図1は、本発明の実施形態の電子ビーム描画方法に用いる電子ビーム描画装置の構成を示す概念図である。
図1では、描画対象となる試料の例であるマスクMの表面に、荷電粒子ビームの例である電子ビームBを照射して所望のパターンを描画する電子ビーム描画装置を示している。この本発明の実施形態の電子ビーム描画方法に用いる電子ビーム描画装置は、描画室1と、描画室1の天井部に立設した電子ビーム照射手段である電子光学鏡筒2とを備えている。
描画室1には、ステージ3が配置されている。そして、ステージ3の上には、マスクMが載置されている。マスクMは、上述したように、電子ビーム描画の対象となる試料の一例であり、例えば、ガラス基板上にクロム膜などの遮光膜とレジスト膜とが積層されたものである。
ステージ3は、電子ビームBの光軸方向と直交するX方向、および、電子ビームBの光軸方向と直交しX方向と直交するY方向に移動可能である。ステージ3の上には、マーク台4が立設されている。マーク台4には、図示されない基準マークが設けられている。基準マークは、電子の反射率がマスクMと同程度の材料を用いて形成されることが好ましい。また、基準マークの形状は、矩形、円形、三角形または十字形などとすることができる
図1において、電子光学鏡筒2は、内蔵する電子銃101から発せられた電子ビームBを所望の形状に成形した後、偏向させてマスクMに照射する部分である。
電子光学鏡筒2の内部には、図1で上から順に、電子銃101、照明レンズ102、ブランキング偏向器103、ブランキングアパーチャ104、第1成形アパーチャ105、投影レンズ106、成形偏向器107、第2成形アパーチャ108、主偏向器109、対物レンズ110、副偏向器111が配置されている。
電子銃101から発せられた電子ビームBは、照明レンズ102により、第1成形アパーチャ105に照射される。尚、ブランキングオン時(非描画時期)には、電子ビームBは、ブランキング偏向器103により偏向されて、ブランキングアパーチャ104の上に照射され、第1成形アパーチャ105には照射されない。
第1成形アパーチャ105には、矩形状の開口が設けられている。これにより、電子ビームBは、第1成形アパーチャ105を透過する際に、その形状が矩形に成形される。その後、電子ビームBは、投影レンズ106によって、第2成形アパーチャ108の上に投影される。ここで、成形偏向器107は、第2成形アパーチャ108への電子ビームBの投影場所を変化させる。これによって、電子ビームBの形状と寸法が制御される。
第2成形アパーチャ108を透過した電子ビームBの焦点は、対物レンズ110によりマスクMの上に合わせられる。そして、主偏向器109と副偏向器111とによって、マスクMの上での電子ビームBの照射位置が制御される。
描画室1と電子光学鏡筒2における電子ビームBの形状や照射位置、照射のタイミングなどは、照射制御部7を通じて全体制御部10によって制御される。
全体制御部10には、記憶媒体であるメモリ11が接続されている。メモリ11には、マスクMに描画するパターンのパターンデータが記憶されている。全体制御部10は、メモリ11からのパターンデータに基づいて、描画すべき図形の形状や位置を規定するレイアウトデータを作成する。
設計者(ユーザ)が作成したCADデータは、OASISなどの階層化されたフォーマットの設計中間データに変換される。設計中間データには、レイヤ(層)毎に作成されて各マスクに形成されるパターンデータ(設計パターンデータ)が格納される。メモリ11には、このパターンデータが記憶される。
全体制御部10には、メモリ11を通じてフォーマットデータが入力される。パターンデータに含まれる図形は、長方形や三角形を基本図形としたものであるので、全体制御部10では、例えば、図形の基準位置における座標(x,y)、辺の長さ、長方形や三角形などの図形種を区別する識別子となる図形コードといった情報であって、各パターン図形の形、大きさ、位置などを定義したレイアウトデータが作成される。
さらに、数十μm程度の範囲に存在する図形の集合を一般にセルと称するが、これを用いてデータを階層化することが行われている。セルには、各種図形を単独で配置したり、ある間隔で繰り返し配置したりする場合の配置座標や繰り返し記述も定義される。
レイアウトデータは、電子ビームBのサイズにより規定される最大ショットサイズ単位で分割され、併せて、分割された各ショットの座標位置、サイズおよび照射時間が設定される。そして、描画する図形パターンの形状や大きさに応じてショットが成形されるように、描画データが作成される。
