以下、本発明の窒化物半導体発光素子について図面を用いて説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表すものである。また、長さ、幅、厚さ、深さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜変更されており、実際の寸法関係を表すものではない。
以下では、位置関係を表すために、図1の下側に記載した部分を「下」と表現し、図1の上側に記載した部分を「上」と表現することがある。これは便宜上の表現であり、重力方向に対して定められる「上」および「下」とは異なる。
「バリア層」は井戸層に挟まれた層を表わす。井戸層に挟まれていないバリア層は「最初のバリア層」または「最後のバリア層」と表わし、井戸層に挟まれたバリア層とは表記を変えている。
「ドーパント濃度」と、n型ドーパントまたはp型ドーパントのドープに伴い発生する電子またはホールの濃度である「キャリア濃度」とを用いている。これらの関係については後述する。
「キャリアガス」とは、III族原料ガス、V族原料ガスおよびドーパント原料ガス以外のガスである。キャリアガスを構成する原子は膜中などに取り込まれない。
「n型窒化物半導体層」は、電子の流れを実用上妨げない程度の厚さの低キャリア濃度のn型層またはアンドープ層を含んでいても良い。「p型窒化物半導体層」は、ホールの流れを実用上妨げない程度の厚さの低キャリア濃度のp型層またはアンドープ層を含んでいても良い。「実用上妨げない」とは窒化物半導体発光素子の動作電圧が実用的なレベルであることを言う。
<窒化物半導体発光素子の構造>
図1および図2は、それぞれ、本発明の一実施形態に係る窒化物半導体発光素子1の概略断面図および概略平面図である。図1は、図2に示すI−I線における断面図に相当する。図3は、図1に示す窒化物半導体発光素子1のn型コンタクト層8からp型窒化物半導体層16までにおけるバンドギャップエネルギーEgの大きさを模式的に示すエネルギー図である。図3の縦軸方向は図1に示す窒化物半導体発光素子1の上下方向を表わし、図3の横軸のEgは各層におけるバンドギャップエネルギーの大きさを模式的に表わす。図3には、n型ドーパントがドープされている層の右側にはドットを付して「n」と記している。図4は、図1に示す窒化物半導体発光素子1の基板3の拡大平面図である。
図1に示す窒化物半導体発光素子1は、第1積層体6と、第2積層体11と、発光層14と、p型窒化物半導体層16,17,18とを備える。本実施形態では、基板3とバッファ層5と下地層7とn型コンタクト層8とn型変調ドープ層9とが積層されてなる部分を第1積層体6と称し、Vピット発生層10と多層構造体121と超格子層122とが積層されてなる部分を第2積層体11と称して区別している。本実施形態では、n型コンタクト層8およびn型変調ドープ層9の少なくとも一方が特許請求の範囲における「第1n型窒化物半導体層」に相当し、Vピット発生層10が特許請求の範囲における「第2n型窒化物半導体層」に相当し、多層構造体121および超格子層122の少なくとも一方を構成する層の少なくとも一層が特許請求の範囲における「第3n型窒化物半導体層」に相当する。しかし、本発明は、n側窒化物半導体層の形成を二段階に分離し、後の形成工程において、スループットの減少する要因となる高温処理を行わずにn側窒化物半導体層を形成させることを可能にするところに特徴があり、第2積層体11として最初に形成される層が低温で形成されたn型窒化物半導体層であることが重要である。そのため、本発明では、第2積層体11として最初に形成される層がVピット発生層10として機能する層であるということに限定されず、Vピット発生層10の次に多層構造体121および超格子層122として各々機能する層が形成されるということに限定されない。しかし、本発明において、第2積層体11として最初に形成される層がVピット発生層10として機能する層であれば、また、Vピット発生層10の次に多層構造体121および超格子層122として各々機能する層が形成されれば、組み合わせによる相乗効果を期待できる。
第1積層体6の一部と第2積層体11と発光層14とp型窒化物半導体層16,17,18とは、エッチングされてメサ部30を構成している。p型窒化物半導体層18の上には、透明電極23を介してp側電極25が設けられている。メサ部30の外側(図1における右側)では、n型コンタクト層8の上面の一部分がn型変調ドープ層9などから露出しており、n型コンタクト層8の露出面の上にはn側電極21が設けられている。透明保護膜27は、透明電極23とエッチングにより露出した各層の側面とを覆っており、n側電極21とp側電極25とを露出している。
窒化物半導体発光素子1の断面を超高倍率STEM(Scanning Transmission Electron Microscopy)観察すると、Vピット15が発生していることが確認される。本実施形態に係る窒化物半導体発光素子1では、Vピット発生層10を設けることによりVピット15の発生をコントロールしている。
<第1積層体>
第1積層体6は、本実施形態では基板3とバッファ層5と下地層7とn型コンタクト層8とn型変調ドープ層9とを備えるが、n型コンタクト層8およびn型変調ドープ層9のうちの少なくとも一方を備えていれば良い。本実施形態に係る窒化物半導体発光素子1は基板3を備えていなくても良く、その場合には、第1積層体6は下地層7とn型コンタクト層8とn型変調ドープ層9とを備える。
第1積層体6は、第1面61を有する。第1面61は、第1積層体6の表面であってVピット発生層10(第2n型窒化物半導体層)が接する面を意味する。本実施形態における第1積層体6はバッファ層5と下地層7とn型コンタクト層8とn型変調ドープ層9とが基板3上に順に積層されて構成されているので、第1面61はn型変調ドープ層9の上面(n型コンタクト層8とn型変調ドープ層9との界面とは反対側に位置するn型変調ドープ層9の面)に相当する。
第1面61を構成する半導体層は、アンドープ層(たとえば後述のn-層9B)であることが好ましい。この場合、Vピット発生層10はドープ層であることが好ましい。本明細書では、「第1面61を構成する半導体層」は、n型変調ドープ層9を構成する2以上の層のうちn型コンタクト層8から最も離れて位置する層に相当する。「アンドープ層」は、導電型ドーパントが全くドープされていない層を意味するだけでなく導電型ドーパントが結晶成長中に意図せずドープされた層をも意味する。この場合、アンドープ層は、たとえば、0cm-3以上3×1018cm-3以下の導電型ドーパントを含んでいても良い。「ドープ層」は、導電型ドーパントが結晶成長中に意図してドープされた層を意味する。ドープ層は、たとえば、1×1019cm-3以上の導電型ドーパントを含むことが好ましい。
第1面61を構成する半導体層は、ドープ層(たとえば後述のn+層9A)であっても良い。この場合、Vピット発生層10はアンドープ層であっても良い。
<基板>
基板3は、たとえば、サファイア基板などの絶縁性基板であっても良いし、GaN、SiCまたはZnOなどからなる導電性基板であっても良い。基板3の厚さは、窒化物半導体層の成長時には900μm以上1200μm以下であることが好ましく、製造された窒化物半導体発光素子1においては50μm以上300μm以下であることが好ましい。つまり、窒化物半導体発光素子1の製造方法は基板3を研磨する工程を備えても良い。また、窒化物半導体発光素子1の製造方法は基板3を除去する工程を備えても良い。
バッファ層5などが設けられる基板3の面(基板3の上面)は、図1に示すように凸部3aと凹部3bとが交互に形成されてなる凹凸形状を有することが好ましい。凸部3aは、図4に示すように基板3の上面において略円形形状を有することが好ましく、図4に示す仮想三角形3tの頂点に配置されていることが好ましい。隣り合う凸部3aの頂点の間隔(図4に示す仮想三角形3tの1辺)は、1μm以上5μm以下であることが好ましい。凸部3aは側面視において台形形状を有していても良いが、凸部3aの頂点は図1に示すように丸みを帯びていることが好ましい。
<バッファ層>
バッファ層5は、基板3の凸部3a上とその凹部3b上とに設けられている。バッファ層5は、たとえば、AlsoGatoOuoN1-uo(0≦s0≦1、0≦t0≦1、0≦u0≦1、s0+t0≠0)層であることが好ましく、AlN層またはAlON層であることがより好ましい。バッファ層5がAlON層である場合には、AlON層中のNのごく一部(0.5〜2%)が酸素に置き換えられていることが好ましい。これにより、基板3の成長表面の法線方向に伸長するようにバッファ層5が形成されるので、結晶粒の揃った柱状結晶の集合体からなるバッファ層5が得られる。バッファ層5の厚さは特に限定されないが、3nm以上100nm以下であることが好ましく、より好ましくは5nm以上50nm以下である。バッファ層5がスパッタ法により形成されたAlON層であれば、X線スペクトルに現れるピークの半値幅(下地層7の結晶品質の指標)が狭くなる。よって、バッファ層5はスパッタ法により形成されたAlON層であることが好ましい。
<下地層>
下地層7は、第1下地層71と第2下地層75とを有することが好ましい。これにより、X線スペクトルに現れるピークの半値幅(下地層7の結晶品質の指標)が狭くなる、つまり下地層7の結晶品質が高くなる。第1下地層71は、バッファ層5を挟んで基板3の凹部3b上に設けられ、好ましくは斜めファセット面71aを含む側面視略三角形の形状を有し、上面71bを有しても良い。「斜めファセット面」とは、基板3の凹部3bに対して10度以上の角度で傾斜した方向に延びる面であり、窒化物半導体の結晶面であることが好ましい。第2下地層75は、第1下地層71を覆っているとともにバッファ層5を挟んで基板3の凸部3aを覆っており、バッファ層5と第1下地層71とに接している。n型コンタクト層8に接する下地層7の面(下地層7の上面75b)は平坦である。本明細書では、特に限定する場合を除いて、第1下地層71と第2下地層75とを総じて下地層7と表わすことがある。
