JP2015105210A - 接合材 - Google Patents

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Abstract

【課題】常温域でセラミックス部材の簡便な接合が可能であり、かつ、耐熱性、化学的安定性、耐久性(例えば、強度および耐環境性等)を備えた接合を実現し得る接合材を提供する。【解決手段】接合材20は、少なくとも一のセラミックス部材と一の被接合部材とを接合するために使用される接合材であり、5〜200℃の温度範囲でガラス硬化可能であって、硬化後に得られるガラス成分の25〜500℃の熱膨張係数が3〜10?10−6K−1である水溶性ガラス前駆体を含む液状の主材と、熱膨張係数調整材と、上記水溶性ガラス前駆体の硬化を促進する硬化触媒を含む助材と、を備え、当該接合材を硬化して得られる接合部の25〜500℃の熱膨張係数が5〜10?10−6K−1となるように調製されている。【選択図】図1

Description

本発明は、接合材に関する。詳しくは、セラミックス部材の接合に好適に用いることができる接合材とその利用に関する。
半導体装置、環境装置等の、例えば高温、強酸、強アルカリ等の過酷な雰囲気下で使用される部材については、近年、それらの部材が曝される雰囲気条件がますます厳化してきている。これに伴い、従来この種の用途で使用されてきたステンレスや特殊合金等の金属材料が腐食されるといった状況も発生してきており、かかる過酷な環境での使用に耐え得る材料の需要が増してきている。例えば、従来よりステンレスや特殊合金等の金属材料で構成されていた部材を、化学的安定性、耐熱性等に優れるセラミックス材料により賄うことが検討されている。
しかしながら、特殊な組成のセラミックス材料は比較的高価であることから、例えば、アルミナ(Al)等のように、比較的安価でありながら高強度で化学的耐性に優れたセラミックス材料の使用が望ましい。一方で、かかるセラミックス材料は脆性材料でありかつ難加工性材料でもあるため、例えば金属材料等と比較して複雑な形状や大型形状の部材を作成することが困難である。そのため、かかる部材は複数の部品(モジュール)を組み合わせることで構築することがなされている。
かかるセラミックス材料からなる部品の接合には、従来より、樹脂材料からなる接着剤や、当該セラミックス材料と熱膨張係数が同程度かそれよりも若干低い熱膨張係数(例えば、25℃〜500℃の温度範囲の熱膨張係数が5〜10×10−6−1程度のガラス材料あるいは金属材料からなる接合材が用いられている。
特許第2538527号 金属酸化物ガラス 特許第5109013号 パッケージ封止機構
しかしながら、樹脂材料からなる接着剤は上記のとおりの過酷な環境に耐え得る耐性を十分に備えておらず、この種の用途に用いるのは困難であった。また、ガラス材料あるいは金属材料からなる接合材は、接合に際してこれら接合材の融点(または軟化点)以上の温度に加熱する必要があり、例えば、1000℃程度以上の温度への加熱が求められる。そのため、大型部品等の接合にはかかる大型部品を収容できる加熱炉等の特殊な設備が必要となり、簡便な接合を行うことは困難であった。また、小型の部品であっても、例えば、予め半導体素子が実装された部品や寸法精度が要求される部品等の熱影響を受けやすい部品については、加熱を伴う接合を適用できない場合があった。
本発明は、上述したような従来の問題を解決すべく創出されたものであり、例えば常温域でセラミックス部材を簡便に接合することが可能であって、かつ、耐熱性、化学的安定性、耐久性を備えた接合を実現し得る接合材を提供することを目的としている。
上記の課題を解決するために、ここに開示される発明は、少なくとも一のセラミックス部材と一の被接合部材とを接合するために使用される接合材を提供する。かかる接合材は、5℃以上200℃以下の温度範囲でガラス硬化可能であって、硬化後に得られるガラスの25℃から500℃までの熱膨張係数が3×10−6−1以上10×10−6−1以下である水溶性ガラス前駆体を含む液状の主材と、熱膨張係数調整材と、上記水溶性ガラス前駆体の硬化を促進する硬化触媒を含む助材と、を備えている。そして、当該接合材を硬化して得られる接合部の25℃から500℃までの熱膨張係数が5×10−6−1以上10×10−6−1以下となるように調製されていることを特徴としている。
ガラス材料の一つとして、例えば、水溶性のガラス前駆体を含み、ガラスの融点以上の温度に加熱して溶融させる工程を経ることなく、例えば、常温領域でガラス化させることが可能な液状のガラス材料が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。かかるガラス材料は、典型的には、5℃以上200℃以下の温度範囲でガラス硬化反応が進行され得る水溶性のオルガノポリシロキサンを含む溶液からなる主材と、この水溶性オルガノポリシロキサンの硬化を促進する硬化触媒を含む助材と、から構成され得る。この種のガラス材料によると、ガラス原料の溶融の工程を経ることなく、ガラスを得ることができる。例えば、常温領域で、Siをガラス骨格として含むガラスを形成することができる。したがって、かかるガラス材料を含むこの接合材は、硬化後に、一般的なガラス材料と同様の、耐熱性、化学的安定性および耐久性を備えた硬化物(すなわち、接合部であり得る。以下、かかる硬化物を「接合部」ともいう。)を形成することができる。
さらに、ここに開示される接合材においては、上記の通り、溶融の工程を経ることなくガラス化するガラス材料に対し、熱膨張係数調整材を加えることで、かかるガラス材料と熱膨張係数調整材との混合物から形成される接合部の熱膨張係数を、当該ガラス材料よりも高い所望の値に調整するようにしている。このことから、例えば、25℃から500℃までの熱膨張係数が5×10−6−1以上10×10−6−1以下であって、高温で使用される各種のセラミックス部材の接合に特に好適な接合部を形成し得る。
