JP2015104481A - 針状体の製造方法及び製造装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】凹版から針状体を作製する際の、針状体と凹版との剥離性に優れる針状体の製造方法を提供する。【解決手段】基板の一方の面に針状部を備える針状体の製造方法であって、針状部に対応した金属製の凹部と、金属製の凹部の外周部に樹脂材料からなる樹脂層とを備える凹版を成形する。次に、凹版の凹部に対して針状体成形材料を供給し、針状体成形材料が樹脂層の表面の少なくとも一部を被覆した状態で固化して針状体を成形する。最後に、剥離治具で樹脂層の露出部分を加圧して変形させ、樹脂層と針状体との間に剥離治具を差し込むことにより、凹版から針状体を剥離する。【選択図】図8

Description

本発明は、微細な針状体の製造方法及び製造装置に関する。
皮膚上から薬剤を浸透させ体内に薬剤を投与する方法である経皮吸収法は、人体に痛みを与えることなく簡便に薬剤を投与することが出来る方法として用いられているが、薬剤の種類によっては経皮吸収法で投与が困難な薬剤が存在する。これらの薬剤を効率よく体内に吸収させる方法として、ミクロンオーダーの微細な針状体(マイクロニードル)を用いて皮膚を穿孔し、皮膚内に直接薬剤を投与する方法が注目されている。この方法によれば、従来の注射機器を用いることなく、簡便に薬剤を皮下投薬することが可能となる(特許文献1参照)。
この際に用いる微細な針状体は、皮膚を穿孔するための十分な細さと先端角、及び皮下に薬液を浸透させるための十分な長さを有していることが必要とされ、直径は数μmから数百μm、長さは皮膚の最外層である角質層を貫通し、且つ神経層へ到達しない長さ、具体的には数十μmから数百μm程度の錐形のもの(錐体)であることが望ましいとされている。
より具体的には、針状体は、最外皮層である角質層を貫通することが求められる。角質層の厚さは部位によっても若干異なるが、平均して20μm程度である。また、角質層の下層にはおよそ200μmから350μm程度の厚さの表皮が存在する。更に、表皮の下層には毛細血管が張り巡らされた真皮層が存在する。このため、角質層を貫通させ薬液を浸透させるためには少なくとも20μm以上の針が必要となる。また、採血を目的とする針状体を製造する場合には、上記の皮膚の構成から少なくとも350μm以上の針高さを有した針状体が必要となる。
また、針状体を組成する材料としては、仮に破損した針状体が体内に残留した場合でも、人体に悪影響を及ぼさない材料であることが必要であり、この材料としては医療用シリコーン樹脂や、マルトース、ポリ乳酸、デキストラン等の生体適合樹脂が有力視されている(特許文献2参照)。
また、体内に投与する機構としては、薬剤を針の表面に塗り、これを穿刺することで薬剤が投与される機構や、中空針や薬液通過用の細孔を有した形状の針状体を用いて基板面から薬剤を投与する機構が提案されている(特許文献3参照)。
更に、針状体の生産性を向上させる方法として、金属製の凹版を用いて作製する方法が提案されている(特許文献4参照)。
米国特許第6183434号明細書 特開2005−21677号公報 特開2001−309977号公報 特許第4779084号明細書
しかしながら、針状体を金属製の凹版から剥離する際に、針状体と凹版が密着し、剥離が困難な場合がある。
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、金属製の凹版から針状体の剥離性を改善し、針状体の生産性を向上する製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係る針状体の製造方法は、基板の一方の面に針状部を備える針状体の製造方法であって、上記目的を達成するため、凹版成形工程と、針状体成形工程と、剥離工程とを備える。凹版成形工程では、針状部に対応した金属製の凹部と、金属製の凹部の外周部に樹脂材料からなる樹脂層とを備える凹版を成形する。針状体成形工程では、凹版の凹部に対して針状体成形材料を供給し、針状体成形材料が樹脂層の表面の少なくとも一部を被覆した状態で固化して針状体を成形する。なお、針状体材料として生体適合性材料を用いると好ましい。剥離工程では、剥離治具で樹脂層の露出部分を加圧して変形させ、樹脂層と針状体との間に剥離治具を差し込むことにより、凹版から針状体を剥離する。