第1下地層71は、たとえば、Alx2Gay2Inz2N(0≦x2≦1、0≦y2≦1、0≦z2≦1、x2+y2+z2≠0)からなることが好ましい。第2下地層75は、たとえば、Alx3Gay3Inz3N(0≦x3≦1、0≦y3≦1、0≦z3≦1、x3+y3+z3≠0)からなることが好ましい。
第1下地層71および第2下地層75は、それぞれ、III族元素としてGaを含む窒化物半導体層であることが好ましい。これにより、柱状結晶の集合体からなるバッファ層5中の転位などの結晶欠陥を引き継ぐことなく第1下地層71および第2下地層75を形成することができる。詳細には、バッファ層5中の結晶欠陥を引き継ぐことなく第1下地層71および第2下地層75を設けるためにはバッファ層5との界面(バッファ層5の上面)付近で転位をループさせる必要がある。第1下地層71および第2下地層75がGaを含むIII族窒化物半導体層であれば、バッファ層5との界面付近で転位のループが生じやすい。つまり、第1下地層71および第2下地層75がIII族元素としてGaを含む窒化物半導体層であれば、バッファ層5中の結晶欠陥はバッファ層5との界面付近でループ化されて閉じ込められる。よって、バッファ層5中の結晶欠陥が第1下地層71および第2下地層75に引き継がれることを防止することができる。たとえば第1下地層71がAlx2Gay2N(0≦x2<1、0<y2<1)からなり、第2下地層75がAlx3Gay3N(0≦x3<1、0<y3<1)からなる場合、特に第1下地層71および第2下地層75がそれぞれGaNからなる場合、バッファ層5中の結晶欠陥はバッファ層5との界面付近でループ化されて閉じ込められ易くなる。これにより、転位密度が小さく良好な結晶品質を有する第1下地層71および第2下地層75が得られる。
第1下地層71および第2下地層75は、たとえば、1×1017cm-3以上1×1019cm-3以下のn型ドーパントを含んでいても良い。下地層7に含まれるn型ドーパントは、たとえば、Si、GeおよびSnの少なくとも1つであることが好ましく、Siであることがより好ましい。n型ドーパントがSiである場合には、n型ドーパントの原料ガスは、たとえば、シランまたはジシランであることが好ましい。しかし、良好な結晶品質を維持するという観点では、第1下地層71および第2下地層75は、それぞれ、アンドープ層であることが好ましい。
下地層7の厚さ(基板3の凹部3bに接する下地層7の面と下地層7の上面75bとの間の距離)は特に限定されない。下地層7の厚さが大きければ大きいほど、下地層7中の結晶欠陥は減少する。しかし、下地層7の厚さをある程度以上大きくすると、下地層7における結晶欠陥の減少という効果が飽和することがある。これらのことから、下地層7の厚さは、1μm以上8μm以下であることが好ましく、3μm以上5μm以下であることがより好ましい。
第1下地層71および第2下地層75の形成方法は、それぞれ、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法であることが好ましい。第1下地層71は、斜めファセット面71aが形成されるファセット成長モードで成長されることが好ましい。これにより、結晶欠陥が少なく、結晶品質が高い第1下地層71が形成される。第2下地層75は、斜めファセット面71aを埋め込んで平坦な上面75bを形成可能な埋込成長モードで成長されることが好ましい。これにより、平坦な上面75bを有し、結晶欠陥が少なく、結晶品質が高い第2下地層75が形成される。
第1下地層71および第2下地層75の成長温度は、800℃以上1250℃以下であることが好ましく、900℃以上1150℃以下であることがより好ましい。これにより、結晶欠陥が少なく且つ結晶品質に優れた第1下地層71および第2下地層75を形成することができる。本明細書では、「成長温度」は、その層を結晶成長させるときの基板3の温度を意味する。
<n型コンタクト層>
n型コンタクト層8は、第2下地層75の上面75b上に設けられている。n型コンタクト層8は、たとえば、Als2Gat2Inu2N(0≦s2≦1、0≦t2≦1、0≦u2≦1、s2+t2+u2≒1)層にn型ドーパントがドープされた層であることが好ましく、Als2Ga1-s2N(0≦s2≦1、好ましくは0≦s2≦0.5、より好ましくは0≦s2≦0.1)層にn型ドーパントがドープされた層であることがより好ましい。n型コンタクト層8は、アンドープ層または低キャリア濃度層などをさらに含んでも良い。
n型コンタクト層8に含まれるn型ドーパントは、特に限定されないが、Si、P、AsまたはSbなどであることが好ましく、Siであることがより好ましい。n型コンタクト層8のn型ドーパント濃度は、特に限定されないが、1×1019cm-3以下であることが好ましい。
n型コンタクト層8の厚さが厚ければ厚いほど、n型コンタクト層8の抵抗は低くなる。しかし、n型コンタクト層8の厚さを大きくすると、窒化物半導体発光素子1の製造コストの上昇を招くことがある。両者の兼ね合いから、n型コンタクト層8の最大厚さは1μm以上10μm以下であることが好ましい。
n型コンタクト層8の構成は特に限定されない。たとえば、n型コンタクト層8Aとn型コンタクト層8Bとを連続して形成することによりn型コンタクト層8を単層としても良い。n型コンタクト層8は3層以上のn型窒化物半導体層を含んでいても良い。n型コンタクト層8が2以上のn型窒化物半導体層を含む場合、2以上のn型窒化物半導体層は、同一の組成からなっても良いし、異なる組成からなっても良い。また、2以上のn型窒化物半導体層は、同一の厚さを有していても良いし、異なる厚さを有していても良い。
<変調ドープ層>
n型変調ドープ層9は、n型コンタクト層8上に設けられており、たとえば、n+層9Aとn-層9Bとが交互に積層されて構成されていることが好ましい。「変調ドープ層」は、ドーパントの量が異なる2種以上の層が交互に積層されてなる層を意味する。
n+層9Aは、n型ドーパント濃度が1.0×1019cm-3以上であるAls3Gat3Inu3N(0≦s3≦1、0≦t3≦1、0≦u3≦1、s3+t3+u3≒1)層であることが好ましく、n型ドーパント濃度が1.0×1019cm-3以上であるGaN層であることがより好ましい。n型ドーパントは、特に限定されないが、Si、P、AsまたはSbなどであることが好ましく、Siであることがより好ましい。
n-層9Bは、n+層9Aよりもn型ドーパント濃度が低い窒化物半導体層であることが好ましく、n型ドーパント濃度が3×1018cm-3以下であるAls4Gat4Inu4N(0≦s4≦1、0≦t4≦1、0≦u4≦1、s4+t4+u4≒1)層であることがより好ましく、アンドープ層であることがさらに好ましい。たとえば、n-層9Bは、n型ドーパント濃度が3×1018cm-3以下であるGaN層であることが好ましく、アンドープGaN層であることがより好ましい。
n+層9Aおよびn-層9Bのそれぞれの積層数は特に限定されない。n型変調ドープ層9は、n+層9Aとn-層9Bとの組み合わせを2組以上有しても良いし、1層のn-層9Bのみからなっても良い。
n+層9Aのそれぞれの厚さは、たとえば、5nm以上500nm以下であることが好ましい。n-層9Bのそれぞれの厚さは、たとえば、5nm以上500nm以下であることが好ましい。
<第2積層体>
第2積層体11は、Vピット発生層10と多層構造体121と超格子層122とを備える。Vピット発生層10は、第1積層体6の形成温度よりも低い温度で形成されることが好ましく、たとえばn型コンタクト層8またはn型変調ドープ層9の成長温度(第1n型窒化物半導体層を形成する温度)よりも低い温度で形成されることが好ましい。第1積層体6に接する層は950℃以下で形成されることがより好ましい。よって、Vピット発生層10が第1積層体6に接する場合には、当該Vピット発生層10は950℃以下で形成されることがより好ましい。第2積層体11が組成の異なる複数の層で構成される場合(たとえば第2積層体11がVピット発生層10と多層構造体121と超格子層122とで構成される場合)には、第1積層体6に接する層は850℃以下の温度で形成されることがさらに好ましい。よって、Vピット発生層10が第1積層体6に接する場合には、当該Vピット発生層10は850℃以下で形成されることがさらに好ましい。これにより、第2積層体11の形成後の降温工程に要する時間を短縮することができるので、スループットを高く維持することができる。また、Vピット発生層10の成長温度が高温である場合に比べて、Vピット発生層10を形成する装置のチャンバーに付着する付着物の量が減少する。よって、第2積層体11を形成する装置をメンテナンスする頻度が低くなる。これらのことから、窒化物半導体発光素子1の生産性が高くなる。Vピット発生層10は、700℃以上の温度で形成されることがより好ましく、750℃以上の温度で形成されることがさらに好ましい。これにより、MQW発光層14での発光効率を高く維持することができる。
なお、以下では、第2積層体11の構成の一例として、第2積層体11がVピット発生層10と多層構造体121と超格子層122とを備える構成を示す。しかし、第2積層体11の構成は以下に示す構成に限定されない。たとえば、第2積層体11は、単一の層からなっても良いし、不純物濃度または組成が異なる複数の層を備えていても良い。