以上のように、かかる構成によると、常温域でセラミックス部材を簡便に接合することが可能であり、なおかつ、耐熱性、化学的安定性、耐久性を備えた接合部を形成し得る、接合材が提供される。
なお、本明細書において「熱膨張係数」(Coefficient of Tthermal Expansion:CTE)とは、特にことわりのない限り25℃から500℃までの温度領域において、熱機械分析装置(Thermomechanical Analysis:TMA)を用いて測定した平均線膨張係数であり、試料の初期長さに対する試料長さの変化量を温度差で割った値をいう。熱膨張係数の測定は、例えば、セラミックス部材については、JIS R 1618:2002「ファインセラミックスの熱機械分析による熱膨張の測定方法」に準じて実施することができる。また、接合材により形成される接合部については、例えば、熱膨張係数調整材の配合割合やその材質等に応じて、適宜、上記既定の他、JIS Z 2285:2003「金属材料の線膨張係数の測定方法」およびJIS R 3102:1995「ガラスの平均線膨張係数の試験方法」に準じて測定することができる。以下、「25℃から500℃までの平均熱膨張係数」を単に「CTE」と省略して記す場合がある。
ここに開示される接合材の好ましい一態様において、上記熱膨張係数調整材は、上記水溶性ガラス前駆体のガラス成分と上記熱膨張係数調整材との合計に占める上記熱膨張係数調整材の体積割合が、5体積%以上50体積%以下であることを特徴としている。
かかる構成によると、例えば、セラミックス部材と、このセラミックス部材に対してCTEが大きく異なる部材とを、常温で好適に接合することができる。また、熱膨張係数調整材は上記のとおり幅広い量で配合し得るため、幅広い範囲でCTEが調整された接合材を調製することができるために好適である。
ここに開示される接合材の好ましい一態様において、上記熱膨張係数調整材は、上記主材中に分散されていることを特徴としている。
かかる構成によると、予め、熱膨張係数調整材が主材中に分散されていることにより、助材を添加することのみでガラス硬化反応を進行させることができて簡便である。
ここに開示される接合材の好ましい一態様において、上記熱膨張係数調整材は、金属酸化物を含むことを特徴としている。
かかる構成によると、比較的安価な熱膨張係数調整材を用いて、ここに開示される接合材から得られる接合部のCTEを広い範囲で任意に調整することができる。
ここに開示される接合材の好ましい一態様において、上記熱膨張係数調整材の25℃から500℃までの熱膨張係数は、5×10−6−1以上23×10−6−1以下であることを特徴としている。
かかる構成によると、例えば、CTEが5×10−6−1以上10×10−6−1以下と、ガラス前駆体から形成されるガラス成分のCTEの調整を簡便に行うことができ、上記ガラス成分単体よりもCTEの高いセラミックス部材の接合に適した接合材を好適に提供することができる。
ここに開示される接合材の好ましい一態様では、700℃以上の高温環境下において、上記少なくとも一のセラミックス部材と、上記一の被接合部材とを気密に接合するよう構成されていることを特徴としている。
この接合材は、かかる接合材により形成される接合部のCTEが上記の通り所望の値に調整することが可能であることから、例えば、700℃以上の高温環境下においてセラミックス部材と被接合部材との間に発生される熱応力を、この接合部が緩和し得る。これにより、700℃以上の高温環境下においてもセラミックス部材と被接合部材との接合を気密に維持することが可能な接合材を提供することができる。
また、他の側面において、本発明は、少なくとも一のセラミックス部材と一の被接合部材と両部材を接合する接合部とを備える接合体を提供する。そして、かかる接合体において、上記接合部は、上記のいずれかに記載の接合材の硬化物により構成されていることを特徴としている。
すなわち、かかる接合体の接合部は、常温で硬化するガラス材料を含んでいることから、耐熱性、化学的安定性、耐久性(例えば、強度および耐環境性等)を備えたものであり得る。そしてさらに、接合部は熱膨張係数調整材を含んでいることから、所望のCTEに調整されたものであり得る。したがって、例えば、かかる接合体の置かれる温度環境に応じて、接合部は、各種のセラミックス部材および被接合部材に対応した適切なCTEを有するものであり得る。これにより、例えば、かかる接合体が温度変化のある環境下に置かれた場合であっても、温度変化により生じる熱応力を接合部が緩和し、気密な接合を維持することができる。
ここに開示される接合体の好ましい一態様では、上記一のセラミックス部材は、CTEが5×10−6−1以上10×10−6−1以下であることを特徴としている。すなわち、上記の液体ガラスの単体よりも高いCTEを有するセラミックス部材であり得る。例えば、様々な技術分野で広く一般に利用されているセラミックス材料は、上記の範囲の熱膨張特性を有するものであることが多い。ここに開示される接合体は、かかるセラミックス材料と他の被接合部材とが高温に曝されることなく常温域で接合されたものであり得る。
ここに開示される接合体の好ましい一態様では、上記一の被接合部材は金属材料からなり、25℃から500℃までの熱膨張係数が5×10−6−1以上10×10−6−1以下であることを特徴としている。
かかる構成によると、セラミックス部材と金属部材とが高温に曝されることなく常温域で接合された接合体が提供される。
したがって、ここに開示される接合体により、半導体素子が搭載されたセラミックス基板と金属部品とが接合された接合体や、精密機器におけるセラミックス部材と金属部材との接合体を、熱影響を受けることなく簡便に実現することができる。また、大型のセラミックス部材と、金属部材との接合体を、常温領域で簡便に構築することができる。
このような接合材は、例えば、車両用エンジン部材、車両用排ガス処理部材、半導体装置、伝熱体、導電体、光学素子、強化材およびこれらの製造装置、電極材料,電池,キャパシタおよびスーパーキャパシタ等を含む各種発電システム、大型環境プラント等への適用の他、真空系給排気機器、医療機器等の多様な分野におけるセラミックス部材の接合に適用することができる。
