JP2015117426A - β型チタン合金及びこれを用いたチタン製品、並びに、β型チタン合金の製造方法 - Google Patents

β型チタン合金及びこれを用いたチタン製品、並びに、β型チタン合金の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】低廉であり、且つ、冷間加工性と強度特性とのバランスに優れたβ型チタン合金及びこれを用いたチタン製品、並びに、β型チタン合金の製造方法を提供すること。
【解決手段】β型チタン合金は、5.0<Cr≦15.0mass%、Fe≦3.0mass%、Nb<7.0mass%、V<4.0mass%、及び、1.5<Al≦5.0mass%を含み、残部がTi及び不可避的不純物からなる。前記β型チタン合金は、10.0≦Moeq≦25.0mass%、1.0≦(Cr+Fe)/(Nb+V)≦10.0、及び、1.0≦Nb+V≦11.0mass%を満たす。チタン製品は、前記β型チタン合金からなる。このようなβ型チタン合金は、上記組成を有する鋳塊を、750〜900℃で溶体化処理することにより得られる。
【選択図】なし

Description

本発明は、β型チタン合金及びこれを用いたチタン製品、並びに、β型チタン合金の製造方法に関し、さらに詳しくは、低廉であり、且つ、冷間加工性と強度特性のバランスに優れたβ型チタン合金及びこれを用いたチタン製品(例えば、ゴルフクラブヘッド、自転車用ギア、メガネフレーム、各種ボルト、バルブリテーナー、耐海水用シャフトなど)、並びに、β型チタン合金の製造方法に関する。
現在、一般的なβ型チタン合金として、Ti−15Mo−5Zr−3Al、Ti−15V−3Cr−3Sn−3Al、Ti−22V−4Al(特許文献1)等が知られている。また、本願出願人は、Ti−15V−6Cr−4Al(特許文献2)を提案している。
これらの合金は、高価なMo又はVを多量に含んでいるため、コストが高い。また、特許文献1、2に記載のチタン合金は、固溶強化能の低いVの含有量が多いため、強度が低いという問題がある。
そこで本願出願人は、Ti−13Cr−1Fe−3Al合金(特許文献3、4)を提案した。この合金は、高価な元素を添加せず、溶体化処理状態での強度に優れた合金となっている。しかし、Ti−22V−4Al合金やTi−15V−3Cr−3Sn−3Al合金等の一般的なV系β型チタン合金に比べて、冷間加工性が悪く、さらに時効熱処理等によって著しい脆化を招くという問題がある。
また、特許文献5には、冷間加工性と強度特性のバランスに優れたβ型チタン合金が提案されている。しかし、特許文献5に記載の合金は、特許文献2と同様にV含有量が高いため、強度が低く、コストが高い。
特許文献6には、Vを含まない強度−延性バランスに優れたチタン合金が提案されている。しかし、特許文献6に記載の合金は、Feの添加量が多く、特に時効熱処理等によって著しい脆化を招く。
特許文献7には、高強度・高延性β型チタン合金が提案されている。しかし、特許文献7に記載の合金は、V含有量が多いため、強度が低く、コストが高い。
特許文献8には、Mo及びVの含有量を低く抑えたβ型チタン合金が提案されている。しかし、特許文献8に記載の合金は、Feの添加量が多いため、特に時効熱処理等によって著しい脆化を招く。
以上のことから、従来においては、低廉であり、且つ、冷間加工性と強度特性とのバランスに優れたβ型チタン合金は提案されていない。
特開昭61−250138号公報 特開2000−144286号公報 特開2006−200008号公報 特開2005−060821号公報 特開2006−111934号公報 特開平07−278704号公報 特開2004−270009号公報 特開2008−133531号公報
本発明が解決しようとする課題は、低廉であり、且つ、冷間加工性と強度特性とのバランスに優れたβ型チタン合金及びこれを用いたチタン製品、並びに、β型チタン合金の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係るβ型チタン合金は、以下の構成を備えていることを要旨とする。