本発明の一態様によれば、固化した針状体成形材料を金属製の凹部から剥離する際、金属製の凹部からの剥離性を向上させることが可能となる。
溝成形工程の概略図である。 針状体原版成形工程の概略図である。 充填層成形工程の概略図である。 金属版作製工程の概略図である。 凹版作製工程の概略図である。 針状体成形材料供給工程の概略図である。 針状体成形工程の概略図である。 剥離工程の概略図である。 針状体成形品の概略図である。
以下、本発明の実施形態に係る針状体作製方法について説明を行う。本実施形態に係る針状体製造方法では、金属製の凹部と樹脂層とを備える凹版を成形する凹版成形工程と、凹版に針状体成形材料を供給し固化することにより針状体を成形する針状体成形工程と、樹脂層と針状体との間に剥離治具を差し込むことにより凹版から針状体を剥離する剥離工程とを実施する。
<凹版成形工程>
まず、金属製の凹部と樹脂層とを備える凹版を成形する。凹版の成形方法としては、適宜公知の微細加工技術を用いた凹版製造方法を用いて行って良い。また、公知の方法によって針状体原版を成形した後、針状体原版に充填材料を充填し、充填材料を針状体原版から剥離する事で、凹版を成形することも可能である。
針状体原版の作製方法としては、例えば、(1)基板に対し、研削加工や切削加工等微細機械加工を用いた針状体製造方法、(2)リソグラフィ法やエッチング法等微細加工技術を用いた針状体製造方法、(3)上記公知の方法で作製された針状体原版を転写成形する方法等が挙げられる。
針状体原版への充填材料は特に限定されないが、版として機能するだけの形状追従性、後述する転写加工成形における転写性、版耐久性及び剥離性を考慮した材料を選択することができる。特に版耐久性を考慮した場合は、ニッケル、銅といった金属材質を選択することができる。金属材料を充填する際には、針状体原版との形状追従性の観点から、電鋳法を選択することが望ましい。
作製された凹版表面の外周部には、樹脂材料を供給し固化して樹脂層を成形する。供給箇所としては、針状部よりも外側が良く、針状体基板の端部よりも内側が良い。樹脂層の厚みについては、特に限定されないが、針状体を成形する上で好ましい厚みを選択することができる。針状体原版の基板を平滑にしたい場合は、樹脂材料を含めた凹版表面が平滑であることが望ましい。樹脂材料としては、特に限定されず、柔軟性の高いシリコーン樹脂や、エポキシ樹脂が望ましい。
<針状体成形工程>
次に、凹版に対して針状体成形材料を供給し固化して針状体を成形する。ここでは、針状体成形材料として、凹版に高分子材料の充填を行う。高分子材料は特に限定されないが、生体適合性材料である医療用シリコーン樹脂や、マルトース、ポリ乳酸、デキストラン、糖質等を用いることで、生体に適用可能な針状体を成形できる。生体適合性材料を用いれば、針状体が折れて体内に取り残された場合も、無害であるという効果を奏する。また、針状体の成形を目的とした場合には、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂等の熱可塑性高分子材料を用いても良い。また、高分子材料の充填方法は限定されないが、インプリント法、ホットエンボス法、射出成形法、押し出し成形法及びキャスティング法を好適に用いることができる。
本実施形態では、針状体成形材料が樹脂層の表面の少なくとも一部を被覆した状態となるようにする。例えば、針状体成形材料である高分子材料を充填する際に、又は充填された高分子材料を凹版に押し込む際に、凹版表面において、高分子材料の外縁部が、樹脂層の表面の少なくとも一部を被覆するようにする。なお、被覆した状態とは、接触・密着した状態に限らず、隙間がある状態や、間に別の層を挟んだ状態でも良い。
<剥離工程>
次に、凹版から針状体を剥離し、成形された針状体を得る。剥離方法としては、物理的な剥離方法が考えられる。具体的には、SUS304やSUS440C相当のステンレス鋼、若しくはSKD11相当のダイス鋼、SKH51相当のハイス鋼等を加工して作製した剥離爪を、針状体に引っ掛けて剥離する方向に引っ張ることが考えられる。また、剥離爪が針状体に接触する箇所は、特に限定されず、針状体基板の側面であっても、基板表面、若しくは裏面であっても良い。
