JP2015107088A - 酵母変異株を用いたエタノール製造方法 - Google Patents

酵母変異株を用いたエタノール製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】セルロース系バイオマスから製造された糖化液での発酵阻害に対する耐性を付与した酵母変異株を作製することでセルロース系バイオマスに由来する糖化液から効率的にエタノールを製造する方法を提供。【解決手段】シェフェルソマイセス・スティピィティス(Scheffersomyces stipitis)への突然変異誘導処理および酵母変異株のクロトリマゾールとエタノールに対する馴化処理により取得された、エタノールおよび発酵阻害物質に対する耐性を付与した酵母変異株CTM-2株。前記取得された酵母変異株CTM-2株を用いた、バイオマスに由来する糖液でエタノールを製造する方法。前記酵母変異株は、エタノール耐性だけではなく、フルフラール耐性及びバニリン耐性も有する。【選択図】図6

Description

本発明は、エタノール耐性、エタノール生産性およびリグノセルロース系バイオマスに由来する発酵阻害物質に対する耐性が向上した酵母変異株に関する。
また、本発明は当該酵母変異株を用いたエタノールの製造方法に関する。
バイオエタノール生産における課題
近年、地球温暖化対策などの様々な要因から再生可能エネルギーの技術開発が求められている。バイオマスから製造されるバイオエタノールもその再生可能エネルギーの一つである。バイオエタノールは二酸化炭素の排出削減に直結することから自動車用のガソリン燃料への添加剤もしくはガソリン自体の代替燃料として期待されている。
しかしながら、現在バイオエタノールの原料として主に用いられているバイオマスはトウモロコシやサトウキビなど食料と競合するものであり、食料価格の高騰を招くなど大きな問題となっている。そのため、食料と競合しない稲わらなどの草本系バイオマスや廃材などの木質系バイオマスが注目されおり、これらのリグノセルロース系バイオマスからエタノール製造技術の開発が必要となっている。
リグノセルロース系バイオマスからエタノールを製造する工程は前処理、糖化および発酵の3つに分けられる。リグノセルロース系バイオマスはセルロース、ヘミセルロースおよびリグニンにより構成されている。セルロースとヘミセルロースは多数の糖が結合して形成された多糖であり、多糖から単糖に分解する工程が糖化である。糖化工程によりセルロースからは六炭糖であるグルコースが、ヘミセルロースからはグルコースの他に五炭糖であるキシロースが主に生成される。生成された単糖を含む溶液を糖化液とする。
セルロース、ヘミセルロースおよびリグニンは非常に強固な構造を持っているため、糖化を効率的に行うために前処理が行われる。前処理には高温・高圧処理やアルカリ処理など様々な方法があり、この工程において様々な物質がリグノセルロース系バイオマスから生成される。
前処理・糖化工程により生成された糖化液を用いて微生物発酵によりエタノールを製造するのが発酵工程である。エタノールを最も効率良く生産できるとされている酵母サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)は六炭糖のグルコースをエタノールに変換することができるが、五炭糖のキシロースを資化することはできない。そのため、キシロースからエタノールを生成するためにシェフェルソマイセス・スティピティス(Scheffersomyces
stipitis)やシェフェルソマイセス・シェハタエ(Scheffersomyces shehatae)などのキシロースをエタノールに変換する能力を有するキシロース資化性酵母が必要になる。
既存のキシロース資化性酵母はエタノール耐性が低く、エタノール生産性が低い。つまり、キシロース資化性酵母は自身が生成した低濃度のエタノールにより発酵阻害を受ける。そのため、糖化液に含まれるキシロース濃度が上昇してもある一定濃度までのエタノールしか生成することができない。生成したエタノールは最終的に99.5%まで濃縮・脱水することになるが、より高いエタノール濃度のエタノール溶液を用いることで濃縮・脱水工程でのエネルギー消費を低減できる。そのため、バイオエタノール生産の効率化にはより高濃度のエタノールを生成することのできる酵母が必要となる。
キシロースから高濃度のエタノールを生産することのできる酵母を取得するための試みとして、高いエタノール耐性を持つサッカロマイセス・セレビシエへの関連遺伝子の導入によるキシロースからエタノールの生成が可能な組換え体の製作(非特許文献1)や突然変異の導入によるシェフェルソマイセス・スティピティスへのエタノール耐性の付与(非特許文献2)などが行われている。しかしながら、現在何れの方法でも実用レベルのものは得られていない。
また、シェフェルソマイセス・スティピティスによる糖化液でのキシロースからのエタノール生成は前処理工程で生じた物質により阻害される。この発酵阻害を改善する方法として、発酵阻害物質の除去と発酵阻害物質に対する耐性を付与した微生物を発酵に用いる方法が挙げられる。発酵阻害物質の除去は前処理したバイオマスを洗浄することで発酵阻害物質を除去する方法や糖化液からイオン交換樹脂や活性炭などを用いて発酵阻害物質を除去する方法が報告されている(特許文献1、2)。微生物へ発酵阻害物質耐性を付与する方法としては遺伝子組み換え技術を用いて形質転換株を作出する方法が報告されている(特許文献3)。発酵阻害物質を除去する方法ではバイオマス糖化液の製造工程にバイオマスの洗浄工程や発酵阻害物質の除去工程を新たに組み込むことが必要になり、製造工程を複雑化することになる。酵母形質転換株を用いる方法では組み換え体自身や導入した遺伝子の環境への伝搬や拡散を防止するために気密性が高い製造施設や漏出した場合に備えた付随施設の設置も必要になる。更に、発酵終了後には使用した菌を完全に殺菌することが必要になる。このような製造施設の設置や製造工程の増加はエタノールの生成効率の低下と生産コストの上昇を引き起こす原因となる。
上記のような状況下、バイオエタノール製造をより効率的に行うために高いエタノール耐性とエタノール生産性を持ち、かつ、リグノセルロース系バイオマスを原材料とした糖化液においても高いエタノール生成能を保持する天然の菌株の取得もしくは遺伝子組み換え技術によらない酵母の改良が望まれている。
特開2005−270056号公報 特開2010−536376号公報 W2011/065539
Wahlbom CF., et al., FEMS Yeast ResTechnol.2003 May ; 3(3): 319-326. Watanabe T., et al., Bioresour. Technol. 2011Sep; 102: 1844-1848.