(1)前記β型チタン合金は、
5.0<Cr≦15.0mass%、
Fe≦3.0mass%、
Nb<7.0mass%、
V<4.0mass%、及び、
1.5<Al≦5.0mass%、
を含み、残部がTi及び不可避的不純物からなる。
(2)前記β型チタン合金は、次の(1)〜(3)式を満たす。
10.0≦Moeq≦25.0mass% ・・・(1)
1.0≦(Cr+Fe)/(Nb+V)≦10.0 ・・・(2)
1.0≦Nb+V≦11.0mass% ・・・(3)
但し、
Moeq=1.25[Cr]+2.5[Fe]+[V]/1.5+[Nb]/3.5、
[X]は、元素Xのmass%。
本発明に係るチタン製品は、本発明に係るβ型チタン合金からなることを要旨とする。
本発明に係るβ型チタン合金の製造方法は、
所定の組成を有する鋳塊を、750〜900℃で溶体化処理する溶体化処理工程
を備えている。
β型チタン合金の製造方法は、
(a)前記溶体化処理後の鋳塊を、加工率5〜80%で冷間加工する冷間加工工程、及び/又は、
(b)前記溶体化処理後の鋳塊又は前記冷間加工後の材料を、400〜550℃で時効処理する時効処理工程
をさらに備えていても良い。
本発明に係るβ型チタン合金及びこれを用いたチタン製品は、相対的に少量のVを含み、かつ、成分元素が最適化されているので、低廉であり、且つ、強度と冷間加工性のバランスに優れている。また、溶体化処理後の材料に対して、冷間加工及び/又は時効処理を施すと、高い強度が得られる。
以下に、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. β型チタン合金]
[1.1. 主構成元素]
本発明に係るβ型チタン合金は、以下のような元素を含み、残部がTi及び不可避的不純物からなる。添加元素の種類、その成分範囲、及び、その限定理由は、以下の通りである。なお、「β型チタン合金」とは、固溶化熱処理後にβ相単相となる合金をいう。
(1) 5.0<Cr≦15.0mass%:
Crは、共析型β安定化元素であり、VやMoに比べて固溶強化能が高く、且つ、安価な元素である。本発明において、Crは、必須元素である。Cr量が少ないと、強度が低下する。従って、Cr量は、5.0mass%超である必要がある。Cr量は、さらに好ましくは、7.0mass%以上である。
一方、Cr量が過剰になると、固溶強化能が飽和するだけでなく、TiCr2を析出し、冷間加工性及び延性が著しく低下する。従って、Cr量は、15.0mass%以下である必要がある。Cr量は、さらに好ましくは、13.0mass%以下である。
(2) Fe≦3.0mass%:
Feも、Crと同様に共析型β安定化元素であり、Crよりも安価な元素である。Feは、必ずしも必要ではなく、必要に応じて添加することができる。また、Feは、原料のスポンジチタンに不可避的に含まれる不純物でもある。
Feは、Crよりさらに固溶強化能が高い。そのため、Fe量が過剰になると、冷間加工性及び延性が著しく低下する。従って、Fe量は、3.0mass%以下である必要がある。Fe量は、さらに好ましくは、2.5mass%未満、さらに好ましくは、2.0mass%未満、さらに好ましくは、1.5mass%未満である。
(3) Nb<7.0mass%:
Nbは、開放型β安定化元素であり、β相の延性及び冷間加工性を向上させる。Nbは、必ずしも必要ではなく、必要に応じて添加することができる。但し、本発明においては、Nb又はVの少なくとも一方を添加する必要がある。この点は、後述する。
しかし、Nb量が過剰になると、強度が低下する。また、時効硬化速度が遅くなるため長時間の熱処理が必要となる。従って、Nb量は、7.0mass%未満である必要がある。Nb量は、さらに好ましくは、4.0mass%未満、さらに好ましくは、2.0mass%未満である。
(4) V<4.0mass%:
Vは、Nbと同様に開放型β安定化元素であり、β相の延性及び冷間加工性を向上させる。Vは、必ずしも必要ではなく、必要に応じて添加することができる。但し、本発明においては、V又はNbの少なくとも一方を添加する必要がある。この点は、後述する。