本実施形態の電子ビーム描画方法において、この描画データは、メッシュ状の小領域単位で区切られ、さらにその中は副偏向領域に分割されている。つまり、チップ全体の描画データは、複数の小領域単位と、小領域内に配置される複数の副偏向領域単位とからなるデータ階層構造になっている。
次に、描画データの作成について、図1を参照して説明する。
図1の全体制御部10のレイアウトデータ生成回路13では、メモリ11からのパターンデータに基づいて、レイアウトデータが作成される。次いで、分割回路17において、レイアウトデータをメッシュ状に分割して複数の小領域を形成する。このとき、矩形状の小領域のサイズは、X方向およびY方向においていずれも、主偏向器109の偏向幅で決まる主偏向領域以下となるサイズとする。そして、小領域のサイズとしては、主偏向領域と等しいことが好ましい。その場合、レイアウトデータは、それぞれ主偏向器109の偏向幅で決まる主偏向領域のサイズを備えた複数の小領域で分割されることになる。
次に、形状分析回路18では、分割回路17によって分割をされたレイアウトデータを用い、パターンの形状の分析を行う。
すなわち、本実施形態の電子ビーム描画方法に用いる電子ビーム描画装置は、分割されたレイアウトデータを用いて、形状分析回路18によりパターンの形状の分析を行う。
次いで、抽出回路19は、形状分析回路18でのパターンの形状の分析結果に基づき、所定形状のパターンを抽出する。
例えば、抽出回路19は、形状分析回路18での分析結果に基づき、X方向のサイズが小領域より小さく、Y方向のサイズが小領域より大きいパターンを抽出する。より具体的には、X方向のサイズが、小領域のX方向のサイズより小さいパターンであって、Y方向が、連なる複数の小領域におよぶサイズであるパターンなど、Y方向に長い形状のパターンを1つのグループとして抽出する。
尚、本実施形態の電子ビーム描画方法において、描画するパターンは複雑な形状からなることが多い。そのため、抽出回路19では、1回のパターンの形状の抽出によって、X方向のサイズが小領域のサイズより小さいパターンを抽出するのは、非効率となって好ましくない場合がある。その場合、パターンの抽出を複数段階で行って、X方向のサイズが小領域のサイズより小さいパターンを抽出することも可能である。
例えば、抽出回路19では、パターンの抽出を2段階で行って、X方向のサイズが小領域のサイズより小さいパターンを抽出することも可能である。すなわち、分割のされたレイアウトデータを用い、形状分析回路18でパターンの形状を分析する。次いで、抽出回路19は、第1回目のパターンの抽出として、X方向のサイズが小領域のX方向のサイズの2倍以下となるパターンを抽出する。次いで、第2回目のパターンの抽出として、第1回目で抽出されたパターンから、X方向のサイズが小領域のX方向のサイズより小さいパターンを抽出する。
このように複数段階のパターンの抽出を行うことによって、より効率的に所望とする形状のパターンを抽出することができる。
次に、抽出回路19での上述のパターンの抽出結果に基づき、パターン情報取得回路16において、抽出されたパターンに対し、1つのグループとして、描画時におけるステージ3の移動モードを設定し、描画方式を設定する。
具体的には、本実施形態の電子ビーム描画方法に用いられる電子ビーム描画装置は、パターン情報取得回路16を用い、抽出されたパターン毎に、ステップ・アンド・リピート方式の例である、ステージ3を静止させて描画する描画方式を実行するか、または、連続移動方式の例である、ステージ3をY方向に移動させながら描画する描画方式を実行するかの設定をすることができる。
そして、電子ビーム描画装置は、上述の抽出回路19での抽出結果に基づき、抽出されなかったパターンに対し、パターン情報取得回路16を用いて、ステージ3をX方向に移動させながら描画を行う描画方式を実行するように設定することができる。
その結果、パターン情報取得回路16において、メッシュ状に分割されたレイアウトデータをベースとして、各パターンに対し、その形状に対応する好適な描画方式が設定され、描画データが生成される。そして、この描画データに基づき、パターンの形状に対応した好適な描画方式で描画を行うことができ、パターンの描画において、高スループットを得ることができる。
尚、上述したように、本実施形態の電子ビーム描画方法に用いられる電子ビーム描画装置は、パターン情報取得回路16を用いて、抽出されたパターン毎に、ステージ3を静止させて描画する描画方式を実行するか、または、ステージ3をY方向に移動させながら描画する描画方式を実行するかの設定をすることができる。その場合、抽出されたパターンに対し、いずれの描画方式を設定するかについては、両方式のそれぞれによって描画する場合の描画時間を比較して決めることができる。
