JP2015098523A - 放射線線量計用ゲル、およびそのゲルを用いた放射線線量計 - Google Patents

放射線線量計用ゲル、およびそのゲルを用いた放射線線量計 Download PDF

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栗山  智
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Akihiro Hiroki
章博 廣木
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光正 田口
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Koichi Mimura
功一 三村
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Toru Okihara
徹 沖原
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Abstract

【課題】 加熱しても容易に融解しないゲルであって、ゲル中に存在する重合性モノマーが放射線により重合、白濁して、線量計として用いられることができる放射線線量計用ゲルおよび放射線線量計を提供する。
【解決手段】 エチレン性不飽和モノマー(b)を含有する水の中で、エチレン性不飽和モノマー(a)と無水マレイン酸との共重合体の塩基反応物(A)とゼラチン(B)とを反応させて、該水をゲル化させてなる放射線線量計用ゲルであり、ゼラチンが上記(A)と反応して架橋したゲルとなっており、ゲルが融解せず、照射されて白濁した部分の位置が正確に把握できる。
【選択図】 図2

Description

本発明は、人や動物に対して放射線治療を行う前に、人や動物の体の放射線照射位置の空間線量分布を正確に測定するための放射線線量計用ゲル、およびそのゲルを用いた放射線線量計に関する。
放射線治療において、標的となるガン病巣には有効な線量を、そして病巣周囲の正常組織には放射線障害を起こさない最小限の線量の照射が要求されることから、様々な放射線治療法が開発されてきた。特にガンマナイフやサイバーナイフを用いた定位放射線治療や強度変調放射線治療が普及してきている。
放射線治療を行う際、予めX線CTやMRIなどによりガン病巣の部位や形状等を特定し、その得られた3次元情報に基づいて、線量や照射方法など放射線治療計画が策定される。この3次元の線量分布を測定するための線量計として注目されているのがゲル線量計であり、近年、高精度な線量評価システムの構築を目指したゲル線量計の研究開発が盛んに行われている(特許文献1、2)。
このポリマーゲル線量計は、重合性モノマーをゲル内に分散させたものであり、放射線照射すると線量に比例してポリマーが生成することから、その生成量(白濁度)を求めることで線量を見積もることができる。生成したポリマーはゲル内を拡散しにくく、白濁が経時的に安定しており、且つ白濁部分が透明なゲルの中に浮かんでいるように見えるため視覚的にも優れているのが特徴である。このポリマーゲル線量計においては全体をゲル化させるためのゲル母材として、ジェランガム、ゼラチンなどが使用されている。
特開2012−2669号公報 特開2002−214354号公報
しかしながら、ジェランガム、ゼラチンなどゲルは加熱すると容易に融解するので、放射線照射後、未照射の部分のゲルが融解し、白濁部分が動きその位置が正確に把握できなくなる場合があり、十分安心して使用できないという問題がある。また、照射前であっても保存温度が高いと融解して液状となり取扱いにくいという問題もある。
本発明の目的は、加熱しても容易に融解しないゲルであって、ゲル中に存在する重合性モノマーが放射線により重合、白濁して、線量計として用いられることができる放射線線量計用ゲルおよび放射線線量計を提供することである。
本発明者らは、上記の課題に鑑み、鋭意研究の結果、ゼラチンに特定の架橋剤を反応させてゲル化したゲルは上記の課題を解決するゲル線量計となることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、エチレン性不飽和モノマー(b)を含有する水の中で、エチレン性不飽和モノマー(a)と無水マレイン酸との共重合体の塩基反応物(A)とゼラチン(B)とを反応させて、該水をゲル化させてなる放射線線量計用ゲルである。
また本発明は、上記エチレン性不飽和モノマー(b)が、エチレン性不飽和基を有するカルボン酸、スルホン酸、およびリン酸から選択される酸の塩、またはそれらのエステルであることを特徴とする。
また本発明は、上記エチレン性不飽和モノマー(b)が、エチレン性不飽和基を有するカルボン酸の塩および(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルのいずれか一方を含むことを特徴とする。
また本発明は、上記エチレン性不飽和モノマー(b)が、さらに少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルおよび1分子中にエチレン性不飽和基を二つ以上有するエチレン性不飽和モノマーの一方を含むことを特徴とする。
また本発明は、上記放射線線量計用ゲルが、さらに水溶性カルボン酸ヒドラジドを含むことを特徴とする。
さらに本発明は、上記放射線線量計用ゲルを該ゲルを充填可能な透明容器に充填してなる放射線線量計である。
さらに本発明は、上記放射線線量計用ゲルまたは上記放射線線量計に放射線を照射し、該放射線線量計用ゲルを白濁させる方法である。
さらに本発明は、上記の方法によって全体または一部が白濁した放射線線量計用ゲルまたは放射線線量計である。
本発明によれば、エチレン性不飽和モノマー(b)を含有する水の中で、エチレン性不飽和モノマー(a)と無水マレイン酸との共重合体の塩基反応物(A)(以下、単に(A)という場合がある)とゼラチン(B)(以下、単に(B)という場合がある)とを反応させるので、得られた放射線線量計用ゲルは以下の効果を奏する。
1.上記(B)が上記(A)と反応して架橋したゲルとなっており、該ゲルを加熱しても容易に架橋が崩れることがないので、ゲルが融解せず、照射されて白濁した部分の位置が正確に把握できる。