しかし、V量が過剰になると、強度が低下する。また、時効硬化速度が遅くなるため長時間の熱処理が必要となる。従って、V量は、4.0mass%未満である必要がある。V量は、さらに好ましくは、3.5mass%未満である。
(5) 1.5<Al≦5.0mass%:
Alは、置換型のα安定化元素であり、焼き入れ及び時効時におけるω相の生成又は析出を抑制する効果がある。このような効果を得るためには、Al量は、1.5mass%超である必要がある。Al量は、さらに好ましくは、2.5mass%以上である。
一方、Al量が過剰になると、Ti3Alの析出を招き、加工性及び延性が低下する。従って、Al量は、5.0mass%以下である必要がある。Al量は、さらに好ましくは、3.5mass%未満である。
[1.2. 副構成元素]
本発明に係るβ型チタン合金は、上述した主構成元素に加えて、以下の1種又は2種以上の副構成元素をさらに含んでいてもよい。添加元素の種類、その成分範囲、及び、その限定理由は、以下の通りである。
(6) 0.05≦O≦0.5mass%:
(7) 0.05≦N≦0.5mass%:
(8) 0.05≦C≦0.5mass%:
O、N、及びCは、いずれもα安定化元素であり、Alと同様に、ω相を抑制すると共に、強度を向上させる効果がある。このような効果を得るためには、これらの元素の含有量は、それぞれ、0.05mass%以上が好ましい。
一方、これらの元素の含有量が過剰になると、加工性及び延性が著しく低下する。従って、これらの含有量は、それぞれ、0.5mass%以下が好ましい。
なお、β型チタン合金は、O、N、又はCのいずれか1種を含むものでも良く、あるいは、2種以上を含むものでも良い。
(9) 0.01≦B≦0.5mass%:
Bは、結晶粒を微細化し、加工性及び靱延性を向上させる。このような効果を得るためには、B量は、0.01mass%以上が好ましい。
一方、B量が過剰になると、効果が飽和するばかりでなく、加工性及び延性が低下する。従って、B量は、0.5mass%以下が好ましい。
(10) 0.5≦Sn≦5.0mass%:
(11) 0.5≦Zr≦5.0mass%:
Sn、及びZrは、中性元素であり、α相及びβ相の双方を固溶強化するのに有効である。このような効果を得るためには、これらの元素の含有量は、それぞれ、0.5mass%以上が好ましい。
一方、これらの元素の含有量が過剰になると、延性が低下する。従って、これらの元素の含有量は、それぞれ、5.0mass%以下が好ましい。これらの元素の含有量は、さらに好ましくは、それぞれ、2.0mass%未満である。
なお、β型チタン合金は、Sn又はZrのいずれか1種を含むものでも良く、あるいは、双方を含むものでも良い。
[1.3. 成分バランス]
本発明に係るβ型チタン合金は、成分元素が上述の範囲にあることに加えて、さらに次の(1)式〜(3)式を満たしている必要がある。
10.0≦Moeq≦25.0mass% ・・・(1)
1.0≦(Cr+Fe)/(Nb+V)≦10.0 ・・・(2)
1.0≦Nb+V≦11.0mass% ・・・(3)
但し、
Moeq=1.25[Cr]+2.5[Fe]+[V]/1.5+[Nb]/3.5、
[X]は、元素Xのmass%。
[1.3.1. (1)式]
Moeqは、チタン合金のβ安定化の度合いを示す指標である。本願では、Mo自体は添加していないが、β相の安定性の制御を行う場合、β安定化元素のバランスの目安として、Moeqを用いることが一般的であるため、Moeqで表記した。Moeqが少なくなると、β安定化が不十分となる。従って、Moeqは、10.0mass%以上である必要がある。Moeqは、さらに好ましくは、15.0mass%以上である。
一方、Moeqが過剰になると、安定β領域となるため、強度が低下するだけでなく、時効硬化速度が低下する。従って、Moeqは、25.0mass%以下である必要がある。Moeqは、さらに好ましくは、20.0mass%未満である。