例えば、本実施形態の電子ビーム描画方法に用いられる電子ビーム描画装置においては、全体制御部10において、図示されない比較回路を有することができる。
この比較回路では、抽出回路19で抽出されたパターンのそれぞれについて、上述のステージ3を静止させて描画する方式およびステージ3をY方向に移動させながら描画する方式のそれぞれによって描画する場合の描画時間を比較する。
その場合、パターン情報取得回路16は、上述の比較回路での比較結果に基づき、抽出回路19で抽出されたパターンのそれぞれについて、描画方式を設定することができる。
具体的には、パターン情報取得回路16は、抽出されたパターンに対し、ステージ3を静止させて描画を行う描画方式、および、ステージ3をY方向に移動させながら描画する方式のうちから描画時間の短い方式を選択して実行するように設定する。
その結果、パターン情報取得回路16において、メッシュ状に分割されたレイアウトデータをベースとして、各パターンに対し、比較回路を用いて最適な描画方式が設定され、描画データが生成される。そして、パターンを描画するにあたり、より高いスループットを得ることができる。
尚、本実施形態の電子ビーム描画方法に用いられる電子ビーム描画装置では、上述した比較回路を設けることなく、パターン情報取得回路16において、比較回路の機能を具備するように構成することも可能である。
また、電子ビーム描画装置は、上述したように、抽出回路19を用い、X方向のサイズが小領域のX方向のサイズより小さく、Y方向のサイズがY方向に連なる複数の小領域におよぶサイズのパターンなどを1つのグループとして抽出する。このとき、電子ビーム描画装置は、抽出回路19によって、Y方向に連なる複数の小領域におよぶパターンであって、その大部分のX方向のサイズが小領域より小さいが、その一部に、小領域のX方向のサイズ以上となる部分を含むパターンも抽出するようにすることもできる。
その場合、そのパターンが含まれる、Y方向に連なる複数の小領域の中には、含有するパターンのX方向のサイズが小領域のX方向のサイズ以上となるものが含まれることがある。このような場合、抽出回路19は、X方向のサイズが小領域のサイズ以上であるパターンを含む小領域がY方向に複数連続して連なることがなければ、そのパターンを1つのグループとして描画方式の設定を行うことができる。具体的には、そのような形状を備えたパターンに対し、1つのグループとして、ステージ3を静止させて描画する描画方式を実行するか、または、ステージ3をY方向に移動させながら描画する描画方式を実行するかの設定をすることができる。
その結果、上述した形状のパターンに対し、1つのグループとして描画方式の設定を行うことによって、より高い描画のスループットが得られるようにすることができる。
そして、電子ビーム描画装置が、上述した比較回路を有する場合、その比較回路を用い、上述した形状のパターンに対し、最適な描画方式を設定することも可能である。すなわち、比較回路での描画時間の比較結果に基づいて、一部に小領域のX方向のサイズ以上となる部分を含むパターンを1つのグループとし、ステージ3を静止させて描画する描画方式の設定をするか、または、ステージ3をY方向に移動させながら描画する描画方式を実行するかの設定をすることができる。
尚、当然に、上述した比較回路での比較結果に基づき、一部に小領域のX方向のサイズ以上となる部分を含むパターンに対し、1つのグループとして扱うことなく、小領域のX方向のサイズ以上となる部分を、ステージ3をX方向に移動させながら描画を行う描画方式を実行するように設定することも可能である。
以上の構成を備えた、本実施形態の電子ビーム描画方法に用いる電子ビーム描画装置は、さらに、ステージ3のX方向およびY方向の位置を測定するステージ位置測定手段12を備えている。ステージ位置測定手段12は、ステージ3に固定したステージミラー3aへのレーザ光の入反射でステージ3の位置を測定するレーザ測長計を有する。
そして、電子ビーム描画装置の照射制御部7は、全体制御部10から入力される描画データに基づき、ステージ位置測定手段12で測定したステージ3の位置を確認しつつ、電子光学鏡筒2内の電子ビームBの成形制御や偏向制御を行って、マスクMの所要の位置に電子ビームBを照射し、パターンの描画を行うことができる。
次に、本発明の実施形態の電子ビーム描画方法について説明する。本実施形態の電子ビーム描画方法は、例えば、上述した電子ビーム描画装置を用いて実施することができる。したがって、図1を参照しながら、本発明の実施形態の電子ビーム描画方法を詳細に説明する。
図2は、本発明の実施形態の電子ビーム描画方法の第1例を示すフローチャートである。