大型のセラミックス管の要部分解斜視図である。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えば、接合材の構成や物性等の特徴)以外の事項であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、接合材を調製するための原料、方法および加工方法等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
≪接合材≫
ここに開示される接合材は、少なくとも一のセラミックス部材と一の被接合部材とを接合するために使用される接合材である。かかる接合材は、本質的に、下記の(1)〜(3)に示される構成要素を備えている。
(1)5℃以上200℃以下の温度範囲でガラス硬化可能であって、硬化後に得られるガラス成分のCTEが3×10−6−1以上10×10−6−1以下である水溶性ガラス前駆体を含む液状の主材
(2)熱膨張係数調整材
(3)上記水溶性ガラス前駆体の硬化を促進する硬化触媒を含む助材
[主材]
ここに開示される接合材における主材は、液状であって、水溶性のガラス前駆体を含んでいる。典型的には、液状のガラス前駆体、あるいは、かかるガラス前駆体が分散または溶解されている溶液であり得る。そして、このガラス前駆体が硬化(すなわちガラス化)することで、接合対象に対する付着性および結合性を発現し、セラミックス部材と被接合部材との結合を実現することができる。ここに開示されるガラス前駆体としては、ガラス原料を溶融させることなく、例えば常温領域でガラス化が進行され得る類の各種のガラス材料を用いることができる。すなわち、このガラス前駆体は、ガラスの融点以上の温度に加熱して溶融し、この融液を結晶化させることなく過冷却状態に冷却してガラス化させる類の一般的なガラス原料(一般的なガラス前駆体)とは全く異なる性質のものであり得る。
このような主材に含まれるガラス前駆体は、上記の通り、比較的低い温度領域(例えば、5℃以上300℃以下、より好ましくは200℃以下、特に好ましくは100℃以下)でガラス化反応を進行させ得るものであれば特に制限されることなく用いることができる。かかるガラス化反応とは、典型的には、2次元または3次元的な重合および架橋反応、加水分解および脱水反応等であり得るが、これらに厳密に限定されるものではない。典型的な一例では、主材に含まれるガラス前駆体が加水分解されて水酸基を備え、かかる水酸基と他の官能基との間で脱水や脱アルコールを伴う重合反応、架橋反応等が生じ、三次元無規則の網目構造を有するガラスを形成するものと考えられる。
かかるガラス前駆体は、典型的には、ガラス構成元素を加水分解可能な有機化合物として含んでいる。ガラス構成元素としては、一般的なガラスでガラス構成元素として知られている、典型金属元素、半金属元素、遷移金属元素、非金属元素等を考慮することができる。この加水分解可能な有機化合物としては、典型的には、上記ガラス構成元素のアルコキシド(すなわち、典型的には金属アルコキシド)やその重合体、上記ガラス構成元素(M)と酸素(O)との結合であるM−O結合を主鎖骨格とする低分子量のメタロキサンおよびその高分子量のポリメタロキサン等が挙げられる。
金属アルコキシドとしては、一般式:M(OR)で表され、Mは金属元素、Rはアルキル基、nは金属元素の酸化数である各種の材料であり得る。好ましくは、Rが炭素原子4以下のアルキル基、すなわちメチル基:CH(以下、Meと示す)、エチル基:C(以下、Etと示す)、プロピル基:C(以下、Prと示す)、イソピロピル基i−C(以下、i−Prと示す)、ブチル基C(以下、Buと示す)イソブチル基i−C(以下、i−Buと示す)等の低級アルキル基である金属アルコキシドである。金属アルコキシドとしては、例えば、具体的には、リチウムエトキシドLiOEt、ニオブエトキシド:Nb(OEt)、マグネシウムイソプロポキシド:Mg(OPr−i)、アルミニウムイソプロポキシドAl(OPr−i)、亜鉛プロポキシドZn(OPr)、テトラエトキシシランSi(OEt)、チタンイソプロポキシドTi(OPr−i)、バリウムエトキシドBa(OEt)、バリウムイソプロポキシドBa(OPr−i)、トリエトキシボランB(OEt)、ジルコニウムプロポキシドZr(OPr)、ランタンプロポキシドLa(OPr)、イットリウムプロポキシドY(OPr)、鉛イソプロポキシドPb(OPr−i)等が挙げられる。
メタロキサンとしては、典型的には、シロキサン、チタノキサン、アルミノキサン、ジルコノキサン、タンタロキサン等が例示される。
また、ポリメタロキサンとしては、典型的には、ポリシロキサン、ポリチタノキサン、ポリアルミノキサン、ポリジルコノキサン、ポリタンタロキサン等が例示される。
これらは、例えば、容易に加水分解を起こし得る加水分解性を示す加水分解性基を有するものであることが好ましい。かかる加水分解性基としては、例えば、加水分解によりヒドロキシ基(−OH基)となる基を挙げることができ、具体的には、例えば、上記のORとして示されるメトキシ基:OMe、エトキシ基:OEt、プロポキシ基:OPr、イソプロポキシ基:OPr−i、ブトキシ基:OBt、イソブトキシ基:OBt−i、sec−ブトキシ基:OBt−sec、tert−ブトキシ基:OBt−tert等のアルコキシ基や、フェノキシ基,アセチルオキシ基等のアシルオキシ基、ブタノキシム基等のオキシム基、アミノ基,メチルアミノ基等のアミノ基、クロル基等のハロゲン基等が例示される。とくに、加水分解性基を有するメタロキサンは、架橋促進剤としても機能し、ガラス化反応を促進し得るために好ましい。
ガラス構成元素を加水分解可能な有機化合物の好適な一例は、ポリシロキサンであり得る。ポリシロキサンを主たるガラス前駆体として含む主材をガラス化反応により硬化させることで、常温領域で、Siをガラス骨格として含むガラス(無機材料)を形成することができる。ここで、「ポリシロキサンを主たるガラス前駆体として含む」とは、ガラス前駆体の50質量%以上をポリシロキサンが占めることを意味する。