[1.3.2. (2)式]
CrやFeは、いずれも共析型β安定化元素であり、かつ、固溶強化能が高い。しかし、CrやFeを過剰に添加すると、延性及び冷間加工性を悪化させる。
一方、NbやVは、いずれも開放型β安定化元素であり、かつ、β相の硬さを低減し、加工性を向上させる。しかし、NbやVを過剰に添加すると、強度の低下を招く。
従って、(Cr+Fe)と(Nb+V)のバランスを最適化すると、強度と加工性を両立させることができる。
すなわち、(Cr+Fe)/(Nb+V)比が小さくなると、十分な強度が得られない。従って、(Cr+Fe)/(Nb+V)比は、1.0以上である必要がある。(Cr+Fe)/(Nb+V)比は、さらに好ましくは、2以上、さらに好ましくは、3以上である。
一方、(Cr+Fe)/(Nb+V)比が大きくなりすぎると、冷間加工性及び延性が低下する。従って、(Cr+Fe)/(Nb+V)比は、10.0以下である必要がある。(Cr+Fe)/(Nb+V)比は、さらに好ましくは、7.0以下、さらに好ましくは、5.0以下である。
[1.3.3. (3)式]
(3)式は、Nb量とV量の合計量を表す。合計量が少ないと、延性及び冷間加工性を確保できない。従って、合計量は、1.0mass%以上である必要がある。合計量は、さらに好ましくは、2.0mass%以上、さらに好ましくは、2.5mass%以上である。
一方、合計量が過剰になると、コスト高となる。従って、合計量は、11.0mass%以下である必要がある。合計量は、さらに好ましくは、6.0mass%以下、さらに好ましくは、3.5mass%以下である。
[2. β型チタン合金の製造方法]
本発明に係るβ型チタン合金は、
(1)上述した組成を有する鋳塊を製造し、
(2)得られた鋳塊に対して熱間加工を行い、
(3)熱間加工後の材料に対して溶体化処理を行う
ことにより製造することができる。
さらに溶体化処理後の材料に対して、冷間加工及び/又は時効処理を行っても良い。
[2.1. 溶解・鋳造工程]
まず、上述した組成となるように配合された原料を溶解・鋳造し、鋳塊を製造する(溶解・鋳造工程)。
溶解方法及び鋳造方法は、特に限定されるものではなく、目的に応じて種々の方法を用いることができる。溶解法としては、例えば、レビテーション溶解法などがある。
[2.2. 熱間加工工程]
次に、得られた鋳塊に対して熱間加工を施して、所定形状の材料とする(熱間加工工程)。熱間加工方法は、特に限定されるものではなく、所定形状の鋼材が得られる方法であればよい。熱間加工方法としては、例えば、熱間鍛造、熱間圧延などがある。
[2.3. 溶体化処理工程]
次に、熱間加工後の材料に対して溶体化処理を行う。溶体化処理は、具体的には、所定の温度に所定時間保持した後、冷却することにより行う。
溶体化処理温度が低すぎると、β相の単相組織が得られない。従って、溶体化処理温度は、750℃以上である必要がある。
一方、溶体化処理温度が高すぎると、結晶粒が粗大化する。従って、溶体化処理温度は、900℃以下である必要がある。
溶体化処理時間は、β相の単相組織が得られる時間であればよい。最適な溶体化処理時間は、組成や溶体化処理温度により異なるが、通常、1h程度である。
溶体化処理後、所定の冷却速度で冷却する。これにより、高温安定相であるβ相を室温で安定化させることができる。冷却速度は、β相の単相組織が得られる速度であればよい。本発明に係るβ型チタン合金の場合、水冷を行うのが好ましい。
[2.4. 冷間加工工程]
次に、必要に応じて、冷間加工後の材料に対して冷間加工を行う(冷間加工工程)。冷間加工は、目的とする形状に塑性加工するだけでなく、加工硬化させるため、及び/又は、後述する時効処理工程において時効処理を促進するために行われる。
一般に、冷間加工時の加工率が大きくなるほど、高い強度が得られる。このような効果を得るためには、加工率は、5%以上である必要がある。
一方、加工率が大きくなりすぎると、割れが発生しやすくなる。従って、加工率は、80%以下である必要がある。
