JP2015111568A - ガス拡散電極基材、それを用いたガス拡散電極およびそれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
(1)フッ素樹脂と導電性多孔質基材とを含み、少なくとも片側の表面において、滑落角が70°以下であり、かつ断面におけるフッ素と炭素の比率が2%以下であるガス拡散電極基材。
(2)フッ素樹脂と導電性多孔質基材とを含み、少なくとも片面の表面において、滑落角が70°以下であり、かつ飛行時間型二次イオン質量分析法で測定される、C4F7 +フラグメントとC3F7 +フラグメントとの強度比率、およびC5F9 +フラグメントとC4F9 +フラグメントとの強度比率がいずれも1.5以上であり、C2F5O−フラグメントとC2F5 −フラグメントとの強度比率、およびC3F7O−フラグメントとC2F5 −フラグメントとの強度比率がいずれも0.5以下であるガス拡散電極基材。
(3)ガス拡散電極基材の両側の表面においても、滑落角が70°以下である、(1)または(2)に記載のガス拡散電極基材。
(4)ガス拡散電極基材の片側の表面の滑落角と他の表面の滑落角に10°以上差がある、(1)〜(3)のいずれかに記載のガス拡散電極基材。
(5)フッ素樹脂はスパッタリングにより導電性多孔質基材にコーティングされている、(1)〜(4)のいずれかに記載のガス拡散電極基材。
(6)結露条件でのガス拡散性が、ドライ条件でのガス拡散性と実質的に同等、またはそれ以上である、(1)〜(5)のいずれかに記載のガス拡散電極基材。
(7)(1)〜(6)のいずれかに記載のガス拡散電極基材を用いたガス拡散電極。
(8)ガス拡散電極基材の少なくとも片面に、微多孔層を設けてなる、(7)に記載のガス拡散電極。
(9)ガス拡散電極基材の両側の表面のうち、滑落角の小さい方の片面に微多孔層を設けてなる、(7)に記載のガス拡散電極。
(10)フッ素樹脂は融点が300℃以下であり、微多孔層にも含まれる、(8)または(9)に記載のガス拡散電極。
(11)微多孔層には、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーおよびグラフェンからなる群より選ばれる少なくとも1種の導電性粒子が含まれる、(8)〜(10)のいずれかに記載のガス拡散電極。
(12)スパッタリングの電源として、周波数が110KHz以上2.45GHz未満の交流電源を用い、真空度10−3Pa以上の高真空に1〜48時間保った後、導電性多孔質基材の面積に対するスパッタリング出力を2kW/m2〜30kW/m2として、導電性多孔質基材にフッ素樹脂をスパッタリングしてガス拡散電極基材を得る、ガス拡散電極基材の製造方法。
(13)(12)に記載の製造方法で得られたガス拡散電極基材を用いてガス拡散電極を製造する、ガス拡散電極の製造方法。
(14)(12)に記載の製造方法で得られたガス拡散電極基材の少なくとも片面に微多孔層を形成する、ガス拡散電極の製造方法。
撥水加工に用いる撥水材としては、前記したフッ素樹脂を用いる。従来の撥水加工は、撥水材ディスパージョンに浸漬する処理技術が一般的である。しかし、この技術においては撥水材が導電性基材中に局在し、撥水性が不均一となりやすい。図2に、従来技術として一般的なPTFEの水分散液にカーボンペーパーを浸漬(ディッピング)することにより撥水処理して得たガス拡散電極基材の表面を観察した電子顕微鏡(SEM)写真を示す。炭素繊維の間の水平方向に膜が張られている水かき様の樹脂炭化部分に撥水材であるPTFEが堆積し、局在している様子が分かる。一方、炭素繊維そのものには撥水材であるPTFEの付着が観察できず、ガス拡散電極基材内部で撥水材が微視的に見て均一に付着していない。
(1)スパッタリングの電源の周波数は13.56MHzが最も望ましい。また、13.56MHz以上の周波数に直流あるいは直流バルス電圧を重畳した電源を用いても良い。直流(DC)あるいは110KHz未満の交流電源では、放電が不安定になるため十分な撥水材の付着が得られず、また2.45GHz以上の周波数では放電しても自己バイアスが不足するため、限られた時間内に十分な撥水性が得ることが困難である。