また、ポリメタロキサンの他に、加水分解可能なシロキサン等のメタロキサンを併せて含むことで、ガラス化反応が迅速に行われるためにより好ましい。
なお、以上の加水分解可能な有機化合物は、いずれか1種のみが含まれていても良いし、2種以上が組み合わせて含まれていてもよい。例えば、所望のガラス組成を実現し得るように、複数のガラス構成元素を含む有機化合物が化学量論組成で組み合わされて含まれていてもよい。
また、以上の主材は、上記のガラス前駆体のみから構成されていても良いし、例えば、かかるガラス前駆体が適切な溶媒に分散されていても良い。かかる溶媒としては、水、低級アルコール、または、水と低級アルコールとの混合物等が好適な例として挙げられる。低級アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびこれらの混合物等が例示される。溶媒は必須ではないものの、例えば、ここに開示される接合材の使用形態に合わせて適宜用いることができる。
[助材]
ここに開示される助材は、上記の主剤におけるガラス前駆体の硬化を促進する硬化触媒を含むものであれば特に制限されない。かかる硬化触媒としては、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、コバルト(Co)、スズ(Sn)等の金属有機化合物、B3+イオンのような半金属元素のイオン、Fイオン,Clイオン等のハロゲンイオン等が例示される。半金属およびハロゲン等のイオンは、塩や錯体の形態で助材に含まれていても良い。また、かかる助材についても、上記の硬化触媒のみから構成されていても良いし、例えば、かかる硬化触媒が適切な溶媒に分散されていても良い。かかる溶媒としては、水、低級アルコール、または、水と低級アルコールとの混合物等が好適な例として挙げられる。溶媒は必ずしも必須ではないものの、例えば、ここに開示される接合材の使用形態に合わせて適宜用いることができる。
なお、上記の主材および助材は、例えば、市販されているものを用いてもよい。かかる主材および助材としては、例えば、「GS−600シリーズ(商標)」,「ヒートレスグラス(商標)」,「シラグシタール(商標)」,「液体ガラス」等の名称、呼称で販売されている、常温硬化型のガラス材料が例示される。
[熱膨張係数調整材]
しかしながら、上記主材の硬化により形成されるガラスのCTEは、主材に含まれるガラス構成成分(すなわち、形成されるガラスの組成)にもよるが、概ね1〜5×10−6−1(例えば、3〜5×10−6−1)であり得る。この値は、シリカ(SiO)や一般的なガラス材料(例えば、硬質ガラス材料)と同等の値であり得る。そして、例えば、比較的安価で汎用されているセラミックス材料のCTE(5×10−6−1以上、例えば、5×10−6−1以上10×10−6−1以下)よりも低く、被接合部材の用途によっては、接合に際してCTEが整合し難いという問題が生じ得る。したがって、例えば、被接合部材が熱膨張を起こすような環境下に置かれる場合には、被接合部材間に生じる熱膨張差により熱応力が生じ、かかる接合材の硬化物(接合部)にクラックや割れが発生する等して気密な接合が維持できないおそれがあり得る。そこで、ここに開示される接合材は、結合性を発現するガラス成分を構成し得る上記主材とは別に、かかるガラス成分の熱膨張係数を調整する熱膨張係数調整材を備えるようにしている。
熱膨張係数調整材としては、特に限定されるものではないが、例えば、一例として、アルミナ(7.5)、ムライト(5.3)、ステアタイト(7.7)、フォルステライト(9.7)、セリア(11)、イットリア(9.3)、クロミア(9.5)、チタニア(6.6〜10)、ジルコニア(10)、部分安定化ジルコニア(10)、マグネシア(13.1)、リューサイト(KAlSi、30)等に代表される金属酸化物、ランタン・ストロンチウム・コバルタイト(約16〜20)、イットリウム系超伝導酸化物等の希土類遷移金属含有ペロブスカイト型酸化物、ビスマス(13.3)、ニッケル(13.4)、金(14.3)、銅(16.8)、アルミニウム(23)、マグネシウム(25.4)、スズ(26.9)、亜鉛(30.2)、硫黄(64)等の金属の単体や、マグネシウムシリサイド(15.5)、SUS300シリーズ(約17〜18.5)、青銅(16)、黄銅(19)、ジュラルミン(23)、シリサイド化合物(NiSix,MoSix,CoSix,FeSix;約10〜12)等の合金、炭化チタン(7.4)、フッ化カルシウム(19.5)等の化合物が挙げられる。これらの材料は、いずれか1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。2種以上の材料を用いる場合は、これらの材料は、混合状態あるいは複合化状態(合金、サーメット、複合酸化物等の状態であり得る。)のいずれの状態で用いるようにしても良い。なお、上記の熱膨張係数調整材について括弧内に示された数値は、各材料のCTE(×10−6−1)のおおよその目安を例示したものである。ここで開示される熱膨張係数調整材としては、なかでも、CTEが5×10−6−1以上23×10−6−1以下程度の材料が、ここに開示される接合材のCTEの調整をより好適に行えるために好ましい。これらの熱膨張係数調整材は、例えば、接合材の使用環境に応じて、当該環境に耐えうる耐環境性(耐熱性、耐腐食性、強度等)を備えているものを選択して用いるのがより好ましい。さらには、金属酸化物からなる熱膨張係数調整材を用いる場合には、耐環境性に優れていることに加え、被接合部材であるセラミックス材料とのなじみが良くなるためにより好ましい。