本発明ではエタノール耐性およびリグノセルロース系バイオマスから製造された糖化液における微生物発酵の阻害に対する耐性を持つ酵母変異株を作製することでリグノセルロース系バイオマスに由来する糖化液から効率的にエタノールを製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、臨床で真菌症の治療に坑真菌薬として広く用いられているクロトリマゾール(以降CTZとする)に対する耐性を持つ酵母変異株をシェフェルソマイセス・スティピティスより分離し、この中から親株よりも高いエタノール耐性およびエタノール生産性を示し、発酵阻害物質存在下でも高いエタノール生産性を保持することができる酵母変異株CTM-2株を見出した。本発明は、これらの知見に基づいてなされたものである。
本発明は以下の通りである。
(1)クロトリマゾール耐性を有するシェフェルソマイセス(Scheffersomyces)属のエタノール発酵性酵母変異株
(2)(1)に記載のエタノール発酵性酵母であって、エタノール耐性を有するエタノール発酵性酵母変異株
(3)(1)に記載のエタノール発酵性酵母であって、フルフラール耐性を有するエタノール発酵性酵母変異株。
(4)(1)に記載のエタノール発酵性酵母であって、バニリン耐性を有するエタノール発酵性酵母変異株。
(5)(1)〜(4)に記載の耐性を有することを特徴とする酵母変異株シェフェルソマイセス・スティピティス(Scheffersomyces
stipitis) CTM-2株(受託番号NITE P-1756)。
(6)(1)〜(5)のいずれか1項に記載のエタノール発酵性酵母変異株を使用するエタノール製造方法。
(7)(6)に記載のエタノール製造方法において、コーンスティープリカーを含む培地により増殖させた酵母細胞を用いてエタノールを製する造方法。
(8)(6)に記載のエタノール製造方法において、グルコースおよびキシロース混在下でエタノールを製造する方法。
(9)(6)に記載のエタノール製造方法において、バイオマスに由来する糖液でエタノールを製造する方法。
本発明により、高いエタノール耐性およびエタノール生産性を示し、リグノセルロース系バイオマスを原材料とする糖化液において高いエタノール生産性を保持する酵母変異株を提供することを可能とする。
本発明では当該酵母変異株の性質によりリグノセルロース系バイオマスに由来する糖化液よりエタノールの効率的な製造が可能になる。
実施例2のエタノール生産性試験において、培地中のグルコース、キシロースおよびエタノール濃度を経時的に測定した結果を示した図であり、コーンスティープリカーを無添加の培地で培養した酵母細胞を使用した試験である。なお、図中の符号は■:グルコース濃度、●:キシロース濃度、◆:エタノール濃度をそれぞれ示す。 実施例2のエタノール生産性試験において、培地中のグルコース、キシロースおよびエタノール濃度を経時的に測定した結果を示した図であり、コーンスティープリカーを添加した培地で培養した酵母細胞を使用した試験である。なお、図中の符号は■:グルコース濃度、●:キシロース濃度、◆:エタノール濃度をそれぞれ示す。 実施例5におけるグルコースとキシロース混在下でのエタノール生産性試験において、培地中のグルコース、キシロースおよびエタノール濃度を経時的に測定した結果を示した図で、シェフェルソマイセス・スティピティス SS39-1株を使用した試験である。なお、図中の符号は■:グルコース濃度、●:キシロース濃度、◆:エタノール濃度をそれぞれ示す。 実施例5におけるグルコースとキシロース混在下でのエタノール生産性試験において、培地中のグルコース、キシロースおよびエタノール濃度を経時的に測定した結果を示した図で、シェフェルソマイセス・スティピティス CTM-2株を使用した試験である。なお、図中の符号は■:グルコース濃度、●:キシロース濃度、◆:エタノール濃度をそれぞれ示す。 実施例6のシェフェルソマイセス・スティピティス TT-E8株とシェフェルソマイセス・スティピティス CTM-2株を用いたネピアグラス糖化液からのエタノール生産性試験において、培地中のキシロースおよびエタノール濃度を経時的に測定した結果を示した図であり、シェフェルソマイセス・スティピティス SS39-1株を使用した試験である。なお、図中の符号は■:キシロース濃度、◆:エタノール濃度をそれぞれ示す。 実施例6のシェフェルソマイセス・スティピティス TT-E8株とシェフェルソマイセス・スティピティス CTM-2株を用いたネピアグラス糖化液からのエタノール生産性試験において、培地中のキシロースおよびエタノール濃度を経時的に測定した結果を示した図であり、シェフェルソマイセス・スティピティス CTM-2株を使用した試験である。なお、図中の符号は■:キシロース濃度、◆:エタノール濃度をそれぞれ示す。
以下、本発明を詳細に説明する。
1.概要