(2)初期真空度10−3Pa以上の高真空の状態にしておき、1〜48時間保った後、Arなどのスパッタリングガスを導入する。また、必要に応じてフッ素を有する分子を適宜スパッタリング装置内に導入しても良い。
(3)スパッタリングの出力については、放電が安定する出力の範囲であれば良いが、ターゲットの面積に対する出力密度としては、2kW/m2〜30kW/m2において安定的な放電状態が得られ、それにより導電性多孔質基材の面積に対するスパッタリング出力を2kW/m2〜30kW/m2とすることによりフッ素樹脂の付着量を適正なものとできる。
(4)スパッタリング時に不純物が混入すると本発明における十分な撥水性や撥水性の耐久性が得られないことが多い。これを防ぐため、スパッタリングを行なう前にスパッタリング装置内部の付着物は十分に除去しておくことが望ましい。
A.導電性多孔質基材
・カーボンペーパー(東レ(株)製、TGP−H−030)
B.撥水材(ターゲット)
・PTFE板(“テフロン(登録商標)”PTFEの板)
・FEP板(“テフロン(登録商標)”FEPの板)
<微多孔層塗液の材料>
C.溶媒
・精製水
D.フッ素樹脂
・PTFE樹脂 “ポリフロン(登録商標)”PTFEディスパージョンD210−C(ダイキン工業(株)製)
・FEP樹脂 “ポリフロン(登録商標)”FEPディスパージョン ND−110(ダイキン工業(株)製)
E.その他
・界面活性剤“TRITON(登録商標)”X−100(ナカライテスク(株)製)
F.導電性微粒子(炭素質粉末)
・カーボンブラック“デンカブラック(登録商標)”(電気化学工業(株)製)
・カーボンナノファイバー“VGCF(登録商標)”(昭和電工(株)製)。
ガス拡散電極基材を水平に置き、片刃を用いて水平面に対して約10°の角度で斜めにスライスして断面を出し、SEM−EDX(エネルギー分散型蛍光X線)を用いて、一方の表面に近い部分から他方の表面に近い部分までの視野(全体視野)がモニター画面に収まるよう拡大倍率を調整し、加速電圧10KeV、スキャン幅20μm、ラインスキャン間隔50μmでガス拡散電極基材の厚み方向に炭素およびフッ素の元素分布測定を5回行い、フッ素および炭素に対応するX線量(カウント数)を定量し、F/C比率(%)を求めた。
撥水加工されたガス拡散電極基材のTOF−SIMSによるフルオロカーボン種の分析は、以下のように行った。用意されたサンプルをコンタミネーションに注意しながら約5mm四方に切り出し、TOF−SIMSの試料室に、一次イオンが測定する面に照射されるようにセットする。試料室内を所定の真空度にし、試料表面に一次イオンを照射し、試料表面から放出される二次イオンに一定の運動エネルギーを与えて、飛行時間型の質量分析計に導かれる。同じエネルギーで加速された二次イオンのそれぞれは質量に応じた速度で分析計を通過する。検出器までの距離は一定であるため、そこに到達するまでの時間は質量の関数となり、この飛行時間の分布を精密に計測することによって、試料表面から放出される二次イオン種の質量数を同定し、指定したフラグメント(例えばC4F7 +、C3F7 +など)のピーク強度から各強度比率(C4F7 +/C3F7 +など)を求めた。装置条件などは以下のとおりである。
装置:TOF−SIMS 5(ION−TOF社製)
測定真空度(試料導入前):4×10−7Pa以下
一次イオン: Bi3 ++
一次イオン加速電圧: 25kV
パルス幅:7.4ns
二次イオン極性: 正および負
サイクルタイム: 140μs
二次イオン検出エリア: 300×300μm2
協和界面科学株式会社製 自動接触角計DM501の滑落角測定モードを用い、試料上に10μリットルの水滴を滴下し、試料ステージを水平の状態から段階的に傾斜を増していき(1°/秒で傾斜、1秒間停止、これを繰り返す)、水滴が滑落して、測定画面から消え去る角度を滑落角とした。
結露の生じる高湿度におけるガス拡散性を西華産業製 ガス拡散/透過、水蒸気拡散/透過測定器 MVDP−2000を用いて直接測定した。