2.ゲルの保管中の温度が室温より上昇してもゲルが融解せず取り扱いやすい。
3.上記(A)と(B)との架橋反応は室温でも生じるので、室温でゲルを生成させればゲル中のモノマーは安定に存在し、放射線照射時には重合する。
本発明によれば、上記エチレン性不飽和モノマー(b)が、エチレン性不飽和基を有するカルボン酸、スルホン酸、およびリン酸から選択される酸の塩またはそのエステルであるので、モノマーの人体への安全性が比較的高く実用化しやすい。モノマーとしてしばしば検討されている非(メタ)アクリル酸系のアクリルアミドは特定化学物質に指定され、使用環境中の濃度管理が厳しく、病院などでは非常に使用しづらいという問題がある。これに対して、上記の酸の塩またはそのエステルは人体への安全性が比較的高く法的な拘束が少なく病院などで取り扱いやすく実用化しやすいので好ましい。
また、上記の酸の塩は水溶性が大きくゲル中に完全に溶解すると共に、低線量でも重合しやすい。上記の酸はゼラチンよりも先に(A)中の酸無水物基と反応して水不溶解物を生じる。しかし、その酸の塩やエステルは(A)中の酸無水物基と反応せず、しかも水溶性が大きいので水系ゲル中でも溶解し且つ安定である。
本発明によれば、上記エチレン性不飽和モノマー(b)が、エチレン性不飽和基を有するカルボン酸の塩および(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルのいずれか一方を含むので、モノマーは水溶性が大きくゲル中に完全に溶解すると共に、低線量でも重合しやすい。カルボン酸は(A)と反応して水不溶解物を生じる。しかしカルボン酸の塩やエステルは(A)と反応せず、しかも水溶性が大きいので水系ゲル中でも溶解し且つ安定である。
本発明によれば、上記エチレン性不飽和モノマー(b)が、さらに少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルおよび1分子中にエチレン性不飽和基を二つ以上有するエチレン性不飽和モノマーの一方を含むので、放射線によりエチレン性不飽和基を有するカルボン酸、スルホン酸、リン酸から選択される酸の塩またはそのエステルと共重合して共重合体となりゲル中に析出しゲルを白濁させる。(メタ)アクリル酸アルキルは疎水性モノマーであるが微量にゲル系内に溶解している。このモノマーが共重合して分子量が大きくなると(メタ)アクリル酸アルキルの疎水性のために共重合体の水溶性が大きく低下しゲル中に析出しやすくなりその結果白濁しやすくなる。一方1分子中にエチレン性不飽和基を二つ以上有するエチレン性不飽和モノマーも上記のモノマーと共重合すると架橋重合体となり水溶性が低下し、白濁しやすくなる。
エチレン性不飽和モノマー(b)が、さらに(メタ)アクリル酸アルキルおよび1分子中にエチレン性不飽和基を二つ以上有するエチレン性不飽和モノマーの両方を含むと、これらが入った共重合体は極端に水溶性が低下し、さらに白濁しやすいという相乗効果を奏する。
本発明によれば、上記放射線線量計用ゲルが、さらに水溶性カルボン酸ヒドラジドを含むので、エチレン性不飽和モノマー(b)のゲル中での安定性を向上させ、保存安定性が良好となる。たとえば、エチレン性不飽和モノマー(b)が(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルの場合には、このモノマーがゼラチンと相互作用があり、その結果として白塊が生じる。これはモノマーのポップコーン重合が生じるためと推定される。水溶性カルボン酸ヒドラジドを添加すると白塊の発生を防止できるが、このことはモノマーの安定性を向上させているためであり、当然同様に他のモノマーに対しても安定性を向上させる。
さらに本発明によれば、上記放射線線量計用ゲルを該ゲルを充填可能な透明容器に充填してなる放射線線量計は、ゲル内の温度が室温より上昇しても架橋が崩れることがなく、ゲルが融解せず、照射した白濁した部分の位置が正確に把握できる。また、保管中の温度が室温より上昇してもゲルが融解せず取り扱いやすい。
さらに本発明によれば、上記放射線線量計用ゲルまたは上記放射線線量計に放射線を照射し、該放射線線量計用ゲルを白濁させる方法は、ゲルが融解しないので照射した白濁した部分の位置が正確に把握できる。
さらに本発明によれば、上記の方法によって全体または一部が白濁した放射線線量計用ゲルまたは放射線線量計は、ゲルが融解しないので照射した白濁した部分の位置が正確に把握でき、安心して保管できる。
実施例9で評価した、本発明における放射線線量計用ゲルのX線照射後の照射量と吸光度との関係を示す図である。 実施例10で評価した、本発明における放射線線量計用ゲルのγ線照射後の照射量と吸光度との関係を示す図である。
以下、本発明の実施の形態につき、説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
本発明の放射線線量計用ゲルは、エチレン性不飽和モノマー(b)を含む水を、エチレン性不飽和モノマー(a)と無水マレイン酸との共重合体の塩基反応物(A)とゼラチン(B)とで架橋反応させて全体をゲル化したものである。(A)と(B)とのゲル化については特許第3321123号公報に詳細に記載されたものが適用できる。
エチレン性不飽和モノマー(a)(以下単に(a)という場合がある)と(A)は、(a)と無水マレイン酸との共重合体を作成した後に塩基と反応させたものでもよいし、無水マレイン酸と塩基との反応物を(a)と共重合したものでもよい。前者は(a)と無水マレイン酸とを溶媒中で共重合して得られる共重合体に塩基を反応させることによって得られるものであり、後者は溶剤の存在下または不存在下に無水マレイン酸と塩基を反応させたものを(a)と共重合しても得られる。好ましくは前者である。ここで使用される(a)は無水マレイン酸を共重合しうる不飽和化合物なら特に限定はなく、具体的にはたとえば、以下のものが挙げられる。
(1)オレフィン系不飽和モノマー
(a)直鎖状または分岐状の炭素数2〜24のオレフィン類[エチレン、プロピレン、ブテン−1,イソブチレン、n−ペンテン、イソプレン、2−メチル−1−ペンテン、ジイソブチレン、ドデセン、テトラデセン、ヘキサデセン、オクタデセン、ビニリデン(塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなど)など];