まず、上述した図1の電子ビーム描画装置のメモリ11からのパターンデータに基づいて、全体制御部10のレイアウトデータ生成回路13でレイアウトデータが作成される(図2の工程(1))。
図3は、本発明の実施形態の電子ビーム描画方法により描画される描画パターンの一例を模式的に示す図である。
図3に示す描画パターンは、電子ビーム描画装置のメモリ11からのパターンデータに基づいて作成されたレイアウトデータに対応する。
図4は、本発明の実施形態の電子ビーム描画方法における、レイアウトデータの分割の一例を模式的に示す図である。
次に、図4に示すように、図1の分割回路17において、レイアウトデータをメッシュ状に分割して複数の小領域を形成する(図2の工程(2))。
このとき、矩形状の小領域のサイズは、X方向およびY方向においていずれも、主偏向器109の偏向幅で決まる主偏向領域以下となるサイズとする。図4に示す例では、小領域のサイズが主偏向領域と等しく設定されている。その結果、レイアウトデータは、図4に示すように、主偏向器109の偏向幅で決まる主偏向領域のサイズを備えた複数の小領域で分割されることになる。
そして、小領域33から小領域34までのY方向に連なる4つの小領域、小領域36および小領域37の境界部分、小領域38、39、40、41を四隅とする領域、および、小領域43、44、45、46を四隅とする領域にパターンが存在する。
次に、形状分析回路18では、分割回路17によって分割をされたレイアウトデータを用い、パターンの形状の分析を行う(図2の工程(3))。
そして、本実施形態の電子ビーム描画方法の第1例においては、分割されたレイアウトデータを用いて、形状分析回路18によりパターンの形状の分析を行い、抽出回路19によって、所定形状のパターンを抽出する(図2の工程(4))。例えば、抽出回路19は、X方向のサイズが小領域より小さく、Y方向のサイズが小領域より大きいパターンを抽出する。
図5は、抽出されたパターンを示す図である。
本実施形態の電子ビーム描画方法の第1例において、それぞれ模式的に破線で囲まれた、パターン21およびパターン22は、X方向のサイズが小領域より小さく、Y方向のサイズが小領域より大きいパターンである。すなわち、パターン21は、小領域33から小領域34の4つの小領域におよんで、Y方向に長いパターンである。また、パターン22は、小領域36および小領域37の境界に位置し、Y方向に並ぶ2つの小領域におよんで、Y方向に長いパターンである。したがって、本実施形態の電子ビーム描画方法の第1例では、パターン21およびパターン22が抽出される。
一方、小領域38、39、40、41を四隅とする領域におよんでX方向に長い形状のパターン24、および、小領域43、44、45、46を四隅とする領域にあるパターン23は、X方向のサイズが小領域より大きく、Y方向のサイズが小領域より大きいパターンである。したがって、本実施形態の電子ビーム描画方法の第1例では、パターン23およびパターン24抽出されない。
ここで、X方向のサイズが小領域より小さく、Y方向のサイズが小領域より大きいパターンの抽出は、段階的に行うことが好ましい。
すなわち、分割のされたレイアウトデータを用い、形状分析回路18でパターンの形状を分析する。次いで、抽出回路19は、第1回目のパターンの抽出として、Y方向のサイズが小領域より大きく、X方向のサイズが小領域のX方向のサイズの2倍以下となるパターンを抽出する。このとき、図5に示す例において抽出されるパターンは、パターン21、パターン22およびパターン23となる。次いで、第2回目のパターンの抽出として、第1回目で抽出されたパターン21、22、23から、X方向のサイズが小領域のX方向のサイズより小さいパターン21、22を抽出する。
その結果、この抽出工程では、上述したように、X方向のサイズが小領域より小さく、Y方向のサイズが小領域より大きいパターン21、22が抽出される。
次に、工程(4)においては、上述した抽出回路19でのパターンの抽出結果に基づき、パターン情報取得回路16を用いて、抽出されたパターン21、22に対し、描画時のステージの移動モードを定めて描画方式を設定する。
具体的には、本実施形態の電子ビーム描画方法の第1例は、抽出されたパターン21、22に対し、ステップ・アンド・リピート方式の例である、ステージ3を静止させて描画を行う描画方式を実行するか、または、連続移動方式の例であるステージ3をY方向に移動させながら描画を行う描画方式を実行するかの設定を行う。
その場合、上述の抽出回路19での抽出結果に基づき、抽出されたパターン21、22以外の、所定形状を有していないパターン23、24の描画では、連続移動方式の例である、ステージ3をX方向に連続移動させながらパターンの描画を行う描画方式を実行するように設定する。