[2.5. 時効処理工程]
次に、必要に応じて、溶体化処理後の材料又は冷間加工後の材料に対して時効処理を行う(時効処理工程)。時効処理によってβ相中にα相が析出し、強度が向上する。また、冷間加工材に対して時効処理を行うと、α相の析出がさらに促進される。
時効処理温度が低すぎると、α相の析出が不十分となる。従って、時効処理温度は、400℃以上である必要がある。
一方、時効処理温度が高すぎると、結晶粒が粗大化する。従って、時効処理温度は、550℃以下である必要がある。
時効処理時間は、目的とする強度が得られる時間であればよい。一般に、時効処理温度が高くなるほど、短時間でα相の析出が進行する。最適な時効処理時間は、組成や冷間加工の有無により異なるが、通常、24h程度である。
時効処理後、所定の冷却速度で冷却する。冷却速度は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な速度を選択する。本発明に係るβ型チタン合金の場合、時効処理後の冷却は、水冷又は空冷のいずれであっても良い。
[3. チタン製品]
本発明に係るチタン製品は、本発明に係るβ型チタン合金からなる。
チタン製品としては、例えば、
(1)ゴルフクラブヘッド、自転車用ギア等の各種スポーツ・レジャー用品、
(2)メガネフレーム等の民生品、
(3)各種ボルト、バルブリテーナー、耐海水用シャフト等の軽量、且つ、高強度が要求される各種部品類、
などがある。
[4. 作用]
本発明に係るβ型チタン合金及びこれを用いたチタン製品は、相対的に少量のVを含み、かつ、成分元素が最適化されているので、低廉であり、且つ、強度と冷間加工性のバランスに優れている。特に、溶体化処理後の材料に対して、冷間加工及び/又は時効処理を施すと、高い強度が得られる。
(実施例1〜22、比較例1〜13)
[1. 試料の作製]
表1に示す成分の合金を以下のようにして作製した。
まず、レビテーション溶解によってφ150×160mmのインゴットを溶製した。このインゴットを1050℃に加熱し、直径60mmに熱間鍛造した。さらに920℃で直径20mmに仕上げ鍛造した。鍛造後、溶体化処理(780℃/1h/水冷)を行った。また、材料の一部に対し、時効処理(475℃/24h/空冷)を行った。
Figure 2015117426
[2. 試験方法]
[2.1. 引張試験]
溶体化処理後の材料及び時効処理後の材料から、それぞれ、機械加工によってASTM E8に規定の3号引張試験片(直径:6.25mm、標点間距離:25mm)を作製した。引張試験は、インストロン型引張試験機を用い、クロスヘッド速度:5×10-5m/sにて実施し、0.2%耐力、引張強さ、及び伸びを測定した。
[2.2. 冷間加工性]
溶体化処理後の材料及び時効処理後の材料から、それぞれ、機械加工によって冷間加工性評価用の試験片(直径:6mm、高さ:9mm、個数:10個)を作製した。冷間加工性の評価試験は、加工率80%で圧縮試験を行い、割れの有無を観察することによって実施した。割れが発生しないものを「○」、割れが見られたものを「×」と評価した。
[3. 結果]
表2に結果を示す。表2より、以下のことがわかる。
Figure 2015117426
(1)実施例1〜20は、いずれも溶体化処理後の引張試験において、0.2%耐力及び引張強さが850MPa以上であり、伸びが18%以上であった。また、時効処理後の引張試験においては、0.2%耐力及び引張強さが1400MPa以上であり、伸びが7%以上であった。さらに、加工率80%の圧縮試験において、割れは発生しなかった。
このことから、実施例1〜20は、いずれも、低廉で、且つ、冷間加工性及び強度特性のバランスに優れていることがわかった。
(2)比較例1は、Cr量が少なく、V量が多いため、強度が劣っている。
(3)比較例2は、Nb、Vを含まないため、時効処理後の伸びや冷間加工性に劣っている。
(4)比較例3は、Cr量が少なく、V量が多いため、強度が劣っている。
(5)比較例4は、V量が多いため、強度が劣っている。