(b)芳香族系オレフィン(スチレン、α−メチルスチレンなど);
(c)ハロゲン含有オレフィン(塩化ビニル、フッ化ビニル、四フッ化エチレンなど);
(d)窒素含有オレフィン(ニトロエチレン、アクリロニトリルなど);
(e)その他オレフィン(アリルアミン、ビニルスルホン酸など);
(2)非オレフィン系不飽和モノマー
(以下で(メタ)アクリル酸というのは、アクリル酸およびメタクリル酸の両方をいうものとする。)
(a)ビニルエーテル[メチルビニルエーテル、ポリオキシアルキレン(n=2〜200)モノアリルモノアルキル(炭素数1〜24)エーテルなど];
(b)アルキル基、ヒドロキシアルキル基の炭素数が1〜22の(メタ)アクリル酸アルキルエステル又はヒドロキシアルキルエステル(アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヘキシルなど);
(c)カルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル[(メタ)アクリル酸、マレイン酸モノアルキルエステルなど];
(d)スルホン酸基含有不飽和モノマー[(メタ)アクリル酸3−スルホプロピルなど];
(e)燐酸基含有不飽和モノマー[(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル燐酸モノエステルなど];
(f)アクリルアミド[(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミドなど];
(g)3級アミン又は第4級アンモニウム塩基含有不飽和モノマー[ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、その4級化物(メチルクロライド、ジメチル硫酸、ジメチルカーボネートなどの4級化剤を用いて4級化したもの)など]:
(h)エポキシ基含有不飽和化合物[グリシジル(メタ)アクリレートな
(i)その他(N−ビニルピロリドン、プロピオン酸ビニル、ビニルアルコールなど);
などである。
これらの内で好ましくは、直鎖状又は分岐状の炭素数2〜24のオレフィン類およびビニルエーテルであり、より好ましくはイソブチレン、メチルビニルエーテルおよびポリオキシアルキレンモノアリルモノアルキルエーテルであり、特に好ましくはイソブチレンおよびメチルビニルエーテルである。これらの単量体を単独で用いても良いし、また2種類以上を組み合わせても良い。
重合は上記(a)と無水マレイン酸とを溶媒の存在下又は不存在下熱ラジカル重合、光ラジカル重合、アニオン重合等の公知の方法で重合出来る。重合体中における(a)と無水マレイン酸との組成比は、生成した共重合体の塩基反応物が水に溶解するものであればどの程度であっても差し支えない。無水マレイン酸と(a)との組成比はモル比で好ましくは10:1〜1:10であり、より好ましくは5:1〜1:5である。また生成した共重合体の分子量は、好ましくは2,000〜5,000,000であり、より好ましくは3,000〜3,000,000である。
塩基としては、アルカリ金属の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、アルカリ土類金属の水酸化物(水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなど)、有機アミン(トリメチルアミン、トリエチルアミンなど)もしくはアンモニアなど]などが挙げられるがこれらに限定されない。これらの内で好ましいのはアルカリ金属の水酸化物、アンモニアであり、特に好ましいのはアンモニアである。
共重合体と塩基との反応は種々の方法を採用することができるが、共重合体の固体粉末を溶剤中にスラリー状に分散させておいて塩基の粉末を投入するか、アンモニアの場合はアンモニアガスを溶媒中にバブリングしながら接触させる方法、あるいは塩基を含んだ水に共重合体粉末を溶解する方法などが好ましく採用される。共重合体と塩基との反応比は共重合体に含まれる無水マレイン酸基1モルに対して塩基0.5〜2モル、好ましくは0.8〜2モルである。反応生成物の水溶液(5重量%の濃度)の25℃における粘度は、好ましくは10〜10,000cpsであり、より好ましくは15〜5,000である。
本発明において、ゼラチン(B)としては、アルカリ処理ゼラチンのほか、酸処理ゼラチンを用いてもよく、またゼラチン加水分解物も用いることができ、少なくとも1個の遊離のアミノ基を持っていればよい。たとえば、牛骨の無機物をとり除いてオセインとした後、消石灰の懸濁液中に漬けておき、牛皮は適当な大きさに切断し、水洗してから石灰液中に通常2〜3ケ月間漬ける。このような石灰液による前処理を行って得られるゼラチンをアルカリ処理ゼラチンという。これに対して豚皮を希塩酸又は希硫酸に数十時間漬けて処理して得られるゼラチンを酸処理ゼラチンという。ゼラチンの形状としては、粒状、粉末、シート状のものが使用でき、分子量としては3,000〜30,000が好ましく、特にゲルの透明性かつ保形性を得るためには、分子量5,000〜20,000が好ましい。
本発明のゲル中に存在し放射線線量計用ゲルを得るためのエチレン性不飽和モノマー(b)(以下単に(b)という場合がある)としては、放射線の作用により重合可能な不飽和基を有するものであれば特に限定されない。エチレン性不飽和モノマー(b)は、上記のゲル化剤の一成分として用いられる(A)中のエチレン性不飽和モノマー(a)と重複するが、好ましい範囲が異なるためエチレン性不飽和モノマー(b)として以下に記載する。以下特にことわらない限りは単にエチレン性不飽和モノマーというときは1分子中にエチレン性不飽和基を一つ有するエチレン性不飽和モノマーをいうものとする。
(1)エチレン性不飽和基を有するカルボン酸、スルホン酸、リン酸から選択される酸の塩;下記(i)〜(iii)の塩
(i)エチレン性不飽和基を有するカルボン酸としては、不飽和モノ又はポリ(2価〜6価)カルボン酸[(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、ソルビン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、シトラコン酸など];
