系界面活性剤が好ましく、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル系界面活性剤がより好ましく、さらに好ましくはポリエチレングリコールのステアリン酸エステル類である。ポリエチレングリコールのステアリン酸エステル類は増粘効果も高く、活物質の沈降凝集防止効果も優れている。また、ポリエチレングリコール系界面活性剤を活物質の被覆に用いることで、界面活性剤中のリチウムイオンの移動を促進することができる。なお、本発明においては、ポリエチレングリコール系界面活性剤とは、活性剤化合物中に、エチレングリコール鎖を含むものを指す。
本発明のスラリー組成物に用いる界面活性剤は、グリフィン法によるHLBが13〜20であることが好ましく、より好ましくは15〜20である。特に溶媒に有機溶媒を使用しない場合は、HLBが16〜20であることがより好ましい。HLBがこの範囲の界面活性剤を用いると、界面活性剤の親水基と疎水基がバランスよく配列されているため、水溶媒中で極性を有する電極用の活物質と高分子バインダー樹脂の均一な分散が促進される。なお、グリフィン法とは、界面活性剤の親水基の式量と分子量を元に下記の式、
HLB値=20×親水部の式量の総和/分子量
にて定義される。
本発明のスラリー組成物においては、界面活性剤の配合量は、電極用の活物質100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部であり、より好ましくは0.5〜5質量部である。界面活性剤の配合量を、上記範囲とすることにより、スラリー組成物中の電極用の活物質の分散性および塗工性に優れたスラリー組成物を得ることができる。
<増粘剤>
本発明のスラリー組成物においては、増粘剤を含有させることができる。増粘剤としては、電極製造時に使用する溶媒や電解液、電池使用時に用いる他の材料に対して安定な材料であれば、特に制限はない。例えば、カルボキシルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン等を用いることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。増粘剤の配合量は、電極用の活物質100質量部に対して、通常0.01〜20質量部、好ましくは1〜10質量部である。増粘剤の配合量を上記範囲とすることにより、比重の重い電極用の活物質の沈降凝集を良好に防止することができる。
<溶媒>
本発明のスラリー組成物に用いる溶媒としては、高分子バインダー樹脂および電極用の活物質を均一に分散および沈降凝集を阻害する界面活性剤と親和するものであれば特に制限はなく、水であっても有機溶媒であってもよい。また、本発明のスラリー組成物においては、溶媒としては、スラリー組成物の全体に対する溶媒と、pH調整剤に対する溶媒の両者を含み得る。pH調整剤の溶媒に水を用いるため、スラリー組成物の全体に対する溶媒もまた、特に水を好適に用いることができるが、上記効果を阻害しない範囲で、有機溶媒を含んでいてもよい。かかる有機溶媒としては、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン等の環状脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、エチルメチルケトン、ジソプロピルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等のケトン類;メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素等の塩素系脂肪族炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン等のエステル類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のアシロニトリル類;テトラヒドロフラン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類:メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類を挙げることができる。
<その他添加剤>
本発明のスラリー組成物は、上述した電極用の活物質と、高分子バインダー樹脂と、pH調整剤と、を含有するものであり、それ以外の成分も電池反応に影響を及ぼさない範囲で添加剤として含んでいてもよい。例えば、本発明のスラリー組成物には、上記成分の他に、補強材、増粘剤、消泡・レベリング剤、電解液分解抑制剤等の成分が含まれていてもよい。
補強材としては、各種の無機および有機の球状、板状、棒状または繊維状のフィラーを用いてもよい。補強材を用いることにより、さらに強靭で柔軟な電極を得ることができ、優れた長期サイクル特性を付与することができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。補強材の配合量は、電極用の活物質100質量部に対して、通常0.01〜20質量部、好ましくは1〜10質量部である。補強材の配合量を、上記範囲とすることにより、高い容量と高い負荷特性を付与することができる。