次に、本実施形態の電子ビーム描画方法の第1例においては、工程(4)で設定された描画方式に従い、図5等に示された描画パターンをマスクMの描画領域に描画する(図2の工程(5)および工程(6))。
具体的には、図5のパターン21、22は、工程(4)で抽出回路19により抽出され、ステージ3を静止させて描画を行う描画方式を実行するように設定されるか、または、ステージ3をY方向に移動させながら描画を行う描画方式を実行するように設定されている。したがって、パターン21、22に対しては、その設定された描画方式にしたがって描画を行う(図2の工程(5))。
一方、パターン21、22以外のパターン23、24に対しては、ステージ3をX方向に移動させながらパターン23、24の描画を行う(図2の工程(6))。すなわち、パターン23、24は、抽出回路19で抽出されずに、ステージ3をX方向に連続移動させながら描画を行う描画方式を実行するように設定されたパターンである。したがって、パターン23、24に対しては、上述したステージ3をX方向に移動させながら描画する描画方式にしたがって描画を行う。
以下、工程(5)および工程(6)における描画について、図面を用いてより詳細に説明する。
図6は、本実施形態の電子ビーム描画方法の第1例における描画の工程を模式的に説明する図である。
図6において、図中の実線の矢印は、ステージ3の動きに追随して行われるパターンの描画を模式的に示している。また、図中の破線の矢印は、パターンを描画するために必要となるスキップ移動を模式的に示している。
そして、本実施形態の電子ビーム描画方法の第1例では、まず、描画領域の端部(図の下方の左側の端部)から描画の工程をスタートさせる。
図6に示す本実施形態の電子ビーム描画方法の第1例では、パターンを含有しない描画領域において、ステージ3がスキップ移動をする。そのため、描画のスタート位置である描画領域端部からパターン21のY方向の端部(図の下方側端部)までは、破線の矢印で示されるように、ステージ3がスキップ移動をする。
パターン21は、ステップ・アンド・リピート方式の例である、ステージ3を静止させて描画を行う描画方式を実行するように設定されるか、または、連続移動方式の例である、ステージ3をY方向に移動させながら描画を行う描画方式を実行するように設定されたパターンである。したがって、パターン21の描画では、その下方側の端部から上方側の端部に向かって、ステージ3を静止させて描画を行う方式での描画が実行されるか、または、ステージ3をY方向に移動させながら描画を行う方式での描画が行われる。
次に、ステージ3はスキップ移動を繰り返し、パターン22のY方向の端部(図の下方側端部)の描画が可能となる位置まで移動する。パターン22は、ステージ3を静止させて描画を行う描画方式を実行するように設定されるか、または、ステージ3をY方向に移動させながら描画を行う描画方式を実行するように設定されたパターンである。したがって、パターン22の描画では、その下方側の端部から上方側の端部に向かって、ステップ・アンド・リピート方式の例である、ステージ3を静止させて描画を行う方式での描画が実行されるか、または、連続移動方式の例である、ステージ3をY方向に移動させながら描画を行う方式での描画が行われる。
尚、パターン22は、X方向のサイズが小領域のX方向のサイズより小さいパターンであるが、X方向に連なる2つの小領域の境界上にまたがるパターンとなっている。このようなパターン22の場合、その描画に際しては、図5のメッシュ状の小領域は無視される。そして、下方側の端部から上方側の端部に向かうY方向の一回の移動で、上述した方式のいずれかによる描画が行われる。
そして、パターン22の描画の後、ステージをパターン24の端部(図の左下方側の端部)の描画が可能となる位置までスキップ移動させ、パターン24の描画を開始する。パターン24は、上述した所定形状のパターンではなく、工程(4)で抽出されなかったパターンとなる。したがって、パターン24では、ステージ3をX方向に連続移動させながら、連続移動方式により、パターン描画を行う。
例えば、図6に示すように、X方向にステージ連続移動させてパターン24の左端から右端に向けた描画を行った後、ステージをY方向にスキップ移動させる。次いで、再びX方向にステージ3を連続移動させながら、次の領域でパターン24の左端から右端に向けた描画を行う。こうしたステージのX方向の連続移動とパターン端部でのY方向のスキップ移動を繰り返して、パターン24全域での描画を行う。