多層構造体121は、Vピット発生層10の成長温度以下の温度で形成されることが好ましく、Vピット発生層10の成長温度と同一の温度で形成されることがより好ましい。多層構造体121の成長温度がVピット発生層10の成長温度以下であれば、Vピット15の大きさが大きくなるという効果が得られる。「多層構造体121がVピット発生層10の成長温度以下の温度で形成される」とは、多層構造体121の成長温度が(Vピット発生層10の成長温度−250℃)以上Vピット発生層10の成長温度以下であることを意味し、多層構造体121の成長温度が(Vピット発生層10の成長温度−150℃)以上Vピット発生層10の成長温度以下であることが好ましい。「多層構造体121がVピット発生層10の成長温度と同一の温度で形成される」とは、多層構造体121の成長温度が(Vピット発生層10の成長温度±10℃)であることを意味する。以上のことは超格子層122の成長温度についても言える。
多層構造体121の成長温度がVピット発生層10の成長温度以下であれば、Vピット15の大きさが大きくなるという効果が得られる。しかし、多層構造体121の成長温度が低すぎると、多層構造体121の膜質の低下を招くことがある。そのため、多層構造体121の成長温度は、600℃以上であることが好ましく、700℃以上であることがさらに好ましい。このことは超格子層122の成長温度についても言える。以下、第2積層体11の構成要素をそれぞれ示す。
<Vピット発生層>
Vピット発生層10は、第1積層体6の第1面61に接しており、Vピット15の始点の平均的な位置が発光層として実効的に機能する層(本実施形態では発光層14)よりも第1積層体6側に位置する層(本実施形態では超格子層122)内に位置するようにVピット15を形成するための層である。「Vピット15の始点」とは、Vピット15の底部(図1におけるVピット15の最下端部)を意味する。「Vピット15の始点の平均的な位置」とは、発光層14に形成されたVピット15の始点の位置を窒化物半導体発光素子1の厚さ方向(図1における上下方向)で平均化して得られた位置を意味する。
Vピット発生層10は、たとえば厚さが25nmであるハイドープn型GaN層であることが好ましい。「ハイドープ」とは、Vピット発生層10の下に位置するn型コンタクト層8またはn型変調ドープ層9よりも有意に(たとえば1.1倍以上、好ましくは1.4倍以上、より好ましくは1.8倍以上)n型ドーパント濃度が高いことを意味する。具体的には、Vピット発生層10のn型ドーパント濃度は、5×1018cm-3以上であることが好ましく、7×1018cm-3以上であることがより好ましく、1×1019cm-3以上であることがさらに好ましい。これにより、Vピット発生層10の膜質がn型変調ドープ層9の膜質よりも低下するので、Vピット発生層10によるVピット発生効果が有効に発揮される。
しかし、Vピット発生層10のn型ドーパント濃度が高くなり過ぎると、Vピット発生層10の上に形成される発光層14での発光効率の低下を招くことがある。そのため、Vピット発生層10のn型ドーパント濃度は、n型変調ドープ層9のn+層9Aのn型ドーパント濃度の10倍以下であることが好ましく、n型変調ドープ層9のn+層9Aのn型ドーパント濃度の3倍以下であることがさらに好ましい。
Vピット発生層10のn型ドーパント濃度は、n型変調ドープ層9のn+層9Aのn型ドーパント濃度と同一であっても良い。この場合、Vピット発生層10により発生したVピット15の大きさを大きくすることができる。これにより、ESD(Electro-Static Discharge:静電気放電)に起因する不良率を低下させることができる。
Vピット発生層10は、第1積層体6の第1面61よりも有意に(たとえば1.1倍以上、好ましくは1.4倍以上、より好ましくは1.8倍以上)n型ドーパント濃度が高いことが好ましい。これにより、Vピット発生層10によるVピット発生効果がさらに有効に発揮される。
なお、第1積層体6の第1面61を構成する半導体層がn+層9Aである場合、Vピット発生層10は、アンドープ層であっても良く、たとえば、厚さが10nmのアンドープ窒化物半導体層であることが好ましい。
Vピット発生層10は、たとえば、Als5Gat5Inu5N(0≦s5≦1、0≦t5≦1、0≦u5≦1、s5+t5+u5≒1)層にn型ドーパントがドープされた層であることが好ましく、Inu5Ga1-u5N(0≦u5≦1、好ましくは0≦u5≦0.5、より好ましくは0≦u5≦0.15)層にn型ドーパントがドープされた層であることがより好ましい。Vピット発生層10がInを含む場合には、Vピット発生層10のIn組成比はn型変調ドープ層9のn+層9Aおよびn-層9BのそれぞれのIn組成比よりも高いことが好ましい。これによっても、Vピット発生層10の膜質がn型変調ドープ層9の膜質よりも低下するので、Vピット発生層10によるVピット発生効果が有効に発揮される。
Vピット発生層10の厚さは、5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましい。これにより、貫通転位の単位個数あたりのVピット数が多くなる。
<多層構造体>
本実施形態に係る窒化物半導体発光素子1では、Vピット15の始点は発光層14よりも第1積層体6側に位置する。これにより、発光層14を構成するバリア層(特にアンドープバリア層)の層数を増やすことにより、発光に寄与する発光層14の体積を増やすことができる(後述)。よって、大電流駆動時での発光効率を高く維持でき、また、高温下における発光効率を高く維持できる。しかし、発光層14を構成するバリア層(特にアンドープバリア層)の層数を増やすことにより発光に寄与する発光層14の体積を増やすと、ESDに起因する不良率が増加することが分かった。
一方、発光層14を構成するバリア層(特にアンドープバリア層)の層数を増やすと、Vピット発生層10と発光に寄与する発光層14との間隔が狭くなる。その結果、Vピット15の始点が発光に寄与する発光層14の近くに位置することとなり好ましくない。Vピット15の始点の平均的な位置が発光層14(少なくとも発光層14の上部)内に存在しないようにするためには、Vピット発生層10を発光層14からできるだけ離間することが好ましい。しかし、この目的で発光層14とVピット発生層10との間に設けられた超格子層122の厚さを厚くすると、発光層14の品質劣化を招くことがある。また、窒化物半導体発光素子1の生産性の低下を招くこともある。
Vピット発生層10を発光層14からできるだけ離間することを目的としてVピット発生層10と超格子層122との間にn型GaN層のみをVピット発生層10の成長温度以下の温度で厚く形成すると、高温駆動時および大電流駆動時での発光効率の低下を招くことがあり、ESDに起因する不良率の増加を招くことがあった。その理由としては次に示すことが考えられる。Vピット発生層10の成長温度以下の温度でn型GaN層を厚く(たとえば200nm以上)形成すると、当該n型GaN層の成長表面は凹凸形状となる(当該n型GaN層の成長表面が白濁する)。そのため、当該n型GaN層の上に形成される層に悪影響を与えるからである。たとえば、当該n型GaN層の上に形成される層の結晶品質が低下するからである。
しかし、Vピット発生層10と超格子層122との間に多層構造体121が設けられていれば、多層構造体121の成長表面が凹凸形状となることを防止できるので、多層構造体121の上に形成される層の結晶品質を高く維持することができる。よって、高温駆動時または大電流駆動時における発光効率を高く維持でき、ESDに起因する不良率が低下する。多層構造体121の構成を説明する。
多層構造体121は、バンドギャップエネルギーが異なる複数種の窒化物半導体層が積層されて構成されたものであり、バンドギャップエネルギーが相対的に大きな窒化物半導体層121Aとバンドギャップエネルギーが相対的に小さな窒化物半導体層121Bとが交互に積層されて構成されたものであることが好ましい。これにより、Vピット発生層10で発生したVピット15の大きさが大きくなる。よって、ESDに起因する不良率が低下する。また、超格子層122の厚さおよび発光層14の厚さが大きくなる。なお、多層構造体121を構成する各層の厚さは超格子層122を構成する各層の厚さよりも大きいことが好ましい。
多層構造体121を構成する窒化物半導体層のn型ドーパント濃度はいずれもVピット発生層10のn型ドーパント濃度よりも低いことが好ましく、たとえば7×1017cm-3以下であることが好ましい。このように多層構造体121のn型ドーパント濃度が低ければ、逆バイアス印加時には空乏層が広がるので、逆バイアス印加時に発光層14に印加される電界を緩和することができる。よって、多層構造体121を超格子層122と共に電界緩和層として機能させることができる。なお、窒化物半導体発光素子1の駆動電圧が許容範囲を超えないのであれば、多層構造体121を構成する窒化物半導体層をアンドープ層としても良い。
多層構造体121においてバンドギャップエネルギーが相対的に小さな窒化物半導体層(たとえばInGaN層またはn型InGaN層)121Bが必要な理由は明らかではないが、次に示す理由が考えられる。Vピット発生層10の成長温度以下の温度で、バンドギャップエネルギーが相対的に大きな窒化物半導体層(たとえばGaN層またはn型GaN層など)121Aの成長途中にバンドギャップエネルギーが相対的に小さな窒化物半導体層121Bを成長させると、バンドギャップエネルギーが相対的に大きな窒化物半導体層121Aを構成する材料の2次元成長が促進される。そのため、多層構造体121のトータル厚さが厚くても、多層構造体121のトータル厚さが厚いことによる悪影響が多層構造体121の上に成長される層(たとえば超格子層122など)に及ぶことを防止できる。たとえば、多層構造体121のトータル厚さが厚いことにより超格子層122の結晶品質が低下することを防止できる。