本発明は、キシロースからのエタノール発酵、特にバイオマス原料より調製された糖化液に含まれるキシロースからのエタノール製造に適したシェフェルソマイセス・スティピティスに由来する酵母変異株に関する発明である。本発明の酵母は親株と比較してエタノールおよび発酵阻害物質に耐性が有り、効率良くエタノールを製造できるものである。
クロトリマゾール(CTZ)耐性を付与されたサッカロマイセス・セレビシエの変異株の中にエタノール耐性とエタノール生産性が上昇したものが高頻度で見られることが報告されている。また、CTZ耐性の付与により酵母変異株は複数の抗生物質といった薬剤に対して耐性を示すことが報告されている。CTZ耐性を付与することでシェフェルソマイセス・スティピティスにおいてもサッカロマイセス・セレビシエと同様にエタノール耐性、エタノール生産性および薬剤耐性の上昇が期待される。上昇する薬剤耐性の中には発酵阻害物質に対する耐性も含まれる可能性があると考えた。
そこで、親株を突然変異誘導処理に供与し、得られた酵母変異株の中からCTZ存在下で生育が可能なCTZ耐性変異株を取得した。CTZ耐性株をエタノールとCTZを含む培地で培養し、エタノール耐性の向上した株を選抜した。更に、選抜された酵母変異株を用いたエタノール発酵試験を行い、エタノール生産性の向上した酵母変異株の取得に成功した。得られたエタノール生産性向上株は一般的にエタノール発酵の発酵阻害物質と言われているフルフラールとバニリンに対して耐性を示し、リグノセルロース系バイオマスを原材料とする糖化液で高いエタノール生産性を保持することが可能であった。
本発明は上記の酵母変異株を用いたエタノール発酵方法に関するものである。エタノール発酵方法の中には酵母の前培養方法も含まれる。
シェフェルソマイセス・スティピティスのエタノール生産性は細胞の増殖条件に大きく影響されることが報告されている。その詳細はSlinngerらの報告に詳しい(Slininger PJ et al., Appl.
Microbiol. Biothecnol. 2006; 72: 1285-1296)。前培養での培地組成、特に炭素源(糖)と窒素源の比率が重要であり、培地組成を最適化することでエタノールの生成性を大きく向上させることができる。Sliningerらの報告では完全合成培地を用いているが、生産コストから考えて完全合成培地の使用は現実的ではない。本発明者らの検証により安価な窒素源として知られるコーンスティープリカーを前培養用培地へ添加することで酵母のエタノール生産性が向上することが示された。
本発明は上記知見により完成されたものである。
2.突然変異誘導処理および馴化処理による酵母変異株の育種
本発明は、キシロースからのエタノール発酵、特にバイオマス原料より調製された糖化液に含まれるキシロースからのエタノール製造に適したシェフェルソマイセス・スティピティスに由来する酵母変異株に関する発明である。酵母変異株の取得方法として突然変異誘導処理および馴化処理を行い、酵母変異株の選抜にエタノールおよびCTZを用いることを特徴とする。エタノールおよびCTZによる選抜を行うことで、エタノール耐性、エタノール生産性およびエタノール発酵阻害物質耐性の向上といった特性を持つシェフェルソマイセス・スティピティスに由来する酵母変異株の育種を効率的に行うことができる。
本発明における突然変異誘導処理に用いる変異誘発剤は特に制限がなく、例えばエチルメタンスルホン酸や紫外線といった公知の変異誘発剤を利用できる。
シェフェルソマイセス・スティピティス(Scheffersomyces(Pichia) stipitis)SS39-1株(特開2009-296983)を親株として、突然変異誘発による変異株を取得する。取得された変異株はエタノールを含むYPX寒天培地(酵母エキス10g/L、ポリペプトン20g/L、キシロース20g/L、エタノール100g/L、寒天20g/L)に塗布し、28℃で7日間培養した後、コロニーを形成した株を取得した。
次に得られた株をエタノールが含まれるYPX液体培地(酵母エキス10g/L、ポリペプトン20g/L、キシロース20g/L、エタノール10g/L)に1白金耳植菌し、28℃で増殖するまで振とう培養を行う。増殖後、菌液をエタノール濃度が20g/Lになるように調製したYPX液体培地に植菌し、28℃で振とう培養する。以下、エタノール濃度を順次80g/Lまで上げながら同様の操作を行い、エタノール耐性株を取得する。
上記で選抜した株についてYPX液体培地(酵母エキス10g/L、ポリペプトン20g/L、キシロース50g/L)でエタノール生産試験を行い、親株よりもエタノール生産能が高い酵母を選抜する。
上記で選抜した株を親株として突然変異誘発による変異株を取得する。取得された変異株はエタノールを含むYPX寒天培地(酵母エキス10g/L、ポリペプトン20g/L、キシロース20g/L、CTZ 10mg/L、寒天20g/L)に塗布し、28℃で7日間培養した後、コロニーを形成した株を取得した。