本実施形態では、凹版から針状体を剥離する際に、剥離爪で樹脂材料を加圧(又は押下)して変形させ、高分子材料と樹脂材料との間に剥離爪を差し込むことにより、凹版から針状体を剥離する。このとき、必要であれば、剥離爪を差し込んだ後、剥離する方向に引っ張ることにより、凹版から針状体を剥離するようにしても良い。
<剥離層成形工程>
なお、必須ではないが、凹版の剥離性を向上させるため、凹版の成形後、針状体成形材料である高分子材料の充填前に、凹版の表面上に剥離効果を増す為の剥離層を成形しても良い。すなわち、凹版成形工程の終了後、針状体成形工程の開始前に、剥離層成形工程を実施する。但し、実際には、凹版成形工程又は針状体成形工程の一部として剥離層成形工程を実施しても良い。
剥離層の成形方法としては、気相処理と液相処理が選択できる。気相処理としては、窒化チタン、DLC(Diamond−like Carbon)、若しくはフッ素樹脂によるコーティング等を行うことが挙げられ、望ましくはフッ素樹脂コーティングが良い。フッ素樹脂コーティングは、一般的にテフロン(登録商標)コーティングと呼ばれる。液相処理としては、クロムめっき、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を含有する無電解めっきが挙げられ、望ましくはPTFEを含有する無電解めっきが良い。
以上が、本実施形態に係る針状体の製造方法の概略であるが、上記記載の例に限定されず、各工程において適用可能な他の方法であっても構わない。
以下、本実施形態の一例について、工程の概略図である図1〜図9を用いて説明する。
まず、一辺が50mmの正方形で、厚さ2mm、シリコーン製の基板101を準備し、研削刃を回転させながら、基板101の表面深さ300μmとなるように研削加工し、図1に示す通り、長さ50mmの溝102を成形した。溝102の開口上部の幅は約418μm、深さは300μmとなった。本実施例では基板101の表面と溝102の側壁面との成す角度は110°となった。
溝102を所望の数だけ成形し、本実施例においては、合計4本の溝を作製した。この4本の溝成形工程によって、3本の凸部が成形された。更に、この4本の溝成形工程によって成形された3本の凸部が表面に成形された基板101を90°回転し、この4本の溝成形工程と同じ条件で研削加工を実施した。これにより、研削されずに残る部分が3列3行のアレイ状に並んだ針状体原版103となった。このとき得られた針状体原版は、図2に示す通り四角錐であり、先端角が40°、高さが300μm、底面の一辺の幅が約231μmとなった。
次に、作製した針状体原版103に対し転写加工成形を行った。まず、針状体原版103への充填層として、ニッケルを電鋳法で充填した。メッキ浴にはスルファミン酸ニッケル溶液を用いた。60%スルファミン酸溶液を用い、浴温は45℃として12時間のメッキ処理により、図3に示す通り、充填層104を成形した。
次に、版型である針状体原版103に、25%KOH(水酸化カリウム)溶液を用いて80℃で4時間溶解処理を施し、図4に示す通り、金属版105を作製した。金属版105の表面には凹部が成形されている。金属版105の凹部の形状は、針状体原版103の凸部の形状に対応している。
次に、金属版105の端部に、金属版105の凹部表面と同じ高さとなるよう、金属版105の外周部に、樹脂材料としてシリコーン樹脂を供給し、クリーンオーブンを用いて、100℃にて1時間熱硬化処理を施して樹脂層106を成形した。上記の結果、図5に示す通り、金属版105と樹脂層106とが一体成形された凹版107を作製した。凹版107の表面には、中心部に金属版105と同じ凹部が成形されている。また、外周部に金属版105の凹部表面と同じ高さで、樹脂材料からなる樹脂層106が成形されている。
次に、凹版107の凹部に対し、針状体成形材料108を供給した。針状体成形材料108としては、生体適合性材料であるポリグリコール酸を用いた。これにより、図6に示す通り、凹版107の凹部表面に、生体適合性材料を用いた針状体成形材料108を供給した。ここでは、針状体成形材料108は、凹版107の樹脂部分である樹脂層106の表面の少なくとも一部を被覆する。樹脂層106の表面には、被覆された後も露出している部分が存在する。
次に、熱プレス法を用いて凹版107の凹部に針状体成形材料108を押し込み、押し込まれた針状体成形材料108を冷却することで、針状体109を成形した。針状体成形材料108であるポリグリコール酸は、凹版107の凹部内及び凹部表面上で十分に冷却された後、図7に示す通り、針状体109の形状となった。