このような効果を有効に得るためには、バンドギャップエネルギーが相対的に小さな窒化物半導体層121Bの厚さは、バンドギャップエネルギーが相対的に大きな窒化物半導体層121Aの厚さよりも薄いことが好ましく、バンドギャップエネルギーが相対的に大きな窒化物半導体層121Aの厚さの1/5倍以上1/2倍以下であることがより好ましい。なお、バンドギャップエネルギーが相対的に大きな窒化物半導体層121Aの厚さは、5nm以上100nm以下であることがより好ましく、10nm以上40nm以下であることがさらに好ましい。
多層構造体121の一例は、Vピット発生層10の上に、厚さが7nmであるn型InGaN層、厚さが30nmであるn型GaN層、厚さが7nmであるn型InGaN層および厚さが20nmであるn型GaN層が順に積層されたものである。
多層構造体121を構成する窒化物半導体層の具体的な組成は、特に限定されない。たとえば、バンドギャップエネルギーが相対的に大きな窒化物半導体層121Aは、たとえば、Ali1Gaj1In(1-i1-j1)N(0≦i1<1、0<j1≦1)層であることが好ましく、GaN層であることがより好ましい。バンドギャップエネルギーが相対的に小さな窒化物半導体層121Bは、たとえば、Ali2Gaj2In(1-i2-j2)N(0≦i2<1、0≦j2<1、j1<j2)層であることが好ましく、Gaj3In(1-j3)N(0<j3<1)層であることがより好ましい。さらに具体的には、多層構造体121は、Ali1Gaj1In(1-i1-j1)N(0≦i1<1、0<j1≦1)層とAli2Gaj2In(1-i2-j2)N(0≦i2<1、0≦j2<1、j1<j2)層とが交互に積層されて構成されたものであっても良いし、GaN層とGaj3In(1-j3)N(0<j3<1)層とが交互に積層されて構成されたものであっても良い。
多層構造体121を構成する窒化物半導体層がInを含む場合、バンドギャップエネルギーが相対的に小さな窒化物半導体層121BにおけるIn組成比は超格子層122におけるIn組成比と同程度(±5%)であることが好ましい。これにより、多層構造体121の形成後に超格子層122を形成するときにInの原料ガスの供給量を変更する手間を省くことができる。よって、窒化物半導体発光素子1の生産性がより向上する。より好ましくは、バンドギャップエネルギーが相対的に小さな窒化物半導体層121BがGaj3In(1-j3)N(0<j3<1)層であるときには、Gaj3In(1-j3)N(0<j3<1)層におけるIn組成比(1−j3)は超格子層122を構成するナローバンドギャップ層122B(後述)におけるIn組成比と同じである。
バンドギャップエネルギーが相対的に大きな窒化物半導体層121Aおよびバンドギャップエネルギーが相対的に小さな窒化物半導体層121Bのそれぞれの層数は特に限定されない。多層構造体121は、2組以上のバンドギャップエネルギーが相対的に大きな窒化物半導体層121Aおよびバンドギャップエネルギーが相対的に小さな窒化物半導体層121Bを有することが好ましい。これにより、多層構造体121の厚さを大きくすることができる。よって、Vピット15の始点の平均的な位置は、その多くが超格子層122の厚さ方向中央付近よりも第1積層体6側となる。したがって、高温駆動時または大電流駆動時における発光効率を高く維持することができる。
<超格子層>
Vピット発生層10と発光層14との間であって多層構造体121上には、超格子層122が設けられている。超格子層122の主たる働きは、発光層14からVピット発生層10をさらに離間して設け、Vピット15の始点の位置を発光層14内の下側または超格子層122内とすることである。超格子層122は、単層からなっても良いし、2〜3層が積層されて構成されていても良い。
「超格子層」とは、非常に薄い結晶層を交互に積層することにより、その周期構造が基本単位格子よりも長い結晶格子からなる層を意味する。超格子層122は、複数種の窒化物半導体層が積層されて超格子構造を構成しており、図3に示すようにバンドギャップエネルギーが相対的に大きなワイドバンドギャップ層122Aとバンドギャップエネルギーが相対的に小さなナローバンドギャップ層122Bとが交互に積層されて超格子構造を構成している。
超格子層122は、ワイドバンドギャップ層122Aおよびナローバンドギャップ層122Bとは異なる1層以上の半導体層と、ワイドバンドギャップ層122Aと、ナローバンドギャップ層122Bとが順に積層されて超格子構造を構成していても良い。超格子層122の一周期の長さ(ワイドバンドギャップ層122Aの厚さとナローバンドギャップ層122Bの厚さとの合計)は、後述の発光層14の一周期の長さよりも短いことが好ましく、たとえば1nm以上10nm以下であることがより好ましい。
各ワイドバンドギャップ層122Aは、たとえば、Ala1Gab1In(1-a1-b1)N(0≦a1≦1、0<b1≦1)層であることが好ましく、より好ましくはGaN層である。各ナローバンドギャップ層122Bは、ワイドバンドギャップ層122Aよりもバンドギャップエネルギーが小さいことが好ましく、各井戸層14W(後述)よりもバンドギャップエネルギーが大きいことが好ましい。ナローバンドギャップ層122Bは、たとえば、Ala2Gab2In(1-a2-b2)N(0≦a2<1、0<b2<1、(1−a1−b1)<(1−a2−b2))層であることが好ましく、より好ましくはGab2In(1-b2)N(0<b2<1)層である。
各ワイドバンドギャップ層122Aおよび各ナローバンドギャップ層122Bの少なくとも一方はn型ドーパントを含むことが好ましく、たとえば1×1019cm-3以上のn型ドーパントを含むことが好ましい。n型ドーパントは、特に限定されず、たとえば、Si、P、AsまたはSbなどであることが好ましく、より好ましくはSiである。
ワイドバンドギャップ層122Aとナローバンドギャップ層122Bとの両方がアンドープ層であると、駆動電圧が上昇することがある。一方、超格子層122を構成する窒化物半導体層の全てがドープ層であると、逆バイアス印加時に空乏層が広がり難くなるので、電子が超格子層122を抜け難くなる。そのため、電界緩和の効果を十分に得ることができない場合がある。しかし、超格子層122は、発光層14に電子を注入するために設けられている層でもある。よって、発光層14側に位置する少なくとも2層の窒化物半導体層をドープ層とし、そのドープ層よりも第1積層体6側に位置する窒化物半導体層をアンドープ層とすれば、発光層14に注入される電子数を増やすことができる。これにより、発光出力が向上し、駆動電圧が低下する。しかし、アンドープ層の厚さが厚くなると、電子の移動のために電圧を印加する必要があるので、駆動電圧が増大することがある。駆動電圧を低く維持するためには、第1積層体6側に位置する少なくとも2層の窒化物半導体層をアンドープ層とすることが好ましい。
ワイドバンドギャップ層122Aおよびナローバンドギャップ層122Bのそれぞれの層数は特に限定されない。超格子層122は、20組以上のワイドバンドギャップ層122Aおよびナローバンドギャップ層122Bを有することが好ましい。これにより、発光層14からVピット発生層10をさらに離隔して設けることができる。よって、Vピット15の始点の平均的な位置を超格子層122内とすることができる。
超格子層122が20組以上のワイドバンドギャップ層122Aおよびナローバンドギャップ層122Bを有する場合、発光層14側に位置する5組のワイドバンドギャップ層122Aおよびナローバンドギャップ層122Bがドープ層であることが好ましい。これにより、発光層14に注入される電子数をさらに増やすことができるので、発光出力がさらに向上し、駆動電圧がさらに低下する。
超格子層122の別の一例では、アンドープ超格子構造とドープ超格子構造とが多層構造体121上に順に設けられている。アンドープ超格子構造は、17組のアンドープのワイドバンドギャップ層122Aおよびアンドープのナローバンドギャップ層122Bからなることが好ましい。ドープ超格子構造は、3組のドープのワイドバンドギャップ層122Aおよびドープのナローバンドギャップ層122Bからなることが好ましい。
超格子層122のまた別の一例では、第1ドープ超格子構造とアンドープ超格子構造と第2ドープ超格子構造とが多層構造体121上に順に設けられている。第1および第2ドープ超格子構造は、それぞれ、5組のドープのワイドバンドギャップ層122Aおよびドープのナローバンドギャップ層122Bからなることが好ましい。アンドープ超格子構造は、10組のアンドープのワイドバンドギャップ層122Aおよびアンドープのナローバンドギャップ層122Bからなることが好ましい。
超格子層122は、発光層14の特性の更なる向上のために設けられた層であり、窒化物半導体発光素子1にとって必須の構成要件ではない。しかし、超格子層122をVピット発生層10と発光層14との間に設けると、Vピット発生層10を発光層14から離隔することができる。これにより、Vピット15の始点の平均的な位置が発光層14(少なくとも発光層14の上部)内に存在しないようにすることができる。よって、窒化物半導体発光素子1は、Vピット発生層10と発光層14との間に超格子層122を備えていることが好ましい。好ましくは超格子層122の厚さが40nm以上であり、より好ましくは超格子層122の厚さが50nm以上であり、さらに好ましくは超格子層122の厚さが60nm以上である。一方、超格子層122の厚さが大きすぎると発光層14の結晶品質の劣化を招くおそれがある。そのため、超格子層122の厚さは、好ましくは100nm以下であり、より好ましくは80nm以下である。なお、ワイドバンドギャップ層122Aのそれぞれの厚さは、たとえば、1nm以上3nm以下であることが好ましい。ナローバンドギャップ層122Bのそれぞれの厚さは、たとえば、1nm以上3nm以下であることが好ましい。