次に得られた株をCTZが含まれるYPX液体培地(酵母エキス10g/L、ポリペプトン20g/L、キシロース20g/L、CTZ 10mg/L)に1白金耳を植菌し、28℃で増殖するまで振とう培養を行う。増殖した細胞はCTZ濃度を20mg/Lに調整したYPX液体培地に植菌し、28℃で振とう培養する。以下、CTZ濃度を順次40mg/Lまで上げながら同様の操作を行い、CTZ耐性株を取得する。
上記で選抜した株についてYPX液体培地(酵母エキス10g/L、ポリペプトン20g/L、キシロース100g/L)でエタノール生産試験を行い、親株よりもエタノール生産能が高い酵母を選抜する。
上記で選抜した株を親株として突然変異誘発による変異株を取得する。取得された変異株はCTZを含むYPX寒天培地(酵母エキス10g/L、ポリペプトン20g/L、キシロース20g/L、CTZ
50mg/L、寒天20g/L)に塗布し、28℃で7日間培養した後、コロニーを形成した株を取得した。
次に得られた株をエタノールが含まれるYPX液体培地(酵母エキス10g/L、ポリペプトン20g/L、キシロース20g/L、エタノール80g/L、CTZ 50mg/L)に1白金耳を植菌し、28℃で増殖するまで振とう培養を行う。増殖した細胞はエタノール濃度を90g/Lに調整したYPX液体培地に植菌し、28℃で振とう培養する。以下、エタノール濃度を順次100g/Lまで上げながら同様の操作を行い、CTZとエタノールの両方の耐性を有する株を取得する。
上記で選抜した株についてYPX液体培地(酵母エキス10g/L、ポリペプトン20g/L、キシロース100g/L)でエタノール生産試験を行い、親株よりもエタノール生産能が高い酵母を選抜する。
このようにして、目的とする酵母を選抜し、これをシェフェロソマイセス・スティピティス(Scheffersomyces
stipitis)CTM-2株と命名した。本菌株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託されており、その受託番号はNITE P-1756である。
2.酵母細胞の前培養方法
本発明では発酵に供する酵母細胞はYTX液体培地(酵母エキス10g/L、ポリペプトン20g/L、キシロース20g/L)に窒素源を更に添加したものを用いて増殖させる。添加する窒素源に特に制限はないが、より安価なコーンスティープリカーなどを用いるのが望ましい。添加するコーンスティープリカーの濃度は例えば1〜5%であり、好ましくは1〜2%である。
窒素源の添加により酵母のエタノール生産性の向上が見られる。
3.酵母変異株を用いたエタノール製造
上記で育種した酵母変異株を用いてエタノール発酵を行うことで糖化液から効率的にエタノール製造をすることができる。
エタノール製造における酵母の培養条件および発酵条件の詳細を以降に示す。
[糖化液の調製方法]
リグノセルロース系バイオマスの加水分解は、従来から公知の酸加水分解法やアルカリ加水分解法を用いることができる。最も好ましいのは、微粉砕されたリグノセルロースを酵素を使用して加水分解するのが良い。粉砕は、リグノセルロース系バイオマスを適切なサイズに粉砕する工程において、振動式ボールミルあるいはロッドミル,高衝撃力が付加できるミルを用いることにより100ミクロン以下、好ましくは50ミクロン以下まで微粉砕を行なう。
加水分解は、微粉砕されたリグノセルロース系微粉砕物原料溶液(5〜30重量%)にセルラーゼ酵素を0.1から20重量%になるように添加し加水分解を行わせる。
セルロースとヘミセルロースは、グルコースやマンノースなどの六炭糖とキシロース、アラビノースなどの五炭糖で構成されているために、複数の酵素剤を用いることもある。
[酵母の培養]
酵母変異株シェフェルソマイセス・スティピティス CTM-2株のエタノール生産性を最大限に発揮させるために、二段階の培養を行う。一段階目の培養(前々培養)ではCTZを含む培地でCTM-2株の細胞を増殖させ、二段階目の培養(前培養)ではコーンスティープリカーを含む培地に一段階目の培養液を添加して増殖させる。以下に詳細を示す。
・前々培養
40mg/LのCTZを含むYTX液体培地(酵母エキス10g/L、トリプトン20g/L、キシロース20g/L)100mlにCTM-2株の細胞を一白金耳添加し、20℃、80rpmの条件で3日間培養する。
・前培養
上記前々培養の菌液1mlを10g/LのコーンスティープリカーYTX液体培地(酵母エキス10g/L、トリプトン20g/L、キシロース20g/L)100mlに添加し、28℃、120rpmの条件で1日培養する。
本発明のエタノール製造では、本発明の酵母変異株を上記の方法で培養し、106〜1010個/ml、好ましくは、108〜109個/mlとなるように植菌し、発酵することで効率的なエタノール製造を行うことができる。
[エタノール製造]