尚、パターン24の描画では、X方向のステージ連続移動させて描画を行った後、ステージをそのままY方向にスキップ移動させ、次の領域の描画では、逆方向(−X方向)にステージ3を連続移動させながらパターン描画を行うことも可能である。そして、同様の操作を繰り返して、パターン24全域の描画を行うことができる。
そして、パターン24の描画の後、ステージをパターン23の端部(図の左下方側の端部)までスキップ移動させ、パターン23の描画を開始する。パターン23は、上述した所定形状のパターンではなく、工程(4)で抽出されなかったパターンとなる。したがって、パターン23では、上述したパターン24と同様に、ステージ3をX方向に連続移動させながら、連続移動方式により、パターン描画を行う。
そして、パターン21、22、23、24の描画を終了し、工程(5)および工程(6)において、描画すべきパターンがない場合には、以上の一連の描画のための工程を終了する。
以上の各工程を有する、本実施形態の電子ビーム描画方法の第1例は、メッシュ状に分割されたレイアウトデータをベースとして、描画するパターン毎に最適となる描画方式を設定されて描画データが生成されている。すなわち、パターン毎に最適なステージの移動モードを選択して、最適な描画方式による描画を行うことができる。その結果、描画するパターンに好適に対応して無駄なステージ移動が低減され、高スループットを得ることができる。
尚、本発明の実施形態の電子ビーム描画方法の第1例では、図4のパターンを描画するに際し、図5に示したように、小領域33から小領域34までの4つの領域におよんでY方向に長いパターン21を1つのグループとして抽出した。そして、抽出されたパターン22に対して描画方式の設定を行った。このとき、パターン21は、図5に示すように、X方向のサイズが、小領域のサイズ以上となる部分は含まれていない。
しかしながら、本発明の実施形態の電子ビーム描画方法では、第2例として、上述の第1例と同様の工程(1)〜工程(3)の後、工程(4)において、大部分のX方向のサイズが小領域より小さいが、その一部に、小領域のX方向のサイズ以上となる部分を含むパターンも抽出するようにすることができる。そして、そのような、一部に小領域のX方向のサイズ以上となる部分を含むパターンを、上述したパターン21と同様に、1つのグループとして描画方式の設定を行うことができる。
図7は、本発明の実施形態の電子ビーム描画方法における、別の一例となるレイアウトデータの分割を模式的に示す図である。
図7では、図3と同様の描画領域が、図4に示したのと同様のメッシュ状に分割されて複数の小領域が形成されている。図7に示された描画パターンは、図3〜図6に示した描画パターンと比較すると、パターン25の形状が、対応する図5に示したパターン21と異なる以外は同様の形状を有する。したがって、図7においては、同様のパターンについては、同一の符号を付している。
図7で示した描画パターンに対し、本実施形態の電子ビーム描画方法の第2例では、上述した第1例と同様の工程(1)でレイアウトデータを作成した後、第1例と同様の工程(2)でメッシュ状に分割し、第1例と同様の工程(3)において、分割されたレイアウトデータを用いてパターンの形状の分析を行う。
そして、工程(4)で、所定形状のパターンを抽出する。このとき、上述した電子ビーム描画方法の第1例においては、図7のパターン25に対して、1つのグループとして抽出されないことになる。
それに対し、本発明の実施形態の電子ビーム描画方法の第2例では、Y方向に連なる複数の小領域におよぶパターンであって、その大部分のX方向のサイズが小領域より小さいが、その一部に、小領域のX方向のサイズ以上となる部分を含むパターンも、1つのグループとして抽出するようにすることができる。
その場合、そのパターンが含まれる、Y方向に連なる複数の小領域の中には、含有するパターンのX方向のサイズが小領域のX方向のサイズ以上となるものが含まれることがある。このような場合、本実施形態の電子ビーム描画方法の第2例では、X方向のサイズが小領域のサイズ以上であるパターンを含む小領域がY方向に複数連続して連なることがなければ、抽出回路19により、そのパターンを抽出し、1つのグループとして描画方式の設定を行うことができる。すなわち、そのような形状を備えたパターンに対し、1つのグループとして、ステージ3を静止させて描画する描画方式を実行するか、または、ステージ3をY方向に移動させながら描画する描画方式を実行するかの設定をすることができる。