以上の熱膨張係数調整材が接合材に含まれる量については、厳密な制限はなく、例えば、セラミックス部材およびこれに接合される被接合部材の熱膨張係数に応じて所望の値に調整することができる。より好ましい一形態として、熱膨張係数調整材は、上記の水溶性ガラス前駆体の硬化後に得られるガラス成分とかかる熱膨張係数調整材との合計に占める体積割合として、95体積%未満の範囲で配合されるのが好ましい。熱膨張係数調整材の配合量が多すぎると、ガラス成分を含む主材の割合が少なすぎて良好な接合を行い難くなることや、かかる接合材から形成される接合部の熱膨張係数がセラミックス部材を接合するに大きくなり過ぎることが考えられるために好ましくない。したがって、熱膨張係数調整材は、その特性にもよるものの、典型的には80体積%以下の割合で配合されるのが好ましく、より好ましくは70体積%以下、例えば50体積%以下、さらには45体積%以下の割合で配合することが例示される。また、熱膨張係数調整材は少量でも配合されることで接合材の熱膨張係数を高める効果が得られるため、その配合量の下限は特に限定されない。しかしながら、熱膨張係数調整材の配合量が少なすぎると、かかる接合材から形成される接合部の熱膨張係数が、セラミックス部材を接合するに小さ過ぎることが考えられるために好ましくない。熱膨張係数調整材は、典型的には5体積%以上の割合で配合されるのが好ましく、例えば10体積%以上の割合で配合されるのがより好ましい。
なお、特許文献2には、常温で硬化するガラス材料にシリカ球状微粒子に代表される、サブミクロンサイズの微粒子を分散させることが開示されている。しかしながら、このシリカ球状微粒子は、ガラス材料全体の界面張力を制御すること、換言すると、いわゆる接合材のダレを防止することを目的として添加されるものである。そして、特許文献2には、接合材のダレに伴い形成される接合部内の気泡の発生を抑えることで、ペンタフルオロプロピオン酸液に対する耐食性が向上されることが開示されている。
しかしながら、かかるシリカ球状微粒子のCTEはガラス材料とほぼ同じであり、接合材における熱膨張係数調整材としての機能は有さない。すなわち、このような引用文献2に開示された接合材は、例えばアルミナ等の、比較的低コストで汎用されている多くのセラミックス部材の接合には好適に適用することができない。この点で、ここに開示される技術は、かかる引用文献2の開示と明瞭に区別され得る。
かかる熱膨張係数調整材の形状については特に限定されない。典型的には略球状であるが、いわゆる真球状のものに限られず、例えば、楕円球形状や、フレーク形状、不規則形状等のいわゆる粉末の形態のものが好ましい。また、熱膨張係数調整材のサイズ(典型的には、粒径)についても特に制限されない。当該熱膨張係数調整材を均一に接合材に分散するとの観点からは、上記粉末を構成する粒子の平均粒径が20μm以下であるものが適当であり、好ましくは0.01μm以上10μm程度であり、より好ましくは0.3μm以上5μm以下程度であり、例えば2μm±1μm程度である。なお、ここでいう平均粒径とは、レーザ散乱・回折法に基づく粒度分布測定装置により測定された粒度分布における積算値50%での粒径(50%体積平均粒子径;以下、D50と略記する場合もある。)を意味する。
[接合材の調製]
ここに開示される接合材は、例えば、上記の主材、熱膨張係数調整材および助材がそれぞれ別個に備えられていても良いし、これらのうちのいくつかが混合された状態で用意されていても良い。ここに開示される接合材は、好ましくは、主材中に熱膨張係数調整材が均一に分散された分散液(ペースト、スラリーを包含する)に、助材が単独で備えられた形態であり得る。かかる構成によると、接合に際して、上記分散液に助材を混合することで接合材の硬化反応(ガラス化反応)を進行(促進させた状態であり得る)させることができるために好適である。
なお、主材中に熱膨張係数調整材を分散させたり、分散液に助材を混合したりする際には、例えば、公知の混合法を特に制限なく利用することができる。かかる混合方法としては、例えば、接合材の粘度、溶媒の有無等にもよるが、ロールミル、三本ロールミル、遊星ボールミル等を用いて行うことが好適な例として挙げられる。これにより、ここに開示される接合材を得ることができる。
[接合対象]
ここに開示される接合材は、セラミックス部材を接合するために好適に用いることができる。すなわち、例えば、付着性および結着性を示す成分が常温で硬化するガラス成分から構成されているにも関わらず、かかる常温で硬化するガラスの単体よりも熱膨張係数の高いセラミックス材料を好適な接合対象とすることができる。また、付着性および結着性を示す成分が、耐熱性、化学的安定性および耐久性の高いガラスであることから、様々な環境下(例えば、腐食環境下)で使用可能な接合材として提供され得る。
このような接合対象としてのセラミックス部材としては、厳密に限定されるものではないが、例えば、常温で硬化するガラス成分よりも高いCTEを有するものを特に好ましい接合対象として考慮することができる。かかるセラミックス部材を構成するセラミックス材料としては、例えば、CTEが5×10−6−1以上10×10−6−1以下のものが挙げられる。より好ましくは、CTEが5×10−6−1以上8×10−6−1以下のものであり得る。かかるセラミックス部材としては、具体的には、例えば、アルミナ、ムライト、ステアタイト、フォルステライト、チタニア、イットリア、クロミア、ジルコニア、部分安定化ジルコニア等が挙げられる。これらはいずれか1種のセラミックス材料の単体であっても良いし、上記に例示した2種以上が複合化されたセラミック材料(例えば、アルミナジルコニア、ムライト等)であっても良い。特に、ファインセラミックス材料の中でも機械的、熱的、電気的、磁気的、化学的に様々な優れた特性をもつアルミナ等を好ましい接合対象とすることができる。