なお、実際には、針状体成形材料108が樹脂層106の表面の少なくとも一部を被覆していなくても、熱プレス後に、針状体109が樹脂層106の表面の少なくとも一部を被覆している状態になれば良い。
最後に、凹版107から針状体109を剥離する為、SUS304を加工して作製した剥離爪110で剥離した。図8に示す通り、剥離爪110は、凹版107の樹脂部分である樹脂層106の露出部分を押下し、これにより発生した樹脂層106と針状体109との隙間に爪の部分を差し込み、針状体109に引っ掛けて、針状体109を剥離する方向に引っ張ることで、凹版107から針状体109を剥離した。
針状体109を走査型電子顕微鏡で形状を確認したところ、図9に示す通り、ポリグリコール酸から成る、先端角が40°、高さが298μm、底面の一辺の幅が約230μmの針状体109が作製されたことを確認した。
本実施形態に係る針状体の製造方法は、医療のみならず、微細な針状体を必要とする様々な分野に適用可能であり、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイス、光学部材、創薬、化粧品、美容用途等に用いる微細な針状体の製造方法としても有用である。
101…基板
102…溝
103…針状体原版
104…充填層
105…金属版
106…樹脂層
107…凹版
108…針状体成形材料
109…針状体
110…剥離爪

Claims (6)

  1. 基板の一方の面に針状部を備える針状体の製造方法であって、
    前記針状部に対応した金属製の凹部と、前記凹部の外周部に樹脂材料からなる樹脂層とを備える凹版を成形する凹版成形工程と、
    前記凹版の凹部に対して針状体成形材料を供給し、前記針状体成形材料が前記樹脂層の表面の少なくとも一部を被覆した状態で固化して針状体を成形する針状体成形工程と、
    剥離治具で前記樹脂層の露出部分を加圧して変形させ、前記樹脂層と前記針状体との間に前記剥離治具を差し込むことにより、前記凹版から前記針状体を剥離する剥離工程と、を備えることを特徴とする針状体の製造方法。
  2. 針状体材料として生体適合性材料を用いることを特徴とする請求項1に記載の針状体の製造方法。
  3. 前記針状体成形工程において、前記凹版に対して前記針状体成形材料を供給し、熱プレス法を用いて、前記針状体成形材料が前記樹脂層の表面の少なくとも一部を被覆した状態にすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の針状体の製造方法。
  4. 前記剥離治具は、ステンレス鋼、ダイス鋼、又はハイス鋼のいずれかを加工して作製した剥離爪を備え、
    前記剥離工程において、前記樹脂層と前記針状体との間に前記剥離爪を差し込んで前記針状体に引っ掛け、前記剥離爪で前記針状体を剥離する方向に引っ張ることにより、前記凹版から前記針状体を剥離することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の針状体の製造方法。
  5. 前記凹版の成形後、前記凹版の凹部に対して前記針状体成形材料を供給する前に、気相処理でフッ素樹脂コーティング、又は液相処理でPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を含有する無電解めっきを行い、前記凹版の表面上に剥離層を成形する剥離層成形工程を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の針状体の製造方法。
  6. 基板の一方の面に針状部を備える針状体の製造装置であって、
    前記針状部に対応した金属製の凹部と、前記凹部の外周部に樹脂材料からなる樹脂層とを備える凹版を成形する凹版成形装置と、
    前記凹版の凹部に対して針状体成形材料を供給し、前記針状体成形材料が前記樹脂層の表面の少なくとも一部を被覆した状態で固化して針状体を成形する針状体成形装置と、
    剥離治具で前記樹脂層の露出部分を加圧して変形させ、前記樹脂層と前記針状体との間に前記剥離治具を差し込むことにより、前記凹版から前記針状体を剥離する剥離装置と、を備えることを特徴とする針状体の製造装置。
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