<発光層>
発光層14は、第2積層体11上に設けられている。発光層14には、部分的にVピット15が形成されている。「部分的にVピット15が形成されている」とは、発光層14の上面をAFM(Atomic Force Microscope:原子間力顕微鏡)で観察したときにVピット15が発光層14の上面において点状に観察されることを意味する。発光層14の上面におけるVピット数の密度は1×108cm-2以上1×1010cm-2以下であることが好ましい。従来においても発光層にはVピットが形成されていたが、従来の発光層の上面におけるVピット数の密度は1×108cm-2未満であった。
発光層14は、図3に示すように、バリア層14Aと井戸層14Wとが交互に積層されてなる積層構造を有することが好ましい。超格子層122のすぐ上には、最初のバリア層14AZが設けられることが好ましい。井戸層14Wのうち最もp型窒化物半導体層16側に位置する井戸層14W1の上には、最後のバリア層14A0が設けられることが好ましい。
本実施形態では、各バリア層14Aおよび各井戸層14Wを識別するために、p型窒化物半導体層16から超格子層122へ向かって番号を付して井戸層14W1、バリア層14A1、井戸層14W2、バリア層14A2、・・・などと表記している。なお、各バリア層14Aおよび各井戸層14Wのそれぞれを特定する場合を除いては、「バリア層14A」および「井戸層14W」と表記する。
発光層14は、バリア層14Aおよび井戸層14Wとは異なる1層以上の半導体層と、バリア層14Aと、井戸層14Wとが順に積層されてなる積層構造を有していても良い。また、発光層14の一周期(バリア層14Aの厚さと井戸層14Wの厚さとの和)の長さは、たとえば、5nm以上100nm以下であることが好ましい。
各井戸層14Wの組成は、窒化物半導体発光素子1に求められる発光波長に合わせて調整されることが好ましく、たとえば、AlcGadIn(1-c-d)N(0≦c<1、0<d≦1)であることが好ましく、Alを含まないIneGa(1-e)N(0<e≦1)であることがより好ましい。たとえば波長が375nm以下の紫外光を窒化物半導体発光素子1に発光させる場合には、発光層14のバンドギャップエネルギーを大きくする必要があるので、各井戸層14Wの組成はAlを含むことが好ましい。
各井戸層14Wの組成は同じであることが好ましい。これにより、各井戸層14Wにおいて電子とホールとの再結合により発光する波長を同じにすることができる。よって、窒化物半導体発光素子1の発光スペクトル幅を狭くすることができる。
p型窒化物半導体層16側に位置する井戸層14Wはドーパントを極力含まないことが好ましい。別の言い方をすると、ドーパント原料を導入することなくp型窒化物半導体層16側に位置する井戸層14Wを成長させることが好ましい。これにより、各井戸層14Wにおいて非発光再結合が起こり難くなるので、発光効率が良好となる。一方、第1積層体6側に位置する井戸層14Wはn型ドーパントを含んでいても良い。これにより、窒化物半導体発光素子1の駆動電圧が低下する傾向にある。
各井戸層14Wの厚さは特に限定されないが、それぞれ同じであることが好ましい。各井戸層14Wの厚さが同じであれば、各井戸層14Wの量子準位も同じになる。よって、各井戸層14Wにおける電子とホールとの再結合により、各井戸層14Wでは同じ波長の光が生じる。したがって、窒化物半導体発光素子1の発光スペクトル幅が狭くなるので、好都合である。一方、井戸層14Wの組成または厚さを意図的に異ならせれば、窒化物半導体発光素子1の発光スペクトル幅をブロードにすることができる。窒化物半導体発光素子1を照明用などの用途に使用する場合には、窒化物半導体発光素子1の発光スペクトル幅はブロードであることが好ましいので、井戸層14Wの組成または厚さを意図的に異ならせることが好ましい。たとえば、各井戸層14Wの厚さを1nm以上7nm以下の範囲内で適宜設定することが好ましい。これにより、発光効率を高く維持することができる。
各バリア層14A(14A1〜14A7)、最初のバリア層14AZおよび最後のバリア層14A0を構成する材料はそれぞれ各井戸層14Wを構成する材料よりもバンドギャップエネルギーが大きい方が好ましい。具体的には、各バリア層14A(14A1〜14A7)、最初のバリア層14AZ及び最後のバリア層14A0はAlfGagIn(1-f-g)N(0≦f<1、0<g≦1)からなることが好ましく、Alを含まないInhGa(1-h)N(0<h≦1、e>h)からなることがより好ましく、井戸層14Wを構成する材料と格子定数がほぼ同一であるAlfGagIn(1-f-g)N(0≦f<1、0<g≦1)からなることがさらに好ましい。
各バリア層14Aの厚さは、特に限定されないが、1nm以上10nm以下であることが好ましく、3nm以上7nm以下であることがより好ましい。各バリア層14Aの厚さが薄いほど駆動電圧が低下するが、各バリア層14Aの厚さを極端に薄くすると発光効率が低下する傾向にある。最初のバリア層14AZの厚さは特に限定されず、1nm以上10nm以下であることが好ましい。最後のバリア層14A0の厚さは特に限定されず、1nm以上40nm以下であることが好ましい。
各バリア層14A(14A1〜14A7)および最初のバリア層14AZにおけるn型ドーパント濃度は特に限定されず、必要に応じて適宜設定されることが好ましい。また、複数のバリア層14Aのうち、第1積層体6側に位置するバリア層14Aはn型ドーパントを含み、p型窒化物半導体層16側に位置するバリア層14Aは第1積層体6側に位置するバリア層14Aよりも低い濃度のn型ドーパントを含む、または、n型ドーパントを含まないことが好ましい。各バリア層14A(14A1〜14A7)、最初のバリア層14AZおよび最後のバリア層14A0は、n型ドーパントを意図的に含んでいても良い。また、各バリア層14A(14A1〜14A7)、最初のバリア層14AZおよび最後のバリア層14A0には、p型窒化物半導体層16,17,18の成長時の熱拡散によりp型ドーパントがドープされることがある。
井戸層14Wの層数は、特に限定されず、たとえば2層以上20層以下であることが好ましく、3層以上15層以下であることがより好ましく、4層以上12層以下であることがさらに好ましい。
<p型窒化物半導体層>
p型窒化物半導体層16,17,18は、発光層14上に順に設けられている。p型窒化物半導体層の層数は、3層に限定されず、2層以下であっても良いし、4層以上であっても良い。p型窒化物半導体層16,17,18は、たとえば、Als6Gat6Inu6N(0≦s6≦1、0≦t6≦1、0≦u6≦1、s6+t6+u6≠0)層にp型ドーパントがドープされた層であることが好ましく、Als6Ga(1-s6)N(0<s6≦0.4、好ましくは0.1≦s6≦0.3)層にp型ドーパントがドープされた層であることがより好ましい。たとえば、p型窒化物半導体層16は、p型AlGaN層である。p型窒化物半導体層17は、p型GaN層である。p型窒化物半導体層18は、p型ドーパント濃度がp型窒化物半導体層17よりも高いp型GaN層である。
p型ドーパントは特に限定されず、たとえばMgであることが好ましい。p型窒化物半導体層16,17,18のキャリア濃度は1×1017cm-3以上であることが好ましい。ここで、p型ドーパントの活性率は0.01程度であることから、p型窒化物半導体層16,17,18のp型ドーパント濃度(キャリア濃度とは異なる)は1×1019cm-3以上であることが好ましい。ただし、p型窒化物半導体層16のうち発光層14側に位置する部分のp型ドーパント濃度は1×1019cm-3未満であっても良い。
p型窒化物半導体層16,17,18の合計の厚さは特に限定されず、50nm以上300nm以下であることが好ましい。p型窒化物半導体層16,17,18の厚さを薄くすれば、その成長時における加熱時間が短くなるので、p型ドーパントが発光層14へ拡散することを防止できる。
<n側電極、透明電極、p側電極>
n側電極21およびp側電極25は、窒化物半導体発光素子1に駆動電力を供給するための電極である。図2には、n側電極21およびp側電極25がパッド電極部分のみで構成されていることを図示している。しかし、電流拡散を目的とする細長い突出部(枝電極)が、図2に示すn側電極21およびp側電極25に接続されていても良い。また、p側電極25よりも下には、電流がp側電極25へ注入されることを防止するための絶縁層が設けられていることが好ましい。これにより、発光層14が発した光がp側電極25に遮蔽される量を減少させることができる。
n側電極21は、たとえば、チタン層、アルミニウム層および金層がこの順序で積層されてなる積層構造を有することが好ましい。n側電極21にワイヤボンディングを行う場合を想定して、n側電極21の厚さは1μm以上であることが好ましい。
p側電極25は、たとえば、ニッケル層、アルミニウム層、チタン層および金層がこの順序で積層されてなる積層構造を有することが好ましいが、n側電極21と同一の材料からなっても良い。p側電極25にワイヤボンディングを行う場合を想定して、p側電極25の厚さは1μm以上であることが好ましい。