ここで、図7に示すパターン25は、Y方向に連なる小領域33から小領域34までの4つの小領域におよぶパターンであって、その大部分のX方向のサイズが小領域より小さいが、その一部に、小領域のX方向のサイズ以上となる部分を含むものである。そして、その小領域33から小領域34までの4つの小領域の中には、含有するパターンのX方向のサイズが小領域のX方向のサイズ以上となる小領域50が1つだけ含まれる。パターン25が含まれる、小領域33から小領域34までの4つの小領域においては、X方向のサイズが小領域のサイズ以上であるパターンを含む小領域がY方向に複数連続することはない。したがって、本発明の実施形態の電子ビーム描画方法の第2例は、抽出回路19により、図7に示すパターン25を抽出し、1つのグループとすることができる。
その結果、パターン25に対し、1つのグループとして、ステージ3を静止させて描画する描画方式を実行するか、または、ステージ3をY方向に移動させながら描画する描画方式を実行するかの設定をすることができる。パターン25に対し、このような、描画方式の設定を行うことによって、無駄なステージ3の移動を減らすことができ、より高い描画のスループットを得るようにすることができる。
また、さらに、本実施形態の電子ビーム描画方法では、上述したように、使用する電子ビーム描画装置が比較回路を有する場合や、パターン情報取得回路16において比較回路の機能を有している場合がある。そのような場合、本発明の実施形態の電子ビーム描画方法においては、第3例として、比較回路等での比較結果を利用する電子ビーム描画方法を構成することができる。
すなわち、本発明の実施形態の電子ビーム描画方法の第3例は、使用する電子ビーム描画装置の全体制御部10に設けられた比較回路(図示されない)を利用する。そして、抽出回路19で抽出されたパターンのそれぞれについて、上述のステージ3を静止させて描画する方式、および、ステージ3をY方向に移動させながら描画する方式のそれぞれによって描画する場合の描画時間を比較するように構成される。
図8は、本発明の実施形態の電子ビーム描画方法の第3例を示すフローチャートである。
そのような本実施形態の電子ビーム描画方法の第3例は、図8に示すように、上述した図2に示す第1例と同様の工程(1)〜工程(4)により、描画のパターンから所定形状のパターンを抽出する。上述したように、工程(2)で形成される各小領域のサイズは、主偏向領域と等しいことが好ましく、抽出される小領域のサイズも主偏向領域と等しいことが好ましい。
次いで、工程(4)で抽出された所定形状のパターンについて、比較回路等を利用し、上述のステージ3を静止させて描画する方式、および、ステージ3をY方向に移動させながら描画する方式のそれぞれによって描画する場合の描画時間を比較する(工程(4−2)。
次に、工程(4−2)で、パターン情報取得回路16は、上述した比較回路での比較結果に基づき、抽出されたパターンの描画方式の設定を行う。すなわち、パターン情報取得回路16は、抽出されたパターンに対し、ステージを静止させて描画を行う描画方式およびステージをY方向に移動させながら描画する方式のうちから描画時間の短い方式を選択して実行するように設定する。尚、工程(4)では、抽出されなかった、所定形状を有しないパターン対しては、パターン情報取得回路16により、ステージをX方向に移動させながら描画を行う描画方式を実行するように設定する。
その結果、工程(4−2)に続く工程(5)において、所定形状のパターンに対し、ステージ3を静止させて描画する方式、または、ステージ3をY方向に移動させながら描画する方式で描画する。そして、その際に、ステージを静止させて描画を行う描画方式およびステージをY方向に移動させながら描画する方式のうちから描画時間の短い方式が選択される。
すなわち、描画の工程である工程(5)は、所定形状のパターンに対し、ステージ3を静止させて描画する方式、または、ステージ3をY方向に移動させながら描画する方式により描画を行う工程であって、その2方式のうちの、より描画時間の短い方式で描画を行う工程となる。
また、工程(4)に続く工程(6)においては、所定形状を有していないため抽出されなかったパターンに対して、ステージをX方向に連続移動させながら描画を行うようにすることができる。
そして、工程(5)および工程(6)の後、描画すべきパターンがない場合には、以上の一連の描画のための工程を終了する。
その結果、本実施形態の電子ビーム描画方法の第3例では、パターン情報取得回路16において、分割されたレイアウトデータをベースとして、各パターンが最適な描画方式を設定されてなる描画データが生成される。そして、パターン毎に最適な描画方式を設定することで、描画を行うにあたり、各パターンの形状に対応し、無駄なステージ移動がなくなって、より高いスループットを得ることができる。