本発明における糖化液の発酵は特許公開2009−296983明細書および特許公開2013−188156明細書に記載された方法(二段階発酵法)に準じて実施する。二段階発酵法はグルコースとキシロースをそれぞれ別の菌によりエタノールに変換する方法である。本発明では一次発酵工程には、高温発酵性酵母シゾサッカロマイセス・ジャポニカス(Schizosaccharomyces japonicas) SS4-5株(受託番号NITE
P-1197)を使用し、40℃、90rpmでの発酵を行う。二次発酵は、一次発酵で得られた発酵液を使用する。本発明程では、エタノール耐性、エタノール生産性および発酵阻害物質耐性が向上した酵母変異株CTM-2株を用いる。発酵阻害耐性能付与株を用いて糖化液でのアルコール発酵を行うことで、エタノールの生産性が向上する。
以下、実施例により本発明を更に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[分析例1]『各種濃度測定』
(1)「エタノール濃度測定」
以下の実施例において、エタノール濃度の測定は、アルコール分析器(アルコメイト:理研計器(株))を用いて測定した。
なお、測定値は、液量当たりの重量含量(g/L)で示した。
(2)「エタノール収率の算出」
以下の実施例において、「培地中のキシロースの全てをエタノールに変換した場合の理論値(初発グルコースに0.51を乗じた値)」に対する「実際に発酵後に実測されたエタノールの値」の割合を、式(1)を用いて算出し、キシロースからのエタノール収率(%)とした。
(3)「糖類濃度の測定」
以下の実施例において、グルコース濃度の測定は、JKインターナショナルFキットグルコースを用いた酵素法により測定した。また、キシロース濃度の測定は、メガザイム社キシロースキットを用いた酵素法により測定した。
また、これらの測定値は、液量当たりの重量含量(g/L)で示した。
「酵母変異株シェフェルソマイセス・スティピティス
CTM-2株の作出」
酵母細胞への突然変異誘導処理とCTZおよびエタノールに対する馴化処理によりCTZ耐性株を作出し、CTZ耐性株の中からエタノール耐性およびエタノール生産性が向上した酵母変異株の選抜を行う。
酵母変異株シェフェルソマイセス・スティピティス(Scheffersomyces (Pichia) stipitis) SS39-1株に由来するエタノール耐性株シェフェルソマイセス・スティピティス(Scheffersomyces (Pichia) stipitis) TT-E8株を親株として、突然変異誘発による変異株を取得する。TT-E8株をYPX寒天培地(酵母エキス10g/L、ポリペプトン20g/L、キシロース20g/L)で、28℃、80rpm、17時間の条件で振とう培養後、集菌し、蒸留水で2回洗浄した。これを600nmの吸光度が1.0になるように蒸留水で懸濁し、懸濁液100マイクロリットルをME寒天培地(モルトエキス50g/L、寒天20g/L)に塗布し、30cmの距離から紫外線の照射を行った。紫外線を照射した寒天培地を28℃で7日間培養し、生育したコロニーをUV変異株として採取した。採取されたUV変異株はエタノールを含むYPX寒天培地(酵母エキス10g/L、ポリペプトン20g/L、キシロース20g/L、CTZ20mg/L、寒天20g/L)に塗布し、28℃で7日間培養した後、コロニーを形成した株を取得した。
次に得られた株をCTZが含まれるYPX液体培地(酵母エキス10g/L、ポリペプトン20g/L、キシロース20g/L、CTZ10mg/L)に1白金耳を植菌し、28℃で増殖するまで振とう培養を行う。増殖した細胞はCTZ濃度を20mg/Lに調整したYPX液体培地に植菌し、28℃で振とう培養する。以下、CTZ濃度を順次40mg/Lまで上げながら同様の操作を行い、CTZ耐性株を取得する。
上記で選抜した株についてYPX液体培地(酵母エキス10g/L、ポリペプトン20g/L、キシロース100g/L)でエタノール生産試験を行い、親株よりもエタノール生産能が高い酵母を選抜する。
上記で選抜した株を親株として突然変異誘発による変異株を取得する。取得された変異株はCTZを含むYPX寒天培地(酵母エキス10g/L、ポリペプトン20g/L、キシロース20g/L、CTZ50mg/L、寒天20g/L)に塗布し、28℃で7日間培養した後、コロニーを形成した株を取得した。
次に得られた株をエタノールが含まれるYPX液体培地(酵母エキス10g/L、ポリペプトン20g/L、キシロース20g/L、エタノール80g/L、CTZ50mg/L)に1白金耳を植菌し、28℃で増殖するまで振とう培養を行う。増殖した細胞はエタノール濃度を80g/Lに調整したYPX液体培地に植菌し、28℃で振とう培養する。以下、エタノール濃度を順次100g/Lまで上げながら同様の操作を行い、CTZとエタノールの両方の耐性を有する株を取得する。