得られたガス拡散電極を、電解質膜・触媒層一体化品(日本ゴア製の電解質膜“ゴアセレクト(登録商標)”に、日本ゴア製触媒層“PRIMEA(登録商標)”を両面に形成したもの)の両側に、触媒層と微多孔層が接するように挟み、ホットプレスすることにより、膜電極接合体(MEA)を作製した。この膜電極接合体を燃料電池用単セルに組み込み、電池温度40℃、燃料利用効率を70%、空気利用効率を40%、アノード側の水素、カソード側の空気をそれぞれ露点が75℃、60℃となるように加湿して発電させ、電流密度を高くしていって発電が停止する電流密度の値(限界電流密度)を耐フラッディング性の指標とした。また、通常の運転条件(電池温度70℃)での発電性能も測定した。
導電性多孔質基材であるカーボンペーパー(東レ(株)製 TGP−H−030)を10cm角に打ち抜き、幅12cmの長尺PETフィルムにポリイミド粘着テープ(“カプトン(登録商標)”テープ)を用いて中央部に貼り付け、ロール状の原反とした。図1は撥水処理前のカーボンペーパーの表面SEM写真である。このロール原反を、真空スパッタリング装置の巻き出し部に装着し、真空到達度10−4Paにおいて48時間保持したのち、真空中で巻き取りながら、PTFE板をターゲットとして用いてPTFEのスパッタリングを行い、PETフィルムを除去してガス拡散電極基材である撥水カーボンペーパーを得た。
スパッタリングの条件は以下の通りである。
導電性基材の搬送速度 0.2m/分
電源周波数 13.56MHz
ガス種 アルゴン 圧力 5Pa
スパッタリング出力 100W
ステンレスバットにPTFEディスパージョン(ダイキン工業製 D210−C)をPTFE濃度10%に薄めた分散液を入れ、実施例1で用いたと同じ10cm角のカーボンペーパーを浸し、余分な液をぬぐい取ったあと、100℃のオーブンで乾燥し、さらに380℃で焼結を行い、ガス拡散電極基材である撥水カーボンペーパーを得た。撥水前の電極基材の質量に対して撥水処理の質量は8%増加していた。この撥水処理したガス拡散電極基材について滑落角を測定したところ、片面18°、反対面もほぼ同じ18°であった。
スパッタリング速度を0.1m/分に変更した以外は実施例1と同様にしてガス拡散電極基材およびガス拡散電極を作製し、各種評価を行った。
実施例1と同様に、カーボンペーパーの片面を撥水加工し、ついで反対側の面が処理されるように裏返して長尺PETフィルムに貼り付け、同じ条件にてスパッタリングを行なった以外は、実施例1と同様にしてガス拡散電極基材およびガス拡散電極を作製し、各種評価を行った。
スパッタリング速度を0.1m/分とした以外は実施例3と同様にしてガス拡散電極基材およびガス拡散電極を作製し、各種評価を行った。
スパッタリング出力を60Wとした以外は実施例1と同様にしてガス拡散電極基材およびガス拡散電極を作製し、各種評価を行った。
実施例1において、微多孔層に用いるフッ素樹脂をFEPに換え、焼結温度を300℃とした以外は実施例1と同様にしてガス拡散電極基材およびガス拡散電極を作製し、各種評価を行った。
スパッタリングする撥水材(ターゲット)としてFEP板を用い、微多孔層に含有させるフッ素樹脂もFEP(融点が240℃)を用い、さらに焼結温度を300℃で実施した以外は、実施例1と同様にガス拡散電極基材およびガス拡散電極を作製し、各種評価を行なった。
微多孔層の調製において、カーボンブラック7.7質量部に代えて、カーボンブラック5.0質量部およびカーボンナノファイバー(VGCF)2.7質量部とした以外は実施例1と同様にして、ガス拡散電極基材およびガス拡散電極を作製し、各種評価を行なった。
実施例1において、スパッタリングに用いる電源の周波数を110KHzのものに変え、100W,0.1m/分でスパッタリングしたあとさらにもう一度同じ条件で同じ面をスパッタリング処理した以外は実施例1と同様にして、ガス拡散電極基材およびガス拡散電極を作製し、各種評価を行なった。スパッタリング処理を繰り返したのは、110KHzでは自己バイアスが小さいため、スパッタリングにより付着する“テフロン(登録商標)”の量が少ないことによる。
実施例1において、スパッタリング前の真空保持を行なわずに10−3Paの真空度に到達した時点でアルゴンガスを導入し、即スパッタリングを行なった以外は実施例1と同様にガス拡散電極基材およびガス拡散電極を作製し、各種評価を行った。