また、セラミックス部材が接合される相手である被接合部材についても、特に制限されることなく各種の材料を考慮することができる。例えば、各種の有機材料、金属材料、無機材料、ガラス材料からなる部材であり得る。より具体的には、例えば、上記のセラミックス部材同士を接合することが好適な例として挙げられる。例えば、一例として、アルミナ部材とアルミナ部材、または、アルミナ部材とムライト部材との接合等が例示される。また、被接合部材料としては、一般的な金属材料であってよいのはもちろんのこと、過酷な環境で使用され得る特殊金属材料や、比較的CTEの低い低熱膨張合金等であってもよい。特に限定されるものではないが、例えば、鉄および鉄合金、アルミニウムおよびアルミニウム合金、銅および銅合金等であり得る。より具体的には、例えば、ハステロイ,パーマロイ,インバー合金、コバール,42アロイ,45アロイ,50アロイ等に代表される鉄ニッケル合金、クロファー合金,ZMG,SUS400番台等に代表されるFe−Crフェライト系合金(ステンレス鋼を包含する)、A2000番台〜7000番台,ジュラルミン(A2024),超ジュラルミン(A2017)等に代表されるアルミニウム合金、ニモニック,インコネル等に代表されるニッケル基合金、Ducrolloy(Cr−5Fe−1Y),Mo−Fe−Cr合金に代表されるCr基合金、C1000番台〜C6000番台に代表される銅合金、チタン,タンタル,ジルコニウム,モリブデンおよびタングステンとこれらの合金が例示される。より好ましくは、インバー合金、コバール等に代表されるCTEが5×10−6−1以上10×10−6−1以下の金属材料であり得る。例えば、一例として、アルミナ部材とインバー合金部材、または、アルミナ部材とコバール合金部材との接合等が例示される。
[接合方法]
上記のようにして準備した接合材は、従来のこの種の接合材と同様に用いることができる。例えば、先ず、上記のように接合材を調製する。また、接合対象として、少なくとも一つのセラミックス部材と、被接合部材とを用意する。次に、例えば、セラミックス部材と被接合部材とを相互に接触または接続するよう配置し、その接続部位に上記ペースト状の接合材を供給(配置または塗布)して複合体とする。そして、この複合体を静置することで、当該接合材に溶媒が含まれる場合にはこれを除去し(乾燥させ)、また、当該接合材に含まれるガラス成分を硬化させる。これによって、被接合部材間に気密性および接合性に優れた接合部を形成することができる。すなわち、少なくとも一のセラミックス部材と一の被接合部材とが上記接合材により形成される接合部により接合された接合体が得られる。
なお、複合体の構築に際しては、セラミックス部材および被接合部材のいずれか一方または両方の接合部位に上記ペースト状の接合材を供給(配置または塗布)したのち、セラミックス部材と被接合部材とを接合材を介して当接させるようにしても良い。
[接合体]
以上のようにして得られる接合体は、例えば、耐熱性および化学的安定性に優れたセラミック部材が、耐熱性および化学的安定性に優れた接合部により被接合部材と接合されている。したがって、かかる接合体は、過酷な環境で使用する用途の構成部材として好ましく用いることができる。例えば、700℃以上の高温環境や、強酸化性雰囲気、強アルカリ性雰囲気、腐食性ガス(例えば、ハロゲン系ガス)雰囲気等のいずれか1以上の極めて過酷な環境で使用することができる。
ここに開示される接合体は、より具体的には、例えば、半導体装置や液晶パネル、電極材料,蓄電素子,太陽電池,キャパシタおよびスーパーキャパシタ等を含む各種発電システムおよびそれらを製造するための製造装置、ゴミ焼却装置,下水処理装置,排ガス除去装置等の環境装置、車両の排ガス処理装置,エンジン燃焼試験装置、真空系給排気機器、医療機器、半導体装置等を構成するために用いられる、セラミックス部材と被接合部材との接合体であり得る。
[実施態様]
ここに開示される接合材および接合体の好ましい実施態様について、適宜図面を参照して説明する。図1は、リチウムイオン二次電池の電極材料を製造するために使用されるロータリーキルンの炉構成部材として用いられる、大型のセラミックス管1の要部分解斜視図である。この実施態様において、例えば、セラミックス管1の外径は50cm程度であり、完成時の全長は7m程度であり得る。かかるセラミックス管1は、長さが1m程度の管状部材10を複数本(この場合は7本)用意し、その端部同士を嵌め合わせて一体化させることで構成されている。各々の管状部材10は、純度99.8%以上のアルミナ焼結体から構成されている。そして、隣り合う一の管状部材10と他の一の管状部材10Aとは、いわゆる嵌め合い構造により嵌合されているとともに、ここに開示される接合材料20により気密に接合されている。
管状部材10の接合に際しては、例えば、ここに開示される接合材20をペースト状に調製して用いることで、簡便な接合を実現することができる。即ち、まず、常温で硬化可能な水溶性ガラス前駆体を含む液状の主材に、マグネシアからなる熱膨張係数調整材を十分に分散させておく。次いで、かかる熱膨張係数調整材が分散された主材に、硬化触媒としての助材を混合することで、ペースト状の接合材20を調製する。そして、このペースト状の接合材20を、一方の管状部材10のオスコネクタ12の外周面に塗布した後、かかるオスコネクタ12に他方の管状部材10Aのメスコネクタ14を嵌め合わせ、常温で静置する。すると、接合材20から分散媒が除去されるとともに、主材のガラス成分の硬化反応が進行し、接合部が形成される。これにより、かかる接合部を介して管状部材10,10Aが接合され、セラミックス管1が構築される。
なお、かかるセラミックス管1の構成は、図1の例に限定されることなく、例えば、一方の管状部材10と他方の管状部材10Aとの接合部の外周を、図示しないスリーブ等で覆うことでより強固な接合を実現するようにしても良い。かかるスリーブは、典型的には、管状部材10,10Aの外径に相当する内径を有する管状部材から構成することができる。かかるスリーブは、セラミックス材料から構成されていても良いし、例えば、金属材料から構成されていても良い。また、管状部材10,10Aとスリーブとの間に接合材20を供給し、両者の間を接合部により接合するようにしても良い。これにより、複数の管状部材10,10A(モジュール)が接合されてなる大型のセラミック部材が実現される。