透明電極23は、たとえばITO(Indium Tin Oxide)またはIZO(Indium Zinc Oxide)などの透明導電材料からなることが好ましく、20nm以上200nm以下の厚さを有していることが好ましい。
<Vピットの始点>
本実施形態に係る窒化物半導体発光素子1において、Vピット15の始点の大部分は発光層14内に存在しておらず、その過半数は超格子層122内に存在していると考えられる。Vピット15は貫通転位に起因して発生すると考えられるので、貫通転位の多くはVピット15の内側にあると考えられる。よって、発光層14に注入された電子およびホールがVピット15の内側の貫通転位に達することを抑制することができる。したがって、電子およびホールが貫通転位に捕獲されたために非発光再結合が発生することを抑制できると考えられる。これにより、発光効率を高く維持することができる。このことは、高温下または大電流駆動時において顕著となる。
詳細には、高温下では発光層14への注入キャリア(ホールまたは電子)の移動が活発になるので、注入キャリアが貫通転位へ到達する確率が増大する。しかしながら、本実施形態に係る窒化物半導体発光素子1では、発光層14内における貫通転位の多くがVピット15で覆われるので(貫通転位の多くがVピット15の内側に存在するので)、貫通転位での非発光再結合が抑制される。よって、高温下での発光効率を高く維持できる。
また、Vピット15の始点が発光層14よりも下に位置するため、バリア層(特にアンドープバリア層)の層数を増やして発光層14の体積を増やすことができる。これにより、大電流駆動時での発光効率を高く維持することができる。
<キャリア濃度とドーパント濃度とについて>
キャリア濃度は電子またはホールの濃度を意味し、n型ドーパントの量またはp型ドーパントの量だけで決定されない。このようなキャリア濃度は、窒化物半導体発光素子1の電圧対容量特性の結果に基づいて算出され、電流が注入されていない状態のキャリア濃度のことを意味し、イオン化した不純物、ドナー化した結晶欠陥およびアクセプター化した結晶欠陥から発生したキャリアの合計である。
n型ドーパントであるSiなどの活性化率は高い。よって、n型キャリア濃度はn型ドーパント濃度とほぼ同じと考えることができる。また、n型ドーパント濃度はSIMS(Secondary Ion Mass Spectroscopy(二次イオン質量分析計))にて深さ方向の濃度分布を測定することにより容易に求めることができる。さらに、ドーパント濃度の相対関係(比率)はキャリア濃度の相対関係(比率)とほぼ同じである。測定により得られたn型ドーパント濃度を厚さ方向に平均すれば、平均n型ドーパント濃度を得ることができる。
<n型変調ドープ層と超格子層との別の作用・効果について>
本実施形態に係る窒化物半導体発光素子1では、n型コンタクト層8と発光層14との間には、n型コンタクト層8側から順に、n型変調ドープ層9、Vピット発生層10、多層構造体121および超格子層122が積層されている。これにより、ESD破壊の原因となる逆バイアス方向の高電圧がn側電極21とp側電極25との間に印加された場合には、空乏層がn型変調ドープ層9および超格子層122側に伸長する。よって、発光層14に印加される逆バイアス電圧(電界)を低減することができる。したがって、ESD破壊が生じる閾値電圧(すなわちESD耐圧)が高くなる。
本実施形態に係る窒化物半導体発光素子1がVピット15を意図的に導入しないように構成されている場合であっても、バイアス電圧が順方向に印加されたときのリーク電流をより効果的に低減させることができ、Vピット15の形成による発光面積の低下を防止することができる。よって、この場合であっても、窒化物半導体発光素子1の発光特性の低下を有効に防止することができる。
本実施形態に係る窒化物半導体発光素子1がn型変調ドープ層9または超格子層122のいずれか一方のみを備えている場合であっても、上記作用および効果を得ることができる。しかし、本実施形態に係る窒化物半導体発光素子1は、n型変調ドープ層9および超格子層122の両方を備えていることが好ましい。これにより、ESD耐圧がより高くなる。バイアス電圧が順方向に印加されたときのリーク電流をより効果的に低減させることができる。また、Vピット15の形成による発光面積の低下をより効果的に防止することができる。
<窒化物半導体発光素子の製造>
図5(a)は、図1に示す窒化物半導体発光素子1の製造工程における温度プロファイルを示すグラフである。図5(a)の縦軸は成長温度を表わし、図5(a)の横軸は成長時間を表わす。なお、図5(b)は、後述の比較例1の窒化物半導体発光素子の製造工程における温度プロファイルを示すグラフである。
まず、第1積層体6を形成する。たとえばスパッタ法などにより基板3の上にバッファ層5を形成してから、たとえばMOCVD法などにより、バッファ層5の上に下地層7、n型コンタクト層8およびn型変調ドープ層9を順に形成する。下地層7、n型コンタクト層8およびn型変調ドープ層9は、第1結晶成長装置内で成長されることが好ましい。これらの層は、800℃以上1250℃以下で成長されることが好ましく、900℃以上1150℃以下で成長されることがより好ましい。
第1下地層71は、斜めファセット面71aが形成されるファセット成長モードで成長されることが好ましい。第2下地層75は、斜めファセット面71aを埋め込んで平坦な上面75bを形成可能な埋込成長モードで成長されることが好ましい。具体的には、第1下地層71は、第2下地層75よりも3次元成長しやすい雰囲気下で形成されることが好ましく、第2下地層75よりも高圧且つ低温下で形成されることがより好ましい。たとえば、第1下地層71は、500Torrの圧力下且つ990℃の温度下で形成されることが好ましく、第2下地層75は、200Torrの圧力下且つ1080℃の温度下で形成されることが好ましい。
第1積層体6を形成後、温度を一旦下げてから(降温工程)、温度を再び上げて、第2積層体11を形成する。降温工程では、第2積層体11を形成する温度よりも低い温度(たとえば500℃以下)にまで下げることが好ましく、室温以上100℃以下にまで下げることがより好ましい。「降温工程における温度」は、基板3の温度、および、成膜装置または成長装置内の温度のうちの高い方の温度を意味する。また、降温工程の後で、第1積層体6を大気に曝すことが好ましい。第1積層体6を大気に曝す方法としては、たとえば第1積層体6を第1結晶成長装置内から取り出してから第2結晶成長装置内に入れるということが挙げられる。温度を再び上げてから、たとえばMOCVD法などにより、n型変調ドープ層9の上にVピット発生層10、多層構造体121および超格子層122を順に形成する。
Vピット発生層10の成長温度は、第1積層体6の形成温度よりも低く、たとえばn型コンタクト層8またはn型変調ドープ層9の成長温度(第1n型窒化物半導体層を形成する温度)よりも低いことが好ましい。図5(a)に示すように、発光層14は第1積層体6の形成温度よりも低い温度で形成される。このように、Vピット発生層10の成長温度がn型コンタクト層8またはn型変調ドープ層9の成長温度(第1n型窒化物半導体層を形成する温度)よりも低ければ、第2積層体11の形成後の降温工程に要する時間を短縮することができるので、スループットを高く維持することができる。また、Vピット発生層10の成長温度が高温である場合に比べて、Vピット発生層10を形成する装置のチャンバーに付着する付着物の量が減少する。よって、第2積層体11を形成するための成膜装置をメンテナンスする頻度が低くなる。これらのことから、窒化物半導体発光素子1の生産性が高くなる。MQW発光層14での発光効率を高く維持するという観点から、Vピット発生層10の成長温度は、700℃以上であることがより好ましく、750℃以上であることがさらに好ましい。
n型変調ドープ層9よりもn型ドーパント濃度を高くしてVピット発生層10を形成しても良い。これにより、Vピット発生層10のVピット形成効果が増大する。
多層構造体121の成長温度は、Vピット発生層10の成長温度以下であることが好ましく、Vピット発生層10の成長温度と同一であることがより好ましい。多層構造体121の成長温度がVピット発生層10の成長温度以下であれば、Vピット15の大きさを大きくすることができるので、ESDに起因する不良率が低くなる。この効果を有効に得るためには、多層構造体121の成長温度は、600℃以上であることがより好ましい。
超格子層122の成長温度は、Vピット発生層10の成長温度以下であることが好ましく、Vピット発生層10の成長温度と同一であることがより好ましい。超格子層122の成長温度がVピット発生層10の成長温度以下であれば、第2積層体11の形成後の降温工程に要する時間をさらに短縮することができるので、スループットをさらに高く維持することができる。また、超格子層122を形成するための成膜装置をメンテナンスする頻度がさらに低くなる。これらのことから、窒化物半導体発光素子1の生産性がさらに高くなる。それだけでなく、Vピット15の大きさを大きくすることができるので、ESDに起因する不良率が低くなる。この効果を有効に得るためには、超格子層122の成長温度は、600℃以上であることがより好ましい。
続いて、第2積層体11上に、発光層14、p型窒化物半導体層16,17,18を順に形成する。発光層14の形成方法は特に限定されず、MQW構造の形成方法として公知な方法を特に限定されることなく用いることができる。p型窒化物半導体層16,17,18の形成方法は特に限定されず、p型窒化物半導体層の形成方法として公知な方法を特に限定されることなく用いることができる。