上記で選抜した株のエタノール生産試験を行い、親株よりもエタノール生産能が高い酵母を選抜する。上記のCTZ・エタノール馴化処理細胞は酵母細胞の分離を行うためにCTZを含むYPX寒天培地(酵母エキス10g/L、ポリペプトン20g/L、キシロース20g/L、
CTZ50mg/L )に塗布し、28℃で3日間培養した。YPX液体培地(酵母エキス10g/L、ポリペプトン20g/L、キシロース20g/L)へ生育したコロニーを一白金耳植菌し、28℃、120rpm、1日間の条件で培養した。増殖した細胞をYPX液体培地(酵母エキス5g/L、ポリペプトン10g/L、キシロース100g/L)でのエタノール生産試験に供与し、親株よりも高いエタノール生産性を持つ酵母変異株の選抜を行う。
SS39-1株とTT-E8株が100g/Lのキシロースから生成するエタノールの収率はそれぞれ55.6%と71.5%であった。取得した変異株の中で最も高いエタノール収率を示した変異株の値は81.4%であった。
このようにして、目的とする酵母を選抜し、これをシェフェロソマイセス・スティピティス(Scheffersomyceシェフェルソマイセス・スティピティス)CTM-2株と命名した。本菌株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託されており、その受託番号はNITE P-1756である。
「酵母細胞の前培養培地への窒素源添加がエタノール生産へ及ぼす影響」
更なる窒素源としてコーンスティープリカーを前培養培地に添加することによるエタノール生産性に及ぼす影響を検証する。
前培養における窒素源の量がエタノール生産に及ぼす影響を検証するために、窒素源としてコーンスティープリカーを添加した前培養培地で培養した酵母細胞を用いてエタノール生産試験を行った。10g/Lコーンスティープリカーを添加したYTX液体培地(酵母エキス10g/L、トリプトン20g/L、キシロース20g/L)でシェフェルソマイセス・スティピティス TT-E8株を28℃、120rpmの条件で培養し、回収された酵母細胞を用いてエタノール生産試験を行った。エタノール生産試験にはYTDX培地(酵母エキス5g/L、トリプトン10g/L、グルコース80g/L、キシロース40g/L)を用いた。対照としてコーンスティープリカーを添加していない培地で培養した酵母細胞を用いたエタノール生産試験も行った。コーンスティープリカーを添加した培地で培養した酵母細胞では無添加のものと比較して糖の消費速度、エタノール生産速度およびエタノール生成量の全ての向上が見られた(図1)。このことから、前培養培地へのコーンスティープリカーの添加によりエタノール生産性が向上することが明らかとなった。
「シェフェルソマイセス・スティピティス CTM-2株の最小阻害濃度試験(MIC試験)」
シェフェルソマイセス・スティピティス CTM-2株の特性を検証するために、MIC試験に供与し、薬剤耐性を調べた。
一般的に糖化液に含まれる発酵阻害物質として考えられているフルフラール、バニリンによりシェフェルソマイセス・スティピティス CTM-2株およびTT-E8株の生育が阻害される最小の濃度を調べた。フルフラール(0〜50mM、5mM刻みで濃度を変化)もしくはバニリン(1〜10mM、1mM刻みで濃度を変化)を含むYTX液体培地(酵母エキス10g/L、トリプトン20g/L、キシロース20g/L)において28℃、80rpmの条件でシェフェルソマイセス・スティピティス CTM-2株およびTT-E8株を培養した。TT-E8のフルフラールとバニリンの最小阻害濃度はそれぞれ15mMと6mMであり、CTM-2株はそれぞれ20mMと6mMであった(表2)。この結果から、CTM-2株はTT-E8株よりもフルフラールによる生育阻害に対して高い耐性を持つことが明らかとなった。
「フルフラールとバニリンがシェフェルソマイセス・スティピティス CTM-2株のエタノール発酵に及ぼす影響」
一般的に糖化液に含まれる発酵阻害物質として考えられているフルフラールとバニリンがシェフェルソマイセス・スティピティス CTM-2株のエタノール発酵に及ぼす影響を検証した。
20mMフルフラールもしくは10mMバニリンを含むYTX液体培地(酵母エキス5g/L、トリプトン10g/L、キシロース50g/L)でシェフェルソマイセス・スティピティス CTM-2株によるエタノール生産試験を行った。対照としてTT-E8株も同様のエタノール発酵を行った。CTM-2株とTT-E8株では無添加の状態でキシロース消費速度、エタノール生成速度およびエタノール収率の値に差があるため、上に示した発酵阻害物質の効果をキシロース消費速度、エタノール生成速度およびエタノール収率の値で単純に比較できない。そこで、無添加での値を100として計算し、発酵阻害物質を添加した時に維持している割合で比較を行った(表3)。フルフラール存在下ではCTM-2株のキシロース消費速度はTT-E8株よりも僅かに高い値を維持しており、エタノール生成速度は高い値を維持していた。バニリン存在下でも同様の結果となった。CTM-2株とTT-E8株の両方で最終的なエタノール収率は無添加の場合と比較して低下しなかった。この結果から、CTM-2株はTT-E8株よりもフルフラールとバニリンによるエタノール発酵阻害の影響を受けないことが分かった。