実施例1において、スパッタリング出力を30Wとした以外は実施例1と同様にガス拡散電極基材およびガス拡散電極を作製し、各種評価を行った。
実施例9において、スパッタリングに用いる電源の周波数を60KHzのものに変え、100W、0.1m/分で3回スパッタリングを繰り返した以外は実施例9と同様にしてガス拡散電極基材およびガス拡散電極を作製し、各種評価を行なった。
実施例1において、スパッタリング前の高真空での48時間保持を行わず、真空度が10−2Paに到達した時点でスパッタリングを開始した以外はすべて実施例1と同様にガス拡散電極基材およびガス拡散電極を作製し、各種評価を行なった。図9は、得られたガス拡散電極基材について測定した、TOF−SIMSによる負の二次イオン種マススペクトルを示している。実施例1で得られたガス拡散電極基材に比べ、C2F5O−などのフルオロエーテル種のスペクトル強度が大きいことが分かる。
11 炭素繊維
12 撥水(浸漬)処理済みカーボンペーパー
13 PTFEの偏在
14 PTFEスパッタリング後のカーボンペーパー
15 PTFEスパッタリング後のカーボンペーパー断面
16 撥水(浸漬)処理済みカーボンペーパー断面
17 PTFEの偏在を示すエネルギー分散型蛍光X線分析におけるフッ素の局所的分布
Claims (14)
- フッ素樹脂と導電性多孔質基材とを含み、少なくとも片側の表面において、滑落角が70°以下であり、かつ断面におけるフッ素と炭素の比率が2%以下であるガス拡散電極基材。
- フッ素樹脂と導電性多孔質基材とを含み、少なくとも片面の表面において、滑落角が70°以下であり、かつ飛行時間型二次イオン質量分析法で測定される、C4F7 +フラグメントとC3F7 +フラグメントとの強度比率、およびC5F9 +フラグメントとC4F9 +フラグメントとの強度比率がいずれも1.5以上であり、C2F5O−フラグメントとC2F5 −フラグメントとの強度比率、およびC3F7O−フラグメントとC2F5 −フラグメントとの強度比率がいずれも0.5以下であるガス拡散電極基材。
- ガス拡散電極基材の両側の表面においても、滑落角が70°以下である、請求項1または2に記載のガス拡散電極基材。
- ガス拡散電極基材の片側の表面の滑落角と他の表面の滑落角に10°以上差がある、請求項1〜3のいずれかに記載のガス拡散電極基材。
- フッ素樹脂はスパッタリングにより導電性多孔質基材にコーティングされている、請求項1〜4のいずれかに記載のガス拡散電極基材。
- 結露条件でのガス拡散性が、ドライ条件でのガス拡散性と実質的に同等、またはそれ以上である、請求項1〜5のいずれかに記載のガス拡散電極基材。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のガス拡散電極基材を用いたガス拡散電極。
- ガス拡散電極基材の少なくとも片面に、微多孔層を設けてなる、請求項7に記載のガス拡散電極。
- ガス拡散電極基材の両側の表面のうち、滑落角の小さい方の片面に微多孔層を設けてなる、請求項7に記載のガス拡散電極。
- フッ素樹脂は融点が300℃以下であり、微多孔層にも含まれる、請求項8または9に記載のガス拡散電極。
- 微多孔層には、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーおよびグラフェンからなる群より選ばれる少なくとも1種の導電性粒子が含まれる、請求項8〜10のいずれかに記載のガス拡散電極。
- スパッタリングの電源として、周波数が110KHz以上2.45GHz未満の交流電源を用い、真空度10−3Pa以上の高真空に1〜48時間保った後、導電性多孔質基材の面積に対するスパッタリング出力を2kW/m2〜30kW/m2として、導電性多孔質基材にフッ素樹脂をスパッタリングしてガス拡散電極基材を得る、ガス拡散電極基材の製造方法。
- 請求項12に記載の製造方法で得られたガス拡散電極基材を用いてガス拡散電極を製造する、ガス拡散電極の製造方法。
- 請求項12に記載の製造方法で得られたガス拡散電極基材の少なくとも片面に微多孔層を形成する、ガス拡散電極の製造方法。
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