続いて、n型コンタクト層8の一部分が露出するように、p型窒化物半導体層16,17,18、発光層14、第2積層体11、n型変調ドープ層9およびn型コンタクト層8をエッチングする。このエッチングにより露出したn型コンタクト層8の上面上にn側電極21を形成する。また、p型窒化物半導体層18の上面上に透明電極23とp側電極25とを順に積層する。その後、透明電極23と上記エッチングによって露出した各層の側面とを覆うように、透明保護膜27を形成する。これにより、図1に示す窒化物半導体発光素子1が得られる。
なお、基板3を除去しても良い。基板3を除去するタイミングは特に限定されず、たとえば第1積層体6を形成する工程の後で基板3を除去することができる。
下地層7とn型コンタクト層8とを第1結晶成長装置内で形成し、n型変調ドープ層9と第2積層体11とを第2結晶成長装置内で形成しても良い。しかし、下地層7とn型コンタクト層8とn型変調ドープ層9とを第1結晶成長装置内で形成し第2積層体11を第2結晶成長装置内で形成すれば、第2積層体11の形成後の降温工程に要する時間をさらに短縮することができる。
以上説明したように、図1に示す窒化物半導体発光素子1は、1層以上の第1n型窒化物半導体層8,9を含む第1積層体6と、第1積層体6の第1面61に接する第2n型窒化物半導体層10を含む第2積層体11と、第2積層体11の上に設けられた発光層14と、発光層14の上に設けられたp型窒化物半導体層16,17,18とを備える。第2n型窒化物半導体層10は、第1n型窒化物半導体層を形成する温度(たとえばn型コンタクト層8またはn型変調ドープ層9の成長温度)よりも低い温度で形成されている。これにより、図1に示す窒化物半導体発光素子1の生産性が高くなる。
第2積層体11は、第2n型窒化物半導体層10と発光層14との間に、1層以上の第3n型窒化物半導体層121,122をさらに含むことが好ましい。第3n型窒化物半導体層121,122は、第2n型窒化物半導体層10の形成温度以下の温度で形成されることが好ましい。これにより、図1に示す窒化物半導体発光素子1の生産性がさらに高くなる。
第1積層体6の第1面61を構成する半導体層は、アンドープ層であることが好ましい。その場合、第2n型窒化物半導体層10は、ドープ層であることが好ましい。
第1積層体6の第1面61を構成する半導体層は、ドープ層であることが好ましい。その場合、第2n型窒化物半導体層10は、アンドープ層であることが好ましい。
本発明に係る窒化物半導体発光素子1の製造方法は、1層以上の第1n型窒化物半導体層8,9を含む第1積層体6を形成する工程と、第1積層体6の第1面61に接する第2n型窒化物半導体層10を含む第2積層体11を形成する工程と、第2積層体11の上に発光層14を形成する工程と、発光層14の上にp型窒化物半導体層16,17,18を形成する工程とを少なくとも含む。第1積層体6を形成する工程の後であって第2積層体11を形成する工程の前に、第2積層体11を形成する温度よりも低い温度まで降温する降温工程をさらに含む。これにより、図1に示す窒化物半導体発光素子1の生産性を高めることができる。
第1積層体を形成する工程の後であって第2積層体を形成する工程の前に、第1積層体6を大気に曝す工程をさらに行うことが好ましい。これにより、図1に示す窒化物半導体発光素子1の生産性をさらに高めることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
まず、100mm径のサファイア基板からなるウエハを準備した。ウエハの上面には、凸部3aと凹部3bとが交互に形成されてなる凹凸形状が形成されていた。
ウエハに対する凹凸形状の形成方法を示す。まず、図4に示す凸部3aの平面配置が規定されたマスクをウエハ上に設けた。次に、このマスクを用いてウエハの上面をドライエッチングした。ドライエッチングされた部分が凹部3bとなり、よって、図4に示す平面配置を有する凹部3bがウエハの上面に形成された。これにより、凸部3aは、ウエアの上面のa(sub)軸方向(<11−20>方向)に配列されるとともに、ウエアの上面のa(sub)軸方向に対して+60°の傾きをなす方向とウエハの上面のa(sub)軸方向に対して−60°の傾きをなす方向(いずれもu方向)とにそれぞれ配置された。凸部3aは、ウエハの上面において、図4に破線で示した仮想三角形3tの頂点にそれぞれ配置され、仮想三角形3tの3辺のそれぞれの辺の方向に周期的に配置されていた。
ウエハの上面における凸部3aの形状は円形であり、その円の直径は1.2μm程度であった。隣り合う凸部3aの頂点の間隔(図4に示す仮想三角形3tの1辺)は2μmであり、凸部3aの高さは0.6μm程度であった。凸部3aは図1に示す側面視形状を有し、その先端は丸みを帯びていた。凹部3bは図1に示す側面視形状を有していた。
凸部3aおよび凹部3bの形成後、ウエハの上面をRCA洗浄した。RCA洗浄後のウエハをチャンバー内に入れ、そのチャンバー内にN2とO2とArとを導入し、チャンバー内のウエハを650℃に加熱した。N2とO2とArとの混合雰囲気下においてAlターゲットをスパッタリングするという反応性スパッタ法により、凸部3aおよび凹部3bが形成されたウエハの上面上にAlON結晶からなるバッファ層5(厚さ25nm)を形成した。形成されたバッファ層5は、ウエハの上面の法線方向に伸長する柱状結晶の集合体であって結晶粒の揃った柱状結晶の集合体からなっていた。
バッファ層5が形成されたウエハを第1MOCVD装置内に入れた。500Torrの圧力下、990℃の温度下で、アンドープGaNからなる第1下地層71をMOCVD法により結晶成長させた。また、200Torrの圧力下、1080℃の温度下で、アンドープGaNからなる第2下地層75をMOCVD法により結晶成長させた。下地層7の厚さは4μmであった。その後、Siドープn型GaN層(n型コンタクト層8)をMOCVD法により結晶成長させた。n型コンタクト層8の厚さは3μmであり、n型コンタクト層8のn型ドーパント濃度は1×1019cm-3であった。
ウエハの温度を1081℃に設定し、n型コンタクト層8上に厚さ50nmのSiドープn型GaNからなる窒化物半導体層(n+層9A、n型ドーパント濃度:1×1019cm-3)、厚さ87nmのアンドープGaNからなる窒化物半導体層(n-層9B)、厚さ50nmのSiドープn型GaNからなる窒化物半導体層(n+層9A、n型ドーパント濃度:1×1019cm-3)、および、厚さ87nmのアンドープGaNからなる窒化物半導体層(n-層9B)をこの順にMOCVD法により結晶成長させた。これにより、n型変調ドープ層9を形成した。
n型変調ドープ層9を形成後、ウエハの温度を80℃まで下げた。ウエハを第1MOCVD装置内から大気中に一旦、取り出した後、第2MOCVD装置内へ入れた。ウエハの温度を801℃に設定して、厚さ25nmのSiドープGaN層(Vピット発生層10)をMOCVD法により結晶成長させた。結晶成長されたSiドープGaN層はn型変調ドープ層9の最上層に接しており、そのn型ドーパント濃度は1×1019cm-3であった。
ウエハの温度を801℃に保持した状態で、多層構造体121を結晶成長させた。厚さ7nmのSiドープInGaN層、厚さ30nmのSiドープGaN層、厚さ7nmのSiドープInGaN層、および、厚さ20nmのSiドープGaN層を2層ずつ交互に積層した。多層構造体121を構成する層のいずれにおいてもn型ドーパント濃度を7×1017cm-3とした。InGaN層のIn組成比を、次に成長させる超格子層122のナローバンドギャップ層122BのIn組成比と同じとした。
ウエハの温度を801℃に保持した状態で、超格子層122を結晶成長させた。SiドープGaNからなるワイドバンドギャップ層122AとSiドープInGaNからなるナローバンドギャップ層122Bとを交互に20周期成長させた。各ワイドバンドギャップ層122Aの厚さは2.05nmであった。各ナローバンドギャップ層122Bの厚さは2.05nmであった。各ワイドバンドギャップ層122Aのn型ドーパント濃度は、ワイドバンドギャップ層122Aのうち発光層14側に位置する5層においては1×1019cm-3であり、その5層よりも第1積層体6側に位置する層においては0cm-3(アンドープ)であった。各ナローバンドギャップ層122Bのn型ドーパント濃度は、ナローバンドギャップ層122Bのうち発光層14側に位置する5層においては1×1019cm-3であり、その5層よりも第1積層体6側に位置する層においては0cm-3(アンドープ)であった。発光層14の井戸層14Wがフォトルミネッセンスにより発する光の波長が375nmとなるようにTMI(トリメチルインジウム)の流量を調整したため、各ナローバンドギャップ層122Bの組成はInyGa1-yN(y=0.04)であった。
ウエハの温度を672℃に下げて、発光層14を結晶成長させた。バリア層14AとInGaNからなる井戸層14Wとを交互に結晶成長させて、井戸層14Wを8層結晶成長させた。各バリア層14Aの厚さは4.2nmであった。最初のバリア層14AZおよびバリア層14A7のn型ドーパント濃度は4.3×1018cm-3であり、その他のバリア層14A6、14A5、・・・、14A1はアンドープであった。
ここで、最初のバリア層14AZの厚さは、バリア層14A7の厚さよりも厚くても良く、たとえば5.05nmであっても良い。これにより、超格子層122のうち最も発光層14側にナローバンドギャップ層122Bを形成することができ、超格子層122の組数に含まれないワイドバンドギャップ層122Aの作用を持たせることができる。最初のバリア層14AZのn型ドーパント濃度を、最初のバリア層14AZの上部(最初のバリア層14AZと井戸層14W8との界面から1.55nm離れた領域)において1×1019cm-3とし、最初のバリア層14AZの下部(最初のバリア層14AZの上部以外の部分)において4.3×1018cm-3としても良い。