以上の結果から、CTM-2株をフルフラールとバニリンによる発酵阻害に対する耐性がTT-E8株よりも強化されていることが示された。
各値は無添加の値を100として計算した。
「シェフェルソマイセス・スティピティス CTM-2株のグルコースとキシロース混在下でのエタノール生産試験」
グルコースとキシロースを含む培地でのシェフェルソマイセス・スティピティス CTM-2株によるエタノール生産試験を行い、グルコースの消費、キシロースの消費およびエタノール生成に関する検証を行った。
シェフェルソマイセス・スティピティス SS39-1株によるYTDX培地(酵母エキス5g/L、トリプトン10g/L、グルコース80g/L、キシロース50g/L)を用いたグルコースとキシロース混在下でのエタノール発酵ではグルコースが優先的に消費され、キシロースの消費が大きく抑制された(図2-(a))。このエタノール発酵ではグルコースの消費は48時間で終了するが、キシロースの消費には144時間を要し、エタノールの生成が完了するまで168時間かかった。これはSS39-1株のエタノール耐性が低く、グルコースから生成されたエタノールにより酵母細胞自身が影響を受けたためであると思われる。シェフェルソマイセス・スティピティス CTM-2株はエタノール耐性を付与した酵母変異株であることから、グルコースとキシロース混在下でのキシロースの取り込みに対する改善がなされている可能性が高い。そこで、シェフェルソマイセス・スティピティス CTM-2株をYTDX培地(酵母エキス5g/L、トリプトン10g/L、グルコース80g/L、キシロース40g/L)でのエタノール発酵に供与し、グルコースとキシロース混在下でのエタノール生産性を検証した。
図2-(b)にあるように、24時間以内にグルコースを完全に消費し、キシロースも50時間には完全に消費した。エタノールの生産も50時間には完了した。この結果から、CTM-2株は糖の消費能力とエタノール生成速度も大きく改善していることが示された。
「アンモニア処理ネピアグラス糖化液からのエタノール生産」
アンモニア処理ネピアグラス糖化液でのエタノール生産試験を行い、アンモニア処理ネピアグラス糖化液でのエタノール生産性を検証した。
ネピアグラスを原材料として調製された糖化液(アンモニア処理ネピアグラス糖化液)における高温発酵性酵母と酵母変異株を用いた二段階発酵法によるエタノール生産を行った。一次発酵として、糖化液はシゾサッカロマイセス・ジャポニカスSS4-5株を用いて40℃でエタノール発酵させ、グルコースをエタノールに変換した。得られた発酵液に含まれるエタノールの濃度は高温での発酵液により10g/Lになったため、そのまま二次発酵に行った。TT-E8株を用いて二次発酵を行うと発酵時間50時間でも初発キシロースの半分以下しか消費できず、50時間でエタノールの生成が停止してしまう(図3-(a))。そのため、エタノール収率も32.3%と非常に低い値になった。一方で、シェフェルソマイセス・スティピティス CTM-2株で二次発酵を行うと発酵開始から24時間以内にキシロースを完全に消費し、エタノール生産が完了する(図3-(b))。このエタノール発酵でのエタノール収率は91.2%と非常に高い値となった。シェフェルソマイセス・スティピティス CTM-2株による二次発酵では親株であるTT-E8株と比較してキシロース消費速度、エタノール生成速度とエタノール最終生成濃度の非常に大きな改善が見られた。このことから、シェフェルソマイセス・スティピティス CTMS-株はネピアグラスを原材料とした糖化液に含まれる発酵阻害物質によるエタノール発酵阻害効果に対する耐性を有することが明らかとなった。
本発明の酵母はリグノセルロース系バイオマスからのエタノール製造等において有用である。
NITE P-1756:2013年11月22日で、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 NITEバイオテクノロジー本部 特許微生物寄託センター)に寄託した。識別表示:Scheffersomyces stipitis CTM-2。

前培養における窒素源の量がエタノール生産に及ぼす影響を検証するために、窒素源としてコーンスティープリカーを添加した前培養培地で培養した酵母細胞を用いてエタノール生産試験を行った。10g/Lコーンスティープリカーを添加したYTX液体培地(酵母エキス10g/L、トリプトン20g/L、キシロース20g/L)でシェフェルソマイセス・スティピティス TT-E8株を28℃、120rpmの条件で培養し、回収された酵母細胞を用いてエタノール生産試験を行った。エタノール生産試験にはYTDX培地(酵母エキス5g/L、トリプトン10g/L、グルコース80g/L、キシロース40g/L)を用いた。対照としてコーンスティープリカーを添加していない培地で培養した酵母細胞を用いたエタノール生産試験も行った(図1)。コーンスティープリカーを添加した培地で培養した酵母細胞では無添加のものと比較して糖の消費速度、エタノール生産速度およびエタノール生成量の全ての向上が見られた(図2)。このことから、前培養培地へのコーンスティープリカーの添加によりエタノール生産性が向上することが明らかとなった。