消泡・レベリング剤としては、アルキル系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、金属系界面活性剤等の界面活性剤を用いることができる。界面活性剤を混合することにより、塗工時に発生するはじきを防止することができ、また、電極の平滑性を向上させることができる。消泡・レベリング剤の配合量は、電極用の活物質100質量部に対して、好ましくは0.01〜5質量部である。消泡・レベリング剤の配合量を上記範囲とすることで、電極塗工時の塗工不具合を防止し、生産性を向上させることができる。
電解液分解抑制剤としては、電解液中に使用されるビニレンカーボネート等を用いることができる。電極中の電解液分解抑制剤の配合量は電極用の活物質100質量部に対して、好ましくは0.01〜5質量部である。電解液分解抑制剤の配合量を上記範囲とすることでサイクル特性および高温特性を、さらに向上させることができる。その他には、フュームドシリカやフュームドアルミナ等のナノ微粒子を挙げることができる。ナノ微粒子を混合することにより電極形成用合剤のチキソ性をコントロールすることができる。本発明のスラリー組成物におけるナノ微粒子の配合量は、電極用の活物質100質量部に対して、好ましくは0.01〜5質量部である。ナノ微粒子の配合量を上記範囲とすることで、合剤安定性、生産性をさらに向上させることができ、より高い電池特性を付与することができる。
<スラリー組成物の製造方法>
本発明のスラリー組成物は、上記の電極用の活物質と、高分子バインダー樹脂と、pH調整剤と、好ましくは更に導電助剤と、界面活性剤と、その他必要に応じてその他の添加剤を混合して得ることができる。pH調整剤は、水溶液としてスラリーに加えられるのが好ましい。また、本発明のスラリー組成物を製造するにあたって、活物質と、pH調整剤とを混合し、その後に高分子バインダー樹脂を加え更に混合してスラリー組成物を製造することが好ましい。先に活物質とpH調整剤とを混合することにより、スラリー中にpH調整剤を分散させ、スラリーを中和することができ、その結果、より優れた粘度安定性が得られる。混合方法については特に制限はなく、例えば、撹拌式、振とう式、および回転式等の混合装置を使用した方法を採用することができる。また、ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、ロールミル、および遊星式混練機等の分散混練装置を使用した方法を採用してもよい。
<電極>
次に、本発明の非水電解質二次電池用電極について説明する。
本発明の電極は、上記本発明のスラリー組成物が集電体に塗布されてなるものである。本発明の電極は、上記本発明のスラリー組成物を集電体上に塗布する塗布工程と、得られた集電体を乾燥してスラリー組成物層を形成する乾燥工程と、を経て製造することができる。本発明の電極においては、スラリー組成物層を集電体の片面に形成してもよいが、両面に形成することが好ましい。また、電極は、スラリー組成物の調製後における粘度低下防止が顕著である点より、正極であることが好ましい。以下、本発明の電極の構成および製造方法について詳細に説明する。
<集電体>
本発明の電極に用いる集電体は、電気導電性を有し、かつ電気化学的に耐久性のある材料であれば特に制限されないが、耐熱性を有する金属材料が好ましい。例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金等を挙げることができる。特に、充電時の酸化劣化が少ないことからアルミニウムまたはアルミニウム合金が好ましい。集電体の形状は特に制限されないが、厚さ5〜100μm程度のシート状のものを好適に用いることができる。
本発明の電極においては、集電体は、スラリー組成物層との接着強度を高めるため、予め粗面化処理して使用するのが好ましい。粗面化方法としては、機械的研磨法、電解研磨法、化学研磨法等が挙げられる。機械的研磨法においては、研磨剤粒子を固着した研磨布紙、砥石、エメリバフ、鋼線等を備えたワイヤーブラシ等を用いることができる。また、電極層の接着強度や導電性を高めるために、集電体表面に中間層を形成してもよい。
<塗布方法>
上記本発明のスラリー組成物を集電体上に塗布する方法についても特に限定はなく、既知の方法を用いることができる。塗布方法としては、例えば、ダイコーティング法、ドクターコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、スプレーコティング法、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法、または静電塗装法等を挙げることができる。
<乾燥方法>
上記塗布方法により得られた集電体を乾燥させる方法としては特に制限はないが、例えば、温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線や電子線等の照射による乾燥法を挙げることができる。乾燥時間は通常5〜30分間であり、乾燥温度は通常40〜180℃である。
<圧延>
本発明の製造方法においては、塗布工程、乾燥工程を経た後、金型プレスやロールプレス等を用いて、加圧処理によりスラリー組成物層の空隙率を下げる圧延工程を経ることが好ましい。空隙率の好適な範囲は5%〜15%であり、より好適には7%〜13%である。空隙率が15%を超えると充電効率や放電効率が悪化するため、好ましくない。一方、空隙率が5%未満の場合は、高い体積容量が得難かったり、スラリー組成物層が集電体から剥がれやすく不良を発生しやすいといった問題が生じるおそれがある。なお、高分子バインダー樹脂として硬化性樹脂を用いる場合は、この硬化性樹脂を硬化させる工程を有していることが好ましい。