かかるセラミックス管1は、アルミナにより構成されているため、機械的強度が高くかつ耐熱性および化学的安定性に優れたものであり得る。また、接合部についても、ガラス成分とマグネシアとから構成されていることから、耐熱性および化学的安定性に優れたものであり得る。したがって、例えば、セラミックス管1を炉構成部材とするロータリーキルンを使用して、1000℃以上の温度でリチウムイオン二次電池の電極材料を製造する場合であっても、かかる接合部は気密な接合を維持することができる。
以下、本発明に関する実施例を説明するが、本発明を以下の実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
[接合材の用意]
本実施形態においては、水溶性ガラス前駆体を含む主材および硬化触媒を含む助材として、液体ガラスセット(モクテックカメムラ製、常温安定ガラス)を用いた。なお、この液体ガラスセットにより形成されるガラスは、SiO成分が約99.7重量%であり、ホウ素(B)、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)等の有害成分は含有されていない。
また、熱膨張係数調整材としては、粒子状のマグネシア(MgO,タテホ化学工業(株),平均粒径0.5μm),8%イットリア安定化ジルコニア(YSZ,共立マテリアル(株),平均粒径0.7μm),酸化アルミニウム(Al,昭和電工(株),平均粒径0.8μm)およびシリカ(SiO,平均粒径1.5μm)を用いた。これらの熱膨張係数は以下の通りであった。
MgO :13.1×10−6−1
YSZ : 9.8×10−6−1
Al: 6.7×10−6−1
SiO: 3.5×10−6−1
[接合部の熱膨張係数の測定]
上記で用意した液体ガラスの主材と、熱膨張係数調整材とを、下記の表1に示す配合で混合して、主材中に熱膨張係数調整材を均一に分散させた分散液を用意した。その後、かかる分散液に助材を混合し、計7種類の接合材ペースト(No.1〜7)を用意した。
なお、この接合材ペースト(No.1〜7)を硬化させた硬化物(接合部)の熱膨張係数を、JIS
R 3102:1995に準じて、以下の手順で測定した。すなわち、接合材ペーストを試験片作成用セルに流し込み、50℃以下で24時間静置することで硬化させた。かかる硬化物を、断面の一辺の長さが4mmで、長さが20mmの角柱状に切り出して試験片とした。この試験片の線膨張係数を、熱機械分析装置(株式会社リガク製、TMA8310)を用い、昇温速度を10℃/分として25℃から500℃まで加熱して測定した。
具体的には、室温での長さ(L)がLの試験片の温度(T)をTからT(T<T)まで変化させることにより試験片の長さ(L)がLからLまで変化したとき、室温での長さLに対する長さの変化量ΔL=(L−L)の比を熱膨張εと定義し、かかる熱膨張εを温度差ΔT=(T−T)で除した値を、平均線膨張係数αとする。かかる平均線膨張係数αは下式(1)により算出した。
α=(L−L)/{L×(T−T)} ・・・(1)
なお、本実施形態において、式(1)中、Tは25(℃)、Tは500(℃)であり、LはLと同じく、室温(25℃)での試験片の長さ20(mm)、およびLは500℃での試験片の長さである。得られた線熱膨張係数を下記の表1に併せて示した。
[接合体の作製]
次いで、上記で用意した7種類の接合材ペースト(No.1〜7)を用い、セラミックス部材を、下記の表1に示した被接合部材に接合することで、接合体を作製した。
セラミックス部材としては、セラミックスの中でも比較的熱膨張係数の低いアルミナ(Al)からなるアルミナ板(純度99%以上、厚み1mm、100mm×100mm)を使用した。また、被接合部材としては、上記と同一のアルミナ板と、ムライト板(3Al・2SiO、100mm×100mm)と、コバール(100mm×100mm)とを用意した。
上記で用意したセラミックス部材の表面に接合材ペーストを50μmの厚みで塗布し、この接合材ペーストを介して被接合部材を載置し、セラミックス部材−接合材−被接合部材からなる複合体を用意した。その後、この複合体を25℃で24時間程度静置することで接合材ペーストを硬化させ、接合材によりアルミナ板とLSCFペレットとが接合された接合体を得た。以下、接合体は、接合に使用した接合材ペーストに対応させて、接合体(No.1〜7)のように示す。
[接合試験]
接合体(No.1〜7)の接合性を、接合強度試験機(デイジ・ジャパン(株)製、万能型ボンドテスター4000)を用い、ダイシェア方式にて評価した。すなわち、室温(25℃)にて、接合体のセラミック部材を試験機に固定し、シェアツールにより接合面に対して水平方向に1MPaのせん断力を加え、接合部が破断するかどうかを調べた。かかる試験は、米国MIL−STD−883 集積回路試験方法 Mtd.2004.7に準じて実施することができる。試験結果を評価記号にて表し、表1に示した。なお、各評価記号は、以下の内容を意味する。
○:実用に十分な接着性があると評価できる1MPaのせん断応力を接合体に加えたときに、接合体に異常なし。
×:実用に十分な接着性があると評価できる1MPaのせん断応力を接合体に加えたときに、接合体の接合部に目視でクラックが確認される。
Figure 2015105210
[評価]
表1のNo.1に示されるように、熱膨張係数調整材を配合しなかった接合ペーストについては、接合試験において接合体の接合部にクラックが発生し、良好な接合を行うことができなかった。すなわち、常温で硬化する液体ガラスは、そのままではアルミナ等のセラミックスの接合に使用することができないことがわかった。
しかしながら、No.2〜5に示されるように、適切な熱膨張係数調整材を配合することで硬化後の接合部の熱膨張係数を調整することができ、アルミナ等のセラミックスを常温で接合することが可能となることが確認できた。
さらに、例えば、No.2〜4等の比較から、使用する熱膨張係数調整材のCTEが大きい程、より少ない配合量で接合部のCTEを効果的に5×10−6−1以上8×10−6−1以下に調整し得ることがわかった。