(ii)エチレン性不飽和基を有するスルホン酸としては、脂肪族又は芳香族ビニルスルホン酸(ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルトルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸など)、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホン酸、(メタ)アクリルアルキルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸[2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸など]など;
(iii)エチレン性不飽和基を有するリン酸としては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルリン酸モノエステル[2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート、フェニル−2−アクリロイルロキシエチルホスフェートなど]など;
上記エチレン性不飽和基を有するカルボン酸、スルホン酸、リン酸から選択される酸の塩としては、上記酸のアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩など)、有機アミン(トリメチルアミン、トリエチルアミンなど)塩もしくはアンモニウムなど]などが挙げられるがこれらに限定されない。酸基に対する中和度は好ましくは50〜100モル%であり、より好ましくは60〜95モル%である。
(2)エチレン性不飽和基を有するカルボン酸、スルホン酸、およびリン酸から選択される酸のエステル;
上記のエチレン性不飽和基を有するカルボン酸、スルホン酸、およびリン酸から選択される酸から選択される酸の炭素数1〜30のアルキルまたはヒドロキシアルキルのエステルが挙げられる。具体的には以下にカルボン酸のエステルを示すが、これらに限定されない。
(i)(メタ)アクリル酸ヒドロキシルアルキル:ヒドロキシアルキル基の炭素数が1〜10、好ましく炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル(アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチルなど)など;
(ii)(メタ)アクリル酸アルキル:アルキル基の炭素数が1〜22、好ましくは1〜10、より好ましく炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸アルキル(アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニルなど)など;
(iii)その他のエチレン性不飽和基を有するカルボン酸、スルホン酸、リン酸から選択される酸のエステル;
第3級アミノ基含有モノマー[たとえば(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルなど]、第4級アンモニウム塩基含有モノマー[たとえば上記3級アミノ基含有モノマーの4級化物(メチルクロライド、ジメチル硫酸、ベンジルクロライド、ジメチルカーボネートなどの4級化剤を用いて4級化したもの)など]、エポキシ基含有モノマー[例えば(メタ)アクリル酸グリシジルなど]、メタクリル酸2−メトキシメチル、メタクリル酸2−エトキシエチル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルモノメタクリレート、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリロイルモルホリン、メタクリロイル−L−アラニンメチルエステル、アクリロイル−L−プロリンメチルエステルなど;
(3)1分子中にエチレン性不飽和基を二つ以上有するエチレン性不飽和モノマー:
N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリコール(エトキシ化数=2〜30)ジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリン(ジ又はトリ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルアミン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、テトラアリロキシエタン及びペンタエリスリトールトリアリルエーテルなど:
(4)その他のエチレン性不飽和モノマー;
アミド基含有モノマー[たとえば(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミドなど]、第3級アミノ基含有モノマー[たとえばジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドなど]、第4級アンモニウム塩基含有モノマー[たとえば上記3級アミノ基含有モノマーの4級化物(メチルクロライド、ジメチル硫酸、ベンジルクロライド、ジメチルカーボネートなどの4級化剤を用いて4級化したもの)など]、その他モノマー[4−ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン、スチレン、メチルビニルエーテル、および上記のエチレン性不飽和基を有するカルボン酸、スルホン酸、リン酸から選択される酸など:
これらは2種以上併用してもよい。これらの内で好ましいエチレン性不飽和モノマー(b)は、エチレン性不飽和基を有するカルボン酸、スルホン酸、およびリン酸から選択される酸の塩、またはそれらのエステルであり、より好ましいものはエチレン性不飽和基を有するカルボン酸の塩または(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルであり、特に好ましいものは、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルである。これらは単一のエチレン性不飽和モノマー(b)であっても(A)と(B)の比率や濃度を変えると白濁することは可能であるが、エチレン性不飽和モノマー(b)の組み合わせにより容易に白濁が生ずる場合がある。