ここで、本発明の実施形態の電子ビーム描画方法の第1例の説明に用いた図6を再び利用し、上述の本実施形態の電子ビーム描画方法の第3例についてより具体的に説明する。
図6に示すように、工程(4)で抽出回路19によって抽出されるパターン21は、X方向のサイズが小領域より小さく、Y方向のサイズが、Y方向に連なった4つの小領域におよぶサイズのY方向に長い形状のパターンである。また、抽出回路19によって抽出されるパターン22は、X方向のサイズが小領域より小さく、Y方向のサイズが、Y方向に連なった2つの小領域におよぶサイズのY方向に長い形状のパターンである。
したがって、パターン21およびパターン22のそれぞれについて、比較回路等を用い、描画時間の比較を行う。すなわち、比較回路等を用い、パターン21に対して、ステージ3を静止させて描画する方式およびステージ3をY方向に移動させながら描画する方式のそれぞれによって描画する場合の描画時間を比較する。同様に、パターン22に対して、同様の比較を行う。
そして、パターン21において、ステージ3をY方向に移動させながら描画する方式のほうが描画時間を短くできる場合には、パターン情報取得回路16は、その方式を選択し、パターン22の描画が実行されるように設定する。
一方、パターン22において、ステージ3を静止させて描画する方式のほうが描画時間を短くできる場合には、パターン情報取得回路16は、その方式を選択し、パターン22の描画が実行されるように設定する。
その結果、本実施形態の電子ビーム描画方法の第3例においては、比較回路での比較結果を利用することによる、各パターンの描画において、より高いスループットを得ることができる。
また、本実施形態の電子ビーム描画方法の第3例は、工程(4)で抽出された所定形状のパターンについて、比較回路等を利用し、上述のステージ3を静止させて描画する方式、ステージ3をY方向に移動させながら描画する方式、および、ステージ3をX方向に移動させながら描画する方式のそれぞれによって描画する場合の描画時間を比較するようにすることも可能である。
その場合、上述した本発明の実施形態の電子ビーム描画方法の第2例と同様に、工程(4)において、大部分のX方向のサイズが小領域より小さいが、その一部に、小領域のX方向のサイズ以上となる部分を含むパターンも抽出するようにする。そして、そのような、一部に小領域のX方向のサイズ以上となる部分を含むパターンに対し、比較回路等を用い、描画時間の比較を行う。
例えば、上述した本実施形態の電子ビーム描画方法の第2例と同様、図7の描画パターンの例に対しては、パターン25を抽出する。そして、比較回路等を用い、パターン25に対して、ステージ3を静止させて描画する方式、ステージ3をY方向に移動させながら描画する方式、および、ステージ3をX方向に移動させながら描画する方式のそれぞれによって描画する場合の描画時間を比較する。
そして描画時間の比較結果から、一部に小領域のX方向のサイズ以上となる部分を含むパターン25を、1つのグループとして描画方式を設定することができる。具体的には、パターン25に対し、ステージ3を静止させて描画する方式、および、ステージ3をY方向に移動させながら描画する方式のいずれか1つの描画方式を設定することができる。
また一方で、比較回路等による比較結果から、パターン25に対し、1つのグループとして扱うことを止めることも可能である。そして、パターン25に対し、ステージ3を静止させて描画する方式、ステージ3をY方向に移動させながら描画する方式、および、ステージ3をX方向に移動させながら描画する方式の中から最適なものを組み合わせて、パターン25の部分毎に、異なる描画方式となるように設定を行うことも可能である。
その結果、本実施形態の電子ビーム描画方法の第3例においては、比較回路での比較結果を利用することにより、各パターンの描画において、より高いスループットを得ることができる。
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々変形して実施することができる。
例えば、本実施の形態においては、主偏向器と副偏向器を有する電子ビーム描画装置について述べたが、本発明はこれに限られるものではない。主偏向器と副偏向器の二段(あるいは複数段)ではなく、一段の偏向器で電子ビームを偏向しながらマスク上での照射位置を決定してパターンを描画する電子ビーム描画装置であっても構わない。その場合、その一段の偏向器が、上述した主偏向器に対応し、本実施の形態が構成される。
さらに、上記実施の形態では電子ビームを用いたが、本発明は、これに限られるものではなく、イオンビームなどの他の荷電粒子ビームを用いた場合にも適用可能である。