(6)比較例5は、Cr量が少ないため、強度が劣っている。
(7)比較例6は、Cr量が多いため、溶体化処理後や時効処理後の伸び、及び冷間加工性に劣っている。
(8)比較例7は、Fe量が多いため、溶体化処理後や時効処理後の伸び、及び冷間加工性に劣っている。
(9)比較例8は、Nb量が多いため、強度が劣っている。
(10)比較例9は、V量が多いため、強度が劣っている。
(11)比較例10は、Moeqが低いため、β相が十分安定化せず、伸びや冷間加工性が劣っている。
(12)比較例11は、Moeqが高いため、安定β領域となり、時効速度の低下により時効後の強度が劣っている。
(13)比較例12は、Nb+V量が多いため、コスト高になると同時に、強度が劣っている。
(14)比較例13は、(Cr+Fe)/(Nb+V)が高いため、冷間加工性及び延性が劣っている。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係るβ型チタン合金は、
(1)ゴルフクラブヘッド、自転車用ギア等の各種スポーツ・レジャー用品、
(2)メガネフレーム等の民生品、
(3)各種ボルト、バルブリテーナー、耐海水用シャフト等の軽量、且つ、高強度が要求される各種部品類、
の素材として使用することができる。

Claims (9)

  1. 以下の構成を備えたβ型チタン合金。
    (1)前記β型チタン合金は、
    5.0<Cr≦15.0mass%、
    Fe≦3.0mass%、
    Nb<7.0mass%、
    V<4.0mass%、及び、
    1.5<Al≦5.0mass%、
    を含み、残部がTi及び不可避的不純物からなる。
    (2)前記β型チタン合金は、次の(1)〜(3)式を満たす。
    10.0≦Moeq≦25.0mass% ・・・(1)
    1.0≦(Cr+Fe)/(Nb+V)≦10.0 ・・・(2)
    1.0≦Nb+V≦11.0mass% ・・・(3)
    但し、
    Moeq=1.25[Cr]+2.5[Fe]+[V]/1.5+[Nb]/3.5、
    [X]は、元素Xのmass%。
  2. 0.05≦O≦0.5mass%、
    0.05≦N≦0.5mass%、及び、
    0.05≦C≦0.5mass%
    からなる群から選ばれるいずれか1種以上をさらに含む請求項1に記載のβ型チタン合金。
  3. 0.01≦B≦0.5mass%
    をさらに含む請求項1又は2に記載のβ型チタン合金。
  4. 0.5≦Sn≦5.0mass%、及び/又は、
    0.5≦Zr≦5.0mass%
    をさらに含む請求項1から3までのいずれか1項に記載のβ型チタン合金。
  5. 請求項1から4までのいずれか1項に記載のβ型チタン合金からなるチタン製品。
  6. 請求項1から4までのいずれか1項に記載の組成を有する鋳塊を、750〜900℃で溶体化処理する溶体化処理工程
    を備えたβ型チタン合金の製造方法。
  7. 請求項1から4までのいずれか1項に記載の組成を有する鋳塊を、750〜900℃で溶体化処理する溶体化処理工程と、
    前記溶体化処理後の鋳塊を、加工率5〜80%で冷間加工する冷間加工工程と
    を備えたβ型チタン合金の製造方法。
  8. 請求項1から4までのいずれか1項に記載の組成を有する鋳塊を、750〜900℃で溶体化処理する溶体化処理工程と、
    前記溶体化処理後の鋳塊を、400〜550℃で時効処理する時効処理工程と
    を備えたβ型チタン合金の製造方法。
  9. 請求項1から4までのいずれか1項に記載の組成を有する鋳塊を、750〜900℃で溶体化処理する溶体化処理工程と、
    前記溶体化処理後の鋳塊を、加工率5〜80%で冷間加工する冷間加工工程と、
    前記冷間加工後の材料を、400〜550℃で時効処理する時効処理工程と
    を備えたβ型チタン合金の製造方法。
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