エチレン性不飽和モノマー(b)の白濁にとって有利な組み合わせにおいては、エチレン性不飽和基を有するカルボン酸、スルホン酸、およびリン酸から選択される酸の塩、または(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルにさらに少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルおよび1分子中にエチレン性不飽和基を二つ以上有するエチレン性不飽和モノマーの一方を含むものであり、より好ましいものはエチレン性不飽和基を有するカルボン酸、スルホン酸、およびリン酸から選択される酸の塩、またはそれらのエステルに、さらに(メタ)アクリル酸アルキルおよび1分子中にエチレン性不飽和基を二つ以上有するエチレン性不飽和モノマーを含む組み合わせである。
エチレン性不飽和モノマー(b)がエチレン性不飽和基を有するカルボン酸、スルホン酸、およびリン酸から選択される酸の塩またはそのエステルは、モノマーの安全性が高く実用化しやすいので好ましい。非(メタ)アクリル酸系のアクリルアミドは特定化学物質に指定され、使用環境中の濃度管理が厳しく、病院などでは非常に使用しづらいが、酸性基を少なくとも1個有するエチレン性不飽和モノマーの塩またはそのエステルは安全性が高く法的な拘束が少なく病院などで取り扱いやすく実用化しやすい。
また、上記のエチレン性不飽和基を有する酸の塩は水溶性が大きくゲル中に完全に溶解すると共に、低線量でも重合しやすい。
上記のエチレン性不飽和基を有する酸はゼラチンよりも先に(A)と反応して水不溶解物を形成するので、この酸を用いる場合には、主として塩の形にしておく必要がある。酸の塩とした後にその塩と併用して用いるのが好ましい。たとえば、メタクリル酸はゼラチンとの相溶性はよいが、(A)との相溶性が悪く、場合によっては反応して水不溶物が生じたりして、ゲルの透明性が不良となる。この場合、予めメタクリル酸をアンモニアなどの塩基性物質で塩とした後用いれば、透明に溶解し、その後の全体のモノマー重合時の溶解性のバランスをとった上で放射線照射を行えば重合が生じ白濁する。
(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルのような水酸基を有するエチレン性不飽和モノマーはゼラチンと相互作用を有し、ゲル化剤の一成分としてゼラチンを用いた場合でもゲル内に析出して白塊が生じる場合がある。これは水酸基を有するモノマーのポップコーン重合物が生じたためと推定される。室温ではこれが白塊となりやすいが、0〜5℃の低温で保管すればこのような白塊が生じにくいが完全ではない。白塊の形成を防止するための別の方法として水溶性カルボン酸ヒドラジドを微量添加する方法がある。水溶性カルボン酸ヒドラジドを添加しておくと室温においても白塊が生じなくなる。これは水溶性カルボン酸ヒドラジドがモノマーの安定性を向上させているのであって、同様に他のモノマーに対しても安定性を向上させる。しかしながら、添加量が多すぎるとモノマーの重合が遅くなり白濁が生じなくなる。添加量については後記する。
本発明におけるゲル化剤だけではなく、ゼラチン単独でゲル化させる場合にも水溶性カルボン酸ヒドラジドは同様な効果を奏する。すなわち、水溶性カルボン酸ヒドラジドの添加はゼラチンと(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルとの相互作用を緩和する効果がある。
水溶性カルボン酸ヒドラジドは、化学式−CO−NH−NHで示されるヒドラジド基を分子内に1個または2〜3個有する化合物である。
一価のカルボン酸ヒドラジドとしては、たとえば安息香酸ヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、ラウリン酸ヒドラジド、12−ヒドロキシステアリン酸ヒドラジド、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸ヒドラジド、コハク酸モノヒドラジド、グルタル酸モノヒドラジド、アジピン酸モノヒドラジド、ピメリン酸モノヒドラジド、スベリン酸モノヒドラジドが挙げられる。二価または三価のカルボン酸のヒドラジド化合物としては、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジドなどの二価カルボン酸ジヒドラジド;クエン酸トリヒドラジド、ニトリロ酢酸トリヒドラジド、シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド、1,2,4−トリメリット酸トリヒドラジドなどの三価カルボン酸トリヒドラジドが挙げられる。これらの内で好ましいのは二価カルボン酸ジヒドラジドであり、特に好ましいのはアジピン酸ジヒドラジドである。
添加量はゲルの重量に対して、好ましくは0.01〜1重量%であり、より好ましくは0.1〜0.5重量%である。0.01重量以上であるとエチレン性不飽和モノマー(b)の安定性が向上し、エチレン性不飽和モノマー(b)が(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルの場合には白塊が生じない。1重量%以下であるとモノマーの重合が遅くなりすぎず白濁が生じ、経済的でもある。ここで水溶性とは1重量%で使用する場合に完全に水に溶解する状態をいうものとする。
エチレン性不飽和モノマー(b)が、エチレン性不飽和基を有する酸の塩または(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルに加えてさらに少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルおよび1分子中にエチレン性不飽和基を二つ以上有するエチレン性不飽和モノマーの一方を含むと、放射線によりエチレン性不飽和基を有する酸の塩または(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルと共重合して疎水性の大きい重合体となりゲル中に析出して白濁しやすくなる。