なお、No.6の接合体においては、接合試験において接合部にクラックの発生が認められた。これは、接合対象であるセラミック部材と被接合部材とに対し、接合部のCTEが大きくなりすぎたためと、ガラス成分を含む主剤の配合量が少なすぎたためであると考えられる。即ち、No.6の結果から、例えば、アルミナ部材の接合に用いる接合材については、CTEが6×10−6−1以上14×10−6−1以下程度の熱膨張係数調整材を用い、その配合量を95体積%未満、好ましくは5体積%以上50体積%以下とするのが好適であるといえる。なお、ここには具体的には示していないものの、熱膨張係数調整材の配合量を95体積%未満程度で調整することで、CTEが5×10−6−1以上23×10−6−1以下程度の範囲の熱膨張係数調整材を好適に用いることができることが確認できている。
表1に示されるように、ここに開示される接合材によると、例えば、セラミックス部材同士、あるいは、セラミックス部材と金属部材との接合に好適な、5×10−6−1〜10×10−6−1の熱膨張係数を有し、なおかつ優れた耐熱性や化学的安定性、耐久性を備えた接合材が実現可能なことが確認できた。
なお、本発明者の知見によれば、CTEが金属材料に近く、かつ、接合性の良好な接合材が幾つか市販されている。しかしながら、700℃以上(例えば、700℃〜1000℃程度)の高温であって、さらには、酸化性または還元性雰囲気に長期間曝されても耐久できるものは数少ない。そして、そのような接合材は、概ね、比較的耐熱性の高いガラスを結着性発現のために含んでいる。また、かかる耐熱性の高いガラス接合材は、一般に、ガラスのCTEを調節するためのホウ素(B)成分および/またはビスマス(Bi)成分や、軟化特性を調節するためのアルカリ(典型的にはLi,Na,K,Rb,Cs,Fr、特にはLi,Na,K)成分および/または鉛(Pb)成分を比較的多量に含んだものであり得る。しかしながら、このようなガラス接合材は、接合に際して、当該ガラス成分の軟化点(例えば、600〜800℃程度)以上の温度に加熱して軟化させる必要があった。また、ホウ素成分は高温環境下で飛散が生じ易く、これによってCTEが変化したり、機械的強度が低下したりすることがあり得るため、長期に亘る耐久性(特には長期高温耐久性)には課題が残されている。さらに、アルカリ成分(特に、ナトリウム成分)は、ガラス接合材の化学的安定性の低下を引き起こす原因となり得、鉛成分は環境や健康への影響から含有が好ましくない元素であり得る。
これに対し、ここに開示される接合材は、常温での接合が可能とされている。また、例えば、CTEの調整は熱膨張係数調整材により行われるため、ホウ素、ビスマス成分を含む必要はない。さらには、例えば、上記に例示したように、接合材中のガラス成分はSiO成分を約99.7重量%含むものとして実現可能であり、実質的にアルカリ、鉛等の成分を含有する必要はない。そして、SiO成分をこのように多量に含むことにより、極めて高い化学的安定性、延いては耐熱性を示すものであり得る。したがって、ここに開示される発明により、常温で接合が可能ながら、例えば、高温環境、酸化性雰囲気、還元性雰囲気のいずれか1以上、あるいは全てを含む、極めて過酷な環境での使用に耐え得る接合材が提供される。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
1 セラミックス管
10,10A 管状部材
12 オスコネクタ
14 メスコネクタ
20 接合材

Claims (9)

  1. 少なくとも一のセラミックス部材と一の被接合部材とを接合するために使用される接合材であって、
    5℃以上200℃以下の温度範囲でガラス硬化可能であって、硬化後に得られるガラス成分の25℃から500℃までの熱膨張係数が3×10−6−1以上10×10−6−1以下である水溶性ガラス前駆体を含む液状の主材と、
    熱膨張係数調整材と、
    前記水溶性ガラス前駆体の硬化を促進する硬化触媒を含む助材と、
    を備え、
    当該接合材を硬化して得られる接合部の25℃から500℃までの熱膨張係数が5×10−6−1以上10×10−6−1以下となるように調製されている、接合材。
  2. 前記熱膨張係数調整材は、前記水溶性ガラス前駆体の硬化後に得られるガラス成分と前記熱膨張係数調整材との合計に占める前記熱膨張係数調整材の体積割合が、5体積%以上50体積%以下である、請求項1に記載の接合材。
  3. 前記熱膨張係数調整材は、前記主材中に分散されている、請求項1または2に記載の接合材。
  4. 前記熱膨張係数調整材は、金属酸化物を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の接合材。
  5. 前記熱膨張係数調整材の25℃から500℃までの熱膨張係数は、5×10−6−1以上23×10−6−1以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の接合材。
  6. 700℃以上の高温環境下において、前記少なくとも一のセラミックス部材と、前記一の被接合部材とを気密に接合するよう構成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の接合材。
  7. 少なくとも一のセラミックス部材と一の被接合部材と両部材を接合する接合部とを備え、
    前記接合部は、請求項1〜6のいずれかに記載の接合材の硬化物により構成されている、接合体。
  8. 前記一のセラミックス部材は、25℃から500℃までの熱膨張係数が5×10−6−1以上10×10−6−1以下である、請求項7に記載の接合体。
  9. 前記一の被接合部材は金属材料からなり、25℃から500℃までの熱膨張係数が5×10−6−1以上10×10−6−1以下である、請求項7または8に記載の接合体。
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