本発明の電極の厚みは、通常5〜400μmであり、好ましくは30〜300μmである。電極の厚みを上記範囲にすることにより、良好な極板の柔軟性、密着性が得られる。
<非水電解質二次電池>
次に、本発明の非水電解質二次電池について説明する。
本発明の非水電解質二次電池は、上記本発明の電極を用いたものであり、電極、負極、セパレーターおよび電解液を有している。以下、本発明の非水電解質二次電池の構成およびその製造方法について詳細に説明する。
<非水電解質二次電池用負極>
本発明に係る非水電解質二次電池用負極は、負極活物質、導電助剤、高分子バインダー樹脂、溶媒およびその他必要に応じて添加剤等を混合して負極合剤スラリーを調整し、集電体に塗布、乾燥、必要に応じて圧延を経ることによって製造することができる。
負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵、放出が可能な活物質であれば、従来より使用されてきた既知の材質を用いることができ、炭素系活物質と非炭素系活物質のいずれを用いてもよい。炭素系活物質としては、例えば、グラファイト、ソフトカーボン、ハードカーボン等を挙げることができる。非炭素系活物質としては、例えば、リチウム金属、リチウム合金、酸化物、硫化物、リチウム含有金属複合酸化物等公知のものを用いることができる。
導電助剤および溶媒としては、本発明の電極の作製に用いる上記の導電助剤および上記溶媒を用いることができる。また、バインダー樹脂としては、SBR粒子やPVDF樹脂等の非水電解質二次電池に一般的に用いられるものを用いることができる。
本発明に係る非水電解質二次電池用負極に用いる集電体としては、本発明の非水電解質二次電池用電極と同様、電気導電性を有し、かつ電気化学的に耐久性のある材料であれば特に制限はなく、上記本発明の非水電解質二次電池用電極に用いられる集電体と同様のものを用いることができる。
<電解液>
本発明に用いられる電解液については特に制限はないが、例えば、非水系の溶媒に支持電解質としてリチウム塩を溶解したものが使用できる。リチウム塩としては、例えば、LiPF、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlCl、LiClO、CFSOLi、CSOLi、CFCOOLi、(CFCO)NLi、(CFSONLi、(CSO)NLi等を挙げることができる。特に、溶媒に溶けやすく高い解離度を示すLiPF、LiClO、CFSOLiを好適に用いることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。支持電解質の添加量は、電解液に対して、通常1質量%以上、好ましくは5質量%以上、また通常は30質量%以下、好ましくは20質量%以下である。支持電解質の量が少なすぎても多すぎてもイオン導電性は低下してしまい、電池の充電特性、放電特性が低下してしまう。
電解液に使用する溶媒としては、支持電解質を溶解させるものであれば特に制限はないが、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、およびメチルエチルカーボネート(MEC)等のアルキルカーボネート類;γ−ブチロラクトン、ギ酸メチル等のエステル類、1,2−ジメトキシエタン、およびテトラヒドロフラン等のエーテル類;スルホラン、およびジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物類;を用いることができる。特に、高いイオン伝導性が得やすく、使用温度範囲が広いため、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネートが好ましい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
なお、電解液にはその他添加剤を添加してもよい。添加剤としてはビニレンカーボネート(VC)等のカーボネート系の化合物や、シクロヘキシルベンゼンまたはジフェニルエーテル等を挙げることができる。
本発明の非水電解質二次電池に上記以外の電解液を用いる場合は、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリル等のポリマー電解質に電解液を含浸したゲル状ポリマー電解質や、硫化リチウム、LiI、LiN等の無機固体電解質を用いることができる。
<セパレーター>
セパレーターは気孔部を有する多孔性基材であって、(a)気孔部を有する多孔性セパレーター、(b)片面または両面上に高分子コート層が形成された多孔性セパレーター、または(c)無機セラミック粉末を含む多孔質の樹脂コート層が形成された多孔性セパレーターを用いることができる、例えば、ポリプロピレン系、ポリエチレン系、ポリオレフィン系、アラミド系多孔性セパレーター、ポリビニリデンフルオリド、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリビニリデンフルオリドヘキサフルオロプロピレン共重合体等の固体高分子電解質用、ゲル状高分子電解質用の高分子フィルム、ゲル化高分子コート層がコーティングされたセパレーター、または無機フィラー、無機フィラー用分散剤からなる多孔膜層がコーティングされたセパレーター等を挙げることができる。