(メタ)アクリル酸アルキルは疎水性モノマーであるが微量にゲル系内に溶解する。このモノマーが他のモノマーと共重合して分子量が大きくなるとアルキル基の疎水性のために共重合体の水溶性が低下しゲル中に析出し白濁しやすくなる。たとえば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸n−ブチルの水への溶解度(20℃)はそれぞれ6重量%、1.59重量%、0.4重量%、0.028重量%、0.14重量%である。ゲル内に他のモノマー存在下で溶解させておけば十分このような効果を奏する。また水への溶解度を上げるために水溶性の溶剤を併用して溶解性、白濁度を制御することもできる。使用できる溶剤としては、メタノール、エタノールなどのアルコール、アセトンなどのケトンなどが好ましい。水への溶解度などを考慮すると(メタ)アクリル酸アルキルはアルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸アルキルが好ましく、溶解度、白濁の点からアクリル酸メチル、メタクリル酸メチルが特に好ましい。
1分子中にエチレン性不飽和基を二つ以上有するエチレン性不飽和モノマーが反応すると重合体の架橋が生じる。放射線照射により重合した架橋共重合体がゲル中を拡散・移動しないようになり、架橋重合体の水溶性の低下に繋がり白濁しやすくなる。このようなエチレン性不飽和モノマーとしては、エトキシ化グリセリントリアクリレート、エトキシ化グリコール(エトキシ化数=2〜30)ジ(メタ)アクリレートなどが好ましい。エトキシ基のユニット数は、1,2,3,4,9,14,23のものがあり、中でも、好ましいのは、溶解性の観点からユニット数が9以上の水溶性のものである。これらのモノマーの中には、水に溶解し難いものもあるが、ゲル中に均一に分散していて、放射線照射前のゲル全体が透明であればよい。
エチレン性不飽和モノマー(b)がエチレン性不飽和基を有するカルボン酸、スルホン酸、およびリン酸から選択される酸の塩、または(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルに、さらに(メタ)アクリル酸アルキルおよび1分子中にエチレン性不飽和基を二つ以上有するエチレン性不飽和モノマーを含むものであると、放射線により重合した共重合体は極端に水溶性が低下し、最も白濁しやすくなる。(メタ)アクリル酸アルキルおよび1分子中にエチレン性不飽和基を二つ以上有するエチレン性不飽和モノマーの相乗効果である。
エチレン性不飽和基を有するカルボン酸、スルホン酸、およびリン酸から選択される酸の塩、または(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルに対する(メタ)アクリル酸アルキル、1分子中にエチレン性不飽和基を二つ以上有するエチレン性不飽和モノマーの配合量は特に限定はないが、エチレン性不飽和基を有するカルボン酸、スルホン酸、およびリン酸から選択される酸の塩、または(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル100重量部に対してそれぞれ好ましくは50〜90重量部、30〜70重量部である、より好ましくは60〜80重量部、40〜60重量部である。それぞれの量が50〜90重量部、30〜70重量部であると白濁しやすさの相乗効果が大きい。
本発明における放射線線量計用ゲルは、基本的にはエチレン性不飽和モノマー(b)を含む水を上記のゲル化剤(A)と(B)でゲル化したものである。
本発明におけるゲルは、ゲル化剤の他にエチレン性不飽和モノマー(b)を必須として存在させるが、放射線重合反応を促進して放射線感受性を高めるために、アスコルビン酸やテトラキスヒドロキシメチルホスホニウムクロリド(THPC)などの脱酸素剤を添加することが好ましい。さらにその他の添加剤、たとえば溶剤(アルコール、アセトンなど)、着色剤、ハイドロキノンなどのフリーラジカル捕捉剤、グアイアズレンなどの紫外線吸収剤、界面活性剤、防腐剤などを混合することが出来、本発明の目的を阻害しない程度に配合すればよい。
また、本発明に係る放射線線量計用ゲルを得るためのゲル化剤は(A)+(B)であるが、さらにアガロース、カラギーナン、ジェランガム、キサンタンガム、ゼラチンなどの公知の天然高分子を配合してゲルの硬さ、モノマーの反応性などを調整してもよい。
水中におけるゲル化剤[(A)+(B)]の濃度は特に限定はないが、ゲル化剤の濃度が小さい程ゲル化物中の水の量が多くなるので放射線線量計用ゲルとしては好ましいが、ゲル強度は弱くなるので、それとの関係で決めるのがよい。ゲル化剤の使用量がゲル全体に対して1〜10重量%が好ましく、2〜7重量%が特に好ましい。1重量%以上であると水全体を容易にゲル化させることができる。10重量%以下であれば(b)の重合を阻害しにくく経済的でもある。2〜7重量%であると(b)の重合性、透明性、熱安定性、ゲル強度などのバランスに優れ放射線線量計用ゲルとなる。(A)と(B)との反応において、(A)と(B)との使用比率はゼラチンの遊離アミノ基の数により一概に特定できないが、透明なゲルを得るには(B)100質量部に対して(A)を好ましくは3〜50質量部、より好ましくは5〜40質量部で反応させるのがよい。
エチレン性不飽和モノマー(b)はゲル化剤に対して好ましくは1〜10重量%、より好ましくは2〜5重量%である。1重量%以上であると白濁が良好であり、10重量%以下であると経済的である。脱酸素剤を添加する場合は、好ましくは0.01〜1重量%、より好ましくは 0.1〜0.5重量%である。その他の添加材を添加する場合は、好ましくは0.01 〜3重量%、より好ましくは0.1〜1重量%である。
ゲル化の方法は特に限定はないが、(i)(A)の水溶液に(B)を混合する方法、(ii)(B)の水溶液に(A)を混合する方法、(iii)(A)、(B)それぞれの水溶液を予め調整した後両者を混合する方法があるが、好ましい方法は(iii)である。その混合水溶液にエチレン性不飽和モノマー(b)やその他の添加剤を混合して室温で放置すればゲル化する。混合する場合の順序は特に限定はない。
(A)と(B)とを反応する際の温度は特に限定はないが、ゲルはモノマーを含むので加熱は好ましくなく、室温以下で行うのが好ましい。また水溶液はエチレン性不飽和モノマー(b)を含むのでゲル化後放射線照射時のエチレン性不飽和モノマー(b)の重合を阻害させないため、系内の酸素を取り除いておく必要がある。このためにはヘリウムや窒素などのガスを水溶液の状態においてバブルするのが好ましい。またゲルが生成した後エチレン性不飽和モノマー(b)が安定に存在させるためにはゲルの保管は0〜5℃が好ましい。