シェフェルソマイセス・スティピティス SS39-1株によるYTDX培地(酵母エキス5g/L、トリプトン10g/L、グルコース80g/L、キシロース50g/L)を用いたグルコースとキシロース混在下でのエタノール発酵ではグルコースが優先的に消費され、キシロースの消費が大きく抑制された(図3)。このエタノール発酵ではグルコースの消費は48時間で終了するが、キシロースの消費には144時間を要し、エタノールの生成が完了するまで168時間かかった。これはSS39-1株のエタノール耐性が低く、グルコースから生成されたエタノールにより酵母細胞自身が影響を受けたためであると思われる。シェフェルソマイセス・スティピティス CTM-2株はエタノール耐性を付与した酵母変異株であることから、グルコースとキシロース混在下でのキシロースの取り込みに対する改善がなされている可能性が高い。そこで、シェフェルソマイセス・スティピティス CTM-2株をYTDX培地(酵母エキス5g/L、トリプトン10g/L、グルコース80g/L、キシロース40g/L)でのエタノール発酵に供与し、グルコースとキシロース混在下でのエタノール生産性を検証した。
図4にあるように、24時間以内にグルコースを完全に消費し、キシロースも50時間には完全に消費した。エタノールの生産も50時間には完了した。この結果から、CTM-2株は糖の消費能力とエタノール生成速度も大きく改善していることが示された。
ネピアグラスを原材料として調製された糖化液(アンモニア処理ネピアグラス糖化液)における高温発酵性酵母と酵母変異株を用いた二段階発酵法によるエタノール生産を行った。一次発酵として、糖化液はシゾサッカロマイセス・ジャポニカスSS4-5株を用いて40℃でエタノール発酵させ、グルコースをエタノールに変換した。得られた発酵液に含まれるエタノールの濃度は高温での発酵液により10g/Lになったため、そのまま二次発酵に行った。TT-E8株を用いて二次発酵を行うと発酵時間50時間でも初発キシロースの半分以下しか消費できず、50時間でエタノールの生成が停止してしまう(図5)。そのため、エタノール収率も32.3%と非常に低い値になった。一方で、シェフェルソマイセス・スティピティス CTM-2株で二次発酵を行うと発酵開始から24時間以内にキシロースを完全に消費し、エタノール生産が完了する(図6)。このエタノール発酵でのエタノール収率は91.2%と非常に高い値となった。シェフェルソマイセス・スティピティス CTM-2株による二次発酵では親株であるTT-E8株と比較してキシロース消費速度、エタノール生成速度とエタノール最終生成濃度の非常に大きな改善が見られた。このことから、シェフェルソマイセス・スティピティス CTMS-株はネピアグラスを原材料とした糖化液に含まれる発酵阻害物質によるエタノール発酵阻害効果に対する耐性を有することが明らかとなった。

Claims (9)

  1. クロトリマゾール耐性を有するシェフェルソマイセス(Scheffersomyces)属のエタノール発酵性酵母変異株
  2. 請求項1に記載のエタノール発酵性酵母であって、エタノール耐性を有するエタノール発酵性酵母変異株
  3. 請求項1に記載のエタノール発酵性酵母であって、フルフラール耐性を有するエタノール発酵性酵母変異株。
  4. 請求項1に記載のエタノール発酵性酵母であって、バニリン耐性を有するエタノール発酵性酵母変異株。
  5. 請求項1〜4に記載の耐性を有することを特徴とする酵母変異株シェフェルソマイセス・スティピティス (Scheffersomyces
    stipitis) CTM-2株(受託番号NITE P-1756)。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のエタノール発酵性酵母変異株を使用するエタノール製造方法。
  7. 請求項6に記載のエタノール製造方法において、コーンスティープリカーを含む培地により増殖させた酵母細胞を用いてエタノールを製する造方法。
  8. 請求項6に記載のエタノール製造方法において、グルコースおよびキシロース混在下でエタノールを製造する方法。
  9. 請求項6に記載のエタノール製造方法において、バイオマスに由来する糖液でエタノールを製造する方法。

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