<非水電解質二次電池の製造方法>
本発明の非水電解質二次電池の製造方法については、特に制限はない。例えば、負極と正極とをセパレーターを介して重ね合わせ、これを電池形状に応じて巻く、折る等して電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口する。本発明の非水電解質二次電池においては、必要に応じてエキスパンドメタルや、ヒューズ、PTC素子等の過電流防止素子、リード板等を入れ、電池内部の圧力上昇、過充放電の防止をすることもできる。電池の形状は、ラミネートセル型、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型等いずれの形状であってもよい。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。
(実施例1〜11、比較例1〜3)
実施例1〜11、比較例1〜3として、表1〜4に示す電極用の活物質、高分子バインダー樹脂、増粘剤・界面活性剤、導電助剤、及びpH調整剤としての酸を、各表に示す固形分率比で準備した。次いで電極活物質と導電助剤を混合したものにpH調整剤を添加して更に混ぜ合せた。その混合物に増粘剤・界面活性剤と水分散性高分子バインダー樹脂を加え、プロペラ攪拌機にて10分間攪拌し、イオン交換水を加えて粘度を調整したスラリーを作製した。
得られたスラリーは、密閉容器にて室温で保管し、表中に示す各時間ごとに回転式粘度計を用いて粘度を測定した。また、スラリーのpHも測定した。pHの測定はJIS Z8802に準拠して行った。測定された粘度から、各時間経過ごとのスラリー粘度変化率を計算した。
その後、各スラリーを、厚さ20μmのアルミニウム箔の片面に50μmのアプリケーターを用いて塗布した。その後、熱風循環式箱型乾燥炉にて150℃で20分間乾燥し、溶媒である水を除去した。室温まで冷却した後、1mmのステンレス製の板に挟み、平板プレス機を用いて1.5ton/cmの圧力で常温にて1分間の圧延を行い、片面80μmの活物質合剤層を持つ、電極板を作製した。
Figure 2015118920
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Figure 2015118920
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表1〜4において、エマノーン3299RVは、花王(株)社製のポリエチレングリコールジステアレート系非イオン界面活性剤であり、HLB:19.2 分子量:約11200である。CMCは、ダイセルファインケム(株)社製の増粘剤である。VGCF−Hは、昭和電工(株)社製の導電助剤(気相成長炭素繊維)である。
表1〜4より、実施例のスラリー組成物は、スラリー粘度が、30日経過後というスラリーの長期保管であっても粘度の低下が少なく、すなわち、スラリー粘度変化率が小さかった。そして、乾燥後のスラリー組成物層と集電体との密着性を調べたところ、密着性に優れていた。これに対して、比較例1、比較例2のスラリー組成物はpH調整剤を含有しないので、スラリー作製後からの粘度の低下が著しかった。また、スラリー組成物層の密着性は悪かった。また、比較例3のスラリー組成物は、pH調整剤を含有しているが、スラリー組成物のpHが9.0を超えているため、スラリー作製後からの粘度の低下が著しかった。また、スラリー組成物層の密着性は悪かった。

Claims (9)

  1. リチウムイオンを含有する電気化学セル用電極の製造に用いられるスラリー組成物であって、
    高分子バインダー樹脂と、pH調整剤と、活物質と、を含有し、pHが2.0〜9.0であることを特徴とするスラリー組成物。
  2. さらに、導電助剤を含有する請求項1に記載のスラリー組成物。
  3. さらに、増粘剤及び界面活性剤の少なくともいずれか1種を含有する請求項1または2に記載のスラリー組成物。
  4. さらに、溶媒を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のスラリー組成物。
  5. 前記溶媒として水を含む請求項4に記載のスラリー組成物。
  6. リチウムイオン電池の電極用のスラリーである請求項1〜5のいずれか1項に記載のスラリー組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のスラリー組成物が集電体に塗布されてなることを特徴とする電極。
  8. 請求項7に記載の電極を用いたことを特徴とする非水電解質二次電極。
  9. 活物質と、pH調整剤とを混合し、その後に高分子バインダー樹脂を加え更に混合してpHが2.0〜9.0となるようにスラリー組成物を調整し、
    集電体に前記スラリー組成物を塗布することを特徴とする非水電解質二次電極の製造方法。
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