放射線線量計用ゲルはゲル化させた後成型してもよいが、金型中で形成してもよい。しかし、ゲルは一旦生成すれば他の容器に移すのは煩雑、困難であるので、通常実際に用いられる容器の中でゲルの作成が行うのが好ましい。ゲル化は室温でも生じるので大型の放射線線量計用ゲルの形成に有利である。
ゲル化している状態は目視で十分に確認できる。また、反応はゲル強度によっても確認出来るので必要がある場合にはゲル強度を測定する。(A)と(B)との反応物の最終のゲル強度は、好ましくは3〜1,000gであり、より好ましくは5〜600であり、特に好ましくは10〜500である。ゲル強度の測定法は下記に記載する。
(ゲル強度測定法)
ゲルを25℃に温調した後、直径15.7mmの金属球を取り付けた棒を島津オートグラフ(島津製作所社製、AGS−500B)に接続する。金属球を5cm/分の速度でゲル中に押し込み、金属球がゲル中に完全に入った直後の応力(g)を測定する。これがゲル強度(g)である。
(A)と(B)との反応について、塩基がアンモニアの場合について以下に記載する。その他の塩基の場合もこれに準じると推定される。すなわち、下記の様に反応してゲル形成が進行するものと推定される。エチレン性不飽和モノマー(b)と無水マレイン酸との共重合体にアンモニアを反応させると、まず共重合体中の無水マレイン酸部分が開裂し、部分的なアミドとアンモニウム塩との混合物が生成される。このアミド基とゼラチン(B)のリジン残基のアミノ基とが反応し、NHが脱離し、新たにアミド結合が形成され、その結果として三次元構造(ゲル化)が形成されると推定される。
Figure 2015098523
上記のようにして作成された本発明の放射線線量計用ゲルは(b)が溶解度以内であれば透明性を高く設計できる。透明性は透過率(%)で測定が出来る。ゲルの透過率(%)は、好ましくは80〜100、特に好ましくは90〜100である。ゲルの透明度が高い程放射線の線量が測定しやすい。
(透過率の測定法)10mm厚のガラス製セル中に室温で1日放置してゲルを作成し25℃に温調した後、分光光度計(島津製作所製、UV−1200)にて可視光(700nm)の透過率を測定する。
本発明の線量計用ゲルは、最も簡単には、上述のゲルを放射線を透過させる透明な容器に充填することにより作製できる。たとえば、直方体の透明容器に上述のゲルを充填することにより、簡単に体の一部のファントムを構成することができる。容器はMRIに感応せず、放射線を透過し、耐溶剤性、気密性などを有していれば特に制限はなく、その材質はガラス、アクリル樹脂、ポリエステル、エチレン−ビニルアルコール共重合体などが好ましい。容器が透明であれば、MRIのみならず、白濁度の3次元計測が可能な光学CTを使用することで、3次元線量分布を測定できる。特に好ましいのは放射線重合を阻害する酸素が外部から入らないようにする酸素バリアー性に優れた材質のものである。たとえば、アクリル樹脂、ポリエステルが挙げられる。
本発明に係る放射線線量計用ゲルは、高感度に3次元線量分布を測定できることから、治療計画に関するインフォームドコンセントに役立つ。医師側は、患者側に放射線治療計画を説明しやすくなり、一方、患者側は明瞭な照射領域を提示されることで、放射線治療をイメージできるようになり、放射線治療に対する安心感を得られる。更に、本発明に係るポリマーゲル線量計用ゲルは、ゲルのサイズや形状を任意で簡便に調節できることから、患者の体型に合わせたテーラーメイドの水等価ファントム(生体組織等価ファントム)にも活用できる。またこの放射線線量計用ゲルを膜状に形成した薄膜型放射線線量計用ゲルとしても使用できる。
以下実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(製造例1)(エチレン性不飽和モノマー(a)と無水マレイン酸との共重合体のアンモニア反応物−1)
「イソバン−04」(イソブチレン/無水マレイン酸共重合体、分子量6×104、クラレ社製)(4.3部)にイオン交換水(93部)とアンモニア含有量28%のアンモニア水溶液(2.5部)とを加え室温下で攪拌すると1時間で均一に溶解した。アンモニア中和率80%の均一に溶解した濃度5重量%の「イソバン−04」の水溶液(B−1)を得た。
(製造例2)(エチレン性不飽和モノマー(a)と無水マレイン酸との共重合体のアンモニア反応物−2)
「イソバン−104」(イソブチレン/無水マレイン酸共重合体のアンモニア反応物、分子量6×104、クラレ社製)(5部)にイオン交換水(95部)を加え室温下で攪拌すると30分で均一に溶解した。アンモニア中和率80%の均一に溶解した濃度5重量%の「イソバン−104」の水溶液(B−2)を得た。
(製造例3)(ゼラチン水溶液の作成)
「ゼラチンSE−1」(アルカリ処理ゼラチン、ニッピゼラチン工業社製)(50部)にイオン交換水(950部)を加え60〜70℃に加温し均一に溶解して濃度5重量%のゼラチン水溶液(A−1)を得た。
(製造例4)(メタクリル酸アンモニウム水溶液の作成)
メタクリル酸 4.0部、水9.4部を混合した後、攪拌しながら28%アンモニア水2.5部を徐々に加え、30分攪拌して、濃度29.6重量%のメタクリル酸アンモニウム水溶液を得た。
(実施例1)
室温において、200mlのビーカーにゼラチン水溶液(B−1)50g、「イソバン04」の水溶液(A−1)12gを入れ、さらに脱イオン水32.1gを入れて攪拌した。ビーカー内の水溶液を攪拌しながら上記に作成したメタクリル酸アンモニウム水溶液8.1g(メタクリル酸アンモニウムとして2.38g)、「NKエステル9G」(ポリエチレングリコールジメタクリレート(エチレングリコール数が約9つ)、新中村化学工業社製)1.5g、メタクリル酸メチル(三菱レイヨン社製)1.1g、「ADH」(アジピン酸ジヒドラジド、日本化成社製)0.003g、「THPC」(テトラキスヒドロキシメチルホスホニウムクロリドの約80%水溶液、和光純薬工業社製)0.15gを入れて攪拌した。水溶液がほぼ透明になった時点でヘリウムガスを3分間バブリングした。この時点では若干粘性のある水溶液であった。その後約20mlの円筒状のアクリル製容器(径25mm、長さ45mm)5本に充填して蓋をした。このアクリル製容器をアルミパックに入れ光を遮断して、冷蔵庫に保管した。約5時間後にゲル化したことを確認した。このようにして本発明の放射線線量計用ゲルが得られた。