バリア層14A7の下部(井戸層14W8とバリア層14A7との界面から3.5nm離れた領域)にのみn型ドーパントをドープし、バリア層14A7の上部(バリア層14A7の下部以外の部分)をアンドープとしてもよい。このように、バリア層14A7の上部をアンドープとすることにより、井戸層14W7の注入キャリアがn型にドープされたバリア層部分と直接接することを防止することができる。
井戸層14Wは、キャリアガスとして窒素ガスを用いて結晶成長され、アンドープInxGa1-xN層(x=0.20)であった。各井戸層14Wの厚さは2.7nmであった。井戸層14Wがフォトルミネッセンスにより発する光の波長が448nmとなるようにTMIの流量を調整して、井戸層14WにおけるInの組成xを設定した。
最上層の井戸層14W1の上に、アンドープのGaN層からなる最後のバリア層14A0(厚さ10nm)を結晶成長させた。
ウエハの温度を1000℃に上げて、最後のバリア層14A0の上面上に、p型Al0.18Ga0.82N層(p型窒化物半導体層16)、p型GaN層(p型窒化物半導体層17)およびp型コンタクト層(p型窒化物半導体層18)を順に結晶成長させた。
上述の各層の結晶成長では、Gaの原料ガスとしてはTMG(トリメチルガリウム)を用い、Alの原料ガスとしてはTMA(トリメチルアルミニウム)を用い、Inの原料ガスとしてはTMI(トリメチルインジウム)を用い、Nの原料ガスとしてはNH3を用いた。また、n型ドーパントであるSiの原料ガスとしてはSiH4を用い、p型ドーパントであるMgの原料ガスとしてはCp2Mgを用いた。しかし、原料ガスは上記ガスに限定されず、MOCVD用原料ガスとして用いられるガスであれば限定されることなく用いることができる。たとえば、Gaの原料ガスとしてTEG(トリエチルガリウム)を用いることができ、Alの原料ガスとしてTEA(トリエチルアルミニウム)を用いることができ、Inの原料ガスとしてTEI(トリエチルインジウム)を用いることができ、Nの原料ガスとしてDMHy(ジメチルヒドラジン)などの有機窒素化合物を用いることができ、Siの原料ガスとしてSi2H6または有機Siなどを用いることができる。
ウエハを第2MOCVD装置内から取り出した。その後、n型コンタクト層8の一部分が露出するように、p型コンタクト層(p型窒化物半導体層18)、p型GaN層(p型窒化物半導体層17)、p型Al0.18Ga0.82N層(p型窒化物半導体層16)、発光層14、超格子層122、多層構造体121、SiドープGaN層(Vピット発生層10)、n型変調ドープ層9およびn型コンタクト層8をエッチングした。このエッチングにより露出したn型コンタクト層8の上面上に、Auからなるn側電極21を形成した。p型コンタクト層18の上面上に、ITOからなる透明電極23とAuからなるp側電極25とを順に形成した。透明電極23および上記エッチングによって露出した各層の側面を主に覆うように、SiO2からなる透明保護膜27を形成した。その後、ウエハを620×680μmサイズのチップに分割した。これにより、実施例1に係る窒化物半導体発光素子を得た。
本実施例では、SiドープGaN層(Vピット発生層10)の形成以後の降温工程に要する時間が短縮され、よって、スループットを高く維持することができた。また、第2MOCVD装置をメンテナンスする頻度が低くなった。
<実施例2>
実施例1と同様に、第1MOCVD装置内で下地層7とn型コンタクト層8とを形成した後、ウエハの温度を1081℃に設定してn型変調ドープ層9を形成した。n型コンタクト層8上に厚さ50nmのSiドープn型GaNからなる窒化物半導体層(n+層9A、n型ドーパント濃度:1×1019cm-3)、厚さ87nmのアンドープGaNからなる窒化物半導体層(n-層9B)、および、厚さ50nmのSiドープn型GaNからなる窒化物半導体層(n+層9A、n型ドーパント濃度:1×1019cm-3)をこの順でMOCVD法により結晶成長させた。
次に、ウエハを第1MOCVD装置内から取り出して第2MOCVD装置内へ入れた。ウエハの温度を801℃に設定して、厚さ10nmのアンドープGaN層(n-層9BL)をMOCVD法により結晶成長させた。その後は、ウエハの温度を801℃に保持した状態で再び実施例1と同様に、第2MOCVD装置内でSiドープGaN層(Vピット発生層10)、多層構造体121および超格子層122を形成した。このようにして本実施例の窒化物半導体発光素子を製造した。本実施例でも、n-層9BLの形成以後の降温工程に要する時間が短縮された。
<実施例3>
ウエハの温度を750℃としてVピット発生層10と多層構造体121と超格子層122とを結晶成長させたことを除いては上記実施例1に記載の方法にしたがって本実施例の窒化物半導体発光素子を製造した。本実施例でも、SiドープGaN層(Vピット発生層10)の形成以後の降温工程に要する時間が短縮された。また、MQW発光層14での発光効率を高く維持することができた。
<実施例4>
ウエハの温度を750℃として多層構造体121と超格子層122とを結晶成長させたことを除いては上記実施例1に記載の方法にしたがって本実施例の窒化物半導体発光素子を製造した。本実施例でも、SiドープGaN層(Vピット発生層10)の形成以後の降温工程に要する時間が短縮された。また、Vピット15の大きさが大きくなった。
<実施例5>
ウエハの温度を700℃として超格子層122を結晶成長させたことを除いては上記実施例4に記載の方法にしたがって本実施例の窒化物半導体発光素子を製造した。本実施例でも、SiドープGaN層(Vピット発生層10)の形成以後の降温工程に要する時間が短縮された。また、Vピット15の大きさが大きくなった。
<実施例6>
実施例6では、第1積層体を基板とバッファ層と下地層とn型コンタクト層とを備える構成とし、第2積層体を低ドープn型窒化物半導体層とアンドープ窒化物半導体層とn型窒化物半導体層とを備える構成とし、発光層のバリア層の組成をAlGaNとしたことを除いては上記実施例1に記載の方法にしたがって、窒化物半導体発光素子を製造した。つまり、本実施例では、低ドープn型窒化物半導体層が特許請求の範囲における「第2n型窒化物半導体層」に相当する。
図6は、本実施例の窒化物半導体発光素子1の概略断面図である。図7は、本実施例の窒化物半導体発光素子1のn型コンタクト層8からp型窒化物半導体層16までにおけるバンドギャップエネルギーEgの大きさを模式的に示すエネルギー図である。図6および図7では、上記実施例1と同じ組成からなる層には、図1における符号と同じ符号を付している。また、図7には、n型ドーパントがドープされている層の右側にはドットを付して「n」と記している。
バッファ層5が形成されたウエハを第1MOCVD装置内に入れた。500Torrの圧力下、990℃の温度下で、アンドープGaNからなる第1下地層71をMOCVD法により結晶成長させた。また、200Torrの圧力下、1080℃の温度下で、アンドープGaNからなる第2下地層75をMOCVD法により結晶成長させた。下地層7の厚さは3μmであった。その後、1100℃の温度下で、Siドープn型GaN層(n型コンタクト層8)をMOCVD法により結晶成長させた。n型コンタクト層8の厚さは4μmであり、n型コンタクト層8のn型ドーパント濃度は1×1019cm-3であった。
n型コンタクト層8を形成後、ウエハの温度を500℃以下(可能であれば、100℃以下)まで下げた。ウエハを第1MOCVD装置内から大気中に一旦、取り出した後、第2MOCVD装置内へ入れた。ウエハの温度を870℃に設定して、厚さ74nmのSiドープGaN層(低ドープn型窒化物半導体層10A)をMOCVD法により結晶成長させた。結晶成長された低ドープn型窒化物半導体層10Aはn型コンタクト層8の最上層(第1積層体6の第1面61)に接しており、そのn型ドーパント濃度は7×1017cm-3であった。
ウエハの温度を870℃に保持した状態で、厚さ63.5nmのアンドープGaN層(アンドープ窒化物半導体層123)を結晶成長させた。
ウエハの温度を870℃に保持した状態で、厚さ20.5nmのSiドープAlGaN層(n型窒化物半導体層124)を結晶成長させた。結晶成長されたn型窒化物半導体層124は発光層14に接する層であり、そのn型ドーパント濃度は1×1019cm-3であった。
本実施例では、低ドープn型窒化物半導体層10A、アンドープ窒化物半導体層123およびn型窒化物半導体層124を形成するときのウエハの温度を870℃と一定にした。しかし、これらの層を形成するときのウエハの温度は、850〜950℃の温度範囲で各々任意に設定されれば良い。たとえば第2積層体11の表面の平坦性を高めるという観点から、低ドープn型窒化物半導体層10Aおよびアンドープ窒化物半導体層123を形成するときのウエハの温度を870℃とし、n型窒化物半導体層124を形成するときのウエハの温度を900℃としても良い。また、3つの層を形成するときのウエハの温度をそれぞれ異なる温度に設定しても良い。
<比較例1>
ウエハを第1MOCVD装置内から取り出して第2MOCVD装置内へ入れた後に、ウエハの温度を1100℃としてn型変調ドープ層9を結晶成長させたことを除いては上記実施例1に記載の方法にしたがって本比較例の窒化物半導体発光素子を製造した。本比較例では、超格子層122の形成後の降温工程に要する時間が上記実施例1よりも長くなった。また、第2MOCVD装置をメンテナンスする頻度が上記実施例1よりも高くなった。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。