(実施例2〜8、比較例1〜4)
表1に示した配合量を用いて実施例1と同様にして本発明の放射線線量計用ゲル、比較の放射線線量計用ゲルを得た。
Figure 2015098523
これらの放射線線量計用ゲルにIPU EXL−15SPで10MV X線を照射して0.5Gy、1Gy、2Gyで白濁が生じるかどうか確認した。その結果を表2に示した。また、ゲルの熱安定性、ゲル中に白塊の生成の有無、ゲルの透明性などの評価結果を合わせて示した。
Figure 2015098523
(試験法)
・ゲルの熱安定性
ゲルを50℃に加熱した時ゲルが融解するかどうかを肉眼で判定した。
○:融解せず ×:融解した
・ゲルの透明性
ゲルの透明性を目視で判定した。
○:透明 △:かすみ ×:不透明または析出物あり
・白塊の生成の有無
冷蔵庫5日保管後のゲル中に白塊が生成しているかどうかを目視で判定した。
○:生成せず ×:生成した
・ゲルの白濁度
○:はっきりと白濁が認められる △:かすかに白濁が認められる ×:白濁が認められない
本発明のゲル化剤(A+B)を用いてゲル化した実施例1〜8の放射線線量計用ゲルは、50℃に加熱してもゲルは融解せず熱安定性が良好であり、白濁した部分の位置が温度の変化に対して安定に存在することができる。また、0.5Gyの低線量においても白濁しやすいことがわかる。
エチレン性不飽和モノマーとして、(メタ)アクリル酸アルキルおよび1分子中にエチレン性不飽和基を二つ以上有するエチレン性不飽和モノマーの両方を含んだ場合、それぞれ一方を含む場合に比較して、白濁が低線量でもおこりやすいことがわかる。
ADH(アジピン酸ジヒドラジド)のような水溶性カルボン酸ヒドラジドが微量存在すると、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルを用いた場合でも白塊が生じず、水溶液中のモノマーの安定性を向上させることが明瞭にわかる。
(実施例9)
アクリル製の分光用ディスポセル(12mm×12mm×45mm、光路長10mm、アズワン社製)に実施例2の組成で混合した水溶液を高さの90%程度に満たし、その上からアクリル製の板(厚さ1mm)を接着剤を用いて蓋をした。これをアルミパックに入れて光を遮断し、冷蔵庫にて保管した。この水溶液は約5時間後にゲル化していた。2日後に10MV、400MU/min、水槽内 SSD85cmでisocenterに配置し、270°からX線照射(0、0.5、1、3、5、10Gyで2本づつ照射)した。図1は、その照射量と吸光度との関係を示す図である。照射前の吸光度は0.119から0.150と最大で20%位差がみられ、0.5Gyの低線量から白濁し線量の増加に伴いほぼ直線的に白濁が増加していることがわかる。ややぶれがあるが、これは蓋に隙間があり隙間から空気が入り込んで重合性に影響を与えたこと、室内で光が当たったことなどによる影響が考えられる。量が増えればさらに白濁の直線性は良好になると考えられる。光CTで使用する場合に有効に用いられる。
(実施例10)
アクリル製の分光用ディスポセル(12mm×12mm×45mm、光路長10mm、アズワン社製)に実施例2の組成で混合した水溶液を高さの90%程度に満たし、その上からアクリル製の板(厚さ1mm)を接着剤を用いて蓋をした。これをアルミホイルで包み光を遮断し、冷蔵庫にて保管した。この水溶液は約5時間後にゲル化していた。10日後に、コバルト60線源からのγ線を照射した。図2は、その線量と吸光度との関係を示す図である。ここで吸光度は、紫外可視分光光度計を用いて660nmの吸光度である。0.1Gyの低線量から白濁し、線量の増加に伴い吸光度(白濁度合い)が増加していることがわかる。既知の線量を照射して得た吸光度に基づき白濁度合いと線量の関係式を求め、検量線を作成しておくことで、吸光度から照射した線量を見積もることができる。
Figure 2015098523
Figure 2015098523

Claims (8)

  1. エチレン性不飽和モノマー(b)を含有する水の中で、エチレン性不飽和モノマー(a)と無水マレイン酸との共重合体の塩基反応物(A)とゼラチン(B)とを反応させて、該水をゲル化させてなる放射線線量計用ゲル。
  2. 前記エチレン性不飽和モノマー(b)が、エチレン性不飽和基を有するカルボン酸、スルホン酸、およびリン酸から選択される酸の塩、またはそれらのエステルであることを特徴とする請求項1記載の放射線線量計用ゲル。
  3. 前記エチレン性不飽和モノマー(b)が、エチレン性不飽和基を有するカルボン酸の塩および(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルのいずれか一方を含むことを特徴とする請求項2記載の放射線線量計用ゲル。
  4. 前記エチレン性不飽和モノマー(b)が、さらに少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルおよび1分子中にエチレン性不飽和基を二つ以上有するエチレン性不飽和モノマーの一方を含むことを特徴とする請求項2または3記載の放射線線量計用ゲル。
  5. 前記放射線線量計用ゲルが、さらに水溶性カルボン酸ヒドラジドを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の放射線線量計用ゲル。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の放射線線量計用ゲルを該ゲルを充填可能な透明容器に充填してなる放射線線量計。
  7. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の放射線線量計用ゲルまたは請求項6記載の放射線線量計に放射線を照射し、該放射線線量計用ゲルを白濁させる方法。
  8. 請求項7記載の方法によって全体または一部が白濁した放射線線量計用ゲルまたは放射線線量計。
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